しかしながら、温度センサを設けているにも関わらず基板処理を精度良く行うことができない事態が発生することが判明した。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、基板処理を精度良く行うことができる基板処理装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題を解決するために鋭意研究した結果、次のような知見を得た。
すなわち、これまで温度センサなどに代表される温度検出部の精度を向上させる、あるいは液だまり部にも温度センサを配設して液だまり部と温調板の狭持板とでそれぞれ検出された温度差に基づいて制御するという発想を変えて、基板処理の精度が温度センサを配設する箇所に起因するとの仮定の下で、様々な実験を行った。
図22は、温度センサを導入口から遠い上部に配設したときの概略図であって、図22(a)は温調板の斜視図、図22(b)は液だまり部の縦断面図であり、図23は、温度センサを導入口から近い下部に配設したときの概略図であって、図23(a)は、温調板の斜視図、図23(b)は液だまり部の縦断面図であり、図24(a)〜図24(d)は、図22および図23のときの温度の経時的変化をそれぞれ表した実験結果である。なお、図22(a)や図23(a)および、後述する図25(a)や図26(a)では温度センサの配設箇所をわかりやすくするために温調板のうち狭持板を点線のみで図示し、図22(b)や図23(b)および、後述する図25(b)や図26(b)では液だまり部とともに温度センサも図示することに留意されたい。
実験で用いる図22および図23の温調板103では、図22(a)および図23(a)に示すように、ペルチェ素子103bを2つに分割して配設している。なお、後述する図25(a)や図26(a)でも、ペルチェ素子103bを2つに分割して配設している。液だまり部101は、図22(b)および図23(b)に示すように、処理液流路101aが形成されており、処理液流路101a内に供給する導入口101bと、処理液流路101aから処理液を吐出して基板Wに供給する吐出口101cとがそれぞれ形成されている。なお、後述する図25(b)や図26(b)でも、処理液流路101aや導入口101bや吐出口101cは、図22(b)および図23(b)と同じ箇所にそれぞれ形成されている。
図22に示すように、温度センサ104を上部に設ける場合には、図22(b)に示すように導入口101bから遠い箇所に温度センサ104が配設され、図23に示すように、温度センサ104を下部に設ける場合には、図23(b)に示すように導入口101bから近い箇所に温度センサ104が配設される。かかる図22および図23のときの温度の経時的変化をそれぞれ表した実験結果は、図24(a)〜図24(d)に示すとおりである。
図24の各図では、導入口101bに向けて処理液を供給する供給フラグFに同期して処理液の温度が経時的に変化する。すなわち、供給フラグFがONになると、それに同期して導入口101bを介して処理液が処理液流路101a内に供給されて、導入口101b付近での入口温度αと吐出口101c付近での出口温度βとがそれぞれ経時的に変化する。図24(a)および図24(b)は、23℃の処理液を供給フラグFに同期して吐出して導入口101bに供給したときに温調すべき目標温度を20℃に設定した場合の実験結果であって、図24(c)および図24(d)は、23℃の処理液を供給フラグFに同期して吐出して導入口101bに供給したときに温調すべき目標温度を26℃に設定した場合の実験結果である。また、図24(a)および図24(c)は、図22に示すように温度センサ104を上部に配設した場合での実験結果であって、図24(b)および図24(d)に示すように温度センサ104を下部に配設した場合での実験結果である。図中の右側の縦軸は入口温度αのスケールを表し、左側の縦軸は出口温度βのスケールを表す。
入口温度αでは、導入口101d付近で処理液の供給による外乱の影響を直接的に受けるので供給フラグFがONになるたびに温度が上下に変化して、その後は温度センサ104の検出に基づく温度制御により目標温度に戻ろうと復帰動作に入る。例えば、図24(a)および図24(b)のように23℃の処理液を処理液流路101a内に供給して目標温度を20℃に設定する場合には、供給フラグFがONになるたびに入口温度αが上昇して、復帰動作の際には目標温度の20℃に戻ろうと入口温度αが下降する。図24(c)および図24(d)のように23℃の処理液を処理液流路101a内に供給して目標温度を26℃に設定する場合には、供給フラグFがONになるたびに入口温度αが下降して、復帰動作の際には目標温度の26℃に戻ろうと入口温度αが上昇する。
一方、出口温度βでは、入口温度αと比較して導入口101bから遠いことから処理液の供給による外乱の影響を受けにくく、吐出口101cが下流であることから温度センサ104の検出に基づく温度制御で温調が行われている。したがって、入口温度αと比較すると温度の経時的変化が少なく、その温度は目標温度に近い値になっていることが図24により確認された。ただ、図24(a)および図24(c)のように温度センサ104を上部に配設した場合には、入口温度αの温度変化に影響して出口温度βが多少変化する。例えば、図24(a)のように23℃の処理液を処理液流路101a内に供給して目標温度を20℃に設定する場合には、入口温度αの上昇に影響して出口温度βが多少上昇する。図24(c)のように23℃の処理液を処理液流路101a内に供給して目標温度を26℃に設定する場合には、入口温度αの下降に影響して出口温度βが多少下降する。
