JP4444578B2 - 水性プライマー組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック成形品用の水性プライマー組成物に関するものであり、該水性プライマー組成物を用いた複層塗膜形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術およびその課題】
従来、ポリプロピレンやポリウレタンなどのプラスチック成形品への塗装は、プラスチックへの付着性が大きな問題であり、素材面及び塗料面から様々な改善がなされてきた。その中で、塗料面においては塩素化ポリオレフィンを主体にした塗料組成物が種々開発されてきており、該塗料組成物をプライマーとしてプラスチック表面に塗装した後、その上に1層又は2層の上塗り塗料が塗装される(例えば、特許文献1等参照。)。
【0003】
一方、近年になって、自動車用バンパーなどのプラスチック成形品に塗装する塗料においても、環境汚染の低減のために従来の有機溶剤系塗料から水系塗料への切り替えが求められている。
【0004】
そのため塩素化ポリオレフィンを水分散化する必要があり、種々の方法が提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3等参照。)。
【0005】
しかしながら、水系塗料は有機溶剤によるプラスチック素材の膨潤などの効果が期待できないため、プラスチック素材への付着性が劣り、耐水性が低下するという問題があり、また、上塗り塗膜への付着性が劣るため、上塗りへのリコートが必要になった場合には別途溶剤型プライマーを用意する必要がある等の問題があり、切り替えが順調に進んでいない。
【0006】
本発明の目的は、プラスチック素材への付着性及び上塗り塗膜への付着性に優れた水性プライマー組成物を提供することにある。
【0007】
【特許文献1】
特開昭59−30830号公報
【特許文献2】
特開平10−330563号公報
【特許文献3】
特開平8−59757号公報
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、塩素化ポリオレフィンとポリウレタンディスパージョンを組み合わせた系にさらに活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物と特定のアクリル樹脂と導電性フィラー及び/又は着色顔料を含有せしめることにより、プラスチック素材との付着性及び上塗り塗膜との密着性が著しく向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして本発明は、塩素化ポリオレフィン(A)、ポリウレタンディスパージョン(B)及び活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(C)の固形分合計に基いて、塩素化ポリオレフィン(A)を固形分で10〜80重量%、ポリウレタンディスパージョン(B)を固形分で5〜50重量%、及び活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(C)を5〜40重量%の範囲内で含有してなり、さらに、カルボキシル基含有アクリル樹脂を樹脂固形分中5〜20重量%の範囲内で含有し、導電性フィラー(E)及び/又は着色顔料を含有してなることを特徴とするプラスチック成形品用水性プライマー組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、プラスチック成形品の上に、上記水性プライマー組成物を塗装し、必要に応じて焼付けた後、着色ベース塗料を塗装し、必要に応じて焼付けた後、クリヤ塗料を塗装して焼付けることを特徴とする複層塗膜形成方法に関する。
【0011】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の水性プライマー組成物は、塩素化ポリオレフィン(A)、ポリウレタンディスパージョン(B)及び活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(C)を含有してなるものである。
【0013】
塩素化ポリオレフィン(A)
本発明の水性プライマー組成物の(A)成分である塩素化ポリオレフィンは、ポリオレフィンの塩素化物であって、塩素化するポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン、メチルブテン等のオレフィン類から選ばれた1種もしくは2種以上の重合体、さらに、これらのオレフィン類と酢酸ビニル、ブタジエン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等とのラジカル共重合体などが挙げられる。
【0014】
これらのうち、特に、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化エチレン−プロピレン共重合体及び塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体が好適なものとして挙げられる。また、塩素化ポリオレフィン(A)には上記塩素化ポリオレフィンに重合性モノマーをグラフト重合させたものも含まれる。該重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のアルコキシアルキル、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとモノカルボン酸との付加物、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等を挙げることができる。
