JP2003175406A - 硬質被膜被覆加工工具 - Google Patents

硬質被膜被覆加工工具

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JP2003175406A
JP2003175406A JP2001376980A JP2001376980A JP2003175406A JP 2003175406 A JP2003175406 A JP 2003175406A JP 2001376980 A JP2001376980 A JP 2001376980A JP 2001376980 A JP2001376980 A JP 2001376980A JP 2003175406 A JP2003175406 A JP 2003175406A
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JP2001376980A
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Hiroshi Ryu
浩 劉
Yoshihiko Murakami
良彦 村上
Yasuo Fukui
康雄 福井
Toshihiro Sato
利廣 佐藤
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Original Assignee
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ダイヤモンド被膜と同程度の耐摩耗性を維持
しつつ靱性を高くして耐久性を向上させる。 【解決手段】 超硬合金の工具基材12の刃部14の表
面に、2〜4μmの厚さのTiAlN層22、そのTi
AlN層22の上に設けられた10〜15μmの厚さの
ダイヤモンド層24、およびそのダイヤモンド層24の
上に設けられた2〜4μmの厚さのTiAlN層26か
ら成る3層積層構造の硬質被膜20を設けた。比較的靱
性が高いTiAlN層22、26により振動や衝撃が吸
収されるため、ダイヤモンド層24の欠けや剥離が抑制
されて耐久性が向上するとともに、それ等の厚さが適当
で、表面のTiAlN層26の存在に拘らずダイヤモン
ド層24による優れた耐摩耗性を併せて享受できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は硬質被膜被覆加工工
具に係り、特に、耐久性および耐摩耗性に優れた硬質被
膜被覆加工工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】エンドミルやバイト、タップ、ドリルな
どの切削加工工具として、超硬合金の基材の表面がダイ
ヤモンド被膜で被覆されているダイヤモンド被膜被覆加
工工具が提案されている。特開平7−148623号公
報に記載されている工具はその一例で、ダイヤモンド被
膜により工具の耐摩耗性が大幅に向上する。また、ダイ
ヤモンド被膜をコーティングする前に、工具基材の表面
に所定の金属間化合物を設けることにより、ダイヤモン
ド被膜の密着性を向上させるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うなダイヤモンド被膜被覆加工工具は、硬度は高いもの
の靱性が低いため、加工時の振動や衝撃などでチッピン
グや欠け、剥離などが生じ易く、十分な耐久性が得られ
難いという問題があった。なお、このような問題は、転
造工具など切削加工工具以外の加工工具においても同様
に生じる。
【0004】本発明は以上の事情を背景として為された
もので、その目的とするところは、ダイヤモンド被膜と
同程度の耐摩耗性を維持しつつ靱性を高くして耐久性を
向上させることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
めに、第1発明は、工具基材の表面が硬質被膜で被覆さ
れている硬質被膜被覆加工工具において、前記硬質被膜
は、金属間化合物層およびダイヤモンド層を交互に3層
以上積層したものであることを特徴とする。
【0006】第2発明は、第1発明の硬質被膜被覆加工
工具において、前記硬質被膜は、前記金属間化合物層か
ら前記工具基材の表面に積層されていることを特徴とす
る。
【0007】第3発明は、第1発明または第2発明の硬
質被膜被覆加工工具において、前記硬質被膜の最表面
は、前記金属間化合物層にて構成されていることを特徴
とする。
【0008】第4発明は、第1発明〜第3発明の何れか
の硬質被膜被覆加工工具において、前記金属間化合物層
