JP4454073B2 - 剥離紙アンダーコート用ラテックス組成物 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、剥離紙アンダーコート用ラテックス組成物に関するものである。
詳しくは、本発明は、主として商品や商品容器の表面に貼合される粘着ラベル、粘着シール及び包装容器の梱包等に用いられる粘着テープの剥離紙アンダーコートに用いられるラテックス組成物に関するものである。
さらに詳しくは、本発明は、特に溶剤バリヤー性に優れ、原紙上にポリエチレンをラミネートする必要がなく、直接シリコーンなどの剥離剤を塗工し、製造できる再利用可能な剥離紙アンダーコート材であり、さらにはアンダーコート塗布後の耐ブロッキング性が良好であり、かつ塗工装置等の洗浄が容易であるラテックス組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、剥離紙はラベル、シール、テープ等の剥離性を良好にするため、剥離剤または離型剤が基材の表面に塗工されている。例えばシリコーン樹脂をトルエン等の有機溶剤に溶解した溶液、無溶剤のシリコーン樹脂、シリコーンエマルジョン等を塗布して剥離層が形成されるている。
その剥離紙の基材としては、ポリエチレンラミネートタイプ、グラシンタイプ、スーパーカレンダードタイプ及びクレーコートタイプ等の紙が知られている。
これらの基材の中で、一般的にはポリエチレンラミネートタイプが挙げられ、これは木材パルプを主原料とする上質紙、片艶紙及びクラフト紙等の表面に、押出し加工方式により厚さ10〜25ミクロン程度のポリエチレンフィルム層を形成させたものである。
【0003】
ポリエチレンラミネートの目的は、剥離剤のシリコーン塗工液の浸透を極力抑制し、剥離性を最大限に発揮させることである。
しかし、このポリエチレンをラミネートする方法で製造された剥離紙は、ポリエチレンが強固な連続皮膜を形成し、かつそれが水に不溶のため、この剥離紙を回収し、製紙工程で再生利用することが極めて困難で、今日産業廃棄物処理上の大きな問題となってきている。
これに対し、極度に叩解されたパルプを原料とするグラシン紙等を原紙として用い、これにポリエチレンをラミネートすることなく直接シリコーンの有機溶剤溶液を塗工する方法が試みられている。
【0004】
しかし、このような原紙は、原料となるパルプを極度に叩解して用い、さらにカレンダー処理等により繊維間結合を強固にしているため、水中で容易に分散しないという欠点を有している。さらに、たとえ機械力の強化及び化学的処理の導入等により水中で分散できたとしても、叩解処理の強化により繊維が著しく損傷しているため、一般の紙の原料として再利用することは困難である。
また、機械的に加圧して緻密化したスーパーカレンダードクラフトタイプの基材においても、なお微小な空隙を完全に封鎖することはできず、さらにシリコーンを溶解した有機溶剤溶液が接触すると同時に基材の膨潤が生じ、ポリエチレンをラミネートする場合に匹敵するような優れたシリコーン有機溶剤溶液の浸透を遮断(以下溶剤バリヤー性と記す)することは困難である。
【0005】
一方、特公平1−35959号公報や特開平4−23876号公報には、ポリエチレンをラミネートすることなく、直接シリコーン溶液を塗工して得られる剥離紙のための基材として、原紙表面に無機顔料及び有機接着剤を主成分とする塗料を塗工して下塗り層を形成するクレーコートタイプ基材が開示されている。
このような基材においては、原紙中の微小な空隙(以下ピンホールと記す)を下塗り層が被覆し、これを目止めする効果は認められる。
しかし、下塗り層の顔料相互の間に微小な空隙が無数に存在し、さらに微細な連続孔をとおしてシリコーンの有機溶剤溶液が原紙中に浸透する。
このため、ポリエチレンでラミネートする方法に比べ高価なシリコーンを多量に塗工しなければならない。
【0006】
また、特開平7−229096号公報、特開平8−144198号公報、特開平10−1895号公報、特開平10−131094号公報には剥離剤のシリコーン有機溶剤溶液に対するバリヤー性が良好な樹脂組成物が開示されている。
これらの場合、樹脂組成物のバリヤー性は向上するものの、シリコーンとの密着については更なる改良が求めらると共に、その剥離紙のリサイクル性(紙原料としての回収性)とのバランス向上が求められていた。
また、アンダーコート塗布・乾燥後のカレンダー工程における塗工面のカレンダー面への巻き付き、または塗工紙を巻き取った場合のアンダーコート層と原紙裏面とのブロッキングが問題となり、その解決が求められていた。
