第1の発明は、電動送風機と、前記電動送風機の上流側に設置され前記電動送風機により吸引した塵埃を含む空気を導入し前記空気から内部に備えた略円筒形状の濾過フィルターにより前記塵埃を分離する塵埃分離部と、前記塵埃分離部より下方に設けられ前記塵埃分離部で分離された塵埃を収容する塵埃収容部と、前記塵埃分離部の上方に設けた吸引口と、前記濾過フィルターの内側に設けられ前記吸引口から導入する塵埃を含む空気を旋回気流として流す旋回気流通風路と、前記濾過フィルターの外周に設けられ前記電動送風機の吸引力が作用する空間と、前記塵埃分離部に設けられ前記空間と連通する開口部とを備え、前記旋回気流が前記塵埃収容部方向に発生するように前記吸引口の下端部が前記開口部の上端部より上方になるよう配置し、前記略円筒形状の濾過フィルターは、金属板にエッチング加工で上流側表面と下流側表面との間を貫通する複数の貫通孔を有し前記貫通孔の中心軸方向が前記金属板面の法線方向に対して傾斜して設けた平板上の濾過フィルターを略円筒形状にして構成され、前記貫通孔の中心軸方向が、前記略円筒形状の濾過フィルターの上流側表面に沿って流れる前記旋回気流の旋回下降方向に対して略逆方向となるように配置した電気掃除機とするものである。
この構成により、旋回気流の進行方向は、旋回しながら塵埃収容部方向への下向きの方向成分も持つため、この旋回気流が旋回しながら下降している状態において、貫通孔の中心軸方向が旋回気流の進行方向と逆方向になる様に濾過フィルターにおける貫通孔の配置を設定することで、糸状の塵埃を貫通孔入口内部の傾斜面に衝突させ、塵埃が貫通孔の奥(下流側)へ進入することを阻害し、糸状の塵埃が貫通孔に突き刺さって絡みつくことや詰まったりすることを抑制できる。これにより、濾過フィルターの通気性を維持することができ、風量低下を招くことなく、強い吸込み力を長時間維持できかつ、掃除作業後の塵埃の排出作業が容易にできる電気掃除機を提供できるものである。また、濾過フィルターの貫通孔はエッチング加工によりエッチング溶液によって溶かすことにより孔を形成していく構成により、濾過フィルターは表面の凹凸が極めて小さくなり、濾過フィルター表面への塵埃の堆積や絡みつきがほとんどなくなり、濾過フィルターの清掃メンテナンス性に優れた電気掃除機を提供できる。また、濾過フィルターの基材を金属板とする構成により、エッチングの加工性に優れ、また静電気による塵埃、特に細塵の付着を抑制する良好な濾過フィルターを安価に作成することができ、捕集した塵埃を容易に排出できる電気掃除機を提供することができる。
第2の発明は、特に第1の発明における旋回気流通風路を略円筒形状とし、吸引口をこ
の旋回気流通風路の略円筒の接線方向に構成した電気掃除機である。
このような発明によって、塵埃を含む空気が塵埃分離部に流入する際にその接線方向から流入するため、塵埃分離部内で旋回気流をより一層強力に発生させることができ、濾過フィルターは、旋回気流による自浄作用で目詰まりすることなく、吸込力の低下を抑制する。また、この旋回気流の強い力は貫通孔に浅く入り込んだ糸状の塵埃の先頭部を上流側に引っ張ることから、糸状の塵埃の先頭部は貫通孔内の傾斜面を滑るようにすり抜け、濾過フィルターの内側へと引き戻され、目詰まりすることなく、吸込力の低下を抑制することができる。
第3の発明は、特に第1の発明または第2の発明における濾過フィルターの貫通孔は、上流側孔径が小さく、下流側孔径が大きく構成されている。この構成により、濾過フィルターの濾過作用は上流側の小さな孔径で決定されて、塵埃の通過を濾過フィルターの上流側で阻止し、塵埃による貫通孔の詰まりを抑制することができる。
第4の発明は、特に第1から第3の発明における濾過フィルターの貫通孔は、上流側孔と、下流側孔と、前記上流側孔と前記下流側孔とを連通させる連通部孔とで構成され、前記連通部孔の孔径は、前記上流側孔および前記下流側孔の孔径より小さく構成されている。この構成により、濾過フィルターの貫通孔内の上流側孔と下流側孔に凹部が形成され、糸状の塵埃の先頭部や粒状の塵埃が上流側孔の凹部ではね返って貫通しにくくなり、濾過フィルターへの糸状の塵埃(髪の毛など)の絡みつきや詰まりが抑えられ、良好な濾過フィルターとすることができる。よって、濾過フィルターの清掃メンテナンス性に優れた電気掃除機を提供できる。
