JP4443030B2 - 油圧緩衝器のバルブ構造 - Google Patents

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Description

【産業上の利用分野】
この発明は、自動車の懸架装置など車体の振動を抑制する油圧緩衝器に関し、特に減衰力発生構造の改良に関するものである。
【0001】
【従来の技術】
この種の油圧緩衝器としては、例えば、特開平3−163234号公報に開示された技術をピストンの上面側に適用した図4に示すようなものが知られている。まず構造の概要を図面に基づいて説明する。油圧緩衝器を車両に取り付けた状態では図4と上下関係が同じであるので、以下、図4の上下関係で油圧緩衝器の部材の位置或いは部位を説明する。
【0002】
車体と車輪との間に結合部材を介して取付けられる油圧緩衝器は、車体側に取り付けられるピストンロッド1の下端部にピストン5と伸側減衰力を制御するピストンバルブを組み付けそれを摺動自在に収容するとともに、下端部に圧側減衰力を制御するベースバルブを装着したシリンダ21を、車輪側に取り付けられる外筒22に収容し、外気を遮断するシール24とロッドガイド23とを収容したパッキンケース25を外筒22の上部から嵌挿した後、外筒22の上端部を全周溶接等により密封して形成されている。そして、シリンダ21と外筒22の間にはタンク室Dが形成される。
【0003】
作動油の充満したシリンダ21内をピストンロッド1が上昇する際には、密閉された上部室Aの作動油は、ピストンロッド1の下端部に組み付けられたピストンバルブを介して下部室Bに流出し、この際の通路抵抗が伸側減衰力となる。ピストンロッド1の上昇によって不足するピストンロッド退出体積分の作動油は、シリンダ21の下端部に組み付けられたベースバルブを介してタンク室Dに連なる底部室Cより下部室Bに補充される。
【0004】
つぎに、伸側減衰力を制御するピストンバルブについて説明する。ピストンロッド1の下端部には上部よりも小径のインロー部1Aが設けられ、ここにリーフバルブ3からなる逆止弁CVの最大撓みを規制するバルブストッパ2,外周縁が逆止弁CVの撓みの支持径となる環座7,リーフバルブ3,上面がリーフバルブ3に対向するピストン5を順次嵌挿する。
【0005】
シリンダ21内を上部室Aと下部室Bに区画し外周にガイド5Sを巻着したピストン5には、図5に示すように、その上面側に開口面積が順に小さくなる複数の上側開口窓5D〜5Gが設けられている。当該各上側開口窓は外周ポート5Aを介して下部室Bに連通するとともに、各上側開口窓の間に形成された凹部5Kは、内周ポート5Bを介して円環状の下側開口窓5Cに連通している。
【0006】
続いて、下側開口窓5Cに対向し外周側に切欠き4Aを設けた切欠きリーフバルブ4と当該切欠きリーフバルブの背面に重畳されたリーフバルブ6からなる伸側減衰弁PV,外周縁が伸側減衰弁PVの撓みの支持径となる環座7,伸側減衰弁PVの最大撓みを規制するバルブストッパ8を順次組み付け、最後にピストンナット9をインロー部1Aのねじ部に螺着し、締付け工具により締結することによりピストンバルブが構成される。
【0007】
作動油の充満したシリンダ21内をピストンロッド1が上昇する所謂伸長行程において、ピストン速度が小さくピストン5の下側開口窓5Cと下部室B間の圧力差が小さい所謂低速域においては、伸側減衰弁PVは下側開口窓5Cを覆窓している。このため上部室Aの圧油は、ピストン上面の凹部5Kと内周ポート5Bを介して下側開口窓5Cに導かれ、下側開口窓5Cに対向する切欠きリーフバルブ4の切欠き4Aを介して下部室Bに流出し、この際の通路抵抗により、ピストン速度のほぼ2乗に比例する低速域の伸側減衰力を発生する。
【0008】
ピストン速度が増大するのに伴い、切欠き4Aを通過する流量が増え下側開口窓5Cと下部室B間の圧力差も大きくなる。ピストン速度が中速域に近づくにつれ、下側開口窓5Cに対向して配設されている伸側減衰弁PVの外周側が、その合成された撓み剛性に打ち勝って、下側開口窓5Cの外側シート部から押し開かれ、作動油が下部室Bに流出し、この際の通路抵抗と内周ポート5Bの通路抵抗とにより中速域以降の伸側減衰力を発生する。切欠きリーフバルブ4とリーフバルブ6からなる伸側減衰弁PVの撓み剛性と内周ポート5Bの通路面積を適当に選択することにより、所要の減衰力特性を得ることができる。