上記の理由から、ポリエチレンラミネート紙に匹敵する優れた溶剤バリヤー性を有し、且つシリコーンの密着性も良好で、リサイクル性を有し、かつ耐ブロッキング性が良好である剥離紙アンダーコート用ラテックス組成物が強く求められている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリエチレンラミネートを必要とせず、直接シリコーンなどの有機溶剤溶液を塗工することができ、シリコーン密着性も良好で、かつ優れた剥離性を有し、使用済剥離紙を回収し、製紙工程で再利用することができると共に、アンダーコート塗布後耐ブロッキング性、かつ塗工装置の洗浄が容易である剥離紙アンダーコート用ラテックス組成物を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意検討した結果、ゲル分が特定範囲にあるラテックスと亜鉛化合物とを組み合わせた組成物とすることにより、上記課題を解決できることを見出し本発明に到達した。即ち、本発明は:
1.エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.5〜10重量%、共役ジエン系単量体10〜70重量%、芳香族ビニル系単量体10〜70重量%、これらと共重合可能なビニル系単量体0重量%とを含むラジカル重合性単量体、及びα−メチルスチレンダイマーを含む混合物を乳化重合して得られるカルボキシル基変性ラテックスであり、かつ、そのゲル分が80%以上であって、該ラテックスを乳化重合する際メルカプト基を有する化合物を添加しないようにして得られるラテックス、亜鉛化合物からなることを特徴とする剥離紙アンダーコート用ラテックス組成物、
2.エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.5〜10重量%、共役ジエン系単量体10〜70重量%、芳香族ビニル系単量体10〜70重量%、これらと共重合可能なビニル系単量体0重量%とを含むラジカル重合性単量体とを含むラジカル重合性単量体、及びα−メチルスチレンダイマーを含む混合物を乳化重合して得られるカルボキシル基変性ラテックスであり、かつ、そのゲル分が80%以上であって、該ラテックスを乳化重合する際メルカプト基を有する化合物をその添加量が全ラジカル重合性単量体100重量部に対して、0.3重量部以下であるようにして得られるラテックス、亜鉛化合物からなることを特徴とする剥離紙アンダーコート用ラテックス組成物、
3.エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.5〜10重量%、共役ジエン系単量体10〜70重量%、芳香族ビニル系単量体10〜70重量%、これらと共重合可能なビニル系単量体0重量%超50重量%以下とを含むラジカル重合性単量体、及びα−メチルスチレンダイマーを含む混合物を乳化重合して得られるカルボキシル基変性ラテックスであり、かつ、そのゲル分が80%以上であって、該ラテックスを乳化重合する際メルカプト基を有する化合物を添加しないようにして得られるラテックス、亜鉛化合物からなることを特徴とする剥離紙アンダーコート用ラテックス組成物、
4.エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.5〜10重量%、共役ジエン系単量体10〜70重量%、芳香族ビニル系単量体10〜70重量%、これらと共重合可能なビニル系単量体0重量%超50重量%以下とを含むラジカル重合性単量体とを含むラジカル重合性単量体、及びα−メチルスチレンダイマーを含む混合物を乳化重合して得られるカルボキシル基変性ラテックスであり、かつ、そのゲル分が80%以上であって、該ラテックスを乳化重合する際メルカプト基を有する化合物をその添加量が全ラジカル重合性単量体100重量部に対して、0.3重量部以下であるようにして得られるラテックス、亜鉛化合物からなることを特徴とする剥離紙アンダーコート用ラテックス組成物、
である。
【0009】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明において、用いられるラテックスのゲル分は溶剤バリヤー性、耐ブロッキング性の観点から80%以上が好ましく、さらに好ましいゲル分は90%以上である。
ゲル分は、重合温度、共役ジエン系単量体の量、架橋性単量体の量、連鎖移動剤の種類や量などにより調節することができる。