第5の発明は、特に第1から第4の発明において、1つの貫通孔は、濾過フィルターの上流側表面に形成する第1のエッチング穴と、下流側表面に形成する第2のエッチング穴の位置を面方向にシフトしてエッチング加工を施し、前記第1、第2のエッチング穴を結合させて形成したものである。この構成は、エッチングで形成した貫通孔が所定の傾斜角を有するように仕上がり、シフト量を変更することにより開ける孔の角度を変えることができる。そのため糸状の塵埃の絡みつきが少ない濾過フィルターを安価に作成することができ、捕集した塵埃を容易に排出できる電気掃除機を提供することができる。
以下に本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態
によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1、図2は、本発明の実施の形態1における電気掃除機を示している。
図2に示すように、掃除機本体1内には、吸引気流を発生させる電動送風機21が内蔵されており、また、掃除機本体1の外部には、車輪3およびキャスター4が取り付けられており、床面を自在に移動できる。さらに、電動送風機21の上流側には、通気口を有する隔壁26を介して、電動送風機21により吸引した塵埃を含む空気を導入する集塵ケース5が掃除機本体1に対して着脱自在に設置されている。
また、集塵ケース5は、径の異なる複数の中空円筒を多段に連ねた形状からなり、本実施の形態1では3段構成で、上段から順に、ケース上部22a、ケース中央部22b、塵埃収容部24からなり、このケース上部22aとケース中央部22bとを塵埃分離部23とするものであり、ケース上部22aには塵埃を含む空気を接線方向より導入する吸引口6を備えて構成されている。
集塵ケース5は、吸引口6から最下段の塵埃を堆積させる塵埃収容部24まで連通されており、吸引口6から電動送風機21に至る風路は、集塵ケース5の塵埃分離部23に設けた開口部25にて掃除機本体1の隔壁26と連通させて形成している。さらには塵埃分離部23には、円筒状の濾過フィルター27を設置している。
また、図1に示すように吸引口6には、吸引ホース7、延長管8が順次接続されており、延長管8の先端に吸込具9を取り付けており、電動送風機21を運転することにより、家屋内の床面上の塵埃を吸引することができる。
この円筒状の濾過フィルター27は、本実施の形態1では、上流側に粗塵フィルターからなる円筒形状の第1の濾過フィルター27aと、この第1の濾過フィルターより下流側の外周に設けた細塵フィルターからなる円筒形状の第2の濾過フィルター27bとの2層構造から構成されている。
この第1の濾過フィルター27aと第2の濾過フィルター27bは、集塵ケース5の吸引口6と電動送風機21とが連通する第1の風路である主風路29aの途中に配置している。
また、吸引口6から電動送風機21に至る主風路29aは、第1の濾過フィルター27a内から第2の濾過フィルター27b外周の空間全周にわたり設けられている。
次に、図3(a)、図3(b)、図3(c)、図3(d)により、集塵ケース5と円筒状の濾過フィルター27の詳細について説明する。
図3(a)に示すように、集塵ケース5は、縦型の中空円筒を3段に連ねた形状であり、吸引口6は図3(c)に示すように、ケース上部22aの円周断面の接線方向から気流が流入するように、偏心した位置に配置されている。本実施の形態1では、集塵ケース5を中空円筒としたが、円筒は真円に限定せず楕円形状、8角形や10角形などの多角形形状等でもよく、吸引口6より接線方向から流入した気流が、集塵ケース5の内面に沿って旋回気流が生じる形状であれば良い。
また、円筒状の濾過フィルター27においても同様に、円筒は真円に限定せず楕円形状や8角形や10角形などの多角形形状等でもよく、集塵ケース5の内面に沿って発生した
旋回気流が、第1の濾過フィルター27a内の円筒中空部においても発生し得る形状であれば良い。また、吸入口6が中央に位置していても案内路やガイド等で旋回気流が発生する構成であれば構わない。
従って、塵埃分離部23におけるケース上部22a内面に沿って発生した旋回気流ならびに、第1の濾過フィルター27a内の円筒中空部に発生した旋回気流を形成する通路を旋回気流通風路とするものである。
