JP4452818B2 - 橋梁における伸縮継手部の樋補修方法 - Google Patents

橋梁における伸縮継手部の樋補修方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高速道路等の橋梁において、夏期や冬期等における温度差によって道路の長さ方向に伸縮する橋桁の変位を吸収するための伸縮継手部における樋補修方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、道路用橋梁における伸縮継手部は、図7に示すように、橋桁21、21の対向端面に固着しているウエブ22、22を一定の遊間を存して対向させ、これらのウエブ22、22の上端側における橋桁21、21の対向面に上面を舗装面に合わせて互いに櫛歯を噛み合わせている一対のフェースプレート23a 、23a からなるフィンガージョイント23を固着してこのフィンガージョイント23によって橋桁の伸縮による変位を吸収するように構成している。
【0003】
さらに、フィンガージョイント23のフェースプレート23a 、23a 間の隙間から雨水が地上に流下するのを防止するために、橋桁21、21の対向するウエブ22、22間にステンレス製の樋24を橋桁21の幅方向に配設し、この樋24の両側壁部の上端部をフィンガージョイント23のフェースプレート23a 、23a の下面に沿って屈折させ、その屈折部をウエブの上端面に固着した鋼板25とフェースプレート23a とで挟着、固定して樋24の上端開口部をフィンガージョイント23の下面に臨ませている。なお、この樋24内にはフォームラバー等の充填材26が充填されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記樋24は地震などの大きな振動を受けた時に、破損したり亀裂が発生すると共に樋同士の接続部分が上下にずれたり或いは長さ方向に外れたりして隙間が発生し、この隙間や上記亀裂部分から雨水が地上に流下すると共に橋桁21の下部構造内に浸入して鋼桁が短期間で錆びるという問題点があった。また、長期間に亘る橋桁21の伸縮作用や道路上を走行する車両から受ける振動によって樋24の上端開口部が繰り返し変動した場合においても、フィンガージョイント23と鋼板25とで挟着される樋24の屈折部付近、即ち、この樋24の両側壁の上端付近がその繰り返し応力によって亀裂が発生し、地上への雨水の流下や鋼桁が錆びる原因となっている。
【0005】
さらに、樋に生じた上記亀裂や破損の補修や樋同士の接続部に生じた段差等の隙間の補修は、その亀裂部や段差等の隙間部分を板状の被覆材によって被覆することにより行われているが、道路上を頻繁に走行する車両の振動によって短期間で剥がれたり、樋と被覆材との間に隙間が発生して再び漏水が生じるという問題点があった。
【0006】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、既設の樋に生じている亀裂や段差等の不良箇所に対してその箇所からの漏水を確実に防止し得るように簡単に施工することができる橋梁における伸縮継手部の樋補修方法を提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1に係る発明は、一定の桁遊間を存して対向している橋桁の上端間をフィンガージョイントを介して伸縮自在に接続していると共にこのフィンガージョイントの下面側における橋桁の対向端面に固着した鋼板製ウエブ間に樋を橋桁の幅方向に配設し、この樋の両側壁部上端を対向する橋桁のウエブの上端部側に固着してなる橋梁における伸縮継手部の樋補修方法であって、上記ウエブに発生している錆を除去すると共に樋の外面を清掃したのち、少なくとも亀裂や破損が生じている樋部分に、該樋の外面から上記橋桁の対向するウエブに