JP4449107B2 - 化粧シート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築内装材、建具の表面材、家電製品の表面材等に用いられる化粧シートに関するものであり、特に木質系ボード類、無機系ボード類、金属板等の表面に接着剤を介して貼り合わせて化粧板として用いる化粧シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、建築内装材、建具の表面材、家電製品の表面材等に用いられる化粧シートとしてはポリ塩化ビニル製のシートが最も一般的に用いられていた。しかし、近年になって塩化ビニル樹脂は、化粧シートの廃棄に際し、焼却処理時に酸性雨の原因となる塩化水素ガスや猛毒物質であるダイオキシンの発生の要因となるとも言われており、さらにシートに添加された可塑剤のブリードアウトの問題もあり、環境保護や人体への影響等の観点から問題視されるようになってきた。
【0003】
係る事情により、塩化ビニル樹脂に替わる樹脂を使用した化粧シートが要望されるようになった。
【0004】
そこで、塩化ビニル樹脂に替わる樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン−ビニルアルコール、アクリル等の樹脂および共重合体を使用した化粧シートが提案されるようになった。その中でも化粧シートに要求される適度な柔軟性、耐磨耗性、耐熱性、耐薬品性等を備え、なおかつ安価で提供されるポリプロピレンを用いた化粧シートが数多く提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記提案のポリプロピレン樹脂は耐傷性にやや難があり改善が望まれていた。
【0006】
これに対して本発明者らは、アイソタクティシティ(ポリプロピレン樹脂の立体規則性の尺度で、常圧(760mmHg)で沸騰状態の溶剤(デカン、ヘプタン、ヘキサン等)に溶解せずに残留する固体部分の比率をいう。ここでは沸騰デカン可溶残分として)を95%以上有し、かつ曲げ初期弾性率10000kgf/cm2 以上である高結晶ポリプロピレンを用いれば耐傷性が改善されることを見出したが、このような特徴を持つ樹脂は、延展性が著しく乏しく、製膜における引取性に欠点を有するものであった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点を解決するものであり、その課題とするところは、塩化ビニル樹脂以外の、環境問題や人体に影響のない非塩素系樹脂を用いて、適度な柔軟性、耐磨耗性、耐熱性、耐薬品性に加えて耐傷性も有し、なおかつ安価で引取性に優れた化粧シートを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために、本発明では、少なくとも、アイソタクティシティ(沸騰デカン可溶残分)が95%以上である高結晶性ポリプロピレンと、無機顔料とを含む基材シートと、前記基材シートの一方の面に形成した、前記高結晶ポリプロピレンが70〜90重量%、JIS K 6760に規定されるMFRが10g/10min以上40g/10min以下であるポリプロピレンが10〜30重量%の範囲で構成され、曲げ初期弾性率が10000kgf/cm以上である樹脂組成物からなる樹脂少なくとも具備することを特徴とする化粧シートとしたものである。
【0009】
上記本発明によれば、塩化ビニル樹脂を使用せずに、耐傷性に優れる高結晶ポリプロピレンとMFR(溶融体の流動性を表すメルトフローレート)が10g/10min以上40g/10min以下の適度な延展性即ち製膜時の引取性を有するポリプロピレンとをブレンドした層が積層された化粧シートとすることによって、適度な柔軟性、耐磨耗性、耐熱性、耐薬品性に加えて耐傷性も有する化粧シートとすることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を説明する。