また発生した旋回気流を塵埃収容部24方向に発生させるよう、ケース上部22aに設けた吸引口6の配置は、塵埃分離部23に設けた開口部25の上端部より、吸引口6の下端部が上方になるよう配置されているものである。この様に吸引口6の配置位置を開口部25より高くすることで、吸引口6からケース上部22aの接線方向より導入された空気は、開口部25側の吸引力作用で下方向である塵埃収容部24方向への旋回気流として発生する。この旋回しながら下降を続ける旋回気流により、綿ゴミなどの粗塵52は風圧を受けて旋回下降し塵埃収容部24に導かれるものである。
集塵ケース5の下部には、吸引した塵埃を堆積させる塵埃収容部24が設けられており、さらに、塵埃収容部24側の集塵ケース5の底面は、開閉蓋31となっており、ヒンジ32を介して、開閉蓋31を開き、塵埃収容部24内の塵埃を排出できるよう構成されている。
また、集塵ケース5は本実施の形態1ではアクリル樹脂により構成されているが、少なくともその一部を透視部材で構成することにより、上方などより内部の塵埃量などを目視で容易に確認できるので好ましい。透明部材としては、ABS、ポリプロピレン、アクリル樹脂などが部材として容易に入手でき、加工性が良い点で好ましい。
また、図3(b)に示すように、円筒形状の集塵ケース5の吸引口6と塵埃収容部24の間の内壁には、集塵ケース5と円筒状の濾過フィルター27間の外側全周にわたり設けた空間部33が形成されており、集塵ケース5内部と電動送風機21の吸引口がこの空間部33を介して連通することとなる。
さらに、集塵ケース5のケース上部22aの内面は、円筒状の濾過フィルター27を構成する内側の第1の濾過フィルター27aの内面と全体として1つの面となっている。すなわち、集塵ケース5の内面に突出した突起物がない状態となっている。
円筒状の濾過フィルター27は、図3(d)に示すように、円筒形状の集塵ケース5内部を取り囲むように円筒形状となっている。吸引気流に対して上流側に位置する粗塵フィルターからなる第1の濾過フィルター27aは、吸引気流中の塵埃から綿埃、毛髪などの比較的サイズの大きい塵埃を除塵するものであり、下流側に位置する細塵フィルターからなる第2の濾過フィルター27bは、粒子径の細かい砂塵、花粉、ダニ糞などの塵埃を気流中から除塵するものである。
このように、除塵する塵埃のサイズに応じて複数層の円筒状の濾過フィルター27を設けることで、濾過フィルターの目詰まりの頻度を低減し、風量持続性能を延ばすことができるが、単一層であっても構わない。
この第1の濾過フィルター27aとしては、金属メッシュ、パンチングメタル、樹脂メッシュなど、砂塵などの細塵が通り抜けられる比較的孔径の大きな部材を用いるのが好ましく、本実施の形態1では、貫通孔径が100〜300ミクロンの微小な開口の貫通孔を設けた金属メッシュを用いている。
一方、第2の濾過フィルター27bとしては、不織布、パルプ、ガラス繊維、HEPAフィルターなどを用いることができるが、比較的細かい粒子を効率よく除去できる不織布部材などをプリーツ加工しひだ折りした形状部材を連結し、円筒状に設置することで、通気抵抗を低減しながら、除塵性能を確保することができる。また塵埃付着面に、PTFEの多孔質部材をコーディングしたフィルターを用いると、塵離れが良くなることから、第2の濾過フィルター27bの目詰まりを抑制することができる点でより好ましい。
図4は図3(d)に示す第2の濾過フィルター27bの一部を拡大した要部断面図である。
本実施の形態1では、図3(d)および図4に示すように、特に、貫通孔径が約0.5ミクロンのPTFE膜をPET樹脂で剛性を持たせたシート状のフィルターをプリーツ加工し、ひだ折り形状のフィルター41にし、両端部を連結して円筒形状にしたものを用いている。
なお、ひだ折り形状のフィルター41の外周部において、吸引気流の上流側にあたるひだ折り形状部材の内面のくぼみ部42は略U字形状にR=2〜5mm程度の丸みを持たせている。尚、ひだ折り形状フィルター41の第1の濾過フィルター27aと近接する側のひだには、特にくぼみ部分は持たせてない。
また、第2の濾過フィルター27bであるひだ折り形状のフィルター41の外部は、この上端および下端の数mm範囲のみ、樹脂やシール剤等でシールされているシール部43を設け、上下方向からの通気性を遮断している。
以上のように構成された本実施の形態1の電気掃除機について、図5(a)、図5(b)、図5(c)を基に、その動作を説明する。
