JP6799513B2 - 流電陽極用アルミニウム合金 - Google Patents

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Description

本発明は、腐食環境に接する鉄系材料などの被防食体の電気防食に使用される流電陽極用アルミニウム合金に関する。
港湾施設、橋梁、船舶、パイプラインなどを構成する鉄系材料は、土壌、海水、河川水などの腐食環境に接すると腐食を生じやすい。このような金属体の腐食を防止する方法として、電気防食法が知られている。電気防食法は、金属体などの被防食体に対して防食電流を供給することにより、電位を卑方向に変化させて被防食体を再不動態化、又は不活性な電位域に変化させる防食方法である。電気防食の方式としては従来、外部電源方式と流電陽極方式とが知られている。外部電源方式は、直流電源装置及び陽極を設置し、被防食体を陰極として電気回路を構成し、直流電源装置より陽極から被防食体に防食電流を供給する方式である。一方、流電陽極方式は、被防食体と、それよりもイオン化傾向の高い卑金属とを電気的に接続し、該卑金属を陽極、該被防食体を陰極として電池を構成させ、両極間の電位差を利用して被防食体に防食電流を供給する方式である。流電陽極方式で使用される卑金属は流電陽極、犠牲陽極などと称される。外部電源方式は、設備が大規模となりやすく、また防食期間中は連続して通電を行わなければならず、コストが高くつく。これに対し、流電陽極方式は、外部電源方式のように電源を必要とせず、外部電源方式に比べて施工及びメンテナンスが容易で、経済性に優れるというメリットを有する。
流電陽極は、その使用期間中、被防食体に対して有効な電位差を保ち、且つ単位質量当たりの発生電気量が大きく、溶解が均一であることが要求される。従って流電陽極を形成する流電陽極材料としては、斯かる要求特性に対応し得るものが望まれる。鉄系材料の被防食体の流電陽極材料としては、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム又はこれらの合金が主に使用されている。これらのうち、アルミニウム合金は電気化学的当量が大きく、且つ溶解の単位質量当たりの発生電気量が亜鉛、マグネシウム等の他の流電陽極合金に比して著しく大きいため、流電陽極に適した材料であると言える。しかし、流電陽極にアルミニウム合金を使用すると、アルミニウムが不動態化しやすく、また、アルミニウム合金に不可避不純物として含有される鉄、銅などが流電陽極の性能に悪影響を及ぼすという問題がある。そこで、流電陽極用アルミニウム合金の改良技術として、比較的高純度のアルミニウム地金に、亜鉛、インジウム、錫、水銀、ケイ素、チタンなどを添加する技術が提案されている。
流電陽極用アルミニウム合金の基本組成としては、Al−Zn−Hg系、Al−Zn−Sn系、Al−Zn−In系が知られている。これらの流電陽極用アルミニウム合金のうち、水銀(Hg)を含有するものは、高い発生電気量が得られるものの、環境汚染の懸念から使用が忌避され、また、錫(Sn)を含有するものは、実用上十分な流電陽極特性を得るために、アルミニウム合金中の溶け込んでいない元素を均一に溶け込ませる熱処理(いわゆる溶体化処理)を必要とすることが多く、その熱処理を行う分、他のアルミニウム合金に比して生産性が低いという課題がある。そのため近年は、インジウム(In)を含有するアルミニウム合金が多用されている。インジウムは、アルミニウム表面の酸化皮膜形成を妨げ、アルミニウム本来の卑な電位を発揮させやすくする作用を有するため、流電陽極用アルミニウム合金に対して有効な添加成分であるが、比較的高価であるため、製造コストの観点からは使用し難い材料である。
流電陽極用アルミニウム合金の改良技術に関し、例えば特許文献1には、アルミニウムにインジウム及び錫のうちの1種又は2種を合計0.1〜1.0質量%添加したものが記載され、さらに亜鉛を1〜10質量%添加したものも記載されている。しかし、特許文献1記載の流電陽極用アルミニウム合金は、発生電気量が十分ではなく、消耗が速く寿命が短いものであった。