一方、図24(b)および図24(d)に示すように温度センサ104を下部に配設した場合には、図24(a)および図24(c)のように温度センサ104を上部に配設した場合と比較すると、経時的変化がさらに少ない。例えば、図24(a)および図24(b)のように23℃の処理液を処理液流路101a内に供給して目標温度を20℃に設定する場合には、図24(a)の温度センサ104を上部に配設したときでオフセット(制御偏差が一定値に収束したときの値)(図24では『dT』)が0.06℃(図24では『0.06deg』)に対して、図24(b)の温度センサ104を下部に配設したときでオフセットが0.02℃(図24では『0.02deg』)と経時的変化が少なくなることが確認された。図24(c)および図24(d)のように23℃の処理液を処理液流路101a内に供給して目標温度を26℃に設定する場合には、図24(c)の温度センサ104を上部に配設したときでオフセットが0.07℃(図24では『0.07deg』)に対して、図24(d)の温度センサ104を下部に配設したときでオフセットが0.01℃(図24では『0.01deg』)と経時的変化が少なくなることが確認された。
これは、図24(b)および図24(d)に示すように温度センサ104を下部に配設した場合には、図24(a)および図24(c)のように温度センサ104を上部に配設した場合と比較すると、導入口101bから近くなり、上述した外乱が温度センサ104に、より早く伝達して、それを検出する時間が早くなるとともに温度制御もそれだけ早く行えるからだと考えられる。
なお、液だまり部101は、次期吐出相当量の処理液を少なくとも貯めることができる程度の大きさとなっている。つまり、これから基板に吐出すべきワンショット分(例えば、1〜10cm3 )の処理液が液だまり部101に貯留されている。通常は吐出相当量(ワンショット分)の2〜3倍程度の処理液が貯留できるようになっている。ノズル102内の処理液貯留領域において、基板への1回の吐出量に相当する量(ワンショット)としての処理液貯留領域の処理液のうち、当該処理液貯留領域の導入口101b側を貯留領域部分SAとすると、ワンショットごとに貯留領域部分SA内の処理液が入れ替わり、処理液が下流に押し出されて吐出口101cから吐出されることになる。したがって、処理液の供給による外乱は貯留領域部分SAにまで及ぶものと考えることができる。してみれば、外乱を早く伝達させることでオフセットを少なくして基板処理を精度良く行うためには、その貯留領域部分SA(すなわち処理液貯留領域の処理液導入口側)の処理液の温度を温度検出部が検出するように温度センサ104などに代表される温度検出部を配設するのがよい。
このような知見に基づく本発明は、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、基板に処理液を吐出して基板の処理を行う基板処理装置であって、内部に処理液を貯留する処理液貯留領域を有し、基板に処理液を吐出する処理液供給ノズルと、複数の前記処理液供給ノズルのうち一つを選択し、選択された前記処理液供給ノズルを挟み込んで、ノズル内の処理液を温調する温調部と、ノズル内の処理液の温度を検出する温度検出部と、前記温度検出部で検出された温度に基づいてノズル内の処理液を所定の温度に温調するように前記温調部を操作する制御手段とを備え、前記温度検出部は、基板への1回の吐出量に相当する量としての前記処理液貯留領域の処理液のうち、当該処理液貯留領域の処理液導入口側の処理液の温度を検出するように、前記温調部の前記処理液貯留領域部分に前記温度検出部を配設することを特徴とするものである。
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、温調部は、複数の処理液供給ノズルのうち一つを選択し、選択された処理液供給ノズルを挟みこんで、ノズル内の処理液を温調する。温度検出部はノズル内の処理液の温度を検出する。温度検出部で検出された温度に基づいて、制御手段が温調部を操作してノズル内の処理液を所定の温度に温調するように制御する。この温調制御の際に、ノズル内の処理液貯留領域において、基板への1回の吐出量に相当する量としての処理液貯留領域の処理液のうち、当該処理液貯留領域の処理液導入口側の処理液の温度を温度検出部が検出するように、温調部の処理液貯留領域部分に温度検出部を配設することで、処理液の供給による外乱を温度検出部が早く検出することができて、従来と比較して制御偏差(オフセット)を低減させることができる。その結果、熱交換の効率や温調の精度を改善することができ、基板に所望の温度に設定された処理液を供給することができ、基板処理を精度良く行うことができる。
また、上述した箇所以外に温度検出部(温度センサ)を配設する場合にも、基板処理の精度が変わることが、実験により確認された。図25は、狭持板の領域内であってペルチェ素子に対向する領域に温度センサを配設したときの概略図であって、図25(a)は温調板の斜視図、図25(b)は液だまり部の縦断面図であり、図26は、狭持板の領域内であってペルチェ素子に対向する領域から外れた位置に温度センサを配設したときの概略図であって、図26(a)は温調板の斜視図、図26(b)は液だまり部の縦断面図である。
ここでは、図25および図26のときの温度の経時的変化をそれぞれ表した実験結果を図示していないが、図25に示すように、狭持板103aの領域内であってペルチェ素子103bに対向する領域に温度センサ104を配設した場合での出口温度βのオフセットよりも、図26に示すように、狭持板103aの領域内であってペルチェ素子103bに対向する領域から外れた位置NAに温度センサ104を配設した場合での出口温度βのオフセットが少なくなることが、その実験結果より確認された。