電動送風機21を運転開始すると、吸引気流が発生し、吸込具9、延長管8、吸引ホース7を通じて、空気とともに床面からの塵埃が集塵ケース5内に吸い込まれる。このとき、集塵ケース5の吸引口6は、円筒断面に対して接線方向に偏心して設置されているため、図5(a)に示すように、吸引口6より流入した気流は、集塵ケース5の円筒断面の接線方向から侵入し旋回気流に変化する。
ここで、吸引口6の下端は開口部25の上端よりも上部に配置されているため、吸引口6から流入する気流は旋回成分を持つとともに、下方向への成分も持つこととなる。そのため、集塵ケース5のケース上部22aで発生した旋回気流は、旋回しながら下降を続け、円筒状の濾過フィルター27付近に到達する。ここで円筒状の濾過フィルター27の上流側の第1の濾過フィルター27aは、集塵ケース5内部に向けた突起物がないため、旋回気流の流れを止めることはなく、さらに、気流は旋回を続けながら、図5(b)に示すように、第1の濾過フィルター27a、第2の濾過フィルター27bを順次通過し、空間部33を通って、電動送風機21に吸引される。
ここで、吸引気流と一緒に吸引された塵埃は、気流の流れと共に旋回しながら円筒状の濾過フィルター27に導かれ、この塵埃の内、砂塵などの細塵51は、第1の濾過フィルター27aを通過し、外側の第2の濾過フィルター27bで濾し取られる。
また、比重が軽く、風圧を受けやすい綿埃や糸状の塵埃などの粗塵52は、旋回気流で容易に第1の濾過フィルター27a表面上から剥離され、図5(b)、図5(c)に示すように、第1の濾過フィルター27aの円筒中空部で旋回を続けることとなる。この作用
により、第1の濾過フィルター27aは、気流による自浄作用が働いていることになるため、目詰まりすることなく、吸込力の低下を抑制する。さらに、吸引する塵埃量が増加していくと、粗塵52は、第1の濾過フィルター27a内を旋回しながら下降し、塵埃収容部24に導かれる。
次に、第1の濾過フィルター27aについて詳細に説明する。
図6(a)は、図5(b)中の円筒状の第1の濾過フィルター27aの断面構造を示す断面図であり、図6(a)に示すように、円筒状の第1の濾過フィルター27aは、内周面を上流側フィルター面61とし、外周面を下流側フィルター面62とした時、第1の濾過フィルター27aの内周側は塵埃収容部24の上空に位置し、そこには旋回気流50が上流側フィルター面61に沿って旋回している。そして、第1の濾過フィルター27aの外周側は第1の濾過フィルター27aを通過した空気の通風路となり、その通風路中に第2の濾過フィルター27bが配置され、その下流に電動送風機21が配置される。第1の濾過フィルター27aは、上流側フィルター面61から下流側フィルター面62までを貫通する傾斜した複数の貫通孔28が、フィルター面のほぼ全域にわたって分散して形成されている。
図6(b)に示すように、第1の濾過フィルター27aの貫通孔28は、貫通孔28の中心軸63がフィルター面の法線64方向に対して傾斜角度Φの傾斜を有しており、上流側開口28aから下流側開口28bへ貫通するベクトル方向におけるX方向のベクトル成分が旋回気流の進行方向に対して逆方向としているものである。
このように構成された第1の濾過フィルター27aは、以下のように動作する。図7は糸状の塵埃52cを対象物にした動作を説明するための図である。図7(a)に示すように、髪の毛等の長細い糸状の塵埃52cが旋回気流50に乗って濾過フィルター27aの上流側で旋回する。旋回気流50の一部は貫通孔28の上流側開口28a付近で折り返して貫通孔28内を流れ、吸引気流71として下流側に抜ける。
そして、長細い糸状の塵埃52cが貫通孔28に近づくと、この糸状の塵埃52cの先頭部が吸引気流71によって貫通孔28内に引き込まれる。その際、上流側開口28aから下流側開口28bへ貫通する貫通孔28の傾斜方向が旋回気流の進行方向に対して逆方向になるように傾斜しているため、旋回気流に乗って旋回している糸状の塵埃52cが貫通孔28に入り込もうとすると、糸状の塵埃52cの先端部が貫通孔28入口内部の傾斜面72に衝突してしまい、貫通孔28の奥へ進入することが阻害される。
