JP4426661B2 - 非水電解液二次電池用電極板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池用電極板(以下「電極板」という。)およびその製造方法に関し、更に詳しくは、集電体上に塗工したプレコート剤によって、剥離すべき活物質層の凝集力を高めて選択的に剥離し、活物質層のない非塗工部を備えた電極板を効率よく製造する方法およびその方法によって得られた電極板に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器や通信機器の小型化および軽量化が急速に進んでおり、これらの駆動用電源として用いられる二次電池に対しても小型化および軽量化が要求されている。このため、従来のアルカリ蓄電池に代わり、高エネルギー密度で高電圧を有する非水電解液二次電池、代表的にはリチウムイオン二次電池が提案されている。
【0003】
二次電池の性能に大きく影響を及ぼす正極および負極の各電極板に関しては、充放電サイクル寿命を延長させるため、また、高エネルギー密度化のため、電極板を薄膜化することによって電池内に巻き込まれる電極板の面積をより大きくすることが望まれている。
【0004】
例えば、特開昭63−10456号公報や特開平3−285262号公報には、金属酸化物、硫化物またはハロゲン化物等の正極活物質粉末に、導電材および結着材(バインダー)を適当な湿潤剤(以下「溶媒」という。)に分散または溶解させて、ペースト状の活物質層用塗工液を調製し、金属箔からなる集電体を基体とし、その基体上に前記塗工液を塗布して正極活物質層(また、基体上に負極用の塗工液を塗布したものを負極活物質層といい、正極と負極を特に区別しない場合は、単に活物質層という。)を形成して得られる正極電極板が開示されている。この正極電極板においては、結着材として、例えばポリフッ化ビニリデンのようなフッ素系樹脂、シリコーン−アクリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体等が用いられている。一方、負極電極板は、結着材を適当な湿潤剤(溶媒)に溶解させたものをカーボン等の負極活物質に加えて、ペースト状の活物質層用塗工液を調製し、金属箔の集電体に塗工して得られる。また、集電体に対する塗工膜の密度を向上させたり、塗工膜の密着性を向上させるために、通常、プレス処理が施される。
【0005】
上記の塗布型電極板において活物質層用塗工液を調製するための結着材は、非水電解液に対して化学的および電気化学的に安定であること、電解液中に溶出しないこと、また、何らかの溶媒に溶解して基体上に薄く塗布できるものであることが必要である。さらに、塗布、乾燥された活物質層は、電池の組立工程において剥離、脱落、ひび割れ等が生じないように可とう性を備えていること、および、集電体との密着性に優れていることが要求される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ここで電極板は、通常、電流を取り出すための端子を付ける部分や隣接する活物質層相互の境界部などのように、活物質層を設けたくない非塗工部を有している。その非塗工部のパターンは電池設計に従って任意に決定される。非塗工部を作製する方法には、コーターヘッドを機械的に制御しながら電極塗工液を集電体上に塗工して塗工部と非塗工部のパターンを直接形成する方法や、集電体の全面に塗工膜を形成した後でヘラなどの機械的手段により塗工膜を部分的に剥離させて非塗工部を形成する方法がある。
【0007】
前者の方法による場合には、塗工部又は非塗工部のパターンに合わせてコーターヘッド及び/又は集電体を動かしながらコーターヘッドからの活物質層用塗工液の吐出開始と吐出停止を繰り返したり、或いは、塗工作業が塗工部と非塗工部の境界に到達するたびに、コーターヘッド及び/又は集電体の移動停止とその再開、塗工面に対するコーターヘッドの離脱と再接近、電極塗工液の吐出停止とその再開をそれぞれ同調させて繰り返すなどの作業を行なう。このようなコーターヘッドの機械的制御により間欠塗工を行なって、例えば、所定幅を有する長尺状集電体の表面に長さ600mmの活物質層と、長さ50mmの非塗工部が交互に繰り返し設けられた電極板の原反を作成する。
