以下、本発明に係る運転データ管理装置の実施形態を、図を参照し説明する。
図1に本発明に係る運転データ管理装置の一実施例である運転データ管理装置30と例えば発電プラント等のユニット31との関係を概説する説明図を示す。
運転データ管理装置30は、図19に示す従来の運転データ管理装置1と同様に、センサ類32が取得したユニット31のプラント状態量をプラント信号入出力装置33を介してユニット制御用計算機34が取得し保存したプラント生信号DB35を読み出して運転管理を行う。運転データ管理装置30は、ユニット31のデータ管理を行うプラント管理用計算機37と、電子データを記録し保存する記録手段38と、プラント管理用計算機37が演算処理した内容を表示する表示手段39と、プラント管理用計算機37に入力操作を行う入力手段40とを具備する。
プラント管理用計算機37は、制御手段41を備え、この制御手段41が記録手段38に格納される運転データ管理用プログラム(以下、プログラムをPGとする)43を読み込み実行することで、プラント管理用計算機37は、ユニット31の運転データを管理する手段として有効に機能し、必要な処理を実行する。
プラント管理用計算機37は、運転データを管理するための手段として、運転データの収集を行い、必要なデータを編集するデータ収録手段44と、管理項目を設定する管理項目設定手段45と、状態を判定する基準となる管理値を設定する管理値設定手段46と、管理値および運転データ(現在値)を取得し比較して、異常があると判断した場合に取得した運転データの監視を行う現在値監視手段47と、正常域にある現在値(以下、定常値という)を監視して変化傾向について評価する定常値監視評価手段48と、外部機器との電気的接続を担うインターフェイス手段49とを備える。
現在値監視手段47は、状態を判定する複数個の管理値および運転データ(現在値)を取得し、取得した運転データと管理値とを比較して異常の有無および異常の度合を評価する。そして、評価の結果、正常域にない(異常域にある)と判断した場合には取得した運転データを異常値とみなし、異常値の監視を行う。また、定常値監視評価手段48は、現在値監視手段が取得した運転データを正常と評価した場合、取得した運転データ、すなわち、定常値を収録し、集計する。そして、収録した定常値を監視して評価を行う。
また、プラント管理用計算機37は、記録手段38に必要な電子データを記録し保存することおよび記録手段38に保存される電子データを読み出すことができる。記録手段38には、運転データ管理装置30が運転データ管理を行うにあたり必要なデータベース(以下、運転データ管理用DBとし、データベースをDBと省略する)50が格納される。ここで、運転管理用DB50とは、プラント管理用計算機37が作成、更新または読み出しを行うことができるDBであり、運転データ管理装置30が運転データ管理を行うにあたり必要な電子データまたはDBを一括して示す総称とする。
尚、運転データ管理装置30は、ユニット制御用計算機34を経由してプラント状態量のデータを取得しているが、プラント信号入出力装置33からユニット制御用計算機34を経由せずに直接取得しても良い。
また、運転データ管理装置30は、記録手段38を具備しているが、プラント管理用計算機37が電子データを記録し保存することのできる記録手段またはそれに準ずる手段を備えており、必要な電子データの記録および保存ができるのであれば、必ずしも記録手段38は必要でない。プラント管理用計算機37が必要な電子データを記録し保存できるのであれば、記録手段38を具備していなくとも運転データ管理装置30としての役割を果たし得るからである。
さらに、運転データ管理装置30は、表示手段39を具備しているが、必ずしも必要でない。例えば、プラント管理用計算機37から図外の表示手段と電気的に接続することで、図外の表示手段に所望の情報を表示できるのであれば、表示手段39を具備していなくとも運転データ管理装置30としての役割を果たし得るからである。
さらにまた、外部機器との電気的な接続を行う要請がないのであれば、プラント管理用計算機37がインターフェイス手段49を備えていなくても構わない。
図2に運転データ管理装置30のプラント管理用計算機37が行う運転データ管理手順と運転データ管理手段として機能するプラント管理用計算機37の各手段との関係を概説する説明図を示す。
運転データ管理装置30は、プラント等の監視対象から少なくとも1種類の運転データを一定周期で取り込み、取り込んだデータと設定した管理値とを比較することにより、前記管理対象を監視すると共に、前記管理対象から取り込まれる運転データを予め設定した周期で保存する運転データ管理方法を行うが、この運転データ管理方法は、プラント管理用計算機37が運転データ管理手順を行うことでなされる。
プラント管理用計算機37が行う運転データ管理手順は、概説すると、管理項目設定手段45が行う管理項目設定行程と、データ収録手段44が行うデータ収録行程と、管理値設定手段46が行う管理値設定行程と、現在値監視手段47が行う現在値監視行程と、定常値監視評価手段48が行う定常値監視評価行程とを具備する。
このような行程を具備する運転データ管理手順では、まず、管理項目設定行程がなされ、管理項目設定手段45が管理項目を設定し作成した運転データ管理用DB50としての管理項目DB52から設定された管理項目を読み出して取得する。管理項目設定手段45が管理項目を設定し作成すると、管理項目設定行程は完了し、次に、データ収録行程がなされる。
データ収録行程では、データ収録手段44がプラント生信号DB35からプラント状態量を読み出して取得すると共に、管理項目設定行程において管理項目設定手段45が設定した管理項目を管理項目DB52から読み出して取得する。尚、データ収録手段44が読み出すプラント状態量のデータは、従来の場合なら1日平均値等に編集され保存されたプラントの運転データであるが、本発明に係る運転データ管理装置30では、プラント生信号DB35に格納される最短周期の運転データ(例えば1分間隔で取り込まれている)を使用する。
データ収録手段44がプラント状態量および管理項目をプラント生信号DB35および管理項目DB52から読み出すと、続いて、データ収録手段44は、プラント生信号DB35から読み出したプラント状態量のデータを管理項目DB52から読み出した管理項目別に並び替える。そして、並び替えた管理項目別データを運転データ管理用DB50としての管理項目別DB53を作成して保存する。
データ収録手段44が行う管理項目別の並べ替えは、基本的にグループ分けからなり、プラントを構成する系統、その系統に属する機器・部品の順番で細分化したグループに関する運転データ群である。この運転データ群に、当該機器部品に影響をおよぼすユニット負荷等の関連運転データを追加した形で管理項目を定義し、後に行う検索参照が容易となるように管理項目別DB53は作成される。
データ収録手段44が管理項目別DB53を作成して保存すると、データ収録行程は完了し、次に、管理値設定行程がなされる。管理値設定行程では、管理値設定手段46が、管理項目DB52を参照して設定された管理項目ごとに個々の運転データの状態比較を行う管理値を設定する。
設定される管理値は大きく分けると2種類あり、1つは、リアルタイム(ここでは、運転データ取得の周期と同じ1分周期でデータ更新可能な状態を指し、以下、同様とする。)で状態を把握したい管理項目に対して設定する動的管理値である。もう1つは、同一運転状態においては略同一視できる値を示す運転データのようにリアルタイムに状態を把握する必要のない管理項目に対して設定する静的管理値である。
管理値設定行程において設定値を設定する際、管理値設定手段46は、原則として管理項目DB53を参照し動的管理値として設定を行うが、リアルタイムでの監視が不要な管理項目については、該当する管理項目について定常値監視手段48がデータ収録およびデータ集計を行い作成される定常値データを参照して設定を行う。
管理値設定手段46は、例えば、管理項目、管理値等の管理値についての情報を運転データ管理用DB50としての管理値DB54に保存する。管理値DB54に格納される管理値は、現在値監視手段47が運転データの状態を比較する際に使用される。管理値設定手段46が、設定した管理値を管理値DB54保存すると、管理値設定行程は完了し、次に、現在値監視手段47が、現在値監視行程を行う。
現在値監視行程では、現在値監視手段47が状態を判定する複数個の管理値および運転データを取得し、取得した運転データと前記管理値とを比較して異常の有無および異常の度合を評価し、異常がある場合にはリアルタイムで監視を行う。
現在値監視手段47は、図1に示すように、運転データ状態チェック部56および異常値監視部57を備えており、運転データ状態チェック部56が運転データ状態チェック行程を、異常値監視部57が異常値監視行程を行うことで、現在値監視行程がなされる。つまり、現在値監視行程は、運転データ状態チェック行程および異常値監視行程を備える。
現在値監視手段47が行う現在値監視行程では、まず、現在値監視手段47の運転データ状態チェック部56が運転データ状態チェック行程を行うことで取得した運転データと前記管理値とを比較して異常の有無および異常の度合を評価し、続いて、現在値監視手段47の異常値監視部57が運転データ状態チェック行程を行うことで運転データの状態が異常と判定された場合においてリアルタイムでの監視を行う。
現在値監視行程では、まず、現在値監視手段47の運転データ状態チェック部56が、管理項目別DB53および管理値DB54を読み出す。そして、管理項目別DB53に保存された管理項目別のグループを構成する個々の運転データ(現在値)と、管理値DB54に保存された管理値とを比較することにより、運転データの状態を評価する。
運転データ状態チェック部56が運転データの状態を評価し、運転データの値が正常域にあると判断した場合、運転データ状態チェック部56は、定常値監視評価手段48に運転データを送る。その一方で、運転データの推移を示すデータを運転データ管理用DB50として作成し、作成したデータを表示手段39に出力して表示手段39に正常値推移表示として表示させる。尚、正常値推移表示は、監視対象の監視を継続している限り継続的に行われる。