さらに長細い糸状の塵埃52cは、旋回気流に乗って旋回し慣性力を持っているので、一旦貫通孔28入口内部の傾斜面72に衝突してしまうと、その慣性力の作用で貫通孔28を通り過ぎようとする。さらに糸状の塵埃52cの先頭部以外の部分には、旋回気流50によって押される力も加わって、貫通孔28の前方に運ばれて行き、貫通孔28内に引き込まれつつある先頭部を旋回気流50の力によって逆方向に引っ張ることになる(図7(b)を参照)。
糸状の塵埃52cの先頭部以外に加わった旋回気流50の強い力は貫通孔28に浅く入り込んだ塵埃52cの先頭部を上流側に引っ張ることから、糸状の塵埃52cの先頭部は貫通孔28内の傾斜面72を滑るようにすり抜け、第1の濾過フィルター27aの内側へと引き戻される。
そして、糸状の塵埃52cは、その後も第1の濾過フィルター27a内の旋回気流50に乗って旋回し続け、重力によって次第に下降してゆき、下方に在る塵埃収容部24に収
容され捕集される。
また逆に、同じ糸状の塵埃52cであっても長さの短いものは、一旦糸状の塵埃52cが貫通孔28内に入り込めば、貫通孔28内の吸引気流71で吸い込まれて第1の濾過フィルター27aを通過し、下流に配置された第2の濾過フィルター27aに達する。
また、この旋回気流による慣性力は、慣性力の影響を受けやすい比重の大きい塵埃には、上記同様の慣性力による作用がより強くもたらされるものであり、例えば砂ゴミ等の前記糸状の塵埃52cよりも比重の大きい塵埃の場合は、旋回気流による慣性力をより強く受け、貫通孔28を勢いよく通り過ぎようとし、吸引気流71の吸引力に引き込まれずに済むのである。
次に、貫通孔28の傾斜方向について、図8を用いて詳細に説明する。図8は、濾過フィルター27aを塵埃分離部23内に装着した状態での貫通孔28の傾斜方向を拡大イメージ化した模式図であり、円筒状の濾過フィルター27aの内側(上流側)から見た図である。
図8に示す様に、第1の濾過フィルター27aの貫通孔28における上流側開口28aから下流側開口28bへ向かう貫通孔中心軸63のベクトル方向は、旋回気流50の進行方向と真逆方向(180度)に位置させるのが、最も貫通孔28への塵埃侵入詰まりを防ぐ効果が得られるものであり(図8(a)を参照)、貫通孔28内に入りかけた糸状の塵埃52cを、慣性力や旋回気流50の力によって第1の濾過フィルター27aの上流側に引き戻す効果が得られる。
しかしながら、図5(c)に示す様に、旋回気流の進行方向は、旋回しながら塵埃収容部24方向の下向きの方向成分も持つため、図8(b)に示す様に、旋回気流50の進行方向は左下を向いており、この旋回気流が左回りに旋回しながら下降している状態において、貫通孔中心軸63のベクトル方向が図8(a)のままの配置だと、塵埃を貫通孔28入口内部の傾斜面72に衝突させ、塵埃が貫通孔28の奥(下流側)へ進入することを阻害する塵埃侵入防止効果が、真逆方向(180度)に比べ低下するものである。
従って、旋回気流が左回りに旋回下降方向に旋回している状態においては、図8(b)に示す様に、貫通孔中心軸63のベクトル方向が旋回気流50の進行方向と真逆方向(180度)になる様に、第1の濾過フィルター27aにおける貫通孔28の配置を設定することが望ましい。
更に図8(a)における貫通孔中心軸63のベクトル方向を、旋回気流50の進行方向と真逆方向(180度)基準から、90度方向ならびに270度方向に下流側開口28bを変化させるにつれ、塵埃侵入防止効果を弱くなる。効果としては、旋回気流50の進行方向と直交するまでの範囲において効果的に得られるものであり、0〜90度および270〜360度の範囲では旋回気流50が塵埃を貫通孔28内へ押し込む作用が発生するので逆効果となる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る電気掃除機について、図9を参照しながら説明する。図9は、第1の濾過フィルター27aの貫通孔28を拡大した要部断面図であり、図6(b)の変形例であり、電気掃除機の構成は図1〜図5までに示す実施の形態1と同様である。
図9に示すように、貫通孔28は、第1の濾過フィルター27aの下流側に向けて開放
した形状、即ち、上流側の孔径r2に対して下流側の孔径r3が大きくなっている。その孔径の比r3/r2は1〜2倍にすると良い。貫通孔28の下流側開口の孔径r3を大きくすると、貫通孔28の下流側孔内と糸状の塵埃52cとの間の摩擦を小さくすることができ、実効径となる上流側開口28aを通過した塵埃が下流側に流れ易くなり、塵離れが良くなるため、貫通孔28内で塵埃が詰まる確率を小さくすることができる。