また特許文献2には、流電陽極用アルミニウム合金として、アルミニウムに亜鉛2.0〜6.0質量%、錫0.01〜1質量%及びジルコニウム0.0005〜1質量%を添加したものが記載されている。しかし、特許文献2記載の流電陽極用アルミニウム合金は、卑な陽極電位及び発生電気量を十分に得ることができず、実用化が困難である。
特公昭34−2003号公報 特開昭62−182245号公報
本発明の課題は、比較的低コストでありながら、流電陽極特性に優れる流電陽極用アルミニウム合金を提供することにある。
本発明は、亜鉛を0.5質量%超10.0質量%未満と、錫を0.05質量%超0.40質量%未満と、下記A〜Dからなる群から選択される1種又は2種以上とを含有し、且つ残部がアルミニウムと不可避不純物とからなる流電陽極用アルミニウム合金である。
A:マグネシウムを0.005質量%超0.20質量%未満
B:珪素を0.005質量%超0.10質量%未満
C:カルシウムを0.005質量%超0.10質量%未満
D:アンチモンを0.005質量%超0.30質量%未満
また本発明は、亜鉛を0.5質量%超10.0質量%未満と、錫を0.05質量%超0.40質量%未満と、マグネシウムを0.005質量%超0.20質量%未満と、珪素を0.005質量%超0.10質量%未満と、下記E〜Gからなる群から選択される1種又は2種以上とを含有し、且つ残部がアルミニウムと不可避不純物とからなる流電陽極用アルミニウム合金である。
E:ジルコニウムを0.005質量%超0.35質量%未満
F:チタンを0.005質量%超0.50質量%未満
G:硼素を0.001質量%超0.20質量%未満
本発明によれば、比較的低コストでありながら、流電陽極特性に優れる流電陽極用アルミニウム合金が提供される。本発明の流電陽極用アルミニウム合金は、高価なインジウムを含有していないため製造コストの点で有利であり、しかも、インジウム含有のアルミニウム合金に比して遜色ない流電陽極特性を発現し、特に鉄系材料の被防食体に対して、安定した卑な陽極電位と高い発生電気量とを両立し得る。
本発明の流電陽極用アルミニウム合金には複数の形態が包含されるが、いずれの形態も、アルミニウム(Al)を主体とし、これに少なくとも亜鉛(Zn)及び錫(Sn)を特定量添加した、いわゆるAl−Zn−Sn系の流電陽極用アルミニウム合金である点で共通する。
以下、先ず、本発明の流電陽極用アルミニウム合金の第1実施形態について、その含有成分の意義、含有量などについて説明する。第1実施形態の流電陽極用アルミニウム合金は、亜鉛及び錫と、前記A〜Dからなる群から選択される1種又は2種以上の元素とを含有し、且つ残部がアルミニウムと不可避不純物とからなる。
[亜鉛(Zn):0.5質量%超10.0質量%未満]
亜鉛は、アルミニウムを活性化する作用があり、その作用は錫よりも小さいが、陽極電位を卑方向に移行させると共に、アルミニウム合金に均一腐食性を付与し、発生電気量を増大させ得る。
第1実施形態の流電陽極用アルミニウム合金において、亜鉛の含有量は、該合金の全質量に対して、0.5質量%を超え10.0質量%未満、好ましくは1.0質量%を超え8.0質量%未満、さらに好ましくは1.5質量%を超え5.0質量%未満である。亜鉛の含有量が0.5質量%以下では、その効果が十分に得られず、亜鉛の含有量が10.0質量%以上であると、溶解の単位質量当たりの発生電気量が減少すると共に、鋳造性が低下するおそれがある。
[錫(Sn):0.05質量%超0.40質量%未満]
錫は、アルミニウムを活性化する作用が大きく、陽極電位を卑方向に大きく移行させると共に、溶解の単位質量当たりの発生電気量を増大させ得る。
第1実施形態の流電陽極用アルミニウム合金において、錫の含有量は、該合金の全質量に対して、0.05質量%を超え0.40質量%未満、好ましくは0.09質量%を超え0.36質量%未満、さらに好ましくは0.14質量%を超え0.31質量%未満である。錫の含有量が0.05質量%以下では、その効果が十分に得られず、錫の含有量が0.40質量%以上であると、溶解の単位質量当たりの発生電気量が減少するおそれがある。
[マグネシウム(Mg):0.005質量%超0.20質量%未満](前記A)
