JP4451578B2 - 真空チャック - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコンウエハに代表される半導体基板や、他の各種基板など、製造工程上、その平面度が厳密に求められる物体の処理、測定、運搬、加工などに用いられる真空チャックに関する。
【0002】
【従来の技術】
シリコンに代表されるシリコンウエハ等の半導体基板や、他の各種基板などを処理、測定、運搬、加工する際に、これら被吸着物を吸着する方法として、真空処理装置等の低圧力の環境下でない場合には、吸着物の下面側を真空引きして大気圧により密着させるいわゆる真空吸着法が一般的に採用されている。
【0003】
このような真空吸着法により被吸着物を吸着する真空チャックは、被吸着物とチャックとの接触面積が大きいと、被吸着物が真空チャックからの粒子などの汚染物質により汚染され、製造歩留まりを著しく下げる危険性がある。また、剛性の低い材料で真空チャックを作成すると、吸着時に被吸着物の変形が生じてやはり歩留まりを著しく低下させる危険性がある。そのため従来から真空チャックとして剛性が高く高純度なセラミック材料が用いられている。また、真空チャックと被吸着物との接触面積を小さくするために、真空チャックの本体の載置面の外周に被吸着物が載置される周壁を設け、周壁で囲まれた凹部の底部に、周壁と同じ高さで多数の支持突起を持つ構造が採用されている(特開平4−323849号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような構造の真空チャックの場合、支持突起上面と被吸着物との接触面積をできるだけ小さくするために、支持突起上面の直径を0.2mm程度にする必要があるが、このような小さな面積の支持突起では剛性が低いため、真空吸着によって変形を生じ、平面度を保てないという問題がある。
【0005】
また、周壁は連続的に形成されているために必然的に周壁部分は真空チャック本体の支持突起が形成されている部分に比べ剛性が高くなり、被吸着物を吸着した際に、被吸着物が周壁の部分で0.2〜0.6μm程度盛り上がり、被吸着物の平面度が十分に保てないという問題がある。
【0006】
さらに、この種の真空チャックにおいては、真空チャックから被吸着物を剥がす際に、被吸着物を突き上げ棒で突き上げるため、真空チャックにはこの突き上げ棒が移動するための穴が形成されており、この突き上げ棒の穴の周囲に穴から空気の流入を防止するための空気流入防止壁が設けられるが、このような空気流入防止壁を設ける場合にも、その部分の剛性が支持突起が形成されている部分よりも高くなる傾向がみられ、その部分の平面度が保てないという問題もある。
【0007】
このような問題を解消するために、現状では、真空吸着した際に平面度が悪くなる部分を手作業によってわずかに研磨加工し平面度を確保しているが、この方法では時間とコストが莫大にかかってしまい現実的ではない。
【0008】
また、真空チャックは、シリコンウエハ等の極めて高精度が要求されるものを吸着するものであるため、被吸着物へのパーティクルの付着が極めて少ないことが要求される。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、研磨加工を行うことなく、被吸着物を吸着した際の平面度を確保することができ、かつ被吸着物へのパーティクルの付着が少ない真空チャックを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、真空チャックの構成材料として、ヤング率が300GPa以上の緻密質の高剛性セラミックスを用い、かつ真空チャック本体の周壁や空気流入防止壁の部分の厚さを調整することが有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、被吸着物を真空吸着する真空チャックであって、平板状の本体と、前記本体の一方の面の周縁に設けられ被吸着物が載置される周壁と、前記本体の前記周壁で囲まれた凹部の底部に設けられ、前記周壁と実質的に同じ高さで被吸着物を支持する多数の支持突起と、前記凹部の底部に設けられ、前記凹部内を排気する排気口とを有し、構成材料が、相対密度99%以上で、ヤング率が300GPa以上の緻密質セラミックス焼結体からなり、前記本体の外周から、前記周壁の内周およびその内周より50mm内側の間までの部分の板厚が、4mm以下であることを特徴とする真空チャックを提供する。
【0012】
