JP4438650B2 - ハウリング抑制装置および拡声装置 - Google Patents

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Description

本発明は講堂やホール等に設置され、ハウリングを抑制し、かつ音質の劣化を防止するハウリング抑制装置、およびそのハウリング抑制装置を備えた拡声装置に関する。
一般に講堂やホール等で拡声装置を用いた場合、スピーカから出力された音声は、ある伝達関数をもつ音響経路を経て再びマイクロフォンに入力される。つまり、マイクロフォン−増幅器−スピーカ−音響経路−マイクロフォン、の経路で閉ループが形成される。この閉ループのゲインが1を越えるとスピーカからマイクロフォンに帰還した音声が増大してハウリングの発生となる。
上記のようなハウリングの発生を防止するために、入力信号にベクトル量子化等の非線形処理を施し、正のフィードバックを断つことでハウリングを防止する発振防止装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
また、スピーカからマイクロフォンに至る帰還伝達系を模擬した信号をマイクロフォンの入力信号から減算し、さらに減算後の誤差信号が小さくなるように模擬信号を修正する適応フィルタ(アダプティブ・ディジタル・フィルタ)を用いてハウリング発生を防止する適応ハウリングキャンセラが用いられている(例えば非特許文献1)。
特開平5−268692号公報 稲積,今井,小西,:"LMSアルゴリズムを用いた拡声系のハウリング防止",日本音響学会講演論文集pp.417−418(1991,3)
しかしながら、特許文献1に記載の発振防止装置を用いた場合、常時入力信号に対して非線形の処理を行うので、本来の入力音声と異なる音声が出力されるために、音質の劣化が問題となる。
一方で、非特許文献1に記載の適応ハウリングキャンセラは、模擬信号を減算した後の誤差信号が小さくなるように適応処理を行うものであり、時間経過とともにハウリングを抑制していくこととなる。しかしながら、この適応ハウリングキャンセラだけでは、音響特性が急激に変化した場合に適応処理が追いつかずにハウリングが発生してしまうという問題がある。
本発明は、上記の事情に鑑み、音場環境の急激な変化が発生した場合に生じる急激なハウリングの発生を抑制し、かつ、音質の劣化を抑制する拡声装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、スピーカからマイクロフォンへの帰還伝達系を模擬する遅延手段及び適応フィルタを有し、前記スピーカに出力する音声信号を遅延手段および適応フィルタで処理した信号である模擬信号を前記マイクロフォンから入力された音声信号から減算する適応ハウリングキャンセラと、適応ハウリングキャンセラの出力信号に非線形処理を施して出力する非線形処理手段と、ハウリングの発生を検出したとき、前記非線形処理手段に非線形処理を行わせる制御部であって、所定のタイミングにこれを解除する経過解除処理をするものと、を備え、前記制御部は、前記経過解除処理として、前記適応フィルタの更新量であるフィルタ差分を参照し、前記フィルタ差分の絶対値が所定の閾値以下となった場合に前記非線形処理を解除する処理を行うことを特徴とする。
この発明では、スピーカに出力する音声信号に帰還伝達系を模擬した遅延時間を付与してフィルタリングし、スピーカからマイクロフォンに帰還する帰還音声信号の模擬信号として入力信号から減算する。適応フィルタは、模擬信号を減算した後の誤差信号と遅延手段が遅延したスピーカへの出力信号を基に消去誤差が少なくなるようにフィルタ係数の更新をする。さらに、ハウリングの発生を検出したとき、所定の時間(例えば5秒間)誤差信号に非線形処理を施し、フィードバックループを遮断する。非線形処理は、例えばベクトル量子化を行う。
この発明では、適応フィルタの更新量を参照して、更新量が所定の閾値以下となった場合に非線形処理を解除する。更新量に応じて非線形処理を解除するので、より音質の劣化を防止しながら急激に発生したハウリングを抑制することが可能となる。
