JP4446379B2 - 粉粒状焼成物の製造方法 - Google Patents

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本発明は、マイクロ波を利用した焼成により、出発物質である無機粉粒体とは種類の異なる無機物質からなる粉粒状焼成物を製造する方法に関し、具体的には例えば蛍光体や触媒等の機能材料として用いられる無機粉粒体の焼成・製造技術に関するものである。
従来、原材料である無機材料を焼成してこれとは種類の異なる無機材料(焼成物)を製造する場合には、電気炉などの輻射熱を利用した焼成炉を使用するのが一般的であり、炉内雰囲気の温度上昇、焼成、炉内冷却を含め、1条件での焼成を数時間から数日をかけて行っていた。
また、無機材料を製造するに当たりマイクロ波を利用して焼成する場合には、マイクロ波の吸収により発熱するマイクロ波発熱吸収体からなる部材(マイクロ波吸収発熱部材)により被焼成体を取り囲み、その輻射熱で焼成するか、あるいはマイクロ波により被焼成体を自己発熱させて焼成することを行っていた。
焼成時にマイクロ波による被焼成体の自己発熱を利用したものとしては、例えば特許文献1に記載されたようなセラミックス焼成体の製造方法がある。これは、金属、セラミックスまたはこれらの混合物からなる粉粒体と、この粉粒体と同径かそれよりも小径のマイクロ波吸収性(マイクロ波を照射するとこれを吸収して発熱する性質)を有する粉末とを湿式混練し、得られた混合粉末により予備成形体を作製して、これを不活性ガス雰囲気中でマイクロ波により焼成するというものである。そこでは、マイクロ波吸収性を有する粉末として、平均粒径略0.5μmのSiC粉末(同文献中の実施例で使用)や、Ti O2 、MgOが挙げられている。
特開平8−277402号公報(第2欄第39行、第3欄第49行等)
ところが、先に述べたような電機炉や焼成炉を用いる従来の方法では、少ロット、多品種のものを焼成する場合に、品種の入れ替えに時間がかかってしまい、効率が非常に悪いという問題がある。また、焼成ロットに見合わない大型の焼成炉を使用せざるをえない場合には、雰囲気全体を加熱するためランニングコストが高くなる。
さらに、焼成時にマイクロ波吸収部材により被焼成体を取り囲む方法では、マイクロ波吸収部材の輻射熱により焼成を行うため、被焼成体の内・外部で温度差が生じ、粒子径や合成状態の分布に広がりが生じるという問題があった。
一方、特許文献1に記載された方法は、マイクロ波吸収性を有する粉末(マイクロ波吸収発熱材料)を含んだ予備成形体を作製して、これをマイクロ波により焼成するというものであるが、このような方法では、焼きむらの少ないフィルター等の焼成体、すなわちセラミックス成形体は得られるものの、セラミックス成形体ではない粉粒状の焼成物(焼成により得られる粉粒状の無機材料)を製造することはできない。しかも、前記マイクロ波吸収発熱材料は原料の一成分として使用され、焼成後において他の成分と結合して一体化されるため、このようなマイクロ波吸収発熱材料を含まない焼成物を製造することができないといった難点がある。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたもので、出発物質である無機粉粒体を焼成して出発物質とは種類の異なる無機物質からなる粉粒状焼成物を製造する方法として、少ロットあるいは多品種のものを製造するような場合でも効率良く粉粒状焼成物を製造できるだけでなく、焼成時のランニングコストも低減でき、しかも比較的均一な粒度分布を有する粉粒状焼成物が得られる方法を提供することを目的とする。
上記目的達成のため、本発明は、出発物質である無機粉粒体とは種類の異なる無機物質からなる粉粒状焼成物を製造する方法において、次のように構成したものである。
すなわち、出発物質である無機粉粒体の融点よりも高い融点を有し且つマイクロ波を吸収して発熱するマイクロ波吸収発熱体からなる固形物を用い、まずこの固形物を前記無機粉粒体に混合・分散させ(混合工程)、得られた混合物に、前記固形物の融点以上の温度とならないようにマイクロ波を照射することにより、前記固形物を発熱させて無機粉粒体を焼成し(焼成工程)、得られた焼成生成物と前記固形物との混合体から少なくとも前記固形物を取り除く(除去工程)ことにより、粉粒状焼成物を製造する。
