JP4429443B2 - ホイールキャップの取付構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用ディスクホイールのディスクのハット部に取付けるホイールキャップの取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用ホイールのディスクのハット部にホイールキャップを取り付ける構造の先行技術として、例えば特開平9−86101号公報と特開平11−129701号公報に開示されているものがある。
【0003】
前者の先行技術(特開平9−86101号公報)は、図6に示すように、ディスク1のハット部2の内側斜面3に複数個の係合穴4を設け、これ等の係合穴4に対し、ホイールキャップ5の底面に突設した複数個の脚部6の先端に設けられた係合部7をそれぞれ嵌入してハット部2にホイールキャップを取り付けるものである。
【0004】
後者の先行技術(特開平11−129701号公報)は、図7に示すように、ディスク1のハット部2の内側斜面3に水平状の棚部3aを形成し、この棚部3aに複数個の係合穴4を設けるようにして、ハット部2の内側斜面3への穴明けによる強度低下の防止と穴明けの加工性の向上を図ったものである。なお、ホイールキャップ5、脚部6及び係合部7は、前者の先行技術と同じ構成のものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の各先行技術に共通した問題点として、ディスク1のハット部内側斜面に設けられた複数の係合穴4に対し、ホイールキャップ5に設けられた複数の係合部7をそれぞれ嵌入してホイールキャップ5を取り付けるものであるため、ホイールキャップ5を取り付ける際に、係合部7を係合穴4に対して位置決めしてから取り付ける必要があるので、煩わしいという問題がある。
【0006】
また、ディスク1のハット部2に対してホイールキャップ5が離脱しないように取り付けるためには、樹脂より成るホイールキャップ5の係合部7をディスク1のハット部2の係合穴4よりも大きく形成し、係合状態で係合部7を大きく圧縮変形させることにより生じる反力によって保持する必要があるが、この係合部7の大きな圧縮変形に加えてブレーキの発生熱により加熱され、係合部7の永久変形が促進されるため、係合部7の保持力が低下してホイールキャップ5が脱落するという問題がある。
【0007】
更に、ディスク1のハット部2に設けられてる係合穴4の位置は、ブレーキ部に近い部位にあるため、係合穴4より突出した状態で係合される係合部7の端面が、場合によってはブレーキ部に干渉して不具合を生じるという問題もある。
【0008】
本発明の目的は、上記の諸問題を解消したホイールディスクのハット部に対するホイールキャップの取付構造を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するために、請求項1記載の第1の発明は、自動車用ホイールのディスクのハット部にホイールキャップを取り付けるものにおいて、前記ディスク側には、そのハット部の内側斜面の中腹に設けられ、かつディスクの軸芯側へ突出する円弧状の凸部をディスクと一体に設け、前記ホイールキャップ側には、その底面から延設され、先端側に前記凸部に係止する係止部を有する嵌合リングを備え、更に前記凸部をディスクの全周に亘り形成し、前記嵌合リングを周方向に複数に分割して形成したことを特徴とするものである。
【0010】
請求項2記載の第2の発明は、自動車用ホイールのディスクのハット部にホイールキャップを取り付けるものにおいて、前記ディスク側には、そのハット部の内側斜面の中腹に設けられ、かつディスクの軸芯側へ突出する略半球状の凸部をディスクと一体に設け、前記ホイールキャップ側には、その底面から延設され、先端側に前記凸部に係止する係止部を有する嵌合リングを備え、更に前記凸部をディスクの周方向に複数に分割して形成し、前記嵌合リングをディスクの全周に亘り又は周方向に複数に分割して形成したことを特徴とするものである。
【0011】
【作用】
上記の手段によれば、凸部が全周に亘り形成されているディスクには、嵌合リングが分割して形成されたホイールキャップを用い、一方、凸部が分割して形成されているディスクには、嵌合リングが全周に亘り又は分割して形成されたホイールキャップを用いて任意の位置で嵌入することにより、嵌合リングの先端側にある係止部が、内側に変形して凸部を乗り越えた位置で係止され、ホイールキャップがディスクのハット部に簡単に取り付けられるため、取り付けに際して位置決めの必要はない。