【0015】
塩素化ポリオレフィン(A)は、必ずしも水分散性を有していなくてもポリウレタンディスパージョン(B)や界面活性剤によって水分散することは可能であるが、プライマー組成物の貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性などの点から、塩素化ポリオレフィン(A)自体に水分散性を有していることが好ましい。
【0016】
塩素化ポリオレフィン(A)に水分散性を付与する方法としては、例えば、、重合性不飽和ジカルボン酸又はその無水物を既知の方法によりグラフト重合することにより得ることができる。重合性不飽和ジカルボン酸又はその無水物は、1分子中に1個の重合性不飽和結合と2個以上のカルボキシル基、又はその無水基を有する化合物であり、例えば、マレイン酸及びその無水物、イタコン酸及びその無水物、シトラコン酸及びその無水物などが挙げられ、これらから選ばれた1種以上を好適に使用することができる。これらの単量体の使用量は、塩素化ポリオレフィンとの合計量に基いて90〜10重量%、特に80〜30重量%が好ましい。
【0017】
上記で得られた塩素化ポリオレフィンは水溶化又は水分散化のために、その分子中に含まれるカルボキシル基の一部、もしくは全部をアミン化合物で中和することが好ましい。
【0018】
アミン化合物として、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。
【0019】
塩素化ポリオレフィン(A)は、塩素化率が50重量%以下、特に12〜35重量%程度、重量平均分子量が1,000〜150,000、特に30,000〜120,000程度がプライマー組成物の貯蔵安定性や塗膜外観などの点から適している。
【0020】
ポリウレタンディスパージョン(B)
本発明の水性プライマー組成物の(B)成分であるポリウレタンディスパージョンは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタンを、必要に応じてジオール、ジアミン等のような2個以上の活性水素をもつ低分子量化合物である鎖伸長剤の存在下で鎖伸長し、水中に安定に分散もしくは溶解させたものが好適に使用でき、従来公知のものを広く使用できる。ポリウレタン樹脂を水中に安定に分散もしくは溶解させる方法としては、例えば下記の方法が利用できる。
(1)ポリウレタンポリマーの側鎖または末端にカルボキシル基等のアニオン性基又はアミノ基等のカチオン性基を導入し、該イオン性基の一部又は全部を
中和することにより親水性を付与し自己乳化により水中に分散または溶解する方法。
(2)ポリウレタン主原料のポリオールとしてポリエチレングリコールのごとき親水性ポリオールを使用して水に可溶なポリウレタンとし水中に分散または溶解する方法。
(3)反応の完結したポリマーまたは末端イソシアネート基をオキシム、アルコール、フェノール、メルカプタン、アミン、重亜硫酸ソーダ等のブロック剤でブロックしたポリマーをノニオン性及び/又はカチオン性乳化剤と機械的せん断力を用いて強制的に水中に分散する方法。さらに末端イソシアネート基を持つウレタンプレポリマーを水/乳化剤/鎖伸長剤と混合し機械的せん断力を用いて分散化と高分子量化を同時に行なう方法。
【0021】
上記ポリウレタン樹脂の製造方法は、単一方法に限定されるものでなく各々の方法によって得られた混合物も使用できる。
【0022】
具体的には、例えば、特開平5−245427号公報に開示されているように、分子内に活性水素基を含まない親水性有機溶剤の存在下又は不存在下で、(i)脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネート、(ii)数平均分子量が500〜5,000のポリエーテルジオール又はポリエステルジオール又はこれらの混合物、(iii)低分子量ポリヒドロキシル化合物及び(iv)ジメチロールアルカン酸を、NCO/OH当量比が1.1〜1.9の範囲内の比率で、ワンショット又は多段法により重合させてウレタンプレポリマーを合成し、次いで該プレポリマーをアミンで中和した後又は中和しながら、水と混合することにより、水伸長反応を行わしめると同時に水中に乳化分散させた後、必要により前記有機溶剤を留去することにより平均粒子径0.001〜1.0μm程度の製造安定性、貯蔵安定性に優れたポリウレタンディスパージョンを得ることができる。
【0023】
活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(C)
本発明の水性プライマー組成物の(C)成分であるブロックポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基が活性メチレン系化合物でブロックされたポリイソシアネート化合物である。
【0024】
具体的には、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に活性メチレン系化合物を反応させることにより得られる。
【0025】
