JP4458783B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」とも称する)に関し、詳しくは、乗り心地性等の他性能に悪影響を与えることなく耐久性を向上した空気入りタイヤ、特には重荷重用空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、軽トラック以上の空気入りタイヤでは、高荷重を支えるために、乗用車用に比して内圧が高く設定される。従って、かかるタイヤのカーカスの補強材には高強度・高剛性が必要とされ、高い剛性を有するスチールコードが広く適用されている。
【0003】
ところが、ベルトにより補強されたタイヤトレッド部に相当する位置では、カーカスの剛性が高すぎると、乗り心地性を悪化させるという欠点がある。そのため、乗り心地性を改良するために、この部分でカーカスを切断してカーカスの存在しない領域を形成する技術が、特許文献1に開示されている。
【0004】
上記文献に記載の技術によれば、所期の乗り心地性能を実現した空気入りラジアルタイヤを得ることが可能である。しかしその反面、上記文献に記載の方法では、タイヤ成型加工性が十分ではなく、また、幅方向の強度が低下する傾向があるために、路上の突起を踏んだ際の耐カット性に劣るという難点があった。さらに、タイヤ荷重時における耐久性の確保についても十分ではなかった。従って、これら成型加工性や耐カット性、耐久性を損なうことなく、乗り心地性を高めることのできる技術が求められていた。
【0005】
一方、タイヤがパンクなどによりしばらく低内圧状態で走行して、その後、パンクの修理を行って走行を続けると、バーストを起こして重大な事故に繋がる場合がある。この現象の原因を解析した結果、低内圧走行時に、ベルト端部とタイヤ最大幅部との中間の屈曲部でコードが座屈する場合があり、これにより、その後の疲労性が悪化することがわかった。
【0006】
この座屈を起こりにくくするためには、スチールコードにスパイラルワイヤーを巻くなどの手段が有効であるが、この場合、発熱や、素線同士の擦れ合いによる強度低下などを生ずるというマイナス面がある。また、スチールコードのピッチを短くすることで座屈を発生しにくくすることも可能であるが、この場合には、剛性が低下してタイヤの変形が増大し、発熱を増加させることにより他の耐久性能にマイナスの影響が出る場合がある。これらの変形による耐久現象を詳細に解析した結果、ビード部の硬質ゴムのタイヤ内面部の引張り剛性が、この変形、ひいてはタイヤの耐久性に大きな影響を与えることがわかったが、このタイヤ変形および上記コード座屈の問題を、ともに解決することのできる技術は、これまで存在しなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−71714号公報(特許請求の範囲等)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の目的は、成型加工性や耐カット性、耐久性を損なうことなく、乗り心地性を向上した空気入りタイヤを提供することにあり、また、タイヤ全体の変形を維持しつつ、ベルト端部とタイヤ最大幅部との間の、低内圧時に大きく屈曲する部分における素線座屈を発生しにくくすることで、耐久性の向上した空気入りタイヤを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の装置を用いて1本のコード内においてフィラメントの撚り角を変化させたところ、従来におけるような問題を生ずることなく所期のタイヤ性能が実現されることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の空気入りタイヤは、少なくとも一対のビード部に夫々埋設されたビードコアの周りにタイヤ内側から外側に折り返して係止されたカーカスと、該カーカスの、前記ビードコア間にトロイド状に延在する本体部と、該本体部に連続して設けられ該ビードコアの周りに折り返された巻上部と、の間に配置されるビードフィラーと、該カーカスのクラウン部外周に位置するトレッド部と、該カーカスのサイド部に位置するサイドウォール部と、前記トレッド部の内側に配置された少なくとも1層のベルト層とを備える空気入りタイヤにおいて、
前記カーカスの補強コードを構成するフィラメントのうち、少なくとも最外層フィラメントの、前記ビードフィラーのタイヤ内側部分における、コード軸線方向に対し垂直な方向を基準とする撚り角θ0が、タイヤ赤道面上における、コード軸線方向に対し垂直な方向を基準とする撚り角θcより大であることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の上記空気入りタイヤ、特には重荷重用空気入りラジアルタイヤにおいては、前記撚り角θcが30°≦θc≦77°であり、かつ、前記撚り角θ0が78°≦θ0≦90°であることが好ましく、より好ましくは、前記撚り角θcが30°≦θc≦75°であり、かつ、前記撚り角θ0が80°≦θ0≦90°である。