前記焼成工程においては、前記混合物の全体をマイクロ波吸収発熱体により取り囲んだ状態でマイクロ波による焼成を行うのが望ましい。混合物中の固形物と周囲のマイクロ波発熱体とがいずれも、照射されたマイクロ波を吸収して発熱することにより、焼成がより効率良く行われるだけでなく、混合物の内部と外部との温度差も生じにくくなるからである。なお、固形物の融点以上の温度ならないようマイクロ波を照射する(マイクロ波の照射量を調整する)のは、マイクロ波の照射により固形物の融点以上まで加熱されてしまうと、固形物の融解によりを当該固形物を含んだ焼結物を生じるおそれがあるからである。
前記混合工程においては、出発物質である無機粉粒体にマイクロ波吸収発熱体からなる固形物を乾式混合により分散させることが望ましい。乾式混合の場合、一般的に焼成後無機粉粒体とマイクロ波吸収発熱体を分離しやすい。
出発物質である無機粉粒体としては、通常、二種またはそれ以上の無機粉粒体からなる無機粉粒体混合物を使用する。これらの無機粉粒体混合物を焼成することによって、出発物質とは種類の異なる無機物質からなる粉粒状焼成物(無機材料)が合成される。なお、出発物質として一種類の無機物質からなる粉粒体を使用し、これを焼成することにより例えば結晶構造などが出発物質とは異なる無機物質からなる粉粒状の焼成物を製造することも可能である。本発明方法は、このような場合、つまり一種類の無機物質からなる粉粒体を焼成して、これとは異なる他の種類の粉粒状の焼成生成物を製造する場合にも適用できる。
本発明によれば、マイクロ波による自己発熱が行われない無機粉粒体を出発物質として使用した場合においても、この無機粉粒体を含む混合物中に分散させたマイクロ波発熱吸収体からなる固形物が、照射されたマイクロ波を吸収して発熱するので、この発熱により無機粉粒体を含む混合物の全体が内部から均一に効率良く加熱され、その結果、粒度分布の良好な粉粒状焼成物を得ることができる。
その場合、無機粉粒体とマイクロ波発熱吸収体からなる固形物との混合物の全体をマイクロ波吸収発熱体により取り囲んだ状態でマイクロ波による焼成を行うと、混合物中の固形物と周囲のマイクロ波発熱体とがいずれも、照射されたマイクロ波を吸収して発熱するので、より効率良く焼成を行うことができる。しかも、混合物の内部と外部との温度差も生じにくくなるから、得られる粉粒状焼成物の粒度分布もより均一なものとすることができる。
本発明によれば、前記混合物に対するマイクロ波照射により、従来の電気炉を用いた焼成方法よりも短時間で、粉粒状の無機材料を合成することができるため、実験、試作など少量多品種の粉粒状焼成物としての無機材料を製造する際においても、焼成を効率よく行うことが可能となる。
なお、焼成後おいては、焼成生成物と固形物とを含む混合体から、必要に応じて水洗やろ過といった手段により不要な余剰生成物が除去され、その後、例えば篩にかけられることにより固形物が取り除かれるが(除去工程)、このようにして取り除かれた固形物は、その後再び出発物質である無機粉粒体と混合して焼成時に再利用してもよい。
以上のように、本発明によれば、マイクロ波による自己発熱が行われない無機粉粒体を出発物質として使用した場合においても、無機粉粒体を含む混合物の全体が内部から均一に効率良く加熱されるので、粒度分布の良好な粉粒状焼成物を得ることができる。特に、混合物の全体をマイクロ波吸収発熱体により取り囲んだ状態でマイクロ波による焼成を行った場合には、より効率良く焼成を行うことができ、しかも、混合物の内部と外部との温度差も生じにくくなるから、得られる粉粒状焼成物のより均一な粒度分布を有する粉粒状焼成物を得ることができる。
本発明によれば、従来の電気炉や焼成炉を用いた焼成方法よりも短時間で、粉粒状の無機材料を合成することができるため、実験、試作など少量多品種の無機材料を焼成により製造する場合においても、焼成を効率よく行うことができる。しかも、焼成により少量多品種の無機材料を製造するにあたり、大型の焼成炉を使用して雰囲気全体を加熱するといったことを行う必要がなくなるため、そのような場合に生じていたランニングコストの上昇を避けることができる。
本発明は、一種または二種以上の無機粉粒体を出発物質とし、焼成工程を経て、出発物質とは異なる種類の粉粒状焼成物を製造する場合に有効である。具体的には、例えば以下のような場合である(矢印の左側は出発物質、右側は焼成を経て得られる生成物)。
・La23 +5NaH2 PO4 →2LaPO4 (粉粒状焼成物)+2NaH2 PO4 (余剰物質)+Na3 PO4 (余剰生成物)+3H2
・CaCO3 +MoO3 +Na2 MoO4 →CaMoO4 (粉粒状焼成物)+Na2 MoO4 (余剰物質)+CO2
