JP4432375B2 - パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明に係るパワーステアリング装置は、自動車の操舵装置に組み込み、電動モータを補助動力として利用する事により、運転者がステアリングホイールを操作する為に要する力の軽減を図る為に利用する。
【0002】
【従来の技術】
操舵輪(フォークリフト等の特殊車両を除き、通常は前輪)に舵角を付与する際に運転者がステアリングホイールを操作する為に要する力の軽減を図る為の装置として、パワーステアリング装置が広く使用されている。又、この様なパワーステアリング装置で、補助動力源として電動モータを使用する電動式パワーステアリング装置も、例えば特許文献1〜3等多数の刊行物に記載されており、且つ、近年普及し始めている。電動式パワーステアリング装置は、油圧式のパワーステアリング装置に比べて小型・軽量にでき、補助動力の大きさ(トルク)の制御が容易で、しかもエンジンの動力損失が少ない等の利点がある。図3は、この様な従来から知られている電動式パワーステアリング装置として、特許文献2に記載された構造を示している。
【0003】
図示しないステアリングホイールの操作に基づいて回転するステアリングシャフト1の中間部には、このステアリングホイールからこのステアリングシャフト1に加えられるトルクの方向と大きさとを検出するトルクセンサ2と、減速機3とを設けている。この減速機3の出力側は上記ステアリングシャフト1の中間部に結合し、同じく入力側は電動モータ4の回転軸に結合している。又、上記トルクセンサ2の検出信号(トルク信号)は、車速を表す車速信号及びエンジンの回転速度を表す回転速度信号と共に、上記電動モータ4への通電を制御する為の制御器5に入力している。
【0004】
図示しない操舵輪に舵角を付与する為、上記ステアリングホイールを操作し、上記ステアリングシャフト1が回転すると、上記トルクセンサ2がこのステアリングシャフト1の回転方向とトルクとを検出し、その検出値を表す信号を上記制御器5に送る。するとこの制御器5は、上記電動モータ4に通電して、上記減速機3を介して上記ステアリングシャフト1を、上記ステアリングホイールに基づく回転方向と同方向に回転させる。この結果、上記ステアリングシャフト1の先端部(図3の下端部)は、上記ステアリングホイールから付与された力に基づくトルクよりも大きなトルクで回転する。
【0005】
この様なステアリングシャフト2の先端部の回転は、自在継手6、6及び中間シャフト7を介してステアリングギヤ8の入力軸に伝達される。このステアリングギヤ8は、この入力軸の回転に伴って左右1対のタイロッド9、9を押し引きし、図示しない操舵輪に所望の舵角を付与する。従って、上記ステアリングシャフト1の先端部から上記自在継手6を介して中間シャフト7に伝達されるトルクは、上記ステアリングホイールから上記ステアリングシャフト1の基端部(図3の上端部)に加えられるトルクよりも、上記電動モータ4から減速機3を介して加えられる補助動力分だけ大きい。この結果、上記操舵輪に舵角を付与する為に運転者が上記ステアリングホイールを操作する為に要する力は、上記補助動力分だけ小さくて済む様になる。
【0006】
尚、上記電動モータ4の出力トルクを制御する為前記制御器5に入力する各信号(トルク信号、車速信号、回転速度信号)のうち、車速信号は運転席に設けた速度計(スピードメータ)10の表示用にトランスミッションから取り出した信号を、回転速度信号は同じく回転計(タコメータ)11の表示用にディストリビュータ或はエンジン制御用のコンピュータから取り出した信号を、それぞれ使用している。これに対して、車両の走行速度を表す信号を送り出す装置として従来から、例えば特許文献4〜5に記載されている様な、車輪用回転速度検出センサが知られている。但し、従来は、この様な車輪用回転速度検出センサにより得られる信号を、アンチロックブレーキシステム(ABS)やトラクションコントロールシステム(TCS)の制御に利用するのみであった。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−153765号公報
【特許文献2】
特開2000−159128号公報
【特許文献3】
特開2001−18819号公報
【特許文献4】
実開平7−21464号公報
【特許文献5】
特開2000−46850号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来のパワーステアリング装置の場合、車速信号として速度計10の表示用にトランスミッションから取り出した信号を利用する為、上記車速信号は、左右1対の駆動輪(二輪駆動車の場合)の回転速度の平均値に比例した値になる。従って、実際の車速との間で差を生じる場合がある。例えば、雪道や泥濘地での発進時には、車体は停止若しくは低速走行しているにも拘らず、上記駆動輪は回転若しくは高速回転する場合がある。又、雪道や泥濘地での制動時には、車体は未だ走行状態にあるにも拘らず、上記駆動輪が停止状態となる場合がある。更には、一方の駆動輪のみが低μ路(滑り易い路面)部分にあり、他方の駆動輪が高μ路(滑りにくい路面)部分にある場合には、左右1対の駆動輪の回転状態が大きく異なる場合がある。
【0009】