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上の遊離のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、リジンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネートなどの脂肪族系、脂環族系、芳香族系のポリイソシアネート化合物が挙げられる。さらに、これらのポリイソシアネート化合物を使用してなるイソシアヌレート型ポリイソシアネート、ビユレット型ポリイソシアネート、ウレタン型ポリイソシアネート、アロハネート型ポリイソシアネートなども包含される。これらのポリイソシアネート化合物の1分子あたりの平均イソシアネート基数は、2〜15、特に3〜8が好ましい。
【0026】
ウレタン型ポリイソシアネートに使用される多価アルコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0027】
これらのポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロックするための活性メチレン系化合物としては、例えば、マロン酸ジエステルやアセト酢酸エステルなどが挙げられる。マロン酸ジエステルとしては、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸エチルn−ブチル、マロン酸メチルn−ブチル、マロン酸エチルt−ブチル、マロン酸メチルt−ブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ジベンジル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸エチルフェニル、マロン酸t−ブチルフェニル、イソプロピリデンマロネートなどが挙げられる。また、アセト酢酸エステルとしては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸t−ブチル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸フェニルなどが挙げられる。
【0028】
ブロック剤として、これらの活性メチレン系化合物の一部を、アルコール類、フェノール類、酸アミド類、イミダゾ−ル類、ピリジン類、メルカプタン類、オキシム類、アミン類などのブロック剤と置換することができるが、置換するブロック剤の使用量は、イソシアネート基の30当量%以下が好ましい。
【0029】
ポリイソシアネート化合物と活性メチレン系化合物との反応は、通常、触媒の存在下で行われる。ここで使用される触媒としては塩基性化合物が好ましく、例えば、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、ナトリウムフェノラート、カリウムメチラートなどの金属アルコラート、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや、その酢酸塩、オクチル酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩などの有機弱酸塩、酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸などのアルキルカルボン酸のアルカリ金属塩、及び上記アルキルカルボン酸の錫、亜鉛、鉛などの金属塩、ヘキサメチレンジシラザンなどのアミノシリル基含有化合物、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などがあげられる。触媒の使用量は、ポリイソシアネート化合物に対して、0.01〜5重量%、特に0.1〜2重量%が適している。
【0030】
ポリイソシアネート化合物と活性メチレン系化合物との反応は、溶剤の有無に関わらず行うことができ、一般に、−20〜150℃、特に0〜100℃の温度で行うことが好ましい。
【0031】
また、この反応で用いた触媒である塩基性化合物の少なくとも一部を酸性化合物により中和することが好ましい。かかる酸性化合物として、例えば、塩酸、亜リン酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸メチルエステル、p−トルエンスルホン酸エチルエステルなどのスルホン酸又はその誘導体、リン酸エチル、リン酸ジエチル、リン酸イソプロピル、リン酸ジイソプロピル、リン酸ブチル、リン酸ジブチル、リン酸2エチルヘキシル、リン酸ジ(2エチルヘキシル)、リン酸イソデシル、リン酸ジイソデシル、エチレングリコールアシッドリン酸、ピロリン酸ブチル、亜リン酸ジブチルなどのリン酸又は亜リン酸の酸性エステルなどがあげられる。これらの酸性化合物は、触媒に対して0.3〜3当量、好ましくは0.5〜2当量の範囲で用いるのが適している。
【0032】
このようにして中和して得られる活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(C)のpH値は、1〜8.5、特に2.5〜7.5の範囲内に含まれることが好ましい。このpH値は、活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(C)の含有率が30重量%になるようにメタノ−ルで希釈したのち、pH値測定用電極を使用して20℃で測定した値である。
【0033】
アクリル樹脂(D)
本発明の水性プライマー組成物の(D)成分であるアクリル樹脂は、必要に応じて含有されるものであり、特に顔料や導電材などの分散に有用なものである。
【0034】
アクリル樹脂(D)は、水分散性又は水溶性であることが好ましく、例えばカルボキシル基等のアニオン性基、アミノ基等のカチオン性基、ポリオキシエチレン基等のノニオン性基などの親水性基を有する重合性不飽和単量体とその他の不飽和単量体とを共重合することにより容易に得ることができる。