請求項に記載の発明は、上記請求項1に記載のハウリング抑制装置を備えたことを特徴とする。
この発明では、上記発明のいずれかに記載のハウリング抑制装置を組み込んで使用する。
以上のように、この発明によれば、ハウリング発生を検出した場合には、適応ハウリングキャンセラの出力信号に非線形処理を施し、フィードバックループを遮断するので、音場環境の変化により急激にハウリングが発生しても効率的に抑制することが可能となる。
また、所定の時間経過後、または、適応ハウリングキャンセラが十分に適応したと判断した場合は非線形処理を解除するので、音質の劣化を防止することが可能となる。
以下、本発明の実施形態のハウリングキャンセラを内蔵した拡声装置について図を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る拡声装置のブロック図である。同図に示すように、この拡声装置1は、音声信号が入力されるマイクロフォン2、マイクロフォン2に接続される適応ハウリングキャンセラ3、適応ハウリングキャンセラ3に接続される非線形処理部4、非線形処理部4の出力信号を増幅調整する増幅器5、および増幅器5に接続されて入力信号から音声を発音するスピーカ6を備えている。マイクロフォン2およびスピーカ6は講堂やホール等に配置される。
適応ハウリングキャンセラ3は、マイクロフォン2と非線形処理部4との間に挿入された加算器7、加算器7に信号を入力する適応フィルタ8、および増幅器5から出力された信号を所定時間遅延したのち適応フィルタ8に供給するディレイ回路9を備えている。
非線形処理部4は、加算器7の出力側に接続されるベクトル量子化部10と、加算器7から出力される信号を取り込んでベクトル量子化部10を制御する制御部11とを備えている。なお、図1において制御部11は、加算器7の出力信号を取り込むように接続されているが、この構成に限るものではない。例えば、マイクロフォン2の出力信号を取り込むように、マイクロフォン2と加算器7の間に接続するようにしてもよい。
マイクロフォン2に入力された音声信号はA/Dコンバータ(図示せず)でディジタル信号に変換されて加算器7に入力される。加算器7は、マイクロフォン2からの入力信号から適応フィルタ8の出力信号を差し引いて出力する。加算器7の出力信号は、非線形処理部4のベクトル量子化部10に入力される。ベクトル量子化部10は、入力された信号に応じてベクトル量子化を行い、新たな信号を出力するものであるが、加算器7から入力された信号をそのまま出力することもでき、出力する信号は制御部11の制御により決定される。
ベクトル量子化部10の出力信号は、増幅器5に入力される。増幅器5は入力信号を増幅して出力する。増幅器5の出力信号は、D/Aコンバータ(図示せず)でアナログ音声信号に変換され、スピーカ6に入力される。スピーカ6は入力された音声信号から音声を発音する。ここでスピーカ6から発音された音声はマイクロフォン2に帰還信号として再入力される。
このような構成において、ベクトル量子化部10が加算器7から入力された信号をそのまま出力する場合は、マイクロフォン2−適応ハウリングキャンセラ3−非線形処理部4−増幅器5−スピーカ6−マイクロフォン2、の経路で閉ループが形成される。この閉ループのゲインが1を越えるとスピーカからマイクロフォンに帰還する音声が増大してハウリングの発生となる。
適応ハウリングキャンセラ3は、ディレイ回路9、および適応フィルタ8により、増幅器5で増幅調整された音声信号がスピーカ6から出力されて、マイクロフォン2が設置されている音響空間を伝搬して再度マイクロフォン2に帰還信号として入力されるまでの一連の音声伝達経路の伝達特性を模擬するものである。
ディレイ回路9は、スピーカ6からマイクロフォン2に帰還する帰還信号の時間遅延を推定した時間遅延を付与するものである。ディレイ回路9で時間遅延を付与されて出力した信号は適応フィルタ8に入力される。
