JP4438936B2 - 摺動部品の製造方法 - Google Patents

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本発明は、潤滑剤溜を有する摺動部品の製造方法に関するものである。
従来、ミシンなどの種々の装置には、複数の摺動部品が摺動自在に組み付けられていることが多く、これらの摺動部品においては、その摺動部の焼き付けを防止したり、摩耗を軽減するために、摺動部に潤滑剤を供給したり、摺動部の表面に耐摩耗性に優れた被膜を形成するのが一般的である。
例えば、特許文献1には、ミシンの針棒の摺動部分に耐摩耗性被膜として、摩擦係数が低く且つ高硬度のDLC(ダイヤモンドライクカーボン)被膜が形成されている。しかし、潤滑剤として潤滑油を用いる場合、このDLC被膜は潤滑油をはじく性質を有するので、摺動部に供給された潤滑油が直ぐに流出してしまう。そこで特許文献1の摺動部品においては、DLC被膜に油溝を形成し、潤滑油を油溝に溜めることで潤滑油の流出を極力防止し、摺動部の潤滑性能を維持するようにした摺動部品が開示されている。この摺動部品においては、他方の摺動部品の摺動によって油溜に充填された潤滑油が摺動方向と同方向へ流れやすくなり、潤滑油が油溜の側壁面を通ってDLC被膜の外周面に供給されて、摺動部の潤滑性能が高い状態で維持される。
特開2003−247691号公報
しかし、油溝の側壁面とDLC被膜の外周面との間の角度が90°以下に形成されている場合、他方の摺動品の摺動によって流動する潤滑油が油溝の側壁面のエッジ部によって掻き取られてしまうため、摺動部へ潤滑油がほとんど供給されず、摺動部の潤滑性能が低下する。従って、潤滑油が油溝に残っているにも関わらず、摺動部が焼き付くこともあり、摺動部の耐久性が低下する。
本発明の目的は、潤滑剤溜に溜められた潤滑剤を確実に摺動部に供給し、潤滑性能を高めることが可能な摺動部品及びその製造方法を提供しようとするものである。
請求項1の発明は、表面の少なくとも一部に摺動部を有し、前記摺動部の表面に硬質被膜のDLC被膜を形成した摺動部品の製造方法において、前記DLC被膜の一部をエッチングして潤滑剤が溜められる潤滑剤溜を形成する際に、体積濃度が43〜55%の酸素と、体積濃度が3.7%〜5%の四フッ化炭素を含むエッチングガスを用いて、DLC被膜を四フッ化炭素で処理しつつ酸素プラズマによりエッチングして、前記潤滑剤溜の側壁面とDLC被膜の外表面とのなす角度が90°よりも大きくなるように潤滑剤溜を形成する
ものである。
この摺動部品の製造方法によれば、摺動部の表面にDLC被膜が形成され、次に、潤滑剤溜が形成される部分の全てのDLC被膜が、四フッ化炭素から生成されたフッ酸によってその表面が処理されつつ酸素プラズマによりエッチングされ、潤滑剤溜の側壁面とDLC被膜の外表面との角度が90°よりも大きくなるように潤滑剤溜が形成されて、摺動部品が製造される。摺動部品が摺動する状態においては、摺動部を摺動する他方の摺動部品によって潤滑剤溜に溜められた潤滑剤が他方の摺動部品の摺動方向と同方向へ流動し、この潤滑剤は、硬質被膜の外表面とのなす角度が90°よりも大きく形成された潤滑剤溜の側壁面では掻き取られることなく、確実に摺動部に供給される。
記潤滑剤溜を形成する際に用いるエッチングガスは、酸素の体積濃度が43〜55%である。この摺動部品の製造方法によれば、エッチングガス中の酸素の体積濃度を60%以上にするとDLC被膜がオーバーエッチングされて潤滑剤溜の側壁面と摺動部の外表面との角度が90°以下の潤滑剤溜が形成されるが、エッチングガス中の酸素の体積濃度を43〜55%にすることで、DLC被膜がオーバーエッチングされることなく、酸素プラズマによって前記角度が90°よりも大きい潤滑剤溜が形成される。