の平均厚さは1〜6μmの範囲内で、前記ダイヤモンド
層の平均厚さは5〜25μmの範囲内であることを特徴
とする。
【0009】第5発明は、第1発明〜第4発明の何れか
の硬質被膜被覆加工工具において、前記金属間化合物層
は、元素の周期表の IIIb族、IVa族、Va族、VIa族
の金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、或いはこれらの相
互固溶体から成るものであることを特徴とする。
【0010】
【発明の効果】このような硬質被膜被覆加工工具は、高
硬度で耐摩耗性に優れたダイヤモンド層と、比較的靱性
が高くて優れた耐久性が得られる金属間化合物層とが交
互に3層以上積層されているため、それ等の厚さや積層
数を適当に設定することにより、耐摩耗性および耐久性
が共に優れた硬質被膜被覆加工工具が得られるようにな
る。すなわち、靱性に優れた金属間化合物層によって振
動や衝撃が吸収されるため、ダイヤモンド層の欠けや剥
離が抑制されて硬質被膜の耐久性が向上するのである。
また、金属間化合物層が最表面に設けられている場合で
も、その厚さを適当に設定することにより、金属間化合
物層の存在に拘らずダイヤモンド層による優れた耐摩耗
性を併せて享受できるのである。
【0011】第2発明では、金属間化合物層から工具基
材の表面に積層されているため、ダイヤモンド層を工具
基材の表面に直接設ける場合に比較して、工具基材に対
する密着性が高く、剥離が抑制されて硬質被膜の耐久性
が一層向上する。
【0012】第3発明では、金属間化合物層が最表面に
位置しているため、ダイヤモンドのように鉄系材料と反
応して早期摩耗や剥離を生じる恐れがなく、鉄系材料に
対して加工を行う場合でも優れた耐摩耗性や耐久性が得
られる。
【0013】第4発明では、金属間化合物層の平均厚さ
が1〜6μmの範囲内で、ダイヤモンド層の平均厚さが
5〜25μmの範囲内であるため、高硬度なダイヤモン
ド層による耐摩耗性を享受しつつ金属間化合物層の靱性
による耐久性向上効果が得られて、耐摩耗性および耐久
性が共に優れた硬質被膜被覆加工工具が得られる。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の硬質被膜被覆加工工具
は、エンドミルやバイト、タップ、ドリルなどの切削加
工工具に好適に適用されるが、転造工具などの他の加工
工具にも適用され得る。また、金属間化合物層が最表面
に位置している場合には、鉄鋼材料などの鉄系材料の加
工に好適に用いられるが、他の材料の加工に用いること
も勿論可能である。
【0015】ダイヤモンド層は、マイクロ波プラズマC
VD法やフィラメントCVD法、アークプラズマCVD
法、イオン化蒸着法などの気相合成法により略完全なダ
イヤモンド結晶構造で形成することが望ましいが、高周
波プラズマCVD法や、イオン化蒸着法、イオンビーム
法、アークイオンプレーティング法、スパッタリング法
などのPVD法によって成膜されるダイヤモンド状カー
ボン(DLC;Diamond-Like Carbon)を用いることもで
きる。ダイヤモンド状カーボンは、ダイヤモンドと似た
物性を有するアモルファスなカーボン膜で、ビッカース
硬さ(Hv)は1000〜8000程度であり、厳密に
はダイヤモンドではないが、TiC等の硬質の金属間化
合物よりも高硬度のもの、例えばビッカース硬さ(H
v)が5000程度以上のものは、本発明のダイヤモン
ド層として用いることができる。
【0016】上記ダイヤモンド状カーボンは、金属間化
合物層と同じ装置で積層することが可能であるため、そ
れ等のダイヤモンド層および金属間化合物層が交互に3
層以上積層される硬質被膜の成膜作業を連続的に行うこ
とが可能で、本発明の硬質被膜被覆加工工具を容易に製
造できるようになる。
【0017】上記ダイヤモンド層の厚さは、積層数や金
属間化合物層の種類、厚さなどによって異なるが、例え
ば5μmより薄いと十分な耐摩耗性等の作用が得られな
い一方、25μmを越えると剥離し易くなるなどして好
ましくないため、5μm〜25μmの範囲内が適当で、
10μm〜20μm程度が特に望ましい。複数のダイヤ
モンド層が積層される場合、その厚さは同じであっても
良いが、層毎に厚さを変化させることもできる。
【0018】また、上記ダイヤモンド層は、例えば核生
成工程および結晶成長工程によって形成され、その結晶
成長を所定時間行うことによって目的とする厚さにする
ことができるが、核生成工程および結晶成長工程を繰り
返すことにより、微結晶で多層構造のダイヤモンド層を
形成することもできる。