適応フィルタ8は、図2に示すようにフィルタ部8aおよびフィルタ係数推定部8bからなるもので、フィルタ部8aおよびフィルタ係数推定部8bにはそれぞれディレイ回路9から出力された信号が入力される。フィルタ部8aはスピーカ6からマイクロフォン2への帰還音声信号を模擬した模擬信号を加算器7に出力して、加算器7で非線形処理部4に伝達される信号からその模擬信号を差し引くようにする。帰還音声信号を模擬した模擬信号は、ある伝達関数に従って上記ディレイ回路9から出力された信号を基に決定される。フィルタ係数推定部8bは、ディレイ回路9から出力された信号と非線形処理部4に伝達される信号のうち上記帰還音声信号を模擬した信号を差し引いた信号とを基にして、適応アルゴリズムを用い、帰還音声信号を模擬した信号が実際の帰還音声信号に一致もしくは近似するようにフィルタ部8aのフィルタ係数を更新するものである。適応アルゴリズムは、例えばLMS(Least Mean Square)アルゴリズムを用いる。
このような適応フィルタ8を備えた適応ハウリングキャンセラ3は、マイクロフォン2の入力信号から模擬信号を差し引いた後の信号である現在の誤差信号とディレイ回路9から出力される過去の誤差信号とを元に、模擬信号が帰還信号に一致または近似するようにフィルタ係数を更新していくので、ハウリングが発生して一定周波数の持続音が入力されたときに、時間経過とともにその持続音をキャンセルすることが可能である。
なお、ディレイ回路9がないと、マイクロフォン2に入力した信号は、加算器7に入力されるとともに遅延なく適応フィルタ8にも入力される。適応フィルタ8は、誤差信号を小さくするようにフィルタ係数を更新するので、フィルタ係数の更新が進むにつれて、加算器7ではマイクロフォンから入力された信号が適応フィルタ8の出力信号によって全てキャンセルされるようになってしまう。このため、音源信号のキャンセルを防止しつつ帰還信号を模擬信号によってキャンセルするためにはディレイ回路9が不可欠である。
非線形処理部4は、ベクトル量子化部10、および制御部11により、ハウリングの発生を検出して加算器7から入力された信号に非線形処理を施して出力するものである。制御部11は、加算器7の出力信号を取り込み、ハウリング発生を検出するものである。具体的には、制御部11は、入力信号の特定周波数成分が所定の時間以上減衰せずに入力されるときにハウリング発生として判定する。ハウリング発生と判定したときは、入力信号に非線形処理を施すようにベクトル量子化部10に設定する。ベクトル量子化部10は、制御部11に従って入力信号に非線形の処理を施す。非線形処理については後述する。また、制御部11は、非線形処理を行うようにベクトル量子化部10に設定した後、所定の時間経過後に非線形処理を解除するように設定する。所定の時間は例えば5秒程とするが、どのような時間に設定してもよい。
制御部11は、ハウリングが発生していないと判定した場合には、ベクトル量子化部10に非線形処理を行わないように設定する。ベクトル量子化部10は、非線形処理を停止しているときは、加算器7から入力された信号をそのまま後段の増幅器5に出力する。
ハウリングの発生を検出するために、制御部11は入力信号を高速フーリエ変換(以下、FFTと言う)等する。特定周波数成分が所定の時間以上減衰せずに入力されるときにハウリング発生として判定する。なお、FFTに限らずにハウリング発生を検出できる手法であればどのようなものであってもよい。例えば帯域通過フィルタ等を用いて、信号を複数の周波数帯域に分けてハウリングを検出すればよい。
これにより、ハウリングが発生した直後のみ非線形処理を行い、時間経過後(例えば5秒後)は適応ハウリングキャンセラ3がハウリングを抑制して非線形処理を解除するので、急激に発生したハウリングを抑制しつつ、音質の劣化を抑制することが可能となる。