現在値監視手段47の運転データ状態チェック部56が定常値監視評価手段48に運転データを送り、定常値監視評価手段48が運転データを受け取ると、定常値監視評価手段48が定常値監視評価行程を開始する。定常値監視評価行程では、定常値監視評価手段48が定常値を監視して変化傾向について評価を行う。
定常値監視評価手段48が定常値の変化傾向について評価すると、定常値を監視し評価した定常値監視評価結果が、図1に示すプラント管理用計算機37から表示手段39に出力され、出力された評価結果は、例えば、図15〜図18に示すような定常値の推移を示す推移グラフ(図15〜図18については後述する)として表示手段39に表示される。定常値監視評価結果が表示されると、定常値監視評価行程を完了し、運転データ管理手順は終了する。
一方、運転データ状態チェック部56が、運転データの状態を評価した結果、運転データの値が正常域になく、異常域にある場合、運転データ状態チェック部56は、異常値監視部57に運転データを送る。そして、異常値監視部57が異常監視値行程を行う。
異常監視値行程では、異常値監視部57が取得した現在値がどれだけ監視値を超えているのか等の異常値に対してリアルタイムで監視を行い、監視結果を異常値監視評価結果として表示手段39に出力する。表示手段39に異常値監視評価結果が出力されると、表示手段39に異常値監視評価結果が、例えば、図6に示すような現在値の推移グラフ(図6については後述する)として表示される。異常監視値行程は、監視対象の監視を継続している限り継続的に行われる。
次に、運転データ管理手順の各行程のうち本発明にかかる運転データ管理装置30において特徴的な行程について、もう少し具体的に説明する。
図3に管理値設定手段46が設定を行う管理値と運転データの状態領域との関係について説明する説明図を示す。
管理値設定手段46が管理値設定行程で行う運転データの管理値は、運転データの状態領域を、例えば、正常域、前置警報域、警報域および停止域の4領域とするように3つ設定され、この例における管理値は、第1の管理値としての上(下)限値、第2の管理値としての警報値および第3の管理値としての停止値がある。
尚、設計値とは、ヒートバランス計算値等、プラントの運転状態によって定まる理論値であり、設定される管理値ではない。また、運転データによっては設計値が存在しないものもあるが、設計値が存在しない運転データについては、平均値を使用する(平均値の詳細については後述する)。
図3において示される各管理値について説明する。上限値(Pu)とは、正常なプラント運転状態における当該運転データの設計値(平均値の場合も包含する。以下、同様。)から上方側に許容される変動幅(以下、許容変動幅とする)P(P>0)における上方の限界値である。また、下限値(Pd)とは、設計値より下方の許容変動幅Pにおける下方の限界値である。
ここで、許容変動幅Pとは、例えば、ヒートバランス計算点である、1/4、2/4、3/4および4/4の各負荷帯での実測値とその変動幅、すなわち、正常な運転実績から得られる実測値の上限値を基準に決められる。
警報値とは、原則として、ユニット31の警報システムで使用される警報値であるが、警報値を持たない運転データについては、ユーザによって任意に設定される正常状態および警報状態となる境界値である。また、図3において示す「警報値(A)」は、警報値と設計値との差(絶対値)がA(A>P>0)であることを示している。さらに、ユニット31の警報システムで設定されない運転データのように警報値を持たない運転データについては、例えば、設計値および上限値を用いて、
[数1]
警報値=設計値±2{上限値−設計値}
のようにP>A>0となるように設定する。尚、図3においては、警報値(A)のうち上方の警報値をAu、下方の警報値をAdとして表記する。
停止値とは、原則として、ユニット31の警報システムで使用される停止値であるが、警報値を持たない運転データについては、ユーザによって任意に設定される警報状態および停止状態となる境界値である。また、図3において示す「停止値(T)」は、停止値と設計値との差(絶対値)がT(T>A>P>0)であることを示している。さらに、停止値を持たない運転データについては、例えば、設計値(平均値)および上限値を用いて、
[数2]
停止値=設計値±3{上限値−設計値}
のようにT>A>0となるように設定する。尚、停止値(T)のうち上方の停止値をTu、下方の停止値をTdと表記する。
従来、ユニット31の警報システムで行っていた運転データの状態の評価は、正常域、警報域および停止域に限られており、管理値は、関連機器の設計強度を基準に決定されている。また、設定される管理値は、そのユニット31に致命傷となり得る運転データ等の特定の運転データに限られていた。
そこで、本発明における管理値は、さらにきめ細かい管理を行うべく、運転データの状態を4つの領域に分割し、上(下)限値、警報値および停止値を設定する。また、全ての運転データの変動量を評価するという目的に応じるために、全ての運転データに対して設定する。従って、運転用の管理値を持たない運転データについては、警報値あるいは停止値という名称には拘らず、上述した例のようにして決定する。
図3においては、各管理値を、設計値を中心として、その上側と下側で対称の位置になるように設定している。現実には、上下両側に運転用の管理値を有する場合は極めて稀で、運転データによって、上側だけに管理値を持つ場合と、下側だけに持つ場合が大半であるが、いずれの場合においても、評価用の管理値としては、上下同じように設定するものとする。
その理由は、運転データ管理装置30では、これらの管理値を運転操作支援の基準に使用するという意図は無く、変動量の評価だけを目的としているためであり、変動の度合をわかり易く示すべく、プラント警報システムに使用される名称を変動幅のレベルを表す名称としてそのまま流用し、かつ、記号を付けたものである。
管理値を設定した結果、運転データの存在領域が4つに区分されるが、これらの領域を、図3に示すように、これもプラント警報システムでの呼び方に準じて、次のように定義した。
正常域: 設計値からの変動量がP未満(Pd−Pu間)の領域、
前置警報域: 設計値からの変動量がP以上A未満(Pu−Au間およびPd−Ad間)の領域、
警報域: 設計値からの変動量がA以上T未満(Au−Tu間およびAu−Tu間)の領域、
停止域: 設計値からの変動量がT以上(Tu以上およびTd未満)の領域
ここでは、警報域(設計値からの絶対値がA以上P未満)にある運転データを異常値とすることが一般的に多いことから警報域(設計値からの絶対値がA以上P未満)にある運転データを異常値とする。尚、異常値の定義は、必ずしも上記のように警報域にある運転データとしなくても良い。例えば、前置警報域および警報域にある運転データを異常値と定義して、運転データの変動をより厳しく監視するようにすることもできる。
このように、個々の運転データが存在する領域を、設計値からの変動量が大きくなる順番に、正常域、前置警報域、警報域および停止域の4つに区分したことにより、異常の度合をより正確に捉えることが可能になる。
例えば、ユニット31の定常運転状態において、運転データ(現在値)は、通常、設計値からの変動量が前置警報値(P)未満となる正常域にあるはずであるが、プラントの過渡運転時あるいは関連機器への軽度の異常発生時には、前置警報域に移る可能性がある。
また、プラントの異常運転あるいは機器への損傷発生時には、変動量が増大して警報域に入ることも考えられる。さらに、現在値が停止値(T)を越えると、原則としてユニット停止操作がなされるが、ユニット・トリップにまで至る間の過渡状態、あるいは、真の意味の停止値ではない運転データの場合には、停止域における運転継続も有り得るといった具合に異常の度合をより正確に捉えることができる。
また、従来の正常域において管理値Pを設定して図3に示すように正常域および前置警報域に分割することで、定常値監視評価手段48が、従来では正常域にある運転データをさらに細かく監視することができ、前置警報域にある運転データを正常な変動幅(本発明における正常域)と区別することが可能となる。従って、警報値を基準とした従来の運転データ管理装置または管理方法よりも、詳細に運転状態の情報をユーザに提供することができ、ユニット制御用計算機34の使命の一つであるプラントの運転支援をより強力に行うことができる。
さらに、正常域にある運転データをさらに細かく監視することができることにより、従来では捉えることが困難であった比較的長期的な変化傾向を捉えることが可能となり、関連機器に発生する軽度の損傷を検知することができる。
さらにまた、取り込んだ運転データの状態を評価するために、例えば、3個(P,A,T)等の複数個の管理値を準備しているので、従来のように、予め定められた特定の運転データや、ユニット31の警報システムにおける警報値、停止値等の管理値との比較だけではなく、全ての運転データについて、運転状態の変化の度合に応じて定められる全ての管理値と比較できるため、現在値の状態評価を従来よりもきめ細かく行うことができる。
尚、図3に示す例では、3個の管理値を使用し、4つの領域で説明したが、実際には、この数に限定する必要はなく、一般的に、適当に定義された複数個の管理値を使用することができる。
図4に現在値監視手段47が行う現在値監視行程について、より詳細に説明する説明図を示す。
現在値監視行程(ステップS1〜ステップS5)は、上述したように運転データ状態チェック部56が行う運転データ状態チェック行程(ステップS1〜ステップS2)と、異常値監視部57が行う異常値監視行程(ステップS3〜ステップS5)とを備える。従って、現在値監視行程の説明するにあたっては、まず、運転データ状態チェック行程(ステップS1〜ステップS2)について説明し、次に、異常値監視行程(ステップS3〜ステップS5)について説明する。