・BaCO3 +TiO2 +LiF→BaTiO3 (粉粒状焼成物)+LiF(余剰物質)+CO2
出発物質である無機粉粒体の平均粒径は例えば1〜100μmであり、目的とする粉粒状焼成物の平均粒径は例えば0.1〜50μmである。
マイクロ波発熱吸収体からなる固形物の種類、サイズ、形状、出発物質である無機粉粒体に対する配合比率についての具体例を以下に挙げる。
・種類:SiC、TiO2 、MgO
・サイズ:1〜20mm
・形状:粒子状、塊状、タブレット
・配合比率:無機粉粒体/マイクロ波発熱吸収体=80/20
本発明方法は、特に実験レベルのような少量複数条件での焼成を行う必要がある場合に有効であるので、この場合を例にとって本発明における混合工程、焼成工程、除去工程を次に説明する。
(混合工程)
まず、出発物質である無機粉粒体に、マイクロ波吸収発熱体からなる固形物を混合・分散させる。混合・分散手段としては、例えば混合容器が回転することにより無機粉粒体およびマイクロ波吸収発熱体からなる固形物が、重力・遠心力などで混合されるような装置を使用するとよい。または、無機粉粒体をプレミックスしておき、るつぼへの投入時にマイクロ波吸収発熱体からなる固形物を均等配置する方法でもよい。すなわち、マイクロ波吸収発熱体からなる固形物が粉砕されない方法で、無機粉粒体中に混合・分散することが好ましい。
(焼成工程)
混合工程を経て得られた混合物を、るつぼに入れ、前記固形物の融点以上の温度とならないようにマイクロ波を照射することにより、前記固形物を発熱させて無機粉粒体を焼成する。このとき、内壁面にマイクロ波吸収発熱体を内壁面に塗布した断熱容器(あるいは内壁面にマイクロ波吸収発熱体の層を設けた断熱容器)に、前記混合物を収容したるつぼを入れた状態で、マイクロ波による焼成を行うのが好ましい。このようにすると、混合物中に分散させた固形物による発熱と、断熱容器内壁面の発熱に伴う輻射熱とにより、混合物の内・外部から無機粉粒体が均一に加熱されるので、より短時間での焼成が可能となるだけでなく、得られる粉粒状焼成物の粒度分布が良好なものとなる。加えて、焼成後は即座に断熱容器ごと炉内から取り出せるため、次の焼成へ移る時間を短縮することも可能となる。
(除去工程)
上記の焼成後、得られた焼成生成物と固形物との混合体から、固形物を取り除く。その場合、上記の焼成による生成物として、目的とする粉粒状焼成物のみが得られるときは、前記混合体をそのまま篩等にかけることで固形物を取り除くことができる。一方、焼成生成物に、目的とする粉粒状焼成物のほかに余剰生成物が含まれている場合には、固形物を取り除く前に焼成後の混合体を例えば水洗・ろ過・乾燥して、余剰生成物を取り除いたうえで、その後に固形物を篩等で取り除く。あるいは、焼成後の混合体から固形物を篩等で取り除いた後に、水洗・ろ過等により余剰生成物を取り除く。通常、固形物には焼成生成物の一部が付着しているから、前者のように固形物を除去する前に混合体の水洗を行った方が効率がよい。固形物に付着した余剰生成物を別途水洗等により除去する必要がなくなるからである。
このようにして出発物質である無機粉粒体とは種類の異なる粉粒状の無機材料として、粒度分布が比較的均一な粉粒状焼成物が得られる。
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、これらに限定されるものでないことは勿論である。
この実施例1は、LaPO4 の粉末(粉粒状焼成物)を製造する場合に関する。
《原料混合(混合工程)》
下記の原料(出発物質である無機粉粒体)を用いて、粉粒状焼成物であるLaPO4 の合成を実施した。
La23 (平均粒径3μm) 35重量部
NaH2 PO4 (平均粒径10μm) 65重量部
上記原料粉末を合計量が15gとなるように計量し、乳鉢により乾式混合した。その後、十分混合した原料粉末に、本発明でいう固形物としてのSiCタブレット(サイズ:10mm×10mm×5mm、(株)高純度化学研究所社製)を5錠投入し、これらが原料粉末中に分散して存在するようにスパチュラで撹拌した。
《マイクロ波焼成(焼成工程)》
上記混合した原料粉末をアルミナ製るつぼに投入し、さらに該るつぼを、内壁面にマイクロ波発熱吸収体であるSiCが塗布された断熱材容器内に設置した。そのうえで、この断熱材容器を、マイクロ波出力が500Wの電子レンジ内に設置し、マイクロ波を10分間照射することで焼成を行った。マイクロ波照射による焼成時の原料粉末の温度は700〜1000℃であった。なお、当然ながらSiCの融点は、この場合の焼成温度よりも更に高温(>2700℃)である。