これは、狭持板103aの領域内であってペルチェ素子103bに対向する領域に温度センサ104を配設した場合(図25参照)には、請求項1に記載の発明で説明した処理液の供給による外乱とは相違し、ペルチェ素子103bによる外乱の方が処理液の供給による外乱よりも熱的影響が大きく、ペルチェ素子103bによる外乱によって温度制御が正確に行えないからだと考えられる。一方、狭持板103aの領域内であってペルチェ素子103bに対向する領域から外れた位置NAに温度センサ104を配設した場合(図26参照)には、図25のようにペルチェ素子103bに対向する領域に温度センサ104を配設した場合と比較すると、ペルチェ素子103bによる外乱が小さくなり温度制御がより正確に行えるからだと考えられる。してみれば、ペルチェ素子103bなどに代表される加熱手段に対向する領域に温度センサ104などに代表される温度検出部を配設するよりも、加熱手段(ペルチェ素子103b)による外乱が小さい、対向する領域から外れた位置NAに温度検出部を配設するのがよい。
このような知見に基づく本発明は、次のような構成をとる。
すなわち、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の基板処理装置において、前記各温調部は、ノズルに近接あるいは当接する温調部材と、ノズルとは反対側で温調部材に敷設されて、温調部材を所定の温度に設定する加熱手段とを備え、温調部材の領域内であって、加熱手段に対向する領域から外れた位置に前記温度検出部を配設することを特徴とすることを特徴とするものである。
[作用・効果]請求項2に記載の発明によれば、温度検出部はノズル内の処理液の温度を検出する。温度検出部で検出された温度に基づいて、制御手段が温調部を操作してノズル内の処理液を所定の温度に温調するように制御する。なお、各温調部は、ノズルに近接あるいは当接する温調部材と、ノズルとは反対側で温調部材に敷設されて、温調部材を所定の温度に設定する加熱手段とを備えている。この温調制御の際に、温調部材の領域内であって、加熱手段に対向する領域から外れた位置に温度検出部を配設することで、加熱手段による外乱を小さくすることができて、従来と比較して制御偏差(オフセット)を低減させることができる。その結果、熱交換の効率や温調の精度を改善することができ、基板に所望の温度に設定された処理液を供給することができ、基板処理を精度良く行うことができる。
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の基板処理装置において、前記加熱手段は、熱電冷却効果により前記温調部材を所定の温度に設定する熱電冷却素子であることを特徴とするものである。
[作用・効果]請求項3に記載の発明によれば、熱電冷却効果により温調部材を所定の温度に設定する熱電冷却素子を加熱手段として利用する。したがって、温調部材の領域内であって、熱電冷却素子に対向する領域から外れた位置に温度検出部を配設することになる。
本発明に係る基板処理装置によれば、温調部は、複数の処理液供給ノズルのうち一つを選択し、選択された処理液供給ノズルを挟みこんで、ノズル内の処理液を温調する。温調制御の際に、ノズル内の処理液貯留領域において、基板への1回の吐出量に相当する量としての処理液貯留領域の処理液のうち、当該処理液貯留領域の処理液導入口側の処理液の温度を温度検出部が検出するように、温調部の処理液貯留領域部分に温度検出部を配設すること(請求項1に記載の発明)で、処理液の供給による外乱を温度検出部が早く検出することができて、従来と比較して制御偏差(オフセット)を低減させることができる。また請求項1に記載の発明に従属された基板処理装置によれば、温調制御の際に、温調部材の領域内であって、加熱手段に対向する領域から外れた位置に温度検出部を配設すること(請求項2に記載の発明)で、加熱手段による外乱を小さくすることができて、従来と比較して制御偏差(オフセット)を低減させることができる。その結果、熱交換の効率や温調の精度を改善することができ、基板に所望の温度に設定された処理液を供給することができ、基板処理を精度良く行うことができる。
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。
図1は、本発明の基板処理装置の実施例1に係る回転式塗布装置の概略構成を示す平面図であり、図2は、その側面図である。
なお、この実施例1では、基板処理装置としての回転式塗布装置、つまり、半導体ウエハ(以下、単に「基板」と呼ぶ)に処理液であるレジスト液を吐出して基板にレジスト処理を施す回転式塗布装置を例に採って説明する。
図1に示すように、この回転式塗布装置は、基板Wに処理液を供給して回転塗布する回転処理部10と、処理液を吐出するノズル20を把持するノズル把持部30と、このノズル把持部30を鉛直方向(Z軸方向)に移動させる垂直移動部40と、ノズル把持部30をY軸方向に移動させるY軸水平移動部50と、ノズル把持部30をX軸方向に移動させるX軸水平移動部60と、複数個(この実施例1では、例えば6個)のノズル20を収納する待機部70とを備えている。
回転処理部10は、基板Wを水平姿勢で保持して回転駆動する回転保持部11と、この回転保持部11の周囲を取り囲み、基板Wから飛散される処理液が外方へ拡散するのを防止する中空の飛散防止カップ12とを備えている。飛散防止カップ12は、図示しない昇降機構によって昇降可能に構成されていて、基板Wが回転駆動される際に上昇して、基板W上に吐出された処理液がこの飛散防止カップ12の外側の周囲に飛散するのを防止する。このとき、飛散防止カップ12内に飛び散った処理液は、この飛散防止カップ12に設けられている図示しない廃液回収構造によって回収される。
図1,2に示すように、基板Wに異なる種類の処理液を吐出するための複数個(例えば6個)のノズル20が、待機部70にそれぞれ待機収納されている。使用時には、選択されたノズル20が待機部70から回転処理部10内の基板W上の所定位置に移動され、ノズル20の先端の吐出口から基板Wに向けて処理液を吐出するようになっている。
ここで、このノズル20について、図3および図4を用いて詳細に説明する。なお、図3(a)はノズル20の外観を示す概略斜視図であり、図3(b)はノズル20の温調面を示す概略斜視図である。図4(a)はノズル20の縦断面図であり、図4(b)はノズル20の側面図であり、図4(c)はノズル20の底面図であり、図4(d)は図4(a)に示したノズル20のB−B線断面図である。