次に、拡声装置1を伝達する信号について詳細に説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る拡声装置1を伝達する信号を示す図である。同図のようにマイクロフォン2を介して入力された音声信号はA/D変換処理によりディジタル信号y(k)に変換される。信号y(k)は加算器7で模擬信号が差し引かれて誤差信号e(k)としてベクトル量子化部10に供給される。上述のようにハウリングが発生していない場合、ベクトル量子化部10は、誤差信号e(k)をそのまま増幅器5に供給する。その後増幅器5で伝達関数G(z)によって増幅され、信号x(k)としてスピーカ6に供給される。信号x(k)はD/A変換処理によりアナログ音声信号に変換されてスピーカ6から出力される。
スピーカ6から出力した音声信号は音響帰還路12を経てマイクロフォン2に帰還する。ここで音響帰還路12は、スピーカ6からマイクロフォン2に至る音響経路であり、この経路は伝達関数H(z)で表される。ここで、音響帰還路12を介して帰還される帰還音声信号d(k)は、話者などの音源からの音声信号からなる音源音声信号s(k)と混合されてマイクロフォン2に入力される。
上記のような拡声システムでは、マイクロフォン2−増幅器5−スピーカ6−音響帰還路12−マイクロフォン2の経路で閉ループが形成される。これにより、帰還音声信号d(k)が増大し、ハウリングの発生となる。このようなハウリングの発生を防止するために設けられたのが、ディレイ回路9、適応フィルタ8、および加算器7からなる適応ハウリングキャンセラ3である。
ディレイ回路9は、信号x(k)に対して音響帰還路12の遅延時間を推定した遅延τを付与して出力するもので、信号x(k−τ)が適応フィルタ8に供給される。適応フィルタ8のフィルタ部8aは帰還音声信号d(k)を模擬した模擬信号do(k)を伝達関数F(z)にしたがって出力する。加算器7は、信号y(k)から模擬信号do(k)を差し引く。ここで信号y(k)は、音源音声信号s(k)と帰還音声信号d(k)との和すなわち、y(k)=s(k)+d(k)なる式で表される。したがって加算器7の出力する誤差信号e(k)は、e(k)=y(k)−do(k)=s(k)+d(k)−do(k)=s(k)+Δ(k)(ただし、Δ(k)=d(k)−do(k))なる式で表される。よって、Δ(k)を充分に小さくすればハウリングを抑制することができる。
また、適応フィルタ8のフィルタ係数推定部8bは、適応アルゴリズムを用いて信号x(k−τ)および誤差信号e(k)に基づいて伝達関数F(z)が伝達関数H(z)に一致または近似するようにフィルタ部8aを更新する。適応アルゴリズムは前述のようにLMSアルゴリズム等を用いる。信号e(k)の二乗平均値J=E[e(k)](ただし、E[・]は期待値)とすれば、Jを最小にするようなフィルタ係数が演算により推定される。
このような適応フィルタ8を備えた適応ハウリングキャンセラ3は、模擬信号が帰還信号に一致または近似するようにフィルタ係数を更新していくので、ハウリングが発生して一定周波数の持続音が入力されたときに、時間経過とともにその持続音をキャンセルすることが可能である。しかしながら、このような適応ハウリングキャンセラだけでは、音響特性が急激に変化した場合に即座に模擬信号を帰還音声信号に一致または近似するのは困難であり、推定が追いつかずにハウリングが発生してしまう。
このように音響特性が急激に変化した場合に発生するハウリングを抑制するために設けられたのがベクトル量子化部10、および制御部11からなる非線形処理部4である。
非線形処理部4の制御部11は、加算器7の出力した誤差信号e(k)を取り込み、この信号がハウリング発生による信号であるか否かを判定する。上述したように、制御部11は、誤差信号e(k)をFFT等して入力信号の特定周波数成分が所定の時間以上減衰せずに入力されるときにハウリング発生として判定する。なお、誤差信号e(k)ではなく、入力信号y(k)を取り込むようにしてもよい。ハウリング発生と判定した場合は、ベクトル量子化部10に非線形処理を行うように設定する。
ベクトル量子化部10は、誤差信号e(k)を取り込み、ベクトル量子化を行う。図4は、ベクトル量子化を説明する図である。誤差信号e(k)は、x1,x2,x3・・・と示すように、所定のサンプリング周波数でディジタルデータ化されている。ここで、ベクトル量子化部10は、誤差信号e(k)を128個単位でベクトル化する。つまり、x1〜x128による128次元の入力ベクトルXとして取り込む。