本発明において用いられるカルボキシル基変性ラテックスは、ポリマー中にカルボキシル基を有しているラテックスであれば特に材質に限定はない。
例えば、共役ジエン系ラテックス(例えばスチレン−ブタジエン系ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン系ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン系ラテックス、クロロプレン系ラテックス等)、アクリル系ラテックス(例えばオールアクリル系ラテックス、スチレン−アクリル系ラテックス等)、ウレタン系ラテックス、酢酸ビニル系ラテックス、エチレン−酢酸ビニル系ラテックス等が挙げられる。
溶剤バリヤー性、耐ブロッキング性の点から、上記ラテックスは共役ジエン系ラテックス、アクリル系ラテックスから選ばれる一種以上のラテックスであることが好ましく、特に共役ジエン系ラテックスであることが好ましい。さらにはスチレン−ブタジエン系ラテックスであることが好ましい。
【0010】
本発明において用いられるラテックスは、エチレン性不飽和カルボン酸単量体と、これらと共重合可能なビニル系単量体を含む単量体を乳化重合して得られるものである。
本発明で用いられるエチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸、メタクリル酸、アクリル酸等が挙げられる。好ましくはイタコン酸、フマール酸、メタクリル酸、アクリル酸である。
【0011】
共役ジエン系ラテックスにおいて、エチレン性不飽和カルボン酸単量体と共に、芳香族ビニル系単量体、共役ジエン系単量体が使用される。
芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
共役ジエン系単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、1,3−イソプレン、2−クロロ−1,3ブタジエン、クロロプレン等が挙げられる。
芳香族ビニル系単量体で好ましくはスチレンであり、共役ジエン系単量体で好ましくは1,3−ブタジエンである。
【0012】
また、本発明では、これら上記の単量体に加えて、本発明のラテックスとして要求される様々な品質・物性を付与するために、これら以外の単量体成分を使用することができる。
それらの単量体としては例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
さらに、水酸基、アミド基、アミノ基、メチロール基、グリシジル基、スルホン酸基、リン酸基などの官能基を有する各種のビニル系単量体も所望に応じて使用できる。
【0013】
本発明において用いられるラテックスの単量体成分の一般的構成は、エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.5〜10重量%、共役ジエン系単量体10〜70重量%、芳香族ビニル系単量体10〜70重量%、これらと共重合可能なビニル系単量体0〜50重量%である。
エチレン性不飽和カルボン酸単量体の好ましい割合は0.5〜5重量%であり、共役ジエン系単量体の好ましい割合は、15〜65重量%である。芳香族ビニル系単量体の好ましい割合は15〜65重量%である。
エチレン性不飽和カルボン酸単量体が0.5重量%以上で離解性に問題がなく、10重量%以下でシリコーン密着性に問題がない。
共役ジエン系単量体が10重量%以上で溶剤バリヤー性に問題がなく、70重量%以下で耐ブロッキング性に問題がない。
芳香族ビニル系単量体が10重量%以上で離解性に問題がなく、70重量%以下で溶剤バリヤー性に問題がない。
【0014】
アクリル系ラテックスは、上記エチレン性不飽和カルボン酸単量体、及び(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族ビニル系単量体及びこれら単量体と共重合可能な単量体からなる。
共重合可能な単量体として、上記挙げたアクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類、水酸基、アミド基、アミノ基、メチロール基、グリシジル基、スルホン酸基、リン酸基などの官能基を有する各種のビニル系単量体が挙げられる。
アクリル系ラテックスの場合、ゲル分を付与するために、架橋性単量体を上記単量体中に配合しても良い。
【0015】