図3(a)に示すように、ノズル20は、その先端部に、処理液配管21を通じて供給されてきた処理液を所定量貯める処理液だまり部22を備えている。処理液だまり部22は、次期吐出相当量の処理液を少なくとも貯めることができる程度の大きさとなっている。つまり、これから基板Wに吐出すべきワンショット分(例えば、1〜10cm3 )の処理液が処理液だまり部22に貯留されていて、処理液だまり部22に貯留された処理液が先端の吐出口25aから基板Wに向けて吐出されるようになっている。
具体的には、図3(b)に示すように、ノズル20の処理液だまり部22は、例えば、熱伝導部材と断熱部材とからなる平板型のハウジング23を備えている。ハウジング23の正面板23aおよび背面板23bは熱伝導部材で形成されており、ハウジング23の上面板23c、底面板23d、左側面板23eおよび右側面板23fは断熱部材で形成されている。熱伝導部材としては、例えば、アルミニウムや銅やステンレスやカーボンなどが挙げられる。なお、熱伝導部材としてアルミニウムや銅を採用した場合には、このアルミニウムや銅の処理液との接液部分に、耐薬性の高い素材で被覆(フッ素樹脂コーティング)を施す。また、熱伝導部材としてカーボンを採用した場合には、このカーボンの処理液との接液部分に、耐薬性の高い素材で被覆(ダイヤモンドコーティング)を施す。
図4(a)〜(c)に示すように、ノズル20の処理液だまり部22は、上述の平板型のハウジング23で覆われている。図4(a)に示すように、処理液だまり部22は、体積当りの表面積が大きくなるようにするために、蛇行形状配管24で構成されており、曲がりくねった処理液流路を形成している。この蛇行形状配管24中に処理液を貯めることで、少なくとも次期吐出相当量の処理液が貯留されるようになっている。この処理液だまり部22の下端には、蛇行形状配管24に接続された突出部25が形成されており、この突出部25の先端には処理液を吐出するための吐出口25aが形成されている。また、図4(d)に示すように、ハウジング23と蛇行形状配管24との間には、熱伝導性の高い材料である高熱伝導充填材26が充填されている。ノズル20は、本発明における処理液供給ノズルに相当する。
ここで、ノズル把持部30について、図5を用いて詳細に説明する。なお、図5はノズル把持部30の概略構成を示す平面図である。ノズル把持部30は、ノズル20の処理液だまり部22を把持する一対の把持アーム31,31を備えている。各把持アーム31,31は、ベース部材32の上面に敷設されたレール33に沿ってY軸方向の互いに反対向きにスライド移動可能に取り付けられている。
一対の把持アーム31,31の基端側には、この一対の把持アーム31,31を互いに反対方向に水平移動させるリンク機構34と、このリンク機構34を駆動する駆動シリンダ35とが備えられている。リンク機構34は4節リンク構造を有し、リンク34aの一端とリンク34bの一端とが回動自在に連結され、リンク34cとリンク34dとの連結部が駆動シリンダ35のロッドに連結されている。さらに、リンク34bとリンク34dとの連結部およびリンク34aとリンク34cとの連結部がそれぞれ把持アーム31,31に取り付けられている。そして、駆動シリンダ35のロッドを伸長させると、一対の把持アーム31,31が互いに離反してノズル20を開放し、駆動シリンダ35のロッドを後退させると、一対の把持アーム31,31が互いに接近してノズル20の処理液だまり部22を把持する。
一方の把持アーム31,31には、処理液だまり部22を挟み込んで処理液だまり部22内の処理液を熱交換して温調する温調板36をそれぞれ備えている。温調板36は、例えば、処理液だまり部22の熱交換部(正面板23aおよび背面板23b)と同等の大きさとしている。なお、温調板36を処理液だまり部22の熱交換部よりも大きくしてもよいし、処理液だまり部22の温調に問題がなければ、温調板36を熱交換部よりも小さくしてもよい。温調板36は、本発明における温調部に相当する。
一対の温調板36,36の挟持面側には、処理液だまり部22に当接される挟持板36aが取り付けられている。また、挟持板36aの挟持面側とは反対側の表面には、熱電冷却素子としてのペルチェ素子36bが取り付けられている。ペルチェ素子36bは、熱電冷却効果により、挟持板36aを短時間で所定の温度に設定することができる。また、ペルチェ素子36bの挟持板36aとは反対側の表面には、ペルチェ素子36bからの発熱分を除去する冷却水を供給する冷却水循環部材36cが配設されている。冷却水循環部材36cの一端には、内部に冷却水を送り込むための冷却水供給管36Aおよび冷却水を外方に取り出すための冷却水排出管36Bが接続されている。この冷却水供給管36Aおよび冷却水排出管36Bは外部に設けられた冷却水供給装置(図示省略)に接続されている。
この実施例1では、ペルチェ素子36bを、図5に示すように2つに分割して配設している。この他に、温調板36の狭持板36aには、処理液が所定の温度に温調できるように処理液の温度を検出する温度センサ37(熱電対)が埋め込まれて配設されている。この実施例1では、温度センサ37を一対の温調板36,36のうち、1つの温調板36の狭持板36aのみに配設したが、もう1つの温調板36の狭持板36aにも温度センサ37を配設してよい。温度センサ37の具体的な配設箇所については、図7〜図9で詳しく説明する。挟持板36aは、本発明における温調部材に相当し、ペルチェ素子36bは、本発明における熱電冷却素子に相当し、温度センサ37は、本発明における温度検出部に相当する。また、ペルチェ素子36bは、本発明における加熱手段にも相当する。
一対の温調板36,36によりノズル20を挟み込んで保持する際に、図6に示すように、ノズル20の処理液だまり部22の熱交換部(正面板23aおよび背面板23b)をノズル把持部30の一対の把持アーム31,31で把持して、処理液だまり部22内の処理液を熱交換して温調するようになっている。