亘って合成樹脂液を吹き付けて硬化させることにより伸縮性止水性を有する合成樹脂層を形成することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、一定の桁遊間を存して対向している橋桁の上端間をフィンガージョイントを介して伸縮自在に接続していると共にこのフィンガージョイントの下面側における橋桁の対向端面に固着した鋼板製ウエブ間に樋を橋桁の幅方向に配設し、この樋の両側壁部上端を対向する橋桁のウエブの上端部側に固着してなる橋梁における伸縮継手部の樋補修方法であって、上記ウエブに発生している錆を除去すると共に樋の外面を清掃したのち、少なくとも亀裂や破損が生じている樋部分における両側壁部と上記ウエブとの間の隙間に充填材を充填し、しかるのち、この充填材から露出している樋の底面と該充填材の下面及びウエブの対向面に亘って合成樹脂液を吹き付けて硬化させることにより、伸縮性と止水性を有する合成樹脂層を形成することを特徴とする
【0009】
さらに、請求項3に係る発明は、一定の桁遊間を存して対向している橋桁の上端間をフィンガージョイントを介して伸縮自在に接続していると共にこのフィンガージョイントの下面側における橋桁の対向端面に固着した鋼板製ウエブ間に樋を橋桁の幅方向に配設し、この樋の両側壁部上端を対向する橋桁のウエブの上端部側に固着してなる橋梁における伸縮継手部の樋補修方法であって、上記ウエブに発生している錆を除去すると共に樋の外面を清掃したのち、少なくとも亀裂や破損が生じている樋部分における両側壁部と上記ウエブとの間の隙間に充填材を充填し、次いでこの充填材の下面に樋の外底面両側部からウエブに亘って帯状ゴムシートよりなる弾性伸縮部材を貼り付けたのち、これらの弾性伸縮部材間に露出している樋の底部外面と弾性伸縮部材の下面に連なるウエブの対向面に亘って合成樹脂液を吹き付けて硬化させることにより、伸縮性と止水性を有する合成樹脂層を形成することを特徴とする
【0010】
【作用】
地震等の振動によってフィンガージョイントのフェースプレートが道路の長さ方向に伸縮したり上下方向に変位した場合、或いは、橋桁の伸縮や道路上を走行する車両によってフェースプレートが上下に振動した場合、フィンガージョイントの下面側に配設している樋がフェースプレートと一体的にその上端開口部を拡縮したり該樋の両側壁部が互いに上下方向にずれたりして亀裂や破損が生じても、この樋の外面を被覆している伸縮性並びに止水性を有する合成樹脂層は樋の変動に応じて伸縮して亀裂等が生じることはなく常に樋を被覆した状態を保持して樋の亀裂部から雨水が漏水するのを防止する。
【0011】
さらに、合成樹脂層はその両端部を樋の外面から橋桁の対向するウエブに一体に接続しているから、橋桁の振動に応じて該合成樹脂層の両端部が伸縮して樋とウエブとの間の隙間を常に閉止した状態にし、樋の両側壁部の上端に亀裂や破損が生じても、その亀裂や破損部分を通じて樋とウエブとの間の隙間に浸入する雨水が下方に漏出するのを確実に防止する。従って、橋桁の下部構造に雨水の浸入によって錆の発生するのを防止することができる。
【0012】
また、地震等の振動によって樋同士の接続部に段差が生じたり接続部が長さ方向に伸縮移動した場合、その接続部の外面を被覆している弾性伸縮部材とこの弾性伸縮部材の外面に層着している合成樹脂層が樋相互の変動に応じて伸縮し、振動がおさまった時にはこれらの弾性伸縮部材と合成樹脂層との弾性復元力によって元の接続状態に復帰させて樋間に段差や隙間が生じるのを防止することができる。また、元の接続状態に復帰できなくても、その接続部を弾性伸縮部材と合成樹脂層とで被覆した状態を維持して接続部間の隙間からの漏水を防止することができる。
【0013】
