JP4284941B2 - 硬質炭素膜被覆部材及び成膜方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は基材との密着性に優れた硬質炭素膜被覆部材の形成方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
硬質炭素膜(DLC)は硬度が高く、耐摩耗性がよく、また自己潤滑性に富み、アモルファス構造であることから表面粗さが非常に小さいため摩擦係数が非常に小さい。さらに、物質的に安定であり化学的な耐久性も高い。そのため古くから切削・加工用工具、金型、機械部品に利用されており、近年では磁気ディスク記録装置の記録面および磁気記録ヘッド表面やスピンドルモータの軸受け摺動部に用いる保護膜として一部利用されている。
【0003】
一方で超鋼、ステンレス、樹脂などの基材上に硬質炭素膜を形成する場合、膜形成時に極めて大きな内部応力が発生し、変形能が極めて小さいことから基材との密着性が弱く、剥離し易いという欠点をもっている。こうした硬質炭素膜の基材との密着性を改善する技術として、これまでも基材との間に密着層として異種金属にて構成される中間層を設ける方法が提案されている。
【0004】
例えば、特開2000−119843、特開2002-36791においては2層からなる中間層を成膜した部材、特開平10-203896においては下地層として金属元素を有し、第2層として金属と炭素が傾斜的に変化する構造を有する中間層を用いて密着力を向上させるための方法が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これまで提案されている技術はあくまで、多層の中間層や炭素が傾斜的に変化する部材の構成を示しているのみであり、その量産に適した硬質炭素膜の製造方法を示しているのもではない。本発明はその問題点を鑑みてなされたものであり、生産性よく密着力の高い硬質炭素膜を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の硬質炭素膜被覆部材は、基材に下地層と混合層からなる中間を介して硬質炭素膜を形成したものであり、下地層はIVa、Va、VIa、VIIa、VIIIa、IVb族金属元素から選択され、混合層はIVa、Va、VIa、VIIa、VIIIa、IVb族金属元素の炭化物または、IVa、Va、VIa、VIIa、VIIIa、IVb族金属元素と炭素の濃度が下地層側から硬質炭素膜層側に向かって段階的または連続的に変化していることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、基材の材質によることなく容易に密着力の高い硬質炭素膜が被覆された部材を提供できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、内部を真空に保つことができる真空容器と、前記真空容器に原料ガスを供給するガス供給手段と、前記反応容器内に設置され基材を保持する基材支持台と、前記基材支持台に設置した基材と、IVa、Va、VIa、VIIa、VIIIa、IVb族から選ばれる少なくとも1つの金属元素から成る蒸発源と、を有する硬質炭素膜形成方法であって、前記ガス供給手段から不活性ガスを供給し、前記蒸発源を蒸発させ前記基材の上に下地層を形成するステップと、少なくとも炭化水素ガスと不活性ガスの混合ガスを前記ガス供給手段より供給し、前記混合ガス中で前記蒸発源を蒸発させ、前記基材上に、前記基材支持台に高周波電圧を供給して前記高周波電圧を連続的または段階的に変化させることにより、下地層の上に、金属と炭素の濃度が連続的または段階的に変化する前記蒸発源の金属元素との炭化物からなる混合層を形成するステップと、前記ガス供給手段から少なくとも炭化水素ガスを供給し、更に前記基材支持台に高周波電圧を印加し、前記基材の混合層の上に硬質炭素膜を形成するステップと、を有することを特徴とする硬質炭素膜形成方法としたものであり、下地層を形成するステップ、混合層を形成するステップ、硬質炭素膜を形成するステップを有することで硬質炭素膜被覆部材の密着力が向上する作用を有する。