【0012】
また、本発明の空気入りタイヤは、少なくとも一対のビード部に夫々埋設されたビードコアの周りにタイヤ内側から外側に折り返して係止されたカーカスと、該カーカスの、前記ビードコア間にトロイド状に延在する本体部と、該本体部に連続して設けられ該ビードコアの周りに折り返された巻上部と、の間に配置されるビードフィラーと、該カーカスのクラウン部外周に位置するトレッド部と、該カーカスのサイド部に位置するサイドウォール部と、前記トレッド部の内側に配置された少なくとも1層のベルト層とを備える空気入りタイヤにおいて、
前記カーカスの補強コードを構成するフィラメントのうち、少なくとも最外層フィラメントの、前記ビードフィラーのタイヤ内側部分における、コード軸線方向に対し垂直な方向を基準とする撚り角θ0が、前記ベルト層端部とタイヤ最大幅部との略中間点における、コード軸線方向に対し垂直な方向を基準とする撚り角θtより大であることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の上記空気入りタイヤにおいては、前記撚り角θtが30°≦θt≦77°であり、かつ、前記撚り角θ0が78°≦θ0≦90°であることが好ましく、より好ましくは、前記撚り角θtが30°≦θt≦75°であり、かつ、前記撚り角θ0が80°≦θ0≦90°である。
【0014】
本発明の空気入りタイヤにおいては、カーカスの補強コードを構成する最外層フィラメントの撚り角を特定部位間で変化させることにより、タイヤの成型加工性や耐カット性を損なうことなく乗り心地性を向上した空気入りタイヤを得ることができ、また、所定部位における座屈を防止して、耐久性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の空気入りタイヤの実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る空気入りラジアルタイヤは、ビード部1に埋設されたビードコア2の周りにタイヤ内側から外側に折返して係止されたカーカス3と、カーカス3の本体部3A(ビードコア2間にトロイド状に延在する部分)と巻上部3B(ビードコア2の周りに折り返された部分)との間に配置されるビードフィラー5と、カーカス3のクラウン部に位置するトレッド部6と、カーカス3のサイド部に位置するサイドウォール部8と、トレッド部6の内側に配置された二層のベルト層4とを備えている。カーカス3は、補強コードが実質的に周方向と直交する方向に配列されてなり、本実施形態では一枚のカーカスプライから構成されている。
【0016】
本発明の空気入りタイヤにおいては、このカーカス3の補強コードを構成するフィラメントのうち、少なくとも最外層フィラメントの、ビードフィラー5のタイヤ内側部分における撚り角θ0が、タイヤ赤道面上における撚り角θcより大である点に特徴がある。これにより、トレッド部においては、剛性を低下させて乗り心地性を向上することができるとともに、突起を踏み込んだ際の耐カット性を十分確保することができる。一方、タイヤ荷重時に最も引っ張りテンションのかかるビードフィラーのタイヤ内側部分については、内圧・荷重時における剛性を維持して、耐久性を十分確保することができる。
【0017】
具体的には、タイヤ赤道面上における撚り角θcについては、30°≦θc≦77°の範囲内、特には30°≦θc≦75°の範囲内とすることが好ましく、一方、ビードフィラーのタイヤ内側部分における撚り角θ0については、78°≦θ0≦90°の範囲内、特には80°≦θ0≦90°の範囲内とすることが好ましい。夫々の撚り角をこの範囲内とすることにより、トレッド部およびビードフィラー近傍における要求特性を確実に満足させることができ、上記本発明の効果をより良好に得ることができる。
【0018】
なお、上記最外層フィラメントの撚り角は、少なくともタイヤ赤道面上における撚り角θcとビードフィラーのタイヤ内側部分における撚り角θ0とが上記条件を満たすものであれば、その中間部分についてはどのように設定されていてもよく、特に制限されるものではない。即ち、撚り角の変動領域は、タイヤ赤道面からビードフィラーのタイヤ内側部分に至るまでのフィラメントのいずれの部分に存在していてもよい。
【0019】
上記最外層フィラメントにおいては、撚り角を上記範囲とすることで、ビードフィラーのタイヤ内側部分に当たる部位の切断時伸びを3.0%以下、タイヤ赤道面上に当たる部位の切断時伸びを3.5%以上に、夫々することができるという効果も得られる。