上記合成樹脂層は、樋の外面に合成樹脂液を吹き付けて硬化させることにより形成され、従って、亀裂や破損等が発生している樋を補修する際には合成樹脂層を作業性良く形成することができる。この場合、合成樹脂層はウレタン樹脂やウレア樹脂、又はウレアウレタン樹脂等のように伸縮性を有していて施工後に橋桁が振動してもその振動による変位に追随するが、この合成樹脂層を形成する合成樹脂液は橋桁に吹き付けたのち硬化するまでは十分な延性を発揮することができず、そのため、樋の外面から対向する橋桁のウエブ間に亘って合成樹脂液の吹き付けによる補修作業を行う時、特に、橋梁の使用中に補修作業を行う場合には、走行する車両等の振動によって合成樹脂液が硬化する前に合成樹脂層が破断してしまう虞れがある。
【0014】
このため、補修時には、合成樹脂液の吹き付け作業を行う前に、樋の両側壁外面と橋桁のウエブ間に帯状の弾性伸縮部材を張設状態で固定し、この弾性伸縮部材によって道路上を走行する車両の振動を吸収させながら樋の外底面から弾性伸縮部材の下面とに両側ウエブの対向面間に亘って合成樹脂液の吹き付け作業を行うものである。この場合、上記弾性伸縮部材は合成樹脂液の吹き付け圧によって外れる虞れがあるので、予め、樋の両側壁部外面と橋桁のウエブとの間の隙間に充填材を詰めておき、この充填材の下面によって弾性伸縮部材を受止させておくことが好ましい。
【0015】
また、地震等の振動によって樋同士の接続部間に生じた段差や長さ方向のずれを補修する場合においても、上記のように予め、樋間の接続部の外面を弾性伸縮部材によって被覆しておいたのち、この弾性伸縮部材によって道路上を走行する車両の振動を吸収させながら弾性伸縮部材の外面に合成樹脂液を吹き付けて合成樹脂層を形成するものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に本発明の具体的な実施の形態を図面について説明する。図1は道路用橋梁における伸縮継手部の縦断正面図であって、一定の桁遊間Aを存して橋脚上に橋桁1を順次道路の長さ方向に構築してなる橋梁において、隣接する橋桁1、1の対向端面にはリブプレート2、2を介して鋼板製のウエブ3、3を固着してあり、これらのウエブ3、3間に上記桁遊間Aの間隔よりも狭い遊間からなる隙間Bを設けている。なお、橋桁1はその上面にアスファルト舗装4を施している。
【0017】
さらに、ウエブ3の上端面からリブプレート2の上端面に亘って鋼板5を水平状態にして固着してあり、隣接する橋桁1、1におけるこれらの鋼板5、5の上面間にフィンガージョイント6を架設状態に装着している。フィンガージョイント6は公知のように、互いに櫛歯6b、6bを噛み合わせ状態にして鋼板5、5上にそれぞれ固定した一対のフェースプレート6a、6aからなり、これらのフェースプレート6a、6aの上面を舗装面に面一状態にして鋼板5、5にボルト11によって固着され、橋桁1の長さ方向の伸縮による変位をこのフィンガージョイント6によって吸収するように構成している。
【0018】
隣接する橋桁1、1における上記対向するウエブ3、3の遊間によって形成された隙間B内の上部には、断面U字状のステンレス製の樋7が橋桁1の幅方向に配設されてあり、この樋7の上端開口部を上記フィンガージョイント6における互いに噛み合わせた櫛歯6b、6bの下面に臨ませた状態で橋桁1の全幅に亘って固着されている。
【0019】
この樋7は、円弧状に湾曲している底部7aから上方に延びている両側壁部7b、7bの上端に、対向する橋桁1、1側に向かって水平に屈折させてなる取付板部7c、7cを一体に設けてあり、その直角に屈折した屈折部7dをウエブ3から突出している鋼板5の先端角部に係止状態で受止させていると共に、この取付板部7a、7aを橋桁1、1の上記鋼板5、5の上面とフェースプレート6a、6aの下面で挟着させた状態で上記ボルト11により固着させている。
【0020】