【0009】
つぎに、圧側減衰力を制御するベースバルブについて説明する。まずガイド11の軸部11Aに、リーフバルブ13と外周側に切欠き14Aを設けた切欠きリーフバルブ14からなる吸込み弁DVの最大撓みを規制するバルブストッパ12,外周縁が吸込み弁DVの撓みの支持部となる環座17,リーフバルブ13,当該リーフバルブ13の下側に重畳される切欠きリーフバルブ14,上面が切欠きリーフバルブ14に対向するバルブケース15を順次嵌挿する。
【0010】
シリンダ21の下端部に嵌着され下部室Bと底部室Cとを区画するバルブケース15には、下部室Bに連通する円環状の上側開口窓15Dと円環状の下側開口窓15Cとを連通する内周ポート15Bが穿孔されるとともに、底部室Cと円環状の外側開口窓15Eとを連通する外周ポート15Aが穿孔されている。
【0011】
続いて、ガイド11の軸部11Aに、上記バルブケース15の下側開口窓15Cに対向するリーフバルブ16からなる圧側減衰弁BV,更に、外周縁が圧側減衰弁BVの撓みの支持径となる環座17,圧側減衰弁BVの最大撓みを規制するバルブストッパ18を順次組み付け、最後に、ガイド11の軸部11Aの下端部を工具により加締めることによりベースバルブが構成される。
【0012】
作動油の充満したシリンダ21内をピストンロッド1が下降する所謂収縮行程において、ピストン速度が小さくバルブケース15の下側開口窓15Cと底部室C間の圧力差が小さい所謂低速域においては、圧側減衰弁BVは下側開口窓15Cを覆窓している。このためピストン5を介して容積の拡大する上部室Aに補充される分を除いたピストンロッド1の侵入体積に相当する下部室Bの圧油は、切欠きリーフバルブ4の切欠き4A,バルブケース15の外側開口窓15E,外周ポート15Aを介して底部室Cに流出し、この際の通路抵抗により、ピストン速度のほぼ2乗に比例する低速域の圧側ベース減衰力を発生する。
【0013】
ここで、ピストン速度が小さくピストン5の外側開口窓5D〜5Gと上部室A間の圧力差が小さい所謂低速域においては、リーフバルブ3からなる逆止弁CVは外側開口窓5D〜5Gを覆窓している。このため、ピストン5を介して容積の拡大する上部室Aに補充される下部室Bの圧油は、ピストン5の外周ポート5Aを通り、切欠きリーフバルブ4の切欠き4Aを介して上部室Aに補充され、この際の通路抵抗により、ピストン速度のほぼ2乗に比例する低速域の圧側背面減衰力を発生する。当該圧側背面減衰力を上記圧側ベース減衰力に付加したものが低速域の圧側減衰力となる。
【0014】
ピストン速度が増大するのに伴い、切欠き14Aを通過する流量が増え切欠き前後の圧力差が増大するとともに、バルブストッパ12の通孔12A,リーフバルブ13の通孔13A,当該通孔13Aと連通する切欠きリーフバルブ14の開口部14B,バルブケース15の上側開口窓15D,内周ポート15Bを介して下部室Bに連通するバルブケース15の下側開口窓15Cと、底部室C間との圧力差も大きくなる。
【0015】
このため、ピストン速度が中速域に近づくにつれ、下側開口窓15Cに対向して配設されているリーフバルブ16からなる圧側減衰弁BVの外周側が、その合成された撓み剛性に打ち勝って下側開口窓15Cの外側シート部から押し開かれ、作動油が底部室Cに流出し、この際の通路抵抗と内周ポート15Bの通路抵抗とにより中速域以降の圧側ベース減衰力を発生する。リーフバルブ16からなる圧側減衰弁BVの撓み剛性と内周ポート15Bの通路面積を適当に選択することにより、所要の減衰力特性を得ることができる。
【0016】
ここで、容積の拡大する上部室Aには、ピストン5の外周ポート5Aを通り、リーフバルブ3からなる逆止弁CVの合成された撓み剛性に打ち勝って、逆止弁CVが外側開口窓5Eの外側シート部から押し開かれ、下部室Bから作動油が補充され、この際の通路抵抗により中速域以降の圧側背面減衰力を発生する。当該圧側背面減衰力を上記圧側ベース減衰力に付加したものが中速域以降の圧側減衰力となる。
【0017】
逆に、ピストンロッド1が上昇する際には、底部室Cからバルブケース15の外周ポート15Aを通り、リーフバルブ13と切欠きリーフバルブ14からなる吸込み弁DVの撓み剛性に打ち勝って、吸込み弁DVが外側開口窓15Eの外側シート部から押し開かれ、ピストンロッド1の退出体積分の作動油が下部室Bに補充される。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
