JP4430177B2 - 製版装置および製版印刷装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、製版装置および製版印刷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より簡便な印刷方式としてデジタル式感熱孔版印刷装置を使用した孔版印刷が知られている。これは、微細な発熱素子が一列に並んだサーマルヘッドを感熱性マスタ(以下、単に「マスタ」という)を介してプラテンローラに押圧させ、サーマルヘッドの発熱素子にパルス的に通電し発熱させながらプラテンローラでマスタを搬送することで、画像情報に基づいて加熱溶融穿孔・製版させた後、マスタを自動搬送して、多孔性円筒状の版胴の外周面に自動的に巻き付け、そのマスタに対してプレスローラ等の押圧手段で印刷用紙を連続的に押し付け、版胴内部に設けられたインキ供給部材によりインキを供給して、版胴の開孔部分およびマスタの穿孔部分からインキを通過させ印刷用紙に転移させることで印刷画像を形成させるようになっている。
このような従来の孔版印刷装置で使用されるマスタは、非常に薄いポリエステル等の熱可塑性樹脂フィルム(以下、単に「フィルム」という)と、インキ通過性の多孔質支持体として和紙や合成繊維、あるいは和紙および合成繊維を混抄したものとを貼り合わせたラミネート構造となっていて、多孔質支持体の上記繊維部分およびフィルムの穿孔部分より滲出したインキが印刷用紙に転移して孔版印刷が行われる。
【0003】
そのため、マスタの多孔質支持体に使用されている繊維が複雑に絡み合って固まっているダマと呼ばれる部分や、太い繊維がフィルムの穿孔部分を横切っている部分では、インキの通過が阻害されインキが印刷用紙に転移せずに、特にベタ部において繊維模様が現れたり、あるいは文字とか細線等がかすれたり切れたりしてしまう、繊維目という画像の不良現象が発生し、画質が悪化する不具合があった。そこで、繊維目の元となる和紙等の多孔質支持体の厚さを薄くしたり、多孔質支持体そのものを除去した実質的に熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタを使用して印刷を行うようにすることで、繊維目を低減する試みがなされている。従来のマスタの厚さが、通常、約40〜50μm程度であるのに対して、実質的に熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタの場合にはその厚さが約2〜7μmと極めて薄いものとなっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、マスタの多孔質支持体の厚さを薄くしたり、多孔質支持体そのものを除去したりすることにより、マスタの強度が大幅に低下してしまう。従来のマスタでは多孔質支持体としての和紙等により強度を確保していたので、製版時のマスタ伸びや、フィルムの縮みによるマスタの変形等が防止されていたが、多孔質支持体の厚さが薄い場合や多孔質支持体が全く無い場合には、強度が大幅に低下してしまうことでマスタ伸びやフィルムの縮みが不均一になりやすく、これによりマスタ製版時にシワが発生したり、版胴に巻装するときにそのマスタの変形が元で巻装シワが発生しやすくなったりするという問題点があった。
また、マスタのフィルム表面には、スティック防止剤等の塗布によりスティッキング防止処理が行われており、製版時にプラテンローラによって搬送されるマスタとサーマルヘッドとの間で発生する接触抵抗を減少してマスタの送りが不均一にならないようにしているが、フィルムが加熱溶融され穿孔・製版された部分は、その樹脂部分が露出してスティック防止剤の効果が低下してしまうために、マスタの搬送・接触抵抗が増加し、わずかではあるがマスタの搬送遅れが発生しやすくなってしまう。このようなマスタの搬送遅れにより、マスタの搬送距離が違ってしまうと、画像寸法再現性が悪化したり、製版部分の搬送遅れによりプラテンローラにおけるマスタ搬送方向上流側においてマスタの弛みができやすくなり、そのマスタの弛みがプラテンローラによって押し潰されてシワが発生してしまうという問題点があった。
【0005】
従来のマスタのように多孔質支持体でフィルムの変形が防止されているマスタの場合では、プラテンローラよりもマスタ搬送方向下流側に設けられた搬送ローラ対のような搬送部材でマスタ搬送方向下流側にマスタを引っ張りフロントテンションを掛けることで、マスタの搬送遅れを補償するようにできるが、多孔質支持体の厚さの薄いマスタや多孔質支持体の全く無いマスタでは製版されていない部分よりも穿孔・製版された部分の強度が大幅に低下するために、フロントテンションを掛けたとき、強度の低下した穿孔部分が容易に伸びてしまうことで、マスタに所定のフロントテンションを加えることができなくなり、これより製版長さを満足することができなくなったり、マスタが縮んで変形してしまう不具合が発生しやすくなったり、あるいは版胴に巻装するときにマスタの変形による巻装シワが発生しやすくなってしまう問題点があった。
また、プラテンローラとサーマルヘッドとの間で製版されたマスタは、その部分の強度が低下した状態にあるが、その部分のマスタがその後もサーマルヘッドに接近した状態で搬送されるような場合では、始めのうちはよいが連続して製版が継続されると、製版された製版済みのマスタのフィルム部分がサーマルヘッドの蓄熱等の影響を受けて変形を起こしやすくなってしまう問題点もあった。
【0006】
したがって、本発明はかかる問題点を解決するために、従来のマスタは勿論のこと、多孔質支持体の厚さの薄いマスタや、例えば実質的に熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタのように多孔質支持体の全く無いマスタを使用した場合でも、製版時においてマスタのシワ等が発生しない画像寸法再現性の良い製版装置および版胴へのマスタ巻装時において巻装シワ等が発生しない画像寸法再現性の良い製版印刷装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、繰り出されるマスタを画像情報に応じて加熱製版するサーマルヘッドと、該サーマルヘッドにマスタを押圧しながらマスタ搬送方向下流側にマスタを移動する回転自在なプラテンローラとを具備する製版装置において、上記プラテンローラの軸方向から見て、上記サーマルヘッドと上記プラテンローラとのニップ部中心と上記プラテンローラの軸中心とを結ぶ半直線と、上記プラテンローラの軸方向から見て、マスタが上記ニップ部中心から上記マスタ搬送方向下流側で上記プラテンローラの外周面に接触しているマスタ接触境界と上記プラテンローラの軸中心とを結ぶ半直線とがなすマスタ抱き角を変えるマスタ抱き角可変手段と、製版時におけるマスタ製版寸法の伸縮に影響を与えるマスタ伸縮関係要因の特性値を検出するための特性値検出手段と、上記特性値検出手段からの信号に基づいて、上記マスタ抱き角を変えるように上記マスタ抱き角可変手段を制御する制御手段とを有し、上記マスタ抱き角可変手段は、上記プラテンローラよりも上記マスタ搬送方向下流側に配設され、上記マスタ搬送方向下流側のマスタに接触して上記マスタ抱き角を変える方向に変位可能な変位部材と、この変位部材を上記マスタ抱き角を変える方向に変位させる変位部材駆動手段とを備えていることを特徴とする。
【0008】
求項記載の発明は、請求項記載の製版装置において、上記変位部材は、回転自在なローラであることを特徴とする。
【0009】
請求項記載の発明は、請求項または記載の製版装置において、上記変位部材よりも上記マスタ搬送方向下流側に配設され、上記マスタ搬送方向下流側にマスタを移動する搬送ローラと、この搬送ローラを駆動する搬送ローラ駆動手段と、上記搬送ローラと上記搬送ローラ駆動手段との間に設けられ、上記ニップ部中心と上記搬送ローラとの間のマスタにフロントテンションを付与するトルクリミッタとを有することを特徴とする。
ここで、搬送ローラの具体例としては、マスタ幅方向に亘りフロントテンションを安定的に付与するという点から、後述する実施形態で用いられているような搬送ローラ対が好ましいが、このような利点を望まなくてもよいのであればこれに限らず、例えば板状部材にマスタを押し付ける1つの搬送ローラと上記板状部材との組み合わせ等であってもよい。
搬送ローラ駆動手段の具体例としては、回転速度制御を安定かつ容易に行うという点から、後述する実施形態で用いられているようなステッピングモータが好ましいが、このような利点を望まなくてもよいのであればこれに限らず、制御用のDCモータ等であってもよい。
【0010】
トルクリミッタの具体例としては、電気的に伝達トルクを可変して所定のフロントテンションを付与するという点から、比較的小さな張力制御用として用いられているパウダー式やヒステリシス式電磁クラッチが好ましく用いられる。このような利点を望まなくてもよいのであれば、請求項では、これに限らず、例えば摩擦式の電磁クラッチや機械式のトルクリミッタであっても構わない。
【0011】
請求項記載の発明は、請求項記載の製版装置において、マスタを繰り出し可能に貯容するマスタ貯容手段と、このマスタ貯容手段と上記プラテンローラとの間のマスタにバックテンションを付与するためのバックテンション付与手段とを有し、上記バックテンションを上記フロントテンションよりも大きくしたことを特徴とする。
ここで、上記バックテンション付与手段は、上記マスタ貯容手段と上記プラテンローラとの間に配設され、上記マスタ搬送方向上流側のマスタに接触して回転自在なテンションローラと、このテンションローラの回転を制動する制動手段とからなるもので構成することができる。
テンションローラの具体例としては、マスタ幅方向に亘りバックテンションを安定的に付与するという点から、後述する実施形態で用いられているような一対のテンションローラ対が好ましいが、このような利点を望まなくてもよいのであればこれに限らず、例えば板状部材にマスタを押し付ける1つのテンションローラと上記板状部材との組み合わせ等であってもよい。
制動手段の具体例としては、電気的に伝達トルクを可変して制動力を制御するという点あるいはマスタの種類に応じて制動力を可変制御するという点から、比較的小さな張力制御用として用いられているようなパウダー式やヒステリシス式電磁ブレーキが好ましく用いられる。このような利点を望まなくてもよいのであれば、これに限らず、例えば摩擦式の電磁ブレーキや機械式のブレーキ手段であっても構わない。
【0013】
請求項記載の発明は、請求項1ないし4の何れか一つに記載の製版装置において、上記マスタ伸縮関係要因の特性値が、マスタに形成される製版画像量であり、上記特性値検出手段は、上記製版画像量を検出する画像量検出手段からなることを特徴とする。
請求項記載の発明は、請求項1ないし4の何れか一つに記載の製版装置において、上記マスタ伸縮関係要因の特性値が、上記製版装置本体の内部および外部の温度のうちの少なくとも一方の温度であり、上記特性値検出手段は、上記少なくとも一方の温度を検出する温度検出手段からなることを特徴とする。
【0014】