さらに、樋7はウエブ遊間、即ち、ウエブ3、3間の上記隙間Bよりも幅狭く形成されていて、樋7の両側壁部7b、7bの外面とウエブ3、3との対向面間に隙間C、Cが形成されてあり、この隙間C、Cに露出した樋7の底部7aから両側壁部7b、7bと、鋼板5の突出端部の下面と、ウエブ3、3の対向面上部とに亘り、ウレタン樹脂、ウレア樹脂又はウレアウレタン樹脂からなる伸縮性と止水性を有する合成樹脂層8を層着している。
【0021】
また、樋7は橋桁1の幅寸法を数分割した一定長さを有しており、従って、橋桁1の幅方向に数本の樋7、7を図2に示すように、互いにその対向端部を重ね合わせた状態あるいは突き合わせた状態で接続していてこの接続部においても上記同様に隣接する樋7、7の底部7aから両側壁部7b、7bと、鋼板5の突出端部の下面と、ウエブ3、3の対向面上部とに亘って合成樹脂層8を連続的に層着している。
【0022】
図4は本発明の別な実施の形態を示すもので、樋7の両側壁部7b、7bと橋桁1、1のウエブ3、3との間の隙間C、Cに速乾性樹脂、スポンジ等の適宜な材料からなる充填材9、9を充填してこの充填材9、9から樋7の底部を下方に露出させた状態にし、この樋7の露出底部外面と充填材9、9の下面、及び該充填材9、9の下面に連なるウエブ3、3の対向面に亘って合成樹脂層8を連続的に層着してなるものである。この構成によれば両側壁部7b、7bとウエブ3、3との間の隙間Cに合成樹脂層8を層着する必要とないので、合成樹脂層8の施工作業が容易に行えると共に合成樹脂層8の層着状態が確実に直視できて不良箇所の発生をなくし得るものである。その他の構造については上記実施の形態と同様であるので、同一部分に同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0023】
図5は本発明のさらに別な実施の形態を示すもので、樋7の底部を残して両側壁部7b、7bと橋桁1、1のウエブ3、3との間の隙間C、Cに速乾性樹脂、スポンジ等の適宜な材料からなる充填材9、9を充填すると共にこれらの充填材9、9の下面に隙間Cよりも幅広い帯状ゴムシートよりなる弾性伸縮部材10、10を貼り付け、さらに、弾性伸縮部材10、10の両側端部を樋7の外底面両側部とウエブ3、3の対向面に一体に貼着していると共に、両側の弾性伸縮部材10、10間から露出している樋7の底部外面と弾性伸縮部材10、10の下面、及びこれらの弾性伸縮部材10、10の下面に連なるウエブ3、3の対向面に亘って合成樹脂層8を連続的に層着してなるものである。その他の構造については上記実施の形態と同様であるので、同一部分に同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0024】
さらに、隣接する樋7、7の接続部においては、図6に示すように、これらの樋7、7の外底面間に亘って一定幅と長さを有するゴムシートよりなる弾性伸縮部材10' を貼り付けて樋7、7間の接続部の隙間を密閉し、この弾性伸縮部材10’の下面と、該弾性伸縮部材10' の両端部を重ね合わせている上記両側の弾性伸縮部材10、10及びウエブ3、3の対向面に亘って合成樹脂層8を連続的に層着している。なお、両側の弾性伸縮部材10、10を設けることなく幅広い弾性伸縮部材10' によって樋7、7の外底面からウエブ3、3の対向面に亘って貼着、被覆しておいてもよい。
【0025】
上記いずれの実施の形態においても、合成樹脂層8はウレタン樹脂、ウレア樹脂又はウレアウレタン樹脂からなる伸縮性と止水性を有する合成樹脂製の帯板状物を接着剤によって樋7の外面から橋桁1、1のウエブ3、3の対向面間に亘って取付けてもよいが、このような合成樹脂製帯板状物を施工するには、道路上を走行する車両によって樋7が常に振動しているためにその施工に困難を伴うばかりでなく、高所での長尺な合成樹脂製帯状板物の取扱いが困難でなって作業性が悪くなるため、ウレタン樹脂、ウレア樹脂又はウレアウレタン樹脂の合成樹脂液を樋7の外面からウエブ3、3に亘って吹き付けることにより形成される。