ここで言う架橋性単量体とは、ラジカル重合性の二重結合を2個以上有しているか、または重合中、重合後に自己架橋構造を与える官能基を有しているビニル系単量体である。
ラジカル重合性の二重結合を2個以上有しているビニル系単量体としては例えば、ジビニルベンゼン、ポリオキシエチレンジアクリレート、ポリオキシエチレンジメタクリレート、ポリオキシプロピレンジアクリレート、ポリオキシプロピレンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート等が挙げられる。
【0016】
重合中、重合後に架橋構造を与える官能基を有しているビニル系単量体としては、例えば、エポキシ基含有モノマー、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、メチルグリシジルアクリレート、メチルグリシジルメタクリレート等:
メチロール基含有モノマー、例えばN−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジメチロールアクリルアミド、ジメチロールメタクリルアミド等;
アルコキシメチル基含有モノマー、例えばN−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド等;
ヒドロキシル基含有モノマー、シリル基含有モノマー例えばビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリス−2−メトキシエトキシビニルシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
好ましい架橋性単量体は、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、シリル基含有単量体である。
【0017】
本発明において用いられるラテックスは、乳化重合法によって得られることが好ましい。
乳化重合の方法に関しては特に制限はなく、水性媒体中で前記の単量体、連鎖移動剤と界面活性剤、ラジカル重合開始剤と、必要に応じて用いられる他の添加剤成分を基本構成成分とする分散系において、単量体を重合させて合成樹脂粒子の水性分散液、即ちラテックスを製造すればよい。
そして、重合に際しては、単量体組成を全重合過程で均一にする方法や重合過程で逐次、あるいは連続的に変化させることによって生成するラテックス粒子の形態的な組成変化を与える方法など所望に応じてさまざまな方法が利用できる。
【0018】
連鎖移動剤は合成樹脂の分子量やゲル生成量を調整するために汎用的に用いられる。例えば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸などのメルカプタン類やα−メチルスチレンダイマーなど通常の乳化重合で使用可能なものが使用できる。
ただし、乳化重合の際にメルカプト基を有する化合物は、シリコーンとの密着性の点から、使用しないかもしくは他の性能とのバランスの観点からやむ得ず使用するとしても、全ラジカル重合性単量体100重量部に対して、0.3重量部以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.2重量部以下である。
【0019】
界面活性剤としては、例えば脂肪族セッケン、ロジン酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルアリールスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩などのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマーなどのノニオン性界面活性剤が挙げられる。
これらのほかに親水基と親油基を有する界面活性剤の化学構造式の中にエチレン性2重結合を導入した、いわゆる反応性界面活性剤を用いても良い。
【0020】
ラジカル重合開始剤は、熱または還元性物質の存在下ラジカル分解して単量体の付加重合を開始させるものであり、無機系開始剤および有機系開始剤のいずれも使用できる。
このようなラジカル重合開始剤としては、例えば水溶性又は油溶性のペルオキソ二硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等を挙げることができる。
