本発明は、請求項に記載した導電率とBET比表面積を有する着色剤を用いることにより、重合工程を経て得られる黒色トナーが良好な黒色画像を形成できる様にした。
本発明者は、黒色顔料にカーボンブラックを使用すると、カーボンブラックの含有量を増加させるに伴い帯電性能が低下する傾向を有することに着目し、この現象はカーボンブラック等が導電性を有するために発生するものと推測した。すなわち、トナー粒子中に含有されるカーボンブラックでは、摩擦帯電により形成された電荷がカーボンブラックを介して移動する結果、電荷保持性能が低減しているものと推測した。
そこで、本発明者は、着色剤が電荷を移動させない様に絶縁性を付与させることを考え、この様な性質を有する着色剤として、内部に微細孔を有し導電率とBET比表面積の値が特定範囲となる無定形炭素を用いると、カーボンブラックを用いた時に見られた問題を解消するトナーが得られることを見出したのである。
本発明では、着色剤に前述の無定形炭素を含有させることにより、本発明の課題を解消することを見出しているが、これは、本発明で用いた無定形炭素がカーボンブラックの様な炭素粒子間での電荷のジャンピング移動を発生させない構造を有するためと推測される。すなわち、本発明では無定形炭素が鎖状に結合する様な形態をとらないので、カーボンブラックで見られたトンネル効果と呼ばれる炭素粒子を介しての電荷移動が起こらず、トナーの電荷保持性能が向上したものと推測される。
また、本発明では、この無定形炭素は、特に、水系媒体中での重合反応を経て樹脂を形成するトナーに対し、高濃度でムラのない黒色画像を形成することを確認したが、本発明で見出した無定形炭素が、水系媒体中で均一に分散し易い性質を有しているためと推測される。すなわち、無定形炭素は、炭素粒子同士が鎖状に結合せずに炭素粒子1つ1つが独立してトナー粒子中に分散し易い性質をゆうするものと推測される。その結果、無定形炭素粒子はトナー粒子中で均一分散しているため、電荷移動が起こらず電荷保持性能が向上した結果、現像性並びに転写性が向上し、ムラのない高濃度の黒色画像を形成し易いものと推測される。
〈無定形炭素〉
以下、本発明に係るトナーに使用される無定形炭素について詳細に説明する。
本発明に係るトナーに用いられる着色剤は、無定形炭素を含有するものである。ここで、無定形炭素とは、はっきりした結晶状態を示さない構造を有する炭素の単体のことで、具体的には、六方平面格子が乱雑な配列をした小結晶の集合体より構成されている炭素の単体のことをいう。
本発明に使用される無定形炭素は細孔(以下、微細孔ともいう)を有するものである。図1は、本発明に係るトナーの模式図であり、着色剤の様子を拡大したものである。図1に示す様に本発明に係るトナー粒子Tは、樹脂相A中に着色剤相Bと離型剤相Cが分散した構造を有するものである。そして、着色剤相Bの断面を拡大すると着色剤相中には微細な孔D(細孔)が存在する。
本発明に使用される無定形炭素では、特に、直径が0.1〜20nmという微細な孔が着色剤相内に網状に形成されていることが観察される。これは、固体吸着剤に形成される各種の細孔の中でも、ミクロ孔あるいはサブミクロ孔と呼ばれるレベルのものである。
本発明で使用されている無定形炭素にこの様な細孔が存在することは、透過型電子顕微鏡(TEM)により確認することが可能である。使用可能な透過型電子顕微鏡(TEM)は、当業者の間でよく知られた機種で良く、例えば、「LEM−2000型」(トプコン社製)、「H−9000NAR」(日立製作所社製)、「JEM−2000CX」(日本電子社製)等が挙げられる。
また、無定形炭素粒子中に存在する直径0.1〜20nmの微細孔を定量的に測定する方法としては、毛管凝縮理論によるCranston−Inkley法に代表される吸着法により測定される。なお、吸着法による微細孔の測定方法については、真田雄三他編「新版活性炭−基礎と応用」(講談社)の第1章「活性炭の構造」の記載を参照するとよい。また、透過型電子顕微鏡写真で観察される着色剤中の微細孔の大きさをスケールで測定する方法や、X線小角散乱法により測定するものであってもよく、X線小角散乱による測定装置としては、例えば、小角広角X線回折装置 SWXD(リガク社製)等がある。
本発明で着色剤として使用される無定形炭素は、炭素結晶が不規則に配列してなる構造を有するものである。本発明に使用される無定形炭素が炭素結晶より構成されるものであることはX線回折結果から確認される。
本発明に使用されるX線回折装置は、線源としてCuKα線を用いたX線回折スペクトルによるピークの観察により無定形炭素の構造を解析するもので、例えば、強力型全自動X線回折装置MXP18(マックサイエンス社製)等が挙げられる。本発明で使用される無定形炭素は、2θ(deg)=20〜30°の位置に緩やかなピーク又はショルダーを有し、このことから炭素結晶が不規則に配列した構造を有することが確認される。
本発明に使用される無定形炭素は、主に、オガ屑や木材チップなどの木質系材料、ヤシ殻、石炭等の有機物を原料とする。そして、これらを炭化し賦活する工程を経て細孔を有する無定形炭素を作製する。以下に、無定形炭素の製造例を説明するが、本発明に使用可能な無定形炭素の作製方法はこれに限定されるものではない。
無定形炭素の製造方法は、最初に原料の炭化を行う。これは、有機物を不活性ガス雰囲気中で400〜700℃で加熱して原料中の揮発成分の一部分を除去する工程で、有機物中の残留揮発分の量をおおよその目安として通常20〜35質量%程度になる様にする。
図2は、代表的な炭化装置の一例である撹拌流動炭化炉の概略図で、供給した原料と空気とを混合して流動化させた状態で加熱して炭化を行う。撹拌流動炭化炉1は、ステンレス製の炉本体10中心にパドル型撹拌機13が設けられ、炉本体10内に供給された原料を撹拌する。原料はホッパ11よりスクリュフィーダ12で連続的に炉本体10内に供給される。
試料供給口14の直下には目皿板15が置かれ、これを通って空気が炉本体10内に供給されて原料を流動化させる。流動化速度や前述の試料供給速度は炉内温度に応じて自動的に制御される。具体的には、炉本体10内には図示しないCA熱電対等の温度検知手段により供給口14から目皿板15のあたりで形成される流動層中心部における温度を検知し、その検知結果に基づいてスクリューフィーダ12の回転速度や空気の供給量が制御される。炉本体10内は予熱ヒータで加熱される。
炭化は、前述した様に、炉本体10内に供給された木質や石炭などの有機物の粉砕物に、空気を吹き込み、原料を流動させながら予熱ヒータで加熱し、流動層内部の温度が所定温度になると、予熱ヒータを止めても酸化熱により炭化が進み、原料を炉本体10内に連続的に供給して炭化を行うものである。生成された炭化物は、オーバフロー管16より連続的に取り出す。廃棄は集塵機17で集塵された後、冷却器18で冷却され煙突より排気される。
次に、炭化物に賦活を行って炭化物内に微細な細孔を形成する。この工程では、600〜1000℃の温度下で炭化物を水蒸気、炭酸ガス、空気と反応させて、炭化物中の残留揮発成分や炭素原子をガス化させる。その結果、炭化物中に直径1〜20nmの微細な孔を形成させて、本発明に使用可能な無定形炭素を作製する。
図3は、代表的な賦活装置の一例である外熱型流動賦活炉の概略図で、供給された炭化物を分級した後、賦活ガスの存在下で賦活して無定形炭素を作製するものである。外熱型流動賦活炉2は、透明石英製の炉本体21に設けられた原料投入口22より炭化物を供給する。この装置では原料の連続投入も可能である。炉本体21内の中央部には分散板23が設けられている。炉本体21の周囲にはヒータ24が設けられて賦活を行う際に必要な熱を供給する。また、炉本体21内にはポンプ25より窒素ガスが供給され、炭化物を流動状態にするとともに、炉本体内が所定の温度に到達すると、窒素ガスにかわり加熱水蒸気等の賦活ガスが供給される。なお、賦活ガスはスーパヒータ29で加熱されて炉本体21内に供給される。
