JP4436553B2 - 低温海水環境流電陽極用アルミニウム合金 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低温海水環境中の施設を電気防食するために使用される流電陽極用アルミニウム合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
一般に、流電陽極を使用する電気防食では、最も必要とされる海水条件、特に規模も大きく、耐用期間も長期間が期待される沿岸又は沖合の海洋鋼構造物を対象にする場合には、アルミニウム合金陽極が重用されている。アルミニウム合金は、溶解の単位質量当たりの発生電気量がマグネシウム、亜鉛等の他の流電陽極合金系に比較して著しく大きく、極めて有用である。
【0003】
従来、電気防食に使用される流電陽極用アルミニウム合金としては、Al−Zn−Hg系、Al−Zn−Sn系、Al−Zn−In系が基本組成として知られている。このうち、水銀を含有するものは水域汚染の懸念から忌避され、スズに依存する合金は熱処理を必要とすることが多く充分な発生電気量が得られないため、近年はAl−Zn−In系に種々の金属を含有させて陽極性能を改善する試みがなされていた。
【0004】
例えば、通常の水温条件下(常温:10〜60℃)では、Al−Zn−In−Sn−Mg合金、Al−Zn−In−Si−Mg合金等が実績を積んでおり、またAl−Zn−In−Ca−Mg合金、Al−Zn−In−Sn−Si−Mg合金等も知られている(特公昭42−14291号公報、特開昭52−33815号公報等)。
【0005】
このように、常温を中心とする温度範囲(10〜60℃)の海水環境では既に数種類の組成合金が広く使用されているが、近年実際に適用される環境条件等が次第に広がり、例えば、低温海域、深海領域、冬季期間等の大型施設を対象とする比較的低温(10℃未満)海水環境で使用される場合が増加した。
【0006】
これらの低温海水環境下の適用において、従来の上記した各流電陽極用アルミニウム合金の陽極性能は、不動態化に伴う電位上昇と溶解面不均一による孔食あるいは粒界腐食が認められ、発生電気量、すなわち電気防食のパワーとなる有効電気量の減少が避けられなかった。
【0007】
従来、この種の合金組成を用いるにあたっては、多くの元素を含有(多元化)させることによって、陽極の性能を改善する方法が行われていた。
【0008】
しかしながら、このように安易に合金組成を多元化することは、流電陽極材を製品化する場合、その鋳造方法の繁雑化を招き、鋳造コストが増加するという欠点を生じていた。
【0009】
従って、本発明の目的は、合金組成を多元化することなく、低温海水環境で発生電気量が大幅に低減することがなく、その環境下での電気防食に有効に用いられる低温海水環境流電陽極用アルミニウム合金を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討の結果、本出願人が既に開発してきた比較的添加元素の少ない流電陽極材について、上述の低温環境中で使用可能なものを研究した結果、上記特公昭42−14291号公報に記載の流電陽極用アルミニウム合金が、その含有元素の含有割合を変えることによって、5℃以下の低温条件でも常温時と同等以上の陽極性能を有することを見出した。
【0011】
すなわち、従来のAl−Zn−In−Mg合金組成の中で、特にマグネシウムの含有量に着目し、その含有割合が従来よりも高含有量の特定範囲で低温特性が良好になることを知見し、本発明に到達した。
【0012】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、亜鉛1.0〜10.0質量%、インジウム0.01〜0.05質量%、マグネシウム3.5〜6.5質量%を含有し、残部がアルミニウムと不可避不純物からなることを特徴とする低温海水環境流電陽極用アルミニウム合金を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の低温海水環境流電陽極用アルミニウム合金について詳細に説明する。
【0014】
本発明の流電陽極用アルミニウム合金において、上述のように、亜鉛の含有量は1.0〜10.0質量%、インジウムの含有量は0.01〜0.05質量%、マグネシウムの含有量は3.5〜6.5質量%である。
【0015】