油圧緩衝器が伸長行程から収縮行程に切り替わる際には、吸込み弁DVは圧力が増大する下部室Bと底部室C間の差圧によって速やかに閉弁するので、下部室Bの圧油は圧側減衰弁BVを介して底部室Cに流出し、この際の通路抵抗により圧側減衰力を発生する。一方、下部室Bは外周ポート5Aを介してピストンの上側開口窓5D〜5Gに連通しているが、当該上側開口窓には逆止弁CVが対向しているので、下部室Bの圧油は、まず、切欠きリーフバルブ4の切欠き4Aを通り下側開口窓5Cを介して容積の拡大する上部室Aに流入しようとする。
【0019】
下部室Bと上部室A間の差圧が小さいピストン速度の微低速域においては、逆止弁CVの撓み剛性に打ち勝ってこれを押し開くことができない。しかも切欠き4Aの通路面積Sは、例えば、巾=2mm,オリフィス数=4,板厚=0.15mmの場合で、S=2×4×0.15=1.2m■程度と小さい。このため、上部室Aに作動油を十分補充することができないので、圧側背面減衰力をスムーズに大きくすることができない。
【0020】
本発明は以上のような実情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、油圧緩衝器が伸長行程から収縮行程に切り替わる際に、ピストンの逆止弁側で発生する圧側背面減衰力をピストン速度の微低速域からスムーズに大きくすることのできる油圧緩衝器を提供することである。
【0021】
【問題を解決するための手段】
本発明は、ピストンロッドに締結され上面側に開口面積が順に小さくなる複数の上側開口窓を隔設したピストンを介して、シリンダ内を上部室と下部室とに区画するとともに、シリンダの下部に設けたバルブケースを介して下部室とタンク室に連通する底部室とを区画し、ピストンに配設した逆止弁と伸側減衰弁とによりピストンロッドが下降する際の圧側背面減衰力とピストンロッドが伸長する際の伸側減衰力を制御する一方、バルブケースに配設した圧側減衰弁によりピストンロッドが下降する際の圧側ベース減衰力を発生させ、当該圧側ベース減衰力に上記圧側背面減衰力を付加して圧側減衰力を制御する油圧緩衝器を前提とする。
【0022】
課題を解決するため本発明の採った手段は、上記ピストンの各上側開口窓にはリーフバルブからなる逆止弁を対向させ、当該逆止弁を開口面積が最大の上側開口窓から最小の上側開口窓に対応して付勢力が順に大きくなる複数の支持片を備えたリーフスプリングで背面から付勢するとともに、各上側開口窓はピストンに形成した外周ポートを介して下部室に連通させ、ピストンロッドが下降する際に、開口面積が大きい上側開口窓に対応する部分から開口面積が小さい上側開口窓に対応する部分にかけて、上記逆止弁をピストン速度の増大につれて順々に開弁させ、下部室から上部室への通路抵抗に基づく上記圧側背面減衰力を、ピストン速度の増大につれて大きくなるように構成したことである。
【0023】
上記リーフスプリングは、各支持片の基端部の巾、又は各支持片の基端部から外端に至る軸線方向の高さ、或いはその双方を変えることにより付勢力を設定することができる。また、上記圧側背面減衰力をピストン速度の増大につれてスムーズに大きくするには、上記各上側開口窓に穿設した外周ポートの孔径は、開口面積が最大の上側開口窓から最小の上側開口窓にかけて順に大きくすることが望ましい。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明に係わる油圧緩衝器は、図1に示すように、図4の従来技術と同じ基本構造を備え、ピストンロッド101がその下端部に装着されたピストン105を介して、シリンダ21内に移動自在に挿入されるとともに、上部室Aと下部室Bを区画する。また、シリンダ21の下端部にはバルブケース15が嵌着され、同じく下部室Bとタンク室Dに連通する底部室Cを区画している。
【0025】
本発明に係わる油圧緩衝器は、ピストンの上面側に下部室に連なり開口面積の異なる複数の上側開口窓105D〜105Gを設けるとともに、開口面積が最大の上側開口窓105Dには、リーフバルブ3を背面から付勢するリーフスプリング102の付勢力の最小の部分を対応させ、開口面積が最小の上側開口窓105Gにはリーフスプリング102の付勢力の最大の部分を対応させるように位置合わせをして組み付け、逆止弁CVを差圧が小さいピストン速度の微低速域から滑らかに開弁させ、圧側背面減衰力をスムーズに大きくすることができるようにするものである。