なお、本発明に使用される無定形炭素の具体的な作製方法は、独立行政法人 産業技術総合研究所 北海道センター ホームページに掲載される「各種材料からの高級活性炭の製造方法とその応用」(http://unit.aist.go.jp/hokkaido/technote/TN42.htm)に記載の内容を参照するとよい。
本発明に使用される無定形炭素は、その導電率の値が1.0×10-1〜1.0×10-6S/cmである。ここで、導電率とは物体の導電性、すなわち電気の流れ易さを表す物理量のことで、電気伝導率、電導率、または伝導度とも呼ばれ、抵抗率の逆数で定義されるものである。すなわち、物体の抵抗率をρとすると導電率kはk=1/ρで表される。
本発明では、導電率が前述した範囲であり、かつ、BET比表面積が後述する範囲となる無定形炭素を着色剤として使用すると、良好な帯電保持性能を有するトナーが得られることを見出している。
本発明では、前述した導電率を有する無定形炭素を着色剤として使用することにより、トナーの帯電保持性能が環境に影響なく維持されることを見出している。また、本発明では、トナー中に含有させる着色剤の量を従来よりも増量することも可能なので、トナー画像中の黒色濃度を高くする上で有効である。特に、フルカラー画像中の黒色の画像を目立たせる上で有効である。
本発明に使用される無定形炭素の導電率の測定方法は以下の様にして測定する。
図4は、無定形炭素の導電率の測定が可能な導電率測定装置の一例を示す概略図であり、四端子導電率測定で用いられる測定装置である。無定形炭素の導電率は、二枚の電極の間に無定形炭素を挟み込み、万能試験機で圧力をかけながら測定するもので、電極間に電流を流し、電圧降下から電気抵抗を求めることにより算出される。
すなわち、この測定装置4では、粉体状態にある無定形炭素を4個の電極41、42、43、44を具備した一定体積の円筒容器40内に充填する。銅板製の電極41、42は、円筒容器40内を摺動可能に配設され、かつ、直流電源45及び直流計46と通電コード47で電気的に接続されている。また、電極43と44は銅線で形成され、上記電極41と42の間に存在して円筒容器40内を変位可能に配設され、電圧計48を介装した通電コード49で電気的に接続されている。
そして、上記両端の電極41と42を近接するように摺動させることで一定の圧力をかけて粉体を圧縮させ、これによって無定形炭素粉体同士を接触させ、電極41と42に電流を流し、電圧降下から電気抵抗を求める。
ここで、試料の厚み(電極43と44の距離)をx(cm)、電極41と42(あるいは円筒容器40中空部)の面積をy(cm2)、電極間に印加される電圧をE(V)、電流値をI(A)とすると、無定形炭素の導電率は以下の式から算出される。すなわち、
電気抵抗R(Ω)=電圧E(V)/印加電流I(A)
導電率k(S/cm)=x(cm)/〔電気抵抗R(Ω)×y(cm2)〕
測定時に加える圧力は、特に限定されるものではないがだいたいの目安として1〜20MPaである。
本発明に使用される無定形炭素の導電率を測定する装置としては、任意の圧力下で粉体の抵抗率を測定することが可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、粉体抵抗測定システム MCP−PD51型(ダイアインスツルメンツ社製)や、通産省工業技術院技術報告 昭和60年度,61−3(1985)に記載の四端子導電率測定装置、特開2003−149277号公報に開示されている導電率測定装置などが挙げられる。測定試料の作製方法は通常の導電率測定方法で行われ、具体的な試料使用量や測定条件は、上記各測定装置の取扱説明書に記載されている内容に基づいて測定する。
なお、本発明では、MCP−PD51型(ダイアインスツルメンツ社製)を使用し、導電率測定時に5MPaの加圧を行って導電率を測定している。
本発明に使用される無定形炭素は、そのBET比表面積の値が900〜2000m2/gである。本発明では、BET比表面積が上記範囲の値であり、かつ、導電率の値が前述した範囲の無定形炭素を含有する着色剤を使用することにより、良好な帯電保持性能が発現されるおとを見出した。BET比表面積の値がこの範囲の時に良好な帯電保持性能を発現する様になった理由は、おそらく、上記BET比表面積の時にトナー粒子内の残存水分などの帯電保持性能を阻害させる因子が無定形炭素粒子の占有自由体積領域に吸着される様になり、その結果安定した帯電保持性能を発現できる様になったものと推測される。
したがって、上記無定形炭素を着色剤として使用することにより、特に水系媒体中での粒子作製工程を有するトナーで安定した帯電保持性能を発現させる上で有効である。
また、本発明ではトナー粒子からの着色剤の遊離を発生させないという効果が奏されるものであるが、これは、上記BET比表面積を有する無定形炭素を含有させることにより、着色剤と樹脂との間での接着力が向上して着色剤の遊離が発生しなくなったものと推測される。おそらく、残留水分が無定形炭素に吸着されることにより水分が樹脂との接着剤的な作用を発現して接着力を向上させたものと推測されるが明らかではない。
BET比表面積とは、ガス吸着法により粒子の比表面積を算出する測定方法である。ガス吸着法による粒子の比表面積算出は、窒素ガスの様な吸着占有面積が分かっているガス分子を粒子に吸着させ、その吸着量から粒子の比表面積を算出する方法である。BET比表面積は、固体表面に直接吸着したガス分子の量(単分子層吸着量)を正確に算出するためのもので、下記に示すBETの式と呼ばれる数式を用いて算出される。
下記式に示す様に、BETの式は一定温度で吸着平衡状態にある時の吸着平衡圧Pとその圧力における吸着量Vの関係を示すもので以下の様に表される。
式1:
P/V(P0−P)=(1/VmC)+((C−1)/VmC)(P/P0)
ただし、P0 :飽和蒸気圧
Vm:単分子層吸着量、気体分子が固体表面で単分子層を形成した時の
吸着量
C :吸着熱などに関するパラメータ(>0)
そして、上式より単分子吸着量Vmを算出し、これにガス分子1個の占める断面積を掛けることにより、粒子の表面積を求めることができる。
BET比表面積の具体的な測定方法としては、例えば、サンプルを温度50℃で10時間の脱気を行って前処理をした後、窒素ガスを吸着ガスとして使用してガス吸着量測定装置にて測定を行う。測定を行う全自動ガス吸着量測定装置としては、オートソーブ1(湯浅アイオニクス社製)やフローソーブ2300(島津製作所社製)が挙げられる。これらの測定装置では、窒素吸着法の1点法あるいは多点法によりBET比表面積を求める。
また、本発明に使用される無定形炭素の構造を把握する手段の1つとしてDBP吸油量がある。これは、JIS K 6221やASTM D2414−6TTなどの規格に準拠するもので、無定形炭素100gに吸着されるフタル酸ジブチル(以下、DBPともいう)の量を示すものである。この値から無定形炭素を構成する炭素原子が鎖状に連係している度合い(ストラクチャともいう)の大小を判断する指標の1つである。この値から本発明に使用される無定形炭素の絶縁性を把握することが可能である。
無定形炭素のDBP吸油量は、以下の手順で測定される。先ず、20gの無定形炭素をブラストグラフの中にいれる。これにDBP(ジブチルフタレート)を滴下しながらニーダーで練る。このニーダーにはトルク測定機がついたものでなければならない。DBPの添加量につれてトルク値は上昇していき、最大のトルク値になった時のDBP量を読み取り、無定形炭素100gに対するDBP値に換算する。
吸油量の測定により、無定形炭素を構成する炭素の連鎖結合状態を把握することが可能である。すなわち、本発明に使用される無定形炭素の吸油量を測定すると、カーボンブラックよりも大幅に少ない値となることが確認される。すなわち、吸油量の測定はフタル酸ジブチルの添加により、炭素原子の連鎖結合状態を検知するもので、本発明に使用される無定形炭素では炭素原子の連鎖結合が殆ど発達していない傾向にあることが確認される。この傾向から、本発明に使用される無定形炭素がカーボンブラックの様な導電性を有していないことがうかがわれ、電荷保持性能が従来の黒色トナーよりも優れていることが確認される。