【0035】
中でもカルボキシル基含有アクリル樹脂が、塗料の貯蔵安定性などの点から適している。
【0036】
カルボキシル基含有アクリル樹脂は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸等の重合性不飽和カルボン酸を必須モノマー成分とするアクリル重合体である。
【0037】
上記アクリル樹脂の重合に用いられる、重合性不飽和カルボン酸以外のその他のモノマー成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素原子数1〜15のアルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル系単量体;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアミル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、該ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート1モルに対してε−カプロラクトンを1〜5モル開環付加反応させてなる、水酸基を有するカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和単量体;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−sec−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、エチレン、ブタジエン等を挙げることができる。
【0038】
アクリル樹脂は、上記重合性不飽和カルボン酸とその他のモノマー成分とのモノマー混合物を、例えば、有機溶剤中にて、ラジカル重合開始剤及び必要に応じて連鎖移動剤の存在下で80〜150℃で1〜10時間程度加熱し共重合させることによって得ることができる。上記重合開始剤としては、有機過酸化物系、アゾ系等のものが使用できる。有機過酸化物系重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等が挙げられ、アゾ系重合開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等が挙げられる。また、上記連鎖移動剤としては、α−メチルスチレンダイマー、メルカプタン類等が挙げられる。
【0039】
導電性フィラー(E)
本発明の水性プライマー組成物の(E)成分である導電性フィラーは、必要に応じて含有されるものであり、プライマー皮膜に導電性を持たせることで、その皮膜の上への静電塗装を可能にするものである。
【0040】
導電性フィラー(E)としては、特に制限はなく従来公知のものを用いることができ、金属系、金属酸化物系、炭素系、有機高分子系等いずれも使用でき、その形状も粒子状、フレーク状、ファイバー(ウィスカーも含む)状などいずれの形状のものも用いることができるが、中でも塗膜の白色度を大きく低下させないものとして、ウィスカー表面に例えば酸化錫等の導電性金属酸化物を被覆したもの、フレーク状のマイカ表面に酸化錫やニッケルを被覆したもの等が好適なものとして挙げられる。これらの市販品としては、具体的には、例えばデントールWK−500、同WK−200W(以上、いずれも大塚化学社製)等が挙げられる。
【0041】
本発明の水性プライマー組成物は、塩素化ポリオレフィン(A)、ポリウレタンディスパージョン(B)及び活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(C)を必須成分として含有するものである。
【0042】
その配合比率は、塩素化ポリオレフィン(A)、ポリウレタンディスパージョン(B)及び活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(C)の固形分合計に基いて、塩素化ポリオレフィン(A)を固形分で10〜80重量%、特に20〜60重量%、ポリウレタンディスパージョン(B)を固形分で5〜50重量%、特に10〜45重量%及び活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(C)を5〜40重量%、特に7〜35重量%の範囲内であることが好ましい。
【0043】
塩素化ポリオレフィン(A)の量が少な過ぎると素材との密着性が低下し、多過ぎると塗料安定性が劣る。ポリウレタンディスパージョン(B)の量が少な過ぎると塗膜物性が硬くなり、多過ぎると塗料安定性が劣る。また、活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(C)の量が少な過ぎるとリコート付着が劣り、多過ぎると塗料安定性が劣る。
【0044】
必要に応じて添加されるアクリル樹脂(D)は、主に顔料分散に用いられるものであり、プライマー中に含有する導電性フィラー(E)や顔料の量によって必要量が変動するが、水性プライマー組成物中の樹脂固形分の5〜20重量%程度が好ましい。
【0045】
また、必要に応じて添加される導電性フィラー(E)は、皮膜に導電性を付与するためのものであり、塗膜の表面電気抵抗値で108Ω/cm2以下になるまで添加するのが好ましく、添加量としては、水性プライマー組成物中の樹脂固形分合計量100重量部に基いて20〜200重量部程度が適している。
【0046】