運転データ状態チェック部56が行う運転データ状態のチェックは、2段階でなされる。これは、運転データ状態チェック行程(ステップS1〜ステップS2)が運転データ状態チェック行程の第1の段階としてプラント(ユニット)31が運転中か停止中かをチェックする運転/停止判定ステップ(ステップS1)と、正常/異常判定ステップ(ステップS2)とを備えることによる。
運転データ状態チェック部56は、運転データ状態チェック行程を行い、運転データ状態のチェックとして、まず、ステップS1の運転/停止判定ステップを行う。運転/停止判定ステップ(ステップS1)では、運転データ状態チェック部56が運転/停止判定ステップを行い、プラント(ユニット)31が停止中と判断した場合(ステップS1でNOの場合)、停止中である旨の信号を定常値監視評価手段48に入力し、運転/停止判定ステップを完了する。そして、運転/停止判定ステップの完了をもって、運転データ状態チェック行程を完了する。
一方、運転データ状態チェック部56が運転/停止判定ステップにおいて、プラント(ユニット)31を運転中と判断した場合(ステップS1でYESの場合)、ステップS2に進み、続いて、ステップS2で運転データ状態チェック行程の第2の段階としての正常/異常判定ステップがなされる。
運転データ状態チェック行程の第2の段階である正常/異常判定ステップ(ステップS2)では、運転データ状態チェック部56が取得した現在値および管理値に基づき、現在値が、設計値に対してどの程度の乖離しているかを比較する。そして、比較した結果として現在値(現在の運転状態)が、どの領域にあるのかを記録するとともに、現在値が正常域にあるのか異常域にあるのかを判断する。ここでは、警報域および停止域(設計値からの絶対値がA以上)にある運転データを異常値とする。
図5は、現在値監視手段47の運転データ状態チェック部56が正常/異常判定ステップを行い、運転データの状態として記録される状態変化時系列表60のテーブルデータを視覚化して表した一例を説明する説明図である。
図5によれば、状態変化系列表60には、運転データのデータ種類(圧力、温度等)を示すPID No欄61、運転データを取得した日付および時刻を示す日時分欄62、取得した現在値を示す現在値欄63および運転データの状態がどの領域にあるかを示す状態監視欄が設けられており、状態監視欄は、運転状態の領域に合わせて正常域欄65と、前置警報域欄66と、警報域欄67と、停止域欄68とを有する。
また、状態変化系列表60では、現在値が、正常域、前置警報域、警報域および停止域のいずれの領域にあるのかを、正常域欄65、前置警報域欄66、警報域欄67および停止域欄68の該当する運転状態を示す欄に*等の記号をプロットすることで表している。
現在値(現在の運転状態)が、どの領域にあるかの記録は、運転データ状態チェック部56が、図5に示す状態変化系列表60を表または図6に示すような現在時刻からの直近の任意時間(例えば、1時間)分の推移グラフとして表示手段39に表示可能なテーブルデータを作成またはデータ更新することでなされる。表または推移グラフ表示の切り替えは、ユーザが表または推移グラフ表示の切り替え要求を入力手段40を介してプラント管理用計算機37に入力することでなされる。
尚、入力手段40から入力されたユーザ要求の内容は、プラント管理用計算機37の制御手段41が認識する。そして、制御手段41は、認識した実行要求行程を実行するのに適切な手段(部または機能)を選択し、制御手段41に選択された手段(部または機能)は、所定の処理行程または処理ステップを実行する。例えば、正常値推移表示における表示の切り替え要求である場合には、制御手段41が正常値推移表示を行う運転データ状態チェック部56を機能させて行う。
また、状態変化系列表60のテーブルデータは、現在時刻からの直近の任意時間(例えば、1時間)分の運転状態チェック結果を表示可能なように運転データ管理用DB50として記録手段38に保存される。記録手段38に保存される状態変化系列表60のテーブルデータを運転データ状態チェック部56が読み出し、読み出したテーブルデータを表示手段39に出力し、表示手段39に運転データの推移状況を表示(正常値推移表示)させる。
ここで、正常値推移表示とは、運転データ状態チェック部56が、正常と判断した運転データの推移を見るための表示をいう。つまり、運転データ状態チェック部56が、正常値推移表示を行う際には、状態変化系列表60のテーブルデータが全て表示される訳ではなく、異常値が発生した時間(ここでは、分単位の時刻)がある場合にはその時刻の運転データについては表示されない。
また、正常値推移表示は、ある特定された1種類の運転データの正常値推移のみならず、予め複数種類の運転データをグループ化して設定した管理項目を運転データ状態チェック部56が管理項目別DB53を参照して取得するので、予め設定した管理項目単位で行うことができる。運転データを管理項目単位で正常値推移表示ができることで、より効果的な解析が可能になる。
尚、図5に示す状態変化系列表60の例において、該当する運転状態を示す状態監視欄に*がプロットされているが、必ずしも図5に図示される記号(*)に限定されない。所定時刻において運転状態が、正常域、前置警報域、警報域および停止域のいずれにあるかを視認できるのであれば任意の記号で良い。
また、表示方法についても任意で良い。例えば、図示の場合は、4つの領域のどの領域にあるかを記号(*)の記入によって示しているが、記号(*)を色別表示にして視認性を上げても良いし、状態監視の欄を1個にし、この欄に所属領域を表す記号または色を入れるようにして簡素化することもできる。
さらに、表示手段39に表示される正常値推移表示および異常値推移表示は、一例として1時間推移グラフを示したが、必ずしも取得する運転データの時間分とグラフ表示する時間を合わせる必要はない。例えば、直近の1時間分の運転データを記録しておいても、例えば、直近30分等の1時間よりも短い時間(但し、取得する運転データの最短周期以上であることが必要)の推移グラフとして表示しても構わない。
さらにまた、任意時間の推移グラフは、図6に示す形態に限定されない。例えば、1時間推移グラフにおいてプロットされる点は、必ずしも図6に図示される記号(●)でなくても良く、所定時刻において運転状態が、正常域、前置警報域、警報域および停止域のいずれかにあり、かつ、どの程度の位置にあるかを視認できるのであれば任意の記号を用いても良い。
正常/異常判定ステップ(ステップS2)において、運転データ状態チェック部56が現在値を正常域にあると判断した場合(ステップS2でYESの場合)には、作成および更新した状態変化系列表60のテーブルデータを読み出して表示手段39に出力すると共に、定常値監視評価手段48に運転データの現在値を出力する。そして、定常値監視評価手段48が運転データの現在値を受け取ると、次に、定常値監視評価手段48が定常値監視評価行程を開始する。
一方、現在値を異常域にあると判断した場合(ステップS2でNOの場合)には、運転データ状態チェック行程を完了し、続いて、異常値監視部57が異常値監視行程(ステップS3〜ステップS5)を行う。異常値監視部57が異常値監視行程を行うにあたっては、図4に示すように異常値監視部57が異常値評価機能70と、パターン監視機能71と、累積値監視機能72とを有する場合には、これらの機能70,71,72が、ユーザの要求または予め設定した要求に応じて異常値監視行程のうち所定の処理ステップを行う。
異常値監視行程は、異常値評価機能70が行う異常値評価ステップ(ステップS3)と、パターン監視機能71が行うパターン監視ステップ(ステップS4)と、累積値監視機能72が行う累積値監視ステップ(ステップS5)との3つの処理ステップを備えるが、異常値監視行程として実行される処理ステップは、異常値評価ステップ、パターン監視ステップおよび累積値監視ステップのうち、実行要求があった少なくとも1以上の処理ステップとなる。
異常値監視部57の異常値評価機能70は、異常値評価の実行要求があり、運転データ状態チェック部56から状態変化系列表60のテーブルデータを受け取ると、ステップS3の異常値評価ステップを行い、異常値をも含めて現在から任意時間分のテーブルデータを図1に示す表示手段39に出力する。すると、表示手段39には図2に示す異常値監視評価結果として運転データの推移状況が表示(異常値推移表示)される。
異常値推移表示においては、正常値推移表示とは異なり、正常値をも含めて現在から任意時間分の運転データの推移が表示されるが、これは、異常値の発生が監視対象またはその付属機器等の劣化や故障を検出する指標としているためであり、より細かな運転データの推移状況が必要となるからである。尚、異常値推移表示についても、予め複数種類の運転データをグループ化して設定した管理項目単位で行うことができる。
このように、異常値評価機能70が異常値評価ステップを行うことで、当該運転データの異常進行状況をリアルタイムで監視することができる。また、表示手段39に表示される異常値推移表示は、例えば、異常値の推移を図5に示す状態変化時系列表60のように表形式でなされたり、図6に示す推移グラフのようにグラフ形式でなされたりして異常値の推移が認識できるように表示される。
さらに、正常と異常との境界(ここでは警報値)を越えての変化、すなわち、警報値を跨る変化があった場合には、注意喚起表示として、例えば、「警報値到達」等の警告文を表示することができる。この注意喚起表示は、ユーザに注意を喚起することが目的であり、異常値発生に対する単なるイベント表示であるから、上記例に限らず、適当な表示方法を選択して良い。
異常値評価機能70が異常値の評価を行い、表示手段39に評価結果が表示(異常値推移表示)されると、異常値評価機能70が行う異常値評価ステップ(ステップS3)は完了する。
