JP2010250131A - 雑音除去装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 動的な適応フィルタによって音響特性の影響を受けた原音信号を忠実に再現し、マイクロホンで集音された音信号からノイズ信号を適切に抽出してノイズキャンセル信号を生成することで、原音信号の劣化を抑止しつつノイズを適切に打ち消す。
【解決手段】 本発明の雑音除去装置100は、音を出力するスピーカ110と、音を集音して音信号に変換するマイクロホン112と、マイクロホンが変換した音信号から第1適応フィルタ116の出力信号を減算して第1差分信号を生成する第1差分回路114と、原音信号から第1差分信号を減算して第2差分信号を生成しスピーカに伝達する第2差分回路118と、を備え、第1適応フィルタは、第2差分信号を参照入力とし、第1差分信号を適応誤差として、フィルタ係数が適応的に調整されることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、外部からの雑音(ノイズ)によって所望する原音の音質が損なわれるのを防止することが可能な雑音除去装置に関する。
ヘッドホンから出力された音(原音)は、空間等の伝送路を通じてそのヘッドホンを装着している人の耳に伝達される。従って、所望する原音以外の音響ノイズ(以下単にノイズと略す。)も同伝送路を通じて人の耳に伝達されてしまい、所望する原音の音質が損なわれる。
そこで、ヘッドホンにモニタ用マイクロホンを設置し、そのマイクロホンの出力を反転、原音信号に加算してスピーカから出力することで、外部のノイズを打ち消すヘッドホンが知られている(例えば、特許文献1)。
しかし、かかる技術においては、スピーカから出力された原音もフィードバック経路を経てノイズキャンセル信号となってしまうため、原音の音質の劣化を招いていた。そこで、スピーカからマイクロホンまでの音響特性を推定した等価回路を設け、スピーカに伝達される原音信号を等価回路にも入力し、マイクロホンの出力信号から等価回路の出力信号を減じることで、原音信号のノイズキャンセル信号への再帰還を防止する技術も開示されている(例えば、特許文献2)。
米国特許第445675号明細書 特開平2−224500号公報
上述したように、特許文献1の技術では、スピーカから出力された原音信号もマイクロホンおよび帰還回路を通じてノイズキャンセル信号となってしまうため原音信号が劣化していた。このような原音信号の劣化を防止するため、ノイズキャンセル信号から予め原音信号を除いてノイズキャンセル信号を生成する必要がある。その点、特許文献2の技術では、原音信号がノイズキャンセル信号から減じられているので原音信号の劣化をある程度抑制することができる。
しかし、特許文献2においても、スピーカからマイクロホンまでの音響特性に完全に一致する等価回路を設定するのは困難を極め、一致に至らなかった特性部分に関しては定常的な偏差が残ってしまう。仮に、スピーカからマイクロホンまでの音響特性に完全に一致する等価回路を設定できたとしても、スピーカとマイクロホンとの位置関係やスピーカ(ヘッドホン)を装着したときの人の耳の形状の変動、その時の温度等に従い、スピーカからマイクロホンまでの音響特性は時々刻々と変化するので、特許文献2のような固定的な等価回路でその変化を補償することはできなかった。
このようにスピーカからマイクロホンまでの音響特性と等価回路とが異なる特性を示すとノイズキャンセル信号から原音信号を完全に取り除くことができず、帰還される原音信号によって所望する原音信号が却って劣化してしまうといった問題が生じ得る。
本発明は、このような課題に鑑み、動的な適応フィルタによって音響特性の影響を受けた原音信号を忠実に再現し、マイクロホンで集音された音信号からノイズ信号を適切に抽出してノイズキャンセル信号を生成することで、原音信号の劣化を抑止しつつノイズを適切に打ち消すことが可能な雑音除去装置を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明の雑音除去装置は、音を出力するスピーカと、音を集音して音信号に変換するマイクロホンと、マイクロホンが変換した音信号から第1適応フィルタの出力信号を減算して第1差分信号を生成する第1差分回路と、原音信号から第1差分信号を減算して第2差分信号を生成しスピーカに伝達する第2差分回路と、を備え、第1適応フィルタは、第2差分信号を参照入力とし、第1差分信号を適応誤差として、フィルタ係数が適応的に調整されることを特徴とする。
かかる構成によると、スピーカからマイクロホンまでの音響特性の順特性を適応フィルタによって適応的に推定(同定)することができるので、スピーカおよびマイクロホンを経由した原音信号を適切に推定することが可能となる。従って、第1差分信号としてノイズ信号を適切に抽出することができ、原音信号の劣化を抑止しつつノイズを動的に打ち消すことが可能となる。
上記課題を解決するために、本発明の他の雑音除去装置は、音を出力するスピーカと、音を集音して音信号に変換するマイクロホンと、マイクロホンが変換した音信号から第1複製フィルタの出力信号を減算して第1差分信号を生成する第1差分回路と、原音信号から第1差分信号を減算して第2差分信号を生成し、スピーカおよび第1複製フィルタに伝達する第2差分回路と、マイクロホンが変換した音信号から第1適応フィルタの出力信号を減算して第3差分信号を生成する第3差分回路と、原音信号を参照入力とし、第3差分信号を適応誤差として、フィルタ係数が適応的に調整される第1適応フィルタと、を備え、第1複製フィルタのフィルタ係数には、第1適応フィルタのフィルタ係数が随時複製されることを特徴とする。
雑音除去装置における第1適応フィルタを含む経路は、スピーカからマイクロホンまでの音響特性の順特性に基づく原音信号の推定と、ノイズキャンセル信号のフィードバックとの2つの役割を担う。従って、適応フィルタの参照入力はノイズキャンセル信号を含んでいる。本発明では、原音信号を直接参照入力としてフィルタ係数の推定を行い、本来第1適応フィルタを配置すべき位置に設けられた第1複製フィルタに第1適応フィルタのフィルタ係数を随時複製することで音響特性の推定精度を向上することが可能となる。