これら何れの場合でも、トランスミッションから取り出した車速信号は、上記左右1対の駆動輪の回転速度の平均値に比例した値しか示さない。この為、雪道や泥濘地で、操舵輪のうちの一方又は双方が低μ路部分に存在する場合に、この操舵輪に舵角を付与する為の操舵力に付与する補助力を適切且つ微妙に調節する事が難しい。
本発明のパワーステアリング装置は、この様な事情に鑑みて発明したものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のパワーステアリング装置は、後端にステアリングホイールを固定するステアリングシャフトと、このステアリングシャフトを回転自在に支持する支持装置と、このステアリングシャフトの回転に伴って操舵される操舵輪に舵角を付与する方向の力を付与する補助力付与装置と、この補助力付与装置が上記操舵輪に付与する補助力を調節する制御器とを備える。
そして、この制御器はこの補助力を、上記ステアリングホイールから上記ステアリングシャフトに付与されるトルクに応じて変化させる事に加え、車速に応じて変化させるものである。
又、上記補助力付与装置は電動モータであり、上記制御器は、この電動モータへの通電状態を制御する事により、この電動モータの回転方向と出力トルクとを制御して上記ステアリングシャフトに付与する補助力を調節する。
【0011】
特に、本発明のパワーステアリング装置に於いては、上記車速を表す信号として、それぞれが駆動輪である左右1対の後輪の回転速度をそれぞれ検出する、左右1対の車輪支持用転がり軸受ユニットに設けた回転速度検出センサの信号に加えて、非駆動輪である前輪の回転速度を検出する、この前輪を支持する為の車輪支持用転がり軸受ユニットに設けた回転速度検出センサの信号を上記制御器に入力する。そして、この制御器は、制御の初期には前輪部分からの信号に基づいて上記補助力を大きくして、上記ステアリングホイールを操作する為に要する力を小さく抑える。これに対して、所定時間経過後にも上記前輪部分からの信号により求められる車速と後輪部分からの信号に基づいて求められる車速とに閾値以上の相違がある場合に、上記補助力を小さく、更には消滅させ、上記ステアリングホイールを操作する為に要する力を大きくする。
【0012】
【作用】
上述の様に本発明のパワーステアリング装置は、操舵輪に付与する補助力を調節する為の車速信号として車輪用回転速度検出センサの信号を利用する為、各車輪の置かれている状況を把握して、その状況に応じて適切な補助力を付与する為の制御が可能になる。
即ち、本発明のパワーステアリング装置の場合には、低μ路走行で急なステアリング操作が危険であると判断される状況下で、操舵に要する力を大きくできる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の特徴は、運転者が図示しないステアリングホイールを操作する為に要する力(操舵力)の軽減を図る為の補助力付与装置である電動モータ4への通電状態を制御する為の制御器5に、車輪用の回転速度検出センサ18の信号を利用する点にある。その他の部分の構成及び作用は、前述の図3に示した従来例と同様であるから、同等部分には同一符号を付して重複する説明は省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。尚、本例は、上記車輪用回転速度検出センサとして、前述の特許文献4に記載された構造を利用している。
【0014】
自動車の駆動輪(FR車及びRR車の後輪、FF車の前輪、4WD車の全輪)を懸架装置に対し回転自在に支持する為の車輪支持用転がり軸受ユニット12は、懸架装置に支持されて回転しない外輪13の内径側に、車輪を支持した状態でこの車輪と共に回転するハブ14を、複数の転動体15、15により、回転自在に支持している。このハブ14を構成する内輪16の端部外周面には歯車状の凹凸部17を全周に亙り形成し、この凹凸部17部分にパルスロータとしての機能を持たせている。そして、上記外輪13に支持した回転速度検出センサ18の検出部を対向させている。懸架装置への組み付け状態では、上記ハブ14の中心部に設けたスプライン孔19に、図示しない等速ジョイントに付属のスプライン軸を係合させ、上記ハブ14を回転駆動自在とする。
【0015】
図示しない車輪と共にこのハブ14が回転すると、上記回転速度検出センサ18の出力信号が、このハブ14の回転速度に比例した周波数で変化する。そこで、この回転速度検出センサ18の出力信号を制御器5に送り込み、この制御器5で上記ハブ14の回転速度を算出し、更にこの回転速度に応じて電動モータ4への通電状態を制御する様にしている。尚、図1には車輪支持用転がり軸受ユニット12を1個のみ示しているが、実際には、左右1対の車輪支持用転がり軸受ユニット12にそれぞれ設けた上記回転速度検出センサ18の出力信号を、それぞれ上記制御器5に送り込む。そしてこの制御器5は、1対の回転速度検出センサ18から送り込まれる出力信号を勘案して、上記電動モータ4への通電状態を制御する。
【0016】