異常値評価機能70およびこの異常値評価機能70が行う異常値評価ステップ(ステップS3)によれば、運転データ管理装置30のプラント管理用計算機37が備える管理値設定手段46が上述した管理値設定行程を行うことにより、設定した3個の管理値(P,A,T)と、設定した管理値によって区分される4つの領域(正常域、前置警報域、警報域、停止域)を使用することができる。従って、運転データ(現在値)がどの領域にあるかを図1に示す表示手段39に表示するだけで、ユニット31がどのような状態にあるかを直感的に知ることができる。
また、従来のように1日平均値を用いず、運転データの最短周期(ここでは、1分周期)で取り込まれる現在値を用いて異常の進展状況を追跡するので、異常値発生時においてより正確かつ迅速に異常値の進展状況を監視する異常値評価機能70を提供でき、従来よりも異常値を有効に監視する異常値監視部57を構成することができる。
パターン監視機能71は、パターン監視の実行要求があり、運転データ状態チェック部56から運転データを受け取ると、ステップS4のパターン監視ステップを行う。パターン監視機能71は、パターン監視ステップとして、正常な運転状態において取得した一の運転状態値と他の運転状態値とが示す相関関係を基本パターンとし、この基本パターンからの逸脱の有無およびその程度を監視する。この基本パターンは、正常な過渡運転で得られる運転データの包絡線として定義できる。
監視対象となっている運転データの現在値が、基本パターンから逸脱する状況として考え得る状況は、機器は正常であるが過渡運転が厳しい状況にある、または、通常の過渡運転であるものの機器に何らかの異常が発生しているという2つの状況が考えられる。従って、パターン監視は、現在値の異常を監視する異常値監視の1つ方法として有効と思われる。
図7は、パターン監視機能71がパターン監視ステップを行い、パターン監視結果として表示手段39に表示される説明図であり、一例として、蒸気タービンの正常な過渡運転状態における蒸気タービン負荷と任意段落の温度との関係を表す相関図を示したものである。
図7によれば、パターン監視結果は、負荷の割合(図中、負荷割合)を横軸、温度を縦軸にとり、蒸気タービンのHeat Balance計算点である、1/4、2/4、3/4および4/4の各負荷における当該段落の計算温度(理論値)を結ぶと、一次関数的な相関(直線)が得られる。この得られた直線が負荷の割合と温度との基本パターンである。尚、計算温度(理論値)を結んで得られる直線を基準線75とする。
図7に示す事例の場合、負荷変化運転が準静的に行われるならば、当該段落温度の実測値は、この基準線75からほとんど外れることはない。従って、この線の近傍に、変動を許容できる若干の幅(以下、管理幅とする)を設定し、現在値が設定した管理幅に有るか否かを監視すれば、経年的な劣化等による定常値としての変化を監視することができる。尚、管理幅の設定は、基準線75と平行な管理線76を基準線75の上方と下方とに設定することで行う。
また、図7に示す事例において、規定の負荷変化速度で過渡運転を行った場合、当該段落温度の管理幅が、第2の管理線77,77の距離で表わされるとした時、同じ負荷変化速度での過渡運転において第2の管理線77,77で設定される管理幅を逸脱すると、機器への何らかの異常の発生を疑うことになる。
尚、パターン監視機能71がパターン監視ステップを行う際に使用する基本パターンは、図7に示す事例に限定されることはなく、他の事例であっても良い。より具体的には、真空上昇曲線、タービン起動曲線、回転降下曲線等、種々の過渡運転への適用が考えられる。
運転データ状態チェック部56から運転データを受け取り、パターン監視機能71がパターンを監視すると、パターン監視の結果は、図2に示す異常値監視評価結果として表示手段39に出力される。表示手段39に出力された監視結果は、図7に示すように受け取った現在値の相関(図7において*を結ぶ線)が基本パターンからどの程度ずれているかを認識できる形式で表示手段39に表示される。表示手段39にパターン監視の監視結果が表示(パターン監視結果表示)されると、パターン監視ステップ(ステップS4)は完了する。
パターン監視機能71およびこのパターン監視機能71が行うパターン監視ステップ(ステップS4)によれば、運転データの過渡運転状態における運転特性としての通常域からの逸脱状況を監視することができるので、従来では検出されない経年的な劣化等を検出することができる。つまり、従来と異なった形式の異常監視を行うことができる。
累積値監視機能72は、累積値監視の実行要求があり、運転データ状態チェック部56から運転データを受け取ると、ステップS5の累積値監視ステップを行い、運転データのうち累積値に制限がある管理項目について累積値のカウントを行い監視する。累積値監視ステップでなされる累積値監視の例としては、例えば、寿命予測曲線(Master Curve)を使った方法があげられる。
図8は、Master Curve(累積運転時間と寿命消費量との関係曲線)80の一例を示す説明図である。
Master Curve80は予め定められており、そのデータは、運転データ管理用DB50に格納されている。累積値監視機能72は、Master Curve80のデータを読み出して、累積運転時間と寿命消費量との関係を利用すれば、累積運転時間から対応する寿命消費量を知ることができる。同様に、累積運転時間と寿命消費量との関係を利用すれば、累積運転時間または寿命消費量について管理値を設定し、設定した管理値に到達する寿命消費量または累積運転時間を求めることができる。
例えば、現在の累積運転時間をaとすれば、図8に示すMaster Curve80を利用することで、対応する寿命消費量bを知ることができる。また、管理値として寿命消費量0.8を設定した場合、累積値監視機能72は、図8に示すMaster Curve80と管理値(ここでは、寿命消費量0.8)から管理値に到達する累積運転時間cを知ることができる。
運転データ状態チェック部56から運転データを受け取り、累積値監視機能72が累積値を監視すると、その監視結果は、図2に示す異常値監視評価結果として表示手段39に出力される。Master Curve80を利用して求めた結果を表示手段39に表示することで、ユーザに現時点でどの程度の寿命消費がされているのかについて情報提供したり、予告または警告を促すことができる。表示手段39に累積値の監視結果が表示(累積値監視結果表示)されると、累積値監視ステップ(ステップS5)は完了する。
尚、蒸気タービンに関して、この範疇にあるさらに複雑な例としては、主蒸気および再熱蒸気の、定格温度を越えての高温側への許容変動量に関する制限が挙げられる。この制限条件は、JIS B8101に規定されており、その監視方法については、既に、特公昭63−8281にも提案されているので、ここでの説明は省略する。
特定の運転データの累積値が、予め定められた管理値に到達するか否かを監視する累積値監視ステップ(ステップS5)は、現在値の異常を監視する異常値監視行程において、異常を監視する上で重要な処理ステップの一つである。
累積値監視機能72およびこの累積値監視機能72が行う累積値監視ステップによれば、運転データの経年的な運転履歴の積み重ねに基づく損傷の発生に対しても適切な警告情報を得るという異なった形式の異常監視を行うことができる。
従って、異常値監視部57およびこの異常値監視部57が行う異常値監視行程によれば、1分周期で取り込まれる現在値をベースとして異常の進展状況を追跡することができるので、異常値発生時において、従来よりも異常値を有効に監視することができる。また、従来とは異なる監視方法を行うパターン監視機能71および累積値監視機能72とを有するので、従来よりも異常値を幅広い視点で監視することができる。
さらに、現在値に基づく機器の異常に関する情報を保守情報として補修員へ提供することができ、従来から行われている運転員への運転支援(運転データの現在値に基づく対応運転操作)のみならず、保守支援をも行うことができる。このような保守情報の提供を行い得る異常値監視部57を構成することにより、いわゆる状態監視保全を実現できる手段を構成することができる。
尚、図1に示す例では、異常値監視部57は、異常値評価機能70、パターン監視機能71および累積値監視機能72を有するが、これらの機能は、必ずしも全てを有する必要はなく、そのユニットにおける監視要求の度合に応じて、適宜、削除しても構わない。
また、異常値評価機能70が行った評価結果は、必ずしも、図5に示す状態変化時系列表60や図6に示すような推移グラフで表示される必要はない。ユーザが異常値の推移を認識できる形式であれば任意で良い。同様に、パターン監視機能71および累積値監視機能72についてもユーザが認識できる形式であれば任意で良い。
図9に定常値監視評価手段48のより詳細な構成と定常値監視評価手段48が行う定常値監視評価行程との関係を説明する説明図を示す。
定常値監視評価手段48は、同一運転状態においては同一の値を示すと考えられる運転データ(定常値)について、その長期的な変化傾向を評価するよう構成されたものであり、図4に示す正常/異常判定ステップ(ステップS2)において、運転データ状態チェック部56が正常域にある(ステップS2でYES)と判断した現在値について、定常値監視評価行程を行う。
定常値監視評価手段48が定常値監視評価行程を行い、定常値について長期的な変化傾向を評価するのは、突変であれ、安定的な変化であれ、何らかの変化の傾向が見られるならば、機器の内部に何らかの異常が発生したと考えるのが自然である。事実、機器の性能診断技術においては、経年的に徐々に進行する劣化現象に基づく運転データのわずかな変化の発生を検知し、検知した変化の様相を分析することによって原因を診断する方法が一般的に採用されている。
図9によれば、定常値監視評価手段48は、入力された定常値の監視を行う定常値監視手段と、入力された定常値の評価を行う定常値評価手段とに大別でき、定常値監視手段は、データ収録および集計の前処理を行う前処理実行部85と、データ収録および集計処理を行うデータ収録集計部86とを備える一方、定常値評価手段として収録し集計されたデータを読み出し表示手段39に出力して表示手段39に表示させることにより定常値の評価を行う定常値評価部87を備える。