本発明の化粧シートは、アイソタクティシティ(沸騰デカン可溶残分)が95%以上である高結晶ポリプロピレンが70〜90重量%、好ましくは75〜85重量%、MFRが10g/10min以上40g/10min以下であるポリプロピレンが10〜30重量%、好ましくは15〜25重量%の範囲で構成され、かつ曲げ初期弾性率が10000kgf/cm2 以上である樹脂組成物とする層を具備することが重要である。
【0011】
すなわち、アイソタクティシティが95%未満あるいは曲げ初期弾性率が10000kgf/cm2 未満のものでは耐傷性に優位性が見られない。また、ポリプロピレンの割合が10重量%未満では製膜時の引取性が改善されず、30重量%を越えるものは耐傷性の優位性が見られない。また、MFRが10g/10minに満たないもの、および40g/10minを越えるものは、前記高結晶ポリプロピレンとの粘度バランスが崩れ、シート面に筋ムラが発生する可能性がある。
【0012】
また、一般的に化粧シートには耐候性も求められるため紫外線吸収剤および光安定剤の添加は必須条件であるが、前記ポリプロピレンに紫外線吸収剤および光安定剤を練り混んで高濃度のマスターバッチを作製して製膜の直前に高結晶ポリプロピレンと混合するという方法を採ることも出来る。この方法を用いると求められる耐候性に応じて紫外線吸収剤および光安定剤の添加量を調整できる、さらには70〜90重量%を占める高結晶ポリプロピレンに紫外線吸収剤および光安定剤を練り込む必要が無くいわゆる汎用の形態で使用できるというメリットも生じる。
【0013】
以下本発明の実施の形態を図面に用いて詳細に説明する。
図1〜3に本発明に係わる化粧シート(1)の断面図の一例を示す。
図1は本発明に係わるひとつの樹脂層(10)からなる単層型の化粧シート(1)である。前記樹脂層(10)の製造方法としては、熱プレス法、カレンダー法、Tダイ押出法、インフレーション押出法等の公知の方法でよいが、一般的にポリプロピレンシートはTダイ押出法が好適に用いられる。その意味でTダイ押出法が好ましい。
【0014】
また、必要に応じて貼り合わせる木質系ボード、無機系ボード、金属板が表面から見えないようにするため隠蔽層(30)を施したり、木目柄、石目柄、砂地柄、抽象柄等の模様層(20)を施すことも好適に行われる。
【0015】
これらの隠蔽層(30)および模様層(20)の形成方法としては、前記樹脂層(10)の表面あるいは裏面あるいはその両方にグラビア印刷、凹版印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、静電印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷方法が一般的であるが必ずしもこの限りではない。また用いられるインキも公知のもの、すなわちビヒクルに染料または顔料等の着色剤、体質顔料を添加し、さらに可塑剤、安定剤、ワックス、グリース、乾燥剤、硬化剤、増粘剤、分散剤、充填剤等を任意に添加して溶剤、希釈剤等で充分混連して成るものでよい。
【0016】
また、任意の基材(図示せず)に前記の方法等で隠蔽層(30)あるいは模様層(20)あるいはその両方を形成しておき、詳細を後記する熱ラミ法、ドライラミおよびウエットラミ法、押出ラミ法等で前記樹脂層(10)と貼り合わせた後に任意の基材を剥離して隠蔽層(30)あるいは模様層(20)あるいはその両方を転写する方法を用いることもできる。
【0017】
また、前記樹脂層(10)の製造方法としてTダイ押出法を用いる場合には、前記樹脂層(10)に直接着色して押出し製膜して隠蔽の効果を持たせることもできる。その着色方法としては顔料を分散助剤や界面活性剤で処理した微粉末状の着色剤を使用するドライカラー法、樹脂と高濃度の顔料を溶融混連して予備分散せしめたマスターバッチペレットを作製して押出ホッパ内で着色のされていない通常の樹脂とドライブレンドするというマスターバッチ法等があり、特に限定されるものではない。顔料の種類も通常用いられているものでよいが、特に耐熱性、耐候性を考慮して酸化チタン、群青、カドミウム顔料、酸化鉄等の無機顔料が望ましい。また有機顔料でもフタロシアニン顔料、キナクリドン顔料等は使用できる。顔料の比率、色は隠蔽の度合い、意匠性を鑑みて適宜決められるものであり特に制約はない。また、模様層(20)を施す方法として、高濃度の顔料を前記樹脂とは流動特性の異なる樹脂に溶融混連して予備分散せしめたマスターバッチペレット、木粉、ガラス粉末等を添加して押出し製膜して前記樹脂層(10)自体に模様層(20)を形成する方法がある。勿論、これらの樹脂層(10)自体に着色隠蔽、模様を形成する方法と前記印刷方法、転写方法等を併用することも可能である。