【0019】工具基材としては、超硬合金やサーメット
などの超硬質合金、セラミックスなどの超硬質非合金な
どの超硬質工具材料が好適に用いられ、必要に応じて硬
質被膜との密着性を高めるための前処理が施される。例
えばダイヤモンド層から工具基材の表面に積層する場合
には、表面粗さ曲線の最大高さRy で0.5〜5μm程
度となるように粗面化処理を施したり、基材表層部に含
まれているCoを除去するための酸処理を施したりする
など、ダイヤモンド層の密着性を高めるための所定の前
処理を行うことが望ましい。
【0020】金属間化合物層の厚さは、その金属間化合
物の種類やダイヤモンド層の厚さ、積層数などによって
異なるが、例えば1μmより薄いと靱性による衝撃吸収
作用が十分に得られない一方、6μmを越えると剥離し
易くなるなどして好ましくないため、1μm〜6μmの
範囲内が適当で、2μm〜4μm程度が特に望ましい。
【0021】金属間化合物層としては、元素の周期表の
IIIb族、IVa族、Va族、VIa族の金属、例えばA
l、Ti、V、Crなどの炭化物、窒化物、炭窒化物、
或いはこれらの相互固溶体が適当で、具体的には、Ti
AlN合金、TiCN合金、TiCrN合金、TiN合
金などが好適に用いられる。このような金属間化合物層
は、例えばアークイオンプレーティング法やスパッタリ
ング法等のPVD法によって好適に設けられるが、プラ
ズマCVD法等の他の成膜法で設けることもできる。
【0022】複数の金属間化合物層が積層される場合、
その種類や厚さは同じであっても良いが、層毎に厚さを
変化させることもできる。例えば、工具基材の表面に設
けられる金属間化合物層としては、密着性や靱性に優れ
たTiN合金などを採用し、それ以外の金属間化合物層
としては、靱性に優れたTiAlN合金などを採用する
こともできる。また、2種類以上の金属間化合物を連続
的に積層して1つの金属間化合物層を構成することも可
能である。
【0023】また、金属間化合物層およびダイヤモンド
層が交互に3層以上積層された硬質被膜の全体の膜厚
は、加工工具の種類に応じて適宜定められるが、例えば
切れ刃を有する切削加工工具の場合、厚過ぎると切れ刃
の刃先が丸くなって切れ味が損なわれるため30μm以
下が適当で、25μm以下が特に望ましい。
【0024】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳
細に説明する。図1は、本発明が適用された硬質被膜被
覆加工工具、具体的には硬質被膜被覆切削加工工具とし
てのエンドミル10を示す図で、(a) は軸心と直角方向
から見た正面図、(b) は刃部14の表面付近の断面図で
ある。このエンドミル10は、直径が10mmで4枚刃
のスクエアエンドミルであり、工具基材12は、WCを
主成分とする超硬合金にて構成されており、その工具基
材12にはシャンクおよび刃部14が軸方向に一体に設
けられている。刃部14には、切れ刃として外周刃16
および底刃18が設けられているとともに、刃部14の
表面には15〜25μm程度の膜厚の硬質被膜20が設
けられている。硬質被膜20は、工具基材12の表面に
設けられた平均厚さが2〜4μmのTiAlN層22
と、そのTiAlN層22の上に設けられた平均厚さが
10〜15μmのダイヤモンド層24と、更にそのダイ
ヤモンド層24の上に設けられた平均厚さが2〜4μm
のTiAlN層26とから成る3層積層構造で、そのT
iAlN層26が刃部14の最表面を構成している。T
iAlN層22およびTiAlN層26は、金属間化合
物であるTiAlN合金にて構成されており、ダイヤモ
ンド層24は略完全なダイヤモンド結晶構造のダイヤモ
ンドにて構成されている。なお、図1(a) の斜線部は、
工具基材12の表面にコーティングされた硬質被膜20
を表している。
【0025】上記エンドミル10は、図2に示す工程を
経て製造されたもので、ステップS1では、超硬合金に
研削加工等を施すことにより、切れ刃として外周刃16
および底刃18を有する工具基材12を形成し、ステッ
プS2では、その工具基材12の刃部14の表面に、T
iAlN層22をPVD法、具体的にはアークイオンプ
レーティング法によってコーティングする。
【0026】図3は、上記TiAlN層22を形成する
際に好適に用いられるアークイオンプレーティング装置
50を説明する概略構成図(模式図)で、多数のワーク
すなわち工具基材12を保持しているワーク保持具5
2、そのワーク保持具52を略垂直な回転中心まわりに
回転駆動する回転装置54、工具基材12に負のバイア
ス電圧を印加するバイアス電源56、工具基材12など