次に、本発明に係るトナーの物性について説明する。
本発明では、導電率が1.0×10-1〜1.0×10-6S/cmで、かつ、BET比表面積が900〜2000m2/gである上記無定形炭素を着色剤として用いたトナーが良好な電荷保持性能を有することを見出している。
本発明に係るトナーの電荷保持性能を評価する方法としては、帯電量(μC/g)及び低帯電性トナー量(質量%)の測定が挙げられる。これら帯電量と低帯電性トナー量の測定は以下の様に求める。
先ず、トナーとキャリアとを組み合わせて二成分系現像剤を調製する。現像剤は、トナー/キャリアの質量比が5/95になる様に調製するもので、例えば、これらをそれぞれ50mlのポリ瓶に入れて回転架台により120rpmで30分間回転させて上記現像剤を調製する。この様に調製した現像剤を、精密天秤で1g計量し、図5に示す装置を用いて帯電量と低帯電性トナー量を求める。図5は、トナーの帯電量と低帯電性トナー量を測定するのに使用される装置の概略図である。
図5に示す装置を用いて帯電量(μC/g)を測定する場合、上記の様に計量した現像剤を導電性スリーブ51の表面全体に均一になる様に載せ、導電性スリーブ51内に設けられたマグネットロール52の回転数を100rpmに設定する。バイアス電源53よりバイアス電圧をトナーの帯電電位と逆に3kV印加して30秒間上記導電性スリーブ51を回転させて、導電性スリーブ51を停止させた時点での円筒電極54における電位(Vm)を読み取る。同時に、この円筒電極54に付着したトナーの質量を精密天秤で計量し、これらの結果からトナーの平均帯電量(μC/g)を求める。
また、図5に示す装置を用いてトナーの低帯電性トナー量を測定する方法は、導電性スリーブ51にバイアス電圧を印加せずにグランドに落とし、この状態で上記と同様にして測定を行い、導電性スリーブ51上に載せた全トナー量に対して、どれだけの量のトナーが円筒電極54に飛ばされたかを測定して、トナーの低帯電性トナー量(質量%)を求める。
以上の様に、本発明に係るトナーの摩擦帯電量を測定する例として、トナーとキャリアからなる二成分系現像剤を用いた場合の帯電量測定方法を説明したが、本発明に係るトナーを二成分系現像剤として使用する場合に好ましく使用されるキャリアの例については後述する。
本発明に係るトナーは、反応性ポリエステル樹脂、アミン類、着色剤、及び溶媒とを含有する液滴を水系媒体中に分散させておき、この液滴中で付加重合反応を行って樹脂を形成するものである。
本発明では、重合トナーに代表される含水量が比較的多いトナーで従来より懸念されていた高温高湿環境下での水分吸着などによる帯電性低下を、着色剤に特定の無定形炭素を使用することで解消することを可能にした。これは、着色剤として使用される無定形炭素が特定範囲の導電率を有することにより、トナーが適度に電荷のリークを伴って帯電が行われてトナー中での電荷の蓄積が効率よく行われるためと推測される。
また、本発明に係るトナーは、トナー粒子からの着色剤の脱離が起こりにくくなっているが、これは、着色剤である無定形炭素が前述したBET比表面積を有することにより、液滴中に反応性ポリエステル樹脂、アミン類と着色剤とを分散させた時に反応性ポリエステル樹脂が着色剤に吸着された状態を形成するためと推測される。すなわち、反応系中では反応性ポリエステル樹脂が着色剤に吸着された状態で付加重合する結果、形成された結着樹脂は着色剤が脱離しにくい構造を有しているものと推測される。
着色剤である無定形炭素を分散させる方法としては、例えば、サンドグラインダなどの高剪断エネルギーを付与する装置を用いて、本発明に係る無定形炭素を溶媒に溶解された反応性ポリエステル樹脂、アミン類中に添加することにより、トナー粒子中に100nm程度の着色剤領域を形成することが可能である。
以下に本発明のトナーの製造方法について説明する。
本発明のトナーは、着色剤として上記のような無定形炭素を含有し、かつ水系媒体中での重合反応を経て作製されたケミカルトナーであることが必要であり、好ましくは、水系媒体中に反応性ポリエステル樹脂、アミン類、及び、着色剤とを溶媒中に含有させた液滴を形成し、該液滴中で反応性ポリエステル樹脂にアミン類を付加重合させた後、該液滴より溶媒を除去する工程を経て作製されたものである。
反応性ポリエステル樹脂としては、溶融粘度の低いポリエステルに反応性を有する官能基を導入したものを用いる。本発明の反応性ポリエステル樹脂としては、特に、イソシアネート基を有するポリエステル樹脂を好ましく用いることができる。イソシアネート基を有するポリエステル樹脂は、アミン類との反応により、ウレア結合を生成し、ポリマー鎖の伸長反応、架橋反応を行うことができる。イソシアネート基を有するポリエステル樹脂としては、多価アルコールと多価カルボン酸の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルをさらに多価イソシアネートと反応させた物などが挙げられる。上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものはアルコール性水酸基である。
多価アルコールとしては、2価および3価以上のアルコールが挙げられ、2価アルコール単独、または2価アルコールと少量の3価アルコールの混合物が好ましい。2価アルコールとしては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上の多価アルコールとしては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上の多価フェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
多価カルボン酸としては、2価および3価以上のカルボン酸が挙げられ、2価カルボン酸単独、および2価カルボン酸と少量の3価カルボン酸の混合物が好ましい。2価カルボン酸としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。3価以上の多価カルボン酸としては、炭素数9〜20の芳香族多価カルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、多価カルボン酸としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いて多価アルコールと反応させてもよい。
多価アルコールと多価カルボン酸の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
多価イソシアネートとしては、脂肪族多価イソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式多価イソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記多価イソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。
前記ポリエステルと多価イソシアネートの比率は、イソシアネート基[NCO]と、ポリエステルの水酸基[OH]との当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えるとトナーの低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、アミン類との反応後のポリエステル中のウレア含量が低くなり、トナーの耐ホットオフセット性が悪化する。末端にイソシアネート基を有する反応性ポリエステル樹脂中の多価イソシアネート構成成分の含有量は、通常0.5〜40質量%、好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは2〜20質量%である。0.5質量%未満では、トナーの耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40質量%を超えるとトナー低温定着性が悪化する。イソシアネート基を有する反応性ポリエステル樹脂中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、アミン類との反応後のポリエステルの分子量が低くなり、トナーの耐ホットオフセット性が悪化する。