上記課題を解決するために、本発明の他の雑音除去装置は、音を出力するスピーカと、音を集音して音信号に変換するマイクロホンと、第2適応フィルタの出力信号から第1遅延回路の出力信号を減算して第4差分信号を生成する第4差分回路と、マイクロホンが変換した音信号を参照入力とし、第4差分信号の反転信号を適応誤差として、フィルタ係数が適応的に調整される第2適応フィルタと、原音信号から第4差分信号を減算して第5差分信号を生成し、スピーカおよび第1遅延回路に伝達する第5差分回路と、を備え、第1遅延回路は、スピーカからマイクロホンまでの音伝搬遅延と第2適応フィルタの遅延との和に相当する時間だけ第5差分信号を遅延させることを特徴とする。
適応フィルタがスピーカからマイクロホンまでの音響特性の逆特性を推定する構成により、マイクロホンで集音された音信号にさらに音響特性の逆特性の影響を与え、スピーカに入力された原音信号を再現すると共に、反転ノイズ源をスピーカの位置に音像定位することが可能となる。従って、第4差分信号としてノイズ信号を適切に抽出することができ、原音信号の劣化を抑止しつつノイズを動的に打ち消すことが可能となる。また、本発明では、ノイズ信号も音響特性の逆特性の影響を受けるので、スピーカからは逆特性の影響を受けたノイズキャンセル信号が出力され、ノイズキャンセル信号のフィードバックによるキャンセル誤差を低減することが可能となる。
上記課題を解決するために、本発明の他の雑音除去装置は、音を出力するスピーカと、音を集音して音信号に変換するマイクロホンと、マイクロホンが変換した音信号を参照入力とし、第6差分信号を適応誤差として、フィルタ係数が適応的に調整される第2適応フィルタと、入力された信号をスピーカからマイクロホンまでの音伝搬遅延と第2適応フィルタの遅延との和に相当する時間だけ遅延させる第1遅延回路と、第2適応フィルタの出力信号から第1遅延回路の出力信号を減算した第4差分信号を生成する第4差分回路と、原音信号から第4差分信号を減算して第5差分信号を生成し、スピーカおよび第1遅延回路に伝達する第5差分回路と、を備え、第6差分信号は、スピーカからマイクロホンまでの音伝搬遅延と第2適応フィルタの遅延との和に相当する時間だけ原音信号を遅延させた信号から第2適応フィルタの出力信号を減算して生成されることを特徴とする。
雑音除去装置における第2適応フィルタの主入力となる第1遅延回路を含む経路は、ノイズキャンセル信号のフィードバックとしても利用される。従って、適応フィルタの主入力はノイズキャンセル信号を含む第5差分信号となっている。本発明では、原音信号の遅延信号を主入力とし、第2適応フィルタの推定をその適応誤差に基づいて実行することで音響特性の推定精度を向上することが可能となる。
上記課題を解決するために、本発明の他の雑音除去装置は、音を出力するスピーカと、音を集音して音信号に変換するマイクロホンと、マイクロホンが変換した音信号から第1複製フィルタの出力信号を減算して第1差分信号を生成し、第2複製フィルタに伝達する第1差分回路と、原音信号から第2複製フィルタの出力信号を減算して第2差分信号を生成し、スピーカおよび第1複製フィルタに伝達する第2差分回路と、マイクロホンが変換した音信号から第1適応フィルタの出力信号を減算して第3差分信号を生成する第3差分回路と、原音信号を参照入力とし、第3差分信号を適応誤差として、フィルタ係数が適応的に調整される第1適応フィルタと、スピーカからマイクロホンまでの音伝搬遅延と第2適応フィルタの遅延との和に相当する時間だけ原音信号を遅延させる第2遅延回路と、第2遅延回路の出力信号から第2適応フィルタの出力信号を減算して第6差分信号を生成する第6差分回路と、マイクロホンが変換した音信号を参照入力とし、第6差分信号を適応誤差として、フィルタ係数が適応的に調整される第2適応フィルタと、を備え、第1複製フィルタのフィルタ係数には、第1適応フィルタのフィルタ係数が随時複製され、第2複製フィルタのフィルタ係数には、第2適応フィルタの係数が随時複製されることを特徴とする。
本発明は、原音信号を参照入力として第1適応フィルタの推定を行い、本来適応フィルタを配置すべき位置に設けられた第1複製フィルタに第1適応フィルタのフィルタ係数を随時複製することで音響特性の推定精度を向上する。また、第1差分信号に第2適応フィルタによって推定された音響特性の逆特性の影響を与えることで、逆特性の影響を受けたノイズキャンセル信号をスピーカから出力することができ、ノイズキャンセル信号のフィードバックによるキャンセル誤差を低減することが可能となる。
本発明の雑音除去装置は、動的な適応フィルタによって音響特性の影響を受けた原音信号を忠実に再現し、マイクロホンで集音された音信号からノイズ信号を適切に抽出してノイズキャンセル信号を生成することで、原音信号の劣化を抑止しつつノイズを適切に打ち消すことが可能となる。
第1の実施形態にかかる雑音除去装置の電気的な構成を示した機能ブロック図である。 第1適応フィルタの構成例を示した説明図である。 第2の実施形態にかかる雑音除去装置の電気的な構成を示した機能ブロック図である。 第3の実施形態にかかる雑音除去装置の電気的な構成を示した機能ブロック図である。 逆特性推定における位相調整に応じて第1遅延回路の遅延時間を短くすることができることを説明するための説明図である。 逆特性推定における位相調整に応じて第1遅延回路の遅延時間を短くすることができることを説明するための説明図である。 逆特性推定における位相調整に応じて第1遅延回路の遅延時間を短くすることができることを説明するための説明図である。 逆特性推定における位相調整に応じて第1遅延回路の遅延時間を短くすることができることを説明するための説明図である。 逆特性推定における位相調整に応じて第1遅延回路の遅延時間を短くすることができることを説明するための説明図である。 逆特性推定における位相調整に応じて第1遅延回路の遅延時間を短くすることができることを説明するための説明図である。 逆特性推定における位相調整に応じて第1遅延回路の遅延時間を短くすることができることを説明するための説明図である。 第4の実施形態にかかる雑音除去装置の電気的な構成を示した機能ブロック図である。 第5の実施形態にかかる雑音除去装置の電気的な構成を示した機能ブロック図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
本発明の実施形態では、スピーカの近傍のユーザ、例えばヘッドホンを装着したユーザにそのスピーカやヘッドホンから所望する原音信号を出力する際、外部から入力される不特定のノイズを、例えばユーザの耳(聴覚)等の所望する点で相殺することを目的としている。ここでは、ユーザの耳の位置にマイクロホンを設置し、そのマイクロホンに入力された音信号から原音信号を取り除いてノイズ成分のみを抽出して、それをノイズキャンセル信号として原音信号に加えスピーカやヘッドホンから出力する。スピーカやヘッドホンから出力されたノイズキャンセル音は外部のノイズと打ち消し合い、ユーザはノイズが排除された原音のみを聞くことが可能となる。
