JP4126633B2 - 低温海水用アルミニウム合金流電陽極 - Google Patents
低温海水用アルミニウム合金流電陽極 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4126633B2 JP4126633B2 JP07744999A JP7744999A JP4126633B2 JP 4126633 B2 JP4126633 B2 JP 4126633B2 JP 07744999 A JP07744999 A JP 07744999A JP 7744999 A JP7744999 A JP 7744999A JP 4126633 B2 JP4126633 B2 JP 4126633B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- aluminum alloy
- anode
- content
- galvanic anode
- temperature seawater
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Lifetime
Links
Landscapes
- Prevention Of Electric Corrosion (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、陰極防食に使用されるアルミニウム合金流電陽極に関するものであり、特に通常の海水に比べて水温が極度に低い10℃以下の氷海域などに立地する石油掘削・生産用鋼構造物および海底管などの防食に優れた低温海水用アルミニウム合金流電陽極に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、Al系合金からなる流電陽極として、Al−Zn−Hg系アルミニウム合金流電陽極、Al−Zn−Sn系アルミニウム合金流電陽極、Al−Zn−In系アルミニウム合金流電陽極などが知られているが、Al−Zn−Hg系アルミニウム合金流電陽極は環境問題の観点からその使用が避けられており、またAl−Zn−Sn系アルミニウム合金流電陽極は特殊な熱処理を行わなければ優れた流電性能を得ることができないところから生産性の点で問題が残る。したがって、現在では主としてAl−Zn−In系アルミニウム合金流電陽極が広く使用されている。このAl−Zn−In系アルミニウム合金流電陽極として、
(a)In:0.005〜0.05重量%、Zn:0.05〜8.0重量%、Mg:0.02〜2.0重量%、Mn:0.01〜0.3重量%、Ga:0.003〜0.05重量%、Fe:0.03〜0.3重量%、Si:0.03〜0.4重量%、Cu:最大0.02重量%、結晶リファイナリー例えばTi−B:最大0.05重量%、その他の元素:最大0.01重量%を含有し、残部がAlからなる組成のAl−Zn−In系アルミニウム合金流電陽極(特開昭64−83638号公報参照)、
(b)Zn:0.5〜6.0重量%、In:0.01〜0.05重量%、Si:0.05〜0.3重量%、Ti:0.005〜0.1重量%、B:0.001〜0.02重量%、Mg:0.1〜3.0重量%を含有し、残部がAlからなる組成のAl−Zn−In系アルミニウム合金流電陽極(特開平2−149636号公報参照)などが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、石油資源の枯渇により簡単に掘削できる地域は限定され、例えば、北海など寒冷地域での石油掘削が行われている。しかし、前記従来のAl−Zn−In系アルミニウム合金流電陽極は通常の常温海水中で使用した場合は流電性能を十分に発揮するが、冬季には海水温度が0℃近くまで低下する寒冷地域での石油掘削用リグやプラットホームに前記従来のAl−Zn−In系アルミニウム合金流電陽極を使用した場合、前記従来のAl−Zn−In系アルミニウム合金流電陽極は陽極電位が貴化したり、有効電気量が低下したり、さらには局部的な孔食溶解が発生したりして安定した流電性能を示さない。この現象は常温で全面溶解していたものが、低温で局部的な孔食溶解となることによるもので不働態化と呼ばれており、この不働態化は10℃で出現し、温度が低下するほど出現率が大きくなり、不働態化している期間も長期化するなどの課題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、これら課題を解決すべく研究を行った結果、
Zn:2.0〜6.0%、Mg:1.0〜5.0%、In:0.022〜0.060%、Si:0.05〜0.30%を含有するアルミニウム合金に、Tiを添加せずにBとGaをそれぞれB:0.001〜0.500%、Ga:0.010〜0.050%を含有せしめたアルミニウム合金からなる流電陽極は、海水温度が0℃近くまで低下する環境下において、従来よりも卑な陽極電位を維持したまま、高い有効電気量を有し、全面溶解性を示して不働態化を起こすことはない、という研究結果が得られたのである。
【0005】
この発明は、かかる研究結果に基づいて成されたものであって、