【0020】
本発明の請求項2記載の発明は、請求項1に記載の硬質炭素膜形成方法であって、前記蒸発源は不活性ガスイオンを前記蒸発源表面に加速衝突させ、前記蒸発源の材料を蒸発させることを特徴とする硬質炭素膜形成方法としたものであり、硬質炭素膜被覆部材の密着力が向上する作用を有する。
本発明の請求項3記載の発明は、請求項1に記載の硬質炭素膜形成方法であって、前記蒸発源はシリコン、チタン、タングステン、クロムから選ばれる少なくとも1つの金属元素からなることを特徴とする硬質炭素膜形成方法である。
本発明の請求項4記載の発明は、請求項1に記載の硬質炭素膜形成方法であって、前記炭化水素ガスはメタン、アセチレン、プロパン、ベンゼン、クメン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンから選ばれることを特徴とする硬質炭素膜形成方法である。
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0021】
(実施の形態1)
以下本発明における好適な実施の形態を説明する。図1は本発明における第1の実施の形態を示す硬質炭素膜が形成された部材の断面図である。1は金型、工具、機械部品などの部材であり、2は例えば、超硬合金、ステンレス、アルミなどの基材、3は金属元素から成る下地層、4は金属と炭素が混在している混合層、5は硬質炭素膜層である。この実施の形態では下地層として、基材2との密着性に優れるシリコン、チタン、タングステン、クロムからなる群から選ばれた金属の薄膜を用い、混合層は下地層材料の炭化物で構成する場合について示す。
【0022】
図2はこの実施の形態で用いるのに適した装置の断面図である。この図において6は内部を真空状態に保持可能な真空容器、7は真空容器を真空にする排気手段、8は原料ガスを供給するガス供給手段、9は真空容器内にて基材を保持する基材支持台、10はインピーダンス調整を行う整合器、11は高周波電源、12はターゲットを保持するターゲットホルダ、13は下地・混合層の原料となるターゲット、14は直流電源となっている。
次に動作について説明する。まず基材支持台9に基材2を設置し、排気手段7にて真空容器6の内部を1×10E-5Pa程度の真空に排気したあと、基材2の表面洗浄のためにガス供給手段8より不活性ガスを供給し、真空容器6を1〜100Pa程度に調整する。
【0023】
そして、高周波電源11と整合器10を作動させ、不活性ガスをプラズマ化し、イオンを発生させ同時に高周波電圧によって発生する-200〜-1200Vのセルフバイアス電圧にて基材2の表面をイオンクリーニングして基材洗浄処理を行う。
【0024】
ここで、イオンクリーニングガスとしてはアルゴン、キセノン、ヘリウムなどの不活性ガスまたは水素ガス、不活性ガスと水素ガスの混合ガス(例えば、水素50%+アルゴン50%)を用い、クリーニング処理を実施してもよい。水素イオンによる酸化物の還元反応、不活性ガスイオンのスパッタリングによる基材表面の不純物の除去が同時にできるため基材2と下地層3の密着力を向上させることができる。以上の処理によって基材表面を清浄にすることができ有機物や酸化層に起因する剥離を防止することができ、基材と下地層の密着力が向上する。
【0025】
次に、高周波電源11、整合器10を停止し、ガス供給手段8による不活性ガスの供給を行ったままで真空容器6内部の圧力を0.1〜10Paに調整し、直流電源14を駆動させ不活性ガスをプラズマ化してイオンを発生し、そのイオンにてシリコン、チタン、クロムまたはタングステンの金属で構成するターゲット13をスパッタリングする。スパッタリングにて蒸発した粒子は基材2上に堆積して下地層を形成する。
【0026】