記潤滑剤溜を形成する際に用いるエッチングガスは、四フッ化炭素の体積濃度が3.7〜5%である。この摺動部品の製造方法によれば、エッチングガス中の四フッ化炭素体積濃度を6%以上にするとDLC被膜がオーバーエッチングされて潤滑剤溜の側壁面と摺動部の外表面との角度が90°以下の潤滑剤溜が形成されるが、エッチングガス中の四フッ化炭素の体積濃度を3.7〜5%にすることで、DLC被膜がオーバーエッチングされることなく、酸素プラズマによって前記角度が90°よりも大きい潤滑剤溜が形成される。
請求項1の発明によれば、潤滑剤溜を形成することで潤滑剤の保持性能を高めると共に、潤滑剤溜の側壁面とDLC被膜の外表面とのなす角度が90°以上に形成されるため、他方の摺動部品の摺動によって流動する潤滑剤は、潤滑剤溜の側壁面で掻き取られることなく、潤滑剤溜の側壁面に沿って流れるので、潤滑剤溜に溜められた潤滑剤を確実に摺動部に供給することができ、潤滑性能を高めることができ、摺動部品の耐久性を高めることができる。
LC被膜を酸素プラズマによりエッチングするので、一度に多くの面積をエッチングすることができ、製造時間を短縮することができる。
フッ化炭素を含むエッチングガスによりエッチングすることで、DLC被膜の表面を四フッ化炭素から生成されたフッ酸により処理することができるので、エッチングに要する時間を短縮することができる。
ッチングガス中の酸素の体積濃度を43〜55%にすることで、潤滑剤溜の側壁面とDLC被膜の外表面とのなす角度を確実に90°よりも大きく形成することができる。
ッチングガス中の四フッ化炭素の体積濃度を3.7〜5%にすることで、潤滑剤溜の側壁面とDLC被膜の外表面とのなす角度を確実に90°よりも大きく形成することができる。
本願の発明は、表面の少なくとも一部に摺動部を有し、前記摺動部に潤滑剤が供給された状態で摺動される摺動部品において、前記摺動部の表面には硬質被膜が形成され、前記硬質被膜には潤滑剤が溜められる潤滑剤溜が形成され、前記潤滑剤溜の側壁面と硬質被膜の外表面とのなす角度が90°よりも大きく形成されたことを特徴とする摺動部品及びその摺動部品の製造方法に関するものである。
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。本実施例は、2本針ミシンの天秤に本発明を適用した一例である。尚、以下の説明において、図1に示すように前後左右を定義する。最初に、2本針ミシン1について簡単に説明する。図1に示すように、2本針ミシン1は、左右方向に長いベッド部2と、このベッド部2の右端部から上方に延びる脚柱部3と、脚柱部3からベッド部2と対向するように左方へ延びるアーム部4とを備えている。
図1に示すように、アーム部4の内部には、左右方向向きに主軸10が配設され、この主軸10の下方には主軸10と略平行に針棒揺動軸11が配設されている。主軸10の右端部は、アーム部4から外部へ突出し、その突出部分には手動用のプーリ12が設けられている。この主軸10はミシンモータ(図示略)により回転駆動される。
図1,図2に示すように、アーム部4の左端部分のアーム頭部には、クランク13と、クランクレバー14と、針棒抱き15と、針棒16と、針棒支持部材17と、天秤18を有する天秤機構19などが設けられている。
クランク13は、主軸10の左端部に固着され主軸10と共に回転駆動される。クランクレバー14のヘッド部14aは、クランク13から左方に延びる連結軸13aに回動可能に連結され、クランクレバー14の下端部は針棒抱き15に回動可能に連結されている。針棒16は円柱状に形成され、その中段部に針棒抱き15が固定され、針棒支持部材17の上端部と下端部で摺動可能に支持されている。針棒16の下端部は、アーム部4のミシンフレームから下方へ突出し2本針21が装着されている。
従って、ミシンモータの回転駆動力が主軸10を介してクランク13に伝達されると、その回転駆動力がクランクレバー14を介して針棒抱き15に伝達されて、針棒抱き15が針棒16と2本針21と共に上下に往復駆動され、針棒16は針棒揺動軸11が揺動駆動されることにより、針棒支持部材17と共に前後水平方向に揺動駆動される。
