JP4430488B2 - 太陽電池及びその製造方法 - Google Patents
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また、フォトリソグラフィによる化学エッチング加工が提案されている(非特許文献2)。これはシリコン窒化膜をマスクとして、フォトリソグラフィにより規則的に微細なパターンを形成し、次に気体エッチング又は液体エッチングにより、基板表面に反射率の低い凹凸構造を形成する方法である。
非特許文献2に記載されているように、フォトリソグラフィによる微細パターンの形成は、高品質の凹凸構造が得られるが、形成コストが高く、量産化は困難である。
更に、特許文献3に記載されているような噴霧方式を用いて微小マスクを形成し、マスクが付着しない領域をエッチングすることによって表面凹凸構造を形成する方法は、マスクを付着しない領域の高密度化およびその均一性制御が極めて困難であるため、鋭角状のように曲率半径の小さい凹凸構造が得られない。したがって、有効な光閉じ込め効果を有する表面構造に成れない。
さらに詳しく説明すると、本発明における半導体基板表面の曲面状の凹型構造部は、結晶粒の面方位に依存せず、開口幅は0.5〜5.0μmまでの範囲である。開口幅は0.5μm未満になると、拡散、酸化工程など高温工程を経たシリコン表面の反射率が上昇する。また、凹型構造部の開口幅が0.5μm以下の場合には、凹型構造部の面内分布密度を高めるのが極めて困難である。凹型構造部の開口幅を0.5μm以上にすると、高密度面内分布の曲面状凹型構造の形成が可能である。一方、凹型構造部の開口幅が10μm程度の場合には、開口幅と深さの比が0.3〜3.0の関係より、凹部の深さは3〜30μmとなる。太陽電池の受光面には表面電極が形成されるが、この表面電極はAgペーストを印刷して形成される。そのAgペーストの厚さは20μm程度であるため、凹型構造の深さが30μm程度の場合にはAgペーストの部分的な断線が発生し、太陽電池の曲線因子(FF)が低下する。この凹型構造の深さを5μm以下に抑えることにより、この問題を解決した。即ち、凹型構造部の開口幅が5μmの場合は、深さは最大15μmとなり、表面電極の厚さと同程度か、それ以下になる。従って、Agペーストにより表面電極を形成する際に、印刷されたAgペーストの厚さバラツキ付きがあってもセルの曲線因子(FF)の低下を招くことがない。以上より、凹型構造部の開口幅は0.5〜5μmまでの範囲が好ましい。
図1は本発明の太陽電池に使用される半導体基板の表面の断面凹凸構造を示す模式図である。半導体基板1の表面凹凸構造は、多数の微細な曲面状の凹型構造部9を有し、凹型構造部9の開口幅Wは0.5〜5.0μmの範囲であり、好ましくは0.5〜3μmであり、特に0.8〜1.5μmが好ましい。凹型構造部9の開口幅Wとその深さHの比(W/H)は0.3〜3.0の範囲であり、好ましくは0.3〜1.5であり、特に0.5〜1.0が好ましい。各凹型構造部の相互間領域10(凹型構造部9のない領域と称する場合もある)では、表面構造が、前処理のためのエッチングされた平面または結晶面方位にある凹凸多面体で構成されている。半導体基板1の表面積に対し、凹型構造部9の相互間領域10の占有面積率は1〜40%の範囲であり、好ましくは5〜30%であり、特に10〜25%(例えば10、15、20又は25%)が好ましい。なお、本発明において、半導体基板1の表面積に対する凹型構造部9の相互間領域10の占有面積率は、次のようにして測定した結果である。占有面積率の測定方法として、参照サンプルの反射率を用い下記の式で各凹型構造部の相互間領域10の占有率を算出した。参照サンプルの断面形状の説明図を図9に示す。多結晶基板の研磨したミラー表面の反射率はRfであり、その上にTiO2膜形成した基板の反射率はRtである。本発明による凹型構造部を形成した後、TiO2膜を付いた状態での反射率はRtsであり、各凹型構造部の相互間領域10の占有率はStsとする。また、TiO2膜を除去した状態での反射率はRsであり、各凹型構造部の相互間領域10の占有率はSsとする。また、Roは凹凸構造部反射率であり、Soは凹凸構造部占有面積率である。TiO2膜を除去する前後、各凹型構造部の相互間領域10の面積が変化しないことを仮定し、Ss=Stsが成り立つ。Rt、Rf 、Rts、Rsは実測値であり(波長範囲:500−1000nm)、式(1)〜(4)を用いて、各凹型構造部の相互間領域10の占有率Ssを算出する。
Rt・ Sts + Ro・ So = Rts (1)
Rf ・ Ss + Ro・ So = Rs (2)