次に、ガス供給手段8を用いて不活性ガス中に炭化水素ガスを混入し混合ガスを供給する。直流電源14より供給される電力によって混合ガスをプラズマ化し、不活性ガス及び炭化水素ガスのイオンを発生させる。ターゲット13では、炭化水素イオンが堆積すると共に、不活性ガスイオンによって堆積した炭素とターゲット13を共にスパッタ粒子として基材2に向かって飛散し下地層3の上に蒸発源金属との炭化物として形成され基材2上に混合層4が形成される。
【0027】
次に、直流電源14を停止し、不活性ガスの供給も停止して炭化水素ガスを供給する。真空容器6内の圧力を5〜50Paの間で調整し、整合器10と高周波電源11を駆動し、炭化水素ガスのプラズマを励起し、イオンを発生させる。高周波電圧11により発生するセルフバイアス電圧は−200〜−1200Vであり、イオン化された炭化水素が基材2上に堆積し硬質炭素膜4が形成される。
【0028】
(実施の形態2)
この実施の形態では図1の部材1における混合層4を下地層3側から硬質炭素膜層4側に向かって炭素量が徐々に増加する構成とした場合を示す。図3は硬質炭素膜が形成された金型、工具、機械部品などの部材の断面図を示している。下地層3としてのチタン膜側から硬質炭素膜が形成されている方向に向かって炭素量が増加し、チタン量が減少している構成となっている。
【0029】
次に動作について説明する。実施の形態1の場合と同様に図2において、基材支持台に9に基材2を設置した後、真空容器6を排気手段7によって1×10E-5Pa程度まで真空引きを行う。真空引きが完了すると実施の形態1と同様にガス供給手段8により、クリーニングガスを供給し、基材表面のクリーニングを行い酸化物、付着物などの除去して基材2表面と下地層3と混合層4と硬質炭素膜層5の密着力を向上させる。次にガス供給手段8から不活性ガスを供給し直流電源14にて不活性ガスをプラズマ化しイオンを発生させる。そのイオンにより、ターゲット13を蒸発させ基材2上にチタンを堆積させ下地層3を形成する。
【0030】
続いて直流電源14は駆動させたままで、ガス供給手段8より炭化水素のガスの供給を開始する。供給される炭化水素ガスは、不活性ガスと同様にプラズマ化されイオンが発生するのでターゲット13上にて反応性スパッタとなり、基材2上に炭化チタンが形成される。このとき炭化水素の供給量を連続的に増加させると、混合層4では初期の段階においてチタンが炭素に比べて多く含有され、混合ガス中の炭化水素比率の増加に従い混合層4中の炭素量が増加し最終的には基材上でチタンよりも炭素の含有量が多くなり結果として図3に示されるように混合層中で炭素量が連続的に変化する傾斜層が形成される。
【0031】
ここで、炭化水素ガスの供給量を図4に示されるように段階的に変化させ、混合層4中の炭素量が段階的に変化するように混合層4を形成してもかまわない。ついで実施の形態1と同様に直流電源14の供給を停止し、不活性ガスの供給を停止して炭化水素ガスのみを供給する。真空容器内の圧力を5〜50Paの間で調整し、整合器10と高周波電源11を駆動し、炭化水素ガスのプラズマを励起し、イオンを発生させる。高周波電圧11により発生するセルフバイアス電圧は−200〜−1200Vであり、イオン化された炭化水素が基材2上に堆積し硬質炭素膜4が形成される。
【0032】
以上同一真空容器6内部にて金属のターゲット14を備え、ターゲットの蒸発により基材2上に金属下地層3を形成し、その後大気開放なしに、同一真空容器内で炭素量が連続的または段階的に変化する混合層4を下地層3の上に形成し、炭化水素雰囲気中で基材に高周波電源11を印加することで混合層4上に硬質炭素膜5を形成できる。図3、4に示した例によると混合層4中で炭素量が連続的に変化させることができ密着力を向上させることができるので、耐磨耗性、耐食性に優れた金型、工具、機械部品などの部材1が得られる。
【0033】
(実施の形態3)
