JP4433518B2 - 固体高分子電解質型燃料電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子イオン交換膜を用いる電解質を挟んで配設される集電体とガス拡散層と触媒層を備えた固体高分子電解質型燃料電池において、電極触媒を前記集電体を構成する多孔質分散層に分散させた固体高分子電解質型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
大気汚染の防止のためのCO2 排出規制および石油資源枯渇といった地球規模における環境および資源問題に対処するため、クリーンでエネルギー密度が高く、充電時間が不要である固体高分子電解質型燃料電池は最も脚光を浴びられ、日本を始め世界中の各国で急ピッチに研究開発が進められている。
【0003】
現段階では、燃料電池の実用化には、まだ克服しなければならない幾つかの課題が残されている。従来の電極構造として電解質膜の両側にそれぞれ電極触媒を担持させ、その上にガス拡散のできるガス拡散層とも呼ばれる多孔質集電体を接合させ一つの単セルを構成している。
【0004】
発電過程においてそれぞれ供給された燃料ガスおよび酸化剤ガスが集電体でもあるガス拡散層を通して電極触媒層に入り、触媒に吸着し、それぞれ電気化学酸化反応および電気化学還元反応が行われるものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記従来の固体高分子電解質型燃料電池は、上述したような構造のため、前記集電体と触媒層とで直列回路が形成され、電気抵抗がそれぞれの合計となり、またガス拡散においても、反応ガスが集電体でもあるガス拡散層を通して電極触媒層に入らなければならないため、物質輸送律速になりがちであるという問題があった。更に生成物である水に関しても、同じ状況である。
【0006】
前記生成水は、蒸発して水蒸気となり、触媒層から出て、集電体でもあるガス拡散層を通して電極外部へ拡散しなければならないが、拡散経路が長ければ長いほど拡散が難しくなり、その上に凝縮も起こりやすくなり、それによっても、反応ガスの触媒層への拡散が妨げられるという問題があった。
【0007】
すなわち従来の固体高分子電解質型燃料電池は、電解質に高分子イオン交換膜を用いており、図1(A)および図7に示されているような従来の電極(断面図)では、水素あるいは水素を含む燃料ガスが集電体でもある燃料電極ガス拡散層Kを通って、触媒層Sに到達し、以下の数1に示されるような反応が起こる。
【数1】
【0008】
燃料電極で生成されたプロトンH+ は、電解質膜Dを通って酸素あるいは空気を酸化剤とする酸化剤電極に向かって移動し、それと同時に、燃料電極で生成された電子e- は触媒層S、集電体Kを通して、外部回路を介して、燃料電極と酸化剤電極との間に接続された負荷を通って、酸化剤電極に移動する。触媒層Sおよび集電体Kの電気抵抗が内部IRドロップとなり、セル出力を低下させることに繋がる。
【0009】
一方、酸化剤電極では、酸素を含む酸化剤ガスが集電体でもある酸化剤電極ガス拡散層Kを通って、触媒層Sに到達し、外部回路から酸化剤電極ガス拡散層でもある集電体Kおよび触媒層Sを通して流れてきた電子を貰って、以下の数2のような反応で還元され、アノードから電解質膜を通して移動してきたプロトンH+ と結合して水となる。
【数2】
【0010】
生成された水の一部は、濃度勾配によって電解質膜Dに入り、燃料電極に向かって拡散して移動し、一部は蒸発して、触媒層Sおよび集電体Kを通してガス通路まで拡散して、未反応の酸化剤ガスと一緒に排出される。このように、触媒層S、集電体Kの拡散経路が長ければ長いほど電気的な抵抗、反応ガスの拡散抵抗が大きくなるだけではなく、生成物である水蒸気も排出されにくく、水の凝縮を起こしやすく、反応ガスの供給を妨げることになり、それによって触媒層Sの触媒利用率を低下させて、セルの出力特性が低下してしまう。
【0011】
そこで本発明者は、高分子イオン交換膜を用いる電解質を挟んで配設される集電体とガス拡散層と触媒層を備えた固体高分子電解質型燃料電池において、前記集電体、ガス拡散層および触媒層を共存化(一体化)することに着目するとともに、電極触媒を前記集電体を構成する多孔質分散層に分散させるという本発明の技術的思想に着眼し、更に研究開発を重ねた結果、ガス透過性および電気伝導性を向上するという目的を達成する本発明に到達した。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明(請求項1に記載の第1発明)の固体高分子電解質型燃料電池の製造方法は、