本実施形態では、適切なノイズ信号を抽出するため、スピーカやマイクロホンを経由した原音信号を推定する。しかし、かかる音響特性は、スピーカとマイクロホンとの位置関係やスピーカ(ヘッドホン)を装着したときの人の耳の形状の変動、その時の温度等に従い時々刻々と変化する。本実施形態では、時々刻々と変化する音響特性を適応フィルタで適応的に推定することで、音響特性の推定精度を向上させることができる。
ところで、音響特性を推定する適応フィルタは、推定対象となる伝送路と並列に設け、マイクロホンからの出力信号と差分が小さくなるように調整する順特性を推定するフィルタと、推定対象となる伝送路に直列に設け、音響特性の逆特性を推定するフィルタとに大別される。以下、前者を第1および第2の実施形態で、後者を第3および第4の実施形態で説明し、その特徴的部分を合わせた雑音除去装置を第5の実施形態で説明する。
(第1の実施形態:雑音除去装置100)
図1は、第1の実施形態にかかる雑音除去装置100の電気的な構成を示した機能ブロック図である。雑音除去装置100は、スピーカ110と、マイクロホン112と、第1差分回路114と、第1適応フィルタ116と、第2差分回路118とを含んで構成される。
スピーカ110は、電磁素子や圧電素子などの電気信号を物理振動に変換する振動素子によって構成される機器であり、入力された音信号を音(音声)に変換して出力する。スピーカ110に入力される音信号は、基本的にユーザが所望する原音信号であるが、本実施形態では、ノイズをキャンセルするためのノイズキャンセル信号(ノイズ信号の反転信号)と原音信号との合成信号が入力される。また、本実施形態に適用可能なスピーカ110は、音信号を任意の伝達媒体の振動に変換できれば足り、例えば、ダイナミックスピーカ、コンデンサスピーカ、骨伝導スピーカ、ヘッドホン、ブザー、アクチュエータ等も用いることができる。
マイクロホン112は、物理振動を電気信号に変換する機器であり、マイクロホン112周囲の音を集音して音信号に変換する。従って、スピーカ110から出力された原音のみならず周囲のノイズ源150から発せられたノイズも受けることとなる。また、本実施形態に適用可能なマイクロホン112は、任意の伝達媒体の振動を音信号に変換できれば足り、例えば、コンデンサマイク、ダイナミックマイク、リボンマイク、圧電マイク、カーボンマイク等も用いることができる。
本実施形態の目的は、少なくともユーザの耳の位置におけるノイズをキャンセルしユーザの聴覚にノイズの影響を与えないことにある。従って、マイクロホン112をユーザの耳の近傍に配置し、マイクロホン112の位置におけるノイズをキャンセルすることでひいてはユーザの耳に入るノイズをキャンセルする。
以下の説明では、マイクロホン112から出力される音信号、即ち、スピーカ110およびマイクロホン112を経由した原音信号とマイクロホン112によって集音されたノイズ信号とが混合した音信号を適応フィルタの所望信号(主入力)としている。本実施形態の目的は上記ノイズ信号の抽出であるため、所望信号は、厳密にはスピーカ110およびマイクロホン112を経由した原音信号のみとすべきである。しかし、スピーカ110およびマイクロホン112を経由した原音信号とノイズ信号とは相関が無いのでノイズ信号が適応フィルタのフィルタ係数に影響することは無く、マイクロホン112から出力される音信号を所望信号としても問題は生じない。
上述したように、マイクロホン112には、スピーカ110から出力された原音とノイズとが入力される。しかし、後述するように、スピーカ110にはノイズ信号の位相を反転した信号であるノイズキャンセル信号が入力されるので、マイクロホン112の位置においてノイズと、ノイズキャンセル信号に基づくノイズキャンセル音とが相殺され、ユーザは原音のみを聴くことができる。
第1差分回路114は、マイクロホン112が変換した音信号から第1適応フィルタ116の出力信号(図中第1適応フィルタ116右の端子)を減算して第1差分信号(ノイズ信号)を生成する。第1適応フィルタ116は、後述するようにスピーカ110からマイクロホン112までの音響特性の順特性を推定している。従って、第1適応フィルタ116の出力信号は、スピーカ110およびマイクロホン112を経由した原音信号を推定した信号となり、第1差分回路114は、マイクロホン112が変換した音信号に含まれる原音信号とノイズ信号とから原音信号のみを取り除き、ノイズ信号を抽出することができる。
第1適応フィルタ116は、原音信号を、厳密には原音信号とノイズキャンセル信号の合成信号である第2差分信号を参照入力とし(図中第1適応フィルタ116左の端子)、マイクロホン112が変換した音信号から自体の出力信号を減算した第1差分信号を適応誤差とし(図中第1適応フィルタの中央斜線で示す端子)、第1差分信号が小さくなるように随時自体のフィルタ係数を調整して、未知のシステムであるスピーカ110からマイクロホン112までの音響特性の順特性を推定する。ここでは、未知のシステム(伝送路の音響特性)に推定システム(第1適応フィルタ116)が並列に設置され、その差分(第1差分信号)に基づいて推定システムを未知のシステムに近づける順システム同定が用いられる。
図2は、第1適応フィルタ116の構成例を示した説明図である。ここでは、適応フィルタの適応アルゴリズムとして、2乗平均誤差を最急降下法に基づいて最小にするLMS(Least Mean Square)アルゴリズムを採用しており、第1適応フィルタ116は、シフトレジスタ170と、乗算器172と、加算器174とを含んで構成される。
図2において、所定のサンプリング時刻n(整数)における第2差分信号に相当する参照入力信号X(n)は、所定のサンプリング周期で信号をシフトするシフトレジスタ170に入力され、X(n)〜X(n−N+1)の時間差信号列となる(Nはフィルタの段数)。そして、N個の乗算器172によって、時間差信号列X(n)〜X(n−N+1)に各フィルタ係数W(n)〜WN−1(n)が乗算され、その乗算結果が加算器174によって加算される。従って、第1適応フィルタ116の出力信号Y(n)は、数式1に示すように、
Figure 2010250131
…(数式1)
参照入力信号X(n)〜X(n−N+1)とフィルタ係数W(n)〜WN−1(n)を畳み込むことによって得ることができる。