実施の形態2と類似しているが、この実施の形態では混合層4の形成を混合ガス中の炭化水素ガスと不活性ガスの混合比を一定にした混合ガスをガス供給手段8より供給する。ついで直流電源14にて供給する電力を図5に示すように連続的に変化させることで、炭素構成量が連続的に変化する混合層を形成するものである。直流電源14からの供給電力が増えると、ターゲット表面に堆積する炭素量が増加する。従ってターゲット表面に炭化チタンまたは炭素として形成される量が増えるので蒸発粒子中の炭素濃度が増え基材2上にてチタンと炭素の比率は直流電力の上昇に伴って変動する。
【0034】
ここで、直流電力の増加量を図6に示されるように段階的に変化させ、炭素量が段階的に変化するように混合層4を形成してもかまわない。
【0035】
(実施の形態4)
実施の形態2と類似しているが、この実施の形態では混合層形成を炭化水素ガスと不活性ガスの混合比を一定にした混合ガスをガス供給手段8より供給し、更に直流電源14から一定電力を供給し、更に基材2に高周波電源11から高周波電力を印加する。供給された混合ガスは直流電源14によってプラズマ化されて不活性ガスイオンと、炭化水素イオンを生成する。ガスイオンはターゲット13表面に衝突し、チタン、炭素のスパッタ粒子が発生する。その粒子が基材2上に堆積してチタン、炭素の混合層が形成される。ここで、高周波電力を供給すると、イオンが基材2表面に向かって加速され、基材上に炭素が堆積する。従って、図7に示すように供給する高周波電力量を連続的に増加させることで、基材2上に堆積する炭素量を連続的に増加させることができ、傾斜構造を有する混合層4を形成できる。
【0036】
ここで、高周波電力の増加量を図8に示されるように段階的に変化させ、炭素量が段階的に変化するように混合層を形成してもかまわない。
【0037】
(実施の形態5)
下地層の形成までは実施の形態1〜4と同じであるので、混合層の形成より説明する。混合層の形成時にガス供給手段8より不活性ガスと炭化水素ガスの混合ガスを供給し、ターゲット13と基材2にそれぞれ直流電源14と高周波電源11を供給し混合ガスをプラズマ化しイオンを生成する。ここで図9にて示されるように、直流電源14の電力量と高周波電源11の電力量は混合層形成時中は一定にしておく。混合ガスの混合比を連続的に変化させることにより、真空容器6の雰囲気中の炭化水素量が変化し、ターゲット13表面では反応する炭化水素の量が変化し蒸発粒子中の炭素量が変化する。また基材2側でも堆積する炭素量が同じく変化する。従って混合層形成時に混合ガス中の炭化水素濃度を増加させることで混合層4中の炭素量が連続的に変化する傾斜構造をもった混合層を形成することができる。
【0038】
ここで、図10に示されるように混合ガスの混合比を一定にしておき、直流電力と高周波電力を連続的に変化させることで混合層を形成してもかまわない。また混合ガスの混合比と直流電力と高周波電力のうちいずれか1つまたは2つを一定にしておき、残りの2つまたは1つを変化させて混合層を形成するようにしてもかまわない。更に、混合ガスの混合比と直流電力と高周波電力のすべてを連続的に変化させることによっても炭素量が連続的に変化する混合層を形成可能なことはいうまでもない。
またそれぞれを段階的に変化させることにより炭素量が段階的に変化する混合層が形成できることはいうまでもない。
【0039】
(実施の形態6)
図11は本発明にかかる硬質炭素膜を誘導結合方式を用いて構成した装置の断面図である。装置は内部を真空に保つことができる真空容器6、排気手段7、原料ガス供給手段8、基材支持台9、整合器10、バイアス用高周波電源11、ターゲット13、バイアス用直流電源14、誘導コイル15、プラズマ励起用高周波電源16にて構成される成膜装置である。この実施例では誘導コイル外装型について記載するが、内装型の誘導コイルを有する誘導結合型成膜装置であってもなんら問題ではない。
【0040】
ターゲット13としては基材2との密着性に優れるシリコン、チタン、タングステン、クロムからなる郡から選ばれる金属で構成される。次に動作について説明する。まず基材支持台に基材2を設置し、排気手段7にて真空容器6の内部を1×10E-4Pa程度の真空に排気したあと、基材2の表面洗浄のためにガス供給手段6より不活性ガスを供給し、真空容器6を0.1〜100Pa程度に圧力を調整する。