具体的には、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、2,2−アゾビスブチロニトリル、クメンハイドロパーオキサイドなどがあり、また他に、「POLYMER HANDBOOK」(3編)、J.BrandrupおよびE.H.Immergut著、JohnWilly&Sons刊(1989)に記載されている化合物が挙げられる。
【0021】
また、酸性亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸やその塩、エリソルビン酸やその塩、ロンガリットなどの還元剤を重合開始剤に組み合わせて用いる、いわゆるレドックス重合法を採用することもできる。これらの中で特にペルオキソ二硫酸塩が重合開始剤として好適である。
この重合開始剤の使用量は、全単量体の重量に基づき、通常0.1〜5.0重量%の範囲であり、好ましくは0.2〜3.0重量%である。
乳化重合における重合温度は、通常60〜100℃の範囲であるが、前記レドックス重合法等により、より低い温度で重合を行っても良い。また、第1段での重合温度と第2段での重合温度は同じでも異なっていても良い。
【0022】
本発明のラテックスのTgは−40〜40℃が好ましい。より好ましくは−30〜30℃である。
−40℃以上で溶剤バリヤー性が良好で、40℃以下でラテックスの成膜がよい。更に好ましくは−40〜30℃である。
このラテックス中の固形分濃度は40〜60重量%であり、好ましくは40〜55重量%の範囲で選ばれることが望ましい。
また、その平均粒子径は40〜400nmの範囲にあることが望ましく、50〜200nmの範囲にあるのがさらに好ましい。
平均粒子径はシードラテックスや界面活性剤の使用割合などによって調整することができ、一般にその使用割合を高くするほど生成共重合体ラテックスの平均粒子径は小さくなる傾向がある。シードラテックスの重合は、本発明のラテックスの重合に先だって同一反応容器で行っても、異なる反応容器で重合したシードラテックスを用いても良い。
【0023】
本発明で使用するラテックスにおいては、必要に応じ各種重合調整剤を添加することができる。
例えば、pH調整剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムなどのpH調整剤を添加することができる。
また、エチレンジアミン四酢酸ナトリウムなどの各種キレート剤なども重合調整剤として添加することもできる。
【0024】
本発明において使用される亜鉛化合物とは、分子中に亜鉛が含有されているものを指し、例えば塩、酸化物、水和物、錯体等いずれの形態で用いてもよい。
亜鉛化合物の添加は重合の前、重合中、重合後のいずれでもよい。好ましくは、重合後である。
亜鉛化合物が塩の形態である場合、亜鉛イオンと対となるイオンは有機系のイオンでも、無機系のイオンでも、また両者を含んでいる形態であってもよい。
亜鉛イオンと対となるイオンが有機系イオンの場合、亜鉛化合物は、例えば、ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩等の形態で利用される。
亜鉛イオンと対となるイオンが無機系のイオンである場合、多価金属イオンは、例えば、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、炭酸塩等の形態で利用される。
【0025】
亜鉛化合物が錯体の形態である場合、例えば先に挙げた塩との組み合わせが挙げられ、具体的にはアンモニウム錯体、アンミン錯体、多価カルボン酸錯体等が挙げられる。例えば特開昭62−250078号公報に記載されているような炭酸亜鉛アンモニア水溶液、酢酸亜鉛アンモニア水溶液、アクリル酸亜鉛アンモニア水溶液、グリシン亜鉛アンモニア水溶液、リンゴ酸亜鉛アンモニア水溶液等が挙げられる。
亜鉛化合物を添加する際には、水溶液、有機溶剤の溶液、乳化液、ペースト、粉体のスラリー等の形態で添加することができる。
亜鉛化合物の添加量は、ラテックス(固形分換算)100重量部に対して、亜鉛分として0.05〜5重量部である。
0.05重量部以上で耐ブロッキング性が問題なく、5重量部以下で離解性に問題がない。好ましくはラテックス(固形分換算)100重量部に対して、0.1〜3重量部である。
【0026】
また、本発明において必要に応じて顔料を配合しても良い。顔料としては、特に制約はなく、無機または有機の顔料が適宜使用できる。