また、上流側の孔径r2に対して下流側の孔径r3が大きくすることで、上流側でゴミの侵入防止を図りつつ貫通孔28の内部体積を広げることができ、貫通孔28を流れる気流の通気圧損を減らすことができ、ゴミ侵入防止と通気圧損低減の両立を図ることができるものである。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る濾過フィルターの製造方法について、図10を用いて説明する。
図10は、エッチング工程の工程順を示す図であり、図10(a)において、0.1〜0.3mm厚の金属板101の表面と裏面にレジストを塗布し、露光工程によって表面と裏面にお互いに平面方向の位置がシフトした開口103a、103b(直径0.1mm〜0.3mm)を有するレジストパターン102を形成する。
次に、図10(b)において、金属板101の表面と裏面の両側からエッチング液でエッチングする。そして、表面からエッチングする第1のエッチング穴104と裏面からエッチングする第2のエッチング穴105とが結合すると、金属板101に表面と裏面とを結ぶ貫通孔28が形成され、その時点でエッチング液でのエッチングを完了し、レジストパターン102を除去してエッチング工程を完了する(図10(c)を参照)。なお、この工程後、貫通孔28の一方向から他方へエッチング液を流し込むか、噴射して仕上がりエッチングすると、第1のエッチング穴(上流側孔)104と第2のエッチング穴(下流側孔)105の境界にできるエッジ部分(図10(b)中の107a、107b)が除去されて、連通部106の部分が滑らかになり、図7(b)の貫通孔28の傾斜面72のような滑らかな形状に近づけることができる。
エッチングした直後の濾過フィルター101aは、平板状をしており、平板状の金属板に傾斜を有した複数の貫通孔28をフィルター面の全域に分散して形成されている。そして、図10(c)に示すように、貫通孔28は、上流側開口28aと下流側開口28bが平面方向にシフトし、上流側開口28aの開口中心点と下流側開口28bの開口中心点を結ぶ貫通孔28の中心軸63が、フィルター面の法線64方向に対して傾斜角度φを有するように形成される。
そして、この濾過フィルター101aを電気掃除機の集塵ケース5に装着する時、平板状の濾過フィルター101aを円筒状に丸めた状態で塵埃分離部23に組み込まれ、円筒状の第1の濾過フィルター27aとして用いられる。
このようにして作られた第1の濾過フィルター27aの貫通孔28は、表面側の第1のエッチング穴(上流側孔)104と、裏面側の第2のエッチング穴(下流側孔)105とを連通する連通部106の部分の孔径が小さく、上流側孔104及び下流側孔105の孔径が大きくなっている。従って、孔径の小さい連通部106の孔径がフィルター作用を持たせる実効径となる。
また、エッチング加工により作られた濾過フィルター27aは、加工時に機械的な応力が加わらないため、加工時の基材の変形が少なく、濾過フィルター27a表面が滑らかに
仕上がり、濾過フィルター表面への塵埃の堆積や絡み付きを抑制することができる。したがって、濾過フィルター27aを清掃する際は、塵埃の除去作業が容易であり、清掃回数は少なくて済み、メンテナンス性に優れた濾過フィルターとして電気掃除機に活用することができる。
第1の濾過フィルター27aの基材として金属板101を用いた場合、静電気によって塵埃が濾過フィルター27aに付着すること、特に細塵が付着することを抑制することができ、貫通孔28の目詰まりを起こしにくい。また、金属板101の基材は、パンチングやエッチングなどの加工性に優れ、貫通孔28の内部形状が滑らかに成形されるから、塵埃の絡みつきを少なくする効果が得られる。
さらに、エッチング工程後に板状のフィルターを円筒状にする際にも成形が容易であり、濾過フィルターを安価に成形することができる。なお、第1の濾過フィルター27aの基材として、静電防止剤やカーボンブラック、金属の微粉等の静電防止材を含有した樹脂板を用いても、金属板を用いた場合と同様の効果が得られる。
次に、上述したエッチング方法で作られた第1の濾過フィルターの動作について、図11、図12を参照しながら説明する。図11(a)は大きな粒状塵埃52aを分離する分離動作を説明するための図であり、図11(b)は小さな粒状塵埃52bを分離する分離動作を説明するための図であり、図12は糸状の塵埃52cを分離する分離動作を説明するための図である。