反応性ポリエステル樹脂の製造は、以下のようにして行われる。多価アルコールと多価カルボン酸とを、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を溜去して、水酸基を有するポリエステルを得る。次いで40〜140℃にて、これに多価イソシアネートを反応させ、イソシアネート基を有する反応性ポリエステル樹脂を得る。
アミン類としては、2価アミン、3価以上の多価アミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸、およびこれらの化合物のアミノ基をブロックしたものなどが挙げられる。2価アミンとしては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4′ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4′−ジアミノ−3,3′ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上の多価アミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコールとしては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタンとしては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。また、上記アミン類のアミノ基をブロックしたものとしては、上記アミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。これらアミン類のうち好ましいものは、2価アミンおよび2価アミンと少量の3価アミンの混合物である。
反応性ポリエステル樹脂とアミン類との比率は、反応性ポリエステル樹脂中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2を超える、または1/2未満では、イソシアネート基とアミノ基とが反応して得られるウレア結合で変性されたポリエステル(以下、「ウレア変性ポリエステル」と称す。)の分子量が低くなり、トナーの耐ホットオフセット性が悪化する。尚、ウレア変性ポリエステル中には、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、トナーの耐ホットオフセット性が悪化する。
反応性ポリエステル樹脂とアミン類との反応には、必要により伸長停止剤を用いてウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。伸長停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。ウレア変性ポリエステルは、ワンショット法、プレポリマー法により製造される。ウレア変性ポリエステルの重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。また、ウレア変性ポリエステルの数平均分子量は、後述する変性されていないポリエステルを用いる場合は特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量を得るために都合の良い数平均分子量でよい。ウレア変性ポリエステル単独の場合は、数平均分子量は、通常20000以下、好ましくは1000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えるとトナーの低温定着性およびフルカラー画像形成に用いた場合の光沢性が悪化する。
トナーバインダー成分としては、上記のウレア変性ポリエステルを単独で使用するだけでなく、このウレア変性ポリエステルと共に、変性されていないポリエステル(以下、「未変性ポリエステル」と称す。)を含有させることもできる。未変性ポリエステルを併用することで、トナーの低温定着性およびフルカラー画像形成に用いた場合の光沢性が向上し、単独使用より好ましい。未変性ポリエステルとしては、先に示した反応性ポリエステル樹脂のポリエステル成分と同様、多価アルコールと多価カルボン酸との重縮合物などが挙げられ、好ましいものも反応性ポリエステル樹脂の場合と同様である。また、この他ウレア結合以外の化学結合で変性されたポリエステル(以下、「他の変性ポリエステル」と称す。)を含んでも良く、例えばウレタン結合で変性されたポリエステル等を含んでも良い。ウレア変性ポリエステルと未変性あるいは他の変性ポリエステルは、少なくとも一部が相溶していることがトナーの低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、両者のポリエステル成分は類似の組成であることが好ましい。
上記トナーバインダーのガラス転移点(Tg)は通常40〜70℃、好ましくは50〜65℃である。40℃未満ではトナーの耐熱保存性が悪化し、70℃を超えると低温定着性が不十分となる。尚、本発明で用いるトナーはウレア変性ポリエステルを含有するため、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くてもトナーの耐熱保存性が良好な傾向を示す。トナーバインダーの貯蔵弾性率としては、測定周波数20Hzにおいて0.1N/cm2となる温度(TG’)が、通常100℃以上、好ましくは110〜200℃である。100℃未満ではトナーの耐ホットオフセット性が悪化する。
次に、水系媒体中でのトナー製造法について説明する。
本発明に係るトナーは、少なくとも反応性ポリエステル樹脂と着色剤からなるトナー組成物を、有機溶剤に溶解または分散させ、該溶解物または分散物中で該反応性ポリエステル樹脂に付加重合反応をさせた後、溶剤を除去することにより得ることができる。少なくとも反応性ポリエステル樹脂と着色剤からなるトナー組成物を溶解または分散させる有機溶剤は、沸点が100℃未満の揮発性であることが、後の溶剤除去が容易になる点から好ましい。このような有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。反応性ポリエステル樹脂100部に対する溶剤の使用量は、通常0〜300部、好ましくは0〜100部、さらに好ましくは25〜70部である。
次に、用いる水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などが挙げられる。トナー組成物100質量部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000質量部、好ましくは100〜1000質量部である。50質量部未満ではトナー組成物の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000質量部を超えると経済的でない。