So =1- Ss (3)
Ss = Sts (4)
また、本発明において、半導体基板の表面の全面中には、開口幅W:0.5〜5.0μm及び比:0.3〜3.0の範囲外の凹型構造部が多少存在していてもよい。この範囲外の凹型構造部は、例えば、100×100μmの領域内に1〜10個程度存在していてもよい。
反射防止膜としては、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜などの絶縁膜や、これら絶縁膜の積層膜を用いることができ、その膜厚は反射防止膜/半導体基板の界面での光反射を低減する厚さに設定されるが、例えば用いる反射防止膜の屈折率が約1.9〜2.1の場合、50〜80nmが好ましく、60〜70nmがさらに好ましい。なお、反射防止膜の膜厚が50nmより小さいと、可視光の比較的低い波長(400〜500nm)の領域で反射率が急激に上昇し、膜厚が80nmより大きいと600nm以上の長波長側で反射率が最低になり、それより低い領域及び高い領域で反射率が高い状態になる。
この塗布液層の作製に関して、公知の様々な方法で作製できるが、本実施の形態では、特開2003−309276号公報に示されるような方法で作製する。塗布液は、チタン有機化合物を含有している第1溶液と、微粒子を含有している第2溶液を混合した溶液からなる。第1溶液としては、チタネート系カップリング剤(例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等)や、Ti(OC2H5)4やTi(i−OC3H7)4等のチタン有機化合物や、これらを有機溶媒に溶解した有機系溶液や、硝酸(HNO3)に溶解した水系溶液等のチタン材料を各種溶媒に溶解して作成した溶液を用いることができる。本実施例では、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートを使用する。第2溶液としては、シリケートガラスの塗布液や、Si(OCH3)4やSi(OC2H5)4等のケイ素有機化合物、これらを各種溶媒に溶解して作成した溶液を用いることができる。本実施の形態では、Si(OCH3)4の溶液にトルエン及び塩酸を調合した溶液である。第1溶液と第2溶液の混合比率は重量換算で約10:1〜10:0.1とすることができ、好ましくは10:0.5である。微粒子としては、塗布液を塗布して固化形成する際に、耐エッチング膜内に耐エッチング性が低い領域を形成可能な材料であれば、任意に選択することができ、例えば酸化チタンあるいは酸化シリコンを主成分とするゲル状態の微粒子を使用することができる。
なお、微細な孔4を有する保護膜3の形成方法としては他にも、気体CVD方法あるいはフォトエッチング方法などが挙げられる。フォトエッチング法としては、非特許文献2に記載されているように、まず、CVD方法で、シリコン窒化膜をシリコン基板表面に形成し、その上に、フォトリソグラフィにより、規則的な孔配列のパターンを形成し、次にフッ酸によるエッチングでパターンの孔部分のシリコン窒化膜を除去し、その後シリコン窒化膜をマスクとして用いてアルカリ又はフッ酸と硝酸の混合液でシリコン基板をエッチングし、最後に残留するシリコン窒化膜を全て除去することにより、基板表面に凹凸形状を形成することができる。
上記実施の形態では保護膜として酸化チタン膜を用いた場合を例示したが、これに代えて窒化シリコン膜(SiNx)を利用することも可能である。
その後、表面電極及び裏面電極を形成する。形成方法としては、金属ペースト(例えば銀)を印刷法などの公知技術にて堆積し、加熱処理して形成することができる。
次に、第1溶液としてチタン有機化合物{Ti(OC2H5)4}を使用し、第2溶液としては粒径100nm程度の酸化チタンのゲル状微粒子を含むSi(OCH3)4溶液にトルエン及び塩酸を調合した溶液を使用し、第1溶液と第2溶液を重量換算で約10:1で混合して塗布液を作製し、この塗布液を表面処理したシリコン基板1の表面にスピンコート法により塗布して塗布液層を形成した。続いて、半導体基板を約550℃で15分間熱処理して、開口幅0.1μm程度の孔を多数有する膜厚0.4μm程度の保護膜を得た。
その後、保護膜を除去することにより、開口幅約3μm、深さ約1.5μmの曲面状凹型構造部を表面に多数有するシリコン基板1を得た(図4(E−1−2))。