(1)Zn:2.0〜6.0%、Mg:1.0〜5.0%、In:0.022〜0.060%、Si:0.05〜0.30%、B:0.001〜0.500%、Ga:0.010〜0.050%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金からなる低温海水用アルミニウム合金流電陽極に特徴を有するものである。
【0006】
この場合、BとGaの含有量をそれぞれB:0.022〜0.200%、Ga:0.015〜0.030%に限定することが一層好ましい。したがって、この発明は、
(2)Zn:2.0〜6.0%、Mg:1.0〜5.0%、In:0.022〜0.060%、Si:0.05〜0.30%、B:0.022〜0.200%、Ga:0.015〜0.030%を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金からなる低温海水用アルミニウム合金流電陽極に特徴を有するものである。
【0007】
まず、この発明の低温海水用アルミニウム合金流電陽極の成分組成を上述のごとく限定した理由を述べる。
Zn:
Znは、Al−Zn−Mg固溶体にInがある濃度以上含有した場合に、流電陽極としての特性が発揮されるようになるが、その含有量が2.0%未満では固溶体におけるZn濃度が小さすぎてマトリックスを構成するAl−Zn−Mg固溶体の持つ流電特性が不安定となり、陽極電位の貴化、有効電気量の低下および溶解面の不均一化を招くので好ましくなく、一方、6.0%を越えて含有させるとZnはAlに比べて理論電気量が小さいことから有効電気量が低下すると共に、陽極電位もやや貴化するので好ましくない。したがって、Znの含有量を2.0〜6.0%に定めた。有効電気量と溶解面の均一性に及ぼす効果を重視すれば、Znの含有量の一層好ましい範囲は2.5〜5.0%である。
【0008】
Mg:
Mgは、陽極電位の卑化と他の添加元素の分散をよくすることで流電性能の安定化をもたらすと共に、合金の機械的強度を高める働きがあるが、その含有量が1.0%未満では十分な流電性能がえられず、一方、5.0%を越えて含有すると鋳造性が悪くなると共に、Al合金組織へのMg自身の分散が不均一になって、陽極電位が貴化傾向を示すので好ましくない。したがって、Mgの含有量を1.0〜5.0%に定めた。溶解面の均一性と鋳造性に及ぼす効果を重視すればMgの含有量の一層好ましい範囲は1.5〜4.0%である。
【0009】
In:
Inは、Al−Zn−Mg固溶体中に分散し、固溶限度以上含有すると表面酸化皮膜の形成を妨げ、陽極電位を卑化させると共に局部溶解を阻止し、ひいては有効電気量の向上をもたらすが、その含有量が0.022%未満では前記特性が得られず、一方、0.060%を越えて含有すると、陽極表面の過剰な活性化により自己腐食が増大し、有効電気量の低下が起こると共に、Inは高価な金属であるところから経済的にも好ましくない。したがって、Inの含有量は、0.022〜0.060%に定めた。有効電気量と溶解面の均一性に及ぼす効果を重視すれば、Inの含有量の一層好ましい範囲は0.026〜0.040%である。
【0010】
Si:
Siは、Al合金中に不純物として含まれるFeによる流電性能の低下を抑制する働きを持ち、特に、有効電気量を向上させる作用を有するが、その含有量が0.05%未満では所望の効果が得られず、一方、0.30%を越えて含有すると腐食生成物が陽極表面に多量に付着し、陽極電位の貴化および有効電気量の低下が顕著になるので好ましくない。したがって、Siの含有量を0.05〜0.30%に定めた。有効電気量に及ぼす効果を重視すれば、Siの含有量の一層好ましい範囲は0.08〜0.25%である。
【0011】
B:
Bは有効電気量の向上に寄与し、その効果はわずか0.001%添加しただけで現れる。また、Bは溶解面を平滑にする効果もあり、0.022%以上の添加で顕著となる。一方、BはAl−B母合金の形態で合金化され、高濃度になるとその添加量も増加することで鋳造性が悪くなると共に有効電気量も徐々に低下するため、0.500%を越えて含有させると不利である。したがって、Bの含有量を0.001〜0.500%に定めた。溶解面の平滑性、鋳造性および有効電気量に及ぼす効果を重視すれば、Bの含有量の一層好ましい範囲は0.022〜0.200%である。
【0012】
Ga:
GaはAl合金表面の活性化を均一にし、有効電気量を増加させる効果があるが、その含有量が0.010%未満では所望の効果が得られず、一方、0.050%を越えて含有すると局部的な溶解傾向を示すと共に、高価な金属であるところから高濃度の添加は経済的にも好ましくない。したがって、Gaの含有量は0.010〜0.050%に定めた。有効電気量と溶解面の均一性に及ぼす効果を重視すれば、Gaの含有量の一層好ましい範囲は0.015〜0.030%である。
【0013】
【発明の実施の形態】