また、ベクトル量子化部10は内蔵するメモリ(図示せず)に、128次元のベクトルデータとして所定数(例えば256)のコードベクトルを記憶している。ベクトル量子化部10は、取り込んだ入力ベクトルXと、内蔵メモリに記憶しているコードベクトルとの距離を計算し、入力ベクトルXを最も距離の短いコードベクトルにマッピングする処理、すなわち量子化処理を行う。
図5は、コードベクトルにマッピングする処理を説明する図である。なお、本実施形態においては128次元のベクトルを用いているが、説明を明快にするために図5においては2次元ベクトルで示す。
図5の2次元座標において、破線で区切られた各領域においてドットで示される1つの代表点がコードベクトルを表す。入力ベクトルXが、図示するように領域Aに相当しているとすると、入力ベクトルXから最も距離の短いコードベクトルは、領域Aの代表点となるコードベクトルCとなる。したがって、ベクトル量子化部10は、入力ベクトルXから最も距離の短いコードベクトルCを算出し、これを後段の増幅器5に出力する。このようにして、入力ベクトルをコードベクトルにマッピングする。
このように、ベクトル量子化という非線形処理を行うことで、フィードバックループが遮断され、ハウリングを抑制することが可能となる。
なお、上記においてはベクトル要素を128次元としたが、これに限らずどのような設定であってもよい。実際にはA/D変換時のサンプリング周波数、メモリ容量、処理能力等の各種の条件を考慮して調整すればよい。
さらに、非線形処理はベクトル量子化に限るものではない。すなわち、非線形処理部4でフィードバックループを遮断できるものであればどのような処理であってもよい。例えば、ニューラルネットワーク等の処理も考えられる。ニューラルネットワークは、複数の人工ニューロンによって誤差信号e(k)を並列分散処理するものである。ニューラルネットワークにより、ハウリング発生による信号を、聴覚的に大きく変化させないようにしつつ、ハウリングを抑制する処理が可能となる。
制御部11は、非線形処理を行うようにベクトル量子化部10に設定した後、所定の時間経過後にこれを解除するように設定する。所定の時間は例えば5秒程とするが、どのような時間に設定してもよい。非線形処理を解除すると、ベクトル量子化部10は、誤差信号e(k)をそのまま後段の増幅器5に出力する。
このようにして、適応ハウリングキャンセラ3が、模擬信号を用いてハウリング発生による一定周波数の持続音をキャンセルするとともに、適応ハウリングキャンセラ3が消去しきれない急激なハウリングが発生した場合には、非線形処理部4が非線形処理を行い、フィードバックループを遮断するので、効率的にハウリングを抑制することが可能となる。また、非線形処理部4は、所定の時間経過後、すなわち適応ハウリングキャンセラ3の更新が十分に進んだ状態で非線形処理を解除するので、ハウリングを抑制しながら音質の劣化を防止することが可能となる。
なお、本実施形態におけるハウリングキャンセラを内蔵した拡声装置については、以下のような変形例が可能である。
[変形例1]
次に、図6は本実施形態の変形例1に係るハウリングキャンセラを内蔵した拡声装置のブロック図である。図7は、変形例1に係る非線形処理部および適応ハウリングキャンセラの構成を詳細に示すブロック図である。なお、変形例1において、上述した実施形態と共通する構成要素には、同一の符号を付けて、その説明を省略する。この拡声装置100は、上述した実施形態の非線形処理部4に代えて、非線形処理部400を備えている。
非線形処理部400は、加算器7の出力側に接続されるベクトル量子化部10と、ベクトル量子化部10を制御する制御部13を備えている。制御部13は、適応ハウリングキャンセラ3の適応フィルタ8に接続されている。より具体的に制御部13は、図7に示すようにフィルタ係数推定部8bに接続されている。