図2に示すように、天秤機構19は、天秤(摺動部品に相当)18と、連結部材22と、天秤18を回動可能にミシンフレームに支持する回動軸23とを備えている。連結部材22は、クランクレバー14のヘッド部14aの左端部に回動可能に連結され、天秤軸25に摺動可能に支持されている。天秤18は、下端部の円柱状の天秤軸25と上糸が掛けられる天秤部26とを有する。図3,図4に示すように、天秤軸25は鋼製の円柱ロッド状の基材30の表層部に、Cr(クロム)被膜31とDLC被膜32とを形成した構造を備えている。尚、Cr被膜31とDLC被膜32が硬質被膜に相当する。
Cr被膜31は、基材30の表面からDLC被膜32が剥離するのを防ぐために、基材30の表面のうちの摺動部33となる部分に、約0.5μmの厚さで形成されている。このCr被膜31は、後述するように潤滑剤溜35を形成するためにDLC被膜32の一部が除去されても除去されずに残るので、基材30を酸化や破損等から保護することができる。
DLC被膜32は、Cr被膜31の表面に厚さ約5μmの厚さで形成されている。このDLC被膜32は、被膜形成時の水素含有量によって硬度の調整をすることができ、HV(ビッカース硬さ)を、数100からダイヤモンドのHVに近い8000程度の高硬度被膜に形成することができ、本実施例では、Cr被膜31(HV200)や基材30(浸炭焼き入れによりHV600)よりも高硬度なHV1000以上のDLC被膜32が形成されている。DLC被膜32の摩擦係数は、約0.1以下であり、耐摩耗性及び摺動性において非常に優れた被膜である。尚、Cr被膜31とDLC被膜32の厚さは一例に過ぎず、前記の値よりも小さくてもよく大きくてもよい。
図3,図4に示すように、DLC被膜32には、潤滑油からなる潤滑剤40を溜めて潤滑剤40の保持性能を高めるために、Cr被膜31まで貫通された凹部34からなる潤滑剤溜35が形成されている。これら複数の凹部34は、周方向90°間隔で上下方向(軸方向)に所定高さずれたパターンとなるように配設されている。各凹部34は菱形状に形成され、深さはDLC被膜32の厚さと同じ約5μmで形成されている。
各凹部34の側壁面37は、DLC被膜32の外表面36に対して約120°で形成されている。このように凹部34の側壁面37とDLC被膜32の外表面36との間の角度41を90°よりも大きく形成することで、供給された潤滑剤40が潤滑剤溜35に溜められた状態で連結部材22が摺動部33を摺動すると、連結部材22の摺動によりその摺動方向に流される潤滑剤40が、側壁面37に流れを止められることなく側壁面37に沿って流れ、摺動部33に潤滑剤40が確実に供給される。尚、角度41は、120°に限定されるものではなく、90°よりも大きく形成すればよく、潤滑剤40の粘度、凹部34の深さ、摺動速度、天秤18の設置角度などにより適宜変更可能である。
この天秤機構19によると、ミシンモータの回転駆動力によりクランク13が回転されると、クランク13の連結軸13aがヘッド部14a及び連結部材22と共に、図2に示す円軌道Aで回転駆動され、この回転駆動により連結部材22が天秤軸25にガイドされて略上下方向に往復駆動され、この往復駆動によって天秤18が回動軸23の周りで揺動駆動されて、上糸が引き締められる。
次に、図5,図6を参照して、天秤18、特に天秤軸25の製造方法について説明する。最初に、鋼製の天秤18の基材30を製作し、天秤軸25の基材30の表面のうちの摺動部33となる部分にCr被膜31と、そのCr被膜31の表面にDLC被膜32を真空中でUBMスパッタリングにより連続的に成膜する(図5−1参照)。具体的には、最初にCrをターゲットとしてスパッタリングを行って、Cr被膜31を所定の厚さに成膜し、次に、Crのスパッタリングを継続しつつ、グラファイトをターゲットとするスパッタリングを同時並行に行い、このグラファイトに対するCrのスパッタ率を徐々に小さくし、グラファイトのスパッタ率が徐々に大きくなるように移行して、Cr被膜31の表面にDLC被膜32を成膜する。