また、適応誤差入力e(n)は、数式2に従い、マイクロホン112が変換した音信号に相当する所望信号d(n)から第1適応フィルタ116の出力信号Y(n)を減算することによって得られる。
Figure 2010250131
…(数式2)
そして、フィルタ係数W(n)〜WN−1(n)は数式3に従って適応誤差入力e(n)が小さくなるように調整され、その調整結果によってフィルタ係数が更新される。かかる数式3のμは更新の速度と収束の精度を決定するステップサイズパラメータであり、参照入力信号の統計的性質から最適な値を選択することができる。一般には0.01〜0.001程度の値をとることが多い。
Figure 2010250131
…(数式3)
ここでは、第1適応フィルタ116の適応アルゴリズムとしてLMSアルゴリズムを適用しているが、かかる場合に限らず、RLMS(Recursive LMS)、NLMS(Normalized LMS)アルゴリズム等、様々な既存のアルゴリズムを適用することができる。
こうして、伝送路の音響特性である未知のシステムを、第2差分信号を参照入力とした第1適応フィルタ116で推定することが可能となる。結果的に第1適応フィルタ116の出力(適応信号)は、第2差分信号がスピーカ110およびマイクロホン112を経由した信号とほぼ等しくなるため、実際に経由した音信号と推定された音信号との差分である第1差分信号には原音信号がほとんど含まれなくなり、ノイズ信号のみを取り出すことができる。
第2差分回路118は、原音信号にノイズ信号(第1差分信号)の反転信号を合成すべく、原音信号から第1差分信号を減算して第2差分信号を生成し、スピーカ110および第1適応フィルタ116に伝達する。
上述したように第1差分回路114からは原音信号が削減されたノイズ信号が出力されるので、そのノイズ信号を減算して反転信号(ノイズキャンセル信号)を原音信号に合成することで、原音信号と共にノイズキャンセル信号をスピーカ110から出力することができ、マイクロホン112の位置におけるノイズをキャンセルすることが可能となる。
本実施形態では、マイクロホンを1つ用いて生成されたノイズキャンセル信号をスピーカ側に帰還させるフィードバック方式を採用している。かかるフィードバック方式に対して、マイクロホンを2つ用い、一方をノイズ源に、他方を人の耳に配置し、一方のマイクロホンから他方のマイクロホンへの音響特性を推定し、一方のマイクロホンで取得された音信号にその推定した音響特性を反映し、さらに反転した信号をスピーカから出力することで、他方のマイクロホンの位置(人の耳)におけるノイズをキャンセルするフィードフォワード方式も存在する。
フィードバック方式は、フィードフォワード方式と比べ、伝達遅延によって実時間が合わなくなる(因果律を満たさなくなる)可能性は残るものの、ノイズを観測するマイクロホンが1つなので、ノイズキャンセルの作用点も1カ所に絞れるといった利点を有す。従って、フィードフォワード方式のようにノイズの到来方向を定める必要がなく、作用点で集音されたすべての到来方向からのノイズに対する適切なノイズキャンセル音を生成することができる。
以上説明した雑音除去装置100を用いることで、スピーカ110からマイクロホン112までの音響特性の順特性を第1適応フィルタ116によって適応的に推定することができるので、スピーカ110およびマイクロホン112を経由した原音信号を適切に推定することが可能となる。従って、第1差分信号としてノイズ信号を適切に抽出することができ、原音信号の劣化を抑止しつつノイズを動的に打ち消すことが可能となる。
(第2の実施形態:雑音除去装置200)
第1の実施形態における雑音除去装置100では、第1適応フィルタ116により、スピーカ110からマイクロホン112までの音響特性を適応的に推定することで、ノイズ信号を適切に抽出することができるようになった。かかる音響特性の推定において、第1の実施形態では、第1適応フィルタ116への参照入力が原音信号とノイズキャンセル信号との合成信号となっているが、本実施形態が、適切なノイズ信号の抽出を目的としていることを踏まえると、参照入力は原音信号のみとするのが望ましい。
しかし、図1における第1適応フィルタ116を含む経路は、音響特性の影響を受けた原音信号を推定する役割以外にも、ノイズ信号を第1差分回路114にフィードバックさせて適切なノイズ信号を生成し続ける役割も担っている。従って、第1適応フィルタ116の参照入力を単純に原音信号から引っ張ると、ノイズ信号が第1差分回路114に適切に帰還しなくなり、系が発振する可能性が生じる。
そこで、第2の実施形態では、雑音除去装置上においてノイズ信号をフィードバックさせる役割を維持しつつ、第1適応フィルタ116のフィルタ係数の推定における参照入力として原音信号のみを用いることとした。
図3は、第2の実施形態にかかる雑音除去装置200の電気的な構成を示した機能ブロック図である。雑音除去装置200は、スピーカ110と、マイクロホン112と、第1差分回路114と、第2差分回路118と、第3差分回路120と、第1複製フィルタ122と、第1適応フィルタ116とを含んで構成される。
スピーカ110は、入力された音信号を音(音声)に変換して出力する。マイクロホン112は、スピーカ110から出力された音や周囲のノイズ源150から発せられたノイズを集音して音信号に変換し、その音信号を第1差分回路114と後述する第3差分回路120に伝達する。
第1差分回路114は、マイクロホン112が変換した音信号から、後述する第1複製フィルタ122の出力信号を減算して第1差分信号を生成する。かかる第1複製フィルタ122は第1の実施形態における第1適応フィルタ116の役割を担うので、第1差分回路114は、マイクロホン112が変換した音信号に含まれる原音信号とノイズ信号から原音信号を取り除き、第1差分信号としてノイズ信号のみを抽出することができる。
第2差分回路118は、原音信号から第1差分信号を減算して第2差分信号を生成し、スピーカ110および第1複製フィルタ122に伝達する。従って、第1の実施形態同様、第1差分回路114で生成されたノイズ信号を減算し、即ち、反転信号(ノイズキャンセル信号)を原音信号に合成することで、原音信号と共にノイズキャンセル信号をスピーカ110から出力することができ、マイクロホン112の位置におけるノイズをキャンセルすることが可能となる。
第3差分回路120は、マイクロホン112が変換した音信号から第1適応フィルタ116の出力信号を減算した第3差分信号を生成する。