制御部13は、上述した実施形態に示した制御部11と同様に、ベクトル量子化部10のベクトル量子化処理を制御する。制御部13は、適応フィルタ8の更新量を参照することでハウリング発生を判定する。ハウリング発生と判定したときは、非線形処理を行うようにベクトル量子化部10に設定する。ベクトル量子化部10は、制御部13に従って非線形処理を行う。非線形処理については、上述した実施形態と同様である。
適応フィルタ8のフィルタ係数推定部8bは、上述のように適応アルゴリズムを用いて信号x(k−τ)および誤差信号e(k)に基づいて伝達関数F(z)が伝達関数H(z)に一致または近似するようにフィルタ部8aを更新している。この伝達関数は、忘却係数λやステップサイズαと呼ばれる係数を用いて更新される。忘却係数λはそれまでの伝達関数に乗ずる係数であり、0〜1の範囲に設定する。忘却係数λを小さくするとそれまでの伝達関数を消去して更新を促進することになる。ステップサイズαは修正の大きさを表す係数であり、ステップサイズαを大きくすると修正した伝達関数をより多く利用することとなり、更新を促進することになる。修正後の伝達関数F’(z)はF’(z)=λF(z)+αΔF(z)(ただし、ΔF(z)はフィルタ差分)なる式で表される。
制御部13は、適応フィルタ8の更新量であるフィルタ差分ΔF(z)を参照する。適応処理が進んでいない、すなわち音響帰還路の特性が大きく変化したときは、フィルタ差分ΔF(z)の絶対値は大きくなる。したがって、制御部13は、ΔF(z)の絶対値が所定の値よりも大きい場合、音響帰還路の特性が大きく変化し、ハウリングの発生(またはハウリングに近い状態)と判断して、ベクトル量子化部10に非線形処理を行うように設定する。
また、制御部13は、ベクトル量子化部10に非線形処理を行うように設定した後も適応フィルタ8のフィルタ係数推定部8bを参照し、フィルタ差分ΔF(z)を参照する。適応フィルタ8の適応処理が進むにつれてフィルタ差分ΔF(z)の絶対値は小さくなる。上述のように適応フィルタ8は、適応処理が進むとハウリング発生による一定周波数の持続音をキャンセルすることが可能となる。したがって、制御部13は、フィルタ差分ΔF(z)の絶対値が所定の閾値以下となった場合に、ベクトル量子化部10に非線形処理を解除するように設定する。
なお、制御部13は、さらに加算器7の出力信号を取り込むように接続して、加算器7の出力信号の特定周波数成分が所定の時間以上減衰せずに入力されるときにハウリング発生として判定するようにしてもよい。また、マイクロフォン2の出力信号を取り込むように、マイクロフォン2と加算器7の間に接続するようにしてもよい。このように、信号を取り込むことでハウリングの発生を検出し、適応フィルタ8の更新量を参照することでハウリングの抑制を検出するようにしてもよい。
[変形例2]
次に、図8は本実施形態の変形例2に係るハウリングキャンセラを内蔵した拡声装置のブロック図である。なお、変形例2においても、上述した実施形態と共通する構成要素には、同一の符号を付けて、その説明を省略する。この拡声装置110は、上述した実施形態の非線形処理部4に代えて、非線形処理部410を備えている。
非線形処理部410は、加算器7の出力側に接続されるベクトル量子化部10と、ベクトル量子化部10を制御する制御部14を備えている。制御部14は、加算器7の出力信号と、ディレイ回路9の出力信号を取り込むように接続されている。
制御部14は、上述した実施形態に示した制御部11と同様に、ベクトル量子化部10のベクトル量子化処理を制御する。制御部14は、加算器7の出力信号である誤差信号e(k)とディレイ回路9の出力信号である信号x(k−τ)の因果関係に基づいて、ハウリング発生を判定する。ハウリング発生と判定したときは、非線形処理を行うようにベクトル量子化部10に設定する。ベクトル量子化部10は、制御部14に従って非線形処理を行う。非線形処理については、上述した実施形態と同様である。
誤差信号e(k)と信号x(k−τ)の因果関係は、両信号のコヒーレンスを計算することで判断する。コヒーレンスは、両信号のクロススペクトルの絶対値の自乗を各々のパワースペクトルで割算したものであり、その値が1に近い場合は誤差信号e(k)に含まれる信号x(k−τ)の因果度合いが強く、0に近い場合は因果度合いが弱い。