【0020】
また、図2に示す本発明の他の態様の空気入りタイヤは、カーカス3の補強コードを構成する最外層フィラメントの、ビードフィラー5のタイヤ内側部分における撚り角θ0が、ベルト層端部とタイヤ最大幅部との略中間点における撚り角θtより大である点に特徴を有する。これにより、ベルト層端部とタイヤ最大幅部との略中間点近傍については、パンクなどに起因する低内圧走行時においても、コードの屈曲による素線の座屈が発生しにくくなるので、その後の耐久性の低下を適切に抑制することができる。一方、タイヤ荷重時に最も引っ張りテンションのかかるビードフィラー近傍については、内圧・荷重時における剛性を維持して、耐久性を十分確保することができる。
【0021】
具体的には、ベルト層端部とタイヤ最大幅部との略中間点における撚り角θtについては、30°≦θt≦77°の範囲内、特には30°≦θt≦75°の範囲内とすることが好ましく、一方、ビードフィラーのタイヤ内側部分における撚り角θ0については、78°≦θ0≦90°の範囲内、特には80°≦θ0≦90°の範囲内とすることが好ましい。夫々の撚り角をこの範囲内とすることにより、ベルト層端部とタイヤ最大幅部との略中間点近傍およびビードフィラー近傍における要求特性を確実に満足させることができ、上記本発明の効果をより良好に得ることができる。
【0022】
なお、この場合においても、上記最外層フィラメントの撚り角は、少なくともベルト層端部とタイヤ最大幅部との略中間点における撚り角θtとビードフィラーのタイヤ内側部分における撚り角θ0とが上記条件を満たすものであれば、その他の部分についてはどのように設定されていてもよく、特に制限されるものではない。即ち、撚り角の変動領域は、ベルト層端部とタイヤ最大幅部との略中間点からビードフィラーのタイヤ内側部分に至るまでのフィラメントのいずれの部分に存在していてもよく、また、タイヤ赤道面近傍のベルト層の存在する領域の撚り角については、適宜定めることができ、特に制限されない。
【0023】
上記最外層フィラメントにおいては、撚り角を上記範囲とすることで、ビードフィラーのタイヤ内側部分に当たる部位の切断時伸びを3.0%以下、ベルト層端部とタイヤ最大幅部との略中間点に当たる部位の切断時伸びを3.5%以上に、夫々することができるという効果も得られる。
【0024】
本発明においては、カーカスの補強コードを構成するフィラメントのうち、最外層フィラメントの撚り角が上記した条件を満足するものであれば、その他のタイヤの各部の構成、使用する材料等については特に制限されるものではない。また、最外層フィラメント以外のフィラメントの撚り角について上記条件に従うものとしてもよい。例えば、カーカス3のコードは、重荷重用タイヤとして用いる場合にはスチールコードを用いることが好ましいが、これには限られず、有機繊維材料からなるコードでもよく、また、コードと有機繊維とを撚り合わせた複合体を用いてもよい。また、図示する実施形態においては、ベルト層4は、タイヤ赤道面CLに対して傾斜して延びる複数本のスチールコードを配列した1層の傾斜ベルト層4Aと、この傾斜ベルト層4A上に位置し、該スチールコードに対して交錯する複数本のスチールコードを配列した周方向ベルト層4Bとからなるが、ベルト層4の枚数や構成は特に制限されるべきものではなく、タイヤの用途および種類に応じ適宜定めればよい。
【0025】
尚、1本のフィラメント内において撚り角を変更する手段は、特に制限されるものではないが、これまで困難とされてきた、フィラメントの撚り角を変化させることのできる、成型機と撚り線機とを直結させた撚り機が最近開発され、本願出願人は先に当該撚り機について特許出願を行っている(特願2002−341037)。よって、この撚り機について以下に詳述する。
【0026】
かかる撚り機は、供給された複数本の線材を撚って撚り線とする回転体と、前記撚り線を前記回転体から搬出する搬出手段と、を有し、撚り点の前後で撚り線側又は線材側の何れか一方を開放している撚り機である。ここで、開放しているとは、撚り点の片方の端部を撚り回転に応じて回転できる状態にしていることをいう。
【0027】
具体的には、図3に示すタイプの撚り機22を好適に使用することができる。図3は、コード製造ライン10に設けられた撚り機22の構成を示す側面図である。コード製造ライン10には、素線がそれぞれ巻かれている複数のボビン14A〜Cと、ボビン14A〜Cから巻き出された素線18A〜Cのテンションを制御するテンション制御部16A〜Cと、テンション制御部16A〜Cを経由した素線18A〜Cを撚ってコード20にする撚り機22と、が設けられている。撚り機22は、素線18A〜Cを撚って1本のコード20を製造する送り・回転一体式の装置である。