第1適応フィルタ116は、第1の実施形態同様、図2に示したLMSアルゴリズムを用いて、原音信号を参照入力とし、第3差分信号を適応誤差として、第3差分信号が小さくなるように自体のフィルタ係数を調整し、スピーカ110からマイクロホン112までの音響特性の順特性を推定する。ここでは、スピーカ110からマイクロホン112までの音響特性の順特性を原音信号のみを用いて推定しているので、音響特性をより高精度で推定することができ、より適切にノイズ信号を抽出することが可能となる。
第1複製フィルタ122のフィルタ係数は、原音信号を参照入力として推定された第1適応フィルタ116のフィルタ係数が複製されるので、第1複製フィルタ122は、第1適応フィルタ116として機能する。
上述したように第1の実施形態における第1適応フィルタ116を含む経路は、スピーカ110からマイクロホン112までの音響特性の順特性に基づく原音信号の推定と、ノイズキャンセル信号のフィードバックとの2つの役割を担う。ここでは、第1複製フィルタ122が、第2差分信号を帰還させる系でありながら、そのフィルタ係数の推定を原音信号に基づいて実行することができるので、音響特性の推定精度を向上することが可能となる。
また、第1適応フィルタ116のフィルタ係数の推定は常時行われるが、そのフィルタ係数の第1複製フィルタ122への複製は適切なタイミングで随時行われる。本実施形態では、第1適応フィルタ116の参照入力信号が原音信号のみであるため、即ち、不確定要素であるノイズ信号が含まれないため、音響特性を推定する際、発振等の不安定な状態になることはない。しかし、かかる推定されたフィルタ係数を常時反映すると、第1複製フィルタ122への入力信号によっては雑音除去装置200の系が不安定になる可能性が生じる。
そこで、所定時間間隔もしくは外部からの制御のタイミングに応じて適応的にフィルタ係数を複製することとし、突発的な過大入力や音響空間の変化に対してフィルタ係数の推定が過度に反応してしまい、その結果、望ましくない発振が生じる等不安定な動作とならないように制御する。例えば、適応誤差である第3差分信号が大きくなると、第1適応フィルタ116の更新頻度を高めたり、突出したノイズが入ってきた場合、第1適応フィルタ116の更新頻度を低くして適応誤差への影響を軽減したりすることができる。
(第3の実施形態:雑音除去装置300)
第1および第2の実施形態では、音響特性を推定する第1適応フィルタ116を伝送路と並列に設け、マイクロホンからの出力信号と差分が小さくなるように調整する所謂順特性を推定するフィルタを説明した。第3の実施形態では、適応フィルタを伝送路と直列に接続し、音響特性の逆特性を推定するフィルタを説明する。
図4は、第3の実施形態にかかる雑音除去装置300の電気的な構成を示した機能ブロック図である。雑音除去装置300は、スピーカ110と、マイクロホン112と、第2適応フィルタ124と、第4差分回路126と、インバータ128と、第5差分回路130と、第1遅延回路132とを含んで構成される。
スピーカ110は、入力された音信号を音(音声)に変換して出力する。マイクロホン112は、スピーカ110から出力された音や周囲のノイズを集音して音信号に変換し、その音信号を第2適応フィルタ124に伝達する。
第2適応フィルタ124は、マイクロホン112が変換した音信号を参照入力とし、後述する第4差分信号の反転信号を適応誤差として、第4差分信号の反転信号が小さくなるように自体のフィルタ係数を調整し、スピーカ110からマイクロホン112までの音響特性の逆特性を推定する。ここでは、未知のシステム(伝送路の音響特性)に推定システム(第1適応フィルタ116)が直列に設置され、原音信号との差分(第4差分信号の反転信号)に基づいて推定システムを未知のシステムに近づける逆システム同定が用いられる。
第4差分回路126は、第2適応フィルタ124の出力信号から、後述する第1遅延回路132の出力信号を減算して第4差分信号(ノイズ信号)を生成する。
第2適応フィルタ124がスピーカ110からマイクロホン112までの音響特性の逆特性を推定する構成により、マイクロホン112で集音された音信号にさらに音響特性の逆特性の影響を与え、スピーカ110に入力された原音信号を再現すると共に、ノイズキャンセル音を発する反転ノイズ源をスピーカ110の位置に音像定位することが可能となる。従って、第4差分回路126では、第4差分信号としてノイズ信号を適切に抽出することができる。
インバータ128は、第2適応フィルタ124の適応誤差を生成すべく、第4差分回路126が生成した第4差分信号を反転する。
第5差分回路130は、原音信号から第4差分信号を減算して第5差分信号を生成し、スピーカおよび第1遅延回路132に伝達する。
第1遅延回路132は、スピーカ110からマイクロホン112までの音伝搬遅延(順特性)と第2適応フィルタ124の遅延(逆特性)との和に相当する時間だけ、第5差分信号を遅延させる。スピーカ110からマイクロホン112への伝送路や第2適応フィルタ124では位相遅延が生じ得る。第3の実施形態では、かかる伝送路と第2適応フィルタ124とが直列に接続されているので、音伝搬遅延と第2適応フィルタ124の遅延が生じ、第1遅延回路132は、そのすべてを含む遅延時間と等しい遅延量で第5差分信号を遅延させる。かかる構成により、第4差分回路126に入力される2つの入力信号の位相を合わせることが可能となる。
また、本実施形態では、ノイズ信号も音響特性の逆特性の影響を受けるので、スピーカ110からは逆特性の影響を受けたノイズキャンセル信号が出力され、ノイズキャンセル信号のフィードバックによるキャンセル誤差を低減することが可能となる。
また、上述した第2適応フィルタ124は、音響特性の逆特性を推定するため、振幅成分のみならず位相成分に関しても逆特性を推定することができる。例えば、音響特性が、高周波数帯域の振幅が減衰し易い所謂低域通過フィルタの特性を示す場合、高域通過フィルタおよび増幅回路を用いて、高周波数帯域の振幅を増幅したり、また、音響特性における伝搬遅延分の位相遅れを位相進み(予測)補償したりすることが考えられる。従って、例えば、音響特性の順特性で数msecの遅延を伴う場合、単純に逆特性で同じ時間分だけ位相を進ませることができれば、因果律を満たすことができるのみならず、第1遅延回路132の遅延時間を0に近づけることができる。
図5〜11は、逆特性推定における位相調整に応じて第1遅延回路132の遅延時間を短くすることができることを説明するための説明図である。ここでは、横軸にサンプル数(sample)を、縦軸に振幅(amplitude)を示している。スピーカ110からマイクロホン112までの音響特性の順特性が、図5のようなインパルス応答(C)であった場合、その音響特性の逆特性のインパルス応答(1/C)は、図6のような軌跡を辿る。