次に、図6に示すように、Cr被膜31とDLC被膜32が形成された天秤軸25に菱形の穴46が形成されたアルミニウム製のマスキング部材47を略密着状に外嵌する(図5−2参照)。次に、このマスクされた天秤18をエッチングが行われるチャンバー内に導入する。次に、湿度50%、気圧760Torrにチャンバー内を設定し、更に、このチャンバー内を0.05Torrまで減圧し、酸素、四フッ化炭素(CF)、アルゴンなどからなるエッチングガスをチャンバー内に導入する。次に、エッチングガス中の酸素をプラズマ化し、マスキング部材47から露出しているDLC被膜32の表面を四フッ化炭素によって処理しつつ、DLC被膜32を酸素プラズマによってCr被膜31が露出するまで約60分プラズマエッチングして、潤滑剤溜35の側壁面37とDLC被膜32の外表面36との間の角度41が90°よりも大きい潤滑剤溜35を形成する(図5−3参照)。最後に、チャンバー内から天秤18を取り出し、マスキング部材47を取り外して天秤18の天秤軸25が完成する(図4参照)。
次に、DLC被膜32をプラズマエッチングする際の、エッチングガス中の酸素の体積濃度又は四フッ化炭素の体積濃度と、そのエッチングガスによりエッチングされた凹部34の側壁面37とDLC被膜32の外表面36との間の角度41について定量的に説明する。
最初に、エッチングガス中の酸素の体積濃度を変化させた実験について図7を参照して説明する。尚、この実験は、エッチングが行われるチャンバー内のガス圧力が0.28Torr,四フッ化炭素の体積濃度が3.7%の状態で、酸素の体積濃度を43%〜70%の間で変化させて行った。図7に示すように、酸素の体積濃度が43%,55%の場合は、角度41が140°,110°に形成される。しかし、前記濃度が60%になると角度41が90°に形成され、更に、前記濃度が70%になるとDLC被膜32がオーバーエッチングされて角度41が70°に形成され、即ち、図9に示すように、角度41Aが90°以下に形成され、潤滑剤40が潤滑剤溜35Aから流出しにくくなる。従って、オーバーエッチングを防止し、プラズマエッチングによって角度41を90°よりも大きく形成するためには、酸素の体積濃度が60%以下であることが望ましい。
次に、エッチングガス中の四フッ化炭素の体積濃度を変化させた実験について説明する。尚、この実験は、エッチングが行われるチャンバー内のガス圧力が0.28Torr,酸素の体積濃度が43%の状態で、四フッ化炭素の体積濃度を3.7%〜7.3%の間で変化させて行った。図8に示すように、四フッ化炭素の体積濃度が3.7%,5%の場合は、角度41が140°,130に形成される。しかし、前記濃度が6%になると角度41が90°に形成され、更に、前記濃度が7.3%の場合はDLC被膜32がオーバエッチングされて角度41が45°に形成され、即ち、図9に示すように、角度41Aが90°以下に形成され、潤滑剤40が潤滑剤溜35Aから流出しにくくなる。従って、オーバーエッチングを防止し、プラズマエッチングによって角度41を90°よりも大きく形成するためには、四フッ化炭素の体積濃度が6%以下であることが望ましい。尚、上述した図9は本発明の実施例ではなく、比較例である。
次に、上述した天秤18、特に天秤軸25の作用及び効果について説明する。
この天秤軸25によれば、潤滑剤溜35が形成されているため潤滑剤40の保持性能を高めることができる。更に、潤滑剤溜35の側壁面37とDLC被膜32の外表面36との角度41を90°よりも大きく形成されているので、この潤滑剤溜35に充填された潤滑剤40が連結部材22の摺動方向と同じ向きに流されると、潤滑剤40が潤滑剤溜35によって掻き取られることなく、潤滑剤40が潤滑剤溜35の側壁面37に沿って流れて、DLC被膜32の外表面に確実に供給されるため、潤滑性能を高めることができる。天秤軸25の摺動部33が、高硬度で摩擦係数が非常に低いDLC被膜32で覆われているので、耐久性及び耐摩耗性を高めることができる。