【0026】
この合成樹脂液の吹き付けによる合成樹脂層8の形成は、既設の橋梁において、地震等の振動によって樋7に亀裂や破損が生じた際に、その破損部分を補修するために採用される。
【0027】
次に、地震等の振動によって破損等が生じた樋7の補修方法について説明する。まず、合成樹脂液との接着性能を向上させるために、橋桁1、1の対向するウエブ3、3に発生している錆をワイヤブラシ等によって除去すると共にステンレス製の樋7の外面も清掃する。なお、樋7はステンレス以外の金属材料から形成されたものであってもよい。
【0028】
次いで、清掃した面をプライマー処理し、しかるのち、合成樹脂液を少なくとも亀裂や破損が生じている樋部分に該樋7の外面から橋桁1、1の対向するウエブ3、3に亘って吹き付けることにより所定厚みの合成樹脂層8を形成する。
【0029】
この場合、図1に示す実施の形態においては合成樹脂液を樋7の底部7aから両側壁部7b、7bと、鋼板5の突出端部の下面と、橋桁1、1のウエブ3、3の対向面上部とに亘り、連続的に吹き付けて合成樹脂層8を形成しているが、樋7の両側壁部7b、7bとウエブ3、3との間の隙間Cが狭いと、吹き付け状態を直視することが困難となって吹き付け不良箇所が生じる虞れがあると共に、施工時間が長くなり、且つ合成樹脂液の使用量が多くなって不経済となるため、図4に示す実施の形態のように、合成樹脂液の吹き付けを行う前に、樋7の両側壁部7b、7bとウエブ3、3との間の隙間C、Cに詰め物(充填材9)を充填しておくことが好ましい。
【0030】
この充填材9としては、作業の能率化を図るために、速乾性の合成樹脂を充填して短時間で硬化させる。しかるのち、この充填材9、9から露出している樋7の底部底面と該充填材9、9の下面、及びウエブ3、3の対向面に亘って合成樹脂液を吹き付け、硬化させることによって合成樹脂層8を形成するものである。
【0031】
また、樋7の両側壁部7b、7bとウエブ3、3との間の隙間Cに上記充填材9、9を充填したのち、この充填材9、9上に合成樹脂液を直接、吹き付けると、その吹付圧によって充填材9が変形して止水層としての機能を発揮する厚みを有する合成樹脂層8を形成することができない事態が生じる虞れがある。さらに、ウレタン樹脂やウレア樹脂、又はウレアウレタン樹脂の樹脂液は、硬化後には、伸縮性を発揮して橋桁1が振動してもその振動による変位に追随するが、この合成樹脂液は橋桁に吹き付けたのち硬化するまでは十分な延性を発揮することができず、走行する車両等の振動によって合成樹脂液が硬化する前に部分的に破断してしまう虞れがある。
【0032】
このため、合成樹脂液の吹き付け作業を行う前に、図5の実施の形態で示したように、樋7の両側壁部7b、7bの外面と橋桁1、1のウエブ3、3間の隙間Cに充填している充填材9、9の下面に樋7の外底面両側部からウエブ3、3に亘って帯状ゴムシートよりなる弾性伸縮部材10、10を貼り付けたのち、これらの弾性伸縮部材10、10間から露出している樋7の底部外面と弾性伸縮部材10、10の下面、及びこの弾性伸縮部材10、10の下面に連なるウエブ3、3の対向面に亘って合成樹脂液を吹き付けて硬化させることにより合成樹脂層8を形成するものである。
【0033】
従ってこの樋の補修方法によれば、充填材9を介して弾性伸縮部材10、10により合成樹脂液の吹付圧を受止させ且つ道路上を走行する車両の振動を吸収させて合成樹脂液の破断部分の発生を防止しながら略均一な層厚となるように吹き付け作業を行うことができる。
【0034】