高分子イオン交換膜を用いる電解質を挟んで配設される集電体とガス拡散層と触媒層を備えた固体高分子電解質型燃料電池の製造方法において、
導電性粒子を、前記集電体を構成する多孔質分散層に染込ませることにより分散させ、
前記導電性粒子が分散している前記多孔質分散層に、導電性粒子に電極触媒が担持された触媒担持体を染込ませることにより分散させる
ものである。
本発明(請求項2に記載の第2発明)の固体高分子電解質型燃料電池の製造方法は、
前記第1発明において、
前記多孔質分散層に、導電性粒子に電極触媒が担持された触媒担持体を分散させるのに先立ち、
前記導電性粒子が分散された前記多孔質分散層に、撥水処理が施される
ものである。
本発明(請求項3に記載の第3発明)の固体高分子電解質型燃料電池は、
前記第1発明または第2発明に記載の製造方法によって製造される固体高分子電解質型燃料電池であって、
高分子イオン交換膜を用いる電解質を挟んで配設される集電体とガス拡散層と触媒層を備えた固体高分子電解質型燃料電池において、
前記集電体を構成する多孔質分散層に導電性粒子と、電極触媒が担持されている触媒担持体とが分散している
ものである。
本発明の固体高分子電解質型燃料電池は、
高分子イオン交換膜を用いる電解質を挟んで配設される集電体とガス拡散層と触媒層を備えた固体高分子電解質型燃料電池において、
電極触媒を前記集電体を構成する多孔質分散層に分散させた
ものである。
【0013】
本発明(請求項4に記載の第4発明)の固体高分子電解質型燃料電池は、
前記第3発明において、
撥水処理が施された導電性粒子と、前記電極触媒が担持されている触媒担持体が、撥水処理が施された多孔質分散層に分散している
ものである。
本発明の固体高分子電解質型燃料電池は、
前記発明において、
前記電極触媒が、担持体に担持されている
ものである。
【0014】
本発明(請求項5に記載の第5発明)の固体高分子電解質型燃料電池は、
前記第4発明において、
前記集電体が、前記電極触媒が担持されている前記触媒担持体より大きな孔が多数形成され、前記触媒担持体が充填され分散された多孔質分散層によって構成され、
前記導電性粒子は、カーボン或いは金属の微粒子によって構成されている
ものである。
本発明の固体高分子電解質型燃料電池は、
前記発明において、
前記集電体が、前記電極触媒が担持されている前記触媒担持体より大きな孔が多数形成され、前記触媒担持体が充填され分散された多孔質分散層によって構成されている
ものである。
【0015】
本発明(請求項6に記載の第6発明)の固体高分子電解質型燃料電池は、
前記第5発明において、
前記多孔質分散層が、カーボンペーパーまたはカーボンクロスのようなカーボン繊維体によって構成されている
ものである。
本発明の固体高分子電解質型燃料電池は、
前記発明において、
前記電極触媒を担持させた触媒担持体が、導電性粒子によって構成されているものである。
【0016】
本発明(請求項7に記載の第7発明)の固体高分子電解質型燃料電池は、
前記第6発明において、
前記多孔質分散層が、カーボン粒子の焼結体または金属より成る多孔質体によって構成されている
ものである。
本発明の固体高分子電解質型燃料電池は、
前記発明において、
前記導電性粒子は、カーボン或いは金属の微粒子によって構成されている
ものである。
【0017】
本発明の固体高分子電解質型燃料電池の製造方法は、
高分子イオン交換膜を用いる電解質を挟んで配設される集電体とガス拡散層と触媒層を備えた固体高分子電解質型燃料電池の製造方法において、
導電性粒子を、前記集電体を構成する多孔質分散層に分散させ、
前記導電性粒子が分散している前記多孔質分散層に、導電性粒子に電極触媒が担持された触媒担持体を分散させる
ものである。
【0018】
本発明の固体高分子電解質型燃料電池の製造方法は、
前記発明において、
前記多孔質分散層に、導電性粒子に電極触媒が担持された触媒担持体を分散させるのに先立ち、
前記導電性粒子が分散された前記多孔質分散層に、撥水処理が施される
ものである。
【0019】
【発明の作用および効果】
上記構成より成る第1発明の固体高分子電解質型燃料電池の製造方法は、高分子イオン交換膜を用いる電解質を挟んで配設される集電体とガス拡散層と触媒層を備えた固体高分子電解質型燃料電池の製造方法において、導電性粒子を、前記集電体を構成する多孔質分散層に染込ませることにより分散させ、前記導電性粒子が分散している前記多孔質分散層に、導電性粒子に電極触媒が担持された触媒担持体を染込ませることにより分散させるので、ガス透過性および電気伝導性を向上する固体高分子電解質型燃料電池の製造を可能にするという効果を奏する。