【0018】
また、場合によっては表面の手触り感やより一層の意匠性を得るため、前記樹脂層(10)に凹陥模様(40)を施し、その凹陥部に充填インキを埋め込み、最外表面にトップコート保護層(50)を設けることも好適に行われる。
【0019】
前記の凹陥模様(40)を施す方法としては、通常の熱圧エンボス加工法でよく、何ら限定されるものではない。また、前記樹脂層(10)の製造方法としてTダイ押出法を用いる場合には、溶融樹脂を冷却固化させるチルロールの表面に凹陥模様を施しておく方法が一般的である。また、施された凹部にインキを埋め込み、最外表面に保護層を設けることも好適に行われるが、これらの方法は従来の塩化ビニル樹脂製化粧シートで行われているワイピング処理およびトップコート処理で何ら問題はない。
【0020】
図3には、前記樹脂層(10)の裏面に模様層(20)および隠蔽層(30)を施し、さらに前記樹脂層(10)に凹陥模様(40)を施してその凹部にインキを埋め込み、最外表面にトップコート保護層(50)を設け、最外裏面には、非隠蔽性の樹脂層(70)を設けた本発明に係わる化粧シート(1)の一例を示す。
【0021】
上記のように、特定の物性を重視するため、あるいは立体感、重厚感を出してより一層の高級感を得るため、前記のように樹脂層(10、70)を2層設けることも好適に行われる。
【0022】
図3に示す樹脂層(10)の積層方法としては、熱および圧力をかけて貼り合わせる熱ラミネート法、接着剤を介して貼り合わせるドライラミネートおよびウエットラミネート方法、一方を基材としてその基材上に他方の樹脂をTダイから溶融押出しする押出ラミネート方法、両方の樹脂をTダイから溶融押出する共押出方法等がある。この中で押出ラミネート方法が最も生産性が良いため、この押出ラミネート方法が好ましい。
【0023】
本発明では前記樹脂層(10)、非隠蔽性の樹脂層(70)の少なくとも一方に本発明に係わる樹脂組成物を用いるものである。他方の樹脂としては前記樹脂が望ましいが特にこの限りではない。一例を挙げると請求項1に記載されている以外のポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリスチレン、ABS、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ナイロン6、ナイロン66等がある。また、樹脂以外に紙を用いることもできる。
【0024】
このように樹脂層が2層の化粧シート(1)においても、必要に応じて隠蔽層(30)、模様層(20)および凹陥模様(40)を施すことができる。これらの形成方法は前記の方法で何ら問題はない。
【0025】
図2には、着色した隠蔽樹脂層(60)の表面に模様層(20)を施し、透明な樹脂層(10)を貼り合わせ、さらに透明な樹脂層(10)に凹陥模様(40)を施してその凹部にインキを埋め込み、最外表面にトップコート保護層(50)を設けた本発明に係わる化粧シート(1)の一例を示す。
【0026】
また、図示しないが、上記樹脂層(10)を3層以上の多層でなる化粧シートとすることもできる。
【0027】
【実施例】
次に実施例により、本発明を具体的に説明する。
〈実施例1〉
アイソタクティシティ(沸騰デカン可溶残分)が97%、曲げ初期弾性率が20000kgf/cm2 の高結晶ポリプロピレンに無機顔料を6重量%添加して隠蔽性を付与した厚さ70μmのシートの表面にコロナ処理を施した後、グラビア法によりウレタン系のインキを用いて模様を施し、さらにグラビア法によりウレタン系のアンカーコート剤を1g/m2 塗布、加熱乾燥して基材シートを得た。
【0028】