【0008】
しかしながら、塗工スピードを上げていくとコーターヘッドの機械的制御を塗工スピードに同調させることが難しくなってきて、塗工部と非塗工部が交互に繰り返されたパターンを正確に形成することができなくなる。特に、塗工部の中に比較的狭い面積の非塗工部を間欠的に繰り返して設けたい場合には、速い塗工スピードで非塗工部のパターンを正確に形成することが極めて困難である。さらに別の問題として、速い塗工スピードに同調させてコーターヘッドを制御しようとすると、個々の吐出開始位置においては、局所的塗工量がわずかながら過剰になり、活物質層のエッジ部が盛り上がってしまう。一方、個々の吐出停止位置においては、局所的塗工量がわずかに不足する傾向があり、いわゆる尾引き現象が発生し、活物質層のエッジ部が傾斜する。この傾斜部においては、活物質層の厚みが非塗工部との境界に向かって減少している。そして塗工スピードが速くなると尾引きが顕著になって、活物質層の傾斜部が長くなってしまう。活物質層の尾引きが顕著になると、活物質層のエッジ部の境界線が波状になるという不都合も生じる。
【0009】
このように、コーターヘッドを機械的に制御する方法では、塗工スピードを上げると、活物質層の周縁部においてエッジ形状および厚さが不均一になり、電極板をきれいに巻き上げることが困難になる。また、こうして得られた電極板は、塗工膜の密度を向上させたり、塗工膜の密着性を向上させるためのプレス処理の際に、ダメージを受けやすいという問題も生じる。塗工スピードをそれほど上げなければ上記のような問題は生じないが、それでは電極板の生産性を上げることができない。
【0010】
所望のパターンに塗工を行なうことができる方法としては、コーターヘッドを機械的に制御する方法、例えば、スロットダイコート、スライドダイコート、コンマリバースコートのような塗工法以外に、コーターヘッドを機械的に制御しない方法、例えば、グラビアコートやグラビアリバースコート等の塗工法も知られている。しかしながら、コーターヘッドを機械的に制御しない方法は、薄い塗工層を形成する場合には適しているが、活物質層のような比較的厚い塗工層を形成する目的には適していない。このような理由から、従来は、生産性がそれほど良くないにもかかわらず、コーターヘッドを機械的に制御する塗工法により活物質層と非塗工部が形成されていた。
【0011】
一方、後者の方法、すなわち集電体の全面に塗工膜を形成した後でヘラなどの機械的手段により塗工膜を部分的に剥離する方法の場合には、パターンニング精度が高くなく、さらには活物質層のエッジを滑らかに整えることが難しいのでエッジからの粉落ちが生じるなどの問題がある。
【0012】
本発明は、上記の実状に鑑みて成し遂げられたものである。本発明の第一の目的は、集電体の表面に所望のパターンを有する活物質層と非塗工部とを正確に、しかも効率良く形成することができる電極板の製造方法を提供することにある。また、本発明の第二の目的は、活物質層と非塗工部の位置精度が高い電極板を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の非水電解液二次電池用電極板の製造方法は、集電体上に、活物質と結着材とを少なくとも含有する活物質層と、該活物質層のない非塗工部とを設けてなる非水電解液二次電池用電極板の製造方法であって、前記集電体上の非塗工部を設けたい部分に、前記の活物質層の凝集力を高めることができる材料からなるプレコート剤を塗工してプレコート層を形成する工程と、前記プレコート層の形成後、該プレコート層を形成した側の集電体表面に、活物質と結着材とを少なくとも含有する活物質層用塗工液を塗工して活物質層を形成する工程と、前記プレコート層をなすプレコート剤を前記活物質層内に移行・浸透させる工程と、前記の移行・浸透後、非塗工部を設けたい部分の活物質層を剥離する工程とを含むことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、活物質層の凝集力を高めることができるプレコート層を、非塗工部を設けたい部分に形成し、そのプレコート層をなすプレコート剤を活物質層内に移行・浸透させるので、非塗工部を設けたい部分についてだけ活物質層の凝集力が選択的に高められる。