を内部に収容している処理容器としてのチャンバ58、
チャンバ58内に所定の反応ガスを供給する反応ガス供
給装置60、チャンバ58内の気体を真空ポンプなどで
排出して減圧する排気装置62、第1アーク電源64、
第2アーク電源66等を備えている。ワーク保持具52
は、上記回転中心を中心とする円筒形状或いは多角柱形
状を成しており、刃部14が略水平に外側へ突き出す姿
勢で多数の工具基材12を放射状に保持している。ま
た、反応ガス供給装置60は、本実施例では窒化物であ
るTiAlN層22を形成するために窒素ガス(N2
を供給するようになっている。なお、金属間化合物層と
して炭化物を形成する場合は炭化水素ガス(CH4 、C
2 2 など)を供給し、炭窒化物を形成する場合は窒素
ガスおよび炭化水素ガスの両方を供給すれば良い。
【0027】第1アーク電源64は、TiAlN層22
の構成物質であるTiから成る第1蒸発源68をカソー
ドとして、アノード70との間に所定のアーク電流を通
電してアーク放電させることにより、第1蒸発源68か
らTiを蒸発させるもので、蒸発したTiは正(+)の
金属イオンになって負(−)のバイアス電圧が印加され
ている工具基材12の表面に付着する。また、第2アー
ク電源66は、TiAlN層22の構成物質であるAl
から成る第2蒸発源72をカソードとして、アノード7
4との間に所定のアーク電流を通電してアーク放電させ
ることにより、第2蒸発源72からAlを蒸発させるも
ので、蒸発したAlは正(+)の金属イオンになって負
(−)のバイアス電圧が印加されている工具基材12の
表面に付着する。上記第1蒸発源68および第2蒸発源
72は、ワーク保持具52を挟んで略水平方向の対称位
置に配置されている。
【0028】そして、予め排気装置62で排気しながら
チャンバ58内が所定の圧力(例えば1.33×5×1
-1Pa〜1.33×40×10-1Pa程度)に保持さ
れるように反応ガス供給装置60から窒素ガスを供給し
つつ、バイアス電源56により工具基材12に所定のバ
イアス電圧(例えば−50V〜−150V程度)を印加
し、回転装置54によりワーク保持具52を所定の回転
速度で回転させながら前記TiAlN層22を形成す
る。具体的には、第1アーク電源64および第2アーク
電源66を共にON(通電)し、第1蒸発源68とアノ
ード70との間でアーク放電させてTiを蒸発させると
ともに、第2蒸発源72とアノード74との間でアーク
放電させてAlを蒸発させることにより、TiAlN合
金から成るTiAlN層22が所定の厚さ(本実施例で
は2〜4μm)で工具基材12の表面にコーティングさ
れる。
【0029】図2に戻って、次のステップS3では、図
4のマイクロ波プラズマCVD装置30を用いて、上記
TiAlN層22が設けられた刃部14の表面に気相合
成法、具体的にはマイクロ波プラズマCVD法により、
ダイヤモンド粒子を生成・成長させてダイヤモンド層2
4をコーティングする。マイクロ波プラズマCVD装置
30は、反応炉32、マイクロ波発生装置34、原料ガ
ス供給装置36、真空ポンプ38、および電磁コイル4
0を備えて構成されている。円筒状の反応炉32内には
テーブル42が設けられ、刃部14にTiAlN層22
が設けられた複数の工具基材12がワーク支持具44に
支持されて、それぞれ刃部14が上向きになる姿勢で配
置されるようになっている。
【0030】マイクロ波発生装置34は、例えば2.4
5GHz等のマイクロ波を発生する装置で、このマイク
ロ波が反応炉32内へ導入されることにより工具基材1
2が加熱されるとともに、マイクロ波発生装置34の電
力制御によって加熱温度が調節される。原料ガス供給装
置36は、メタン(CH4 )や水素(H2 )、一酸化炭
素(CO)などの原料ガスを反応炉32内に供給するた
めのもので、それ等のガスボンベや流量を制御する流量
制御弁、流量計などを備えて構成されている。真空ポン
プ38は、反応炉32内の気体を吸引して減圧するため
のもので、圧力計46によって検出される反応炉32内
の圧力値が予め定められた所定の圧力値になるように、
真空ポンプ38のモータ電流などがフィードバック制御
される。電磁コイル40は、反応炉32内を取り巻くよ
うに反応炉32の外周側に円環状に配設されている。
【0031】そして、ダイヤモンド層24のコーティン
グ処理は、核生成工程と結晶成長工程とから成り、核生
成工程では、メタンおよび水素の流量調節を行うととも
に、工具基材12の表面温度が700〜900℃の範囲
内で定められた設定温度になるようにマイクロ波発生装
置34を調節し、反応炉32内のガス圧が2.7×10