無機顔料では例えばマグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、チタン、アルミニウム、アンチモン、鉛等の各種金属酸化物、水酸化物、硫化物、炭酸塩、硫酸塩または珪酸塩化合物等が挙げられ、有機顔料では例えば微粉末の形状のポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
具体的には、炭酸カルシウム、カオリン(クレー)、タルク、二酸化チタン、水酸化アルミニウムシリカ、石膏、バライト粉、アルミナホワイト、サチンホワイト等無機顔料が挙げられる。好ましくは炭酸カルシウム、カオリン(クレー)である。
顔料の添加量はラテックス(固形分換算)100重量部に対して、50〜400重量部が好ましい。
【0027】
必要に応じて、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;デキストリン、酸化処理澱粉、架橋澱粉、澱粉エステル、グラフトコポリマー澱粉等の澱粉誘導体等の各種水溶性天然高分子類、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を配合することができる。
さらには増粘剤、消泡剤、濡れ剤、レベリング剤、成膜助剤、可塑剤、分散剤、着色剤、耐水化剤、潤滑剤、防腐剤、架橋剤(例えば水溶性エポキシ化合物等)等が配合されていてもよい。
【0028】
本発明に用いられる原紙は特に制約はないが、例えば広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ等の化学パルプ、GP、RGP、TMP等の機械パルプを原料として用い、長網多筒型抄紙機、長網ヤンキー型抄紙機あるいは丸網抄紙機で抄紙される上質紙、中質紙、片艶紙及びクラフト紙等の酸性紙、中性紙、を包含するものである。
原紙中には紙力増強剤、サイズ剤、填料、歩留向上剤等の抄紙補助薬品が含まれていてもよい。特に限定するものではないが、原紙の米坪は50〜150g/m2程度のものが用いられる。
【0029】
原紙に対するアンダーコート層の塗工設備としては、例えばサイズプレス、ゲートロールコーター、バーコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、グラビアコーター及びコンマコーター等から任意に選定することができる。
塗工量は絶乾重量で2〜25g/m2塗工されるよう調製するのが望ましい。
本発明のラテックスは、原紙に2回以上の塗工操作により塗工してもよい。
【0030】
剥離剤として塗工されるものは特に限定はなく、例えばシリコーン樹脂、フッ素化合物、長鎖アルキルエステル樹脂等が挙げられる。
シリコーン樹脂は上述のとおり通常トルエンやヘキサン等の有機溶剤に溶解して塗工しても良く、または無溶剤型のシリコーン、エマルジョン型のシリコーンを塗工してもよい。
剥離剤の塗工も常法に従って行われる。
【0031】
【実施例】
本発明を下記実施例によって更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらによって限定されるものではない。
なお、例中の塗布量、部数、混合割合などは全て固形分で示した。また、「部」は特に断らない限り「重量部」を示すものである。
各特性は次のようにして求めた。
(I) ガラス転移温度(Tg):
DSCにより測定を行った。10℃/分の昇温速度とし、変曲点をTgとした。
(2) 粒径:
光散乱法により測定を行った。
測定装置は粒径測定装置(LEED&NORTHRUP社製、MICROTRACTMUPA150)を用い、体積平均粒径を測定した。
【0032】
(3) ゲル分:
ガラス板上にラテックスを250μ塗布し、23℃/65%RHの部屋で24時間放置させる。次に、90℃に設定したオーブンに15分放置する。
その後ラテックスフィルムを剥がす。フィルムを0.5g精秤し、トルエン30mlに入れ、3時間振とうする。振とう後325メッシュでろ過し、ろ過残を140℃で1時間乾燥させ、不溶部分を測定する。トルエンに入れる前のフィルム重量に対する不溶部分の割合をゲル分とする。
(4) トルエン浸透性:
後述の亜鉛処理ラテックスとクレーとからなる組成物を50%固形分に調整した後、市販コピー用紙に15g/m2となるよう塗布、乾燥を行った。さらにカレンダー処理(50Kg/cm)を施して試料を作製した。この試料に染料1%を含むトルエン液を2mlスポイトから1滴落とし、浸透時間を測定した。△以上を合格とした。
○:60秒以上浸透しない