【0028】
撚り機22は、素線18A〜Cにクセ(型)を付けるクセ付け部(型付け部)24と、撚り点26を形成している撚り点形成部28と、撚り点形成部28の下流側に設けられた回転体30と、回転体30に回転力を与えると共にコード20を回転体30から送り出す送り力を与えるモータ34と、を備えている。回転体30は、撚り機22に設けられたベアリング部36A、Bによって回転可能に保持されている。
【0029】
図3、図4に示すように、回転体30の下流側には、回転体30のハウジング31から短筒状に延び出した回転駆動用軸部40に回転駆動用プーリ42が固定されており、回転駆動用プーリ42と、モータ34に取付けられた第1回転板44とには無端ベルト46が掛けられている。
【0030】
回転駆動用軸部40には、コード20の送り力を伝達する細長筒状の送り駆動用軸部材50が、回転軸が一致するように挿通しベアリング部51によって回転体30に支えられている。そして、回転駆動用プーリ42の下流側には、送り駆動用軸部材50に固定された送り駆動用プーリ52が設けられており、送り駆動用プーリ52と、モータ34に取付けられた第2回転板54とには無端ベルト56が掛けられている。
【0031】
ハウジング31内には、コード20を送る送り機構58が設けられている。送り機構58は、送り駆動用軸部材50の同軸上で先端側に固定された第1ギア60と、第1ギア60と噛み合う第2ギア62と、を有する。第2ギア62の回転中心には小径の小ギア部64が設けられている。また、送り機構58は、コード20が数回巻かれる巻回部66を有すると共に小ギア部64と噛み合う大ギア部67を有する多段巻きキャプスタン68と、多段巻きキャプスタン68に当接してコード20を巻回部66に押し付けるピンチローラ70と、を有する。更に、送り機構58は、多段巻きキャプスタン68に巻回されたコード20が更に数回巻かれる多段巻きダミープーリ72を有する。
【0032】
多段巻きキャプスタン68及び多段巻きダミープーリ72の径は、回転体30から送り出されたコード20を使用する際に真直性の観点で支障がないように、素線18A〜Cの径、材質等を考慮して決定されている。
【0033】
また、撚り機22には、送り駆動用軸部材50を挿通して、多段巻きダミープーリ72から巻き出されたコード20を回転体30の下流側へ案内するコード排出用パイプガイド74が設けられている。
【0034】
第2回転板54に比べ、第1回転板44の径は少し大きくされており、回転体30の回転速度(撚り線の撚り速度)と、コード20の送り速度との比が調整されている。
【0035】
このように、本形態では、回転駆動用軸部40と送り駆動用軸部材50とを同軸上に配置しており、回転体30に送り駆動用のモータを更に設けることに比べ、撚り機22の構成が簡素になっている。
【0036】
撚り機22を使用するには、モータ34を所定回転数で回転させると、送り駆動用プーリ52が回転し、第1ギア60、第2ギア62、多段巻きキャプスタン68、多段巻きダミープーリ72に回転力が順次伝達される。この結果、撚り点形成部28を経由した素線18A〜Cが所定の送り出し速度で回転体30から送り出される。
【0037】
また、回転駆動用ダミープーリ72が回転し、回転体30が所定回転速度で回転する。従って、素線18A〜Cは、撚り点形成部28から引き出されつつ撚られ、コード20となって回転体30から送り出される。
【0038】
このように、コード20の送り駆動は、回転体30上で送り駆動用軸部材50が回転駆動用軸部40と相対的に回転することで行われ、すなわち送り駆動用の軸の回転数と回転体30の回転数との差によって送り速度が決定される。
【0039】
回転駆動用軸部40と送り駆動用軸部材50との回転速度比を変速式である構造にしたり、上記の2軸を別々に駆動して回転速度の任意の速度に設定できる構造にすることで、撚りピッチを自在にその都度変更することが可能である。これにより、一本の連続したコード部材の中でも撚りピッチを変化させ、本発明に係るベルト層に合わせて撚りピッチを変更することができる。
【0040】
なお、このような可変ピッチ機能を有する撚り機を使用して製造されたコードをタイヤに使用することは、従来、非常に困難であった。従って、この機能を十分活かすためには、タイヤの使用部位との位置決めを容易にする上で、撚り機を設ける位置をタイヤ部材あるいはタイヤそのものを製造する装置の近くにすることが好ましく、さらにはこの装置と連携して複合的に動作できるようにすることが望ましい。
【0041】