2 〜2.7×103 Paの範囲内で定められた設定圧に
なるように真空ポンプ38を作動させて、その状態を所
定時間継続する。これにより、工具基材12の表面、厳
密には前記TiAlN層22の表面に、ダイヤモンドの
結晶成長の起点となる核の層が付着される。また、結晶
成長工程は、例えばメタンの濃度が1〜4%の範囲内で
定められた設定値になるようにメタンおよび水素の流量
調節を行うとともに、工具基材12の表面温度が800
〜900℃の範囲内で定められた設定温度になるように
マイクロ波発生装置34の電力を調節し、反応炉32内
のガス圧が1.3×103 〜6.7×103 Paの範囲
内で定められた設定圧になるように真空ポンプ38を作
動させ、その状態を所定時間継続して前記核を起点とし
てダイヤモンドを結晶成長させることにより、略完全な
ダイヤモンド結晶構造のダイヤモンドから成るダイヤモ
ンド層24が所定の厚さ(本実施例では10〜15μ
m)でTiAlN層22の上に形成される。
【0032】図2に戻って、ステップS4では上記ダイ
ヤモンド層24の上に、前記ステップS2と同様に図3
のアークイオンプレーティング装置50を用いて、厚さ
が2〜4μmのTiAlN層26をコーティングする。
【0033】このような本実施例のエンドミル10によ
れば、刃部14を被覆している硬質被膜20が、工具基
材12の表面に設けられた2〜4μmの厚さのTiAl
N層22と、そのTiAlN層22の上に設けられた1
0〜15μmの厚さのダイヤモンド層24と、更にその
ダイヤモンド層24の上に設けられた2〜4μmの厚さ
のTiAlN層26とから成る3層積層構造を成してお
り、高硬度で優れた耐摩耗性を有するものの靱性が劣る
ダイヤモンド層24が、比較的靱性が高くて優れた耐久
性が得られる一対のTiAlN層22、26の間に挟ま
れて設けられているため、優れた耐久性および耐摩耗性
が得られる。すなわち、TiAlN層22、26により
振動や衝撃が吸収されるため、ダイヤモンド層24の欠
けや剥離が抑制されて硬質被膜20の耐久性が向上する
とともに、それ等の厚さが適当で、表面のTiAlN層
26の存在に拘らずダイヤモンド層24による優れた耐
摩耗性を併せて享受できるのである。
【0034】また、本実施例では工具基材12の表面に
TiAlN層22が設けられているため、ダイヤモンド
層24を工具基材12の表面に直接設ける場合に比較し
て、工具基材12に対する密着性が高く、剥離が抑制さ
れて硬質被膜20の耐久性が一層向上する。
【0035】また、TiAlN層26が最表面に位置し
ているため、ダイヤモンドのように鉄系材料と反応して
早期摩耗や剥離を生じる恐れがなく、鉄系材料に対して
加工を行う場合でも、ダイヤモンド層24が最表面に位
置して鉄系材料に直接接触する場合や、ダイヤモンド層
24を設けることなくTiAlN層22のみを設けた場
合に比較して、優れた耐摩耗性および耐久性が得られ
る。
【0036】また、硬質被膜20の全体の膜厚は15〜
25μm程度であるため、外周刃16および底刃18の
刃先の丸みも許容範囲で、優れた切削性能が得られる。
【0037】因みに、上記エンドミル10(本発明品)
と、工具基材12の表面に直接ダイヤモンド層24のみ
を設けた比較品I、ダイヤモンド層24を設けることな
く工具基材12の表面に0.3μm程度の厚さのTiN
層を設けるとともに、そのTiN層の上に4μm程度の
厚さのTiAlN層を設けた比較品II、ダイヤモンド層
24を設けることなく工具基材12の表面に4μm程度
の厚さのTiAlN層のみを設けた比較品III を用意
し、以下の加工条件で耐摩耗性試験を行ったところ、図
5、図6に示す結果が得られた。これらの図の「○」は
本発明品で、「□」は比較品I、「●」は比較品II、
「×」は比較品III であり、水溶性切削油を用いた図
5、ドライ加工の図6の何れの場合も、本発明品が最も
耐摩耗性に優れているとともに、実用上十分に満足でき
る耐久性が得られることが判る。なお、外周逃げ面摩耗
幅VBは、4枚の外周刃16の平均値である。また、
「□」で示す比較品Iは、図5および図6の何れの場合
もダイヤモンド層24の剥離が原因で外周逃げ面摩耗幅
VBが早い段階で急激に増加した。 (加工条件) 被削材:FC250(鋳鉄) 加工方法:側面切削 切削速度:200.96m/min(6400mi
-1) 送り速度:0.05mm/t(1280mm/min) 切り込み(Ad):15mm 切り込み(Rd):切削長さ21mまで0.1mmで以
後0.5mm(図5)、切削長さ7mまで0.1mmで