上記構成より成る第2発明の固体高分子電解質型燃料電池の製造方法は、前記第1発明において、前記多孔質分散層に、導電性粒子に電極触媒が担持された触媒担持体を分散させるのに先立ち、前記導電性粒子が分散された前記多孔質分散層に、撥水処理が施されるので、ガス透過性および電気伝導性を一層有効に向上する固体高分子電解質型燃料電池の製造を可能にという効果を奏する。
上記構成より成る第3発明の固体高分子電解質型燃料電池は、前記第1発明または第2発明に記載の製造方法によって製造される固体高分子電解質型燃料電池であって、前記集電体を構成する多孔質分散層に導電性粒子と、電極触媒が担持されている触媒担持体とが分散しているので、前記集電体、前記ガス拡散層および前記触媒層の共存化(一体化)を可能にすることにより、ガス透過性および電気伝導性を向上するという効果を奏する。
上記構成より成る前記発明の固体高分子電解質型燃料電池は、前記電極触媒を前記集電体を構成する前記多孔質分散層に分散させたので、前記集電体、前記ガス拡散層および前記触媒層の共存化(一体化)を可能にすることにより、ガス透過性および電気伝導性を向上するという効果を奏する。
【0020】
上記構成より成る第4発明の固体高分子電解質型燃料電池は、前記第3発明において、撥水処理が施された導電性粒子と、前記電極触媒が担持されている触媒担持体が、撥水処理が施された多孔質分散層に分散しているので、該触媒担持体が前記集電体を構成する撥水処理が施された前記多孔質分散層に分散されているため、前記集電体、前記ガス拡散層および前記触媒層の共存化(一体化)を可能にすることにより、ガス透過性および電気伝導性を一層有効に向上するという効果を奏する。
上記構成より成る前記発明の固体高分子電解質型燃料電池は、前記発明において、前記電極触媒が前記担持体に担持され、触媒担持体を構成しているので、該触媒担持体が前記集電体を構成する前記多孔質分散層に分散されているため、前記集電体、前記ガス拡散層および前記触媒層の共存化(一体化)を可能にすることにより、ガス透過性および電気伝導性を向上するという効果を奏する。
【0021】
上記構成より成る第5発明の固体高分子電解質型燃料電池は、前記第4発明において、前記電極触媒が担持されている前記触媒担持体が、前記集電体を構成する前記多孔質分散層内に多数形成された前記触媒担持体より大きな孔内に分散されるので、前記集電体、前記ガス拡散層および前記触媒層を共存化(一体化)することにより、ガス透過性および電気伝導性を向上するという効果を奏するとともに、前記電極触媒を担持させた触媒担持体が、導電性粒子によって構成されているので、電気伝導性を向上するという効果を奏する。
上記構成より成る前記発明の固体高分子電解質型燃料電池は、前記発明において、前記電極触媒が担持されている前記触媒担持体が、前記集電体を構成する前記多孔質分散層内に多数形成された前記触媒担持体より大きな孔内に分散されるので、前記集電体、前記ガス拡散層および前記触媒層を共存化(一体化)することにより、ガス透過性および電気伝導性を向上するという効果を奏する。
【0022】
上記構成より成る第6発明の固体高分子電解質型燃料電池は、前記第5発明において、図1(B)に示されるように多孔質分散層10が、カーボンペーパーまたはカーボンクロスのようなカーボン繊維体14によって構成されているので、前記カーボン繊維体14の間の空隙に多数の触媒3が担持された触媒担持体21を分散させることが出来るという効果を奏する。
上記構成より成る前記発明の固体高分子電解質型燃料電池は、前記発明において、前記電極触媒を担持させた触媒担持体が、導電性粒子によって構成されているので、電気伝導性を向上するという効果を奏する。
【0023】
上記構成より成る第7発明の固体高分子電解質型燃料電池は、前記第6発明において、前記多孔質分散層が、カーボン粒子の焼結体または金属より成る多孔質体によって構成されているので、ガス透過性および電気伝導性を向上するという効果を奏する。
上記構成より成る前記発明の固体高分子電解質型燃料電池は、前記発明において、前記導電性粒子は、カーボン或いは金属の微粒子によって構成されているので、電気伝導性を向上するという効果を奏する。
【0024】