また、図2に示すように、回転塗布処理装置の所定位置には、ペルチェ素子36b(図5参照)を駆動制御するための制御部88と、この制御部88に電源電圧を供給するための電源部89とが備えられている。処理液だまり部22(図5参照)内の処理液の温度が上述した温度センサ37から制御部88に送られるようになっている。制御部88は、処理液が所定の温度に温調されるように温調板36のペルチェ素子36bへの電源電圧の供給を制御する。制御部88は、本発明における制御手段に相当する。
温調動作時には、ノズル20が収納された状態で、このノズル20の処理液だまり部22を一対の温調板36,36で所定の押圧力で挟み込んで、つまり、処理液だまり部22の正面板23aおよび背面板23bと温調板36との接触圧を高めて当接させて、処理液だまり部22内の処理液を熱交換して温調する。
続いて、垂直移動部40,Y軸水平移動部50,およびX軸水平移動部60について、図1および図2を用いて詳細に説明する。図1,図2に示すように、ノズル把持部30は、このノズル把持部30を鉛直方向(Z軸方向)に移動させる垂直移動部40に取り付けられている。垂直移動部40は、ノズル把持部30を支持する支持部材41と、この支持部材41を昇降移動させる昇降駆動部42とを備えている。
また、昇降駆動部42は、ノズル把持部30をY軸方向に移動させるY軸水平移動部50の水平移動部材51に接続されている。水平移動部材51の一端は、Y軸方向に延びる回動ねじ52に係合している。回動ねじ52は駆動モータ(図示省略)により回動される。これにより、回動ねじ52に係合した水平移動部材51がY軸方向に往復移動し、それによって垂直移動部40およびノズル把持部30がY軸方向に往復移動する。
さらに、Y軸水平移動部50のスライド板61の一端は、X軸方向に延びるX軸水平移動部60の回動ねじ62に係合している。回動ねじ62は駆動モータ(図示省略)により回動される。回動ねじ62の回動により、スライド板61がガイド63に沿ってX軸方向に往復移動し、それによってY軸水平移動部50、垂直移動部40およびノズル把持部30がX軸方向に往復移動する。
図1に示すように、待機部70には、例えば6個の後述する収納ポット71がY軸方向に並設されており、異なる種類の処理液を供給する処理液供給源(図示省略)に処理液配管21を介して接続された6個のノズル20をそれぞれの収納ポット71に収納している。なお、処理液配管21の処理液供給源(図示省略)側には、電磁弁およびポンプ(図示省略)が接続されており、所定量の処理液が処理液配管21を介してノズル20に供給されるようになっている。
次に、温度センサ37の具体的な配設箇所について、図7〜図9を用いて詳細に説明する。なお、図7は温度センサ37を配設した温調板36の斜視図である。図8は貯留領域部分を併せて図示したときの処理液だまり部22の縦断面図である。図9は狭持板36aの領域内であってペルチェ素子36bに対向する領域から外れた位置を併せて図示したときの概略図であって、図9(a)は温調板36の概略構成を示す平面図であって、図9(b)は処理液だまり部22の縦断面図である。なお、図7では温度センサ37の配設箇所をわかりやすくするために温調板36のうち狭持板36aを点線のみで図示し、図8、図9(b)では処理液だまり部22とともに温度センサ37も図示することに留意されたい。
処理液配管21(図3参照)と処理液だまり部22内の蛇行形状配管24との間には、導入口24aが形成されている。導入口24aに向けて処理液を供給する供給フラグがONになると、それに同期して蛇行形状配管24内に処理液が吐出相当量(ワンショット分)だけ供給される。通常は吐出相当量(ワンショット分)の2〜3倍程度の処理液が貯留できるようになっている。すなわち、ノズル20の処理液だまり部22内の処理液貯留領域において、基板Wへの1回の吐出量に相当する量(ワンショット)としての処理液貯留領域のうち、当該処理液貯留領域の導入口24a側を貯留領域部分SAとすると、図8に示す貯留領域部分SA内の処理液がワンショットごとに入れ替わり、処理液が吐出口25a方向である下流に押し出されて吐出口25aから吐出されることになる。処理液の供給による外乱は貯留領域部分SAにまで及ぶものと考えられる。そこで、図8に示すように、貯留領域部分SAにあって導入口24aから近い上部に温度センサ37を配設した場合には、貯留領域部分SAの処理液の温度を検出することになって、導入口24a付近で処理液の供給による外乱の影響を直接的に受けるので、供給フラグがONになるたびに上述した外乱を温度センサ37が、より早く検出して、温度制御も早く行うことができる。逆に、貯留領域部分SA以外の貯留領域にあって例えば導入口24aから遠い下部に温度センサ37を配設した場合には、上述した外乱を温度センサが遅く検出して、その間に処理液の温度が上下に変動してオフセットが大きくなる。
また、この実施例1では、別の見方をすると温度センサ37は、図9に示すような箇所に配設されているともいえる。すなわち、狭持板36aの領域内では、図9(a)に示すように分割されたペルチェ素子36bとペルチェ素子36bとの間に、ペルチェ素子36bに対向する領域から外れた領域ができる。この対向する領域から外れた位置を図9に示すように、『位置NA』とする。この位置NAに温度センサ37を配設した場合には、上述した処理液の供給による外乱とは相違し、ペルチェ素子36bによる外乱の方が処理液の供給による外乱よりも熱的影響が小さくなり、ペルチェ素子36bによる外乱の影響を受けにくいので、温度制御がより正確に行える。逆に、ペペルチェ素子36bに対向する領域に温度センサ37を配設した場合には、ペルチェ素子36bによる外乱の方が処理液の供給による外乱よりも熱的影響が大きくなって、ペルチェ素子36bによる外乱によって、温度制御が正確に行えない。