また、定常値監視評価手段48が行う定常値監視評価行程(ステップS11〜ステップS23)は、定常値監視評価手段48が、前処理実行部85、データ収録集計部86および定常値評価部87とを備えることから、前処理実行部85が行う前処理実行行程、データ収録集計部86が行うデータ収録集計行程および定常値評価部87が行う定常値評価行程を備える。
前処理実行部85は、管理用負荷帯に到達しているか否かを確認する管理用負荷帯到達確認機能89と、ユニット31が安定して運転しているか否かを確認する安定運転確認機能90と、現在値監視手段47において停止中と判断された場合において停止中データを作成する停止中データ作成機能91とを有する。
一方、前処理実行部85が行う前処理実行行程(ステップS11〜ステップS13)は、管理用負荷帯到達確認機能89が管理用負荷帯に到達しているか否かを確認する管理用負荷帯到達確認ステップ(ステップS11)と、安定運転確認機能90がユニット31の運転状態が安定しているか否かを確認する安定運転確認ステップ(ステップS12)と、現在値監視手段47から停止中である旨の信号を受信した際に停止中データ作成ステップ(ステップS13)とを備える。
データ収録集計部86は、運転データ(現在値)を受け取り、受け取った運転データを収録するデータ収録機能92と、比較的短期間におけるデータ集計を行う短周期データ集計機能93と、より長期間におけるデータ集計を行う長周期データ集計機能94とを備える。
一方、データ収録集計部86が行うデータ収録集計行程(ステップS14〜ステップS18)は、データ収録機能92が運転データ(現在値)を受け取り、受け取った運転データを収録するデータ収録ステップ(ステップS14)と、短周期データ集計機能93が比較的短期間におけるデータ集計を行う短周期集計ステップ(ステップS15〜ステップS16)と、長周期データ集計機能94がより長期間におけるデータ集計を行う長周期集計ステップ(ステップS17〜ステップS18)とを備える。
定常値評価部87は、データ収録集計部86が収録し集計したデータを読み出して、読み出したデータを表示手段39に出力し、表示手段39に読み出したデータを表示させることで定常値を評価する定常値評価行程(ステップS19〜ステップS23)を行う。定常値評価部87は、データ収録集計部86が収録し集計したデータを読み出し、出力する。表示手段39に読み出したデータを出力されると、表示手段39には、例えば、図6と略同様の推移グラフが表示される。
次に、定常値監視評価手段48の前処理実行部85、データ収録集計部86および定常値評価部87および前処理実行部85が行う前処理実行行程、データ収録集計部86が行うデータ収録集計行程および定常値評価部87が行う定常値評価行程について説明する。
前処理実行部85は、現在値監視手段47から正常域にあると判断された運転データを受け取ると、前処理実行行程を開始する。前処理実行行程では、まず、管理用負荷帯到達確認機能89が管理用負荷帯に到達しているか否かを確認する管理用負荷帯到達確認ステップ(ステップS11)がなされる。
管理用負荷帯に到達しているか否かを確認は、当該負荷で一定時間の連続運転が完了したことで定義される安定負荷運転状態にあるか否かで確認する。この際の管理用負荷帯は、発電用大型蒸気タービンの場合は、通常Heat Balance計算点である、1/4、2/4、3/4および4/4定格負荷が選ばれる。尚、これらの負荷と、当該ユニットの常用負荷帯との入替や、追加・削除は適宜行うことができる。
管理用負荷帯到達確認機能89が所定の管理用負荷帯に到達しているか否かを確認し、到達していない場合(ステップS11でNOの場合)、ステップS11に戻り、再度ステップS11の管理用負荷帯到達確認ステップがなされる。一方、管理用負荷帯到達確認機能89が管理用負荷帯に到達しているか否かを確認し、到達している場合(ステップS11でYESの場合)、管理用負荷帯到達確認ステップを完了し、ステップS12で安定運転確認ステップがなされる。
安定運転確認機能90が行う安定運転確認ステップ(ステップS12)では、ユニット31の運転状態が安定しているか否かを確認する。安定運転状態の確認は、一般的に、一定時間、通常系統負荷変動(2−3%)内に収まる範囲内での負荷変動を許容して、一定負荷が継続されることを確認することで行われる。ここでは、一定時間の例として1時間の場合を説明するが、必ずしもこの1時間に拘る必要はなく、任意に設定できる。
安定運転確認機能90が安定運転状態にあるか否かを確認し、安定運転状態にない場合(ステップS12でNOの場合)、ステップS12に戻り、再度ステップS12の管理用負荷帯到達確認ステップがなされる。一方、安定運転確認機能90が安定運転か否かを確認し、安定運転状態にある場合(ステップS12でYESの場合)、安定運転確認ステップを完了し、前処理実行行程を完了する。
また、前処理実行部85は、現在値監視手段47から停止中である旨の信号を受け取った場合にも、前処理実行行程としての停止中データ作成ステップ(ステップS13)を開始する。停止中データとは、ユニット31が停止しているにもかかわらず、運転データ管理装置30が運転中の場合において、運転データの値を強制的に“0.0”にした運転状態データをいう。前処理実行部85の停止中データ作成機能91が、運転データの値を強制的に“0.0”として停止中データを作成すると、停止中データ作成ステップを完了し、本ステップの完了をもって前処理実行行程を完了する。
このように対象運転データの値を強制的に“0.0”として停止中データを作成する停止中データ作成ステップを行うことで、対象ユニット31が停止しているにもかかわらず、運転データ管理装置30が運転中の場合に、運転状態データが何らかの数値で伝送されることがなくなり、後述する定常値監視評価行程において、表示手段39に表示されるユニット31の運転状態の識別、すなわち、運転中であるか停止中であるかが一目でわかるようになる。
また、停止後の起動においても、推移表示を参照すれば、停止の事実を知ることができるので、ユニット停止中に部品の更新や改造等の大規模な工事が行われた場合に必要になるデータ管理の初期化のタイミングをユーザは視認できようになり、初期化の見逃し防止に貢献できる。
前処理実行部85およびこの前処理実行部85が、前処理実行行程(ステップS11〜ステップS13)を行うことで、管理用負荷帯に到達しているか否かおよびユニット31の運転状態が安定しているか否かを確認することができるので、後述するデータ集計行程において、定常状態にある運転データのみを選別してデータを集計できる。従って、「正常」と判断されたデータについては比較的長期的周期で保存する等の処置を行いやすく、この種のシステムで発生しがちなデータ容量の過大化を避けることができる。
また、対象ユニット31が停止しているにもかかわらず、運転データ管理装置30が運転中の場合、対象運転データの値を強制的に“0.0”にした運転状態データを作成するので、表示手段39に表示されるユニット31の運転状態(運転中または停止中)の識別が一目で行い得る。
尚、停止中データ作成ステップにおいて、前処理実行部85が強制的に“0.0”にした運転データを作成しているが、必ずしも“0.0”でなくても良い。ユニット31の運転状態を一目で区別できるのであれば、任意の標識(文字、図、数字、記号等)であっても良い。
このような前処理実行部85が、前処理実行行程(ステップS11〜ステップS13)を行うと、次に、データ収録集計部86がデータ収録集計行程(ステップS14〜ステップS18)を行う。データ収録集計行程では、まず、データ収録機能92がデータ収録ステップ(ステップS14)を行い、1時間単位表示表96を表示手段39に表示可能なテーブルデータを運転データ管理用DB50として作成する。尚、図9においては、データ内容を明確に区別する観点から表のテーブルデータを表とみなして図示し、表と同じ符号を付して説明する。
図10はデータ収録機能92が運転データを収録して作成した1時間単位表示表96のテーブルデータが表示手段39に表示された状態を示す説明図である。
図10によれば、1時間単位表示表96には、管理負荷帯を表す管理負荷欄98、運転データの種類を示すPID NO欄61、運転データを取得した日付および1時間単位の時刻を示す日時欄99、取得した現在値を示す現在値欄63、運転データの状態がどの領域にあるかを示す状態監視欄および運転状態の傾向を監視する傾向監視欄が設けられている。
1時間単位表示表96の状態監視欄は、所定時刻において運転データの状態がどの領域にあるかを示すものであり、図3に示す正常域にあることを示すN欄101と、前置警報域にあることを示すP欄102と、警報域にあることを示すA欄103と、停止域にあることを示すT欄104とを有する。
また、傾向監視欄は、上限値欄105、下限値欄106、平均値欄107および設計値欄108とを有するが、データ収録機能92は、これらの欄において、次のような処理を行う。
上限値欄105においては、取り込まれた運転データが、既存値を上回った時点で更新する。初期データとして、設計値、あるいは、その2−3%上の値を入れておいても良い。下限値欄106においても同様にして、取り込まれた運転データが、既存値を下回った時点で更新する。初期データとして、設計値、あるいは、その2−3%下の値を入れておいても良い。
平均値欄107においては、運転データが取り込まれる度に以下の式を用いて計算を行い計算結果を新たな平均値として更新する。
[数3]
A(mean)n= 1/n[An+(n−1)×A(mean)n−1] …(1)
ここで、
A(mean)n : 運転データn回取り込み後の平均値
A(mean)n−1: 前回取り込み時点での平均値
n : 運転データ取り込み回数
An : 今回取り込んだ運転データ
設計値欄108においては、Heat Balance計算等で得られた理論値が予め入力されており、データ更新はなされない。また、理論値が存在しない場合には、空欄でも良い。