亜鉛は、Al−Zn固溶体とし、その他の含有元素の固溶、均一化を助けるもので、特にインジウムの均一分散に有効である。その含有量が1.0%質量未満ではアルミニウムの不動態化抑制効果が乏しく、貴な陽極電位を示し、溶解の均一性も得られない。また、10質量%を超えるとアルミニウム陽極としての充分な活性電位を示さない。
【0016】
インジウムは、上述のようにAl−Zn固溶体に固溶してインジウム含有合金特有の優れた電気化学的性能の発揮に寄与しており、陽極電位の卑化、溶解面の均一平滑化に伴う発生電気量の増加をもたらす。その含有量が0.01質量%未満では上述の含有効果が充分に発揮せず、0.05質量%を超えるとインジウム析出による溶解部の自己腐食が増加し、発生電気量は低下する。
【0017】
マグネシウムは、その含有量において本発明で最も重要な点である。すなわち、従来のアルミニウム合金系におけるマグネシウムの存在は、常温海水環境において合金の活性化を意図するものであり、発生電気量の増加、陽極電位の卑化等の効果をもたらしたが、低温海水環境中ではマグネシウムの含有量によっては、必ずしも上述のような効果を満足する結果が得られない。
【0018】
本発明において、マグネシウムの含有量を3.5〜6.5質量%とすることによって、マトリックスへのマグネシウム固溶量を増加せしめ、粒界腐食による結晶粒の脱落を抑制し、発生電気量が増大する。
【0019】
マグネシウムの含有量が3.5質量%未満では陽極電位の卑化が不充分で、発生電気量も充分に得られない。また、6.5質量%を超えると活性になり過ぎて溶解面が著しく荒くなり、長期使用の後には発生電気量の低下をもたらす。
【0020】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。
【0021】
〔実施例1〜9及び比較例1〜6〕
(試験材の調製)
表1に示す組成となるように、各原料を電気炉で705℃まで加熱して黒鉛ルツボ内で溶解後、脱ガス剤で溶湯の脱ガス処理を行い、15分間沈静の後、金型温度250℃、鋳込み温度680℃の条件でφ22×300mmの丸棒状に鋳造した。偏析や鋳造欠陥がなく、金属光沢を有するものを試験材とした。また、試験材は時効析出型の合金なので、発生電気量の変化を避けて鋳造後2週間以上経過したものを試験に供した。また、試験材の表面は鋳肌のままとした。
【0022】
(試験方法)
(社)腐食防食協会制定の規格「流電陽極試験法および同解説JSCE S−9301」に準拠して行い、温度を5℃に設定した定電流試験を行った。また、実施例4〜6及び比較例3〜4においては、温度を0℃に設定した定電流試験についても行った。海水の低温維持には恒温層を用いた。通電条件は陽極電流密度1.0mA/cm2 、通電時間は240時間である。
【0023】
表1にその結果を示す。各実施例及び比較例の結果は、いずれも試験材を2本以上調製して試験を行って得られた結果の平均値である。
【0024】
【表1】
【0025】
表1に示されるように、5℃においては、実施例1〜9は、比較例1〜6に比べて、充分に有用で、かつ優れた発生電気量と陽極電位を示すことが分かる。特に発生電気量については、2620〜2745Ah/kgと高い値を示す。また、0℃においても、実施例4〜6は、比較例3〜4に比べて、優れた発生電気量と陽極電位を示すことが分かる。また、実施例1〜9は、溶解面が全面溶解で、しかも均一であった。
【0026】
〔参考例1〕
上記特公昭42−14291号公報に記載された陽極合金について、上記と同様な方法に基づいて、温度を常温、5℃及び0℃に設定した定電流試験を行った。その結果を表2に示す。
【0027】
【表2】
【0028】
この表2と表1の対比から明らかなように、5℃においては、実施例1〜9は、参考例1に比べて、優れた発生電気量と陽極電位を示すことが分かる。また、0℃においても、実施例4〜6は、参考例1に比べて、優れた発生電気量と陽極電位を示すことが分かる。
【0029】
【発明の効果】
本発明のアルミニウム合金は、低温海水環境で発生電気量が大幅に低減することがないため、その環境下での電気防食に流電陽極として有効に用いられる。また、本発明のアルミニウム合金は、より多元化した合金ではないため、鋳造方法の繁雑化を招くことがなく、鋳造コストも抑えることができる。
Claims (1)
- 亜鉛1.0〜10.0質量%、インジウム0.01〜0.05質量%、マグネシウム3.5〜6.5質量%を含有し、残部がアルミニウムと不可避不純物からなることを特徴とする低温海水環境流電陽極用アルミニウム合金。
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