【0012】
また、ホイールキャップの嵌合リングの先端側にある係止部は、ディスクに設けられた凸部に係止する周方向の長さが大きいため、係止部を僅かに圧縮変形させた状態の反力により保持することができると共に、係止部の位置はディスク内側斜面の軸芯側(外部側)にあるので、ブレーキ熱による熱影響は小さい。そのため、係止部の圧縮変形の程度は小さく且つ係止部の加熱も小さいため、係止部の永久変形を生じることはないので、係止部の保持力の低下を生じることはない。
【0013】
更に、係止部の位置は、ディスクの内側斜面の外部側にあり、ディスクの壁によって係止部はブレーキ部側に露出していないので、ホイールキャップの係止部がブレーキ部に当って干渉するようなこともない。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図1乃至図5に基いて説明する。
【0015】
図1に示すように、スチール又はアルミ合金より成るディスク10におけるハット部11の径方向の内側斜面12には、ディスク10の軸芯側に突出した円弧状の凸部13が形成されている。なお、14は車軸のハブに取り付けるハブ穴、15は車軸にボルトを介してホイールを取り付けるボルト穴、16はブレーキ発生熱の放熱とホイールの意匠を兼ねた飾り穴である。
【0016】
20は樹脂より成るホイールキャップで、該ホイールキャップ20の底面には、その外周部側から延設された嵌合リング22が形成されており、該嵌合リング22の先端部外側には、ディスク10の前記内側斜面12に形成された凸部13の奥部側に係止する円弧状の係止部21が一体成形されている。
【0017】
なお、30はリムで、該リム30は図示の如くディスク10に溶接等により接合されたり、又は鋳造等によりディスク10と一体成形される。
【0018】
次に、ディスク10のハット部11の内側斜面12に突設された凸部13と、ホイールキャップ20の嵌合リング22の先端側に形成された係止部21との係止構造について説明する。
【0019】
図2は、係止構造の第1実施例を示すもので、ディスク10側の凸部13は、内側斜面12の全周に亘り一連の環状に形成されており、また、ホイールキャップ20側の嵌合リング22は、軸方向のスリット22aを設けて分割して形成されている場合である。
【0020】
上記第1実施例の構造において、ディスク10のハット部11にホイールキャップ20を取り付ける場合、ホイールキャップ20をディスク10に対して任意の位置で押し込むことにより、全周に亘り形成された凸部13に対し分割された嵌合リング22は、その弾性により凸部13に当たった部分が軸芯側(内側)に変形しながら凸部13を乗り越えて変形前の元の状態に戻り、凸部13の奥部側の角部13aに係止部21が当って係止され、それによりホイールキャップ20が取り付け固定される。
【0021】
図3は、係止構造の第2実施例を示すもので、ディスク10側の凸部13は、内側斜面12に、その周方向に分割(点在)した状態で略半球状に形成されており、ホイールキャップ20側の嵌合リング22は、全周に亘り一連に形成されていて、第1実施例とは逆の場合である。
【0022】
上記第2実施例の構造においても、ホイールキャップ20をディスク10に対して任意の位置で押し込むことにより、分割して形成された凸部13に対し嵌合リング22は、分割された各凸部13に当たった部分が内側に変形しながら各凸部13を乗り越えて、以下、第1実施例と同じ過程を経てホイールキャップ20が取り付け固定される。
【0023】
図4は、係止構造の第3実施例を示すもので、ディスク10側の凸部13は、前記図3の第2実施例と同様に内側斜面12に分割された状態で形成され、ホイールキャップ20側の嵌合リング22は、前記図2の第1実施例と同様に分割して形成されていて、凸部13と嵌合リング22を共に分割した場合である。
【0024】
上記第3実施例の構造においても、ホイールキャップ20をディスク10に対して任意の位置で押し込むことにより、分割して形成された凸部13に対し分割された嵌合リング22は、分割された各凸部13に当たった部分が内側に変形しながら各凸部13を乗り越えて、以下、第1実施例と同じ過程を経てホイールキャップ20が取り付け固定される。
【0025】
