JP4435885B2 - 魚釣用リールの制動摩擦板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は魚釣用リールのドラグ機構における制動摩擦板に関する。
【0002】
【従来の技術】
魚釣用リールのドラグ機構における制動摩擦板材には、アスベストーフェノール樹脂成形体、可焼性織布に油、グリースを塗布、含浸したもの、あるいは炭素繊維の織布に樹脂を含浸硬化したもの等がよく使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これら従来の制動摩擦板は、海水や摩擦熱による摩擦抵抗の変動や、締付力による厚み方向の耐久性に起因する摩擦抵抗の変動等により長時間安定したドラグ力が維持できず、快適な魚釣操作は更なる改良の余地がある。
【0004】
長時間快適な魚釣操作を維持する為に、ドラグ機構における制動摩擦板材には、耐海水性、優れた圧縮強度、摩擦係数が温度に依存しないなどの特性が必要であると考えられる。しかし、前述した従来材料は耐摩耗特性に優れるものの、環境変化により摩擦係数が変動しやすいという問題点を有していた。
【0005】
したがって、本発明は、海水や、摩擦熱に影響を受けにくく、長時間安定した摩擦特性が維持でき、もって快適な魚釣ができる魚釣用リールの制動摩擦板を提供する事を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来、潤滑材料として使用されており、優れた圧縮強度を有する黒鉛質炭素材に着目し、種々実験を重ねた結果、摩擦係数が温度、圧力によらず安定した制動力を発生させる摩擦材としても有用であることを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の請求項1の発明は、等方性黒鉛のみを用いて形成された魚釣用リールの制動摩擦板。
【0010】
請求項2の発明は、等方性黒鉛のみからなる炭素質材の気孔部分に樹脂含浸を施し硬化したフラン系樹脂含浸材のみを用いて形成された魚釣用リールの制動摩擦板。
【0012】
請求項3の発明は、下記条件下での動摩擦係数が、0.21〜0.23である請求項1又は2に記載の魚釣用リールの制動摩擦板。
相手材 SUS 304(φ60×30)
面圧 1.0−4.0 kgf/cm(試料は相手材外周部に押し当てる)
周速 5.4 m/s
雰囲気 常温、大気中
【0013】
請求項4の発明は、下記条件下での動摩擦係数の標準偏差が0.01以下である請求項1又は2に記載の魚釣用リールの制動摩擦板。
相手材 SUS 304(φ60×30)
面圧 1.0−4.0 kgf/cm(試料は相手材外周部に押し当てる)
周速 5.4 m/s
雰囲気 常温、大気中
【0014】
本発明による炭素材は、非常に高い熱伝導率を有しており、その動摩擦係数は面圧すなわち、締付力に影響を受けず略均一であり、また、温度変動にもほとんど影響されず、優れた潤滑性を示すとともに、安定した制動特性を示す。また、炭素材は元来、優れた耐海水性を有している。このため、本発明における炭素材を魚釣用リールの制動摩擦板として使用する場合、従来、潤滑性を維持するために使用していたグリースを使用しなくても十分な性能を発揮できる。
【0015】
本発明における炭素材は、黒鉛質成分が99重量%以上でかつ2000℃以上で黒鉛化処理した黒鉛質材である。
【0016】
本発明に使用できる等方性黒鉛は、一般的な黒鉛材の製法によればよく、黒鉛質成分が約100重量%で、嵩密度が1.65g/cm以上であり、圧縮強度が500kgf/cm以上のものが望ましい。
【0018】
前記炭素質材に樹脂を含浸することにより、表面近傍に存在する気孔を埋め、緻密化させることにより、海水の気孔内への浸透による摩擦抵抗の変動等によるドラグ機構の特性変動を抑制する。使用する樹脂はフラン系、フェノール系がある。
【0020】
図1に本発明における摩擦試験測定装置の概略図を示す。摩擦係数は試験片1の押しつけ力(面圧)による相手材2の周速度の変化により求めた。相手材はSUS304で直径60mm、幅30mmの円板をモータ3により、一定周速度5.4m/sで回転させ、その外周部に本発明における12.5×20×32mmのサイズの各種黒鉛質炭素材を温度一定の下で、面圧を変化させ、面圧変化に対する動摩擦係数を求めた。また、面圧を一定にし、温度を常温と100℃と変化させ、温度変化に対する動摩擦係数の変化を調べた。
【0021】
前記のようにして、求めた各種黒鉛質炭素材の動摩擦係数の範囲は温度変化、面圧変化に係わらず、0.14〜0.28となる。また、同一種の黒鉛質炭素材ではその動摩擦係数は標準偏差が0.02以下の範囲に入る。すなわち、本発明による黒鉛質炭素材は、温度変化、面圧変化には左右されず、ほぼ一定となる。言い換えれば、擬似的に魚釣リールのドラグ機構の制動部を体現させた結果、制動摩擦板となる本発明品らは、温度、圧力に左右されず、一定のドラグ力を維持できると言える。