続いて、収納ポット71について、図10および図11を用いて詳細に説明する。なお、図10は収納ポット71の概略構成を示す概略斜視図である。図11(a)は図1に示した収納ポット71のA−A線断面図であり、図11(b)はノズル20の収納ポット71への収納状態でこのノズル20の突出部25が待機ポット90内に挿入されることを説明するための図である。
図10,図11(a)に示すように、収納ポット71は、ノズル20を立設して収納する立設ポット80と、ノズル20の突出部25を溶剤雰囲気中に収納するための待機ポット90とを備えている。収納ポット71は、待機ポット90上に立設ポット80を積み上げた2段構造になっている。
まず、立設ポット80について説明する。図10に示すように、立設ポット80は、ノズル20を収納するための立設容器本体81を備えている。立設容器本体81の天部および底部は開口されており、立設容器本体81の天部の開口からノズル20が挿入されるようになっている。
続いて、立設ポット80の下側に位置する待機ポット90について説明する。待機ポット90は、ノズル20の突出部25が挿入される挿入孔91を上面側に形成した待機容器本体92を備え、待機中のノズル20の突出部25を溶剤雰囲気中に収納する。待機容器本体92の中央下部には溶剤を保持する溶剤貯留部93が形成され、その上方には溶剤空間94が形成されている。溶剤空間94には、溶剤を供給するための溶剤供給管95が接続されている。また、待機容器本体92におけるノズル20の突出部25の下方位置には、ノズル20から滴下する処理液を外方へ排出するための排出管96が接続されている。
なお、ノズル20が収納ポット71から取り出された状態において、待機ポット90の挿入孔91から立設ポット80への溶剤雰囲気の流入を防止するために、この挿入孔91を適宜に閉塞するようにしてもよい。よって、立設ポット80の下側の待機ポット90では、その挿入孔91にノズル20の突出部25が挿入されており、ノズル20の突出部25を溶剤雰囲気中に収納している。
次に、この実施例1の回転式塗布装置の動作について説明する。図1に示すように、待機部70には、異なる種類の処理液を供給する処理液供給源(図示省略)に処理液配管21を介して接続された複数個(実施例1では6個)のノズル20が収納ポット71に収納された状態で収納され、各ノズル20が待機状態にある。
図10に示すように、収納ポット71に収納された各ノズル20は、処理液供給源(図示省略)から処理液配管21を通じて処理液が供給されており、所定量の処理液が処理液だまり部22内に貯められた状態となっている。
回転式塗布装置は、予め定められた処理条件に従って基板Wに供給する処理液を選択し、これに対応したノズル20を選択する。ノズル20が選択されると、垂直移動部40、Y軸水平移動部50およびX軸水平移動部60が駆動され、ノズル把持部30が一対の把持アーム31,31を開いた状態でノズル20に接近する。一対の把持アーム31,31が開くことに伴って、それに備えられた一対の温調板36,36も開いた状態でノズル20に接近する。
一対の把持アーム31,31の温調板36,36が処理液だまり部22を挟み込むことで、ノズル20を把持して温調を行う。そして、垂直移動部40を駆動させて、把持したノズル20を上方に持ち上げ、Y軸水平移動部50およびX軸水平移動部60を駆動させて、ノズル20を回転処理部10の基板W上の所定位置、例えば基板Wの中央上方の位置に移動する。
制御部88は、処理液だまり部22内の処理液の温度を、図8、図9に示す箇所に配設された温度センサ37で測定し、この測定結果に応じて温調板36のペルチェ素子36bを駆動し、処理液だまり部22の処理液を所定温度に温調する。温調のタイミングは、上述した移動時に限らず、ノズル20を把持して待機しているときであってもよい。
基板W上の所定位置に移動したノズル20は、所定の温度に調整された処理液だまり部22内の処理液を基板Wの表面に吐出する。その後、基板Wが回転され、これによって基板Wの表面に処理液が回転塗布される。処理液の温度は所定の値に調整されているので、不適当な処理液の温度による薄膜の膜厚ばらつきを抑制することができる。
上述したように実施例1の回転式塗布装置によれば、上述した温度センサ37の検出に基づく温度制御の際に、温度センサ37を、基板Wへの1回の吐出量に相当する量としての処理液貯留領域のうち、当該処理液貯留領域の導入口24a側(すなわち貯留領域部分SA)で温調板36の狭持板36aに埋め込んで配設することで、貯留領域部分SAの処理液の温度を温度センサ37が検出することになり、この処理液の供給による外乱を温度センサ37が早く検出することができて、従来と比較して制御偏差(オフセット)を低減させることができる。その結果、熱交換の効率や温調の精度を改善することができ、基板Wに所望の温度に設定された処理液を供給することができ、基板処理を精度良く行うことができる。
この実施例1では、別の見方をすると、温度センサ37は、狭持板36aの領域内であって、ペルチェ素子36bに対向する領域から外れた位置NAに埋め込まれて配設されているともいえる。このように温度センサ37を配設することで、ペルチェ素子36bによる外乱を小さくすることができて、従来と比較して制御偏差(オフセット)を低減させることができる。その結果、熱交換の効率や温調の精度を改善することができ、基板Wに所望の温度に設定された処理液を供給することができ、基板処理を精度良く行うことができる。
次に、図12,図13を参照して本発明の実施例2を説明する。
図12は、本発明の実施例2に係るノズル20の外観を示す概略斜視図であり、図13は、実施例2に係る収納ポット71の概略構成を示す概略斜視図である。
なお、上述した実施例1では、図6に示す温調板36をノズル把持部30の一対の把持アーム31,31にそれぞれ備え、把持アーム31,31でノズル20を挟み込んで移動しながら、または待機しながら温調を行っているが、実施例2では、図10,図11に示す立設ポット80内に、実施例1と同じ構造をもつ一対の温調板82,82を設けて、収納ポット71で収納されている間に温調を行う。以下、この実施例2および後述する実施例3では、この立設ポット80を「温調ポット80」として説明を行う。また、上述した実施例1と同じ構成には同じ符号を付すことで詳細な説明については省略する。