その結果、プレコート層が形成された部分に塗工された活物質層は、凝集破壊を起こしにくく、大きな固まりの状態で剥離する。従って、一度またはほんの数回の剥離工程によって集電体表面からきれいに剥離される。また、凝集力が高められた活物質層だけを剥離することができるので、それ以外の活物質層との境界面が明瞭になり、非塗工部の位置精度の高い電極板を得ることができる。
【0015】
前記プレコート剤は、前記活物質層用塗工液の溶剤に可溶な材料であることが好ましい。また、その溶剤として、N−メチル−2−ピロリドンを用いることが好ましい。この発明によれば、プレコート層上に活物質層用塗工液を塗工すると、塗工された塗工層が乾燥していく間に、プレコート層をなすプレコート剤を塗工された塗工層中に溶出させることができるので、そのプレコート剤を活物質層内に移行・浸透させることができる。そのため、プレコート剤を活物質層内に移行・浸透させる工程を、別個に設ける必要がなく、活物質層を形成する工程と同時に行うことができる。
【0016】
また、前記プレコート剤として、ポリフッ化ビニリデンを用いることが好ましい。ポリフッ化ビニリデンを用いた場合には、0.2〜5.0g/m2 の割合で塗工することが特に好ましい。ポリフッ化ビニリデンは、活物質層の凝集力を高めることができ、また、前記のN−メチル−2−ピロリドンに可溶な材料であるので、好ましく用いられる。
【0017】
前記プレコート層を形成する工程において、着色したプレコート剤を塗工して着色されたプレコート層を形成し、その後の工程において、該プレコート層の着色パターンにより見当合わせを行うことができる。この発明によれば、見当合わせを行うことができる程度にプレコート層が着色されるので、別個に検知マークの形成工程を設けなくても、そのプレコート層はその後の工程における見当合わせの基準とすることができる。
【0018】
前記プレコート層を形成する工程において、前記集電体上に、着色したプレコート剤を塗工して、着色されたプレコート層と共に見当合わせマークを形成し、該プレコート層の着色パターンまたは該見当合わせマークにより見当合わせを行うこともできる。この発明によれば、見当合わせを行うことができる程度にプレコート層が着色されるので、別個に検知マークの形成工程を設けなくても、そのプレコート層を検知して、その後の工程における見当合わせの基準とすることができる。また、プレコート層の形成と同時に見当合わせマークが形成されるので、見当合わせマークの形成工程を別個に設けなくても、その見当合わせマークはその後の工程における見当合わせの基準とすることができる。
【0019】
前記の活物質層を剥離する工程において、非塗工部を設けたい部分の表面に熱可塑性樹脂層を有する熱可塑性樹脂のシートまたは熱可塑性樹脂の成形体を熱圧着して、非塗工部を設けたい部分の活物質層を引き剥がすことができる。この発明によれば、熱可塑性樹脂のシートまたは熱可塑性樹脂の成形体に設けられた熱可塑性樹脂が、凝集力が高められた活物質層に熱圧着され、その熱可塑性樹脂が活物質層内に含浸して熱可塑性樹脂のシートまたは熱可塑性樹脂の成形体と活物質層とを接着させることができるので、一度またはほんの数回の剥離作業によって、剥離すべき活物質層を剥離することができる。剥離の際に、活物質層の凝集破壊が起こらないので、非塗工部を設けたい部分を、活物質のないきれいな集電体表面とすることができる。
【0020】
前記の活物質層を剥離する工程において、非塗工部を設けたい部分の表面に粘着剤層を有する剥離用シートまたは剥離用成形体を圧着して、非塗工部を設けたい部分の活物質層を引き剥がすことができる。この発明によれば、剥離用シートまたは剥離用成形体に設けられ粘着剤層が、凝集力が高められた活物質層の表面に圧着されて、剥離用シートまたは剥離用成形体と活物質層とを接着させることができるので、一度またはほんの数回の剥離作業によって、剥離すべき活物質層を剥離することができる。剥離の際に、活物質層の凝集破壊が起こらないので、非塗工部を設けたい部分を、活物質のないきれいな集電体表面とすることができる。