マグネシウムは、他の添加成分の分散性を向上する作用を有することから、アルミニウム合金の腐食形態を改善し、均一腐食性を付与し得る。その結果として、陽極電位を卑方向に大きく移行させると共に、溶解の単位質量当たりの発生電気量を増大させ得る。
第1実施形態の流電陽極用アルミニウム合金において、マグネシウムの含有量は、該合金の全質量に対して、0.005質量%を超え0.20質量%未満、好ましくは0.01質量%を超え0.19質量%未満、さらに好ましくは0.04質量%を超え0.18質量%未満である。マグネシウムの含有量が0.005質量%以下では、その効果が十分に得られず、マグネシウムの含有量が0.20質量%以上であると、陽極電位の卑側への移行が小さく、溶解の単位質量当たりの発生電気量も減少するおそれがある。
[珪素(Si):0.005質量%超0.10質量%未満](前記B)
珪素は、アルミニウム地金中に不純物として含まれ得る鉄成分による、流電陽極の性能低下を抑制する作用がある。また特に、珪素はアルミニウム合金に均一腐食性を付与し、溶解の単位質量当たりの発生電気量を増大させ得る。
第1実施形態の流電陽極用アルミニウム合金において、珪素の含有量は、該合金の全質量に対して、0.005質量%を超え0.10質量%未満、好ましくは0.01質量%を超え0.10質量%未満、さらに好ましくは0.03質量%を超え0.09質量%未満である。珪素の含有量が0.005質量%以下又は0.10質量%以上では、陽極電位が貴側に移行し、溶解の単位質量当たりの発生電気量も減少するおそれがある。
[カルシウム(Ca):0.005質量%超0.10質量%未満](前記C)
カルシウムは、アルミニウム地金中の不純物を緻細化且つ無害化し、アルミニウムを活性化する作用がある。また特に、カルシウムは陽極電位を卑方向に移行させると共に、アルミニウム合金に均一腐食性を付与し、溶解の単位質量当たりの発生電気量を増大させ得る。
第1実施形態の流電陽極用アルミニウム合金において、カルシウムの含有量は、該合金の全質量に対して、0.005質量%を超え0.10質量%未満、好ましくは0.009質量%を超え0.09質量%未満、さらに好ましくは0.03質量%を超え0.09質量%未満である。カルシウムの含有量が0.005質量%以下又は0.10質量%以上では、溶解の単位質量当たりの発生電気量が減少するおそれがあり、また、カルシウムの含有量が0.10質量%以上では、鋳造性が著しく低下するおそれがある。
[アンチモン(Sb):0.005質量%超0.30質量%未満](前記D)
アンチモンは、陽極電位を卑にし、溶解の単位質量当たりの発生電気量を増大させ得る。
第1実施形態の流電陽極用アルミニウム合金において、アンチモンの含有量は、該合金の全質量に対して、0.005質量%を超え0.30質量%未満、好ましくは0.006質量%を超え0.28質量%未満、さらに好ましくは0.009質量%を超え0.11質量%未満である。アンチモンの含有量が0.005質量%以下又は0.30質量%以上では、その効果が十分に得られないおそれがある。
第1実施形態の流電陽極用アルミニウム合金は、アルミニウム、亜鉛及び錫を必須成分としてそれぞれ特定量含有し、さらにマグネシウム、珪素、カルシウム及びアンチモンからなる群から選択される1種又は2種以上を特定量含有しているため、これらの各成分の相乗効果によって安定した卑な陽極電位と高い発生電気量を有し、特に鉄系材料の流電陽極として好適に使用できる。また、第1実施形態の流電陽極用アルミニウム合金は、高価なインジウムを含有しないので、製造コストの低減を図ることができる。第1実施形態の流電陽極用アルミニウム合金が適用可能な被防食体としては、例えば、コンクリート構造物の他、防波堤、岸壁、桟橋、橋脚などの港湾や河川に設置される構造物における金属体、土壌に埋設された金属パイプラインを例示できる。
次に、本発明の流電陽極用アルミニウム合金の第2実施形態について、その含有成分の意義、含有量などについて説明する。第2実施形態の流電陽極用アルミニウム合金は、亜鉛、錫、マグネシウム(前記A)及び珪素(前記B)と、前記E〜Gからなる群から選択される1種又は2種以上の元素とを含有し、且つ残部がアルミニウムと不可避不純物とからなる。尚、第2実施形態については、第1実施形態と異なる構成を主として説明し、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。第2実施形態における特に説明しない構成については、前述した第1実施形態における説明が適宜適用される。