なお、実施例2の場合には、収納ポット71で収納されている間に温調を行うので、一対の把持アーム31,31の温調板36,36が処理液だまり部22を挟み込んで、ノズル20を把持しながら温調を行う必要はない。従って、一対の把持アーム31,31は、実施例1のようにノズル20の処理液だまり部22を把持するのでなく、図12に示すように、ノズル20の基端部、つまり、処理液だまり部22の上方位置に備えられた被把持部27を一対の把持アーム31,31が把持する。ノズル20の被把持部27は、断熱部材で形成されている。ノズル把持部30がノズル20の被把持部27を把持して移動することにより、ノズル20が移動される。
実施例2の温調ポット80は、実施例1の立設ポット80と相違し、温調する機能を備えている。すなわち、図13に示すように、収納ポット71は、ノズル20の処理液だまり部22を温調するための温調ポット80と、実施例1と同様の待機ポット90とを備えている。
温調ポット80は、ノズル20を収納するための温調容器本体81と、この温調容器本体81内に配設された、ノズル20の処理液だまり部22を挟み込む一対の温調板82,82とを備えている。温調容器本体81の天部および底部は開口されており、温調容器本体81の天部の開口からノズル20が挿入されるようになっている。一対の温調板82,82は、温調動作時には、処理液だまり部22を挟み込むように互いに接近移動し、ノズル20の挿抜時などには、処理液だまり部22の挟み込みを解除するように互いに離反移動するようになっている。温調板82は、実施例1の温調板36と同じ構造を有している。すなわち、温調板82の狭持板(図示省略)であって、貯留領域部分、かつペルチェ素子(図示省略)に対向する領域から外れた位置NAに温度センサ(図示省略)を埋め込んで配設している。
上述したように、収納ポット71で収納されている間に温調を行うので、一対の把持アーム31,31で把持しながら温調を行う必要はないが、把持中においても温調を行うように、実施例1と同様に一対の把持アーム31,31にも温調板36をそれぞれ備え、温調板36が処理液だまり部22を挟み込んで温調を行ってもよい。このときには、温度センサ37を実施例1と同じ箇所に温調板36の狭持板36aに配設するとともに、温度センサを温調板82の狭持板(図示省略)にも配設することになる。
実施例2に係る回転塗布処理装置によれば、実施例1と同様に、温度制御の際に、温調板82の狭持板(図示省略)であって、温度センサを貯留領域部分、かつペルチェ素子(図示省略)に対向する領域から外れた位置NAに温度センサ(図示省略)を埋め込んで配設することで、処理液の供給による外乱を温度センサに早く検出することができて、従来と比較して制御偏差(オフセット)を低減させることができるとともに、ペルチェ素子による外乱を小さくすることができて、従来と比較して制御偏差(オフセット)を低減させることができる。その結果、熱交換の効率や温調の精度を改善することができ、基板Wに所望の温度に設定された処理液を供給することができ、基板処理を精度良く行うことができる。
次に、図14を参照して本発明の実施例3を説明する。
図14は、本発明の実施例3に係る回転式塗布装置の概略構成を示す平面図である。
なお、上述した実施例3では、温調ポット80と待機ポット90とを上下2段に構成した6個の収納ポット71を待機部70に設けているが、実施例3では、待機部70に6個の待機ポット90のみを設け、この待機ポット90とは別の位置に、単一の温調ポット80を設ける。また、上述した実施例1,2と同じ構成には同じ符号を付すことで詳細な説明については省略する。
この実施例3の回転塗布処理装置では、6個の待機ポット90と、単一の温調ポット80とを分離独立して配置しているところに1つの特徴点がある。
次に、この実施例3の回転式塗布装置の動作について説明する。待機部70には、異なる種類の処理液を供給する処理液供給源(図示省略)に処理液配管21を介して接続された6個のノズル20の突出部25がそれぞれの待機ポット90の挿入孔91に挿入された状態で収納され、各ノズル20が待機状態にある。
図14に示すように、待機部70の待機状態にある6個のノズル20の中から選択された1個のノズル20をノズル把持部30で把持して単一の温調ポット80に移動させて収納する。温調ポット80は、収納されたノズル20の処理液だまり部22内の処理液を温調する。温調ポット80による処理液だまり部22内の処理液の温調後、温調ポット80に収納されたノズル20をノズル把持部30で把持して回転処理部10の基板W上の所定位置に移動し、温調された処理液を基板Wに吐出する。温調された処理液を基板Wに吐出した後にノズル20はノズル把持部30で待機部70の対応する待機ポット90に移動され、基板Wは温調された処理液により所定の処理が施される。
上述したように実施例3の回転式塗布装置によれば、待機ポット90にてノズル20の吐出口25aを所定雰囲気中で待機させることができ、これから使用すべきノズル20を待機ポット90から温調ポット80に移動させて収納し、温調ポット80で処理液だまり部22内の処理液を温調することができるので、待機ポット90の数だけ温調ポット80を設ける必要がなく、少なくとも1個の温調ポット80があればよいことから、待機ポット90と同数の温調ポット80を設けることに伴う装置の複雑化が低減できる。
なお、本発明は以下のように変形実施することも可能である。