この実施例1のP型多結晶シリコン基板の表面反射率を、分光感度測定装置によって測定した結果、500〜1000nm波長範囲での平均反射率が約18%であった。表面反射率測定方法として、まず分光感度測定装置の積分球光学ユニットを用いて、白色板(スペクトラロン標準反射板)の信号強度を測定し、次に測定試料を測定した。白色板測定時信号と測定試料信号の比をとることにより、反射率を算出した。
逆に保護膜内の孔密度が高すぎる場合には、図4(E−1−3)に示されるように、エッチング後の表面凹凸形状は、隣接する曲面状の凹型構造部9同士が接触し、凹部の開口角度が大きくなる。各凹型構造部9の相互間領域10の占有面積率が1%以下の場合には(比較例2)、反射率が逆に高くなり、500〜1000nm波長範囲での平均反射率が約24%であった。
本発明は、保護膜内の孔密度を最適化することによってエッチング条件を制御し、曲面状凹型構造部のない領域10の占有面積率を1〜40%に制御することにより、凹型構造の開口角度θを直角より少し大きい角度から鋭角までの小さい曲率の凹型構造に制御でき、図4(E−1−2)に示すように最良な表面構造が形成される。
各凹型構造部9の相互間領域10の占有面積率による反射率スぺクトルの比較を図10に示す。占有面積率40%の500〜1000nm波長範囲での平均反射率は23.7%であり、占有面積率20%になると、平均反射率は18.2%になるが、占有面積率が1%になると、平均反射率は23.9%になり、逆に高くなってしまう。
その後の工程は実施例1と同様に、半導体基板の前処理された表面に塗布液層を形成し、高温処理にて保護層を形成した後、保護膜を介してエッチングし、保護膜を除去した。
このようにして形成した基板表面において、凹型構造部が形成されていない領域ではアルカリ溶液で基板前処理を行った形状(基板表面から見て多面体に、基板断面から見て折れ線状の凹凸形状を持つ多角形の集合体からなる表面構造)が残る。この多角形の集合体からなる凹凸多面の領域(凹型構造部のない領域)の表面積に対する占有面積率は約19%であった。
この実施例2の半導体基板の表面反射率を、実施例1と同様の方法にて測定した結果、500〜1000nm波長範囲での平均反射率が約16%であった。
なお、比較例3として、同一ロットインゴットから切り出した多結晶シリコン基板(相似な品質と結晶粒界分布)を用い、従来セルプロセスで太陽電池を作製した。この際、アルカリ性溶液により基板表面を前処理して多結晶基板テクスチャを形成した。この比較例3のシリコン基板は、凹型構造部のない領域の基板表面に対する占有面積率は0%、平均反射率は約26%(波長:500−1000nm)であった。
2 塗布液層
3 保護膜
4 孔
5 N型シリコン層
9 凹型構造部
10 各凹型構造部の相互間領域(凹型構造部のない領域)
11 窒化シリコン膜
12 裏面電極
13 p+型シリコン層
14 表面(収集)電極
W 開口幅
H 深さ
θ 開口角度
Claims (3)
- PN接合を有する多結晶シリコン基板からなる半導体基板と、この半導体基板の表裏面に形成された一対の電極とを備え、前記半導体基板はその表面に、開口幅が0.5〜5.0μmであり、開口幅と深さの比が0.3〜3.0である断面曲面形状の凹型構造部を有するとともに、前記凹型構造部の相互間領域が前記半導体基板の表面積に対して占有面積率1〜40%に設定されており、
前記半導体基板において、前記凹型構造部の相互間領域の表面が、多結晶シリコン基板の表面をアルカリで処理したことにより形成された、ピラミッド状の表面凹凸構造と緩やかな角度の表面凹凸構造を有する多角形集合状の凹凸多面であることを特徴とする太陽電池。 - 占有面積率が10〜25%である請求項1に記載の太陽電池。
- 多結晶シリコン基板からなる半導体基板の表面に塗布液層を形成し、前記塗布液層を高温処理して多数の微細な孔を有する保護膜を形成する工程(a)と、
前記保護膜を介して前記半導体表面をエッチングして、半導体基板の表面に、開口幅が0.5〜5.0μmであり、開口幅と深さの比が0.3〜3.0である断面曲面形状の凹型構造を形成するとともに、前記凹型構造の相互間領域を前記半導体基板の表面積に対して占有面積率1〜40%として形成する工程(b)と、
前記保護膜を除去する工程(c)と、
前記半導体表面にN型層を形成してPN接合を形成する工程(d)と、
前記半導体基板に接してP型電極を形成し、前記N型層に接してN型電極を形成する工程(e)とを含み、
さらに、前記凹型構造部の相互間領域の表面が、多角形集合状の凹凸多面となるように、前記工程(a)の前に、多結晶シリコン基板の表面をアルカリで処理することを特徴とする太陽電池の製造方法。
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