例えば、本発明に関しては参考例となる(本発明の技術的範囲からは外れる)が、上記1対の車輪支持用転がり軸受ユニット12が、それぞれ操舵輪である前輪を支持するものである場合、上記制御器5は、速い方の回転速度に応じて上記電動モータ4への通電状態を制御する。即ち、左右1対の操舵輪(駆動輪)のうちの一方が低μ路部分に、他方が高μ路部分に、それぞれ存在し、一方の回転速度が他方の回転速度に比べて著しく速い場合には、一方の回転速度に応じて、上記電動モータ4への通電状態を制御する。具体的には、一方の回転速度が速くなる程(他方の回転速度を考慮する事なく)上記電動モータ4への通電量を低減し、ステアリングシャフト1に付与する補助力を小さく抑える。この補助力を小さく抑えるのに伴って、上記各操舵輪に所望の舵角を付与すべく、ステアリングホイールを操作する為に要する力が大きくなる。この結果、低μ路で急なハンドル操作が行なわれる事を防止して、安定した運行の実現を図れる。
【0017】
更に、本発明の対象となる様に、左右1対の駆動輪が後輪である場合、これら両駆動輪の回転速度をそれぞれ検出する、左右1対の車輪支持用転がり軸受ユニット12に設けた回転速度検出センサ18の信号に加えて、非駆動輪の回転速度を検出する回転速度検出センサの信号を上記制御器5に入力するので、より細かな制御を行なえる。即ち、左右1対の駆動輪(後輪)が何れも低μ路部分に存在した場合、各車輪部分の状態を勘案して、最適な補助力を付与できる。具体的には、制御の初期には前輪部分からの信号に基づいてこの補助力を大きくし、ステアリングホイールを操作する為に要する力を小さく抑える。そして、短時間経過後にも前輪部分からの信号により求められる車速と後輪部分からの信号に基づいて求められる車速とに無視できない程の相違がある場合には、低μ路走行で急なステアリング操作が危険であると判断して、上記補助力を小さく、更には消滅させ、上記ステアリングホイールを操作する為に要する力を大きくする。
【0018】
図2は、この様な場合に従動輪の回転速度を検出する構造の1例を示している。尚、図2に示した例は、車輪用回転速度検出センサとして、前述の特許文献5に記載された構造を利用している。従動輪を懸架装置に対し回転自在に支持する為の車輪支持用転がり軸受ユニット12aは、懸架装置に支持されて回転しない内輪16a、16aの外径側に、車輪を支持した状態でこの車輪と共に回転するハブ14aを、複数の転動体15、15により、回転自在に支持している。そして、このハブ14aの端部に外嵌固定したパルスロータ20に、図示しない懸架装置に支持した回転速度検出センサ18aの検出部を対向させている。図示しない車輪と共に上記ハブ14aが回転すると、上記回転速度検出センサ18aの出力信号が、このハブ14aの回転速度に比例した周波数で変化する。そこで、この回転速度検出センサ18aの出力信号を制御器5に送り込み、この制御器5で上記ハブ14aの回転速度を算出する。
【0019】
【発明の効果】
本発明は以上に述べた通り構成し作用するので、低μ路等の特殊条件の下でも操舵力を最適にして、安定した運行に寄与できるパワーステアリング装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の1例を示す概念図。
【図2】従動輪からも回転速度信号を取り入れる構造の1例を示す概念図。
【図3】従来構造の1例を示す概念図。
【符号の説明】
1 ステアリングシャフト
2 トルクセンサ
3 減速機
4 電動モータ
5 制御器
6 自在継手
7 中間シャフト
8 ステアリングギヤ
9 タイロッド
10 速度計
11 回転計
12、12a 車輪支持用転がり軸受ユニット
13 外輪
14、14a ハブ
15 転動体
16、16a 内輪
17 凹凸部
18、18a 回転速度検出センサ
19 スプライン孔
20 パルスロータ

Claims (1)

  1. 後端にステアリングホイールを固定するステアリングシャフトと、このステアリングシャフトを回転自在に支持する支持装置と、このステアリングシャフトの回転に伴って操舵される操舵輪に舵角を付与する方向の力を付与する補助力付与装置と、この補助力付与装置が上記操舵輪に付与する補助力を調節する制御器とを備え、この制御器はこの補助力を、上記ステアリングホイールから上記ステアリングシャフトに付与されるトルクに応じて変化させる事に加え、車速に応じて変化させるものであり、上記補助力付与装置が電動モータであり、上記制御器は、この電動モータへの通電状態を制御する事により、この電動モータの回転方向と出力トルクとを制御して上記ステアリングシャフトに付与する補助力を調節するパワーステアリング装置に於いて、この車速を表す信号として、それぞれが駆動輪である左右1対の後輪の回転速度をそれぞれ検出する、左右1対の車輪支持用転がり軸受ユニットに設けた回転速度検出センサの信号に加えて、非駆動輪である前輪の回転速度を検出する、この前輪を支持する為の車輪支持用転がり軸受ユニットに設けた回転速度検出センサの信号を上記制御器に入力し、この制御器は、制御の初期には前輪部分からの信号に基づいて上記補助力を大きくして、上記ステアリングホイールを操作する為に要する力を小さく抑え、所定時間経過後にも上記前輪部分からの信号により求められる車速と後輪部分からの信号に基づいて求められる車速とに閾値以上の相違がある場合に、上記補助力を小さく、更には消滅させ、上記ステアリングホイールを操作する為に要する力を大きくする事を特徴とするパワーステアリング装置。
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