以後0.5mm(図6) 切削油剤:水溶性切削油(図5)、ドライ(図6) 使用機械:横型マシニングセンタ
【0038】なお、前記実施例の硬質被膜20は3層構
造であったが、前記ステップS3のダイヤモンド層コー
ティング工程、およびステップS4のTiAlN層コー
ティング工程を繰り返してダイヤモンド層24およびT
iAlN層26を更に積層することにより、図7(a) に
示すように4層以上の積層構造の硬質被膜80を採用し
たり、図7(b) に示す硬質被膜82のように、最表面に
ダイヤモンド層24を設けたりすることも可能である。
また、ダイヤモンド層24としてダイヤモンド状カーボ
ンを採用すれば、例えば前記図3のアークイオンプレー
ティング装置50を用いて、チャンバ58内に工具基材
12を保持したままダイヤモンド層24およびTiAl
N層22、26を連続的に積層することも可能で、製造
が容易になる。
【0039】以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳
細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、
本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加
えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例であるエンドミルを示す図
で、(a) は軸心と直角方向から見た正面図、(b) は刃部
の表面付近の断面図である。
【図2】図1のエンドミルの製造工程を説明する図であ
る。
【図3】図2のステップS2、S4でTiAlN層のコ
ーティングに好適に用いられるアークイオンプレーティ
ング装置の一例を説明する概略構成図である。
【図4】図2のステップS3でダイヤモンド層のコーテ
ィングに好適に用いられるマイクロ波プラズマCVD装
置の一例を説明する概略構成図である。
【図5】図1のエンドミルおよび比較品について、水溶
性切削油を用いて行った耐摩耗性試験の結果を示す図で
ある。
【図6】ドライ加工で図5と同じ耐摩耗性試験を行った
結果を示す図である。
【図7】本発明の別の実施例を示す図で、(a) 、(b) 共
に図1(b) に対応する断面図である。
【符号の説明】
10:エンドミル(硬質被膜被覆加工工具) 12:
工具基材 20、80、82:硬質被膜 22、2
6:TiAlN層(金属間化合物層) 24:ダイヤ
モンド層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 福井 康雄 愛知県豊川市本野ヶ原1丁目15番地 オー エスジー株式会社内 (72)発明者 佐藤 利廣 愛知県豊川市本野ヶ原1丁目15番地 オー エスジー株式会社内 Fターム(参考) 3C037 CC02 3C046 FF11 FF12 FF16 FF25 4K029 BA34 BA58 BB02 BC02 BD05 CA04 EA01

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 工具基材の表面が硬質被膜で被覆されて
    いる硬質被膜被覆加工工具において、 前記硬質被膜は、金属間化合物層およびダイヤモンド層
    を交互に3層以上積層したものであることを特徴とする
    硬質被膜被覆加工工具。
  2. 【請求項2】 前記硬質被膜は、前記金属間化合物層か
    ら前記工具基材の表面に積層されていることを特徴とす
    る請求項1に記載の硬質被膜被覆加工工具。
  3. 【請求項3】 前記硬質被膜の最表面は、前記金属間化
    合物層にて構成されていることを特徴とする請求項1ま
    たは2に記載の硬質被膜被覆加工工具。
  4. 【請求項4】 前記金属間化合物層の平均厚さは1〜6
    μmの範囲内で、前記ダイヤモンド層の平均厚さは5〜
    25μmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜3
    の何れか1項に記載の硬質被膜被覆加工工具。
  5. 【請求項5】 前記金属間化合物層は、元素の周期表の
    IIIb族、IVa族、Va族、VIa族の金属の炭化物、窒
    化物、炭窒化物、或いはこれらの相互固溶体から成るも
    のであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に
    記載の硬質被膜被覆加工工具。
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