上記構成より成る前記発明の固体高分子電解質型燃料電池の製造方法は、高分子イオン交換膜を用いる電解質を挟んで配設される集電体とガス拡散層と触媒層を備えた固体高分子電解質型燃料電池の製造方法において、導電性粒子を、前記集電体を構成する多孔質分散層に分散させ、前記導電性粒子が分散している前記多孔質分散層に、導電性粒子に電極触媒が担持された触媒担持体を分散させるので、ガス透過性および電気伝導性を向上する固体高分子電解質型燃料電池の製造を可能にするという効果を奏する。
【0025】
上記構成より成る前記発明の固体高分子電解質型燃料電池の製造方法は、前記第6発明において、前記多孔質分散層に、導電性粒子に電極触媒が担持された触媒担持体を分散させるのに先立ち、前記導電性粒子が分散された前記多孔質分散層に、撥水処理が施されるので、ガス透過性および電気伝導性を一層有効に向上する固体高分子電解質型燃料電池の製造を可能にという効果を奏する。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態につき、図面を用いて説明する。
【0027】
(第1実施形態)
本第1実施形態の固体高分子電解質型燃料電池は、図2に示されるように高分子イオン交換膜を用いる電解質を挟んで配設される集電体とガス拡散層と触媒層を備えた固体高分子電解質型燃料電池において、前記ガス拡散層1としてのカーボンペーパー11によって構成された多孔質分散層10内に、触媒担持体21が充填され分散されることにより、電極触媒3を前記集電体を構成する多孔質分散層10内に分散させたものである。
【0028】
前記電極触媒を担持させた前記触媒担持体21が、カーボンの微粒子によって構成された導電性粒子20によって構成され、該導電性粒子20の表面に電極触媒3としての多数の触媒粒子が担持されている。
【0029】
前記集電体が、前記電極触媒3が担持されている前記触媒担持体21より大きな孔が多数形成され、前記触媒担持体21が充填され分散された多孔質分散層10を構成するカーボンペーパー11によって構成されている。
【0030】
すなわち前記集電体は、空孔径が触媒である白金またはその合金の担持体である前記触媒担持体21の直径の10〜10000倍のものが望ましく、1〜10倍或いは10000倍以上のものも使用できるが、10000倍以上のものの場合は触媒担持体直径より大きい電気伝導性のよい微粒子を用いて充填してから触媒担持体をその中に分散した方が触媒の利用率を高めることが出来る。尚その電気伝導性のよい微粒子は電極触媒を担持したものでもよい。この場合、電気伝導性のよい微粒子の粒径、触媒担持量は、触媒担持体の粒径、触媒担持量と異なっていてもよい。
【0031】
撥水性多孔質分散層の空隙率および孔径は、母材の目の大きさまたは母材の空隙に充填した導電性微粒子の粒径で調整する。なお導電性微粒子としてカーボン以外に金属等の導電性微粒子でもよい。
【0032】
前記ガス拡散層としての前記多孔質分散層10を構成する前記カーボンペーパー11は、図2(A)ないし(C)に示されるようにカーボンの短繊維が積層されたもので、撥水処理を施した後、撥水処理が施された前記カーボンペーパー11の短繊維111と短繊維111の間に前記触媒担持体21が含浸され、分散される。
【0033】
上記構成より成る第1実施形態の固体高分子電解質型燃料電池は、前記電極触媒3が前記担持体に担持され、触媒担持体21を構成しているので、該触媒担持体21が前記集電体を構成する前記多孔質分散層10に分散されているため、前記集電体、前記ガス拡散層および前記触媒層の共存化(一体化)を可能にすることにより、ガス透過性および電気伝導性を向上するという効果を奏する。
【0034】
また第1実施形態の固体高分子電解質型燃料電池は、前記触媒担持体21が、前記集電体を構成する前記多孔質分散層10内に多数形成された前記触媒担持体21より大きな孔内に分散されるので、前記電極触媒3を前記集電体を構成する前記多孔質分散層10内に均一に分散させ、前記集電体、前記ガス拡散層および前記触媒層を共存化(一体化)を実現するという効果を奏する。
【0035】
さらに第1実施形態の固体高分子電解質型燃料電池は、前記多孔質分散層10が、カーボンペーパーのようなカーボン繊維体によって構成されているので、前記カーボン繊維体の繊維と繊維との間の空隙に多数の触媒担持体21を分散させることが出来るという効果を奏する。
【0036】
また第1実施形態の固体高分子電解質型燃料電池は、触媒層と集電体とが共存化(一体化)することによって電極厚みが薄くなり、燃料電池スタックのコンパクト化が図れるという効果を奏する。
【0037】