図11(a)は、円筒状の第1の濾過フィルター27aの1つの貫通孔28を拡大した要部断面図である。図11(a)に示すように、円筒状の第1の濾過フィルター27aは、内周面を上流側フィルター面61とし、外周面を下流側フィルター面62とし、第1の濾過フィルター27aの内周側は塵埃収容部24(図示せず)の上空に位置し、そこには旋回気流50が旋回している。そして、第1の濾過フィルター27aの外周側は第1の濾過フィルター27aを通過した空気の通風路となり、その通風路中に第2の濾過フィルター27b(図示せず)が配置され、その下流に電動送風機21(図示せず)が配置される。第1の濾過フィルター27aには、上流側フィルター面61から下流側フィルター面62までを貫通し、かつ中心軸が傾斜した複数の貫通孔28がフィルター面のほぼ全域に亘って分散して形成されている。
図11(a)に示すように、吸い込んだ塵埃が大きな粒状の塵埃(又は比重の重い塵埃)52aである場合、塵埃52aは旋回気流50に乗って濾過フィルター27aの上流側の空間を旋回する。旋回する多くの塵埃52aは、遠心力の作用が働くため、旋回気流50の流れ方向より外側に向けに移動して上流側フィルター面61に叩き付けられる。そして、上流側フィルター面61の貫通孔28に近づき貫通孔28内に入り込む塵埃52aは、吸引気流71の影響で少し軌道を変えて連通部106側に引き寄せられるが、旋回気流50による慣性モーメントの力が吸引気流71より勝り、第1のエッチング穴104(上流側孔の凹部)の底面にぶつかって跳ね返り、貫通孔28の外へ放り出される。
貫通孔28の外へ放り出された塵埃52aは、旋回気流50に乗って貫通孔28よりも前方へと運ばれ、更に旋回気流50に乗って旋回し続け、次第に重力で下降してゆき、下方にある塵埃収容部24へ収容される。
図11(b)に示すように、吸い込んだ塵埃が小さい粒状の塵埃又は比重の軽い塵埃52bである場合、旋回気流50による慣性モーメントの力が小さい粒状の塵埃又は比重の軽い塵埃52bには大きく作用しないため、旋回気流50に乗って貫通孔28に偶然近づいて中に入った塵埃52bは、吸引気流71の影響で軌道が大きく変更され、連通部10
6側に向けて引き寄せられて貫通孔28を通り抜け、貫通孔28を通り抜けた塵埃52bは第1の濾過フィルター27aの外周に在る第2の濾過フィルター27bへと運ばれ第2の濾過フィルター27bで捕集される。
図12(a)に示すように、吸い込んだ塵埃が髪の毛等、長さを持った長細い糸状の塵埃52cである場合、糸状の塵埃52cは旋回気流50の流れに乗って旋回し、その糸状の塵埃52cの先頭部が貫通孔28に近づいて吸引気流71によって貫通孔28内に入り込んでも、第1のエッチング穴(上流側孔の凹部)の壁面や底部とぶつかったり、連通部106に引っ掛かったりして停止すれば、糸状の塵埃52cの先頭部以外の部分は貫通孔28より前方へと運ばれる(図12(b)を参照)。
そして、糸状の塵埃52cの先頭部は吸引気流71によって下流側へ引っ張られ、それ以外の殆どの部分は旋回気流50によって上流側へ引っ張られることになるが、旋回気流50の方が吸引気流71より強いため、糸状の塵埃52cは貫通孔28の外(第1の濾過フィルター27aの上流側)へと引っ張り出される。そして、上流側に引っ張り出された糸状の塵埃52cは旋回気流50に乗って旋回を続け、次第に重力で下降してゆき、下方に在る塵埃収容部24へ収容される。
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4に係る濾過フィルターの製造方法について、図13を用いて説明する。
図13は、エッチング工程の工程順を示す図であり、図13(a)において、0.1〜0.3mm厚の金属板101の表面と裏面にレジスト102を塗布し、露光工程によって表面と裏面にお互いに位置がシフトした開口103a、103bを有するレジストパターンを形成する。このとき、裏面のレジストパターンの開口103bを表面に比べて1〜2倍大きくする。