[ジルコニウム(Zr):0.005質量%超0.35質量%未満](前記E)
ジルコニウムは、鋳造組織の結晶粒を微細化、均一化すると共に、均一腐食性を付与し得る。その結果、ジルコニウムは陽極電位を安定させ卑にし、溶解の単位質量当たりの発生電気量を増大させ得る。
第2実施形態の流電陽極用アルミニウム合金において、ジルコニウムの含有量は、該合金の全質量に対して、0.005質量%を超え0.35質量%未満、好ましくは0.01質量%を超え0.30質量%未満、さらに好ましくは0.03質量%を超え0.25質量%未満である。ジルコニウムの含有量が0.005質量%以下では、鋳造組織の結晶粒を微細化する作用が不十分となるおそれがある。一方、ジルコニウムの含有量が0.35質量%以上であると、鋳造時のAl−Zr系金属間化合物が粗大化しやすく、陽極電位が貴側に移行し、溶解の単位質量当たりの発生電気量も低下し、また、鋳造性が低下すると共に、不均一で局部的な溶解となるおそれがある。
[チタン(Ti):0.005質量%超0.50質量%未満](前記F)
チタンは、ジルコニウムと同様の作用効果を奏し得る。即ちチタンは、鋳造組織の結晶粒を微細化、均一化すると共に、均一腐食性を付与し、結果として、陽極電位を安定させ卑にし、溶解の単位質量当たりの発生電気量を増大させ得る。
第2実施形態の流電陽極用アルミニウム合金において、チタンの含有量は、該合金の全質量に対して、0.005質量%を超え0.50質量%未満、好ましくは0.005質量%を超え0.42質量%未満、さらに好ましくは0.005質量%を超え0.36質量%未満である。チタンの含有量が0.005質量%以下では、鋳造組織の結晶粒を微細化する作用が不十分となるおそれがある。一方、チタンの含有量が0.50質量%以上であると、鋳造時のAlTiの金属間化合物が粗大化しやすく、陽極電位が貴側に移行し、溶解の単位質量当たりの発生電気量も低下し、また、鋳造性が低下すると共に、不均一で局部的な溶解となるおそれがある。
[硼素(B):0.001質量%超0.20質量%未満](前記G)
硼素は、ジルコニウムと同様の作用効果を奏し得る。即ち硼素は、鋳造組織の結晶粒を微細化、均一化すると共に、均一な溶解を促進し、結果として、陽極電位を安定させ卑にし、溶解の単位質量当たりの発生電気量を増大させ得る。
第2実施形態の流電陽極用アルミニウム合金において、硼素の含有量は、該合金の全質量に対して、0.0010質量%を超え0.20質量%未満、好ましくは0.0015質量%を超え0.19質量%未満、さらに好ましくは0.0090質量%を超え0.18質量%未満である。硼素の含有量が0.0010質量%以下では、鋳造組織の結晶粒を微細化する作用が不十分となるおそれがある。一方、硼素の含有量が0.20質量%以上であると、鋳造時のAlBの金属間化合物が粗大化しやすく、陽極電位が貴側に移行し、溶解の単位質量当たりの発生電気量も低下し、また、鋳造性が低下すると共に、不均一で局部的な溶解となるおそれがある。
第2実施形態の流電陽極用アルミニウム合金は、アルミニウム、亜鉛、錫、マグネシウム及び珪素を必須成分としてそれぞれ特定量含有し、さらにジルコニウム、チタン及び硼素からなる群から選択される1種又は2種以上を特定量含有しているため、これらの各成分の相乗効果によって安定した卑な陽極電位と高い発生電気量を有し、特に鉄系材料の流電陽極として好適に使用でき、産業上優れた効果をもたらすものである。また、第2実施形態の流電陽極用アルミニウム合金は、高価なインジウムを含有しないので、製造コストの低減を図ることができる。
特に、第2実施形態の流電陽極用アルミニウム合金に固有の成分であるジルコニウム、チタン又は硼素は、該合金における鋳造組織の結晶粒を微細化する作用を有するため、該合金の製造時においては、該合金溶湯内に錫を細かく分散させ、見かけ上錫を固溶させた状態となるので、これによって優れた流電陽極の特性が得られる。また溶解、鋳造時に錫を固溶させるための熱処理を必ずしも行う必要がないので、生産性が向上し鋳造コストの低減を図ることも可能である。