請求項記載の発明は、請求項1ないし4の何れか一つに記載の製版装置において、上記マスタ伸縮関係要因の特性値が、上記製版装置本体の内部および外部の湿度のうちの少なくとも一方の湿度であり、上記特性値検出手段は、上記少なくとも一方の湿度を検出する湿度検出手段からなることを特徴とする。
請求項記載の発明は、請求項1ないし4の何れか一つに記載の製版装置において、上記マスタ伸縮関係要因の特性値が、上記サーマルヘッドの温度であり、上記特性値検出手段は、上記サーマルヘッドの温度を検出するサーマルヘッド温度検出手段からなることを特徴とする。
【0015】
請求項記載の発明は、請求項ないしの何れか一つに記載の製版装置において、上記制御手段は、少なくとも二つ以上の上記特性値検出手段からの各信号に基づいて、上記マスタ抱き角を変えるように上記マスタ抱き角可変手段を制御することを特徴とする。
【0016】
請求項10記載の発明は、請求項1ないしの何れか一つに記載の製版装置において、上記プラテンローラよりも上記マスタ搬送方向下流側のマスタもしくは製版されたマスタを、上記サーマルヘッドより遠ざける向きに搬送するようにしたことを特徴とする。
【0017】
請求項11記載の発明は、請求項1ないし10の何れか一つに記載の製版装置、該製版装置で製版されたマスタを巻装する版胴と、該版胴上のマスタにインキを供給するインキ供給手段とを有し、上記版胴上のマスタに印刷用紙を押し付けて印刷用紙に印刷を行うことを特徴とする製版印刷装置である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照して実施例を含む本発明の実施の形態(以下、単に「実施形態」という)を説明する。各実施形態等に亘り、同一の機能および形状等を有する部材や構成部品等については、同一符号を付すことによりその説明をできるだけ省略する。図において一対で構成されていて特別に区別して説明する必要がない部材や構成部品は、説明の簡明化を図る上から、その片方を適宜記載することでその説明に代えるものとする。図および説明の簡明化を図るため、図に表されるべき部材や構成部品であっても、その図において特別に説明する必要がない部材や構成部品は適宜断わりなく省略することがある。
【0019】
図1ないし図11を参照して実施形態を説明する。図1において、符号70は製版装置を、符号80は製版装置70を備えた製版印刷装置をそれぞれ示す。 製版装置70は、図1ないし図3に示すように、マスタ8をマスタ搬送方向Xに繰り出し可能に貯容するマスタ貯容手段としてのマスタ支持部材8cと、繰り出されるマスタ8を画像情報に応じて加熱製版するサーマルヘッド11と、サーマルヘッド11にマスタ8を押圧しながらマスタ搬送方向X下流側にマスタ8を移動・搬送するプラテンローラ10と、後で詳述するマスタ抱き角θaを変えるマスタ抱き角可変手段50と、プラテンローラ10よりもマスタ搬送方向X上流側のマスタ8にバックテンションF1を付与するためのバックテンション付与手段36と、プラテンローラ10よりもマスタ搬送方向X下流側のマスタ8にフロントテンションF2を付与するためのフロントテンション付与手段38とを具備する。
【0020】
マスタ8は、連続シート状をなし、合成樹脂製のロール芯8bに巻き付けられてマスタロール8aが形成される。ロール芯8bは、マスタロール8aの両端面から突出していてマスタ8の幅よりも長く形成されている。マスタロール8aは、両端側のロール芯8bがマスタ支持部材8cにより反時計回り方向に回転自在に支持されていて、マスタ支持部材8cに対して着脱自在となっている。両端側のマスタ支持部材8cは、製版装置70におけるマスタ搬送方向Xに沿ってその左右両側に配設されている図3のみに示す製版側板対29a,29bに取り付けられている。したがって、マスタ8は、マスタ支持部材8cによって、マスタロール8aからマスタ搬送方向Xに繰り出し可能に貯容されている。
マスタ8は、例えば厚さが2〜7μmの、実質的に熱可塑性樹脂フィルムのみからなる。ここで、実質的に熱可塑性樹脂フィルムのみからなるマスタとは、マスタが熱可塑性樹脂フィルムのみからなるものの他、熱可塑性樹脂フィルムに帯電防止剤等の微量成分を含有してなるもの、さらには熱可塑性樹脂フィルムの両主面、すなわち表面又は裏面のうち少なくとも一方に、オーバーコート層等の薄膜層を1層又は複数層形成してなるものを含む。マスタ8のフィルム材質としては、例えばポリエステルテレフタレート(PET)系のものが用いられる。
【0021】
バックテンション付与手段36は、マスタ支持部材8cとプラテンローラ10との間に配設され、プラテンローラ10よりもマスタ搬送方向X上流側のマスタ8に接触・挟持する回転自在な上下一対のテンションローラ上・下9b,9aと、このテンションローラ下9aの回転を制動する制動手段としての電磁ブレーキ37とからなる。
【0022】
テンションローラ下9aは、その外周部が導電性を有する弾性体でできていて、金属製の軸と一体的に形成されている。テンションローラ下9aは、上記軸の両端部が製版装置本体である製版側板対29a,29b(図3のみに示す)に回転自在に支持されていることにより、反時計回り方向に回転自在となっている。電磁ブレーキ37としては、テンションローラ下9aの軸端に設けられたパウダー式の電磁ブレーキが好ましく用いられる。パウダー式の電磁ブレーキ37は、マスタの種類に応じて、予め設定された制動力を上記軸を介してテンションローラ下9aに加えることにより、プラテンローラ10よりもマスタ搬送方向X上流側のマスタ8、すなわちプラテンローラ10とテンションローラ上・下対9b,9aとの間のマスタ8に予め設定された大きさのバックテンションF1を付与する機能を有する。
さらに詳細に述べると、マスタの種類に応じて予め設定された大きさのバックテンションF1は、図5に示す制御装置65からの指令により、パウダー式の電磁ブレーキ37の励磁コイルに流す励磁電流を可変することで、これに略比例してその伝達トルクが可変制御されることによって、マスタの種類に応じて予め設定された大きさの制動力(ブレーキ力)が上記軸を介してテンションローラ下9aに加えられることでなされる。
なお、電磁ブレーキ37は、パウダー式の電磁ブレーキに限らず、比較的小さな張力制御用として、例えばヒステリシス式の電磁ブレーキ等も好ましく用いられる。
【0023】
テンションローラ上9bは、金属でできていて、軸部が一体的に形成されている。テンションローラ上9bは、上記軸の両端部が図3のみに示す製版側板対29a,29bに回転自在に支持されていることにより、時計回り方向に回転自在となっている。
【0024】
プラテンローラ10とテンションローラ上・下対9b,9aとの間のマスタ8に付与されるバックテンションF1は、製版時において、サーマルヘッド11とプラテンローラ10とのニップ部Nにおけるマスタ8の穿孔部分の搬送・接触抵抗によってその非穿孔部分が速く送られてしまってマスタ8の弛みが発生したり、後述する搬送ローラ中12a,12bによって非穿孔部分のマスタ8が引っ張られて弛みが助長されたりしないように、プラテンローラ10をしてマスタ8との間でわずかに滑りを起こさせて搬送ムラが生じないような大きい・高いバックテンションF1に設定されている。
テンションローラ上・下対9b,9aは、バネ等の付勢手段により適度な押圧力を与えられて互いに圧接し合っている。テンションローラ上・下対9b,9aは、マスタ8の初期セット時における搬送の場合、図示しない駆動源より駆動力を伝達されて回転搬送するようになっている。テンションローラ上・下対9b,9aは、後述する制御装置65により、製版領域外でマスタ8を速く送る場合や、製版中でも画像が無い部分をスキップして早送りする場合、あるいは後述するようにアングルローラ27を上方向Uに変位させて図2に示すマスタ抱き角θaを大きくする場合等には、マスタ8への負荷を低減するためにその制動力を減少させたり、バックテンションを作用させたりしないような構成になっている。
【0025】
プラテンローラ10は、テンションローラ上・下対9b,9aに隣るマスタ搬送方向X下流側に配設されていて、金属製の芯金を介してプラテンローラ軸10aと一体的に形成されている。プラテンローラ10は、その芯金外周が高分子の弾性体でできていて、例えばマスタ8に対する非粘着性、耐熱性、導電性および圧縮永久歪の良好な導電性を有するシリコーンゴム層で被覆されている。
【0026】
プラテンローラ10の仕様について、さらに実施例的に述べると、例えば本願出願人が提案した特開平8−1901号公報に開示されているように、プラテンローラ10の高分子の弾性体であるシリコーンゴム層の硬度(Hs)がJIS硬度A45〜70度であるものが好ましく用いられる。この理由は、特開平8−1901号公報明細書の段落番号(0012)、(0036)ないし(0038)に記載されている利点等を得られるからである。
また、後述するように、マスタ抱き角θaにおいて適度の摩擦抵抗が生じている条件の下での、マスタ8の加熱溶融穿孔部の熱収縮を抑制するという利点を得るために、フィルムの材質がポリエステルテレフタレート製のマスタ8に対して、プラテンローラ10のシリコーンゴム層外表面の摩擦係数μが、例えばμ=0.5〜1.5のものが好ましく用いられる。
【0027】
プラテンローラ10は、プラテンローラ軸10aの両端部が図3に示す製版側板対29a,29bに回転可能に支持されていることにより、時計回り方向に回転自在となっている。プラテンローラ10は、タイミングベルトやギヤ等の回転伝達部材(図示せず)を介して、プラテンローラ駆動手段としての第1ステッピングモータ35に連結され、これにより時計回り方向に回転駆動される。
上記構成のとおり、プラテンローラ10が第1ステッピングモータ35により時計回り方向に回転駆動されることにより、マスタ8はテンションローラ上・下対9b,9aによってバックテンションF1を受けながらマスタロール8aから引き出されることとなる。
【0028】
サーマルヘッド11は、プラテンローラ10のプラテンローラ軸10aと平行に延在して設けられていて、図示しないカムおよびバネ部材等を備えた接離機構により、マスタ8を介してプラテンローラ10に接離自在となっている。サーマルヘッド11は、上記バネ部材によりプラテンローラ10に接触する向きに付勢されている。サーマルヘッド11の主走査方向には、プラテンローラ10にマスタ8を介して当接する部位に多数の発熱素子(図示せず)が配設されている。サーマルヘッド11は、図示しない原稿読取装置のA/D変換器および製版制御装置(共に図示せず)で処理されて送出されるデジタル画像信号に基づき上記発熱素子を選択的に加熱することにより、マスタ8を選択的に加熱溶融穿孔・製版する製版手段としての周知の機能を有する。
【0029】