△:60秒の時点でトルエンが半分以上残っている
×:5秒以下で浸透する
【0033】
(5) シリコン密着性:
下記組成を有するシリコーン溶液を調製した。
付加反応型シリコーン〔商標:DEHESIEV 940、ワッカーケミカルズイーストアジア(株)製〕 5.0部
剥離力コントロール剤(商標:CRA21、同上製) 6.0部
架橋剤(商標:V94、同上製) 3.7部
触媒(商標:OL、同上製) 0.05部
トルエン 85部
上記溶液を、上記(4) で作製した試料にワイヤーバー#7を使用して、絶乾1.0g/m2となるように塗工し、得られた表面を観察してシリコーンの密着性を評価した。乾燥条件は130℃/30秒とした。△以上を合格とした。
○:硬化後、爪で10回こすり剥離しない
△:硬化後、爪で10回こすり少し剥離する
×:硬化後、爪でこすり簡単に剥離する
【0034】
(6) 離解性;
試料5g小片に切り、2Lの水とともに家庭用ミキサーで10分攪拌し、離解状態を観察した。△以上を合格とした。
○:単繊維状となる
△:僅かに凝集物が見られる
×:凝集物が見られる
(7) ラテックス組成物皮膜の洗浄性:
ガラス板上に亜鉛処理ラテックスを塗布し、23℃/65%RHの部屋で2時間放置させる。その後、ラテックス皮膜付きのガラス板を、23℃の水の中に1分間浸漬する。水中から引き出し、速やかに爪でこすり、その剥がれ、再分散状態を観察した。△以上を合格とした。
○:爪でこすり簡単に剥がれると共に、皮膜が壊れた。
△:爪でこすり簡単に剥がれた。
×:爪でこすっても簡単に剥がれず、皮膜の破壊もなかった。
【0035】
(8) 耐ブロッキング性;
上記(4) で作製した試料を二枚用い、塗布面と未塗布面とを重ね合わせて50g/cm2で加圧し、60℃/60%RHの雰囲気下に24時間放置する。
その後ゆっくりと引き離す。△以上を合格とした。
○:抵抗なく引き離すことができる。
△:僅かに抵抗はあるが引き離すことができる。
×:抵抗があり紙が破れることがある。
【0036】
(製造例1)
平均直径0.04μmのシード粒子の水性分散体(シード固形分濃度34重量%)1.0重量部を撹拌装置と温度調節用ジャケットを取り付けた耐圧反応容器に入れ、さらに水70重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.3重量部、イタコン酸3重量部を仕込み(以上初期仕込み)、内温を80℃に昇温し、次いでスチレン56部、ブタジエン41部、α−メチルスチレンダイマー0.2部、t−ドデシルメルカプタン0.3部からなる混合モノマー溶液(以上モノマー系)と、水25部、水酸化ナトリウム0.15部、ラウリル硫酸ナトリウム0.15部、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1重量部からなる開始剤系水溶液(以上水系)を、それぞれ6時間および7時間かけて一定の流速で添加した。
そして80℃の温度をそのまま4時間保ったのち冷却した。次いで生成したジエン系共重合ラテックスに水酸化ナトリウム1.5部を添加することでpHを5.5前後にした。次にスチームストリッピング法により未反応単量体を除去し、その後25%水酸化ナトリウム水溶液でpHを8に調整した。次いで200メッシュの金網で濾過した。このジエン系共重合体ラテックスは最終的には固形分濃度50重量%になるように調整した。粒径は180nmであった。
【0037】
(製造例2〜6)
下記表1に記載したラジカル重合性単量体に基づいて、実施例1と同様に重合を行った。粒径は全て170〜190nmの範囲にあった。
(製造例7)
スチレン57部、2−エチルヘキシルアクリレート40部、メタクリル酸2部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1部に、エマルゲン950[花王(株)製、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル]の25%水溶液8部、レベノールWZ[花王(株)製、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム]の25%水溶液4部、過硫酸アンモニウム2部、蒸留水43部を添加し、ホモミキサーで撹拌を行いプレ乳化物を作製した。