第2実施形態の流電陽極用アルミニウム合金においては、前記F(チタンを0.005質量%超0.50質量%未満)及び前記G(硼素を0.001質量%超0.20質量%未満)の両方を含有し、且つチタンの含有量に対する硼素の含有量の比率(硼素の含有量/チタンの含有量)が、1/40を超えて1/3未満の範囲にあることが好ましく、特に1/20を超えて3/10未満の範囲にあることが好ましい。これにより、流電陽極用アルミニウム合金における鋳造組織の結晶粒を微細化、均一化する作用がさらに向上するため、陽極電位を一層安定させ卑にし、溶解の単位質量当たりの発生電気量を一層増大させ、より一層優れた流電陽極特性が得られる。
特に、流電陽極用アルミニウム合金が前記F及び前記Gの両方を含有することで、どちらか一方のみを含有する場合に比して、該合金における鋳造組織の結晶粒を微細化する作用がさらに向上し得る。その理由は定かではないが、鋳造組織中に存在する金属間化合物AlTi及びAlBの両者が相互的に作用してアルミニウムの結晶核の発生を著しく促進するためであると推察される。チタンの含有量に対する硼素の含有量の比率が小さすぎるか又は大きすぎると、鋳造組織の一部に羽毛状粗大晶が発生して均一微細な結晶を有することが困難となるため、陽極電位は貴側に移行し、溶解の単位質量当たりの発生電気量も低下し、また不均一な溶解となるおそれがある。
前述した第1実施形態及び第2実施形態を含む、本発明の流電陽極用アルミニウム合金は、この種の流電陽極用アルミニウム合金の製造方法に準じて製造することができる。また、本発明の流電陽極用アルミニウム合金の製造方法においては、溶体化処理、焼き入れ、均質化熱処理などの熱処理を行うことが好ましく、斯かる熱処理としては公知の方法を適宜採用できる。この熱処理により、アルミニウム合金溶湯中に錫を固溶できる。但し、寸法が比較的小さな流電陽極を製造する場合、又は第2実施形態においてジルコニウム、チタン若しくは硼素が前記特定範囲内でアルミニウム合金に含有される場合には、アルミニウム合金中に錫を均一に分散させて凝固できるため、熱処理は行わなくてもよい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。尚、実施例11〜13は参考例である。
〔実施例1〜44及び比較例1〜25〕
アルミニウム地金(アルミニウム純度99.909%)をアルゴンガス雰囲気中で黒鉛るつぼを用いて溶解した後、他の合金成分を下記表1及び表2に示す所定量添加し、750℃に再溶解させ、アルミニウム合金溶湯を調製した。このアルミニウム合金溶湯を鋳型に注湯し、直径φ20mm×長さ300mmの丸棒に鋳造し、その鋳造物をさらに550℃で6時間加熱した後、50℃/min以上の冷却速度で水焼き入れし、流電陽極用アルミニウム合金を製造した。
下記表1の実施例1〜28は、本発明の流電陽極用アルミニウム合金の第1実施形態に相当し、下記表2の実施例29〜44は、本発明の流電陽極用アルミニウム合金の第2実施形態に相当する。また、下記表2の比較例23〜25は、特許文献2(特開昭62−182245号公報)に記載の流電陽極用アルミニウム合金に相当する。
Figure 0006799513
Figure 0006799513
〔評価試験〕
各実施例及び比較例の流電陽極用アルミニウム合金について、腐食防食協会規格「JSCE S−9301流電陽極試験法」に準拠して、陽極電位及び発生電気量をそれぞれ測定した。具体的には、測定対象の流電陽極用アルミニウム合金を天然海水中に浸漬し、陽極電流密度1.0mA/cmの条件で定電流試験を行い、参照電極には飽和銀・塩化銀電極(SSE)を用い、陽極電位及び発生電気量をそれぞれ測定した。尚、前記腐食防食協会規格の試験法では、陽極電位及び発生電気量の測定時点は試験開始7日後と規定されているが、本評価試験では、長期安定性も評価するために、試験開始7日後及び63日後の両方で測定を行い、その際、試験溶液(天然海水)を7日おきに交換した。