【0021】
本発明の非水電解液二次電池用電極板は、前記の請求項1乃至請求項10の何れかに記載の方法によって製造されたものである。この発明によれば、前記の方法によって電極板が形成されるので、プレコート層が形成された部分に塗工された活物質層だけが、凝集破壊を起こさずに集電体表面からきれいに剥離されるので、活物質層と非塗工部の位置精度が高い電極板を得ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
次に、好ましい実施の態様を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
【0023】
図1は、本発明の非水電解液二次電池用電極板(以下「電極板」という。)の製造方法の一例を示す模式断面図である。本発明の製造方法によって製造される電極板10は、図7の断面図に示すように、集電体2上に、活物質と結着材とを少なくとも含有する活物質層4と、活物質層4のない非塗工部7とによって構成されてなるものである。
【0024】
図1に示すように、電極板は、(1)集電体2上の非塗工部7を設けたい部分に、活物質層4の凝集力を高めることができる材料からなるプレコート剤を形成する工程1Aと、(2)プレコート層3の形成後、そのプレコート層3を形成した側の集電体2表面、すなわち集電体2およびプレコート層3の何れをも被うように、活物質と結着材とを少なくとも含有する活物質層用塗工液を塗工して活物質層4を形成する工程1Bと、(3)プレコート層3をなすプレコート剤を活物質層4内に移行・浸透させる工程1Cと、(4)移行・浸透後、非塗工部7を設けたい部分の活物質層5が剥離用のシートまたは成形体に圧着され、その後、その剥離用のシートまたは成形体と共に引き剥がされることによって、非塗工部を設けたい部分の活物質層5を剥離する工程1D、1Eとからなる製造方法によって製造される。
【0025】
プレコート剤は、活物質層内に移行・浸透し、活物質層の凝集力を高める材料であることが必要である。プレコート剤を活物質層内に移行・浸透させるために、プレコート層をなすプレコート剤を、適当な溶媒に可溶な材料とすることによって、プレコート剤を活物質層内に含浸させることができ、さらに、その溶媒を除去することによって、プレコート剤を活物質層内で固化させることができる。プレコート剤としては、活物質層用塗工液を調製するための溶剤に可溶であるような材料を好ましく用いることができる。このようなプレコート剤を用いた場合には、活物質層用塗工液を塗工して活物質層を形成する際にプレコート層を溶解することができるので、活物質層の形成工程と、プレコート剤を活物質層内に移行・浸透させる工程とを同時に行うことができる。また、プレコート剤は、活物質層の凝集力を高める材料であるので、少なくとも適度な接着性を有するものである。しかし、アルミニウムや銅箔等の金属箔よりなる集電体に対して、接着性が強すぎないものが好ましい。接着性が強すぎると、剥離工程時に集電体を引っ張ってダメージを与えることがあり、剥離作業を円滑に行えない場合がある。
【0026】
具体的なプレコート剤としては、活物質層の結着材として使用されている樹脂の中から適当なものを選んで使用することができ、好ましくはポリフッ化ビニリデンを使用する。特に、活物質層の結着材としてポリフッ化ビニリデンを使用する場合には、そのポリフッ化ビニリデンをプレコート剤としても使用することが好ましい。活物質層の結着材と同じ材料をプレコート剤として使用する場合には、集電体から剥離した活物質層のリサイクルが容易となるので好ましい。
【0027】