前記の透明高結晶ポリプロピレン70重量%、MFR20g/10minのポリプロピレン30重量%からなる樹脂をTダイより凹陥模様の施されたチルロールとゴムロールとの間に前記で得た基材シートを介して厚さ70μmで押出し、凹陥模様付与とラミネートを同時に行い、凹部にワイピングインキを埋め込み、さらに最外表面にウレタン系のトップコートを5g/m2 塗布して化粧シートを得た。なお、機械のラインスピードは40m/minにて行った。
【0029】
〈実施例2〉
基材シートとしてアイソタクティシティ(沸騰デカン可溶残分)が93%、曲げ初期弾性率が8000kgf/cm2 の通常ポリプロピレンを用い、Tダイから押出す樹脂の高結晶ポリプロピレンとポリプロピレンとの割合が90重量%対10重量%である他は実施例1と同様の方法で化粧シートを得た。
【0030】
〈比較例1〉
Tダイから押出す樹脂が高結晶ポリプロピレンのみである他は実施例2と同様の方法で化粧シートを得た。
【0031】
〈比較例2〉
Tダイから押出す樹脂の高結晶ポリプロピレンとポリプロピレンとの割合が65重量%対35重量%である他は実施例2と同様の方法で化粧シートを得た。
【0032】
上記実施例1、2および比較例1、2で得られた各化粧シートをウレタン系の接着剤を用いて木質基材に貼り合わせた後、コインスクラッチ法により耐傷性を評価した。
また、評価用の化粧シートを作製後、機械のラインスピードを上げ、厚みムラが発生する限界のラインスピードを見た。これらの評価結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
Figure 0004449107
【0034】
表1からも明らかなように、実施例1、2のようにして得られたシートは脱塩化ビニル化粧シートであることは言うまでもなく、耐傷性および引取性に優れたものであった。
【0035】
これに対して、比較例1で得られたシートは機械のラインスピード50m/minにおいて40〜110μmの周期的な厚みムラが認められた。また、比較例2で得られたシートは負荷2kgfのコインスクラッチにおいて抉ぐられたような傷が認められた。
【0036】
【発明の効果】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。
即ち、アイソタクティシティ(沸騰デカン可溶残分)が95%以上である高結晶ポリプロピレンが70〜90重量%、MFRが10g/10min以上40g/10min以下であるポリプロピレンが10〜30重量%の範囲で構成され、曲げ初期弾性率が10000kgf/cm2 以上である樹脂組成物からなる層を設けることによって、耐傷性に富みかつ成膜時における引取性があり生産性を有した低コストな化粧シートを得ることが出来る。また、塩化ビニル樹脂を使用していないので、焼却処理での環境保護や人体への影響の危惧のない化粧シートとすることができる。
【0037】
従って本発明は、環境に配慮された化粧シートとして、優れた実用上の効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる化粧シートの一実施の形態を側断面で表した説明図である。
【図2】本発明に係わる化粧シートの他の一実施の形態を側断面で表した説明図である。
【図3】本発明に係わる化粧シートの他の一実施の形態を側断面で表した説明図である。
【符号の説明】
1‥‥化粧シート
10‥‥樹脂層
20‥‥模様層
30‥‥隠蔽層
40‥‥凹陥模様
50‥‥トップコート保護層
60‥‥着色した隠蔽樹脂層
70‥‥非隠蔽性の樹脂層

Claims (1)

  1. 少なくとも、アイソタクティシティ(沸騰デカン可溶残分)が95%以上である高結晶性ポリプロピレンと、無機顔料とを含む基材シートと、
    前記基材シートの一方の面に形成した、前記高結晶ポリプロピレンが70〜90重量%、JIS K 6760に規定されるMFRが10g/10min以上40g/10min以下であるポリプロピレンが10〜30重量%の範囲で構成され、曲げ初期弾性率が10000kgf/cm以上である樹脂組成物からなる樹脂
    少なくとも具備することを特徴とする化粧シート。
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