撚り機22で製造できるコードはスチールコードに限られず、有機繊維材料からなるコードも製造でき、同様の効果を得ることができる。更に、コードと有機繊維とを撚り合わせた複合体、コードとひも状のゴムとを撚り合わせた複合体、コードと有機繊維とひも状のゴムとを撚り合わせた複合体、の何れも製造することができ、要求されるタイヤ品質に合った補強材を提供することが可能である。
【0042】
また、線材の材質は特に限定されず、また、線材は素線であってもストランドであってもよい。撚り方は、単撚り、複撚り、層撚り等、特に限定しない。線材が素線である場合にはストランドが製造される(例えば、素線の材質がスチールである場合には、撚り機でスチール製のストランドが製造される)。
【0043】
撚り機22においては、回転体30には、回転体全体を回転駆動するための回転駆動用軸部40と、ベアリング部51によって回転駆動用軸部40と同軸上に保持された送り駆動用軸部材50と、を設けており、これらの2軸は1台のモータ34によって回転駆動される。これにより、撚り機22の構成を著しく簡素にすることができる。なお、送り機構58の駆動力を発生させるため回転体30に電気モータなどを設けてもよいが、より簡潔な装置にするために、回転体30の回転軸と同軸上に送り駆動用の軸を配して、回転体30内の送り機構58を駆動するようにしている。
【0044】
また、多段巻きキャプスタン68及び多段巻きダミープーリ72によって撚り点形成部28からコード20を引出して回転体30から送り出しているので、ピンチローラ70でコード20をさほど高い力で押圧しなくても済む。また、多段巻きキャプスタン68及び多段巻きダミープーリ72の巻き方向が逆であり、しかも、コード20をリールに巻き取らなくてもよいので、真直性が大幅に改善されたコード20を製造することができる。
【0045】
かかる撚り機22においては、複数の単線を撚って回転体から搬出することにより撚り線を形成でき、従来のように撚り線を回転体から巻き取らなくても済む撚り機が実現される。これにより、回転性、真直性に優れた撚り線を形成することができるコンパクトな撚り機を実現することができ、スチールコードの製造に一般的に使用されている従来の撚り機に比べ、スペース、価格とも1/10以下とすることが可能となる。また、かかる撚り機を用いて撚り線を製造する際、線材の選定は任意に行うことができる。例えば、コアとなる複数本の素線と、シースとなる複数本の素線と、を線材として供給し、コアとシースとが同方向、同ピッチで撚り合わされたコンパクトな構造の層撚りコードを製造してもよい。また、コアとなる複数本の素線を既に撚り合わせた状態で巻き出して撚り機に供給し、シースとでピッチが異なる層撚りコードを製造してもよい。更に、巻き出して供給する線材として2〜7本の素線を既に撚り合わせたストランドを使用し、複撚りのコードを製造してもよい。また、供給する線材として複数本の素線の材質を非同一とすることにより、製造する撚り線の材質を2種以上にしてもよい。また、スチールその他の素線と同時に、ゴム被覆済みの線材或いはひも状にした加工したゴムを撚り合わせることで、コードとゴムとの複合体を製造してもよい。
【0046】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。
実施例1および従来例1〜3
供試タイヤとして、実施例1および従来例1〜3の軽トラック用タイヤを用意して、乗り心地性、トレッド貫通性およびカーカス折り返し端部の亀裂発生について、夫々比較評価した。
【0047】
供試タイヤはいずれも、タイヤサイズ:225/80R17.5、リムサイズ:6.75インチ、内圧:700kPaとし、カーカスの補強コードを構成する最外層フィラメントの、ビードフィラーのタイヤ内側部分における撚り角θ0およびタイヤ赤道面上における撚り角θcを、夫々下記の表1中に示すように変動させた。また、従来例2については、タイヤトレッド部に相当する位置でカーカスを切断した。その他のタイヤ構成については全て同一とし、コードの撚り構造:3×0.185+9×0.175(mm)、打込数:30本/50mmとした。
【0048】
乗り心地性の評価は、感応10段階評価により行った。数値が大なるほど結果が良好である。また、トレッド貫通性およびカーカス折り返し端部の亀裂発生の評価については、各タイヤを8本用意して、悪路にて完摩まで走行させ、夫々トレッド貫通カット数と、カーカス折返し端部亀裂の発生の有無を判定することにより、夫々評価した。
これらの結果を下記の表1中に併せて示す。
【0049】
【表1】
【0050】
実施例2、3および従来例4〜6
供試タイヤとして、実施例2、3および従来例4〜6の軽トラック用タイヤを用意して、大曲げ入力時のフィラメント破断率およびカーカス折り返し端部亀裂つながり率について、夫々比較評価した。