このようなプレコート剤を適切な溶剤に溶解または分散して、プレコート層用塗工液を調製する。プレコート層用塗工液を調製するための溶剤としては、活物質層用塗工液の溶剤と同じものを用いてもよいし、違うものを用いてもよい。プレコート剤としてポリフッ化ビニリデンを使用する場合には、N−メチル−2−ピロリドンを用いて溶解するのが好ましい。そして図1の工程1Aに示すように、プレコート層用塗工液を、集電体2の表面の非塗工部を設けたい領域7に選択的に塗布・乾燥してプレコート層3を形成する。
【0028】
プレコート層3の塗工量は、プレコート剤が移行・浸透した後の活物質層の凝集力と、その活物質層と集電体の間の接着力とのバランスを考慮して適宜設定される。プレコート剤としてポリフッ化ビニリデンを用いた場合には、0.2〜5.0g/m2 程度とするのが好ましい。この範囲の塗工量でポリフッ化ビニリデンを塗工すると、一度の剥離作業によって剥離すべき活物質層5を容易に剥離することができる。塗工量が0.2g/m2 未満の場合には、活物質層内に浸透するポリフッ化ビニリデンの量が少なく、活物質層5の凝集力を十分に高めることができない。そして、その後の剥離工程において、活物質層5が凝集破壊するおそれがあり、一度の剥離作業によっても剥離すべき活物質層5を剥離することができない。その結果、剥離工程の効率が低下して、電極板の全体の製造効率が低下することがある。塗工量が5.0g/m2 を超える場合には、集電体2と、プレコート剤が浸透した活物質層5との接着力を高めることにもなるため、その後の剥離工程において、活物質層が容易に剥離できないことがある。
【0029】
プレコート層用塗工液は、コーターヘッドを機械的に制御しない塗工法、例えば、グラビアコート法、グラビアリバースコート法、ダイコーターを用いる方法、ロータリースクリーンを用いる方法、凸版を用いる方法等何れの方法によっても塗工することができるので、速い塗工スピードで正確に所望のパターン状に塗工を行なうことができる。なお、プレコート剤を塗工する際に、プレコート剤が集電体2の表面ではじかれてしまうような場合には、集電体2の表面にコロナ放電や脱脂処理等の前処理を行うことによって、好ましく塗工することができる。また、プレコート層を形成する工程は、その後の、活物質層を形成する工程と共にインラインで行うこともできる。
【0030】
次に、図1の工程1Bに示すように、プレコート層3を形成した側の集電体2表面に、活物質層用塗工液を全面的に塗布する。活物質層用塗工液の塗工層4rawの中には、乾燥が完了するまでの間、溶剤が存在している。一方、プレコート層3を構成しているプレコート剤は、かかる溶剤に可溶である。このため、集電体2表面に、活物質層用塗工液を塗布・乾燥している間に、プレコート層3のプレコート剤が徐々に溶解し、活物質層用塗工液の塗工層4rawへ移行する。活物質層用塗工液の塗工層4rawへ移行したプレコート剤は、塗工層4rawの上方に向かって浸透していく。これは、前記の溶剤が、塗工層4rawの表面から空気中へ蒸発する結果、プレコート剤が塗工層4rawの上方に引っ張られるためであると推測される。このようにして、非塗工部を形成したい領域7の活物質層のみにプレコート剤が含浸する。一方、プレコート層3は、その全てまたは大部分が溶出してその活物質層内に含浸し、完全にまたはほとんど消失する。
【0031】
活物質層の塗布・乾燥工程とプレコート層の移行・浸透工程が並行して進行し、完了すると、図1の工程1Cに示すように、非塗工部を形成したい領域7の活物質層のみにプレコート剤が含浸・固化する。この領域の活物質層5は、周囲と比べて凝集力が高くなっている。そして、プレコート剤が含浸・固化した領域の活物質層5と、剥離用のシートまたは成形体とを圧着し、その後、剥離用のシートまたは成形体を剥がすことによって、当該シートまたは成形体に圧着された活物質層5が一体として剥離される。その結果、図1の工程1Eに示すように、集電体2が露出し、非塗工部7が形成される。活物質層の剥離方法については、後述する。
【0032】