上記水系媒体中に、トナー組成物の溶解物または分散物を分散する方法としては、無機分散剤を用いることができる。無機分散剤としては、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ハイドロキシアパタイトなどが用いられる。分散剤を用いたほうが、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。また、トナー組成物が含まれる油性相を水系媒体中に乳化、分散させるために、必要に応じて、界面活性剤等を用いることもできる。界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸、及び、その金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。また、カチオン性界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族1級、2級もしくは2級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩などが挙げられる。
また、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエ一テル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの窒素原子、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。なお、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。分散剤を使用した場合には、該分散剤がトナー粒子表面に残存したままとすることもできるが、伸長および/または架橋反応後、洗浄除去するほうがトナーの帯電面から好ましい。
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは40〜98℃である。高温なほうが、ポリエステルプレポリマーを含むトナー組成物からなる分散体の粘度が低く、分散が容易な点で好ましい。
反応性ポリエステル樹脂からウレア変性ポリエステルを合成する工程は、水系媒体中にトナー組成物を分散する前にアミン類を加えて反応させても良いし、水系媒体中にトナー組成物を分散した後にアミン類を加えて粒子界面から反応を起こしても良い。後者の場合、製造されるトナー粒子表面に優先的にウレア変性ポリエステルが生成し、粒子内部で濃度勾配を設けることもできる。上記重付加反応に要する時間は、反応性ポリエステル樹脂の有するイソシアネート基構造と、加えたアミン類との反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
得られた乳化分散体から有機溶剤を除去するためには、系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶剤を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。あるいはまた、乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の非水溶性有機溶剤を完全に除去してトナー微粒子を形成し、合せて水系分散剤を蒸発除去することも可能である。乳化分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分目的とする品質が得られる。
乳化分散時のトナー粒度分布が広く、その粒度分布を保って洗浄、乾燥処理が行われた場合、所望の粒度分布に分級して粒度分布を整えることができる。分級操作は、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことができる。もちろん乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行っても良いが、液体中で行うことが効率の面で好ましい。得られた不要の微粒子、または粗粒子は、再び混練工程に戻して粒子の形成に用いることができる。その際微粒子、または粗粒子はウェットの状態でも構わない。さらに、用いた分散剤は得られた分散液からできるだけ取り除くことが好ましいが、先に述べた分級操作と同時に行うのが好ましい。
得られた乾燥後のトナーの粉体と離型剤微粒子、帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子、着色剤微粒子などの異種粒子とともに混合したり、混合粉体に機械的衝撃力を与えることによって表面で固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などがあげられる。
本発明に係るトナーを用いた現像剤による画像形成方法としては、トナーとキャリアからなる二成分系現像剤を用いた画像形成方法が代表的な実施形態であるが、これに限定されるものではなく、例えば、一成分系現像剤を用いた画像形成方法などの各種現像方法にも好適に使用することが可能である。以下、本発明に係るトナーを二成分系現像剤として使用する場合に好ましく使用されるキャリアについて説明する。
本発明に係るトナーとともに好ましく使用されるキャリアは、例えば、体積平均粒径が25〜50μmであり、また、CV値が20%以下のものが挙げられる。
ここで、キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアのいずれをも使用することが可能であるが、小粒径化されたキャリアで適度な磁化を維持するために、磁性粒子に樹脂被覆したコーティングキャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂あるいはフッ素含有重合体系樹脂などが好ましい。その中でも、スチレンアクリル樹脂、シリコーン樹脂が特に好ましい。磁性粒子に樹脂をコーティングする方法としては、溶媒に樹脂を溶解した溶液を噴霧乾燥法で被覆する方法や乾式で機械的衝撃力を付与して被覆する方法などが挙げられる。
また、磁性粒子の種類は特に限定されるものではないが、銅、亜鉛、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ニッケルなどを使用したフェライトが好ましい。その中でも、リチウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を使用した軽金属フェライトが特に好ましいものである。フェライトは比重が軽いため、トナーに対するストレスを低減させることが可能で、現像剤の寿命を長期に保たせるという視点から好ましいものである。
本発明に係るトナーと使用されるキャリアの物性は、例えば、平均磁気力として、飽和磁化が30〜60Am2/kg、残留磁化が5.0Am2/kg以下のものを用いることが好ましい。この様な平均磁気力を有するキャリアを用いることにより、キャリアが部分的に凝集することが防止され、現像剤搬送部材の表面に現像剤が均一分散されて、濃度むらがなく、均一できめの細かいトナー画像を形成する現像が可能になる。
なお、キャリアの磁気力は以下の様にして測定することが可能である。すなわち、測定装置として、例えば、高感度型振動試料型磁力計VSM−P7−15型(東英工業社製)を利用し、測定磁場を5KOe、試料の量を20〜30mgとして測定する。
以上の二成分系現像剤中におけるトナーの含有比率は5〜10質量%であることが好ましい。トナーの含有比率が5質量%〜10質量%の時に、高い画像濃度が得られるとともに、トナー飛散などの問題を発生させるおそれがないことが確認されている。
本発明に係るトナーが使用される画像形成装置は、モノクロ画像形成用、フルカラー画像形成用のいずれでもよいが、前述した様に、本発明に係るトナーがフルカラーの画像形成を行った時にメリハリのある黒色画像を形成することが可能なので、フルカラーの画像形成装置に使用することが好ましい。
図6は、本発明に係るトナーが使用可能な画像形成装置の一例である中間転写ベルトを有する画像形成装置の概略図である。また、図7は、図6の画像形成装置に使用される現像装置を拡大した概略図である。画像形成装置6は、4つのトナー像形成ユニットの各々により形成される各色トナー像を中間転写体に順次に転写することにより、当該中間転写体上で各色トナー像を重ね合わせ、ここに形成されたカラートナー像(一次転写トナー像)を、例えば転写紙などの画像形成支持体である記録部材上に一括して転写することにより、記録部材上にカラートナー像(二次転写トナー像)を形成し、定着装置において定着することにより可視画像を形成するものである。