ここで、ホイールキャップ20がディスク10に取り付けられた状態において、ホイールキャップ20側の係止部21がディスク10側の凸部13に接触する部分は、図5に示すように、凸部13の奥部側の角部13aにおけるAとBの部分であるが、幅の狭いスリット22aで嵌合リング22を分割することにより、分割された嵌合リング22でも周方向長を長くして係止部21がAとBの部分で当接する周方向の長さを十分長くできる。そのため、係止部21が僅かに圧縮変形(例えば0.2mm程度)するだけで、それによって生じる僅かな反力によりホイールキャップ20を保持させることができる。
【0026】
また、係止部21の位置は、図示しないブレーキ部から発生する熱の影響の少ないディスク10の内側斜面12の外部側にある。従って、係止部21の変形量は小さく且つ係止部21の加熱も小さいため、実用状態で係止部21の永久変形が生じることはなく、係止部21のディスク10に対する保持力が低下することはないので、この保持力の低下によるホイールキャップ20の脱落という問題は生じることはない。
【0027】
更に、係止部21の部分は、ディスク10の壁により、図示しないブレーキ部の側には露出していないので、係止部21が図示しないブレーキ部に当って干渉するようなことはない。
【0028】
次に、ディスク10のハット部11の内側斜面12に設ける凸部13の有無によって、ディスク10に加わる応力と強度寿命とについて試験調査した結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1から明らかなように、凸部13を設けることにより、ディスクに加わる応力の増加及び強度寿命の低下は、殆どないことが確認された。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明においては、ディスクのハット部に対するホイールキャップの取り付けに際して、ホイールキャップの位置決めの必要がないので、取り付け時の煩わしさがなく、また、ホイールキャップの取り付け後におけるホイールキャップ自体の保持力の低下がないので、実用状態でホイールキャップが脱落するようなことはなく、更に、ホイールキャップの係止部が実用状態でブレーキ部に当って干渉することはないので、干渉による不具合の発生もない。加えてハット部の内側斜面に係合穴を形成していないので応力集中が生ぜず、寿命低下の恐れもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のホイールキャップの取り付け構造の全体を示す断面図である。
【図2】ホイールキャップの係止構造の第1実施例を示す要部の斜視図である。
【図3】同じく第2実施例を示す要部の斜視図である。
【図4】同じく第3実施例を示す要部の斜視図である。
【図5】ホイールキャップの係止部分を拡大して示す断面図である。
【図6】従来のホイールキャップの係止構造を示す要部の断面図である。
【図7】従来の別のホイールキャップの係止構造を示す要部の断面図である。
【符号の説明】
10 ディスク
11 ハット部
12 内側斜面
13 凸部
20 ホイールキャップ
21 係止部
22 嵌合リング
Claims (2)
- 自動車用ホイールのディスクのハット部にホイールキャップを取り付けるものにおいて、前記ディスク側には、そのハット部の内側斜面の中腹に設けられ、かつディスクの軸芯側へ突出する円弧状の凸部をディスクと一体に設け、前記ホイールキャップ側には、その底面から延設され、先端側に前記凸部に係止する係止部を有する嵌合リングを備え、更に前記凸部をディスクの全周に亘り形成し、前記嵌合リングを周方向に複数に分割して形成したことを特徴とするホイールキャップの取付構造。
- 自動車用ホイールのディスクのハット部にホイールキャップを取り付けるものにおいて、前記ディスク側には、そのハット部の内側斜面の中腹に設けられ、かつディスクの軸芯側へ突出する略半球状の凸部をディスクと一体に設け、前記ホイールキャップ側には、その底面から延設され、先端側に前記凸部に係止する係止部を有する嵌合リングを備え、更に前記凸部をディスクの周方向に複数に分割して形成し、前記嵌合リングをディスクの全周に亘り又は周方向に複数に分割して形成したことを特徴とするホイールキャップの取付構造。
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-
1999
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