ここでは、スピーカ110とマイクロホン112との伝送路に対して第2適応フィルタ124を直列に接続しているので、図5に示した順特性のインパルス応答と図6に示した逆特性のインパルス応答とを畳み込むと図7のような1つのインパルス信号のみが出現するインパルス応答となる。従って、図6に示した逆特性のインパルス応答(1/C)が、図5に示した順特性のインパルス応答(C)の逆特性であることを理解することができる。
また、図6に示した逆特性のインパルス応答において、位相を進め、フィルタの応答時間を短くした場合、即ち、図6に示した逆特性のインパルス応答を図中左にシフトした場合、図8のような逆特性のインパルス応答を示すこととなる。かかる図8の逆特性のインパルス応答を図5に示した順特性のインパルス応答に畳み込むと、図9に示すように、図7と同様の1つのインパルス信号が出現し、応答時間を短くした逆特性のフィルタが図5に示した順特性の逆特性を維持していることが確認できる。
ここで、図9に示した逆特性のインパルス応答の応答時間をさらに短くすると(左にシフトすると)、逆特性のインパルス応答は図10のようになる。ここで、図10の逆特性のインパルス応答と図5の順特性のインパルス応答とを畳み込むと図11に示すようにインパルス波形に多少の乱れが現れ始める。
上述した第1遅延回路132の遅延時間は図7、図9、図11のインパルスの応答時間に相当し、この遅延時間の設定により、第2適応フィルタ124で実現されるフィルタ特性は図6、図8、図10のように変化する。また図7、図9、図11に示すようなインパルス応答の変化(乱れ具合)を計算することによって、遅延時間に対するインパルス応答を把握することができるため、適切な逆特性を得ることができる範囲で遅延時間をなるべく短くするような設定を行うことが可能となる。これによりノイズキャンセル信号と元のノイズ信号との時間差を小さくすることができ、位相遅れの少ないノイズキャンセルを実現することが可能となる。
(第4の実施形態:雑音除去装置400)
第3の実施形態における雑音除去装置300では、第2適応フィルタ124により、スピーカ110からマイクロホン112までの音響特性の逆特性を適応的に推定することで、ノイズ信号を適切に抽出することができるようになった。かかる音響特性の逆特性の推定において、第3の実施形態では、第2適応フィルタ124への適応誤差が、原音信号とノイズキャンセル信号との合成信号の遅延信号と自体の出力信号との差分となっているが、本実施形態が、適切なノイズ信号の抽出を目的としていることを踏まえると、適応誤差は原音信号の遅延信号と自体の出力信号との差分とするのが望ましい。
しかし、図4における第1遅延回路132を含む経路は、第2適応フィルタ124の主入力としての役割以外にも、ノイズ信号を第4差分回路126にフィードバックさせて適切なノイズ信号を生成し続ける役割も担っている。従って、第2適応フィルタ124の主入力を単純に原音信号から引っ張ると、ノイズ信号が第4差分回路126に適切に帰還しなくなり、系が発振する可能性が生じる。
そこで、第4の実施形態では、第2適応フィルタ124の雑音除去装置上の役割を維持しつつ、そのフィルタ係数の推定における主入力として原音信号の遅延信号のみを用いることとした。
図12は、第4の実施形態にかかる雑音除去装置400の電気的な構成を示した機能ブロック図である。雑音除去装置400は、スピーカ110と、マイクロホン112と、第2適応フィルタ124と、第4差分回路126と、第5差分回路130と、第1遅延回路132と、第2遅延回路134と、第6差分回路136とを含んで構成される。
スピーカ110は、入力された音信号を音(音声)に変換して出力する。マイクロホン112は、スピーカ110から出力された音や周囲のノイズを集音して音信号に変換し、その音信号を第2適応フィルタ124に伝達する。
第2適応フィルタ124は、マイクロホン112が変換した音信号を参照入力とし、後述する第6差分信号を適応誤差として、第6差分信号が小さくなるように自体のフィルタ係数を調整し、スピーカ110からマイクロホン112までの音響特性の逆特性を推定する。ただし、適応誤差としては、第4差分信号の反転信号ではなく、第6差分信号が用いられる。
第4差分回路126は、第2適応フィルタ124の出力信号から、後述する第1遅延回路132の出力信号を減算して第4差分信号(ノイズキャンセル信号)を生成する。
第2適応フィルタ124がスピーカ110からマイクロホン112までの音響特性の逆特性を推定する構成により、マイクロホン112で集音された音信号にさらに音響特性の逆特性の影響を与え、スピーカ110に入力された原音信号を再現すると共に、反転ノイズ源をスピーカ110の位置に音像定位することが可能となる。従って、第4差分信号としてノイズ信号を適切に抽出することができ、原音信号の劣化を抑止しつつノイズを動的にキャンセルすることが可能となる。
第5差分回路130は、原音信号から第4差分信号を減算して第5差分信号を生成し、スピーカ110および第1遅延回路132に伝達する。
第1遅延回路132は、スピーカ110からマイクロホン112までの音伝搬遅延(順特性)と第2適応フィルタ124の遅延(逆特性)との和に相当する時間だけ、第5差分信号を遅延させる。ここでは、スピーカ110からマイクロホン112への伝送路と第2適応フィルタ124とが直列に接続されているので、伝送路と第2適応フィルタ124の逆特性分の遅延が生じ、第1遅延回路132は、そのすべてを含む遅延時間と等しい遅延量で第5差分信号を遅延させる。かかる構成により、第4差分回路126に入力される2つの入力信号の位相を合わせることが可能となる。
第2遅延回路134は、原音信号を第1遅延回路132と同等の時間遅延させる。
第6差分回路136は、第2遅延回路134で遅延された原音信号から第2適応フィルタ124の出力信号を減算して第6差分信号を生成する。
上述したように、当該雑音除去装置400における第2適応フィルタ124の主入力となる第1遅延回路132を含む経路は、ノイズ信号のフィードバックとしても利用される。従って、第2適応フィルタ124の主入力はノイズキャンセル信号を含む第5差分信号となっている。ここでは、原音信号の遅延信号を主入力とし、その適応誤差に基づいて第2適応フィルタ124の推定を実行することで音響特性の推定精度を向上することが可能となる。
(第5の実施形態:雑音除去装置500)