フロントテンション付与手段38は、プラテンローラ10に隣るマスタ搬送方向X下流側に配設されていて、プラテンローラ10よりもマスタ搬送方向X下流側のマスタ8に接触・挟持してマスタ搬送方向X下流側にマスタ8を移動・搬送する回転自在な搬送ローラとしての上下一対の搬送ローラ中12a,12bと、この上側の搬送ローラ中12aをプラテンローラ10の周速度(搬送速度)よりも速い周速度(搬送速度)で回転させる搬送ローラ駆動手段としての第1ステッピングモータ35と、搬送ローラ中12aと第1ステッピングモータ35との間に設けられ、フロントテンションF2を予め設定された値に調節するトルクリミッタとしての機能を有する第1電磁クラッチ33とからなる。搬送ローラ中12aは、複数のギヤ等の回転伝達部材(図示せず)を介して第1ステッピングモータ35に連結され、これにより時計回り方向に回転駆動される。
第1ステッピングモータ35を介してのプラテンローラ10および搬送ローラ中12a周りの駆動系は、例えば本願出願人が提案した特開平11−77949号公報の図2に示されている回転伝達機構と同じ機構を採用している。
【0030】
搬送ローラ中対12a,12bは、各外周部がシリコーンゴムでできていて、金属製の軸と一体的に形成されている。搬送ローラ中対12a,12bは、バネ等の付勢手段により適度な押圧力を与えられて圧接して設けられていて、上記各軸の両端部が上記製版側板対29a,29bに回転自在に支持されていることにより互いに反対方向に回転自在となっている。第1電磁クラッチ33としては、搬送ローラ中12aの軸端に設けられたパウダー式電磁クラッチが好ましく用いられる。パウダー式電磁クラッチからなる第1電磁クラッチ33は、プラテンローラ10とサーマルヘッド11との間のニップ部Nからマスタ8を無理に引き摺り出さないような所定のフロントテンションF2をプラテンローラ10と搬送ローラ中対12a,12bとの間のマスタ8に付与する機能を有する。
フロントテンションF2は、上述したバックテンションF1よりも小さく設定されていて、換言すれば、バックテンションF1は、フロントテンションF2よりも大きく設定されている。フロントテンションF2の大きさとしては、例えば、第1ステッピングモータ35との連結状態を解除した状態で、かつ、静止している状態にあるプラテンローラ10を回転させない程のものであり、実施例的に言えばF2=0.3kgf≒2.94N程度に設定している。
さらに詳細に述べると、予め設定された大きさのフロントテンションF2のマスタ8への付与は、図5に示す制御装置65からの指令により、上記パウダー式電磁クラッチの励磁コイルに流す励磁電流を可変することで、これに略比例してその伝達トルクが可変制御されることによってなされる。
なお、第1電磁クラッチ33は、上記パウダー式電磁クラッチに限らず、比較的小さな張力制御用として、例えばヒステリシス式電磁クラッチ等も好ましく用いられる。
【0031】
搬送ローラ中対12a,12bとプラテンローラ10との間のマスタ搬送路上には、マスタ抱き角可変手段50を構成する回転自在なアングルローラ27が配置されている。
マスタ抱き角可変手段50は、図2に示すように、プラテンローラ10の軸方向から見て、サーマルヘッド11とプラテンローラ10とのニップ部中心Ncとプラテンローラ10の軸中心10bとを結ぶ半直線と、プラテンローラ10の軸方向から見て、マスタ8がニップ部中心Ncからマスタ搬送方向X下流側でプラテンローラ10の外周面に接触しているマスタ接触境界Mbとプラテンローラ10の軸中心10bとを結ぶ半直線とがなすマスタ抱き角θaを変える構成・機能を有する。
【0032】
マスタ抱き角可変手段50は、プラテンローラ10よりもマスタ搬送方向X下流側に配設され、マスタ搬送方向X下流側のマスタ8に接触してマスタ抱き角θaを変える方向(この実施形態では上方向Uおよび下方向D)に変位可能な変位部材としてのアングルローラ27と、このアングルローラ27の両端部のアングルローラ軸27aを上方向Uおよび下方向Dに案内するための、製版側板対29a,29bにそれぞれ形成された案内溝29cと、一端部のアングルローラ軸27aを常に係合・支持するU字状の溝51uを備え、支点軸53aを中心として揺動自在な揺動アーム51aと、他端部のアングルローラ軸27aを常に係合・支持するU字状の溝51uおよびこの溝51uと反対側に扇形ギヤ52を備え、支点軸53bを中心として揺動自在な揺動アーム51bと、アングルローラ27をマスタ抱き角θaを変える方向(上方向Uおよび下方向D)に変位させる変位部材駆動手段としての第2ステッピングモータ55と、第2ステッピングモータ55の出力軸に一体的に設けられ、揺動アーム51b側の扇形ギヤ52と常時噛み合うピニオン56と、アングルローラ27の初期位置でもあるホームポジションを検知するための位置検知センサ58とから主に構成される。
【0033】
アングルローラ27は、外周部がシリコーンゴムでできていて、金属製のアングルローラ軸27aと一体的に形成されている。アングルローラ27の外周部は、前記したものに限らず、金属でもよい。アングルローラ27は、その両端部のアングルローラ軸27aが図3および図4に示す揺動アーム対51a,51bの各溝51u内において反時計回り方向に回転自在に係合・支持されていることにより、同方向に回転自在となっている。
アングルローラ27は、プラテンローラ10の軸方向から見て、アングルローラ27の外周面接触上のマスタ8が図1および図2におけるサーマルヘッド11とプラテンローラ10とのニップ部Nの位置よりも常に上方に位置するように配置されている。アングルローラ27は、製版済みのマスタ8をマスタ抱き角θaだけプラテンローラ10の外周面に巻き付けた状態とすると共に、サーマルヘッド11より遠ざける方向にする位置を占めるようになされていて、製版済みのマスタ8の搬送によって従動回転するようになっている。アングルローラ27のホームポジションは、例えば図3に示す案内溝29cの略中央位置に設定されている。
【0034】
支点軸53aは揺動アーム51aに、支点軸53bは揺動アーム51bにそれぞれ植設されていて、各支点軸53a,53bは製版側板対29a,29bのマスタ搬送方向Xおよび上下方向における同じ位置で製版側板対29a,29bに所定角度回動自在に支持されている。各揺動アーム51a,51bにおける溝51uの下端部は折り曲げられて、各揺動アーム51a,51bを実質一体的に、換言すれば剛体として連結するアーム連結部51cを形成している。
第2ステッピングモータ55は、図3に示すように、製版側板29bの内側にその出力軸を向けて態様で同製版側板29bに固設されている。位置検知センサ58は、例えば透過型のフォトセンサからなり、製版側板29bの内側の所定位置に取り付けられている。位置検知センサ58は、揺動アーム51bの図3において裏側に植設された遮光片51dが揺動アーム51bの所定の揺動位置で、すなわちアングルローラ27がホームポジションを占めたときに遮光片51dが係合・遮光することにより、アングルローラ27のホームポジションを検知するようになされている。
【0035】
図2において、符号θbは、プラテンローラ10よりもマスタ搬送方向X下流側のマスタ8もしくは製版済みのマスタ8をサーマルヘッド11より遠ざける向きに搬送するためのマスタ離れ角を示す。マスタ離れ角θbは、アングルローラ27のアングルローラ軸27aがプラテンローラ10とサーマルヘッド11とのニップ部Nよりも上方に位置するように、図2においてアングルローラ27とプラテンローラ10およびサーマルヘッド11との間のマスタ8と、上記発熱素子が配置されたサーマルヘッド11の水平面の延長線とのなすマスタ離れ角θbが鋭角となるように、アングルローラ27、プラテンローラ10およびサーマルヘッド11を配置している。
ここで、マスタ抱き角可変手段50の詳細動作を説明しておく。第2ステッピングモータ55に図示しないモータ駆動回路を介して正転駆動パルスまたは逆転駆動パルスの所定の駆動パルス数が入力され、第2ステッピングモータ55が所定のステップ数回転駆動されると、その回転駆動力がピニオン56と扇形ギヤ52との噛合により、揺動アーム51bおよび連結部51cを介して揺動アーム51aに伝達されて揺動運動に変換され、さらに両端部のアングルローラ軸27aに伝達されつつ各案内溝29cで上下方向への直線運動に変換されて、最終的にアングルローラ27の上下方向への直線変位運動となる。以下、説明の便宜上から、正転駆動パルスに対応してアングルローラ27が上方向Uへ変位するものとし、これと反対に逆転駆動パルスに対応してアングルローラ27が下方向Dへ変位するものとする
上記の動作により、例えば第2ステッピングモータ55に所定の正転駆動パルス数が入力されることにより、ホームポジションを占めているアングルローラ27が上方向Uに変位すると、マスタ抱き角θaが大きくなって、プラテンローラ10の外周面にマスタ8が接触するマスタ接触範囲面積も広がると共に、マスタ離れ角θbも大きくなる。これとは逆に、例えば第2ステッピングモータ55に所定の逆転駆動パルス数が入力されることにより、アングルローラ27が下方向Dに変位すると、マスタ抱き角θaが小さくなって、プラテンローラ10の外周面にマスタ8が接触するマスタ接触範囲面積も狭まると共に、マスタ離れ角θbも小さくなる。
【0036】
搬送ローラ中対12a,12bに隣るマスタ搬送方向X下流側には、製版されたマスタ8もしくは未製版のマスタ8を所定の長さに切断する、固定刃13bおよび可動刃としての回転刃13aを備えたマスタ搬送方向Xと直行するマスタ幅方向に回転しながら移動する回転刃移動タイプのカッタ13が配設されている。カッタ13は、上記回転刃移動タイプに限らず、可動刃が昇降自在ないわゆるギロチンタイプのものも用いられる。
【0037】
カッタ13に隣るマスタ搬送方向X下流側には、搬送ローラ中対12a,12bと反転ローラ対14a,14bとの間のマスタ搬送路の下方に配設された吸引ボックス17、開閉板16および吸引ファン18等を備えたマスタストック手段が配設されている。
吸引ボックス17は、上記製版側板対29a,29bの間に固設されていて、マスタ搬送路の上流側に向けて略L字型をなすように郭定された空間を有して形成されている。吸引ボックス17は、図7に示すマスタ8のタワミ8Aを吸引して一時貯留するための吸引貯留手段としての機能を有する。
【0038】
開閉板16は、吸引ボックス17の最上方に形成される吸引口近傍の製版側板対29a,29bに軸支され、図示しないモータもしくはソレノイド等を備えた開閉板駆動手段およびこの開閉板駆動手段からの駆動力を開閉板16に伝達する扇形ギヤ等の駆動力伝達部材により上記吸引口に対して開閉自在に構成されている。開閉板16は、図1および図7において実線で示すように、マスタ8を搬送・案内させるべくマスタ搬送路の直下方に横臥するガイド搬送位置と、図および図7において仮想線で示すように、上記ガイド搬送位置から略90度下方に回転・変位してマスタ8を貯容するタワミ吸引位置との間で回転・変位自在となっている。開閉板16がタワミ吸引位置を占めたとき、吸引ボックス17の上方が開放されて、吸引ボックス17の上方には、製版済みのマスタ8を導入するための上記吸引口が形成される。
【0039】