このような構成により、真空チャックの本体と支持突起部の剛性が高いため真空吸着の際に大気圧による支持突起部の変形を生じにくくすることができ、また、本体の外周から所定の距離までの部分の板厚を4mm以下としたので周壁部分の剛性を小さくすることができる。このため、真空吸着した際の支持突起の変形量と本体の周壁部分の変形量との差を著しく小さくすることができ、例えば、被吸着物を吸着した際の、支持突起上面と周壁上面の平面度を0.1μm以下に保つことができる。
【0013】
また、本発明は、被吸着物を真空吸着する真空チャックであって、平板状の本体と、前記本体の一方の面の周縁に設けられ被吸着物が載置される周壁と、前記本体の前記周壁で囲まれた凹部の底部に設けられ、前記周壁と実質的に同じ高さで被吸着物を支持する多数の支持突起と、前記凹部の底部に設けられ、前記凹部内を排気する排気口と、前記凹部の底部に設けられた被吸着物の突き上げ棒が挿入される穴と、その穴の周囲に設けられ前記周壁と実質的に同じ高さで被吸着物を支持し、前記穴からの空気の流入を防止する空気流入防止壁とを有し、構成材料が、相対密度99%以上で、ヤング率が300GPa以上の緻密質セラミックス焼結体からなり、前記穴から、前記空気流入防止壁の外周およびその外周より50mm外側の間までの部分の板厚が、4mm以下であることを特徴とする真空チャックを提供する。
【0014】
このように凹部の底部に被吸着物の突き上げ棒が挿入される穴が設けられ、その穴の周囲に周壁と実質的に同じ高さで基板を支持する空気流入防止壁が設けられている場合にも、通常、同様にその空気流入防止壁の部分が支持突起よりも剛性が高く変形し難いが、上記構成により、本体の空気流入防止壁部分の剛性も小さくなり、真空吸着した際のこの部分の変形量を大きくすることができ、この部分が被吸着物の平面度を悪化させている場合にも、平面度の向上が可能であり、例えば、被吸着物を吸着した際の、支持突起上面および空気流入防止壁上面の平面度を0.1μm以下と極めて小さく保つことができる。
【0015】
空気流入防止壁部分および周壁部分の両方が被吸着物の平面度を悪化させている場合には、上述したような構成材料を使用した上で、前記被吸着物の突き上げ棒が挿入される穴から、前記空気流入防止壁の外周およびその外周より50mm外側の間までの部分の板厚と、前記本体の外周から、前記周壁の内周およびその内周より50mm内側の間までの部分の板厚の両方を4mm以下とすればよい。これにより、支持突起上面、周壁上面および空気流入防止壁上面の平面度を0.1μm以下と極めて小さく保つことができる。
【0016】
本発明においては、構成材料として相対密度99%以上の高密度のセラミックスを用いるため、汚染の原因となる微粒子の排出量が極めて少ない。したがって、真空チャックから被吸着物へパーティクルの転写が起こりにくく、例えば、被吸着物裏面のパーティクル数を10個/mm2以下と極めて低く保つことができる。
【0017】
真空チャックの構成材料である高剛性・高密度セラミックスとしては、具体的には、緻密質のSiC、Si3N4、Al2O3等を挙げることができる。そして、これらの中でも化学的に安定でありかつフッ酸洗浄が可能であるSiCが特に好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について具体的に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る真空チャックを示す平面図、図2はその断面図である。この真空チャック1は、半導体ウエハを吸着するためのものであり、セラミックスからなる円盤状(平板状)の本体2を有し、そのウエハ載置面2aの外周に被吸着物が載置される周壁3が設けられ、周壁で囲まれた凹部4の底部に、周壁3と同じ高さで多数の支持突起5を有している。この支持突起5は、例えば、先端の径が0.2〜0.3mmφ程度で、4〜5mmピッチ程度に形成される。ただし、図1では便宜上、支持突起5の数を減じて示している。また、真空チャック1から被吸着物を剥がす際に、被吸着物を3本の突き上げ棒6で突き上げるため、本体2にはこの突き上げ棒6が移動するための3つの突き上げ棒用穴7が形成されており、この突き上げ棒用穴7の周囲にこの穴からの空気の流入を防止するための空気流入防止壁8が設けられている。また、本体2の中心には凹部4を排気して真空引きする排気口9が設けられている。
【0019】