第5の実施形態においては、第2の実施形態の応用として、第1差分回路114で生成されたノイズ信号に音響特性の逆特性の影響を与えることで、第3の実施形態同様、スピーカ110からは逆特性の影響を受けたノイズキャンセル信号が出力され、ノイズキャンセル信号のフィードバックによるキャンセル誤差を低減することが可能となる。また、かかる音響特性の逆特性を推定するにあたり、第4の実施形態を応用し、原音信号を主入力とした適応誤差に基づいて第2適応フィルタ124のフィルタ係数を推定し、それを複製することで適切なノイズ信号を得ることができる。従って、第5の実施形態における雑音除去装置500は、第2、第3、および第4の実施形態の特徴的部分を合わせたハイブリッド型雑音除去装置である。
図13は、第5の実施形態にかかる雑音除去装置500の電気的な構成を示した機能ブロック図である。雑音除去装置500は、スピーカ110と、マイクロホン112と、第1差分回路114と、第2複製フィルタ138と、第2差分回路118と、第3差分回路120と、第1適応フィルタ116と、第1複製フィルタ122と、第2遅延回路134と、第6差分回路136と、第2適応フィルタ124とを含んで構成される。
スピーカ110は、入力された音信号を音(音声)に変換して出力する。マイクロホン112は、スピーカ110から出力された音や周囲のノイズを集音して音信号に変換し、その音信号を第1差分回路114と第3差分回路120と第2適応フィルタ124に伝達する。
第1差分回路114は、マイクロホン112が変換した音信号から、後述する第1複製フィルタ122の出力信号を減算して第1差分信号を生成する。かかる第1複製フィルタ122は第1適応フィルタ116の役割を担うので、第1差分回路114は、マイクロホン112が変換した音信号に含まれる原音信号とノイズ信号から原音信号を取り除き、第1差分信号としてノイズ信号のみを抽出することができる。
第2複製フィルタ138は、第1差分回路114のノイズ信号(第1差分信号)を加工する。ここで、第2複製フィルタ138のフィルタ係数は、後述する第2適応フィルタ124のフィルタ係数が複製され第2適応フィルタ124の役割を担う。従って、第2複製フィルタ138は、ノイズ信号に対して音響特性の逆特性の影響を与えることとなる。そうすると、スピーカ110からは逆特性の影響を受けたノイズキャンセル信号が出力され、ノイズキャンセル信号のフィードバックによるキャンセル誤差を低減することが可能となる。
第2差分回路118は、原音信号から第2複製フィルタ138の出力信号(ノイズ信号)を減算して第2差分信号を生成し、スピーカ110および第1複製フィルタ122に伝達する。従って、第1差分回路114で生成されたノイズ信号を減算して反転信号(ノイズキャンセル信号)を原音信号に合成することで、原音信号と共にノイズキャンセル信号をスピーカ110から出力することができ、マイクロホン112の位置におけるノイズをキャンセルすることが可能となる。
第3差分回路120は、マイクロホン112が変換した音信号から第1適応フィルタ116の出力信号を減算した第3差分信号を生成する。
第1適応フィルタ116は、原音信号を参照入力とし、第3差分信号を適応誤差として、第3差分信号が小さくなるように自体のフィルタ係数を調整し、スピーカ110からマイクロホン112までの音響特性の順特性を推定する。ここでは、スピーカ110からマイクロホン112までの音響特性の順特性を原音信号のみを用いて推定しているので、音響特性をより高精度で推定することができ、第2差分回路118からより適切にノイズ信号を抽出することが可能となる。
第1複製フィルタ122は、原音信号を参照入力として推定された第1適応フィルタ116のフィルタ係数を複製することで、第1適応フィルタ116として機能する。
上述したように第1適応フィルタ116を含む経路は、スピーカ110からマイクロホン112までの音響特性の順特性に基づく原音信号の推定と、ノイズキャンセル信号のフィードバックとの2つの役割を担う。ここでは、第2の実施形態同様、第1複製フィルタ122が、第2差分信号を帰還させる系でありながら、そのフィルタ係数の推定を原音信号に基づいて実行することができるので、音響特性の推定精度を向上することが可能となる。
第2遅延回路134は、スピーカ110からマイクロホン112までの音伝搬遅延(順特性)と第2適応フィルタ124の遅延(逆特性)との和に相当する時間だけ、原音信号を遅延させる。スピーカ110からマイクロホン112への伝送路や第2適応フィルタ124では位相遅延が生じ得る。ここでは、かかる伝送路と第2適応フィルタ124とが直列に接続されているので、音伝搬遅延と第2適応フィルタ124の遅延が生じ、第2遅延回路134は、そのすべてを含む遅延時間と等しい遅延量で原音信号を遅延させる。かかる構成により、第2適応フィルタ124のフィルタ係数の推定精度を向上することができる。
第6差分回路136は、第2遅延回路134で遅延された原音信号から第2適応フィルタ124の出力信号を減算して第6差分信号を生成する。
第2適応フィルタ124は、マイクロホン112が変換した音信号を参照入力とし、第6差分信号を適応誤差として、第6差分信号が小さくなるように自体のフィルタ係数を調整する。ここでは、第2適応フィルタ124の推定を、原音信号の遅延信号を主入力とし、その適応誤差に基づいて実行することで音響特性の推定精度を向上することが可能となる。
また、第2適応フィルタ124がスピーカ110からマイクロホン112までの音響特性の逆特性を推定する構成により、第3の実施形態同様、マイクロホン112で集音された音信号にさらに音響特性の逆特性の影響を与え、スピーカ110に入力された原音信号を再現すると共に、反転ノイズ源をスピーカの位置に音像定位することが可能となる。
本実施形態の雑音除去装置500では、上述したように、原音信号を参照入力として第1適応フィルタ116の推定を行い、本来第1適応フィルタ116を配置すべき位置に設けられた第1複製フィルタ122に第1適応フィルタ116のフィルタ係数を随時複製することで音響特性の推定精度を向上する。また、第1差分信号に第2適応フィルタ124によって推定された音響特性の逆特性の影響を与えることで、逆特性の影響を受けたノイズキャンセル信号をスピーカ110から出力することができ、ノイズキャンセル信号のフィードバックによるキャンセル誤差を低減することが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上述した実施形態においては、各構成要素をハード的に実現するかソフト的に実現するかを限定していない。これは、雑音除去装置をデジタルフィルタや加減算器またはアナログフィルタやオペアンプ等の具体的なハードウェアで構成することも、コンピュータを用い、上記雑音除去装置として機能するプログラムによってソフトウェアで実現することも可能だからである。後者の場合、雑音除去装置と共に、その各構成要素をコンピュータに機能させるプログラムおよびそれを記録した記録媒体も提供される。