《水洗・乾燥(除去工程)》
得られた焼成生成物とSiCタブレットとからなる混合体を水洗・濾過して余剰生成物(NaH2 PO4 、Na3 PO4 )を除去し、さらに乾燥させた後に篩にかけ、SiCタブレットを取り除いてLaPO4 からなる粉粒状焼成物を得た。
この実施例2は、CaMoO4 の粉末(粉粒状焼成物)を製造する場合に関する。
下記の原料(出発物質である無機粉粒体)を用いて、実施例1と同様の方法で、粉粒状焼成物であるCaMoO4 を合成した。
CaCO3 (平均粒径3μm) 35重量部
MoO3 (平均粒径3μm) 65重量部
Na2 MoO4 (平均粒径10μm) 65重量部
[比較例1]
実施例1において原料粉末にSiCタブレットを投入せずに焼成を行ったこと以外は、実施例1と同様にして粉粒状焼成物を製造した。
[比較例2]
実施例2において原料粉末にSiCタブレットを投入せずに焼成を行ったこと以外は、実施例1と同様にして粉粒状焼成物を製造した。
以上のようにして得られた実施例および比較例の粉粒状焼成物について、X線回折装置((株)リガク製 RAD−RC)および粒度分布測定装置((株)堀場製作所製 LA−920)を用いて、X線回折スペクトルおよび粒度分布を調べた。
図1に、実施例1および比較例1によって得られた粉粒状焼成物についてのX線回折スペクトルを示す。同図より、実施例1においては、目的のLaPO4 が生成されていることを示す回折ピークが確認できる。これに対して、比較例1においては、実施例1に係る粉粒状焼成物について得られたような回折ピークが十分には現れておらず、合成が不十分でLaPO4 の生成には至っていない。
図2は、実施例1および比較例1によって得られた粉粒状焼成物についての粒度分布測定の結果を示す粒度分布図である。この図2から、比較例1で得られた粉粒状焼成物よりも実施例1で得られた粉粒状焼成物の方が、ピークが高く、粒子径にばらつきが少ないことが確認できる。
図3に、実施例2および比較例2によって得られた粉粒状焼成物についてのX線回折スペクトルを示す。同図より、実施例2においては、目的のCaMoO4 が生成されていることを示す回折ピークが確認できる。これに対して、比較例2においては、CaMoO4 が生成されているものの、実施例2に比べてピーク強度が低く結晶性が十分ではない。
図4は、実施例2および比較例2によって得られた粉粒状焼成物についての粒度分布測定の結果を示す粒度分布図である。この図4から、比較例2で得られた粉粒状焼成物よりも実施例2で得られた粉粒状焼成物の方が、ピークが高く、粒子径にばらつきが少ないことが確認できる。
本発明の実施例1および比較例1でそれぞれ得られた各粉粒状焼成物のX線回折スペクトルを示す図である。 本発明の実施例1および比較例1でそれぞれ得られた各粉粒状焼成物の粒度分布を示す図である。 本発明の実施例2および比較例2でそれぞれ得られた各粉粒状焼成物のX線回折スペクトルを示す図である。 本発明の実施例2および比較例2でそれぞれ得られた各粉粒状焼成物の粒度分布を示す図である。

Claims (4)

  1. 出発物質である無機粉粒体とは種類の異なる無機物質からなる粉粒状焼成物を製造するにあたり、出発物質である無機粉粒体の融点よりも高い融点を有し且つマイクロ波を吸収して発熱するマイクロ波吸収発熱体からなる固形物を用い、下記(1)〜(3)の工程を経て粉粒状焼成物を得ることを特徴とする粉粒状焼成物の製造方法。
    (1)前記無機粉粒体に前記固形物を混合・分散させる工程(混合工程)
    (2)得られた混合物に、前記固形物の融点以上の温度とならないようにマイクロ波を照射することにより、前記固形物を発熱させて無機粉粒体を焼成する工程(焼成工程)
    (3)得られた焼成生成物と前記固形物との混合体から少なくとも前記固形物を取り除く工程(除去工程)
  2. 前記焼成工程において、前記混合物の全体をマイクロ波吸収発熱体により取り囲んだ状態で前記マイクロ波による焼成を行う、請求項1記載の粉粒状焼成物の製造方法。
  3. 前記混合工程において、出発物質である無機粉粒体にマイクロ波吸収発熱体からなる固形物を乾式混合により分散させる、請求項1または2記載の粉粒状焼成物の製造方法。
  4. 出発物質である無機粉粒体として、二種またはそれ以上の無機粉粒体からなる無機粉粒体混合物を使用する、請求項1ないし3のいずれかに記載の粉粒状焼成物の製造方法。
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