前処理実行部85は、1分単位で運転データを受け取る度に、上限値欄105、下限値欄106および平均値欄107のデータ更新を行う。そして、日時欄99に記載された、例えば、1:00等の所定の時刻になると、状態監視欄にその時刻(1:00)における運転データの状態を記録して、次の行、すなわち、日時欄99において2:00の行において、1分単位で運転データを受け取る度に、上限値欄105、下限値欄106および平均値欄107のデータ更新を行う。このように運転データ収録の周期(以下、データ収録周期とする)を1時間として、各時間毎にデータ収録を繰り返し行い、1時間単位表示表96のテーブルデータを作成し更新する。
尚、図10に示す例によれば、データ収録機能92が運転データを収録し集計する1時間単位表96の各時間において、平均値の算出を正時に行うことになるが、必ずしも正時でなくても良い。しかしながら、平均値の算出を正時に行うデータ収録機能92を構成すれば、暦日時間だけに従った機械的なデータ集計が可能となり、運転データ管理装置30の動作を単純化することができるメリットがある。
データ収録機能92およびこのデータ収録機能92が行うデータ収録ステップによれば、個々の運転データについて、上限値、下限値および平均値が、時間経過と共に自動的に更新され、それ以降の任意の時点において、上下限幅および平均値を知ることが可能になる。従って、運転データ管理装置30をある程度の時間使用すれば、自動的に更新される上限値、下限値および平均値を管理値(静的管理値)を設定する際に使用することができる。
また、上限値欄105と下限値欄106とは、別個独立の欄であり、上限値および下限値は個別に求めることができるので、必ずしも図3に示すように設計値から上下に同じ許容変動幅Pを設定する場合に限らず、上限値と下限値とを別個に設定することもできる。
尚、1時間単位表示表96における状態監視欄は、必ずしも、図10に示す個数または形式に限定されない。ここでは、運転データ状態チェック部56が正常/異常判定ステップで判断する正常域を図3に示す正常域および前置警報域としていることからN欄101とP欄102とを有していれば十分ともいえる。
しかしながら、正常域をどのように設定するかによって前処理実行部85が受け取る運転データの運転状態は異なるので、この点を考慮した必要な欄の数を確保することが必要となる。例えば、運転データ状態チェック部56が正常/異常判定ステップで判断する正常域の定義を停止域以外の領域とすれば、N欄101、P欄102およびA欄103を最低限有する必要が生じる。
また、1時間単位表示表96の状態監視欄の形式については、ユーザがどのような運転状態にあるかを視認できればどのような形式であっても差し支えない。例えば、図3に示す正常域欄65、前置警報域欄66、警報域欄67および停止域欄68を有する構成としても良い。
さらに、1時間単位表示表96の傾向監視欄についても、図10に示す形式に限定されない。ユーザがどの項目を表しているかを視認できればどのような形式で表示されていても良い。例えば、上限値、下限値、平均値、設計値を他の標識(文字、図、数字、記号等)で表しても差し支えない。
データ収録機能92がデータ収録ステップ(ステップS14)を行い、例えば、4時間等のある一定時間のデータの収録が完了すると、データ収録機能92がデータ収録ステップを継続しつつ、短周期データ集計機能93が比較的短期間におけるデータ集計を行う短周期集計ステップ(ステップS15〜ステップS16)を開始する。ここでいう短期間とは、数十分程度〜数ヶ月程度の期間を意味し、より好ましくは1時間〜1ヶ月である。
短周期データ集計機能93が行う短周期集計ステップは、24時間集計表110のテーブルデータの作成および更新を行う24時間集計表データ作成更新ステップ(ステップS15)と、1ヶ月集計表111のテーブルデータの作成および更新を行う1ヶ月集計表データ作成更新ステップ(ステップS16)とを備える。
ここで、図11は、短周期データ集計機能93が1時間単位表示表96のテーブルデータを集計して作成およびデータ更新する24時間集計表110のテーブルデータを、図12は、短周期データ集計機能93が24時間集計表110のテーブルデータを集計して作成およびデータ更新する1ヶ月集計表111のテーブルデータを表示手段39に表示された状態を示す説明図である。
図11によれば、24時間集計表110には、時間または時間平均を表す時間欄113、1時間単位表示表96における現在値を示す現在値欄63、上限値を示す上限値欄105、下限値を示す下限値欄106、平均値を示す平均値欄107およびこの1時間における現在値がどの運転状態にあったかを示す異常度欄114が設けられる。
時間欄113には、表の集計時間よりも短い所定時間(以下、部分期間とする)毎の時間平均を記入する時間平均行116と、24時間の平均を記入する24時間平均行117が設けられており、平均値欄107に各平均値のデータが記録される。通常、上記所定時間と時間平均116の個数との積は24となるように設定される。図10に示す例では、所定時間を4時間とし、6つの時間平均行116が設定されている。
時間平均行116を設定するメリットは、次の段階(次に長い周期、ここでは、1ヶ月)の集計表、すなわち、1ヶ月集計表111におけるデータ集計の精度を向上させることができる点にある。つまり、後述する定常値評価行程において1ヶ月推移表示させる際の精度を向上させることができる点にある。
24時間平均行117には、時間平均行116の行を無視した各時間の平均値を24時間分の平均値のデータが平均値欄107に記録される。尚、24時間平均行117の平均値欄107に記録される平均値のデータは、時間平均行116の平均値欄107に記録される平均値を平均して得られる平均値データでも良い。
異常度欄114は、図10に示した1時間単位表示表96の現在値が、どの運転状態にあったかを確認するための欄である。例えば、図10に示す1時間単位表示表96の状態監視欄にならえば、N、P、A、T等の記号を用いて記録される。尚、異常度欄114に記入される記号は、必ずしも1時間単位表示表96の状態監視欄にならう必要はない。ユーザが確認できるような形式で記入されれば任意で良い。
一方、図12によれば、1ヶ月集計表111は、日付を示す日付欄119と、24時間平均値を示す24時間平均欄120と、24時間集計表110における時間欄113における時間平均行116と同一の時間の平均を示す時間平均欄121とを有する。従って、時間平均欄121の個数は、24時間集計表110における時間欄113の時間平均行116の個数と同一となる。
また、日付欄119には、24時間集計表110における時間欄113と同様に1ヶ月に対する部分期間(所定日数)における平均を示す日平均行123と、1ヶ月集計表111の当該1ヶ月間の平均を示す月平均行124とを有する。図12に示す日平均行123と月平均行124との関係は、図11で示す時間平均行116と24時間平均行117との関係と同様である。
尚、所定日数は、1日単位で任意に設定できるが、図12に示す所定日数は、データ整理の便宜上の観点から月を上旬、中旬、下旬で分割するべく、上旬および中旬は10日単位、下旬は残り日数(8〜11日)で設定しているので、日平均を旬平均とし、図12では、日平均行123を旬平均行123としている。
短周期データ集計機能93は、データ収録ステップ(ステップS14)において作成される1時間単位表示表96のテーブルデータが、例えば、4時間等の所定時間分蓄積されると、短周期集計ステップとして、まず、ステップS15の24時間集計表データ作成更新ステップを開始する。24時間集計表データ作成更新ステップでは、24時間集計表110のテーブルデータを運転データ管理用DB50として作成する。
24時間集計表110のテーブルデータの作成および更新は、現在値欄63、上限値欄105、下限値欄106、平均値欄107および異常度欄114におけるデータを作成および更新することでなされ、短周期データ集計機能93が1時間単位表示表96の対応するテーブルデータをデータ収録機能92から受け取り、受け取ったデータを記入することで行う。
尚、データを受け取り、データ集計を行う周期は、データ収録ステップにおいて1時間単位表示表96におけるデータ収録周期(1時間)以上であれば任意で良いが、定常値評価行程において有効に運転データの1ヶ月推移表示を行う観点からすれば、4時間(24時間に対する部分期間として設定された所定時間)に1度、より好ましくは1時間に1度である。
また、短周期データ集計機能93がデータ集計する24時間集計表110の24時間平均および1ヶ月集計表111の月平均の平均値を算出するタイミングは任意で良いが、24時間集計表110における24時間平均の平均値を24:00および1ヶ月集計表111における月平均の平均値を月末の24:00に算出する短周期データ集計機能93を構成すれば、暦日時間だけに従った機械的なデータ集計が可能となり、運転データ管理装置30の動作を単純化することができるメリットがある。
このようにして、例えば、24時間等の24時間平均の集計が完了すると、短周期データ集計機能93は、24時間集計表データ作成更新ステップを継続しつつ、続いて、1ヶ月集計表データ作成更新ステップ(ステップS16)を開始する。
1ヶ月集計表データ作成更新ステップでは、1ヶ月集計表111のテーブルデータを運転データ管理用DB50として作成する。1ヶ月集計表111のテーブルデータの作成および更新は、24時間平均欄120および時間平均欄121におけるデータの作成および更新を行うことでなされ、短周期データ集計機能93が1ヶ月集計表111のテーブルデータの時間平均行116および24時間平均行117に記入されるテーブルデータを読み出して、24時間平均欄120および時間平均欄121に記録することで行う。
このようにして、例えば、10日等の10日平均の集計が完了すると、短周期データ集計機能93は、1ヶ月集計表データ作成更新ステップを継続しつつ、続いて、長周期データ集計機能94がより長期間におけるデータ集計を行う長周期集計ステップ(ステップS17〜ステップS18)を開始する。ここでいう長期間とは、半年以上であり、稼動期間(トータルライフ:Total Life)が半年以上であれば、半年〜稼動期間の期間を意味する。この長期間は、より好ましくは、1年〜稼動期間である。