別に、撹拌機付きフラスコに蒸留水40部、エマルゲン950の25%水溶液2部を仕込み、80℃に昇温し、過硫酸アンモニウム0.1部を水5部に溶解したものを添加する。これに、前記プレ乳化物を4時間かけて連続滴下する。次いで、過硫酸アンモニウム0.1部を水5部に溶解したものを添加し、同温度で1時間重合を続けた。その後、30℃以下まで冷却し、25%濃度のアンモニア水でpHを7に調整して固型分50%のエマルジョンを得た。
ラテックスのTgは19℃、ゲル分は90%であった。
【0038】
【表1】
【0039】
(実施例1〜8)
下記表2に記載の組成物を作製した。配合はラテックスに33%濃度に調整した酸化亜鉛の水性分散液を所定量投入し、60℃で30分攪拌し、冷却する。以下亜鉛処理ラテックスという。
次に、以下の配合でアンダーコート用の組成物を調整した。
亜鉛処理ラテックス 100部(固形分)
クレー 100部
分散剤 1部(固形分)
水 100部
その評価結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
(比較例1〜2)
評価結果を実施例1と同様に表3に示す。
【表3】
【0042】
【発明の効果】
本発明のラテックス組成物によると、このラテックス組成物を塗工した層の上に直接シリコーンなどの有機溶剤溶液を塗工することができ、シリコーン密着性が良好でかつ優れた剥離性を有し、しかも使用済剥離紙を回収し、製紙工程で再利用することができると共に、アンダーコート塗布後の耐ブロッキング性、塗工装置の洗浄性が良好である。
Claims (4)
- エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.5〜10重量%、共役ジエン系単量体10〜70重量%、芳香族ビニル系単量体10〜70重量%、これらと共重合可能なビニル系単量体0重量%とを含むラジカル重合性単量体、及びα−メチルスチレンダイマーを含む混合物を乳化重合して得られるカルボキシル基変性ラテックスであり、かつ、そのゲル分が80%以上であって、該ラテックスを乳化重合する際メルカプト基を有する化合物を添加しないようにして得られるラテックス、亜鉛化合物からなることを特徴とする剥離紙アンダーコート用ラテックス組成物。
- エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.5〜10重量%、共役ジエン系単量体10〜70重量%、芳香族ビニル系単量体10〜70重量%、これらと共重合可能なビニル系単量体0重量%とを含むラジカル重合性単量体とを含むラジカル重合性単量体、及びα−メチルスチレンダイマーを含む混合物を乳化重合して得られるカルボキシル基変性ラテックスであり、かつ、そのゲル分が80%以上であって、該ラテックスを乳化重合する際メルカプト基を有する化合物をその添加量が全ラジカル重合性単量体100重量部に対して、0.3重量部以下であるようにして得られるラテックス、亜鉛化合物からなることを特徴とする剥離紙アンダーコート用ラテックス組成物。
- エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.5〜10重量%、共役ジエン系単量体10〜70重量%、芳香族ビニル系単量体10〜70重量%、これらと共重合可能なビニル系単量体0重量%超50重量%以下とを含むラジカル重合性単量体、及びα−メチルスチレンダイマーを含む混合物を乳化重合して得られるカルボキシル基変性ラテックスであり、かつ、そのゲル分が80%以上であって、該ラテックスを乳化重合する際メルカプト基を有する化合物を添加しないようにして得られるラテックス、亜鉛化合物からなることを特徴とする剥離紙アンダーコート用ラテックス組成物。
- エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.5〜10重量%、共役ジエン系単量体10〜70重量%、芳香族ビニル系単量体10〜70重量%、これらと共重合可能なビニル系単量体0重量%超50重量%以下とを含むラジカル重合性単量体とを含むラジカル重合性単量体、及びα−メチルスチレンダイマーを含む混合物を乳化重合して得られるカルボキシル基変性ラテックスであり、かつ、そのゲル分が80%以上であって、該ラテックスを乳化重合する際メルカプト基を有する化合物をその添加量が全ラジカル重合性単量体100重量部に対して、0.3重量部以下であるようにして得られるラテックス、亜鉛化合物からなることを特徴とする剥離紙アンダーコート用ラテックス組成物。
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