【0041】
そして、高周波電源と整合器17を作動させ誘導コイル15に高周波電力を供給し、不活性ガスをプラズマ化し、イオンを発生させる。同時に高周波電源11と整合器10を作動させ基材2にバイアス高周波電圧を印加する。高周波電圧によって加速されたアルゴンイオンは、基材2の表面に衝突し酸化膜やその他の表面上の不純物が除去される。
【0042】
ここで、イオンクリーニングガスとしてはアルゴン、キセノン、ヘリウムなどの不活性ガスまたは水素ガス、不活性ガスと水素ガスの混合ガス(例えば、水素50%+アルゴン50%)を用いクリーニング処理を実施してもよい。水素イオンによる酸化物の還元反応、不活性ガスイオンによるスパッタリングによる基材表面の不純物の除去ができるため基材2と下地層3の密着力を向上させることができる。以上の処理によって基材表面を清浄にすることができ、有機物や酸化層に起因する剥離を防止することができ、基材と下地層の密着力が向上する。
【0043】
次に、基材2に印加されている高周波電源11と誘導コイル15に印加される高周波電力の供給を停止する。不活性ガスの供給を行ったままで、真空容器6内部の圧力を0.1〜10Pa程度に調整し、再度誘導コイル15に高周波電力を供給して、不活性ガスをプラズマ化しイオンを生成する。イオン化されたアルゴンは、ターゲット13に印加するバイアス直流電源14によってターゲット13に向かって加速される。加速されたイオンはターゲット13表面に衝突することでスパッタ粒子を生成し、粒子が飛散して基材2上にターゲット13の材料と同じ材料の下地層3が形成される。
【0044】
次に、ガス供給手段8を用いて不活性ガス中に炭化水素ガスを混合し混合ガスを真空容器6内部に供給する。高周波電源16によって混合ガスをプラズマ化し、不活性ガスイオンおよび炭化水素イオンを生成する。バイアス直流電源14及びバイアス高周波電源11により、イオンはそれぞれターゲット13と基材2に向かって加速される。ターゲット13側では炭化水素イオンが堆積すると共に、不活性ガスイオンによって堆積した炭素とチタンを共にスパッタ粒子として飛散させ基材2側に炭化物として堆積させる。基材2側では同じく炭化水素イオンが堆積しスパッタ粒子と共に炭化物を形成する。これらによって下地層の上に混合層4として炭化物が形成される。
【0045】
ここで、混合層4では完全な炭化物層以外に炭素量が下地層から表面層に向かって連続的に変化する傾斜的な組成を示すものであってもよく、また炭素量が下地層から表面層に向かって段階的に変化する構造であっても構わない。このときの制御因子はバイアス直流電圧の大きさ、バイアス高周波電圧の大きさ、混合ガス中炭化水素の比率の3つでありこれら因子の1以上を組み合わせて混合層を形成するものであれば、本発明の請求の範囲を逸脱するものではない。
【0046】
次に、バイアス直流電圧14を停止し、不活性ガスの供給も停止して炭化水素ガスのみを供給する。真空容器6内の圧力を5〜50Paの間で調整し、整合器17と高周波電源16を駆動し炭化水素ガスのプラズマを励起し、炭化水素イオンを発生させる。更にバイアス高周波電圧11を印加してイオン化された炭化水素の分子が基材2上に堆積し混合層4上に硬質炭素膜5が形成される。
【0047】
また、本実施の形態において誘導結合方式と同様に、例えば熱電子を利用したプラズマ装置、電子ビームによる蒸着装置、アークイオンプレーティング装置、イオンミキシング装置などにおいても下地材料の成膜量と炭素の成膜量を制御することによって同様の効果を得ることが可能である。
【0048】
実施の形態1〜6において用いられる炭化水素ガスは、メタン、アセチレン、プロパン、ベンゼン、クメン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなど炭化水素系のガスであれば本発明の範囲を逸脱することはない。また硬質炭素膜形成時にこれらのガスと同時に準安定な水素、アルゴン、ヘリウムなどのガスを混合するとプラズマが励起しやすくなりさらによい。