天秤軸25の製造方法においては、DLC被膜32をプラズマエッチングする際に、エッチングガス中の酸素の体積濃度を60%未満(好ましくは、又は四フッ化炭素の体積濃度を6%未満にすることで、DLC被膜32のオーバーエッチングを防止し、潤滑剤溜35の側壁面37とDLC被膜32の外表面36との間の角度41を確実に90°よりも大きく形成することができる。酸素プラズマによりDLC被膜32をエッチングすることで多くの面積を一度にエッチングすることができ、また、エッチングガス中に含まれる四フッ化炭素により生成されたフッ酸によってDLC被膜32の表面を処理するので、エッチングに要する時間を大幅に削減することができる。
次に、上述した実施例を部分的に変更した変更例について説明する。
1)上述した実施例における潤滑剤溜35の凹部34の形状は種々の形状に変更可能である。例えば、図10,図11に示すように、凹部34a,34bの側壁面37a,37bが曲面状になるようにDLC被膜32a,32bに形成してもよい。この場合、側壁面37a,37bの上端部の接線とDLC被膜32a,32bの外表面36a,36bは90°以上になるように形成する。また、図12に示すように、凹部34cの側壁面37cの上側部分がDLC被膜32cの外表面36cと90°以上になるように形成し、側壁面37cの下側部分がDLC被膜32cの外表面36cに対して略90°になるように形成してもよい。
2)上述した実施例においては、凹部34を菱形に形成したが、凹部の形状は円状、矩形状、三角形状、又は格子状や溝状などの連続的な形状など種々の形状を適用することができる。但し、溝状に凹部を形成する場合、溝の長さを長くすると潤滑剤が溝に沿って流れて流出し易くなり、潤滑性を高めにくくなる。また、凹部34の深さは5μmに限定されるものではないが、潤滑剤の供給性を考慮すると凹部の深さは20μm以下が望ましい。更に、凹部を一定の間隔で周期的に形成したが、異なる間隔で非周期的に形成してもよい。
3)上述した実施例においては、基材30とDLC被膜32との間にCr被膜31を形成したが、このCr被膜31は必ずしも必要なものではなく省略してもよい。但し、このように構成する場合には、基材が露出しない程度にDLC被膜をエッチングして潤滑剤溜を形成し、DLC被膜により基材を錆や破損などから保護することが望ましい。
4)上述した実施例におけるCr被膜31の代わりに、W(タングステン)被膜,Ti(チタン)被膜,Si(シリコン被膜),Ni(ニッケル)被膜などを適用してもよい。
5)上述した実施例においては、DLC被膜32をCr被膜31が露呈するまでプラズマエッチングしたが、Cr被膜が露呈しない程度にDLC被膜をエッチングし、DLC被膜に潤滑剤溜を形成してもよい。
6)上述した実施例においては、潤滑剤40として潤滑油を適用したが、潤滑剤は潤滑油に限定されるものではなく、ナノレベルからなる粒子を適用してもよい。この場合、酸化シリコン(直径約10〜40nm),酸化チタン(直径約20nm),酸化アルミニウム(直径10nm)などの粒子を適用することができる。
7)上述した実施例においては、DLC被膜32をUBMスパッタリングにより形成したが、DLC被膜はUBMスパッタリング以外の物理蒸着法や、CVD法などの化学的蒸着法により成膜してもよい。
8)上述した実施例においてはDLC被膜32を酸素プラズマによりエッチングしたが、集束イオンビーム又はレーザーによってDLC被膜をエッチングして、潤滑剤溜を形成してもよい。このように集束イオンビーム又はレーザーによって潤滑剤溜の側壁面と硬質被膜の外表面との角度を90°よりも大きくなるように潤滑剤溜を形成するには、例えば、以下の3つのエッチング方法が考えられる。