この真空チャック1の構成材料としては、相対密度が99%以上でヤング率が300GPa以上の高剛性緻密質セラミックスを用いる。このような緻密質高剛性セラミックスとしてはSiC、Si3N4、Al2O3等を挙げることができる。これらの中では化学的に安定でありかつフッ酸洗浄が可能であるSiCが特に好ましい。ここで、相対密度を99%以上としたのは、99%未満であるとセラミックス表面のポアにパーティクルを多く吸着してしまい、被吸着物を吸着した際に、真空チャック1から被吸着物へのパーティクル転写量が多いためである。また、ヤング率を300GPa以上としたのは、300GPa未満であると真空チャック1の全体的な剛性が低くなるため、被吸着物全体としての平面度を維持し難くなるからである。
【0020】
本実施形態では、図3の本体2の外周部分の拡大図に示す本体2の外周2bから、周壁3の内周およびその内周より50mm内側の間までの部分までの部分の本体2の板厚が4mm以下になるように構成されている。具体的に図3のA−A断面で示すと、図4の(a)ように、少なくとも本体2の外周2bから周壁3の内周までの部分の板厚が4mm以下であり、また図4の(b)に示すように、最大、本体2の外周2bから周壁3の内周より50mm内側までの部分の板厚が4mm以下となるように構成される。すなわち、本体2の厚さ4mm以下の部分は、本体2の外周2bから図4の(a)と(b)との間までの部分ということになる。
【0021】
一方、図5の本体2の拡大図に示す本体2の突き上げ棒用穴7から、空気流入防止壁8の外周およびその外周より50mm外側の間までの部分の板厚が、4mm以下になるように構成される。なお、図5のA−A断面も図4と実質的に同様である。
【0022】
従来は、図6に示すように、本体2の厚さが一様であったため、連続的に形成されている周壁3および空気流入防止壁8の剛性が支持突起5が設けられている部分よりも相対的に高くなり、図7に示すように、シリコンウエハ等の被吸着物10を吸着した際に、周壁3に比較して支持突起5の圧縮変形量が大きく、被吸着物10の平面度を高精度に保つことができない。また、空気流入防止壁8の部分も同様である。
【0023】
これに対して、上述の図4の場合には、図8に示すように、被吸着物10を真空吸着した際に、大気圧により本体2の周壁3近傍の厚さ4mm以下と薄い部分が比較的容易に変形し、結果的に被吸着物10の平面度を高精度に保つことができる。空気流入防止壁8の部分も同様である。
【0024】
この場合に、図示のように上記厚さ4mm以下の部分は相対的に薄い部分であり、本体2の他の部分の厚さは、5〜30mmの範囲である。上記本体2の相対的に薄い部分の厚さを4mm以下としたのは、4mmを超えると、周壁3や空気流入防止壁8の部分の剛性低下の効果が不十分になって、被吸着物の盛り上がりを十分に解消することができないおそれがあるからである。また、上述のように、厚さを4mm以下に調整する部分を最大周壁3の内周より50mm内側までとしたのは、それ以上の部分を薄くすると、周壁3や空気流入壁8の部分に剛性があっても支えきれずに周壁部分や空気流入防止壁部分が凹んでしまうためである。
【0025】
本体2の薄い部分の形成方法としては、上記図4で示したように、本体2の薄く形成した部分以外の部分を全て除去してもよいが、他の方法として、図9に示すように、加工により本体2を切り欠いて切り欠き部11として薄い部分を形成してもよい。
【0026】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では突き上げ棒用穴を形成した場合について示したが、これがない場合であってもよい。また、本体の薄い部分の形態も上記実施形態に限るものではない。さらに、真空引き用穴は1個に限るものではない。さらにまた、上記実施形態では、被吸着物としてシリコンウエハを想定し、円盤形状の真空チャックとしたが、液晶表示装置のガラス基板等の四角形の被吸着体のように円盤形状以外であっても適用可能であることはいうまでもない。
【0027】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
図1に示す真空チャックにおいて、その構成材料を、相対密度99.9%、ヤング率450GPaのSiCとし、本体に本発明に従って厚さ4mm以下の部分を形成した場合と、従来の薄い部分を形成しない場合とで、被吸着物であるシリコンウエハを吸着した場合のその変形量を比較した。また、被吸着物であるシリコンウエハの裏面のパーティクル数を測定した。実施例としては本体の外周部または突き上げ棒用穴部に図4のように厚さ4mm以下の薄い部分を形成したもの(実施例1〜8)とし、比較例としては本体の外周部および突き上げ棒用穴部に薄い部分を形成しないものとした(比較例1,2)。その結果を表1に示す。