また、地震等の振動によって橋桁1、1同士の接続部間に生じた段差や長さ方向のずれを補修する場合においても、上記のように、その接続部間における樋7の両側壁部7b、7bとウエブ3、3との間の隙間Cに充填材9、9を充填したのち、これらの充填材9、9の下面に樋7の外底面両側部からウエブ3、3に亘って帯状ゴムシートよりなる弾性伸縮部材10、10を貼り付けると共に樋7、7の外底面に同じくゴムシートよりなる弾性伸縮部材10' をその両端部を上記両側の弾性伸縮部材10、10上に重ね合わせた状態で貼り付けて樋7、7間の接続部の隙間を密閉し、しかるのち、この弾性伸縮部材10’の下面と、上記両側の弾性伸縮部材10、10及びウエブ3、3の対向面に亘って合成樹脂液を吹き付けて硬化させることにより合成樹脂層8を形成する。
【0035】
この場合、上記両側の弾性伸縮部材10、10は設けることなく、樋7の外底面に貼着する弾性伸縮部材10' を対向する橋桁1、1のウエブ遊間の幅よりも幅広く形成しておき、この弾性伸縮部材10' を充填材9、9間から露出している樋7の外面から充填材9、9の下面に直接貼着すると共にその両側端部をウエブ3、3に貼り付けてもよい。なお、上記の説明では、床版が鋼製の場合について説明しているが、本発明の構造はRC床版についても鋼製床版の場合と同様に適用することができる。
【0036】
【発明の効果】
以上のように本発明の橋梁における伸縮継手部の樋補修方法によれば、一定の桁遊間を存して対向している橋桁の上端間をフィンガージョイントを介して伸縮自在に接続していると共にこのフィンガージョイントの下面側における橋桁の対向端面に固着した鋼板製ウエブ間に樋を橋桁の幅方向に配設し、この樋の両側壁部上端を対向する橋桁のウエブの上端部側に固着してなる橋梁における伸縮継手部の樋補修方法であって、上記ウエブに発生している錆を除去すると共に樋の外面を清掃したのち、少なくとも亀裂や破損が生じている樋部分に、該樋の外面から上記橋桁の対向するウエブに亘って合成樹脂液を吹き付けて硬化させることにより伸縮性止水性を有する合成樹脂層を形成することを特徴とするものであるから、地震等によって樋に亀裂や破損等が発生した場合には、その亀裂や破損箇所を合成樹脂液の吹き付けによって簡単且つ確実に補修することができ、雨水が樋から地上や橋梁の下部構造部側に漏出するのを防止することができる。
【0037】
上記合成樹脂層はウレタン樹脂やウレア樹脂、又はウレアウレタン樹脂等のように伸縮性を有していて施工後に橋桁が振動してもその振動による変位に追随するが、この液状物は橋桁に吹き付けたのち硬化するまで十分な延性を発揮することができず、そのため、樋の外面から対向する橋桁のウエブ間に亘って合成樹脂液の吹き付けによる補修作業を行う時に、道路上を走行する車両等の振動によって合成樹脂液が硬化する前に合成樹脂層が破断してしまう虞れがあるが、請求項3に係る発明によれば、樋の両側壁部外面と橋桁のウエブとの間の隙間に充填材を充填すると共に、この充填材の下面に沿って樋の外底面両側部とウエブの対向端面間に帯状の弾性伸縮部材を橋桁の幅方向に固定し、これらの弾性伸縮部材の対向内端面間に露出している樋の外底面と弾性伸縮部材の下面とに両側ウエブの対向面間に亘って合成樹脂液を吹き付けて合成樹脂層を形成しているので、充填材を介して弾性伸縮部材により合成樹脂液の吹付圧を受止させ且つ道路上を走行する車両の振動を吸収させて合成樹脂液の破断の発生を防止しながら略均一な層厚となるように吹き付け作業を行うことができる。
【0038】
さらに、上記樋間の接続部の外面を弾性伸縮部材によって被覆していると共にこの弾性伸縮部材の外面に合成樹脂層を層着することによって、地震等の振動によって樋同士の接続部に段差が生じたり接続部が長さ方向に伸縮移動しても、その接続部の外面を被覆している弾性伸縮部材とこの弾性伸縮部材の外面に層着している合成樹脂層が樋相互の変動に応じて伸縮して振動がおさまった時にはこれらの弾性伸縮部材と合成樹脂層との弾性復元力によって元の接続状態に復帰させることができると共に、元の接続状態に復帰できなくても、その接続部を弾性伸縮部材と合成樹脂層とで被覆した状態を維持して接続部間の隙間からの漏水を防止することができる。