【0051】
供試タイヤのタイヤサイズ、リムサイズ等は実施例1等と同様とし、カーカスの補強コードを構成する最外層フィラメントの、ビードフィラーのタイヤ内側部分における撚り角θ0およびベルト層端部とタイヤ最大幅部との略中間点における撚り角θtを、夫々下記の表2中に示すように変動させた。
【0052】
フィラメント破断率については、大曲げ入力条件で1万kmドラム走行させた後、タイヤのカーカスコード10本分を取り出して、破断したフィラメントの本数を数え、コード10本分のフィラメント総数で除したものを百分率表示して、フィラメント破断率として評価した。フィラメント破断率は数値が低いほど良好である。また、カーカス折返し端部亀裂つながり率は、各タイヤを8本試作して、悪路にて完摩まで走行させて評価した。
これらの結果を下記の表2中に併せて示す。
【0053】
【表2】
【0054】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、成型加工性や耐カット性、耐久性を損なうことなく、乗り心地性を向上した空気入りタイヤを実現することができ、また、低内圧走行に伴う素線の座屈を防止して、耐久性に優れた空気入りタイヤを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る空気入りラジアルタイヤの断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る空気入りラジアルタイヤの断面図である。
【図3】撚り機の構成を示す側面断面図である。
【図4】図3に示す撚り機の平面断面図である。
【符号の説明】
1 ビード部
2 ビードコア
3 カーカス
4 ベルト層
5 ビードフィラー
6 トレッド部
8 サイドウォール部
18A〜C 素線
20 コード
22 撚り機
30 回転体
58 送り機構
Claims (7)
- 少なくとも一対のビード部に夫々埋設されたビードコアの周りにタイヤ内側から外側に折り返して係止されたカーカスと、該カーカスの、前記ビードコア間にトロイド状に延在する本体部と、該本体部に連続して設けられ該ビードコアの周りに折り返された巻上部と、の間に配置されるビードフィラーと、該カーカスのクラウン部外周に位置するトレッド部と、該カーカスのサイド部に位置するサイドウォール部と、前記トレッド部の内側に配置された少なくとも1層のベルト層とを備える空気入りタイヤにおいて、
前記カーカスの補強コードを構成するフィラメントのうち、少なくとも最外層フィラメントの、前記ビードフィラーのタイヤ内側部分における、コード軸線方向に対し垂直な方向を基準とする撚り角θ0が、タイヤ赤道面上における、コード軸線方向に対し垂直な方向を基準とする撚り角θcより大であることを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記撚り角θcが30°≦θc≦77°であり、かつ、前記撚り角θ0が78°≦θ0≦90°である請求項1記載の空気入りタイヤ。
- 前記撚り角θcが30°≦θc≦75°であり、かつ、前記撚り角θ0が80°≦θ0≦90°である請求項2記載の空気入りタイヤ。
- 少なくとも一対のビード部に夫々埋設されたビードコアの周りにタイヤ内側から外側に折り返して係止されたカーカスと、該カーカスの、前記ビードコア間にトロイド状に延在する本体部と、該本体部に連続して設けられ該ビードコアの周りに折り返された巻上部と、の間に配置されるビードフィラーと、該カーカスのクラウン部外周に位置するトレッド部と、該カーカスのサイド部に位置するサイドウォール部と、前記トレッド部の内側に配置された少なくとも1層のベルト層とを備える空気入りタイヤにおいて、
前記カーカスの補強コードを構成するフィラメントのうち、少なくとも最外層フィラメントの、前記ビードフィラーのタイヤ内側部分における、コード軸線方向に対し垂直な方向を基準とする撚り角θ0が、前記ベルト層端部とタイヤ最大幅部との略中間点における、コード軸線方向に対し垂直な方向を基準とする撚り角θtより大であることを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記撚り角θtが30°≦θt≦77°であり、かつ、前記撚り角θ0が78°≦θ0≦90°である請求項4記載の空気入りタイヤ。
- 前記撚り角θtが30°≦θt≦75°であり、かつ、前記撚り角θ0が80°≦θ0≦90°である請求項5記載の空気入りタイヤ。
- 重荷重用空気入りラジアルタイヤである請求項1〜6のうちいずれか一項記載の空気入りタイヤ。
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