さらに第1実施形態の固体高分子電解質型燃料電池は、電極触媒を集電体でもある撥水性多孔質分散層に分散するようにしたもので、集電体、ガス拡散層、触媒層を一体化することによりガス透過性、電気伝導性および触媒利用率を向上させ、セル出力特性に優れた固体高分子電解質型燃料電池を提供するものである。
【0038】
また第1実施形態の固体高分子電解質型燃料電池は、多孔質体に触媒を分散するため、触媒同士の重なりが少なくなり、触媒利用率が高くなることによって、同様な出力を得るために触媒である白金の使用量が低減できるという効果を奏する。
【0039】
(第2実施形態)
本第2実施形態の固体高分子電解質型燃料電池は、図3に示されるように前記ガス拡散層1としての金属の微粒子より成る金属多孔質体12によって多孔質分散層10を構成してかかる多孔質分散層10内に、触媒担持体21が充填され分散されることにより、電極触媒3を前記集電体を構成する多孔質分散層10内に分散させたものである。
【0040】
前記電極触媒を担持させた前記触媒担持体21が、導電性粒子20によって構成され、該導電性粒子20が、カーボンの微粒子によって構成され、表面に触媒3が担持されている。
【0041】
前記集電体が、前記電極触媒3が担持されている前記触媒担持体21より大きな孔が多数形成され、前記触媒担持体21が充填され分散された多孔質分散層10を構成する前記金属多孔質体12によって構成されている。
【0042】
すなわち前記ガス拡散層としての前記多孔質分散層10を構成する前記金属多孔質体12は、図3(A)ないし(C)に示されるように金属の微粒子が空隙を介在させて分散したもので、撥水処理を施した後、撥水処理が施された前記金属多孔質体12の金属の微粒子と金属の微粒子の間に前記触媒担持体21が含浸され、分散させる。
【0043】
上記構成より成る第2実施形態の固体高分子電解質型燃料電池は、前記電極触媒3が前記担持体に担持され、触媒担持体21を構成しているので、該触媒担持体21が前記集電体を構成する前記多孔質分散層10に分散されているため、前記集電体、前記ガス拡散層および前記触媒層の共存化(一体化)を可能にすることにより、ガス透過性、電気伝導性、触媒利用率およびセル出力特性を向上させるという効果を奏する。
【0044】
また第2実施形態の固体高分子電解質型燃料電池は、前記触媒担持体21が、前記集電体を構成する前記多孔質分散層10内に多数形成された前記触媒担持体21より大きな孔内に分散されるので、前記電極触媒3を前記集電体を構成する前記多孔質分散層10内に均一に分散させ、前記集電体、前記ガス拡散層および前記触媒層を共存化(一体化)を実現するという効果を奏する。
【0045】
さらに第2実施形態の固体高分子電解質型燃料電池は、前記多孔質分散層10が、金属の微粒子より成る金属多孔質体によって構成されているので、ガス透過性および電気伝導性を向上するという効果を奏する。
【0046】
また第2実施形態の固体高分子電解質型燃料電池は、多孔質体に触媒を分散するため、触媒同士の重なりが少なくなり、触媒利用率が高くなることによって、同様な出力を得るために触媒である白金の使用量が低減できるという効果を奏する。
【0047】
さらに第2実施形態の固体高分子電解質型燃料電池は、触媒層と集電体と共存化(一体化)することによって電極厚みが薄くなり、燃料電池スタックのコンパクト化が図れるという効果を奏する。
【0048】
【実施例】
以下本発明の実施例につき、図面を用いて説明する。
【0049】
(第1実施例)
本第1実施例の固体高分子電解質型燃料電池は、図4に示されるように高分子イオン交換膜を用いる電解質を挟んで配設される集電体とガス拡散層と触媒層を備えた固体高分子電解質型燃料電池において、前記ガス拡散層1としてのカーボンクロス13によって構成された多孔質分散層10内に、触媒担持体21が充填され分散されることにより、電極触媒3を前記集電体を構成する多孔質分散層10内に分散させたものである。
【0050】
前記電極触媒を担持させた前記触媒担持体21が、カーボンの微粒子によって構成された導電性粒子20によって構成され、該導電性粒子20の表面に電極触媒3としての多数の触媒粒子が担持されている。
【0051】
前記集電体が、前記電極触媒3が担持されている前記触媒担持体21より大きな孔が多数形成され、前記触媒担持体21が充填され分散された多孔質分散層10を構成するカーボンクロス13によって構成されている。
【0052】
以下本第1実施例の固体高分子電解質型燃料電池の製造方法について、説明する。
【0053】