マスタ搬送路の下流側に位置する吸引ボックス17の奥側には、スリットや網目状の小孔等からなる吸引口と排気口との間に設けられ、製版済みのマスタ8を吸引する吸引ファン18が配置されている。吸引ファン18に連結された図示しない吸引ファンモータの回転駆動により、吸引ファン18が回転されて、図1および図7において左側から右側へと流れる空気流が生じ、製版済みのマスタ8が徐々に吸引されつつ吸引ボックス17内に貯容されるようになっている。
【0040】
開閉板16は、製版動作終了後のマスタ切断後に、上記開閉板駆動手段が駆動されることにより、上記駆動力伝達部材を介してタワミ吸引位置から回転・変位してガイド搬送位置を占めることによって、マスタ8の先端を吸引口から吸引ボックス17内へと落ち込ませることなく、マスタ8の先端が図1等に示す製版待機位置まで搬送されるようにガイドするようになっている。また、開閉板16は、製版動作終了後のマスタ切断後においてガイド搬送位置を占めた後、上記開閉板駆動手段が上記とは反対方向に駆動されることにより、マスタ8の先端が反転ローラ対14a,14bのニップ部で挾持され上記製版待機位置に達した後、タワミ吸引位置へと再び回転・変位されるようになっている。
【0041】
吸引ボックス17の吸引口上方には、図7に示すように、製版済みのマスタ8における上方向凸形状の所定の大きさに形成されたマスタ8のタワミ8Aを検出するタワミ検知手段としてのマスタ検知センサ19が設けられている。マスタ検知センサ19は、例えば反射式のフォトインタラプタからなる。
【0042】
吸引ボックス17およびマスタ検知センサ19に隣るマスタ搬送方向X下流側には、マスタ8を搬送する回転自在な上下一対の反転ローラ14a,14bが配設されている。反転ローラ対14a,14bは、各外周部がシリコーンゴムでできていて、金属製の軸と一体的に形成されている。反転ローラ対14a,14bは、バネ等の付勢手段により適度な押圧力を与えられて圧接して設けられていて、上記各軸の両端部が各製版側板29a,29bに回転自在に支持されていることにより互いに反対方向に回転自在となっている。反転ローラ対14a,14bは、吸引ボックス17の上記吸引口よりマスタ8を遠ざける向きである反時計回り方向に少し傾斜して設けられている。
反転ローラ14aは、複数のギヤあるいはベルト等の回転伝達部材(図示せず)を介して第1ステッピングモータ35に連結され、これにより時計回り方向に回転駆動される。
【0043】
反転ローラ対14a,14bは、第1ステッピングモータ35を含む上記回転伝達部材によって、プラテンローラ10の周速度(搬送速度)よりも速い周速度(搬送速度)で回転するように設定されていて、マスタ8との間で滑りながら適度のフロントテンションをマスタ8に付与するようになされている。反転ローラ14aの軸端には、反転ローラ14aへの第1ステッピングモータ35の回転駆動力を断接する第2電磁クラッチ34が設けられている。第2電磁クラッチ34は、例えば、パウダー式電磁クラッチもしくはヒステリシス式電磁クラッチからなる。
なお、第2電磁クラッチ34に代えて、第1ステッピングモータ35とは独立したステッピングモータで単独駆動してもよい。
【0044】
反転ローラ対14a,14bに隣るマスタ搬送方向X下流側には、製版済みのマスタ8もしくはマスタ8の先端を版胴1に設けられたクランパ7に案内するためのガイド板15が反転ローラ対14a,14bの各軸方向に延在して設けられている。
製版装置70には、製版装置本体である製版側板対29a,29bの間に配設されているプラテンローラ10および搬送ローラ中対12a,12b近傍の温度を検出する温度検出手段としての温度センサ30が、上記同部位の湿度を検出する湿度検出手段としての湿度センサ31がそれぞれ設けられている。温度センサ30としてはサーミスタ等が好ましく用いられる。これらの温度センサ30や湿度センサ31は、後述する画像量検出手段48やヘッド温度センサ32等と共に、製版時におけるマスタ製版寸法の伸縮に影響を与えるマスタ伸縮関係要因の特性値を検出するための特性値検出手段群を構成する。
この実施形態では、実際の環境状態としての温度や湿度をできるだけ正確に把握するために、温度センサ30や湿度センサ31を製版装置本体の内部に配置したが、これに限らず、例えば構成部品等のレイアウトの制約から製版装置本体の内部に配置できない場合には、製版装置本体外部周辺の温度や湿度を検出すべく製版装置本体の外側の本体パネルの外壁面等や、製版印刷装置80設置部の周辺等に配置してもよい。すなわち、温度検出手段や湿度検出手段は、製版装置本体の内部および外部の温度や湿度のうちの少なくとも一方を検出すべく配設されていればよい。
【0045】
ここで、マスタ伸縮関係要因の特性・特性値について補足説明する。マスタ伸縮関係要因の特性・特性値としては、主要なものとして少なくとも以下の5つを経験的に挙げることができる。すなわち、マスタ伸縮関係要因の特性値の第1がマスタに形成される製版画像量であり、第2が製版装置本体の内部の温度であり、第3が製版装置本体の内部の湿度であり、第4がサーマルヘッド11の温度であり、第5がマスタの強度等に対応したマスタの種類である。
【0046】
マスタ8に形成される製版画像量を検出する画像量検出手段48としては、特開平9−193526号公報の段落(0033)等に記載されているものと同様の手段を用いている。すなわち、1版分のマスタ8全体を加熱穿孔・製版するために必要な発熱素子の数に対して、実際に上記原稿読取装置のスキャナ47により読み取られた画像情報からマスタ8を加熱穿孔・製版するために使用する発熱素子の数の比率、すなわちマスタ8の穿孔率(開口率)を求めることによって、マスタ8に形成される製版画像量(換言すれば印刷用紙に印刷される印刷画像量と略同じ)検出するものである。画像量検出手段48は、スキャナ47に配設されているCCD(電荷結合素子)等からなる画像センサで読み取られ変換されたアナログの画像電気信号を受け上記A/D変換部で変換されたデジタルの画像電気信号を画像信号処理装置を経由して受信して、画像データとして一時記憶する画像メモリと、その画像メモリに一度記憶された画像データを順次呼び出しながら、マスタ8に形成される1版分の製版画像の画像量を検知・認識してサーマルヘッド11を駆動制御する製版制御装置を起動する機能を有する上記画像信号処理装置とからなる。
【0047】
図9に、サーマルヘッド11の温度を検出するサーマルヘッド温度検出手段としてのヘッド温度センサ32の具体例を示す。ヘッド温度センサ32としては、サーミスタが好ましく用いられる。サーマルヘッド11の温度の検出箇所は、図9に示すようなサーマルヘッド11の発熱素子等が配置されている薄膜基板11cの表面部分、例えばコモン電極とリード電極との間に囲まれた発熱素子中央の表面部分に近い部位であることが望ましいが、現時点における技術では、その部分での検出は不可に近いので、ここではサーマルヘッド11に搭載されている回路基板上であるサーマルヘッド基板11a上でサーマルヘッド本体の温度検出を行う。なお、ヘッド温度センサ32の配置箇所は、サーマルヘッド基板11aに限らず、放熱板11bの内部に設けてもよい。
【0048】
製版装置70の図1において左側には、多孔性で円筒状の支持円筒体と、その支持円筒体の外周を覆うように複数層巻き付けられた樹脂あるいは金属網体製のメッシュスクリーン(図示せず)との2層構造からなる版胴1が配設されている。版胴1は、インキ通過性の多数の開孔を有する開口部1a(印刷可能領域)と、クランパ7等が設けられている非開口部(非印刷可能領域)とを備えた周知の構成を有する。版胴1は、図示しない端板フランジの外周部に巻着・固設されていて、後述するインキパイプ5を兼ねる支軸の周りに回転自在に支持されている。版胴1は、図示しない電動モータに連結されたギヤやベルト等の駆動伝達手段により、上記電動モータの回転駆動力が伝達されて、図中矢印方向(時計回り方向)に回転駆動される。
【0049】
版胴1の内部には、図示しない側板に回転自在に支持されていて、図示しないギヤ等の駆動伝達手段により上記電動モータの回転駆動力が伝達されて版胴1と同期して図中矢印方向(時計回り方向)に回転駆動され、版胴1の内周面に接触してインキを供給するインキローラ2と、インキローラ2とわずかな間隙を置いて平行に配置され、インキローラ2との間に断面楔状のインキ溜まり4を形成するドクタローラ3と、インキ溜まり4へインキを供給するインキパイプ5とが配置されている。なお、インキローラ2、ドクタローラ3およびインキパイプ5がインキ供給手段を構成する。
インキ溜まり4のインキは、版胴1の外部に設けられた図示しないインキパック等より吸引され、インキパイプ5の供給孔より供給される。
【0050】
版胴1の上記非開口部外周面上の一部分には、版胴1の一つの母線に沿って設けられた強磁性体製のステージ6と、このステージ6の両側端に設けられたクランパ軸に回動自在に取り付けられ、ステージ6の平面部に対して開閉自在なゴム磁石を有するクランパ7とがそれぞれ設けられている。クランパ7は、図示しない開閉装置により所定位置において開閉される。版胴1は、クランパ7が図1に仮想線で示す略右横に位置する状態、すなわち給版位置において停止されるようになっている。版胴1は、上記インキパック等と一体的になされた版胴ユニットとして構成されており、製版印刷装置80の本体フレームに対してインキパイプ5の軸線方向に挿脱自在になっている。
【0051】
インキローラ2に対向する版胴1の外周面の下方近傍には、印刷用紙(図示せず)の給送に同期して図示しないカム等により版胴1の外周面に接離自在になされ、バネ部材(図示せず)により版胴1の外周面に圧接する向きに付勢された押圧手段としてのプレスローラ21が配設されている。プレスローラ21は、図示しない筐体側板に回転自在に支持されたアーム軸22aの両端部に固定されたプレスローラアーム対22,22に、その軸部を回転自在に支持されていて、係止手段(図示せず)により通紙時以外は版胴1の外周面から離間した位置で保持される周知の構成を有する。
【0052】
版胴1の図1において右下方には、図示しない印刷用紙を積載して昇降自在な給紙トレイ(図示せず)と、上記印刷用紙を1枚ずつ分離給送する分離給紙部材と、分離給送された上記印刷用紙をタイミングを取って版胴1の外周面とプレスローラ21との間に搬送するレジストローラ対20,20等とを具備した給紙装置が配設されている。
版胴1の図1において左側には、使用済みのマスタ8を版胴1から剥離し排出する図示しない排版装置が配設されている。その排版装置の下方には、先端が版胴1の外周面より印刷用紙を剥離する版胴1の外周面に近接自在に支持された剥離爪24と、この剥離爪24により剥離・排出された印刷済みの用紙を積載する排紙トレイ(図示せず)等とを具備する排紙装置が配設されている。また、版胴1および製版装置70の上方には、原稿の画像を読み取るための図5に示すスキャナ47等を備えた図示しない原稿読取装置が配設されている。
【0053】
図6を参照して操作パネル40の細部構成を説明する。