長周期データ集計機能94が行う長周期集計ステップは、1年間集計表126のテーブルデータの作成および更新を行う1年間集計表データ作成更新ステップ(ステップS17)と、トータルライフ年数集計表127のテーブルデータの作成および更新を行うトータルライフ集計表データ作成更新ステップ(ステップS18)とを備える。
ここで、図13は、長周期データ集計機能94が1ヶ月集計表111のテーブルデータを集計して作成およびデータ更新する1年間集計表126のテーブルデータを、図14は、長周期データ集計機能94が1年間集計表126のテーブルデータを集計して作成およびデータ更新するトータルライフ集計表127のテーブルデータを表示手段39に表示された状態を示す説明図である。
図13によれば、1年間集計表126には、何月または月平均を表す月欄129、1ヶ月集計表111における日平均(旬平均)行123の平均値を記入する日平均(旬平均)欄130および月平均行124の平均値を記入する月平均欄131が設定される。
また、月欄129には、1年に対する部分期間(所定月数)の平均(ここでは、3ヶ月とした季節平均)を記入する季節平均行133と、1年の平均を記入する1年平均行134とが設けられている。図13に示す季節平均行133と1年平均行134との関係は、図11で示す時間平均行116と24時間平均行117との関係と同様である。
尚、本表126においては、季節の設定を、春(3月〜5月)、夏(6月〜8月)、秋(9月〜11月)、冬(12月〜2月)としているが、必ずしも、図13に示すケースに限定されない。設定は、ユニット31の設置される場所等によって異なるからである。また、必ずしも、季節平均行133は、3ヶ月単位で季節平均を取る必要はなく、例えば、2ヶ月毎等の何ヶ月(1ヶ月単位)の月平均としても良い。
図14によれば、トータルライフ集計表127は、稼動年数を示す稼動年数欄136と、1年間集計表126における季節平均行133の平均値を記入する季節平均欄137と、年平均行134の平均値を記入する年平均欄138とを有する。また、稼動年数を示す稼動年数欄136には、稼動年の年平均を示す稼動年数平均行138が設けられる。
長周期データ集計機能94は、1ヶ月集計表データ作成更新ステップ(ステップS16)において作成される1ヶ月集計表111のテーブルデータが、例えば、10日間等の一定日数分蓄積されると、長周期集計ステップとして、まず、ステップS17の1年間集計表データ作成更新ステップを開始する。
1年間集計表データ作成更新ステップでは、1年間集計表126の日平均欄130および月平均欄131におけるデータの作成および更新を行う。1年間集計表126の日平均欄130および月平均欄131におけるデータの作成および更新は、長周期データ集計機能94が1ヶ月集計表111の対応するテーブルデータを短周期データ集計機能93から受け取り、受け取ったデータを記入することで行う。
尚、長周期データ集計機能94がデータ集計する1年間集計表126の年平均の平均値を算出するタイミングは任意で良いが、1年間集計表126における年平均の平均値を年末の24:00に算出する長周期データ集計機能94を構成すれば、暦日時間だけに従った機械的なデータ集計が可能となり、運転データ管理装置30の動作を単純化することができるメリットがある。
このようにして、例えば、1季節(3ヶ月)が経過し、季節平均の集計が完了すると、長周期データ集計機能94は、1年間集計表データ作成更新ステップを継続しつつ、続いて、トータルライフ集計表データ作成更新ステップ(ステップS18)を開始する。
トータルライフ集計表データ作成更新ステップでは、トータルライフ集計表127の季節平均欄137および年平均欄138におけるデータの作成および更新を行う。トータルライフ集計表127の季節平均欄137および年平均欄138におけるデータの作成および更新は、長周期データ集計機能94が1年間集計表126の対応するテーブルデータを記入することで行う。このようにして、例えば、3ヶ月等の一定月数が経過し、季節平均が集計される度にトータルライフ集計表127の季節平均欄137および年平均欄138におけるデータの作成および更新が継続される。
短周期データ収集機能93および長周期データ収集機能94と、短周期データ収集機能93および長周期データ収集機能94が行う短周期データ収集ステップおよび長周期データ収集ステップによれば、定常値を時間単位から年単位にわたる運転データの推移を何段階かに分けて、各段階毎にテーブルデータとして集計するので、精度の良い定常値の変化の監視を行うことができる。従って、運転状態値の変化の速度、すなわち、対象機器部品の劣化速度が、数時間から1日にわたるものでも、数日から月単位のものでも、数ヶ月から年単位のものでも、または、数年に亘って変化するものであったとしても、いずれかのテーブルデータで対応できる。
また、データ収集時には、部分期間における平均値を算出しておき、次の段階に含めることによって、データ集計の精度が向上するので、後述する定常値評価行程における推移表示の精度を向上させることができる。
さらに、データ収録集計部86およびこのデータ収録集計部86が行うデータ収録集計行程において、平均値を算出するタイミングを暦日時間基準とし、データ収録機能92が運転データを収録し集計する1時間単位表96の各時間における平均値については正時、短周期データ集計機能93がデータ集計する24時間集計表110の24時間平均および1ヶ月集計表111の月平均については、それぞれ、24:00および月末の24:00、長周期データ集計機能94がデータ集計する1年間集計表126の年間平均およびトータルライフ集計表127の稼動年平均においては共に年末の24:00とすれば、ユニット31の運転状態に依存することなく、暦日時間だけに従った機械的なデータ集計が可能になり、運転データ管理装置30の動作を単純化することができる。
このようなデータ収録集計部86がデータ収録集計行程(ステップS14〜ステップS18)を行うと、ユーザ要求に応じて、定常値評価部87は、定常値を評価する定常値評価行程(ステップS19〜ステップS23)を行うことができる。
定常値評価行程とは、定常値評価部87が、データ収録集計部86が収録し集計したテーブルデータを読み出して、読み出したデータを表示手段39に出力し、表示手段39に読み出したデータを表示させる処理行程である。
定常値評価行程は、状態変化時系列表60のテーブルデータを読み出して1時間分の運転データの推移を表示する1時間表示ステップ(ステップS19)と、24時間集計表110のテーブルデータを読み出して24時間分の運転データの推移を表示する24時間表示ステップ(ステップS20)と、1ヶ月集計表111のテーブルデータを読み出して1ヶ月分の運転データの推移を表示する1ヶ月表示ステップ(ステップS21)と、1年間集計表126のテーブルデータを読み出して1年分の運転データの推移を表示する1年間表示ステップ(ステップS22)と、トータルライフ集計表127のテーブルデータを読み出して全稼働時間(トータルライフ)における運転データの推移を表示するトータルライフ表示ステップ(ステップS23)とを備える。
定常値評価行程における1時間表示ステップ(ステップS19)では、定常値評価部87が、状態変化時系列表60のテーブルデータを読み出して、読み出したデータを表示手段39に出力する。読み出したデータが表示手段39に出力されると、表示手段39は、現在から過去1時間分の運転データの推移を、例えば、図5に示す状態変化系列表60や図6に示した推移グラフの形式で表示する1時間推移表示を行う。現在から過去1時間分の運転データの推移が表示手段39に表示されると、1時間表示ステップ(ステップS19)は完了する。
24時間表示ステップ(ステップS20)では、1時間表示ステップと同様にして、現在から過去24時間分の運転データの推移を表示手段39に表示する24時間推移表示を行う。そして、1ヶ月表示ステップ(ステップS21)では、1時間表示ステップや24時間表示ステップと同様に、1ヶ月推移表示を行い、1年間表示ステップ(ステップS22)では、1年間推移表示を行い、トータルライフ集計表127のテーブルデータを読み出してトータルライフ表示ステップ(ステップS23)では、トータルライフ推移表示を行う。
図15から図18は、運転状態の推移表示の一例を説明する説明図であり、図15は、24時間の運転状態の推移を表す24時間推移グラフの一例、図16は、1ヶ月の運転状態の推移を表す1ヶ月推移グラフの一例、図17は、1年の運転状態の推移を表す1年推移グラフの一例、図18は、トータルライフの運転状態の推移を表すトータルライフ推移グラフの一例である。
図15〜図18によれば、縦軸については運転データの値であり、横軸については時間である点においては、図6に示す推移グラフと同様であるが、最小単位および最大値が異なる。そこで、図15においては、推移グラフのうち、横軸部分(図15に示すI部)を拡大し、拡大箇所に焦点をあてて説明する。尚、図16〜図18においては、図15における拡大箇所(図15に示すI部)、すなわち、横軸部分のみを拡大して示す。
図15によれば、時間の最小単位は1時間であり、横軸は、1時間単位の最小単位線140と、例えば、4時間等の所定時間毎の区切りの単位線である中単位線141とが引かれており、横軸の最大値が現在値となる。最小単位線140が引かれる最小単位は、24時間集計表110のテーブルデータにおいて最小単位時間が何時間かによって、決定され中単位線141が引かれる中単位は、時間平均行116を設定する所定時間によって決定される。
図16では、図15に示す時間軸の拡大箇所に相当する箇所をさらに拡大した箇所をII部に示している。図16によれば、図15の場合に加えて、中単位線141が引かれる中単位が幾つかまとまった大単位線142がさらに設けられている。