ダイキン工業株式会社製の含有濃度が60%のディスパージョン原液(商品名:POLYFLOND1グレード)をテトラフルオロエチレン(以下PTFEという)の含有濃度が15wt%になるように、水で希釈する。この溶液の中に図4(A)に示されるカーボンクロス13を投入して、十分に上記のディスパージョン溶液に含浸させる。次に80℃の温度に保った乾燥炉で余分な水分を蒸発させた後に、焼結温度390℃で60分保持して、図4(B)に示されるようにPTFE焼結をする。
【0054】
次に、白金担持濃度が40wt%の白金担持カーボン触媒(以下Pt/C)とイオン交換樹脂溶液および水、分散剤としてのイソプロピルアルコールなどの有機溶媒と十分に混合して、触媒ペーストにした後に、上記の撥水処理された図4(B)に示されるカーボンクロス13の中に、図4(C)に示されるように前記の触媒ペーストをドクターブレード法により触媒ペーストを染込ませて分散させる。これを酸化剤電極とする。
【0055】
また同様な方法によってPtCの代わりに白金(担持濃度30wt%)−ルテニウム(担持濃度15wt%)合金担持カーボン触媒(以下Pt−Ru/C)で形成されたものを燃料電極とする。イオン交換膜を電解質膜とし、上記の酸化剤電極および燃料電極で挾んでホットプレスで接合した。
【0056】
この電極接合体で単セルの電池を構成し、セル温度80℃、酸化剤電極に空気(利用率40%)、燃料電極に水素(利用率80%)をそれぞれ2.5気圧で供給して発電実験を行ったところ、図5の破線によって示されたようなセル電圧出力が得られた。
【0057】
(第2実施例)
本第2実施例の固体高分子電解質型燃料電池は、図6に示されるように高分子イオン交換膜を用いる電解質を挟んで配設される集電体とガス拡散層と触媒層を備えた固体高分子電解質型燃料電池において、前記ガス拡散層1としての前記第1実施例に比べて目の荒いカーボンクロス13によって構成された多孔質分散層10内に、カーボンの微粒子によって構成された導電性粒子20の触媒担持体21が充填され分散されることにより、電極触媒3を前記集電体を構成する多孔質分散層10内に分散させたものである。
【0058】
以下本第2実施例の固体高分子電解質型燃料電池の製造方法について、説明する。
【0059】
図6(A)に示されるカーボンクロスの中にカーボンブラックにエチレングリコール等の成形助剤を混入させ攪拌して得られたカーボンブラックペーストをスクリーン印刷法を用いて、図6(B)に示されるように染込ませ、乾燥させてから前記第1実施例のようなディスパージョン溶液に含浸させる。その後、80℃の温度に保った真空乾燥炉中で2時間乾燥し、溶媒を蒸発させてから焼結温度390℃で60分保持して、図6(C)に示されるようにPTFE焼結をする。
【0060】
触媒ペーストを、ドクターブレード法により上記のように撥水処理されたカーボンクロスに図6(D)に示されるように染込ませて、これを酸化剤電極とする。
【0061】
燃料電極もこれと全く同様なものを使用した。イオン交換膜を電解質膜とし、上記の酸化剤電極および燃料電極で挾んでホットプレスで接合した。この電極接合体で単セルの電池を構成し、セル温度80℃、酸化剤電極に空気(利用率40%)、燃料電極に水素(利用率80%)をそれぞれ2.5気圧で供給して発電実験を行ったところ、上記図5の一点鎖線によってに示されたようなセル電圧出力が得られた。
【0062】
(比較例)
以下本比較例の固体高分子電解質型燃料電池の製造方法について、説明する。
【0063】
東レ株式会社製カーボンペーパー(商品名:トレカTGP−060 180μm)を前記第1実施例のようなディスパージョン溶液に投入して含浸させる。次に80℃の温度に保った乾燥炉で余分な水分を蒸発させた後に、焼結温度390℃で60分保持して、PTFE焼結をする。
【0064】
次に、白金担持濃度が40wt%のPt/Cとイオン交換樹脂溶液および水、成形助剤としてのイソプロピルアルコールなどの有機溶媒と充分に混合して、触媒ペーストにした後に、上記の撥水処理されたカーボンペーパーに前記の触媒ペーストをドクターブレード法により300μmの触媒薄膜を形成した。これを酸化剤電極とする。
【0065】
同様な方法によって形成されたものを燃料電極とする。イオン交換膜を電解質膜とし、上記の酸化剤電極および燃料電極で挾んでホットプレスで接合した。この電極接合体で単セルの電池を構成し、セル温度80℃、酸化剤電極に空気(利用率40%)、燃料電極に水素(利用率80%)をそれぞれ2.5気圧で供給して発電実験を行ったところ、図5において実線によって示されるようなセル電圧出力が得られた。