【0026】
ピストンロッド101の下端部には、図1(A)に示すように上部よりも小径のインロー部101Aが設けられ、ここにリーフバルブ3を背面から付勢する図2(A)に示すリーフスプリング102,外周縁が図2(B)に示すリーフバルブ3の撓みの支持径となる環座103,当該環座103の下側に重畳されるリーフバルブ3からなる逆止弁CV,図2(C)に示す上面がリーフバルブ3に対向するピストン105を、図1(B)に示すようにインロー部101Aの一部をD字状に切除した平坦部101Bに、各部品の内径側の位置決め用直線部Wを位置合わせして順次嵌挿する。
【0027】
上記リーフスプリング102は、基端部の外周に複数の支持片102A,102B,102C,102Dを隔設し、ピストン105の開口面積が最大の上側開口窓105Dに対向する支持片102Dの付勢力が最小で、上側開口窓105E,105F,105Gの開口面積とが順に小さくなるに従って、支持片102C,102B,102Aの順に付勢力が大きくなるようにする。
【0028】
リーフスプリング102は、例えば図2(A)に示すように、各支持片102A〜102Dの基端部の巾、又は各支持片102A〜102Dの基端部から外端に至る軸線方向の高さをそれぞれ違えて製作することにより付勢力を設定することができる。或いはその双方を変えて付勢力を設定してもよい。
【0029】
シリンダ21内を上部室Aと下部室Bに区画し外周にガイド5Sを巻着したピストン105の上面側には、図2(C)に示すように、開口面積が順に小さくなる複数の上側開口窓105D〜105Gが設けられ、当該各上側開口窓は外周ポート105d〜105gを介して下部室Bに連通するとともに、各上側開口窓の間に形成された凹部105Kは、内周ポート105Bを介して円環状の下側開口窓105Cに連通している。
【0030】
続いて、下側開口窓105Cに対向し外周側に切欠き4Aを設けた切欠きリーフバルブ4と当該切欠きリーフバルブの背面に重畳されたリーフバルブ6からなる伸側減衰弁PV,外周縁が伸側減衰弁PVの撓みの支持径となる環座7,伸側減衰弁PVの最大撓みを規制するバルブストッパ8を順次組み付け、最後にピストンナット9をインロー部1Aのねじ部に螺着し、締付け工具により締結することによりピストンバルブが構成される。要求される減衰力によっては、逆止弁CV側のリーフバルブ3を複数枚重畳して使用する。
【0031】
つぎに、ベースバルブ側について説明する。まず従来構造と同様、ガイド11の軸部11Aに、リーフバルブ13からなる吸込み弁DVの最大撓みを規制するバルブストッパ12,外周縁が吸込み弁DVの撓みの支持部となる環座17,リーフバルブ13,上面がリーフバルブ13に対向するバルブケース15を順次嵌挿する。リーフバルブ13は必要に応じて複数枚重ねて使用する。
【0032】
続いて、ガイド11の軸部11Aに、上記バルブケース15の下側開口窓15Cに対向するとともに外径が順に小さくなるリーフバルブ16,106,107を順に重畳した圧側減衰弁BV,更に、外周縁が圧側減衰弁BVの撓みの支持径となる環座17,圧側減衰弁BVの最大撓みを規制するバルブストッパ18を順次組み付け、最後に、ガイド11の軸部11Aの下端部を工具により加締めることによりベースバルブが構成される。
【0033】
作動油の充満したシリンダ21内をピストンロッド1が上昇する所謂伸長行程からピストンロッド1が下降する所謂収縮行程に切り替わる際には、リーフバルブ16,106,107からなる圧側減衰弁BVは、前記下側開口窓15Cを覆窓している。しかも、リーフバルブ13からなる吸込み弁DVも外側開口窓1105Eを覆窓している。
【0034】
ここで、上部室Aに補充される分を除いた下部室Bの圧油は、バルブストッパ12の通孔12A,リーフバルブ13の通孔13A,バルブケース15の上側開口窓15D,内周ポート15Bを介して下部室Bに連通する下側開口窓15Cに導かれている。そこで、当該下側開口窓15Cに対向して配設されているリーフバルブ16の外周側が、下側のリーフバルブ106,107との合成された撓み剛性に打ち勝って、下側開口窓15Cの外側シート部から押し開かれて底部室Cに流出し、この際の通路抵抗により圧側ベース減衰力を発生する。
【0035】
