JP4448149B2 - 蛍光免疫測定方法 - Google Patents
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Description
本発明において使用可能な色素は、水中等通常の溶媒中で実質的に蛍光性を示さないもの、または蛍光性を示すが弱いものであれば特に制限されない。すなわち、本発明において実質的に蛍光性でないとは、通常の測定条件では蛍光スペクトルを示さないか、もしくは極めて弱い蛍光のみ示し、実質的には市販の装置等により、蛍光分光分析ができないとされているものをいう(西川泰治等、”蛍光リン光分析法”、共立出版、30ページ、1984年)。
本発明に係る方法を用いて測定可能な被検体としては特に制限はない。すなわち、本発明に係る色素を結合可能であり、かつ、得られる色素被検体複合体が、本発明に係る抗原抗体反応においての免疫抗原となりうるものであればよい。
本発明で、実質的に蛍光性でない色素を有する抗原(以下被検体色素複合体、または色素被検体複合体という)の作製方法については特に制限されない。
本発明で使用する抗体(以下抗被検体色素複合体抗体という)の調製は通常の免疫工程をもちいて好ましく作製可能である。
本発明においては、抗血清からのIgG画分の精製法は特に制限されない。塩析法、ゲル瀘過法、イオン交換クロマトグラフ法等が好ましく使用可能であり、特にプロテインA法が好ましく使用可能である。さらに得られたIgG画分はまた、遠心による限外濾過法により濃縮可能であり所定の濃度に調製可能である。
本発明においては、上記抗体と蛍光性でない色素を混合することにより、当該混合溶液が蛍光性となり、得られた混合液の蛍光スペクトルを種々の測定法で測定することが可能である(蛍光・リン光分析法、西川・平本著、共立出版、第2章49〜99ページ)。
本発明に係る蛍光免疫測定方法の具体的な実施態様については以下に示すように種々可能であり、測定の目的に応じて適宜選択可能である。本発明において被検体を検出する1つの好ましい態様は、図3で模式的に示されるように競合方法である。この方法においては、被検体は試料中に混合物として存在している場合でも、高感度(低バックグラウンド蛍光のため)でかつ実時間で測定可能となる。すなわち、被検体に色素を結合して得られる被検体色素複合体を調製し、それを抗原として通常方法に従い抗体(ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の両方を含む)を作製した後、得られた抗被検体色素複合体抗体に対する、被検体色素複合体と被検体との競合反応に基づき、被検体の濃度を測定することが可能となる。この際、どちらかの濃度を過剰の条件として、得られる蛍光の時間変化を実時間でモニターすることが可能となる。
インシュリン(Zn free、porcine、Biomedical Technologies Inc.製)10.0mgを5mlの炭酸バッファー(0.5M、pH9.0)に溶解した。この溶液に、アセトン0.1mlに溶解したマラカイトグリーンイソチオシアネイト(MGITC、Molecular ProbeInc.製)1.5mgを添加し、遮光し4℃で一昼夜攪拌した。
2-1.初回免疫
上記得られたMG-Ins画分50μlを生理食塩水2.1mlで希釈し、抗原溶液とした。これを0.22μmのフィルターをつけた注射器(5ml)を用い、無菌的にアジュバント(RibiAdjuvant System、Ribi社製)のバイアルに注入した。その後、このバイアルを2分間激しく振揺し、抗原溶液とアジュバントとのエマルジヨンを調製した。RASバイアルの取り扱いは添付の取扱説明書に従った。得られたエマルジヨンをモルモット(Hartley、メス、SPF、n=4)に麻酔下(ネンブタール、投与量は8mg/kg)で、一匹あたり0.5mlを投与した(後背部皮下に0.1mlX4カ所、腹腔内に0.1ml)。
初回免疫から3〜4週間間隔で2回、追加免疫を行った。抗原量およびアジュバントは初回免疫と同じであった。
上記得られた抗血清のMG-Insに対する特異的抗体活性を、以下のように酵素免疫測定法により確認した。
1回目の追加免疫の2週間後、免疫したモルモットより少量の血液を採取し、抗体価を測定した。採血は、耳介静脈を手術用メスで切開し、漏れ出てくる血液をヘマトクリット測定用キャピラリーにて採取して行った。このキャピラリーの一端をseal-ease(Becton Dickinson and Company)で封じ、これを遠心機(KOKUSANMODELH-103RS 国産遠心機(株))にセットし3000rpm、4℃にて10分間遠心し血清を分離した。
モルモットより全採血した血液を滅菌した試験管に取り、インキュベーター中にて37℃で1時間放置し、血餅の生成を促進させた。ついで4℃で一夜放置し血餅を収縮させた後、遠心機(KOKUSAN MODEL H-103RS 国産遠心機(株)製)にセットして3000rpm、4℃にて10分間遠心し抗血清を分離した。
MG-Insのゲル濾過画分70μlを50mM炭酸緩衝液(pH9.6)7mlに溶解し、プラスチック製の96穴イムノタイタープレイト(greiner社製、ELISA-PLATE)の各ウェルに0.1mlずつ分注した。これを4℃で一夜放置し、MG-Insをタイタープレイト内壁に吸着させた。