【0066】
上記の結果から分かるように、前記第1実施例および第2実施例の固体高分子電解質型燃料電池は、上記比較例に比べて、セル出力特性が優れていることが分かった。
【0067】
上述の実施形態は、説明のために例示したもので、本発明としてはそれらに限定されるものでは無く、特許請求の範囲、発明の詳細な説明および図面の記載から当業者が認識することができる本発明の技術的思想に反しない限り、変更および付加が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来および本発明の第6発明の固体高分子電解質型燃料電池の要部を示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態における電極触媒が集電体を構成する多孔質分散層内に分散するまでの各状態を説明する説明図である。
【図3】本発明の第2実施形態における電極触媒が集電体を構成する多孔質分散層内に分散するまでの各状態を説明する説明図である。
【図4】本発明の第1実施例における電極触媒が集電体を構成する多孔質分散層内に分散するまでの各状態を説明する説明図である。
【図5】本発明の各実施例および比較例におけるセル電圧出力特性を示す線図である。
【図6】本発明の第2実施例における電極触媒が集電体を構成する多孔質分散層内に分散するまでの各状態を説明する説明図である。
【図7】従来の固体高分子電解質型燃料電池のセルの基本構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ガス拡散層
3 電極触媒
10 多孔質分散層
11 カーボンペーパー
21 触媒担持体
Claims (7)
- 高分子イオン交換膜を用いる電解質を挟んで配設される集電体とガス拡散層と触媒層を備えた固体高分子電解質型燃料電池の製造方法において、
導電性粒子を、前記集電体を構成する多孔質分散層に染込ませることにより分散させ、
前記導電性粒子が分散している前記多孔質分散層に、導電性粒子に電極触媒が担持された触媒担持体を染込ませることにより分散させる
ことを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池の製造方法。 - 請求項1において、
前記多孔質分散層に、導電性粒子に電極触媒が担持された触媒担持体を分散させるのに先立ち、
前記導電性粒子が分散された前記多孔質分散層に、撥水処理が施される
ことを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池の製造方法。 - 請求項1または2に記載の製造方法によって製造される固体高分子電解質型燃料電池であって、
高分子イオン交換膜を用いる電解質を挟んで配設される集電体とガス拡散層と触媒層を備えた固体高分子電解質型燃料電池において、
前記集電体を構成する多孔質分散層に導電性粒子と、電極触媒が担持されている触媒担持体とが分散している
ことを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池。 - 請求項3において、
撥水処理が施された導電性粒子と、前記電極触媒が担持されている触媒担持体が、撥水処理が施された多孔質分散層に分散している
ことを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池。 - 請求項4において、
前記集電体が、前記電極触媒が担持されている前記触媒担持体より大きな孔が多数形成され、前記触媒担持体が充填され分散された多孔質分散層によって構成され、
前記導電性粒子は、カーボン或いは金属の微粒子によって構成されている
ことを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池。 - 請求項5において、
前記多孔質分散層が、カーボンペーパーまたはカーボンクロスのようなカーボン繊維体によって構成されている
ことを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池。 - 請求項6において、
前記多孔質分散層が、カーボン粒子の焼結体または金属より成る多孔質体によって構成されている
ことを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池。
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