【0039】
また、地震等によって樋間の接続部に段差や長さ方向のずれが生じた場合には、上記弾性伸縮部材を樋間の接続部の外面間に亘って被覆し、この外面に合成樹脂液を吹き付けによる合成樹脂層を形成することによって接続部を止水構造とする補修作業が容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の橋梁における伸縮継手部の構造の一実施形態を示す簡略縦断正面図。
【図2】 その簡略縦断側面。
【図3】 フィンガージョイント部分の平面図。
【図4】 本発明の別な実施の形態を示す簡略縦断正面図。
【図5】 本発明のさらに別な実施の形態を示す簡略縦断正面図。
【図6】 樋間の接続部分の簡略縦断側面図。
【図7】 従来例を示す簡略縦断正面図。
【符号の説明】
1 橋桁
3 ウエブ
5 鋼板
6 フィンガージョイント
7 樋
8 合成樹脂層
9 充填材
10 弾性伸縮部材

Claims (3)

  1. 一定の桁遊間を存して対向している橋桁の上端間をフィンガージョイントを介して伸縮自在に接続していると共にこのフィンガージョイントの下面側における橋桁の対向端面に固着した鋼板製ウエブ間に樋を橋桁の幅方向に配設し、この樋の両側壁部上端を対向する橋桁のウエブの上端部側に固着してなる橋梁における伸縮継手部の樋補修方法であって、上記ウエブに発生している錆を除去すると共に樋の外面を清掃したのち、少なくとも亀裂や破損が生じている樋部分に、該樋の外面から上記橋桁の対向するウエブに亘って合成樹脂液を吹き付けて硬化させることにより伸縮性止水性を有する合成樹脂層を形成することを特徴とする橋梁における伸縮継手部の樋補修方法
  2. 一定の桁遊間を存して対向している橋桁の上端間をフィンガージョイントを介して伸縮自在に接続していると共にこのフィンガージョイントの下面側における橋桁の対向端面に固着した鋼板製ウエブ間に樋を橋桁の幅方向に配設し、この樋の両側壁部上端を対向する橋桁のウエブの上端部側に固着してなる橋梁における伸縮継手部の樋補修方法であって、上記ウエブに発生している錆を除去すると共に樋の外面を清掃したのち、少なくとも亀裂や破損が生じている樋部分における両側壁部と上記ウエブとの間の隙間に充填材を充填し、しかるのち、この充填材から露出している樋の底面と該充填材の下面及びウエブの対向面に亘って合成樹脂液を吹き付けて硬化させることにより、伸縮性と止水性を有する合成樹脂層を形成することを特徴とする橋梁における伸縮継手部の樋補修方法
  3. 一定の桁遊間を存して対向している橋桁の上端間をフィンガージョイントを介して伸縮自在に接続していると共にこのフィンガージョイントの下面側における橋桁の対向端面に固着した鋼板製ウエブ間に樋を橋桁の幅方向に配設し、この樋の両側壁部上端を対向する橋桁のウエブの上端部側に固着してなる橋梁における伸縮継手部の樋補修方法であって、上記ウエブに発生している錆を除去すると共に樋の外面を清掃したのち、少なくとも亀裂や破損が生じている樋部分における両側壁部と上記ウエブとの間の隙間に充填材を充填し、次いでこの充填材の下面に樋の外底面両側部からウエブに亘って帯状ゴムシートよりなる弾性伸縮部材を貼り付けたのち、これらの弾性伸縮部材間に露出している樋の底部外面と弾性伸縮部材の下面に連なるウエブの対向面に亘って合成樹脂液を吹き付けて硬化させることにより、伸縮性と止水性を有する合成樹脂層を形成することを特徴とする橋梁における伸縮継手部の樋補修方法
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