操作パネル40は、上記原稿読取装置の上部に配設されている。操作パネル40には、原稿の画像の読み取りから排版、製版、給版、版付け印刷、排紙工程に至るまでの一連の工程(動作)を起動するための動作起動手段としてのスタートキー41と、印刷枚数等を設定・入力するテンキー43と、このテンキー43で置数(設定・入力)された印刷枚数分の印刷動作の起動を行うプリントキー42と、操作の状態やメッセージ等の表示をするLCD(液晶表示装置)表示部45等とが配置されている。LCD表示部45は、液晶駆動回路等を介して駆動される。
【0054】
次に、図5を参照して製版印刷装置80の制御構成を説明する。
図5において、符号65は、製版印刷装置80の主として製版装置70を制御するための制御装置を示す。制御装置65は、図示を省略した、CPU(中央演算処理装置)、I/O(入出力)ポート、ROM(読み出し専用記憶装置)、RAM(読み書き可能な記憶装置)およびタイマ等を備え、それらが信号バスによって接続された構成を有するマイクロコンピュータを具備している。
【0055】
制御装置65の上記CPU(以下、説明の簡明化を図るため、単に「制御装置65」というときがある)は、上記入力ポートを介して、上記した特性値検出手段群を構成する、画像量検出手段48と、温度センサ30と、湿度センサ31と、ヘッド温度センサ32とそれぞれ電気的に接続されていて、これらの手段、各センサからデータ信号を受信する。また、制御装置65は、上記入力ポートを介して、マスタ検知センサ19と、位置検知センサ58と、操作パネル40の上記各種キー(スタートキー41、プリントキー42、テンキー43)とそれぞれ電気的に接続されていて、上記センサ19や上記各種キーからオン/オフ信号やデータ信号を受信する。
制御装置65は、上記出力ポートを介して、操作パネル40のLCD表示部45と、電磁ブレーキ37と、第1ステッピングモータ35と、第2ステッピングモータ55と、第1電磁クラッチ33と、第2電磁クラッチ34とそれぞれ電気的に接続されていて、各種駆動回路(図示せず)を介して各種の指令信号をLCD表示部45、電磁ブレーキ37、第1ステッピングモータ35、第2ステッピングモータ55、第1電磁クラッチ33および第2電磁クラッチ34にそれぞれ送信する。また、制御装置65は、上記出力ポートを介して、上記マスタストック手段の上記開閉板駆動手段と、上記吸引ファン駆動モータとそれぞれ電気的に接続されていて、各種駆動回路(図示せず)を介して各種の指令信号を上記開閉板駆動手段、上記吸引ファン駆動モータにそれぞれ送信する。
【0056】
この実施形態では、制御装置65は、以下の諸制御機能を有する。
第1に、制御装置65は、画像量検出手段48、温度センサ30、湿度センサ31(特性値検出手段群)、ヘッド温度センサ32および位置検知センサ58からの各信号に基づいて、マスタ抱き角θaを変えるべく、すなわちアングルローラ27の上下方向の位置を変えるようにマスタ抱き角可変手段50の第2ステッピングモータ55を制御する制御手段としての機能を有する。
【0057】
第2に、制御装置65は、後述するマスタ種類検出手段からの信号に基づいて、予め使用するように設定されたマスタと相違するときに、製版動作を禁止する製版動作制御手段としての機能を有する。このとき、制御装置65は、例えば、「設定されたマスタと相違していますので、マスタを正規の物と交換して下さい」という旨の表示をさせるべくLCD表示部45を制御する機能を有する。
【0058】
第3に、アングルローラ27の上下方向の位置変位量に応じて、プラテンローラ10およびサーマルヘッド11のニップ部中心Ncと搬送ローラ中対12a,12bのニップ部との間のマスタ8の長さが変化するのに着目してその間のマスタ8を常に弛ませないようにするために、制御装置65は、アングルローラ27の上下方向の位置変位量に応じて、ニップ部中心Ncと搬送ローラ中対12a,12bのニップ部との間のマスタ8の長さの変化量を補償すべく、第1ステッピングモータ35、第1電磁クラッチ33、第2電磁クラッチ34や電磁ブレーキ37を制御する機能を有する。
【0059】
制御装置65内の上記ROMには、上記した第1ないし第3の機能を有する制御装置65による制御を行うための前もって実験等により求められたデータテーブルや図11に示すプログラムあるいは後述する動作を行うためのプログラムが予め記憶されている。制御装置65内の上記RAMは、上記CPUでの判断結果や計算結果を一時記憶したり、各センサ等からの出力信号を随時記憶したりしてこれら信号の入出力を行う。上記したデータテーブルとしては、例えば、上記した4つの特性値検出手段により検出される各特性値とマスタ抱き角θaとの関係データ、およびマスタ抱き角θaに対応したアングルローラ27の上下方向の位置と第2ステッピングモータ55への正転もしくは逆転駆動パルス数との関係データ等が挙げられる。
【0060】
マスタ種類検出手段は、上記したマスタ検知センサ19と、上記した吸引ボックス17を備えた上記マスタストック手段と、マスタ検知センサ19からのオン/オフ信号に基づいて、上記マスタストック手段によりマスタ8のタワミ8Aが吸引されるときの時間を測定するタワミ吸引計時手段としての制御装置65の上記タイマとからなる。
【0061】
次に、図1ないし図11を参照して動作について説明する。
先ず、図示しない原稿読取装置に配設されている原稿載置台に図示しない原稿がセットされ、ステップS1において、操作パネル40のスタートキー41が押されると製版スタート信号が生成されて、これが制御装置65に入力されることによって製版がスタートする。まず、スキャナ47がセットされた上記原稿の表面をプリスキャンして原稿画像を読み取ると共に、画像量検出手段48により上記原稿に対応した製版画像量が検出され、その信号が制御装置65に送信される。そして、制御装置65からの指令より、画像量検出手段48からのデータ信号に基づき、1版分のマスタ8に対する穿孔する割合がチエックされると共に、温度センサ30および湿度センサ31からの温度および湿度に係るデータ信号や、位置検知センサ58からのアングルローラ27の上下位置に係るデータ信号、あるいは製版開始途中からのヘッド温度センサ32からのサーマルヘッド11の温度に係るデータ信号に基づき、後述するように第2ステッピングモータ55を制御することによってアングルローラ27の上下方向の位置が設定される。
これと同時に、制御装置65からの指令により、後述するように第1ステッピングモータ35、第1電磁クラッチ33および第2電磁クラッチ34を制御することによって、アングルローラ27の上下方向の位置変位量に応じて、ニップ部中心Ncと搬送ローラ中対12a,12bのニップ部との間のマスタ8を常に弛ませないようにするための制御動作が行われる。
【0062】
上記電動モータが駆動されることにより版胴1が回転し、図示しない排版装置により、版胴1に巻装されている使用済みのマスタ(図示せず)が剥離され廃棄される。次いで、版胴1が給版位置で停止され、クランパ7が図示しない開閉装置により開放されて給版待機状態となる。この排版工程における版胴1の回転と並行して製版工程が開始される。
【0063】
すなわち、第1ステッピングモータ35が駆動されることにより、プラテンローラ10および搬送ローラ中対12a,12bが回転を開始して、マスタロール8aからマスタ8が引き出されつつ搬送されると共に、マスタ8の先端部分には上記したように傾斜した反転ローラ対14a,14bにより上方に浮き上げられる方向に力が作用するようになっていること、開閉板16がガイド搬送位置を占めた状態にあることおよびマスタ8の先端部が反転ローラ対14a,14bで挟持された停止状態にあることによって、マスタ8の先端部分が図7に示すように上方向に凸形状に盛り上げられてタワミ8Aが形成される。このタワミ8Aが所定の大きさになると、マスタ検知センサ19によりオン・検知される(ステップS2参照)。
【0064】
マスタ検知センサ19のオン・検知から設定された遅延時間経過後、上記開閉板駆動手段が駆動されることにより開閉板16がガイド搬送位置を占めた状態からタワミ吸引位置へと回転・変位して吸引ボックス17の上方に吸引口が形成されると共に、上記吸引ファン駆動モータが駆動されることにより吸引ファン18が回転し、これにより図1および図7において吸引ボックス17の内部における左側から右側へと向かう空気流が生じることで、マスタ8の先端部分に形成されたタワミ8Aが引き込まれながら貯留されていく(ステップS3参照)。このようなマスタ8の先端部分のタワミ8Aの吸引により、そのタワミ8Aが小さくなってマスタ検知センサ19で検知されなくなるとマスタ検知センサ19がオフし、所定の設定時間内に検知がオフされたかどうかが制御装置65により比較判断される(ステップS4、ステップS5参照)。
【0065】
マスタの種類として腰の強いマスタ8の場合には、吸引ボックス17により所定の大きさのタワミ8Aが吸引され引き込まれるまでのタワミ吸引時間が長くなり、これによりマスタ検知センサ19がオフするまでの時間が長くなる。反対に、腰の弱いマスタ8の場合には、吸引ボックス17により所定の大きさのタワミ8Aが直ぐに吸引され引き込まれるため、これによりマスタ検知センサ19がオフするまでの時間が短くなる。このように、制御装置65の上記タイマが、マスタ検知センサ19からのオン/オフ信号に基づいて、吸引ボックス17により所定の大きさのタワミ8Aが吸引されるときのタワミ吸引時間を測定することで、マスタ8の腰の強さの代用としてマスタ8の腰の強弱に対応したマスタの種類を検知することができる。
【0066】
このとき、制御装置65は、上記タイマからの信号に基づいて、予め使用するように設定されたマスタと相違する場合、すなわち上記タイマからのタワミ吸引時間が所定の設定時間内にない場合に、製版動作を禁止し停止させると共に、LCD表示部45を制御して、例えば、「設定されたマスタと相違していますので、マスタを正規の物と交換して下さい」という旨の表示をさせる。この場合、オペレータはLCD表示部45に表示されたメッセージどおりに、正規のマスタロール8aに交換するための操作を行うこととなる(表示停止モードとしてのステップS7、ステップS8参照)。これと反対に、ステップS5において、制御装置65が予め使用するように設定されたマスタであると判断した場合、すなわち上記タイマにより計時されたタワミ吸引時間に係るデータ信号から、所定の設定時間内にあると判断した場合に、製版動作を続行させる。(ステップS6参照)。
【0067】
なお、ステップS7、ステップS8においては、上記したような表示停止モードに限らず、例えばこれを無視してそのままステップS6におけると同様の動作に進む無視モードとに選択自在にしてもよい。この無視モードにおいては、例えば操作パネル40に上記表示停止モードから上記無視モードへ動作モードを切り換えるための切換キー等を設けてもよい。
【0068】
図11のステップS1において、製版動作がスタートした以降のバックテンションF1は、上記したようにフロントテンションF2よりも大きくなるように予め設定されている。これは、従来の技術で説明したような問題点、すなわち製版されたマスタ8がプラテンローラ10で搬送されるときに、摩擦力(搬送抵抗)の増加が無く搬送遅れが発生しにくい非穿孔部分と、摩擦力(搬送抵抗)増加による搬送遅れが発生する穿孔部分とでマスタ8の送りムラによる弛みが発生しないようにするためである。