画像形成装置6は、中間転写体である無端状の中間転写ベルト30を有し、この中間転写ベルト30におけるトナー像形成ユニット配置領域において、中間転写ベルト30の移動方向に対して、4つのトナー像形成ユニット35Y(イエロー用)、35M(マゼンタ用)、35C(シアン用)および35K(ブラック用)がこの順に配置されている。
中間転写ベルト30は、トナー像形成ユニット35Y、35M、35Cおよび35Kの各々に対応して設けられた一次転写ローラ31によって、トナー像形成ユニット35Y、35M、35C、35Kにおける静電潜像担持体36Y、36M、36C、36Kの各々に対接されながら循環移動される様に、例えば、駆動ローラ32、テンションローラ33及び従動ローラ34よりなる支持ローラ群に張架された状態で配設されている。
第1のトナー像形成ユニット35Yにおいては、図7に示す様に、回転可能なドラム状の像担持体36を有し、この像担持体36の外周面領域で、像担持体36の回転方向に対して、帯電手段37、画像書き込み手段である露光手段38、イエロートナーを含む現像剤により現像を行う現像装置39とが動作順に並ぶ様に配設されている。
像担持体36の回転方向における現像領域Pより下流の位置に、適宜の転写電界を作用させて、像担持体36上に形成されたトナー像を中間転写ベルト30に転写する一次転写ローラ31が設けられている。そして、像担持体36の回転方向における一次転写領域T1Yより下流の位置に、像担持体クリーニング装置140が配置されている。
像担持体36は、ドラム状の金属基体36aの外周面に感光層36bを形成してなるもので、中間転写ベルト30の幅方向(図7において、紙面に対して垂直な方向)に伸びるよう配設されている。感光層36bは、例えば、無機感光層、有機光導電性化合物よりなる有機感光層などにより構成される。
帯電手段37は、例えば、スコロトロン帯電器よりなり、像担持体36の回転軸方向に伸びるよう、像担持体36と対向して配置されている。
露光手段38は、デジタル化された画像データを光信号に変換して像担持体36を露光するデジタル光学系、例えば、レーザ照射装置により構成されており、像担持体36の表面に対して選択的に照射されることにより、像担持体36上に静電潜像を形成させる。
現像装置39は、像担持体36と現像領域Pにおいて最小離間距離Dsdを介して対向するよう配置された現像剤搬送部材である現像スリーブ39aを有し、現像スリーブ39aの内部には、例えば、複数の磁極を有する柱状の複数の磁石体からなる現像マグネット39bが固定して配設されているとともに、現像バイアス電圧を印加させる現像バイアス電源39dが接続されている。
像担持体クリーニング装置140は、先端エッジが像担持体36の表面に当接する状態で、像担持体36の軸方向に伸びるよう配置された弾性体よりなる板状の像担持体クリーニングブレード140aを有するブレードクリーニング機構を備えている。
当該像担持体クリーニング装置140では、図7に示す様に、像担持体クリーニングブレード140aにより掻き取られた像担持体36上の未転写トナーを回収ローラ140bによって回収し、さらに、図示していないが、回収したトナーを現像装置39に搬送するトナーリサイクル機構を有する構成としてもよい。
他のトナー画像形成ユニット35M、35C及び35Kの各々も、前述したイエロートナー像に係る第1のトナー像形成ユニット35Yと同様の構成であり、それぞれ、マゼンタトナー、シアントナーおよびブラックトナーを含む現像剤により現像を行う現像装置39と、一次転写ローラ31と、像担持体クリーニング装置140とが、像担持体36の回転方向に対して動作順に並ぶよう配置されている。
中間転写ベルト30の移動方向におけるトナー像形成ユニット配置領域より下流側の位置には、二次転写手段である二次転写ローラ148が中間転写ベルト30を介して駆動ローラ32に押圧されて二次転写領域T2を形成するよう設けられている。二次転写ローラ148は、接続されたバイアス電圧印加手段149により、適宜の転写バイアス電圧が印加され、中間転写ベルト30上の一次転写トナー像を、タイミングローラ150によりこのトナー像と同期がとられた状態で搬送路151に沿って搬送されてきた記録部材S上に転写する、接触転写方式の二次転写機構が構成されている。
中間転写ベルト30の移動方向における二次転写領域T2より下流側の位置に、先端エッジが中間転写ベルト30の表面に当接する状態で、中間転写ベルト30の幅方向に伸びるよう配置された弾性体よりなる板状の中間転写体クリーニングブレード153を有するブレードクリーニング機構を備えた中間転写体クリーニング装置152が配設されている。
搬送路151における記録部材Sの搬送方向において、二次転写領域T2の下流の位置に、定着装置141が配設されている。定着装置141は、内部に加熱源143を有する加熱ローラ142と、加熱ローラ142と平行に伸びるよう配置された定着ローラ144と、加熱ローラ142および定着ローラ144に掛け渡された無端状の定着ベルト145と、定着ベルト145を介して定着ローラ144を加圧させて、定着ベルト145との間に定着ニップ部を形成する様に加圧ローラ146を配設している。なお、加圧ローラ146の内部には、加熱源147が配置されている。
また、図6中の154は、記録部材Sを載置する給紙カセット、また、155は、給紙カセット154に載置された記録部材Sを搬送路151に供給する給紙ローラである。
図6に示す構成の画像形成装置で行われる画像形成について説明する。最初に、トナー像形成ユニット35Yでは、例えば、図7で述べた様に、時計回り方向に回転する像担持体36の表面が帯電手段37により所定の極性に順次帯電され、この状態で像担持体36表面に露光手段38により選択的に光が照射されて、照射箇所(露光領域)の電位が低下することにより、原稿画像に対応したドットパターンよりなる静電潜像が形成される。
この様に形成された静電潜像は、下記の現像条件下で現像される。すなわち、現像装置39を構成する現像スリーブ39aは、像担持体36と同方向(図7で時計周り方向)に回転駆動される。すなわち、現像領域Pでは、現像スリーブ39aの表面の移動方向が、像担持体36の表面の移動方向と逆方向となるように回転駆動する。
現像スリーブ39aの表面に対し、現像スリーブ39aに接続した現像バイアス電源39dより交流電圧あるいは交流電圧に直流電圧を重畳させた現像バイアス電圧が印加され、現像領域Pに振動電界を作用させた状態で現像剤が現像領域Pに搬送される。ここで、現像剤の搬送量は、磁性ブレード39cによって規制される。そして、現像領域Pでは、現像スリーブ39aの表面に形成された現像剤層が、像担持体36の表面に対して柔らかな接触状態を形成するとともに、現像スリーブ39a上のトナーは、振動電界の作用によって飛翔して像担持体36上に付着する。この様にして、像担持体36上にトナー像が形成される。
さらに、各トナー像形成ユニット35M、35Cおよび35Kにおいても、上述した内容と同様の現像動作が行われて、各色のトナー像が形成される。
トナー像形成ユニット35Y、35M、35Cおよび35Kの各々において形成された各色のトナー像は、それぞれの一次転写領域T1Y、T1M、T1CおよびT1Kにおいて中間転写ベルト30上に順次に一次転写されて、中間転写ベルト30上で各色のトナー像が重ね合わせられることにより一次転写トナー像が形成され、この一次転写トナー像は、中間転写ベルト30に担持されたまま二次転写領域T2へと搬送され、二次転写領域T2において、二次転写ローラ148と駆動ローラ32とにより形成される転写電界の作用により、中間転写ベルト30に担持された一次転写トナー像と同期がとられた状態で搬送路に沿って搬送されてきた記録部材S上に二次転写されて二次転写トナー像が形成される。その後、定着装置141により熱定着されて記録部材S上に可視画像が形成される。