ところで、外径が順に小さくなるリーフバルブ16,106,107からなる圧側減衰弁は、外径が大きいリーフバルブ16から開き始め、撓みの増加とともにリーフバルブ16がリーフバルブ106,107を順々に押し倒して撓み剛性が徐々に大きくなる。このため、ピストン速度の微低速域からリーフバルブ16が開くので、リーフバルブ16,106,107の撓み剛性によって定まる通路抵抗により、微低速域から高速域に亘るピストン速度の全域で、図4のFaで示すようにピストン速度にほぼ比例してリニアに立ち上がる圧側ベース減衰力を発生することになる。
【0036】
この結果、下部室Bはピストン速度の微低速域からスムーズに圧力が高まるので、下部室Bと容積の拡大する上部室A間の差圧もスムーズに増加する。ピストンの上側開口窓105D,105E,105F,105Gは、それぞれ外周ポート105d,105e,105f,105gを介して下部室Bに連通しているので、ピストン速度の微低速域においては、まず、開口面積が最大で押し上げ力(開口面積×下部室Bと上部室A間の差圧)が最も大きくなる上側開口窓105Dに対向する部分の逆止弁CVが、これを背面から付勢しているリーフスプリング102の支持片のうち、この部分に対応している付勢力が最も小さい支持片102Dの付勢力に打ち勝って押し開かれ、下部室Bの圧油が上部室Aに流出し、この際の通路抵抗により微低速域の圧側背面減衰力を発生する。
【0037】
ピストン速度が増大するに従い上側開口窓105Dに対応する孔径が最小の外周ポート105dを通過する流量が増え、この際の通路抵抗による下部室Bと上部室A間の差圧も増加する。このため、孔径が2番目に小さい外周ポート105eを介し開口面積が2番目に大きい上側開口窓105Eに対向する部分の逆止弁CVが、この部分に対応している付勢力が2番目に小さいリーフスプリングの支持片102Cの付勢力に打ち勝って押し開かれ、下部室Bの圧油が上部室Aに流出するようになる。
【0038】
上記上側開口窓105Eの開口面積は前記上側開口窓105Dよりも小さく設定され且つこの部分に対応しているリーフスプリングの支持片102Cの付勢力も大きくなっているので、その分下部室Bと上部室A間の差圧も増加するため、この際の通路抵抗による圧側背面減衰力も増加する。
【0039】
ピストン速度が更に増大すると、上側開口窓105Eの外周ポート105eを通過する流量が増え、この際の通路抵抗による下部室Bと上部室A間の差圧が更に増加するので、下部室Bの圧油は、更に開口面積が順に小さくなる上側開口窓105F,105Gを順次押し開き、対向する部分の逆止弁CVを押し開いて上部室Aに流出する。
【0040】
上側開口窓105D〜105Gの開口面積は、105D,105E,105F,105Gの順に小さくなるように設定され、各上側開口窓105D〜105Gを下部室Bに連通する外周ポート105d〜105gは逆に順に小さくなるように設定されるとともに、各上側開口窓105D〜105Gに対応しているリーフスプリングの支持片102D〜102Aの付勢力は、102D,102C,102B,102Aの順に大きくなるように設定されているので、その分下部室Bと上部室A間の差圧も増加するため、この際の通路抵抗による圧側背面減衰力は、図3のFbで示すように、ピストン速度に対してスムーズに増加する。
【0041】
前記圧側ベース減衰力に上記圧側背面減衰力を付加したものが、図3のFcで示す圧側減衰力となる。作動油の充満したシリンダ21内をピストンロッド1が下降する収縮行程においては、圧側背面減衰力を発生する下部室Bと上部室A間の差圧が、圧側ベース減衰力を発生する下部室Bと底部室C間の差圧よりも小さければ、上部室Aにスムーズに作動油が補充されるので、圧側背面減衰力を上記条件を満たす範囲で限度近くまで大きくすることができる。
【0042】
このため、ピストン速度の微低速域から高速域に亘るピストン速度の全域で、圧側減衰力が図3のFcで示すようにスムーズに増加し、圧側減衰力をピストン速度の微低速域から大きくすることができるようになる。この結果、例えば車輌が良路を走行する場合に路面のうねり等により発生するロールのような緩やかな姿勢変化に対しても、十分な制振力を得ることができる。
【0043】