【0069】
これに加えて、制御装置65は、温度センサ30からの製版装置70本体の温度検知に係るデータ信号、画像量検出手段48からのマスタ8に形成される製版画像量に係るデータ信号、および湿度センサ31からの製版装置70本体の湿度検知に係るデータ信号に基づき、以下の制御を行う。
すなわち、制御装置65は、穿孔画像部が多くマスタ8の搬送抵抗が大きくなる場合や、湿度が高くマスタ8表面への水分等の付着によってサーマルヘッド11との接触面等に貼り付きやすくなり、マスタ8とサーマルヘッド11との摩擦力が増加する高湿環境の場合には、第2ステッピングモータ55に所定の正転駆動パルス数を与えることにより、図1および図2においてアングルローラ27を上方向Uに変位させてマスタ抱き角θaを大きくして、プラテンローラ10の外周面とマスタ8との接触面積を増加させる。このようなプラテンローラ10の外周面とマスタ8との接触面積の増加により、その接触面での摩擦抵抗が全体として大きくなるから、マスタ8とプラテンローラ10との間の滑り量が減少して、製版長さが適正範囲に調節される。
【0070】
特に、上記環境に加えて、環境温度が高い場合には、サーマルヘッド11の蓄熱が多くなり、マスタ8が軟化して伸びやすくなることによりマスタ8に形成される穿孔径が大きくなるため、マスタ8の搬送抵抗がさらに増加するので、第2ステッピングモータ55に所定の正転駆動パルス数を与えることにより、図1および図2においてアングルローラ27をさらに上方向Uに変位させてマスタ抱き角θaをさらに大きくして、プラテンローラ10の外周面とマスタ8との接触面積をさらに増加させる。このようなプラテンローラ10の外周面とマスタ8との接触面積のさらなる増加により、その接触面での摩擦抵抗が全体としてさらに大きくなるから、マスタ8とプラテンローラ10との間の滑り量が減少して、製版長さが適正範囲に調節される。
【0071】
上記したとは逆に、温度や湿度が低く、マスタ8とサーマルヘッド11との摩擦力が低下する低温・低湿環境の場合には、制御装置65は、第2ステッピングモータ55に所定の逆転駆動パルス数を与えることにより、上記した動作例よりもアングルローラ27を下方向Uに変位させてマスタ抱き角θaを小さくして、プラテンローラ10の外周面とマスタ8との接触面積を低減させる。このようなプラテンローラ10の外周面とマスタ8との接触面積の低減により、その接触面での摩擦抵抗が全体として上記動作例よりも小さくなるから、マスタ8とプラテンローラ10との間の滑り量が増加して、製版長さが適正範囲に調節される。
【0072】
製版動作の途中においては、制御装置65は、さらに、ヘッド温度センサ32により検出されたサーマルヘッド11の温度をも加味して、アングルローラ27の上下方向の位置を変えることでマスタ抱き角θaを調整する。すなわち、図10に示すように、製版動作の始めのうち(版長の始めのうち)ではサーマルヘッド11の温度上昇は無視できるほどであるから、これに応じてマスタ抱き角θaを変える必要はないが、製版動作の途中からはサーマルヘッド11の蓄熱等により温度上昇があるから、これに応じてのマスタ抱き角θaを変える必要がある。
【0073】
上述したように、アングルローラ27を上方向Uに変位させてマスタ抱き角θaを大きくするときには、プラテンローラ10およびサーマルヘッド11のニップ部中心Ncと搬送ローラ中対12a,12bのニップ部との間のマスタ8に過大な張力を付与したりしてマスタ8の長さを伸ばさないようにすると共に、ニップ部中心Ncと搬送ローラ中対12a,12bのニップ部との間のマスタ8を弛まない状態とした上で、アングルローラ27の上方向Uの位置変位量に応じて、ニップ部中心Ncと搬送ローラ中対12a,12bのニップ部との間のマスタ8の長さを長くする必要がある。それ故に、第1電磁クラッチ33および第2電磁クラッチ34を共にオンすることにより、マスタ8の下流側部分を搬送ローラ中対12a,12bのニップ部および反転ローラ14a,14bのニップ部に移動しないように確実に係止させた状態とし、かつ、電磁ブレーキ37による所定のバックテンションF1をフロントテンションF2よりも低減した状態にして、ニップ部中心Ncと搬送ローラ中対12a,12bのニップ部との間のマスタ8の長さを長くする必要分だけ、第1ステッピングモータ35に所定の駆動パルスを与えることにより、プラテンローラ10を所定角度回転させて搬送ローラ中対12a,12bのニップ部との間にマスタ8を送ってやればよい。
【0074】
上述したとは反対に、アングルローラ27を下方向Dに変位させてマスタ抱き角θaを小さくするときには、ニップ部中心Ncと搬送ローラ中対12a,12bのニップ部との間のマスタ8を弛まない状態とするために、アングルローラ27の下方向Dの位置変位量に応じて、ニップ部中心Ncと搬送ローラ中対12a,12bのニップ部との間のマスタ8の長さを短くする必要がある。それ故に、第1電磁クラッチ33および第2電磁クラッチ34を共にオンし、かつ、電磁ブレーキ37による所定のバックテンションF1を付与した状態にして、ニップ部中心Ncと搬送ローラ中対12a,12bのニップ部との間のマスタ8の長さを短くする必要分だけ、第1ステッピングモータ35に所定の駆動パルスを与えることにより、プラテンローラ10、搬送ローラ中対12a,12bおよび反転ローラ対14a,14bを全て回転駆動することにより、マスタ8の先端をマスタ搬送方向X下流端側に送ってやればよい。
【0075】
また、本実施形態例では、アングルローラ27を変位させたときにマスタ8の長さ調整を行うようにしたが、これに限らず、トルクリミッタを設けると共に、搬送ローラ中対12の周速度をプラテンローラ10のそれよりも速く設定することで長さ調整を行ってもよい。
【0076】
図8(a),(b)には、製版長さを調整するための従来方式および本発明方式による相違点が表されている。
例えば、特開平7−156520号公報等に開示されているような従来方式では、図8(a)に示したように、製版長さを調整するために、搬送ローラ12bにトルクリミッタを設けると共に、搬送ローラ対12a,12bの周速度をプラテンローラ10のそれよりも速く設定し、かつトルクリミッタの伝達トルクを調整することにより、製版済みのマスタ8に生じる張力(フロントテンション)を制御する方式を採っていた。しかしながら、この方式では、マスタ搬送方向X下流側にマスタの一端を引っ張ることで製版済みのマスタ8にフロントテンションを付与して製版長さを調整していたので、多孔質支持体の厚さの薄いマスタ8や多孔質支持体の全く無いマスタ等のようにその穿孔部分での強度が大幅に低下するようなマスタ8の場合、フロントテンションを掛けたとき、張力ムラや強度の低下した穿孔部分が容易に伸びてしまい、それほど大きなフロントテンションを加えることができず、これにより製版済みのマスタ8が縮んで変形してしまう不具合が発生しやすくなったり、製版長さ、すなわち製版画像寸法再現性を満足することが困難であった。
【0077】
しかし、この実施形態では、図8(b)に示したように、上記各特性値検出手段群からの各信号に基づいて、マスタ抱き角θaを可変・制御することにより、プラテンローラ10の外周面と製版済みのマスタ8との接触面積の増減調整、すなわちプラテンローラ10の外周面と製版済みのマスタ8との接触面での摩擦抵抗の増減調整を行い、これにより従来のような問題点を生じることなく、所定のフロントテンションF2をプラテンローラ10よりマスタ搬送方向X下流側の製版済みのマスタ8に付与している。
【0078】
これをより詳細に説明すると次のようである。図8(b)において製版済みのマスタ8の搬送動作を静力学的な力の釣り合い状態で考察すると、アングルローラ27を経由してマスタ搬送方向X下流側の製版済みのマスタ8に付与されるフロントテンションF2は、マスタ接触境界Mbでは所定の大きさのフロントテンションF2が付与されていると考えられる。マスタ接触境界Mbよりもマスタ搬送方向X上流側にさか上るに連れて製版済みのマスタ8に作用するフロントテンションF2は、プラテンローラ10の外周面とマスタ8との摩擦抵抗により、あたかも減衰されたように徐々に小さくなっていくと見ることができるため、実際にサーマルヘッド11の発熱素子でマスタ8が加熱溶融穿孔されている部分では適度に減少した大きさの、つまり上記問題を生じさせないような適度なフロントテンションF2が作用しているものと考えられる。
上記作用に加えて、実際にサーマルヘッド11の発熱素子でマスタ8が加熱溶融穿孔されている直後の部分では、ニップ中心Ncからマスタ接触境界Mbに向けてプラテンローラ10の外周面が加熱溶融穿孔直後のマスタ8の部分を上記摩擦抵抗によって実質的に保持しながら移動しているから、その部分の熱収縮を抑えながら冷却作用を効果的に行っていると考えられる。
【0079】
なお、図10を参照して説明したように、製版途中からのサーマルヘッド11の昇温も無視できなくなることから、プラテンローラ10の蓄熱の影響も考慮する必要があり、このようなときには製版途中でもヘッド温度センサ32の信号に基づいてマスタ抱き角θaを調整する。
【0080】
吸引ファン18の継続的な回転により、マスタ8は次々に吸引ボックス17に引き込まれる形で吸引ボックス17に収納されながら製版が行われる。
一方、プラテンローラ10の回転開始と同じ頃に、原稿が上記原稿読取部に搬送される。上記原稿読取部のスキャナ47で読み取られた原稿の光学情報は、画像センサでアナログの画像信号に光電変換され、さらに上記A/D変換器および製版制御装置を経由して処理されて送出されるデジタルの画像信号に基づいて、サーマルヘッド11の発熱素子がパルス選択的に通電されて発熱され、マスタ8が画像情報に応じて選択的に加熱溶融され穿孔・製版される。
【0081】
一方、版胴1はクランパ7が図1において略右横となる給版位置になるまで回転して停止する。版胴1が給版位置に停止すると、上記開閉装置によりクランパ7が開放されて給版待機状態となる。クランパ7が開放されると同時に、制御装置65の指令の下に第2電磁クラッチ34に通電されることにより、第1ステッピングモータ35の回転駆動力が上記回転伝達部材を介して反転ローラ14aに伝達され、これにより反転ローラ対14a,14bが所定の角度回転し、製版済みのマスタ8の先端部がガイド板15に案内されてステージ6とクランパ7との間に挿入される。反転ローラ対14a,14bが所定の角度回転して、これに対応して第1ステッピングモータ35のステップ数がある設定値に達し、製版済みのマスタ8の先端部がステージ6とクランパ7との間に届いたと判断されると、上記開閉装置によりクランパ7が閉じられ、製版済みのマスタ8の先端部がステージ6とクランパ7との間に吸着・挾持される。
【0082】