一方、トナー像形成ユニット35Yでは、一次転写領域T1Yを通過した像担持体36Y上に残留する未転写トナーが像担持体クリーニング装置140により除去、回収され、回収ローラ140bを含むトナーリサイクル機構により現像装置39に搬送されて再利用される。この動作は、各トナー像形成ユニット35M、35Cおよび35Kでも同様に行われる。
また、二次転写領域T2を通過した中間転写ベルト30上に残留する未転写トナーは、中間転写体クリーニング装置152における中間転写体クリーニングブレード153により機械的に除去される。
本発明に係るトナーを用いた画像形成方法に使用可能な画像形成装置としては、図6及び7に示した構成のものに限定されるものではなく、例えば、下記に示す様な構成の画像形成装置を利用することも可能である。
図8は、本発明に係るトナーを用いた画像形成装置の他の実施形態の概略を示す模式図である。この画像形成装置は、記録部材に画像を形成する画像形成装置本体60と、この画像形成装置本体60の上部に設けられた原稿の画像を読み取るための画像読取部631とにより構成されている。
画像形成装置本体60は、図8で時計周り方向(矢印方向)に回転する像担持体601を有し、像担持体601の外周面領域に像担持体601表面を所定の電位に均一帯電する帯電手段61、一様に帯電された像担持体601に対し、形成すべき画像情報に基づいてレーザービームにより走査露光を行って像担持体601表面に静電荷像を形成する露光手段であるレーザー装置63、像担持体601表面に形成された静電荷像を現像してトナー像を形成する、像担持体601の回転方向に沿って配設された現像装置65C、65M、65Y、65K、現像装置65C、65M、65Y、65Kの各々により形成されたトナー像を記録部材に転写する転写領域T3を形成する転写ドラム66が、像担持体601の回転方向に沿ってこの順番で配設されている。
現像装置65C、65M、65Y、65Kは、二成分現像方式のものとされ、各現像装置下部には、トナー濃度を一定に保つためにトナー濃度を検出するATDC(Auto Toner Density Control)センサ(図示せず)が設けられている。また、62は像担持体601上に残留した残留トナーを除去するクリーニング手段、64は像担持体601上の残留電荷を消去するメインイレーサ、662は像担持体601及び転写フィルム661を回転駆動させる駆動源である。
転写ドラム66の外周面上には、図8で反時計周り方向(矢印方向)に回転駆動する無端状の転写フィルム661が配設され、転写フィルム661を挟んで対向した位置に転写フィルム661の外表面に記録部材を静電的に吸着保持させる静電吸着手段71と吸着ローラ67、転写フィルム661を挟んで像担持体601と対向する転写手段70、転写フィルム661表面から記録部材を分離させる一対の分離手段76、転写フィルム661外表面に付着したトナー等を除去するファーブラシ74を備えたクリーニング手段75、転写フィルム661に残留した残留電荷を除去する除電手段73とが、転写フィルム661の回転方向に沿ってこの順番に配設されている。また、72は、転写フィルム661をその内方から押圧するよう設けられた吸着バックアップ手段である。
また、図8に示す様に、記録部材の搬送方向の分離手段76より下流側の位置に定着装置77が設けられている。定着装置77は、内部に加熱手段(図示せず)が設けられた加熱ローラ771と、加熱ローラ771に押圧される様に設けられた定着ローラ772とを有する。
また、図8中の632は原稿を載置する原稿台、633は読み取られた画像情報を処理する画像信号処理部、721、722、723は記録部材である記録紙を収容する給紙トレイ、821、822、823は給紙トレイ721、722、723の各々から記録部材を供給する給紙ローラ、82は記録部材の搬送路、68は像担持体601で形成されるトナー像と同期して記録部材を供給する一対のタイミングローラ、78は定着装置77から排出される記録部材を排出トレイ791に搬送する搬送ローラ、79は定着装置77から排出された記録部材を記録部材反転ユニット80または排出トレイ791に導く爪、801は片方の面に画像形成された記録部材を反転させる反転搬送路である。
上記画像形成装置では、以下の様にトナー像が形成される。すなわち、時計周り方向に回転する像担持体601表面を帯電手段61が所定の極性に帯電し、この状態で像担持体601表面にレーザー装置63が選択的に光照射を行って照射箇所(露光領域)の電位を低下させて原稿画像における各色に対応した静電潜像を形成する。
例えば、シアン色に対応した静電潜像が像担持体601上に形成されると、この静電潜像は前述した図6及び図7に示した画像形成装置と同様の現像条件で、現像装置65Cにより現像されてシアン色のトナー像を形成する。この様にして形成されたシアン色のトナー像は、転写領域T3で転写フィルム661の外周面に吸着保持されている記録部材の片側の面(像担持体601に対向した面)に転写される。
シアン色のトナー像が形成された記録部材は、転写フィルム661に保持した状態で、再度、転写領域T3に供給される。一方、像担持体601ではマゼンタ色に対応した静電潜像が形成されて、現像装置65Mによりマゼンタ色のトナー像が形成され、マゼンタ色のトナー像は記録部材上のシアン色のトナー像に重ねて転写される。
この様なプロセスを複数回(図8では4回)繰り返してフルカラーのトナー像が記録部材上に形成される。
カラートナー像が形成された記録部材は、分離手段76により転写フィルム661から分離されて定着装置77に搬送され、定着装置77でカラートナー像を加熱定着した後、排出トレイ791に排出されて、フルカラー画像が形成される。
ここで、画像形成を行った記録部材のもう片方の面側にも画像形成を行う必要がある場合は、爪79により記録部材を反転搬送路801に導入して、記録部材の裏面を像担持体601と対向させて、再度、転写領域T3に搬送して画像形成を行う。
〈無定形炭素の作製〉
チッパーと粉砕機により粉砕したマツ材粉砕物を、通風乾燥機により105℃で水分含有量を10%以下の条件で12時間に乾燥した。乾燥した粉砕物より粒径0.2〜2.0mmのものを篩い分けし、これを試料とした。
上記試料を前述の図2に記載の撹拌流動炭化炉を用いて炭化した。具体的には、炉内に試料を連続投入し、空気を吹き込んで試料を流動させながら加熱して炭化を行うもので、流動化空気速度を6.0〜9.0m/sec、加熱温度を430℃に設定し、炉内温度が430℃を超えた時に試料を連続的に炉内に送り込み炭化を行った。
次に、上記炭化物を前述の図3に記載の外熱型流動賦活炉を用いて賦活し、表1に記載される各種導電率とBET比表面積を有する無定形炭素を作製した。賦活は、賦活温度を750〜900℃、賦活ガスに加熱水蒸気を用い、粒径が0.5〜1.0mmの炭化物を100mlずつ炉内に供給し、処理時間と温度を制御することにより、表1に記載される導電率とBET比表面積、及び平均粒径を有する各種無定形炭素(試料No.1〜12)を作製した。
また、現行のカーボンブラック試料として、市販品のケッチェンブラックEC(株式会社ライオン製)、MA77(三菱化学社製)、トーカイブラック8500(東海カーボン社製)を使用し、試料No.13〜15とした。作製した試料の物性を表1に示す。
なお、導電率は5MPaの加圧下でMCP−PD51型(ダイアインスツルメンツ社製)を用いて測定し、BET比表面積は、フローソーブ2300(島津製作所社製)を用い、窒素吸着法の多点法により求めた。また、吸油量は前述の測定方法により算出し、細孔最小径は透過型電子顕微鏡写真よりスケールで測定して算出した。