【0022】
また、本発明による魚釣用リールの制動摩擦板は、図2に示されるように前記黒鉛質炭素基材を薄い中空円盤状に加工して形成される。なお、形状は中空円盤状に限らず、皿バネ状、円錐状等の種々のものがあり、相手材の形状に応じて適宜選定される。さらに、両軸受リールもしくは片軸受タイプのどちらにでも対応できる。
【0023】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
【0024】
(実施例1)
東洋炭素製等方性黒鉛材(IG−11)を、12.5×20×32mmの形状に加工し、黒鉛質材の試料とした。
【0025】
参考例1
黒鉛粉とピッチを重量比で60/40になるように混合し、100MPaの圧力で加圧成形を行い、1000℃で焼成を行うことにより、最終形状φ100×60mm、嵩密度1.72g/cm、黒鉛質成分が60%の黒鉛炭素質材を得た。
【0026】
(実施例
実施例1と同質の黒鉛材を同形状に加工後、表面の気孔を埋めるため、フラン系樹脂を真空加圧法により含浸し、表面に気孔のない黒鉛質材とした。
【0027】
参考例2
実施例同様、表面の気孔を埋めることを目的に、参考例1と同質同形状の試料にフラン系樹脂を含浸し、試料とした。
【0028】
(参考例
炭素繊維の織布に樹脂を含浸、積層熱圧成形後、焼成し、さらに緻密化のために、ピッチを含浸し、含浸後焼成を行う。この作業を繰り返し、製品の緻密化を行なう。その後、2000℃で黒鉛化処理を行なった。黒鉛化処理後に実施例1と同形状に加工し、炭素繊維強化黒鉛材試料を得た。
【0029】
(比較例1)
フェノール樹脂をφ50×15mmに成型後、200℃で熱処理し、樹脂を硬化させ、フェノール樹脂成型体を得た。
【0030】
(比較例2)
フェルト織物に熱硬化性樹脂を含浸し、200℃で熱処理を行い、実施例1と同形状に加工成型し、フェルト織物成形体を得た。
【0031】
(動摩擦試験1)
実施例1〜、参考例1〜3及び比較例1〜2における各試料を、常温と100℃での動摩擦係数を以下の条件の下、調べた。
相手材 SUS304
面圧 2.5kgf/cm
周速 5.4m/s
【0032】
(動摩擦試験2)
同様に、面圧を変動させた場合の、常温での動摩擦係数についても調べた。
試験時の条件は以下のとおりである。
相手材 SUS304
面圧 1.0,2.5,4.0kgf/cm2
周速 5.4m/s
【0033】
各試料の動摩擦係数の測定結果を表1にまとめて示す。
【0034】
【表1】
Figure 0004435885
【0035】
本発明による黒鉛質炭素材は面圧(締付力)、温度によらず、動摩擦係数がほぼ一定である。特に、実施例1と、それら試料の気孔に樹脂を含浸し、気密性を向上させた実施例は今回の実験レベルでは同等の特性が得られた。一方、比較例の製品は面圧、温度の上昇にともない、動摩擦係数も増大している。
【0036】
【発明の効果】
動摩擦係数が、温度や締付力に影響されず、また、海水などに影響されることなく、ほぼ一定となることから、魚釣用リールのドラグ力が長時間安定して維持する事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における摩擦係数測定試験機の概略図。
【図2】本発明による魚釣用リールの制動摩擦板の斜視図。
【符号の説明】
1 測定試料
2 相手材
3 モータ
4 分銅

Claims (4)

  1. 等方性黒鉛のみを用いて形成された魚釣用リールの制動摩擦板。
  2. 等方性黒鉛のみからなる炭素質材の気孔部分に樹脂含浸を施し硬化したフラン系樹脂含浸材のみを用いて形成された魚釣用リールの制動摩擦板。
  3. 下記条件下での動摩擦係数が、0.21〜0.23である請求項1又は2に記載の魚釣用リールの制動摩擦板。
    相手材 SUS 304(φ60×30)
    面圧 1.0−4.0 kgf/cm(試料は相手材外周部に押し当てる)
    周速 5.4 m/s
    雰囲気 常温、大気中
  4. 下記条件下での動摩擦係数の標準偏差が0.01以下である請求項1又は2に記載の魚釣用リールの制動摩擦板。
    相手材 SUS 304(φ60×30)
    面圧 1.0−4.0 kgf/cm(試料は相手材外周部に押し当てる)
    周速 5.4 m/s
    雰囲気 常温、大気中
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