製版済みのマスタ8の先端部のクランプ後、上記電動モータの駆動により版胴1が回転を再開して、製版済みのマスタ8が吸引ボックス17より引き出されながら反転ローラ対14a,14bにより搬送されて版胴1の外周面へ給版されるが、この版胴1の外周面への巻装時には巻装シワを発生させることなく行われる。第1ステッピングモータ35の所定ステップ数の回転駆動により、マスタ8への製版および設定量の製版済みのマスタ8の搬送が終了したと判断されると、第1ステッピングモータ35の回転駆動が停止されることによりプラテンローラ10、搬送ローラ中対12a,12bおよび反転ローラ対14a,14bの回転が停止すると共に、カッタ13が作動して製版済みのマスタ8が切断される。
このとき、版胴1の回転によってマスタ8が吸引ボックス17より完全に引き出される前にカッタ13によるマスタの切断が終了するようになっていて、マスタ8の後端部が引きちぎれたりしないような設定になっている。また、このとき、第2電磁クラッチ34がオフすることにより、版胴1の回転力によってマスタ8を介して反転ローラ対14a,14bが連れ回り・従動回転することとなるので、マスタ8に適度な張力が作用して巻装シワの発生をより確実に防止することができる。
そして、切断された製版済みのマスタ8の後端が、版胴1の回転によって製版装置70内から引き出され、版胴1の外周面に完全に巻き取られた段階で版胴1への製版済みのマスタ8の巻装が終了すると共に、吸引ボックス17の上記吸引口近傍に設けられたセンサ等により、マスタ8の残り等が判断される。
【0083】
版胴1への製版済みのマスタ8の巻装が完了すると、印刷工程が開始される。すなわち、上記給紙装置の上記分離給紙部材により上記給紙トレイ上に積載されている印刷用紙が1枚分離・給送され、レジストローラ対20,20でタイミングを取られ、版胴1の外周面とプレスローラ21との間に向けて搬送される。レジストローラ対20,20におけるマスタ搬送方向X下流近傍に配設されている図示しない用紙検知センサにより、上記印刷用紙の通過が検知されることによって、上記係止手段が解除されて、プレスローラ21が上記バネ部材の付勢力によって、上記印刷用紙が版胴1の外周面に巻装されている製版済みのマスタ8(図1には図示せず)に連続的に押圧されて、製版済みのマスタ8を版胴1の外周面に密着させるためのいわゆる版付け印刷が行われる。この版付け印刷では、版胴1の開孔部分から製版済みのマスタ8の穿孔部分へとインキが滲み出てきて上記印刷用紙の表面に転移され、孔版印刷が行われる。
このとき、インキローラ2も版胴1の回転方向と同一方向に回転する。インキ溜まり4のインキは、インキローラ2の回転によりインキローラ2の表面に付着され、インキローラ2とドクターローラ3との間隙を通過する際にその量を規制され、版胴1の内周面に供給される。
【0084】
こうして孔版印刷された印刷用紙の先端部は、版胴1の外周面に接近する剥離爪24により版胴1上の製版済みのマスタ8から剥離され、剥離された印刷用紙は上記排紙トレイに排出・積載される。版付け印刷終了後、プレスローラ21は版胴1から離間し、版胴1は図1においてクランパ7が略真上となる初期位置に復帰して、印刷待機状態となる。上記版付け印刷工程と並行して、開閉板16は時計回り方向に90度回転・変位してガイド搬送位置を占めると共に、吸引ファン18の回転が停止する。
【0085】
その後、プラテンローラ10、テンションローラ上下対9b,9a、搬送ローラ中対12a、12bおよび反転ローラ対14a、14bが回転を再開して、切断されたマスタ8の先端が反転ローラ対14a、14bのニップ部に向けて送り込まれる。第1ステッピングモータ35のパルス数から、切断されたマスタ8の先端が反転ローラ対14a、14bのニップ部に届き挟持されたと判断されると、プラテンローラ10、テンションローラ上下対9b,9a、搬送ローラ中対12a、12bおよび反転ローラ対14a、14bの回転が停止し、これと同時に開閉板16も反時計回り方向に回転して初期位置であるタワミ吸引位置に復帰して、次の製版に備えた製版待機状態になる。
【0086】
版付け印刷終了後、オペレータは上記排紙トレイに排出された印刷物を適宜目視して、通常の印刷動作を行ってもよいかどうかを適宜判断し、オーケーであればテンキー43で印刷枚数を設定し、プリントキー42を押すと、上記したと同様の給紙、通常印刷および排紙の各動作が順次行われる。
【0087】
本実施形態によれば、上述した構成を有することにより、後述する効果の他に、以下の利点が得られる。
本実施形態によれば、第1に、バックテンション付与手段は、マスタ貯容手段とプラテンローラとの間に配設され、マスタ搬送方向上流側のマスタに接触して回転自在なテンションローラと、このテンションローラの回転を制動する制動手段とからなることにより、プラテンローラよりもマスタ搬送方向上流側のマスタに対して、バックテンションを簡単な構成で確実に付与することができる。
本実施形態によれば、第2に、制動手段は、マスタの種類に応じて、その制動力を変えることができることにより、バックテンションの大きさを変えることが可能となるから、マスタの種類にかかわらず、上記第1の利点が得られる。
本実施形態によれば、第3に、マスタ種類検出手段からの信号に基づいて、予め使用するように設定されたマスタと相違するときに、製版動作を禁止する製版動作制御手段を有することにより、上記第1または第2の利点に加えて、予め使用するように設定されたマスタと相違するマスタを使用して製版動作を行うことによって生じるおそれのあるマスタのシワ等の不具合を未然に防止することができる。
本実施形態によれば、第4に、マスタ種類検出手段は、所定の大きさに形成されたマスタのタワミを検出するタワミ検知手段と、マスタのタワミを吸引して一時貯留するための吸引貯留手段と、タワミ検知手段からの信号に基づいて、吸引貯留手段によりマスタのタワミが吸引されるときの時間を測定するタワミ吸引計時手段とからなることにより、例えばマスタの腰の強さ(マスタの強度)がマスタの種類に応じて異なることを利用できるから、吸引貯留手段を有する通常の製版装置の構成において、簡単な構成でマスタの種類を検出できる。
【0088】
アングルローラ軸27aの各溝51u内における回転摺擦抵抗等を小さくしたい場合には、各アングルローラ軸27aの端部に転がり軸受けを装着した上で揺動アーム対51a,51bの各溝51u内に回転自在かつ移動自在に支持させてもよい。
マスタ抱き角可変手段50は、その構成を簡素に実現したものであるが、その利点を望まなくてもよいのであればこれに限らず、各製版側板29a,29bに同じ揺動アーム51bおよびこれらを揺動駆動する2つの同じ第2ステッピングモータ55をそれぞれ配設して、アングルローラ27を両端部において同一位置かつ同一位相で、換言すればプラテンローラ軸10aの軸方向と平行に上方向Uもしくは下方向Dに変位させるようにしてもよい。
【0089】
マスタ抱き角可変手段は、マスタ抱き角θaをそれほど広範囲に変える必要性等がないときには、図3に示したマスタ抱き角可変手段50に限らず、アングルローラ27をマスタ搬送方向X(水平方向)に沿って変位・駆動させる構成であってもよい。この構成では、ニップ部中心Ncとアングルローラ軸27aとの上下方向の位置関係およびアングルローラ27の外周径の大きさ等を適切に設定すると共に、例えば図3に示したマスタ抱き角可変手段50を反時計回り方向に90度回転させた状態に配置すればよい。この構成例では、アングルローラ27をマスタ搬送方向X(水平方向)に沿って変位させることとなるから、その変位に伴うニップ部中心Ncと搬送ローラ中対12a,12bのニップ部との間のマスタ8の長さの変化量を補償するような制御・構成を不要にすることができるという利点がある。
【0090】
マスタ抱き角可変手段は、上述したもの等に限らず、極言すれば、例えば特開平6−336001号公報の図1ないし図4に示されている押圧部材6,6a、7,8を変位可能に構成したり、あるいは伸縮可能に構成したりすることでも当業者ならば実現できる。
【0091】
本発明の実施形態は、上記実施形態等に限らず、上記実施形態等におけるような特性値検出手段群からの各信号に基づいて、制御装置65により行われる木目の細かいマスタ抱き角θaの可変制御によって得られる上記した利点や後述する効果をそれ程望まなくてもよいのであれば、特性値検出手段としての画像量検出手段48、温度センサ30、湿度センサ31、ヘッド温度センサ32のうちの何れか一つを配設して、上記制御手段がその何れか一つの特性値検出手段からの信号に基づいて、マスタ抱き角θaの可変制御を行うように構成してもよい(請求項5〜8参照)。
また、特性値検出手段としての画像量検出手段48、温度センサ30、湿度センサ31、ヘッド温度センサ32のうちの何れか一つを配設して構成したよりも木目の細かいマスタ抱き角θaの可変制御を望むのであれば、上記制御手段は、少なくとも二つ以上の上記特性値検出手段からの各信号に基づいて、マスタ抱き角θaの可変制御を行うように構成してもよい(請求項参照)。
【0092】
本発明の実施形態は、上記実施形態および上述した制御構成等に限らず、より一層木目の細かいマスタ抱き角θaの可変制御を行いたいのであれば、マスタ伸縮関係要因の特性としてマスタの種類を適用し、その特性値検出手段としてマスタの種類を検出するマスタ種類検出手段を制御構成としてもよい。すなわち、制御装置65は、特性値検出手段としての画像量検出手段48、温度センサ30、湿度センサ31およびヘッド温度センサ32からの各信号に加えて、マスタ種類検出手段としての上記タイマからのマスタの種類に係る信号に基づいて、マスタ抱き角θaを変えるようにマスタ抱き角可変手段50の第2ステッピングモータ55を制御する機能を付加したものある。そして、この場合においても、上記タイマを個別に1つだけ配設したり、あるいは上記タイマを含み少なくとも二つ以上の上記特性値検出手段からの各信号に基づいて、マスタ抱き角θaの可変制御を行うように構成してもよい。
【0093】
本発明の実施形態は、上記実施形態および上述した制御構成等に限らず、以下のようにしてもよい。すなわち、マスタ種類検出手段の上記タイマからのマスタの種類に係る信号に基づいて、制動力を変えるように制動手段としての電磁ブレーキ37を制御する制御手段を有する制御構成であってもよい。この構成の場合、例えばテンションローラ上下対9b,9aを製版側板対29a,29bから着脱可能に構成すると共に、マスタの種類に応じた制動力を機械的に予め付与されたテンションローラ上下対9b,9aを複数準備し着脱可能としておくような構成例等も含まれる。
【0094】
マスタ8は、上記した物に限らず、マスタ8の多孔質支持体の厚さを薄くしたマスタであってもよく、例えば本願出願人が提案した特開平11−77949号公報に記載されているような合成繊維ベースマスタ2でもよいし、また合成樹脂フィルムに溶融した樹脂を塗布して合成樹脂フィルムに樹脂膜を一体的に形成したようなマスタも使用することができる。このように、マスタの種類に応じて、バックテンションF1の可変制御やマスタ抱き角θaの可変制御を行うことが可能になると、従来の諸問題点を解決して後述する効果を奏するばかりでなく、使用するマスタの種類に応じて、印刷画質の向上を図ったり、マスタ(版)そのもののコストを低減したり、印刷コストをも低減したりすることが可能となることは言うまでもない。
【0095】