図16においては、最小単位線140が引かれる最小単位は4時間、中単位線141が引かれる中単位は24時間、大単位線142が引かれる大単位は10日である。最小単位線140が引かれる最小単位は、図12に示す1ヶ月集計表111のテーブルデータにおいて時間平均の所定時間(4時間)に対応しており、この時間が何時間かによって決定される。また、中単位線141が引かれる中単位は、24時間平均に対応しており、大単位線142が引かれる大単位は、日平均(旬平均)に対応している。
図12に示す1ヶ月集計表111のテーブルデータでは、部分期間(4時間)の平均値を含んでいることにより、含んでいない場合では、最小単位線140が引かれる最小単位が24時間(1日)となるところを4時間とすることを可能にしている。尚、部分期間を細かくとれば表示精度も向上するが、表示しようとする推移グラフの時間軸の単位目盛に依存するので、無闇に細かくすれば良いというものではない。
図17については、図16と同様の考え方ができ、図17の場合には、最小単位線140が引かれる最小単位が10日、中単位線141が引かれる中単位が1ヶ月、大単位線142が引かれる大単位は3ヶ月である。一方、図18の場合は、図15と同様の考え方ができ、最小単位線140が引かれる最小単位が3ヶ月、中単位線141が引かれる中単位が1年となっている。
定常値評価部87およびこの定常値評価部87が行う定常値評価行程によれば、運転データの変化速度、すなわち、対応機器の劣化速度が比較的早くても、あるいは、ゆっくり進行していても、それらに対応した期間に該当する集計表のテーブルデータを保有しているので、これらを表示手段39に表示させることにより、変化の状況を正確に把握することができる。従って、より適切な監視およびメンテナンス作業を行い得る。
このような定常値監視評価手段48およびこの定常値監視評価手段48が行う定常値監視評価行程によれば、定常状態にある運転データのみを選別してデータを集計できる。従って、「正常」と判断されたデータについては比較的長期的周期で保存する等の処置を行いやすく、この種のシステムで発生しがちなデータ容量の過大化を避けることができる。
また、対象ユニット31が停止しているにもかかわらず、運転データ管理装置30が運転中の場合、対象運転データの値を強制的に“0.0”にした運転状態データを作成するので、表示手段39に表示されるユニット31の運転状態(運転中または停止中)の識別が一目で行い得る。
さらに、定常値を時間単位から年単位にわたる運転データの推移をテーブルデータとして集計するので、精度の良い定常値の変化の監視を行うことができる。従って、運転状態値の変化の速度、すなわち、対象機器部品の劣化速度が、数時間から数年に亘って変化するものまで、該当する集計表のテーブルデータを用いて、表示手段39に表示させることにより、変化の状況を正確に把握することができる。
以上、運転データ管理装置30およびそのデータ管理方法によれば、運転データ管理装置30のプラント管理用計算機37が、ユニット制御用計算機34から取得した運転データの状態を確認し、もし異常があれば、リアルタイムでその状態を追跡する現在値監視手段47と、正常であれば、運転データの経年的な変化を追跡するための定常値監視手段48とを備えるので、運転データの短期間での異常な変化の監視は、現在値監視手段47が行い、長期間に亘る準静的な変化の監視は、定常値監視手段48が行うことができる。
従って、突発事象発生のような場合の異常度の進行情報を提供することにより実現される運転支援と、定常値のずれの大きさの進行情報に基づく機器の劣化具合を補修要否の判断情報として提供することにより実現される保守支援の両方を行うことができる。
また、管理値設定手段46が、取り込んだ運転データの状態を評価するべく設定する管理値は、ユニット31の警報システムにおいて設定される警報値および停止値に限らず正常域においても設定できると共に、複数個の管理値を設定することができるので、従来では正常と判断される劣化の進展等をより早く検出できる。つまり、現在値の状態をより細かく監視することができる。
これは、特に異常が発生した場合に有効であり、異常値の状況をリアルタイムで取り込まれる現在値をベースにより細かく追跡することができるので、異常発生とその進展に対する効果的な現在値監視手段47を実現することができる。
さらに、現在値監視手段47は、運転状態チェック部56および異常監視部57を備えるので、運転状態チェック部56が運転データの個々の管理項目に対して、状態変化時系列表60のテーブルデータを作成しつつ、運転データの状態が正常か否かを確認し、運転データの状態が正常な場合、図6に示すような推移グラフを表示手段39に表示することができる。
一方、異常の場合には、異常値監視部57の異常値評価機能70が、状態変化時系列表60のテーブルデータを利用して推移グラフを正常値推移表示と同様の形式で異常値推移表示を行うことができるので、正常値推移表示(正常域)から異常値推移表示(異常域)に移行しても、自然な監視の連続性が維持できる。
尚、この正常値推移表示および異常値推移表示の切り替えは、運転データの個々で行うことができることはもちろんのこと、設定される管理項目単位で行うこともできる。正常値推移表示および異常値推移表示の切り替えが、管理項目単位で行い得ることによって、運転データの変動の原因究明が必要になった場合に、重要な解析用データとすることができる。
また、異常値監視部57は、異常値評価機能70の他、異なる機能として、パターン監視機能71および累積値監視機能72を有するので、要求に応じて、パターン監視機能71が過渡運転状態における通常域からのずれの拡大の監視を行ったり、累積値監視機能72が累積値に制限のある管理項目において累積値のカウントを行うことができ、異なる視点での現在値監視を可能としている。
従って、運転データの現在値に基づく対応運転操作という従来から行われている運転員(ユーザ)への運転支援ばかりではなく、現在値に基づく機器の異常に関する情報を保守情報として提供することによって、補修員(ユーザ)に対する保守支援も行い得る。保守情報の提供を行い得る現在値監視手段47は、いわゆる状態監視保全を実現する手段として使用できる。
さらに、従来、DBに保存されるデータは、1日の平均値であり、保存された1日の平均値を基準に変動状況を分析するのに対し、本発明では、定常値監視評価手段48が、現在値監視手段47から1時間周期の有効な運転データだけを平均値処理等をすることなくそのまま収録した後に、集計処理(平均値算出)するので、運転データの変動量をより正確に検知することができる。
さらにまた、定常値監視評価手段48は、前処理実行部85、データ収録集計部86および定常値評価部87を備えるので、データ収録集計部86が運転データを収録する際、取得する運転データを定常値の運転データに限定することができ、データを保存する際に比較的長周期で行うことができる。従って、この種のシステムで発生しがちなデータベースの過大化を避けることができ、使用するデータ容量をより少なく抑えることができる。
他方、データ収録集計部86は、短周期データ集計機能93および長周期データ集計機能94を有するので、1時間から1ヶ月程度の短周期でデータ集計することおよび1季節(数ヶ月)から年単位での長周期でデータ集計することができる。従って、監視対象機器の劣化速度が比較的早くても、逆にゆっくりであっても、データ集計を行ったいずれかの周期で対応でき、定常値評価部87がデータ集計結果(テーブルデータ)を参照して表示手段39に推移表示として表示させて変化の状況を正確に把握することができる。
また、短周期データ集計機能93および長周期データ集計機能94に、24時間、1ヶ月および1年間のデータ集計処理機能を持たせ、それぞれ、24時間データ集計処理機能には数時間、1ヶ月データ集計処理機能には数日、1年間データ集計処理機能には数ヶ月という暦日時間基準での部分期間毎に平均値の算出を行い得るように構成することで、例えば、4時間集計、10日間集計、3ヶ月集計を行っている場合、次の段階(次に長い周期でのデータ集計、例えば、24時間集計の場合は1ヶ月集計)でのデータ集計の際に、部分期間における平均値を含めて行うことができる。
従って、昼間と夜間の平均値であったり、季節の平均値等の表示が可能となり、変化の状況を時間帯、季節等による依存性といった観点からも把握することができる。さらに、短周期データ集計機能93および長周期データ集計機能94を部分期間の平均値の算出を行い得るように構成することで、時間、日、月および年という異なる期間の単位間において相互の連繋を考慮することができると共に、定常値評価行程において表示される定常値監視評価結果表示としての任意期間の推移表示(例えば、1ヶ月推移表示)の精度を上げることができる。
例えば、1ヶ月集計表111において、部分期間(10日間)の平均値の集計を行うことで、1年間集計表126では、各月に10日間の平均値の集計結果を含めることができる。従って、定常値評価行程の際に、定常値評価部87が1年間集計表126のテーブルデータを読み出せば、図17に示すように、最小単位を1ヶ月ではなく、10日間とすることができる。尚、他の期間における集計表でも同様である。
さらにまた、短周期データ集計機能93および長周期データ集計機能94において、運転データの採取周期を正時とし、24時間集計、1ヶ月集計、1年間集計のそれぞれの処理時期を暦日時間基準とし、それぞれ、24:00、月末の24:00、年末の24:00とすれば、ユニット31の運転状態に依存することなく、暦日時間だけに従った機械的なデータ集計が可能になり、運転データ管理装置30の動作を単純化することができる。
つまり、プラント管理用計算機34を運転データの管理、特に、その変化傾向の監視に特化させた運転データ管理装置30を構成することができ、従来の運転データ管理装置1におけるプラント管理用計算機7のように、ユニット制御用計算機5に組み込まれているプラント警報システムが検出した異常を警報として表示手段10に表示させるといった警報システムの補助的役割を果たすのみの運転データ管理装置1とは一線を画することができる。