上述した実施形態においては、各上側開口窓に穿設した外周ポート105d,105e,105f,105gは、開口面積が最大の上側開口窓から最小の上側開口窓にかけて孔径を順に大きくする場合を説明したが、上側開口窓105D〜105Gの開口面積は、105D,105E,105F,105Gの順に小さくなるように設定され、逆に各上側開口窓105D〜105Gに対応しているリーフスプリングの支持片102D〜102Aの付勢力は順に大きくなるように設定されているので、外周ポートの孔径を所定の通路抵抗が生じるように選定すれば、孔径が同一であってもほぼ類似した性能を実現することができる。
【0044】
作動油の充満したシリンダ21内をピストンロッド1が上昇する伸長行程における伸側減衰力については、伸側減衰弁PVが従来構造と同じで同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0045】
【発明の効果】
以上詳述した通り本発明に係わるピストンバルブにおいては、逆止弁を介して圧側背面減衰力を発生する下部室と上部室間の差圧が、圧側減衰弁を介して圧側ベース減衰力を発生する下部室と底部室間の差圧よりも小さければ、上部室にスムーズに作動油が補充されるので、圧側背面減衰力を上記条件を満たす範囲で限度近くまで大きくすることができる。このため、ピストン速度の微低速域から高速域に亘るピストン速度の全域で、圧側背面減衰力がスムーズに増加し、当該圧側背面減衰力を上記圧側ベース減衰力に付加した圧側減衰力を、ピストン速度の微低速域から大きくすることができるようになる。この結果、例えば車輌が良路を走行する場合に路面のうねり等により発生するロールのような緩やかな姿勢変化に対しても、十分な制振力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)本発明に係わる油圧緩衝器の要部断面図である。
(B)ピストンロッドのインロー部の断面図である。
【図2】(A)本発明に係わるリーフスプリングの平面図である。
(B)同じくリーフバルブの平面図である。
(C)本発明に係わるピストンの上面図である。
【図3】本発明に係わる減衰力特性の一例である。
【図4】従来技術に係る油圧緩衝器の縦断面図である。
【図5】従来技術に係わるピストン上面図である。
【符号の説明】
A 上部室
B 下部室
C 底部室
D タンク室
BV 圧側減衰弁
CV 逆止弁
PV 伸側減衰弁
3 リーフバルブ
15 バルブケース
21 シリンダ
101 ピストンロッド
105 ピストン
105D〜105G 上側開口窓
105d〜105g 外周ポート

Claims (3)

  1. ピストンロッドに締結され上面側に開口面積が順に小さくなる複数の上側開口窓を隔設したピストンを介して、シリンダ内を上部室と下部室とに区画するとともに、シリンダの下部に設けたバルブケースを介して下部室とタンク室に連通する底部室とを区画し、ピストンに配設した逆止弁と伸側減衰弁とによりピストンロッドが下降する際の圧側背面減衰力とピストンロッドが伸長する際の伸側減衰力を制御する一方、バルブケースに配設した圧側減衰弁によりピストンロッドが下降する際の圧側ベース減衰力を発生させ、当該圧側ベース減衰力に上記圧側背面減衰力を付加して圧側減衰力を制御する油圧緩衝器において、上記ピストンの各上側開口窓にはリーフバルブからなる逆止弁を対向させ、当該逆止弁を開口面積が最大の上側開口窓から最小の上側開口窓に対応して付勢力が順に大きくなる複数の支持片を備えたリーフスプリングで背面から付勢するとともに、各上側開口窓はピストンに形成した外周ポートを介して下部室に連通させ、ピストンロッドが下降する際に、開口面積が大きい上側開口窓に対応する部分から開口面積が小さい上側開口窓に対応する部分にかけて、上記逆止弁をピストン速度の増大につれて順々に開弁させ、下部室から上部室への通路抵抗に基づく上記圧側背面減衰力を、ピストン速度の増大につれて大きくなるように構成したことを特徴とする油圧緩衝器のバルブ構造。
  2. 上記リーフスプリングは、各支持片の基端部の巾、又は各支持片の基端部から外端に至る軸線方向の高さ、或いはその双方を変えることにより付勢力を設定することを特徴とする請求項1に記載の油圧緩衝器のバルブ構造。
  3. 各上側開口窓に対応する各外周ポートの孔径を、開口面積が最大の上側開口窓から最小の上側開口窓にかけて順に大きくすることを特徴とする請求項1に記載の油圧緩衝器のバルブ構造。
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