Al地金を黒鉛るつぼ中で溶解し、表1〜表7に示す成分組成となるように元素を添加し、添加後、十分撹拌し鋳造して直径:15mmの丸棒インゴットを製造し、この丸棒インゴットを長さ:65mmに切断して本発明低温海水用アルミニウム合金流電陽極(以下、本発明流電陽極という)1〜35、比較低温海水用アルミニウム合金流電陽極(以下、比較流電陽極という)1〜12および従来低温海水用アルミニウム合金流電陽極(以下、従来流電陽極という)を作製した。これら本発明流電陽極1〜35、比較流電陽極1〜12および従来流電陽極について、試験面積が側面:20cm2 となるように試験面以外は塩化ゴム系塗料により被覆し、供試陽極を作製した。これら供試陽極を0℃の人工海水1リットルに浸漬し、陽極電流密度:1.0mA/cm2 で168時間通電し、試験終了直前の陽極電位を測定すると共に、有効電気量を算出し、それらの結果を表1〜表7に示した。なお、有効電気量の算出は、腐食防食協会規格 JSCE S−9301 流電陽極試験法にしたがって測定した。
【0014】
【表1】
【0015】
【表2】
【0016】
【表3】
【0017】
【表4】
【0018】
【表5】
【0019】
【表6】
【0020】
【表7】
【0021】
表1〜表7に示される結果から、本発明流電陽極1〜35は従来流電陽極に比べて卑な陽極電位と高い有効電気量を有することが分かる。しかし、この発明の条件から外れた組成の比較流電陽極1〜12は陽極電位あるいは有効電気量の内の少なくともいずれかが悪い値を示すことが分かる。
【0022】
【発明の効果】
上述のように、この発明のアルミニウム合金流電陽極は、特に氷海域などの低温海水中において従来よりも優れた特性を示し、寒冷域での資源開発機械、鋼構造物の防食に大いに貢献し得るものである。
Claims (2)
- 重量%で、
Zn:2.0〜6.0%、
Mg:1.0〜5.0%、
In:0.022〜0.060%、
Si:0.05〜0.30%、
B:0.001〜0.500%、
Ga:0.010〜0.050%、
を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金からなることを特徴とする低温海水用アルミニウム合金流電陽極。 - 重量%で、
Zn:2.0〜6.0%、
Mg:1.0〜5.0%、
In:0.022〜0.060%、
Si:0.05〜0.30%、
B:0.022〜0.200%、
Ga:0.015〜0.030%、
を含有し、残りがAlおよび不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金からなることを特徴とする低温海水用アルミニウム合金流電陽極。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP07744999A JP4126633B2 (ja) | 1999-03-23 | 1999-03-23 | 低温海水用アルミニウム合金流電陽極 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP07744999A JP4126633B2 (ja) | 1999-03-23 | 1999-03-23 | 低温海水用アルミニウム合金流電陽極 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2000273566A JP2000273566A (ja) | 2000-10-03 |
JP4126633B2 true JP4126633B2 (ja) | 2008-07-30 |
Family
ID=13634341
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP07744999A Expired - Lifetime JP4126633B2 (ja) | 1999-03-23 | 1999-03-23 | 低温海水用アルミニウム合金流電陽極 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4126633B2 (ja) |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
RU2444093C1 (ru) * | 2010-08-03 | 2012-02-27 | Учреждение Российской Академии наук Институт теплофизики им. С.С. Кутателадзе Сибирского отделения РАН (ИТ СО РАН) | Анод для химического источника тока, способ изготовления анода, химический источник тока |
JP6023029B2 (ja) * | 2013-09-25 | 2016-11-09 | 株式会社日立製作所 | 電気防食システムおよびそれを備えたポンプ装置 |
CN106893908A (zh) * | 2015-12-21 | 2017-06-27 | 比亚迪股份有限公司 | 一种铝合金及其制备方法 |