2回目の追加免疫から1週間後に全採血して得た抗血清について、抗体価を測定した。その一例の結果を図4に示す。この抗血清は3200倍希釈まで対照に比し有意な抗体活性を示した。
上記得られた抗血清から、プロテインAを用いてIgG画分を精製した。プロテインAは黄色ブドウ球菌が産出する蛋白質で、ヒト・マウス・兎などのIgGのFcフラグメントに特異的に結合することが知られている(文献 今堀和友 山川民夫監修、「生化学辞典」、p1107、東京化学同人(1984))。プロテインAを固定したカラム(抗体精製用プロテインAカラムキット、Ampure PA Kit、Amersham社製)を、その取扱説明書に従って用い、本抗血清1mlからIgG画分、約4mlを得た。
濃縮された抗MG-Ins血清由来IgG画分とMGおよびMG-InSを反応させ、MGの蛍光スペクトルを検討した。なお、蛍光スペクトルの測定はHITACHI850蛍光分光光度計(日立製)を使用し、励起波長620nm、蛍光波長630〜750nm、バンドパス5nm(励起側、発光側ともに)、スキャンスピード60nm/min、時定数2秒、光電子増倍管利得Highで測定した。試料は励起光側光路長1cmの蛍光測定用石英セルに入れ、測定を行った。
PBSを用い、抗MG-Ins抗体(IgG)とMGの混合液を調製した。最終濃度はIgGが4μM、MGが4μMに調製した。MGの濃度は濃度消光が起こらないように設定した。また、IgG画分中にはMGと反応しないものも含まれているので、IgGとMGの濃度比を厳密に設定することは意味がなく、任意に設定した。対照として、モルモットのγグロブリン(INTER-CELLTECHNOLOGIES、INC.)からプロテインA力ラムにより精製したブランクIgG画分を使用した。
(i) 5-2.で得られた結果は、抗体がインシュリンとMGの両者をそれぞれエピトープとして認識できる事を示すものである。一方、インシュリンのみを認識する抗体ではMGを効果的に蛍光性に転換することはできない事を示すものである。
(i) 一定量の抗MG-Ins抗体(IgG)に対する一定量のMG-Insと変化量のインシュリンの競合反応の程度を、MG-Insが発する蛍光の時間変化により計測した。この実験結果より、インシュリン添加一定時間後の蛍光強度と添加インシュリン濃度との相関関係(検量線)を求めた。
Claims (9)
- 被検体の蛍光免疫測定方法であって、
1)未知量の被検体を含有する溶液に、前記被検体に色素が結合した被検体色素複合体と、前記被検体色素複合体に対する抗体であって、前記被検体及び前記色素の両者をそれぞれエピトープとして認識する抗被検体色素複合体抗体と、を加える工程であって、前記色素が、水中で蛍光量子収率が1%以下であり、前記抗被検体色素複合体抗体と相互作用することにより蛍光量子収率が10倍以上に増大する色素である工程と、
2)前記被検体の存在下及び非存在下における、前記被検体色素複合体と前記抗被検体色素複合体抗体との抗原抗体反応に基づく前記色素の蛍光強度を測定する工程と、
3)前記未知量の被検体の代わりに既知量の被検体を用いて、前記1)及び2)を行い、検量線を作成する工程と、
4)前記2)において、未知量の被検体の存在下で測定された前記蛍光強度と、前記3)で作成された検量線とを比較することにより、前記未知量の被検体を定量する工程と、
を備える、蛍光免疫測定方法。 - 前記1)において、前記抗被検体色素複合体抗体を加えた後に前記被検体色素複合体を加える、請求項1に記載の蛍光免疫測定方法。
- 前記被検体色素複合体と前記抗被検体色素複合体抗体との抗原抗体反応に対する、前記被検体と被検体色素複合体との抗原抗体反応による競合反応を、蛍光強度を指標としてリアルタイムでモニターする工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の蛍光免疫測定方法。
- 前記抗被検体色素複合体抗体は、IgG画分である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の蛍光免疫測定方法。
- 前記被検体は、インシュリンである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の蛍光免疫測定方法。
- 前記色素は、トリフェニルメタン構造を有する色素である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の蛍光免疫測定方法。
- 前記トリフェニルメタン構造を有する色素は、マラカイトグリーンである、請求項6に記載の蛍光免疫測定方法。
- 前記色素は、ジフェニルメタン構造を有する色素である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の蛍光免疫測定方法。
- 前記ジフェニルメタン構造を有する色素は、オーラミンOである、請求項8に記載の蛍光免疫測定方法。
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