【0028】
また、材質による影響を把握するために、低密度の炭化けい素(相対密度95%、ヤング率320GPa)と低剛性であるムライト(相対密度99%、ヤング率220GPa)を用い、本発明の範囲内で薄い部分を形成した場合について同様に、変形量およびパーティクル数を測定した。その結果について表2に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
表1に示すように、実施例1〜8はいずれも被吸着物であるシリコンウエハの変形量が0.1μm以下と高い平面度が得られることが確認された。また、パーティクル数も10個/mm2以下であった。これに対して、本体に薄い部分を形成しない従来の比較例1,2の場合には、変形量が0.41μmおよび0.63μmと十分な平坦度を得ることができなかった。表2に示すように、形状およびヤング率が本発明の範囲内であるが構成材料の相対密度が99%より低い比較例3,4は、平面度は十分であるが、ポアが多く、ポア内に存在していたパーティクルがウエハに転写され、パーティクル数が10個/mm2を超えた。また、形状および相対密度は本発明の範囲内であるが、低剛性セラミックスを用いた比較例5,6は、全体的に剛性が低いために所望の平面度を維持することができなかった。
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、研磨加工を行うことなく、被吸着物を吸着した際の平面度を確保することができ、しかも被吸着物へのパーティクルの付着が少ない真空チャックを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る真空チャックを示す平面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る真空チャックを示す断面図。
【図3】本発明の一実施形態に係る真空チャックにおける本体の外周部分を示す拡大図。
【図4】本発明の実施形態に係る真空チャックの要部を拡大して示す部分断面図。
【図5】本発明の一実施形態に係る真空チャックにおける本体の突き上げ棒用穴部分を示す拡大図。
【図6】従来の真空チャックの部分断面図。
【図7】従来の真空チャックで被吸着物を吸着した状態を示す断面図。
【図8】本発明の一実施形態に係る真空チャックで被吸着物を吸着した状態を示す断面図。
【図9】本発明の他の実施形態に係る真空チャックの要部を拡大して示す部分断面図。
【符号の説明】
1;真空チャック
2;本体
2a;本体の載置面
2b;本体の外周
3;周壁
4;凹部
5,5a,5b;支持突起
6;突き上げ棒
7;突き上げ棒用穴
8;空気流入防止壁
9;排気口
10;被吸着物
11;切り欠き部
Claims (3)
- 被吸着物を真空吸着する真空チャックであって、
平板状の本体と、
前記本体の一方の面の周縁に設けられ被吸着物が載置される周壁と、
前記本体の前記周壁で囲まれた凹部の底部に設けられ、前記周壁と実質的に同じ高さで被吸着物を支持する多数の支持突起と、
前記凹部の底部に設けられ、前記凹部内を排気する排気口と
を有し、
構成材料が、相対密度99%以上で、ヤング率が300GPa以上の緻密質セラミックス焼結体からなり、前記本体の外周から、前記周壁の内周およびその内周より50mm内側の間までの部分の板厚が、4mm以下であることを特徴とする真空チャック。 - 被吸着物を真空吸着する真空チャックであって、
平板状の本体と、
前記本体の一方の面の周縁に設けられ被吸着物が載置される周壁と、
前記本体の前記周壁で囲まれた凹部の底部に設けられ、前記周壁と実質的に同じ高さで被吸着物を支持する多数の支持突起と、
前記凹部の底部に設けられ、前記凹部内を排気する排気口と、
前記凹部の底部に設けられた被吸着物の突き上げ棒が挿入される穴と、
その穴の周囲に設けられ前記周壁と実質的に同じ高さで被吸着物を支持し、
前記穴からの空気の流入を防止する空気流入防止壁と
を有し、
構成材料が、相対密度99%以上で、ヤング率が300GPa以上の緻密質セラミックス焼結体からなり、前記穴から、前記空気流入防止壁の外周およびその外周より50mm外側の間までの部分の板厚が、4mm以下であることを特徴とする真空チャック。 - 前記本体の外周から、前記周壁の内周およびその内周より50mm内側の間までの部分の板厚が、4mm以下であることを特徴とする請求項2に記載の真空チャック。
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