CN115418645A (zh) * | 2022-10-13 | 2022-12-02 | 中国海洋石油集团有限公司 | 一种高温深井油套管铝基牺牲阳极及其制备方法与应用 |
-
1999
- 1999-03-23 JP JP07744999A patent/JP4126633B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2000273566A (ja) | 2000-10-03 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2892449B2 (ja) | 流電陽極用マグネシウム合金 | |
US4885045A (en) | Aluminium alloys suitable for sacrificial anodes | |
JP4126633B2 (ja) | 低温海水用アルミニウム合金流電陽極 | |
KR900001560B1 (ko) | 갈바니 방식 양극용 알미늄 합금 | |
JP2924609B2 (ja) | 鋼構造物防食用アルミニウム合金 | |
CN114737193B (zh) | 一种耐高温牺牲阳极及其制备方法 | |
JP6799513B2 (ja) | 流電陽極用アルミニウム合金 | |
US5547560A (en) | Consumable anode for cathodic protection, made of aluminum-based alloy | |
JPH0733555B2 (ja) | 電気防食に使用される流電陽極用マグネシウム合金 | |
JPH09310131A (ja) | 流電陽極用マグネシウム合金の製造方法 | |
JPH09310130A (ja) | 流電陽極用マグネシウム合金の製造方法 | |
JP4436553B2 (ja) | 低温海水環境流電陽極用アルミニウム合金 | |
JP3184516B2 (ja) | 流電陽極用マグネシウム合金 | |
JP4395820B2 (ja) | 流電陽極用マグネシウム合金 | |
JP4539199B2 (ja) | 亜鉛合金流電陽極およびその亜鉛合金流電陽極を用いて高温環境下に置かれた設備を流電防食する方法 | |
JPS6319584B2 (ja) | ||
JPH09157782A (ja) | 流電陽極用マグネシウム合金 | |
JP2773971B2 (ja) | 流電陽極用マグネシウム合金 | |
US4626329A (en) | Corrosion protection with sacrificial anodes | |
JPS6196052A (ja) | 流電陽極用アルミニウム合金 | |
RU2263154C2 (ru) | Протекторный сплав на основе алюминия | |
JPS6232266B2 (ja) | ||
JPH01268840A (ja) | 流電陽極用アルミニウム合金 | |
JPH0418021B2 (ja) | ||
JPH10223485A (ja) | 電解コンデンサ電極用アルミニウム箔 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711 Effective date: 20051111 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20051111 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20060306 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20080416 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20080418 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20080501 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110523 Year of fee payment: 3 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110523 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120523 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130523 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130523 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140523 Year of fee payment: 6 |
|
EXPY | Cancellation because of completion of term |