本発明の水性プライマー組成物は、さらに必要に応じて着色顔料、体質顔料、消泡剤、レオロジーコントロール剤、硬化触媒、有機溶剤などを適宜使用することができる。
【0047】
上記着色顔料としては、例えば酸化チタン、カーボンブラック、亜鉛華、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムエロー、酸化クロム、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料などの無機もしくは有機系の顔料が挙げられる。
【0048】
上記有機溶剤としては、プライマー中の樹脂の水性媒体中での安定性に支障を来さない、水と混和しうる有機溶剤である限り、従来公知のものをいずれも使用できる。
【0049】
上記有機溶剤としては、アルコール系溶剤、セロソルブ系溶剤、カルビトール系溶剤等が好ましい。この有機溶剤の具体例としては、n−ブタノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のカルビトール系溶剤等を挙げることができる。また、有機溶剤としては、上記以外の水と混和しない不活性有機溶剤もアクリル変性ポリエステル樹脂の水性媒体中での安定性に支障を来たさない範囲で使用可能であり、この有機溶剤として、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤を挙げることができる。
【0050】
複層塗膜形成方法
プラスチック成形品の上に、上記で得られた水性プライマー組成物を塗装し、必要に応じて焼付けた後、着色ベース塗料を塗装し、必要に応じて焼付けた後、クリヤ塗料を塗装して焼付けることにより複層塗膜を形成できる。
【0051】
焼付けは各被覆層間の混層や塗膜のワキなどの異常を生じない範囲で省略することができ、3C1B、3C2B及び3C3Bなどの塗装方法から選択すればよい。塗装膜厚としては乾燥膜厚でプライマーが5〜30μm程度、ベース塗膜が10〜25μm程度及びクリヤ塗膜が20〜50μm程度であり、各段階における焼付条件は、同じでも異なっていてもよく、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により、60〜140℃、好ましくは80〜120℃の温度で20〜40分間程度加熱して硬化させることにより複層塗膜を形成することができる。塗装としてはスプレー塗装が一般的であり、本願の水性プライマー組成物が導電性フィラーを含有して導電性皮膜を形成できるものであれば、着色ベース塗料及びクリヤ塗料の塗装は静電塗装を用いることができる。
【0052】
また、ベース塗膜やクリヤ塗膜がそれぞれ2層以上の複層になってもかまわない。また、ここで用いられる着色ベース塗料やクリヤ塗料は、1液型であっても2液型であってもよく、溶剤系塗料であっても水系塗料であってもよい。また、塗料に用いる樹脂系としても特に制限なく、例えばポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等用いることができる。
【0053】
本発明の水性プライマー組成物は、素材だけでなく上塗り塗膜との密着性にも優れているところに特徴があり、上塗り塗膜等にゴミ、ブツ、ハジキ等の異常があって補修塗装を必要とする場合にも、本発明の水性プライマー組成物をそのまま用いることができ、従来別に用意されていた溶剤型のプライマーは必要としないことから塗装ラインでの作業効率を大幅に向上させることができる。
【0054】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも重量基準によるものとする。
【0055】
アクリル樹脂溶液の合成
製造例1
反応容器にエチレングリコールモノブチルエーテル60部及びイソブチルアルコール15部を加え、窒素気流中で115℃に加温した。115℃に達したらスチレン10部、メチルメタクリレート48部、n−ブチルアクリレート26部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、アクリル酸6部及びアゾビスイソブチロニトリル1部の混合物を3時間かけて滴下した。添加終了後115℃で30分間熟成し、アゾビスイソブチロニトリル1部とエチレングリコールモノブチルエーテル15部の混合物を1時間を要して滴下した。さらに115℃で1時間熟成を行った後に冷却し、ジメチルアミノエタノールで当量中和し、脱イオン水を加えて固形分50%のアクリル樹脂溶液(A−1)を得た。
【0056】
試験用試料の作成及び性能試験
実施例1〜2及び比較例1〜4
表1に示す配合比率に従って各プライマー組成物を作成した。なお、表1に示す配合は固形分重量で表示した。
【0057】
上記で得られたプライマー組成物を、バンパーに成型加工したポリプロピレン(脱脂処理済)に乾燥膜厚で25μmになるようにしてスプレー塗装し、室温で10秒間セッティングしてから、80℃で3分間の予備加熱の後、室温で放冷し、着色ベース塗料として「WBC−710」(関西ペイント社製、商品名、水性着色ベース塗料)を乾燥膜厚で15μmになるようにしてスプレー塗装し、室温で10秒間セッティングしてから80℃で5分間の予備加熱の後、室温で放冷し、クリヤ塗料として「RK7171クリヤ」(関西ペイント社製、商品名、2液アクリルウレタン系有機溶剤型クリヤ塗料)を乾燥膜厚で30μmになるようエアースプレー塗装し、室温で5分間放置してから120℃で20分間加熱して各複層塗膜を得た(通常工程試料)。
【0058】