【0049】
実施の形態1〜6においてまた下地層3、混合層4の材料はチタン以外にシリコン、クロム、タングステンを用いた場合でも同様の効果を得ることができるのは言うまでもない。また、これらの金属を複数層重ねた多層構造であっても同様の効果を得ることができる。
【0050】
【発明の効果】
以上のように本発明の硬質炭素膜成膜方法によれば、下地層、混合層、硬質炭素膜層を1つの真空容器の内部で形成することができ、混合ガスのガス比、蒸発源の蒸発量、基材の炭素の堆積量の少なくともいずれか1つを制御することで炭素量が変化する混合層を作成することが可能である。従って密着性のよい硬質炭素膜を安価に、容易に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における硬質炭素膜が被覆された部材の断面図
【図2】本発明の実施の形態1における硬質炭素膜形成装置の断面図
【図3】本発明の実施の形態2における硬質炭素膜が被覆された部材の断面図
【図4】本発明の実施の形態2における硬質炭素膜が被覆された部材の断面図
【図5】本発明の実施の形態3における硬質炭素膜が被覆された部材の断面図
【図6】本発明の実施の形態3における硬質炭素膜が被覆された部材の断面図
【図7】本発明の実施の形態4における硬質炭素膜が被覆された部材の断面図
【図8】本発明の実施の形態4における硬質炭素膜が被覆された部材の断面図
【図9】本発明の実施の形態5における硬質炭素膜が被覆された部材の断面図
【図10】本発明の実施の形態5における硬質炭素膜が被覆された部材の断面図
【図11】本発明の実施の形態6における硬質炭素膜形成装置の断面図
【符号の説明】
1 硬質炭素膜被覆部材
2 基材
3 下地層
4 混合層
5 硬質炭素膜層
6 真空容器
7 排気手段
8 ガス供給手段
9 基材支持台
10 整合器
11 高周波電源
12 ターゲットホルダ、
13 ターゲット
14 直流電源
15 誘導コイル
16 高周波電源
17 整合器
Claims (4)
- 内部を真空に保つことができる真空容器と、前記真空容器に原料ガスを供給するガス供給手段と、前記反応容器内に設置され基材を保持する基材支持台と、前記基材支持台に設置した基材と、IVa、Va、VIa、VIIa、VIIIa、IVb族から選ばれる少なくとも1つの金属元素から成る蒸発源と、を有する硬質炭素膜形成方法であって、前記ガス供給手段から不活性ガスを供給し、前記蒸発源を蒸発させ前記基材の上に下地層を形成するステップと、少なくとも炭化水素ガスと不活性ガスの混合ガスを前記ガス供給手段より供給し、前記混合ガス中で前記蒸発源を蒸発させ、前記基材上に、前記基材支持台に高周波電圧を供給して前記高周波電圧を連続的または段階的に変化させることにより、下地層の上に、金属と炭素の濃度が連続的または段階的に変化する前記蒸発源の金属元素との炭化物からなる混合層を形成するステップと、前記ガス供給手段から少なくとも炭化水素ガスを供給し、更に前記基材支持台に高周波電圧を印加し、前記基材の混合層の上に硬質炭素膜を形成するステップと、を有することを特徴とする硬質炭素膜形成方法。
- 請求項1に記載の硬質炭素膜形成方法であって、前記蒸発源は不活性ガスイオンを前記蒸発源表面に加速衝突させ、前記蒸発源の材料を蒸発させることを特徴とする硬質炭素膜形成方法。
- 請求項1に記載の硬質炭素膜形成方法であって、前記蒸発源はシリコン、チタン、タングステン、クロムから選ばれる少なくとも1つの金属元素からなることを特徴とする硬質炭素膜形成方法。
- 請求項1に記載の硬質炭素膜形成方法であって、前記炭化水素ガスはメタン、アセチレン、プロパン、ベンゼン、クメン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンから選ばれることを特徴とする硬質炭素膜形成方法。
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