次に、図13(b)において、金属板101の表面と裏面の両方からエッチング液でエッチングすると、表面からエッチングする第1のエッチング穴104はエッチング深さが浅く、裏面からエッチングする孔径の大きい第2のエッチング穴105はエッチング深さが深くなる。これは、エッチングパターンの開口103a、103bが小さいために生じる現象であり、開口が大きい方のエッチング速度が速くなり、第2のエッチング穴105が深くなる。この現象は、縦方向にのみ起きる現象ではなく横方向にも発生し、エッチング穴はレジストパターンの開口103a、103bよりも横方向に広がる。
更にエッチングを進行させると、図13(c)のように、第1のエッチング穴(上流側孔)104と第2のエッチング穴(下流側孔)105とが連通する。その連通する部分を連通部106として、金属板101に表面と裏面とを結ぶ貫通孔28が形成される。その後、レジストパターンをエッチング除去して貫通孔28を形成する工程を完了する。
このようにして完成した板状の濾過フィルターは、次の集塵ケース5の組立工程において、集塵ケース5内に組み込まれる際には、円筒状に丸めた状態で塵埃分離部23に組み込まれ、円筒状の第1の濾過フィルター27aとして用いられる。
このようなエッチング工程で作成された第1の濾過フィルター27aは、裏面側のエッチング穴(下流側孔)105が貫通孔28の連通部106から下流方向へ大きく開放する形状となるため、連通部106を通過した塵埃を下流側へ抵抗無く通過させるから、塵離れが良く、塵埃が詰まりにくくすることができる。そのため、掃除作業後に濾過フィルターを掃除する際、濾過フィルターへの糸状の塵埃(毛髪など)の絡みつきや詰まりを更に
抑えることができ、濾過フィルターの清掃メンテナンス性に優れた電気掃除機を提供することができる。
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5に係る濾過フィルターの製造方法について、図14を用いて説明する。
図14は、2枚の濾過フィルターを組み合わせ1枚の濾過フィルターを組み立てる工程順を示す図であり、0.3mm厚の濾過フィルターを組み立てる場合について説明する。
図14(a)において、0.15mm厚の金属板にエッチング或いはパンチングを施して複数の貫通孔を形成した濾過フィルター141と濾過フィルター141aとの合計2枚の濾過フィルターを予め準備する。
濾過フィルター141は、2枚組み合わせで形成される後述の濾過フィルターでの上流側となり、上流側孔として複数の貫通孔104a、104bが形成されている。また、濾過フィルター141aは、2枚組み合わせで形成される後述の濾過フィルターでの下流側となり、下流側孔として複数の貫通孔105a、105bが形成されている。
次に、図14(b)において、2枚の濾過フィルター141、141aの位置を、上流側孔104aの一部と下流側孔105aの一部が重なり、上流側孔104bの一部と下流側孔105bの一部とが重なる範囲でシフトした状態で重ね合わせて1枚の濾過フィルターを完成する。すると、上流側孔104aと下流側孔105aとが連通部106aによって連通されて貫通孔144を構成し、上流側孔104bと下流側孔105bとが連通部106bによって連通されて貫通孔145を構成する。
これによって、上流側孔104aの中心点から下流側孔105aの中心点までの平面上の距離と、上流側孔104bの中心点から下流側孔105bの中心点までの平面上の距離を同じにすることができ、距離の離れた複数の箇所に在る貫通孔の位置を同じ寸法だけシフトさせて、中心軸が傾斜した複数の貫通孔144、145を形成した濾過フィルターを容易に組み立てることができる。
このように、2枚の濾過フィルターを重ねて所定の厚みになるように製作された濾過フィルターは、所定の厚みの金属板を1枚用いてエッチング加工する場合に比べると、1枚当たりのエッチング深さが約1/2で完了するため、エッチングの横広がりによる誤差が約1/2になり、形状の揃った複数の貫通孔に仕上げることができる。
なお、上述した実施の形態5では、2枚の金属板を用いた濾過フィルターの製造方法の事例で説明したが、0.1mm厚の金属板を3枚用いて1つの濾過フィルターを構成しても良く、上述した2枚の金属板を張り合わせる場合に比べてエッチングの仕上がり誤差がより少なくなり、より滑らかに傾斜した複数の貫通孔を有する濾過フィルターを完成することができる。また、重ね合わす金属板の枚数を更に増やせば、貫通孔の傾斜角度は重ね合わす枚数に応じてより大きく傾斜させることができる。