以上述べたとおり、本発明を特定の実施形態やこれらに包含されている実施例等について説明したが、本発明の構成は、上述したものに限定されるものではなく、これらを適宜組み合わせて、あるいは単独で構成してもよく、本発明の範囲内において、その必要性および目的・用途等に応じて種々の実施形態や実施例を構成し得ることは当業者ならば明らかである。
【0096】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、上述したような従来装置の有する諸問題点を解決して新規な製版装置および製版印刷装置を提供することができる。請求項毎の効果を挙げれば以下のとおりである。
請求項1記載の発明によれば、上記構成により、例えばサーマルヘッドにより加熱製版された直後のマスタにフロントテンションを付与するような場合に、マスタ抱き角の範囲内でプラテンローラの外周面に接触しているマスタにはその接触面積に応じた摩擦抵抗によって熱収縮の抑制作用と共に、プラテンローラの回転による冷却作用とが相乗的に働くので、所定のフロントテンションを付与しつつ製版時におけるマスタが伸びたり縮んだりすることを抑えることが可能となり、このような作用が行われるマスタ抱き角を簡単な構成で実現でき、かつ、特性値検出手段により検出されたマスタ伸縮関係要因の特性値の大小・高低等に応じて自動的に変えることができるので、マスタの伸縮によるマスタ製版寸法が変化したりすることを確実に防止することができ、従来のマスタは勿論のこと、多孔質支持体の厚さの薄いマスタや多孔質支持体の全く無いマスタを使用した場合でもシワ等の発生を防止できるようになり、ひいては製版時において画像寸法再現性をより良くすることができる
【0098】
請求項記載の発明によれば、上記構成により、変位部材を簡単な構成で実現できる。
【0099】
請求項記載の発明によれば、上記構成により、プラテンローラよりもマスタ搬送方向下流側のマスタに一定のフロントテンションを簡単な構成で確実に付与することができる。
【0100】
請求項記載の発明によれば、上記構成により、プラテンローラの回転入り込み側のマスタに高めのバックテンションを付与し、プラテンローラの回転入り込み側のマスタとプラテンローラとの間にわずかな滑りを発生させてマスタ搬送方向下流側に均一にマスタを移動することで、マスタ穿孔部分の搬送抵抗が増加することによる局部的な搬送遅れ等でマスタ搬送方向上流側のマスタに弛みができたり、あるいは例えばマスタ搬送方向下流側に配設されているマスタ搬送手段によって搬送抵抗の少ない未製版部分が引き出されてマスタ搬送方向上流側のマスタに発生した弛みが助長され、その弛みがプラテンローラで押し潰されてシワが発生してしまう等の不具合を防止できるので、従来のマスタは勿論のこと、多孔質支持体の厚さの薄いマスタや、多孔質支持体の無いマスタを使用した場合でもシワの発生を防止できる
【0102】
請求項記載の発明によれば、特性値検出手段は、製版画像量を検出する画像量検出手段からなることにより、製版画像量の多少に応じて、請求項記載の発明の効果を奏する。
請求項記載の発明によれば、特性値検出手段は、製版装置本体の内部および外部の温度のうちの少なくとも一方の温度を検出する温度検出手段からなることにより、その温度の高低に応じて、請求項記載の発明の効果を奏する。
【0103】
請求項記載の発明によれば、特性値検出手段は、製版装置本体の内部および外部の湿度のうちの少なくとも一方の湿度を検出する湿度検出手段からなることにより、その湿度の高低に応じて、請求項記載の発明の効果を奏する。
請求項記載の発明によれば、特性値検出手段は、サーマルヘッドの温度を検出するサーマルヘッド温度検出手段からなることにより、サーマルヘッドの温度の高低に応じて、請求項記載の発明の効果を奏する。
【0104】
請求項記載の発明によれば、上記構成により、マスタ伸縮関係要因の特性値の大小・高低等に応じて、より木目細かに対応できるようになって、請求項ないしの何れか一つに記載の発明の効果を奏する。
【0105】
請求項10記載の発明によれば、上記構成により、マスタもしくは製版されたマスタがサーマルヘッドの蓄熱などの影響を受けて変形してしまうことを防止できると共に、ひいてはマスタのシワ発生をより確実に防止できる。
【0106】
請求項11記載の発明によれば、上記構成により、版胴へのマスタ巻装時において巻装シワ等の発生を防止して、画像寸法再現性を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す製版印刷装置および製版装置の一部断面正面図である。
【図2】図1の製版装置の要部を拡大して示す一部断面正面図である。
【図3】図1の製版装置のマスタ抱き角可変手段の要部を示す一部断面正面図である。
【図4】図3のマスタ抱き角可変手段のさらに要部を示す斜視図である。
【図5】図1の製版印刷装置の主として製版装置周りの制御構成を示すブロック図である。
【図6】操作パネルの要部の平面図である。
【図7】図1の製版装置の動作を表す要部の一部断面正面図である。
【図8】(a)は、従来の製版装置における要部の動作を説明する概略的な正面図であり、(b)は、図1の製版装置における要部の動作を説明する概略的な正面図である。
【図9】サーマルヘッドの温度を検出するヘッド温度センサの配置箇所を示すサーマルヘッドの正面図である。
【図10】サーマルヘッドの温度とマスタ抱き角との関係を説明するグラフである。
【図11】製版動作の要部を表すフローチャートである。
【符号の説明】
1 版胴
2 インキ供給手段を構成するインキローラ
8 マスタ
8c マスタ貯容手段としてのマスタ支持部材
9a,9b テンションローラ下・上
10 プラテンローラ
10a プラテンローラ軸
10b プラテンローラの軸中心
11 サーマルヘッド
12a,12b搬送ローラ中対
27 変位部材としてのアングルローラ
30 温度検出手段としての温度センサ
31 湿度検出手段としての湿度センサ
32 サーマルヘッド温度検出手段としてのヘッド温度センサ
33 トルクリミッタとしての第1電磁クラッチ
35 搬送ローラ駆動手段としての第1ステッピングモータ
36 バックテンション付与手段
38 フロントテンション付与手段
40 操作パネル
48 画像量検出手段
50 マスタ抱き角可変手段
55 変位部材駆動手段としての第2ステッピングモータ
65 制御手段としての制御装置
70 製版装置
80 製版印刷装置
F1 バックテンション
F2 フロントテンション
Mb マスタ接触境界
Nc ニップ部中心
θa マスタ抱き角
θb マスタ離れ角
X マスタ搬送方向

Claims (11)

  1. 繰り出されるマスタを画像情報に応じて加熱製版するサーマルヘッドと、該サーマルヘッドにマスタを押圧しながらマスタ搬送方向下流側にマスタを移動する回転自在なプラテンローラとを具備する製版装置において、
    上記プラテンローラの軸方向から見て、上記サーマルヘッドと上記プラテンローラとのニップ部中心と上記プラテンローラの軸中心とを結ぶ半直線と、上記プラテンローラの軸方向から見て、マスタが上記ニップ部中心から上記マスタ搬送方向下流側で上記プラテンローラの外周面に接触しているマスタ接触境界と上記プラテンローラの軸中心とを結ぶ半直線とがなすマスタ抱き角を変えるマスタ抱き角可変手段と、
    製版時におけるマスタ製版寸法の伸縮に影響を与えるマスタ伸縮関係要因の特性値を検出するための特性値検出手段と、
    上記特性値検出手段からの信号に基づいて、上記マスタ抱き角を変えるように上記マスタ抱き角可変手段を制御する制御手段とを有し、
    上記マスタ抱き角可変手段は、上記プラテンローラよりも上記マスタ搬送方向下流側に配設され、上記マスタ搬送方向下流側のマスタに接触して上記マスタ抱き角を変える方向に変位可能な変位部材と、この変位部材を上記マスタ抱き角を変える方向に変位させる変位部材駆動手段とを備えていることを特徴とする製版装置。
  2. 請求項1記載の製版装置において、
    上記変位部材は、回転自在なローラであることを特徴とする製版装置。
  3. 請求項1または2記載の製版装置において、
    上記変位部材よりも上記マスタ搬送方向下流側に配設され、上記マスタ搬送方向下流側にマスタを移動する搬送ローラと、この搬送ローラを駆動する搬送ローラ駆動手段と、上記搬送ローラと上記搬送ローラ駆動手段との間に設けられ、上記ニップ部中心と上記搬送ローラとの間のマスタにフロントテンションを付与するトルクリミッタとを有することを特徴とする製版装置。
  4. 請求項3記載の製版装置において、
    マスタを繰り出し可能に貯容するマスタ貯容手段と、このマスタ貯容手段と上記プラテンローラとの間のマスタにバックテンションを付与するためのバックテンション付与手段とを有し、上記バックテンションを上記フロントテンションよりも大きくしたことを特徴とする製版装置。
  5. 請求項1ないし4の何れか一つに記載の製版装置において、
    上記マスタ伸縮関係要因の特性値が、マスタに形成される製版画像量であり、
    上記特性値検出手段は、上記製版画像量を検出する画像量検出手段からなることを特徴とする製版装置。
  6. 請求項1ないしの何れか一つに記載の製版装置において、
    上記マスタ伸縮関係要因の特性値が、上記製版装置本体の内部および外部の温度のうちの少なくとも一方の温度であり、
    上記特性値検出手段は、上記少なくとも一方の温度を検出する温度検出手段からなることを特徴とする製版装置。
  7. 請求項1ないし4の何れか一つに記載の製版装置において、
    上記マスタ伸縮関係要因の特性値が、上記製版装置本体の内部および外部の湿度のうちの少なくとも一方の湿度であり、
    上記特性値検出手段は、上記少なくとも一方の湿度を検出する湿度検出手段からなることを特徴とする印刷装置。
  8. 請求項1ないし4の何れか一つに記載の製版装置において、
    上記マスタ伸縮関係要因の特性値が、上記サーマルヘッドの温度であり、
    上記特性値検出手段は、上記サーマルヘッドの温度を検出するサーマルヘッド温度検出手段からなることを特徴とする印刷装置。
  9. 請求項1ないし8の何れか一つに記載の製版装置において、
    上記制御手段は、少なくとも二つ以上の上記特性値検出手段からの各信号に基づいて、上記マスタ抱き角を変えるように上記マスタ抱き角可変手段を制御することを特徴とする製版装置。
  10. 請求項1ないし9の何れか一つに記載の製版装置において、
    上記プラテンローラよりも上記マスタ搬送方向下流側のマスタもしくは製版されたマスタを、上記サーマルヘッドより遠ざける向きに搬送するようにしたことを特徴とする製版装置。
  11. 請求項ないし10の何れか一つに記載の製版装置と、該製版装置で製版されたマスタを巻装する版胴と、該版胴上のマスタにインキを供給するインキ供給手段とを有し、上記版胴上のマスタに印刷用紙を押し付けて印刷用紙に印刷を行うことを特徴とする製版印刷装置
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