測定結果を下記表3及び表4に示す。下記表3及び表4に示す陽極電位及び発生電気量の測定値は、それぞれ、3本以上の複数の試料についての測定値の平均値である。
Figure 0006799513
Figure 0006799513
陽極電位については、安定した卑な陽極電位が得られると流電陽極のアノード分極が非常に小さいと判断され、高評価となる。流電陽極用アルミニウム合金の代表的な陽極電位である−1005mV以下vs.SSEを本実施例では目標とした。また発生電気量については、その数値が大きいほど、当該アルミニウム合金による溶解の単位質量当たりの発生電気量が高いと判断され、高評価となる。流電陽極用アルミニウム合金の代表的な発生電気量は2300A・h/kg〜2750A・h/kgであるが、本実施例では2600A・h/kg以上を目標とした。
表3に示す通り、本発明の第1実施形態に属する実施例1〜28は、複数の成分の含有量がそれぞれ前記特定範囲にあるため、少なくとも1つの成分の含有量が前記特定範囲に無い比較例1〜18に比して、陽極電位及び発生電気量の両方が長期に亘って安定して良好であり、流電陽極特性に優れていた。
また表4に示す通り、本発明の第2実施形態に属する実施例29〜44は、複数の成分の含有量がそれぞれ前記特定範囲にあるため、少なくとも1つの成分の含有量が前記特定範囲に無い比較例19〜25に比して、陽極電位及び発生電気量の両方が長期に亘って安定して良好であり、流電陽極特性に優れていた。
また、実施例1〜44の中でも特に実施例29〜44は発生電気量が高く、優れた流電陽極特性を示したことから、本発明の第2実施形態が特に有効であることがわかる。
また、実施例37〜41どうしの対比から、本発明の第2実施形態においてチタン及び硼素をそれぞれ前記特定量含有させた場合に、チタン含有量に対する硼素含有量の比率としては、実施例37、実施例39及び実施例40が包含される範囲である、1/40を超えて1/3未満が、発生電気量が特に高く有効であることがわかる。
以上の結果から、本発明の流電陽極用アルミニウム合金は、高価なインジウムを含有せずとも流電陽極特性に優れ、比較的低コストでありながら、鉄系材料の被防食体の耐用年数を大幅に延長し得るものであることが明白である。

Claims (4)

  1. 亜鉛を0.6質量%以上9.7質量%以下と、錫を0.06質量%以上0.38質量%以下と、下記A,C及びDからなる群から選択される1種とを含有し、且つ残部がアルミニウムと不可避不純物とからなる、流電陽極用アルミニウム合金。
    A:マグネシウムを0.006質量%以上0.18質量%以下
    C:カルシウムを0.006質量%以上0.08質量%以下
    D:アンチモンを0.006質量%以上0.28質量%以下
  2. さらに珪素を0.006質量%以上0.05質量%以下含有する、請求項1に記載の流電陽極用アルミニウム合金。
  3. 亜鉛を0.6質量%以上9.7質量%以下と、錫を0.06質量%以上0.38質量%以下と、マグネシウムを0.006質量%以上0.18質量%以下と、珪素を0.006質量%以上0.05質量%以下と、下記E〜Gからなる群から選択される1種とを含有し、且つ残部がアルミニウムと不可避不純物とからなる、流電陽極用アルミニウム合金。
    E:ジルコニウムを0.05質量%以上0.20質量%以下
    F:チタンを0.006質量%以上0.40質量%以下
    G:硼素を0.002質量%以上0.18質量%以下
  4. 亜鉛を0.6質量%以上9.7質量%以下と、錫を0.06質量%以上0.38質量%以下と、マグネシウムを0.006質量%以上0.18質量%以下と、珪素を0.006質量%以上0.05質量%以下と、チタンを0.006質量%以上0.40質量%以下と、硼素を0.002質量%以上0.18質量%以下とを含有し、且つ残部がアルミニウムと不可避不純物とからなり、
    チタンの含有量に対する硼素の含有量の比率が、1/40以上1/3以下である、流電陽極用アルミニウム合金。
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