この製造方法によれば、活物質層4の凝集力を高めることができるプレコート層3を、非塗工部を設けたい部分7に形成し、そのプレコート層3をなすプレコート剤を活物質層4内に移行・浸透させるので、かかる活物質層5の凝集力は、プレコート剤が浸透していない活物質層4の凝集力に比べて大きくなる。その結果、プレコート層3が形成された部分に形成された活物質層だけを、凝集破壊を起こさずに集電体2表面からきれいに剥離することができる。また、凝集力が高められた活物質層5だけを剥離することができるので、それ以外の活物質層4との境界面がシャープになり、非塗工部の位置精度の高い電極板を得ることができる。そのため、一度またはほんの数回の剥離作業によって、非塗工部7を設けたい部分の活物質層5を剥離することができるので、活物質層を所定のパターンに効率よく形成することができる。
【0033】
次に、プレコート層の着色について説明する。
【0034】
上述のプレコート層を形成する工程において、着色したプレコート剤を塗工することによって、着色されたプレコート層(以下「着色プレコート層」という。)を形成することができる。着色プレコート層は、その色を検知または認識することができる程度に着色されている必要があり、着色染料や顔料の適当量の着色剤が添加される。着色プレコート層は、その後の工程、例えば着色プレコート層が形成された集電体の裏面の同じ位置または所定の位置にプレコート層をさらに形成する工程や、着色されたプレコート層上に必要に応じて所定のパターンの他の層をさらに形成する工程等で好ましく使用される。特に、透明、半透明または白色等のプレコート剤を塗工して形成したプレコート層が、位置検出装置を用いても位置検出が困難な場合や、トンボ等の検知マークを別工程で形成するのを製造上避けたい場合に、好ましく設けられる。
【0035】
用いる着色剤は、ごく少量であり、基本的にプレコートした領域の外には広がらない。しかし、添加されたごく微量の着色剤による電池性能への影響を考慮すれば、金属元素を含まない有機系の染料または顔料を着色剤として用いることが好ましい。
【0036】
着色プレコート層は、適当量の着色剤が添加されたプレコート剤塗工液を塗工することによって集電体上に形成される。上述したように、プレコート層を構成するプレコート剤は、活物質層の形成時に溶解し、活物質層に移行・浸透して活物質層内に含浸されるので、用いる着色剤も活物質層内に含浸される。
【0037】
着色プレコート層は、位置検出装置、例えばCCDカメラ等によって容易にその位置を検出することができる。そのため、別個に検知マークの形成工程を設けなくても、その着色プレコート層を検知することができるので、その後の工程において、他の層を形成する際の見当合わせの基準とすることができる。
【0038】
着色プレコート層を集電体上に形成する際に、見当合わせマーク、例えばトンボを同時に形成することもできる。図2は、プレコート層を形成する工程において、集電体2の表面と裏面上に、着色プレコート層23、25と共にトンボ22、24を形成した態様を示す斜視図である。形成されたトンボ22、24は、着色プレコート層23、25と同じ色で形成されるので、その後の工程において、他の層を形成する際の見当合わせをトンボ22、24によっても行うことができる。
【0039】
例えば、表面に形成した着色プレコート層23またはトンボ22を位置検出することによって、集電体2の裏面の所定の位置に、着色プレコート層25やトンボ2を容易に形成することができる。その結果、集電体2の両面に活物質層を塗工することができる。この時形成される、裏面の着色プレコート層25は、表面の着色プレコート層23の真裏であることが好ましい。
【0040】
また、予め位置検出装置が所定の位置にセットされている塗工装置を用いる場合には、トンボ22をその塗工装置に合わせた位置に設けることによって、電極板の塗工工程を従来の塗工装置によって行うことができる。
【0041】
以上説明したように、本発明によれば、予め集電体上に塗工されて活物質層の凝集力を高めることができる材料からなるプレコート剤が、活物質層の塗工時に活物質層内に浸透するので、非塗工部を設けたい部分についてだけ活物質層の凝集力を選択的に高めることができる。その結果、剥離すべき活物質層は、凝集破壊しにくくなり、大きな固まりの状態で剥離することができるので、一度またはほんの数回の剥離作業で容易に活物質層を剥離して非塗工部を形成することができる。このような作用を有するプレコート剤は、非塗工部を設けたい部分に塗工することによって、容易に形成することができるので、非塗工部を設けたい部分をパターン精度よく容易に形成することができる。