8−1)潤滑剤溜の各凹部の外周部では集束イオンビーム又はレーザーの強度を弱くし、その強度を徐々に強くしつつ、潤滑剤溜の各凹部の中心側へと集束イオンビーム又はレーザーを移動させてDLC被膜をエッチングすることで、潤滑剤溜の側壁面と硬質被膜の外表面との角度を90°よりも大きく形成することができる。
8−2)潤滑剤溜の各凹部の外周部では集束イオンビーム又はレーザーのエッチング時間を短くし、その時間を徐々に長くしつつ、集束イオンビーム又はレーザーを潤滑剤溜の各凹部の中心側へと移動させてDLC被膜をエッチングすることで、潤滑剤溜の側壁面と硬質被膜の外表面との角度を90°よりも大きく形成することができる。
8−3)DLC被膜の表面に対し、所望の角度(例えば120°)で集束イオンビーム又はレーザーを入射させて、DLC被膜をエッチングすることで、その入射角度と同じ角度で潤滑剤溜の側壁面とDLC被膜の外表面との角度を形成することができる。
9)上述した実施例においては、四フッ化炭素を含むエッチングガスを適用したが、四フッ化炭素の代わりに、C、CHF、C、SFを適用してもよい。この場合、潤滑剤溜の側壁面と硬質被膜の外表面との角度を90°よりも大きく形成するためには、フッ素原子の単位体積中の濃度を、上述した四フッ化炭素のフッ素原子の単位体積中の濃度と同じ範囲に設定する必要がある。例えば、Cの場合、
(Cの体積濃度)×(C分子中のフッ素原子の数(=6))
≦(四フッ化炭素の最大体積濃度)×(四フッ化炭素分子中のフッ素原子の数(=4))
から、
(Cの体積濃度)≦6%×(4/6)=4%
となる。即ち、四フッ化炭素の代わりにCを用いる場合、Cの体積濃度は4%未満にすることが望ましい。但し、同じ体積に含まれる、Cと四フッ化炭素の分子の数は同じとする。
尚、ミシンの天秤以外に、種々の機械の摺動部品に適用することができる。また、摺動部は直線運動的に摺動する摺動部に限るものではなく、回転運動で摺動する摺動部も含まれる。本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で前記実施例に種々の変更を付加して実施することができ、本発明はそれらの変更例をも包含するものである。
本発明の実施例に係る2本針ミシンのアーム部内の内部機構を示す斜視図である。 前記内部機構を示す左側面図である。 天秤軸とその潤滑剤溜の要部拡大図である。 天秤軸とその潤滑剤溜の要部拡大断面図である。 天秤製造途中の基材にCr被膜とDLC被膜を形成した要部拡大図である。 天秤製造途中の天秤軸にマスキング部材を外嵌させた要部拡大図である。 天秤製造途中のDLC被膜をエッチングした要部拡大断面図である。 天秤軸とマスキング部材を示す図である。 エッチングガス中の酸素の体積濃度と潤滑剤溜の側壁面とDLC被膜の外表面との角度の関係を示す実験結果の図表である。 エッチングガス中の四フッ化炭素の体積濃度に関する図5相当図である。 オーバエッチングされた状態の比較例の図4相当図である。 第1の変更例を示す図4相当図である。 第2の変更例を示す図4相当図である。 第3の変更例を示す図4相当図である。
18 天秤
25 天秤軸
30 基材
31 Cr被膜
32 DLC被膜
33 摺動部
35 潤滑剤溜
36,36a,36b,36c 外表面
37,37a,37b,37c 側壁面
40 潤滑剤
41 角度

Claims (1)

  1. 表面の少なくとも一部に摺動部を有し、前記摺動部の表面に硬質被膜のDLC被膜を形成した摺動部品の製造方法において、
    前記DLC被膜の一部をエッチングして潤滑剤が溜められる潤滑剤溜を形成する際に、体積濃度が43〜55%の酸素と、体積濃度が3.7%〜5%の四フッ化炭素を含むエッチングガスを用いて、DLC被膜を四フッ化炭素で処理しつつ酸素プラズマによりエッチングして、前記潤滑剤溜の側壁面とDLC被膜の外表面とのなす角度が90°よりも大きくなるように潤滑剤溜を形成することを特徴とする摺動部品の製造方法
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