また、上記とは別に、各プライマー組成物を、バンパーに成型加工したポリプロピレン(脱脂処理済)に乾燥膜厚で25μmになるようにしてスプレー塗装し、室温で10秒間セッティングしてから、80℃で3分間の予備加熱の後、室温で放冷し、着色ベース塗料として「WBC−710」を乾燥膜厚で15μmになるようにしてスプレー塗装し、室温で10秒間セッティングしてから80℃×5分間の予備加熱の後、室温で放冷し、クリヤ塗料として「RK7171クリヤ」を乾燥膜厚で30μmになるようエアースプレー塗装し、室温で5分間放置してから130℃で60分間加熱して複層塗膜を得た後、室温で1時間放置し、さらにその複層塗膜上に上記と同じプライマー組成物、着色ベース塗料及びクリヤ塗料を順次、通常工程と同じ膜厚及び加熱条件で塗装し各複層塗膜を得た(リコート工程試料)。
【0059】
上記で得られた各実施例及び比較例の通常工程試料及びリコート工程試料について下記試験方法に従って付着性及び耐水性を評価した。また、各プライマー組成物について貯蔵安定性を調査した。得られた結果を後記表1に示す。
【0060】
試験方法
塗膜の付着性:各試料について、素地に達するように鋭利な刃物で塗膜に大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作り、粘着テープをゴバン目上に密着させ、テープの一端を有効面に直角〜45度に保ち0.5m/s以上の速度で瞬間的に引き離し、残存した枡目数を求めた。
【0061】
耐水性:各試料を40℃の脱イオン水に240時間浸漬した後、水から取り出した直後の塗膜外観を下記の基準で評価するとともに、室温で1時間放置した後の試料について、塗膜の付着性を上記付着性の試験と同様に行い評価した。
○:塗膜に異常は認められない。
×:塗膜にフクレやワレなどの異常が認められる。
【0062】
塗料の貯蔵安定性:各プライマー組成物をポリ容器に入れて密閉し、40℃の恒温室に240時間置いた後、取り出して20℃に調整し、ディスパーにて攪拌を3分間行った後、フォードカップNo4にて粘度を測定し、初期粘度と比較して下記基準で評価した。
○:粘度がほとんど変化しない。
△:塗料に明らかな増粘または減粘が認められる。
×:塗料が分離して再分散できない。
【0063】
【表1】
【0064】
表1における各注(*1)〜(*6)の原料は、各々下記の内容のものである。
(*1)スーパークロンE−403:日本製紙社製、塩素化ポリプロピレンの水分散品、樹脂の塩素含有率15%及び数平均分子量約120,000。
(*2)タケラックWS5000:三井武田ケミカル社製、ポリウレタンディスパージョン、シラノール基含有の自己架橋型。
(*3)デユラネート MF−K60X:旭化成社製、活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物。
(*4)バイヒジュールBL5235:住友バイエルウレタン社製、オキシムブロックポリイソシアネート化合物。
(*5)デントールWK−500:大塚化学社製、導電フィラー、酸化スズ/アンチモンで表面被覆された針状酸化チタン。
(*6)JR−903:テイカ社製、ルチル型酸化チタン顔料。
【0065】
【発明の効果】
本発明の水性プライマー組成物は、樹脂成分として塩素化ポリオレフィン、ポリウレタンディスパージョン及び活性メチレンブロックイソシアネート化合物を用いることでプラスチック素材への付着性及び上塗り塗膜への付着性が著しく向上し、バンパーなどのプラスチック成形品用として有用なものである。
Claims (6)
- 塩素化ポリオレフィン(A)、ポリウレタンディスパージョン(B)及び活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(C)の固形分合計に基いて、塩素化ポリオレフィン(A)を固形分で10〜80重量%、ポリウレタンディスパージョン(B)を固形分で5〜50重量%、及び活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(C)を5〜40重量%の範囲内で含有してなり、さらに、カルボキシル基含有アクリル樹脂を樹脂固形分中5〜20重量%の範囲内で含有し、導電性フィラー(E)及び/又は着色顔料を含有してなることを特徴とするプラスチック成形品用水性プライマー組成物。
- 導電性フィラー(E)を樹脂固形分合計量100重量部に基いて20〜200重量部の範囲内で含有するものである請求項1に記載の水性プライマー組成物。
- 活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(C)が、ポリイソシアネート化合物をマロン酸ジエステル及びアセト酢酸エステルから選ばれる少なくとも一種の化合物でブロックしてなるものである請求項1又は2に記載の水性プライマー組成物。
- プラスチック成形品の上に、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性プライマー組成物を塗装し、必要に応じて焼付けた後、着色ベース塗料を塗装し、必要に応じて焼付けた後、クリヤ塗料を塗装して焼付けることを特徴とする複層塗膜形成方法。
- プラスチック成形品が自動車用バンパーである請求項4に記載の複層塗膜形成方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性プライマー組成物を補修用プライマー塗料として使用することを特徴とする複層塗膜が形成されたプラスチック成形品の補修方法。
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