【0042】
このような本発明の電極板の製造方法は、コーターヘッドを機械的に制御する方法とは異なり、全面に活物質層が形成された電極板の原反から、非塗工部を設けたい部分の活物質層を選択的に剥離することができるので、活物質層と非塗工部の位置精度が高く、活物質層の端部の盛り上がりや長い傾斜部のない電極板を得ることができる。
【0043】
次に、本発明の電極板を構成する各材料、各層、その形成方法、および本発明の電極板を用いて得られる二次電池について説明する。
【0044】
[集電体]
基体である集電体2としては、通常は金属箔が用いられ、正極電極板としてはアルミニウム箔、負極電極板としては銅箔が好ましく用いられる。これら金属箔の厚さは、通常5〜30μm程度である。
【0045】
[活物質層およびその形成方法]
活物質層4は、活物質と結着材とを少なくとも含有する。活物質には、正極用活物質と負極用活物質がある。正極用活物質としては、例えばLiCoO2 、LiNiO2 もしくはLiMn2O4等のリチウム酸化物、またはTiS2 、MnO2 、MoO3 もしくはV2O5等のカルコゲン化合物を例示することができる。これらの正極用活物質は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。負極用活物質としては、例えば、金属リチウムまたはリチウム合金等のようなリチウム含有金属、グラファイト、カーボンブラックまたはアセチレンブラックのような炭素質材料が好んで用いられる。特に、LiCoO2 を正極用活物質として用い、炭素質材料を負極用活物質として用いることにより、4ボルト程度の高い放電電圧を有するリチウム系二次電池が得られる。
【0046】
前記正極活物質および前記負極活物質は、これらの活物質を塗工層中に均一に分散させるために、1〜100μmの範囲の粒径を有し、且つ平均粒径が約10μmの粉体であるのが好ましい。
【0047】
結着材(バインダー)としては、例えば、熱可塑性樹脂、より具体的にはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル樹脂、フッ素系樹脂またはポリイミド樹脂等を使用することができる。この際、反応性官能基を導入したアクリレートモノマーまたはオリゴマーを結着材中に混入させることも可能である。そのほかにも、ゴム系の樹脂や、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂、アクリレートモノマー、アクリレートオリゴマー或いはそれらの混合物からなる電離放射線硬化性樹脂、上記各種の樹脂の混合物を使用することもできる。
【0048】
活物質層、結着材および必要に応じてその他の成分を混合して活物質層用塗工液を調製する。例えば、適宜選択した活物質と結着材とを、トルエン、メチルエチルケトン、N−メチル−2−ピロリドンまたはこれらの混合物のような有機溶剤の中に投入し、さらに必要に応じて導電剤を加え、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミルまたはロールミル等の分散機により溶解または分散して、塗工液を調製する。この時の配合割合は、塗工液全体を100重量部とした時に活物質と結着材の合計量が約40〜80重量部となるようにするのが好ましい。また、活物質と結着材との配合割合は従来と同様でよく、例えば、正極の場合は活物質:結着材=5:5〜9:1(重量比)程度とするのが好ましく、負極板の場合は活物質:結着材=8:2〜9:1(重量比)程度とするのが好ましい。また導電剤としては、例えば、グラファイト、カーボンブラックまたはアセチレンブラック等の炭素質材料が必要に応じて用いられる。
【0049】
負極については、塗工後の活物質層と集電体との密着を向上させるために、シュウ酸等の添加剤を加えることもできる。