(1)上述した各実施例装置では、図8、図9に示すように、温度センサ37を、温調板36の狭持板36bであって、貯留領域部分SA、かつペルチェ素子36bに対向する領域から外れた位置NAに埋め込んで配設したが、貯留領域部分SAまたは位置NAの少なくともいずれか1つの箇所のみに温度センサ37を配設してもよい。例えば、図15(a)に示すように温度センサ37を貯留領域部分SAに配設するとともに、ペルチェ素子36bによる外乱が小さいのならば、あるいはその外乱が大きくても熱交換の効率や温調の精度を改善することができるのならば、図15(b)に示すように位置NAから外れた位置(すなわちペルチェ素子36bに対向した領域)に配設してもよい。また、処理液の供給による外乱を温度センサ37が早く検出できるのならば、あるいはその外乱を温度センサ37が早く検出しなくても熱交換の効率や温調の精度を改善することができるのならば、図16(a)に示すように温度センサ37を貯留領域部分SA以外の領域(例えば導入口24aから遠く吐出口25aに近い下部)に配設するとともに、図16(b)に示すように位置NAに配設してもよい。
(2)上述した各実施例装置では、基板Wが固定位置でノズル20が移動する構成であったが、逆に基板Wが移動する構成であっても本発明は適用可能である。また、ノズル20および基板Wがともに移動する構成であっても本発明は適用可能である。
(3)上述した各実施例装置では、待機部70に6個の待機ポット90を備え、ノズル20を6個としているが、1個または6個以外の複数個のノズル20を設けるようにしてもよい。
(4)上述した各実施例装置では、図5に示すように、温調板36を直接にノズル20の温調面(正面板23aおよび背面板23b)に当接させているが、温調板36とノズル20の温調面とが接触若しくは近接する界面に、熱伝導率の高いゲル状の物質や、磁性流体を介在させ、接触熱抵抗を低減し、熱交換速度を促進するようにしてもよい。
(5)上述した各実施例装置では、図4に示すように、ノズル20の処理液だまり部22として平板型のものを採用しているが、図17(a),(b)に示すように、円管型の処理液だまり部22Aを採用してもよい。この処理液だまり部22Aは円筒形状となっている。さらに、図17(c),(d)に示すように、二重円管型の処理液だまり部22Bを採用してもよい。この処理液だまり部22Bは、内部に入子28を配設し、体積当りの表面積を大きくするとともに、外側に近い位置に処理液を貯めるようにしている。こうすることで、処理液だまり部22Bの処理液をより効果的に熱交換できる。また、図17(e),(f)に示すように、コイル型の処理液だまり部22Cを採用してもよい。この処理液だまり部22Cは、螺旋形状配管29を有しており、体積当りの表面積が大きくなっており、処理液だまり部22Cの処理液を効果的に熱交換できる。
(6)上述した各実施例装置の処理液だまり部22では、図4(a),(d)に示すように、ハウジング23と、断面が円形である蛇行形状配管24との間に高熱伝導充填材26を充填しているが、図18に示すように、断面が四角形である蛇行形状配管24Aを採用することで、ハウジング23と内部配管との間のスペース、つまり、高熱伝導充填材26を充填するスペースを無くすようにしてもよい。
(7)上述した各実施例装置では、図4(a)に示すように、処理液だまり部22の蛇行形状配管24として、蛇行しながら上から下に向かう処理液流路を採用しているが、図19に示すように、処理液だまり部22は、処理液を下方位置に導いた後にこの下方位置よりも高い上方位置に導いてから再び下方に導いて吐出口から吐出させる流路24Aを備えたものとしてもよい。
図19に示す場合では、一度、蛇行形状配管24の下部にまで通路を落とし、そこから上方から処理液を通すような流路とすることで、蛇行形状配管24内にエアを噛みこむことを確実に防止しつつ安定した処理液の供給が可能となる。
図19に示す流路24Aの方向を有する蛇行形状配管24の場合には、貯留領域部分SAは、図19に示すとおりである。この場合には、図19に示す貯留領域部分SAの処理液の温度を検出するように温度センサ37を配設すればよい。
同様に、図23(b)に示すような蛇行形状配管24(図23では処理液流路101a)の場合には、貯留領域部分SAは下部に位置し、温度センサ37(図23では温度センサ104)を下部に配設すればよい。
(8)上述した各実施例では回転式塗布装置を例に採って説明したが、本発明はこのような装置に限定されるものではなく、非回転式塗布装置にも適用可能であるし、基板の処理面に適宜の処理液(例えば、現像液、リンス液等)を吐出して、基板に処理(現像処理、洗浄処理等)を行う種々の基板処理装置に広く適用することができる。
(9)上述した各実施例では、ペルチェ素子を用いて温調板を構成していたが、例えばそれに代えて温調水を温調板に引き回すように構成することもできる。
(10)また、実施例3においては、ノズル20の処理液だまり部22を温調ポット80に移動させる構成を採用していたが、逆に、温調ポット80を次に使用するノズル20の処理液だまり部22が待機する場所まで移動して温調を行うようにしてもよい。
(11)上述した各実施例装置の温調板は水平方向からノズル20を挟み込んだが、上下方向や斜め方向からも温調板はノズル20を挟み込むような形態であってもよい。
(12)上述した各実施例装置では、加熱手段の例として熱電冷却素子であるペルチェ素子36bを挙げて、ペルチェ素子36bに対向する領域から外れた位置NAに温度センサ37を配設したが、ペルチェ素子36b以外の加熱手段(例えばヒータなど)で温調板36を構成し、その加熱手段に対向する領域から外れた位置NAに温度センサ37を配設してもよい。
(13)上述した各実施例装置では、一対の温調板、すなわち2つの温調板が水平方向からノズル20を挟み込んで温調を行ったが、例えば、2つの温調板が水平方向からノズルを挟み込んで温調を行うとともに、別の温調板が鉛直方向からノズルを挟み込んで温調を行うというように、3つ以上の温調板がノズルを挟み込んで温調を行ってもよい。また、1つの温調板であっても、例えば1つの温調板を屈曲させて、いわゆる『U』の字状に形成して、その『U』の字状に形成された温調板のすきまにノズルを挿入することでノズルを挟み込んで温調を行ってもよい。