制御部14は、誤差信号e(k)に含まれる信号x(k−τ)の因果度合いが強い場合、適応フィルタの適応処理が進んでいない、すなわち音響帰還路の特性が大きく変化したと判断する。したがって、制御部14は、コヒーレンスが所定の値よりも大きい場合、音響帰還路の特性が大きく変化し、ハウリングの発生(またはハウリングに近い状態)と判断して、ベクトル量子化部10に非線形処理を行うように設定する。
また、制御部14は、ベクトル量子化部10に非線形処理を行うように設定した後も常時コヒーレンスの計算を行う。上述のように適応フィルタ8は、適応処理が進むとハウリング発生による一定周波数の持続音をキャンセルすることが可能となり、適応フィルタ8の適応処理が進むにつれて誤差信号e(k)に含まれる信号x(k−τ)の因果度合いが弱くなり、コヒーレンスの値が小さくなる。したがって、制御部14は、コヒーレンスの値が所定の閾値以下となった場合に、ベクトル量子化部10に非線形処理を解除するように設定する。
なお、変形例2においても、制御部14は、加算器7の出力信号の特定周波数成分が所定の時間以上減衰せずに入力されるときにハウリング発生として判定するようにしてもよい。また、マイクロフォン2の出力信号を取り込むように、マイクロフォン2と加算器7の間に接続するようにしてもよい。このように、誤差信号、またはマイクロフォン2の出力信号を取り込んでハウリングの発生を検出し、誤差信号e(k)と信号x(k−τ)のコヒーレンスを計算することでハウリングの抑制を検出するようにしてもよい。
以上のように、適応ハウリングキャンセラ3が、模擬信号を用いてハウリング発生による一定周波数の持続音をキャンセルするとともに、適応ハウリングキャンセラ3が消去しきれない急激なハウリングが発生した場合には、非線形処理部4が、フィードバックループを遮断するので、効率的にハウリングを抑制することが可能となる。また、非線形処理部4は、適応フィルタの更新量を参照し、更新が十分に進んだ状態と判断した場合に抑制処理を解除するので、ハウリングを抑制しながら音質の劣化を防止することが可能となる。
本発明の実施形態に係る拡声装置のブロック図 適応ハウリングキャンセラを詳細に説明するブロック図 本発明の実施形態に係る拡声装置の伝達特性を示す図 ベクトル量子化を説明する図 マッピングする処理を説明する図 本発明の変形例1に係る拡声装置のブロック図 本発明の変形例1に係る非線形処理部および適応ハウリングキャンセラのブロック図 本発明の変形例2に係る拡声装置のブロック図
符号の説明
1−拡声装置
2−マイクロフォン
3−適応ハウリングキャンセラ
4−非線形処理部
5−増幅器
6−スピーカ
7−加算器
8−適応フィルタ
9−ディレイ回路
10−ベクトル量子化
11,13,14−制御部
12−音響帰還路
100−変形例1に係る拡声装置
110−変形例2に係る拡声装置
400−変形例1に係る非線形処理部
410−変形例2に係る非線形処理部

Claims (2)

  1. スピーカからマイクロフォンへの帰還伝達系を模擬する遅延手段及び適応フィルタを有し、前記スピーカに出力する音声信号を遅延手段および適応フィルタで処理した信号である模擬信号を前記マイクロフォンから入力された音声信号から減算する適応ハウリングキャンセラと、
    適応ハウリングキャンセラの出力信号に非線形処理を施して出力する非線形処理手段と、
    ハウリングの発生を検出したとき、前記非線形処理手段に非線形処理を行わせる制御部であって、所定のタイミングにこれを解除する経過解除処理をするものと、
    を備え
    前記制御部は、前記経過解除処理として、前記適応フィルタの更新量であるフィルタ差分を参照し、前記フィルタ差分の絶対値が所定の閾値以下となった場合に前記非線形処理を解除する処理を行うハウリング抑制装置。
  2. 請求項1に記載のハウリング抑制装置を備えたことを特徴とする拡声装置。
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