また、上述した実施形態においては、ノイズキャンセルの作用点として人の耳を挙げて説明したが、かかる場合に限らず、スピーカとマイクロホンの位置関係に応じて様々な範囲を作用範囲とすることができる。
本発明は、外部からの雑音(ノイズ)によって所望する原音の音質が損なわれるのを防止することが可能な雑音除去装置に利用することができる。
100 …雑音除去装置
110 …スピーカ
112 …マイクロホン
114 …第1差分回路
116 …第1適応フィルタ
118 …第2差分回路
120 …第3差分回路
122 …第1複製フィルタ
124 …第2適応フィルタ
126 …第4差分回路
128 …インバータ
130 …第5差分回路
132 …第1遅延回路
134 …第2遅延回路
136 …第6差分回路
138 …第2複製フィルタ

Claims (5)

  1. 音を出力するスピーカと、
    前記音を集音して音信号に変換するマイクロホンと、
    前記マイクロホンが変換した音信号から第1適応フィルタの出力信号を減算して第1差分信号を生成する第1差分回路と、
    原音信号から前記第1差分信号を減算して第2差分信号を生成し前記スピーカに伝達する第2差分回路と、
    を備え、
    前記第1適応フィルタは、前記第2差分信号を参照入力とし、前記第1差分信号を適応誤差として、フィルタ係数が適応的に調整されることを特徴とする雑音除去装置。
  2. 音を出力するスピーカと、
    前記音を集音して音信号に変換するマイクロホンと、
    前記マイクロホンが変換した音信号から第1複製フィルタの出力信号を減算して第1差分信号を生成する第1差分回路と、
    原音信号から前記第1差分信号を減算して第2差分信号を生成し、前記スピーカおよび前記第1複製フィルタに伝達する第2差分回路と、
    前記マイクロホンが変換した音信号から第1適応フィルタの出力信号を減算して第3差分信号を生成する第3差分回路と、
    前記原音信号を参照入力とし、前記第3差分信号を適応誤差として、フィルタ係数が適応的に調整される第1適応フィルタと、
    を備え、
    前記第1複製フィルタのフィルタ係数には、前記第1適応フィルタのフィルタ係数が随時複製されることを特徴とする雑音除去装置。
  3. 音を出力するスピーカと、
    前記音を集音して音信号に変換するマイクロホンと、
    第2適応フィルタの出力信号から第1遅延回路の出力信号を減算して第4差分信号を生成する第4差分回路と、
    前記マイクロホンが変換した音信号を参照入力とし、前記第4差分信号の反転信号を適応誤差として、フィルタ係数が適応的に調整される第2適応フィルタと、
    原音信号から前記第4差分信号を減算して第5差分信号を生成し、前記スピーカおよび前記第1遅延回路に伝達する第5差分回路と、
    を備え、
    前記第1遅延回路は、前記スピーカから前記マイクロホンまでの音伝搬遅延と前記第2適応フィルタの遅延との和に相当する時間だけ前記第5差分信号を遅延させることを特徴とする雑音除去装置。
  4. 音を出力するスピーカと、
    前記音を集音して音信号に変換するマイクロホンと、
    前記マイクロホンが変換した音信号を参照入力とし、第6差分信号を適応誤差として、フィルタ係数が適応的に調整される第2適応フィルタと、
    入力された信号を前記スピーカから前記マイクロホンまでの音伝搬遅延と前記第2適応フィルタの遅延との和に相当する時間だけ遅延させる第1遅延回路と、
    前記第2適応フィルタの出力信号から前記第1遅延回路の出力信号を減算した第4差分信号を生成する第4差分回路と、
    原音信号から前記第4差分信号を減算して第5差分信号を生成し、前記スピーカおよび前記第1遅延回路に伝達する第5差分回路と、
    を備え、
    前記第6差分信号は、前記スピーカから前記マイクロホンまでの音伝搬遅延と前記第2適応フィルタの遅延との和に相当する時間だけ前記原音信号を遅延させた信号から前記第2適応フィルタの出力信号を減算して生成されることを特徴とする雑音除去装置。
  5. 音を出力するスピーカと、
    前記音を集音して音信号に変換するマイクロホンと、
    前記マイクロホンが変換した音信号から第1複製フィルタの出力信号を減算して第1差分信号を生成し、第2複製フィルタに伝達する第1差分回路と、
    原音信号から前記第2複製フィルタの出力信号を減算して第2差分信号を生成し、前記スピーカおよび前記第1複製フィルタに伝達する第2差分回路と、
    前記マイクロホンが変換した音信号から第1適応フィルタの出力信号を減算して第3差分信号を生成する第3差分回路と、
    前記原音信号を参照入力とし、前記第3差分信号を適応誤差として、フィルタ係数が適応的に調整される第1適応フィルタと、
    前記スピーカから前記マイクロホンまでの音伝搬遅延と第2適応フィルタの遅延との和に相当する時間だけ前記原音信号を遅延させる第2遅延回路と、
    前記第2遅延回路の出力信号から前記第2適応フィルタの出力信号を減算して第6差分信号を生成する第6差分回路と、
    前記マイクロホンが変換した音信号を参照入力とし、前記第6差分信号を適応誤差として、フィルタ係数が適応的に調整される第2適応フィルタと、
    を備え、
    前記第1複製フィルタのフィルタ係数には、前記第1適応フィルタのフィルタ係数が随時複製され、前記第2複製フィルタのフィルタ係数には、前記第2適応フィルタの係数が随時複製されることを特徴とする雑音除去装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013546287A (ja) * 2010-12-16 2013-12-26 インテル コーポレイション 適応的ノイズキャンセレーション
CN111837183A (zh) * 2018-03-09 2020-10-27 雅马哈株式会社 声音处理方法、声音处理装置及记录介质

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