また、上記無定形炭素(試料No.1〜12)は、いずれも平均粒径が10〜500nmであることが電子顕微鏡写真より確認された。
試料No.11と12は、賦活時の処理条件が他の場合よりも厳しいためと推測されるが、試料の生成量が他試料よりも大幅に少なく、作製方法の視点から比較試料とした。
〔トナーの製造〕
〈未変性ポリエステル樹脂の合成〉
冷却管、攪拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物724部、テレフタル酸276部を入れ、常圧下、230℃で8時間重縮合し、次いで1.3〜2.0kPaの減圧で5時間反応させて、ピーク分子量5000の未変性ポリエステルを得た。
〈反応性ポリエステル樹脂の製造〉
冷却管、攪拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物724部、イソフタル酸250部、テレフタル酸24部、およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧下、230℃で8時間反応させ、さらに1.3〜2.0kPaの減圧で脱水しながら5時間反応した後、160℃まで冷却して、これに32部の無水フタル酸を加えて2時間反応させた。次いで、80℃まで冷却し、酢酸エチル中にてイソホロンジイソシアネート188部と2時間反応を行い、重量平均分子量12000のイソシアネート基含有反応性ポリエステル樹脂を得た。
〈ケチミン化合物の製造〉
攪拌棒および温度計のついた反応槽中に、イソホロンジアミン30部とメチルエチルケトン70部を仕込み、50℃で5時間反応を行いケチミン化合物(1)を得た。
〈トナーの作製〉
ビーカー内に前記の反応性ポリエステル樹脂8.5部、未変性ポリエステル樹脂90部、酢酸エチル100部を入れ、攪拌し溶解した。次いで、カルナバワックス(分子量2000、酸価3、融点84℃)5部、表1記載の無定形炭素若しくはカーボンブラックの4部を入れ、60℃にてTK式ホモミキサーで12000rpmで攪拌し、均一に溶解、分散させた。最後に、ケチミン化合物(1)1.5部を加え溶解させた。これを各トナー材料溶液とする。
ビーカー内にイオン交換水706部、ハイドロキシアパタイト10%懸濁液(スーパタイト10;日本化学工業(株)製)294部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2部を入れ均一に溶解した。ついで60℃に昇温し、TK式ホモミキサーで12000rpmに攪拌しながら、上記各トナー材料溶液を投入し10分間攪拌した。次いで、この混合液を攪拌棒および温度計付のコルベンに移し、98℃まで昇温して、ウレア化反応をさせながら溶剤を除去し、濾別、洗浄、乾燥した後、風力分級し、トナー粒子を得た。さらに、トナー粒子100部に疎水性シリカ0.5部と、疎水化酸化チタン0.5部をヘンシェルミキサーにて混合して、各トナーを得た。
〔トナーの評価〕
評価は、図6に示す中間転写ベルトを有するフルカラーの画像形成装置を用い、トナー及び着色剤が飛散し易いとされる高温高湿環境(30℃、85%RH)下で行った。評価は、各黒色トナーを搭載させた状態で、画素率6%のA4版のフルカラー画像を連続10,000枚プリントした後、各評価を行った。なお、画像形成の際に使用されたY、M、Cの各色トナーは当該装置に使用可能な市販品を使用した。
〔トナーの帯電安定性評価〕
〈平均摩擦帯電量〉
図5に示す装置を用いて、LL環境(20℃、30%RH)及びHH環境(30℃、85%RH)でのトナーの平均摩擦帯電量と低帯電性トナー量を測定した。
〔着色剤の遊離評価〕
着色剤による機内部材の着色汚染と作成画像におけるカブリの発生状況を評価した。
〈機内部材の着色汚染〉
上記連続プリント終了後、評価機内を目視観察してトナー粒子の飛散による着色汚染状況を評価した。
◎:着色汚染がほとんど見られない
○:機内に若干の着色汚染が見られるが、指でこすって汚染が落ちるレベル
×:機内の着色汚染が目立ち、指でこすっても汚染が落ちないレベル
〈カブリの発生状況〉
上記連続プリント終了後、電源をオフにして72時間放置後に再度画像形成を行い、形成された画像を観察して、画像汚れ(カブリ)の個数を目視で数えて評価した。10個未満を合格とした。
◎:0〜3個
○:4〜10個未満
×:10個以上
〔着色剤の分散性評価〕
トナー粒子中における着色剤の分散性を評価するために、トナー画像の定着強度とハーフトーン画像上でのムラの発生状況を評価した。すなわち、トナー粒子中における着色剤の分散性が良好なほど高い定着強度が得られ、ハーフトーン画像はムラのない均一な画像が得られるものと考えた。
〈定着強度の測定〉
連続プリント後、白地に対する相対濃度1.0、1.5cm×1.5cmのソリッド画像を形成し、質量が2115g、接触面積6.5cm×100cmの金属板表面にサラシを巻き付けたおもりで15回擦った後、コニカミノルタデンシトメーター(コニカミノルタ(株)社製)で白地に対する相対濃度を測定し、下記式より定着率を算出した。
定着率(%)={(擦った後の画像濃度)/(擦る前の画像濃度)}×100
定着率が70%以上のものを合格とした。
○:定着率が70%以上で合格
×:定着率が70%未満で不合格
〈ハーフトーンのムラ〉
画像濃度0.4のハーフトーン画像を形成し、当該画像を目視で評価した。評価は以下のとおりである。
◎:ムラが認められない
○:かすかなムラが確認されるが実用上問題なし
×:ムラが認められ実用上問題あり
〔画質評価〕
〈黒色濃度の測定〉
連続プリント後にチャート濃度1.5のベタ黒画像を作成し、出力画像濃度を画像濃度計(MacbethRD−918、Macbeth社製)により測定した。コピー出力濃度が1.35以上あるものを合格とした。これはフルカラー画像形成に使用した時に濃度が1.35以上ある時に黒色画像が他色のトナー画像と見劣りしない濃度となっていることに基づく。
○:濃度が1.35以上あり合格
×:濃度が1.35未満で不合格
〈細線再現性〉
2ドットラインの画像信号に対応するライン画像のライン幅を印字評価システムRT2000(ヤーマン株式会社製)により測定した。判定では、線幅が200μmを越えるもの及びスタート時と2000プリント後の線幅が10μm以上変化していなければ、問題ないレベルであると評価した。
○:変化なし
×:変化あり
〈ドット再現性〉
形成された画像ドット径の大きさと露光スポット径の大きさを、100倍の拡大鏡を用いて評価した。直径2.5mmのドット径を1.5mm間隔で出力した時の再現性を評価した。
◎:画像ドットの大きさが露光スポット径に対して30%未満の増減で作成され、隣接するドット同士はそれぞれ独立に再現されている(良好)
○:画像ドットが露光スポット径に比べて、30%〜60%の増減で作成され、それぞれ独立に再現されている(実用性があるレベル)
×:画像ドットが露光スポット面積に比し、60%を超した増減で作製され、部分的に画像ドットが消失したり、連結したりしている(実用上問題のレベル)
また、A4サイズのフルカラー画像(山下清 長岡の花火)を出力して目視評価したところ、本発明に係るトナーを用いたものは、黒い夜空に鮮やかな花火が打ち上げられたメリハリのある画像が再現されたが、比較例のものはうすいバックに花火が上がり、本発明の様なメリハリのある画像にはならなかった。上述した評価結果を表2に示す。
表2に示す様に、本発明で見出された無定形炭素を用いたトナーでは、機内汚染や画像汚染が見られず、着色剤が遊離しにくい性質を有することが確認された。また、トナー画像は強固な定着性とハーフトーンでのムラが見られないことから、トナー粒子中における着色剤の分散性が向上したものと判断される。
さらに、本発明に係るトナーを用いて画像形成を行うことで、細線や微小ドットを忠実に再現することが可能になるとともに、高濃度の黒色画像が得られてフルカラー画像中で黒色部が見劣りすることのないメリハリのあるフルカラー画像が得られる様になった。