【0050】
活物質層用塗工液の塗工方法は、特に限定されないが、例えばスロットダイコート、スライドダイコート、コンマリバースコート等のように、厚い塗工層を形成できる方法が適している。ただし、活物質層に求められる厚さが比較的薄い場合には、グラビアコートやグラビアリバースコート等により塗工してもよい。本発明においては、活物質層用塗工液を所定のパターン状に塗工する必要がないので、スロットダイコート、スライドダイコート、コンマリバースコート等により塗工するであっても、コーターヘッドを機械的に制御する必要がない。
【0051】
乾燥工程における熱源としては、熱風、赤外線、マイクロ波、高周波、またはそれらを組み合わせて利用できる。乾燥工程において集電体をサポートまたはプレスする金属ローラーや金属シートを加熱して放出させた熱によって乾燥してもよい。また、乾燥後、電子線または放射線を照射することにより、結着材を架橋反応させて活物質層を得ることもできる。塗布と乾燥は、複数回繰り返してもよい。活物質層の厚さは、乾燥時で通常10〜200μm、好ましくは50〜170μmの範囲にする。さらに、得られた活物質層を真空オーブン等でエージングして、活物質層中の水分を除去することが好ましい。
【0052】
この際、塗工後の活物質層と集電体との密着を向上させるために、集電体を前もってカップリング剤で処理してもよい。例えば、集電体上にカップリング剤を塗工することによって、その上に形成される活物質層と集電体との接着力を高めることができる。
【0053】
得られた活物質層を金属ロール、加熱ロールまたはシートプレス機等を用いてプレス処理することにより、活物質層の均質性を向上させることができる。また、塗工層の乾燥途中で、その表面にポリエチレンテレフタレートフィルム等の表面平滑なフィルムを軽く圧着して再び剥離することによって、活物質層の表面を平滑化してもよい。
【0054】
プレス処理する際のプレス圧としては、500〜7500kg/cm2 の範囲が好ましく、3000〜5000kg/cm2 の範囲が更に好ましい。プレス圧が500kg/cm2 よりも小さい場合には、活物質層の均一性を十分向上させることができない。プレス圧が7500kg/cm2 よりも大きい場合には、集電体を含めた電極板自体が破損するおそれがある。
【0055】
[剥離工程]
図1の工程1Dおよび工程1Eに示すように、集電体2上に活物質層4を形成した後、非塗工部を設けたい部分7の活物質層5を剥離することにより、本発明の電極板10が完成する。この剥離工程について、以下に3つの方法を挙げて説明する。
【0056】
(1) 第1の方法
図3は、非塗工部を設けたい部分の活物質層を剥離する工程の一例を示す概略断面図である。集電体2の表面全体に形成された活物質層のうち、非塗工部を設けたい領域7には、プレコート剤の浸透によって、凝集力が高められた活物質層5が既に形成されている(工程30A)。図3に示す剥離方法においては、その活物質層5の表面の非塗工部を設けたい領域7だけに、熱可塑性樹脂のシート31又は熱可塑性樹脂の成形体を選択的に熱圧着する(工程30B)。その後、前記熱可塑性樹脂のシート31又は成形体を集電体から引き剥がすことにより、当該シート又は成形体を熱圧着した部分の活物質層5を剥離して、集電体表面が露出した非塗工部7を形成する(工程30C)。
【0057】
この剥離方法においては、先ず、図3の工程30Aに示すように、電極板の原反36を、支持体35の上に乗せる。この原反36には、集電体2の表面の非塗工部を設けたい領域7に凝集力が高められた活物質層5が既に形成されている。次いで、工程30Bに示すように、凝集力が高められた活物質層5上に、熱可塑性樹脂のシート31又は成形体を選択的に熱圧着する。熱可塑性樹脂のシート31を熱圧着する場合には、剥離すべき活物質層5のパターンと同じ形状に成形されている熱板37を、当該シート31の背面側から位置決めして押し当てる。また、熱可塑性樹脂の成形体を熱圧着する場合には、剥離すべき活物質層5のパターンに成形した成形体を、位置決めして押し当てる。
【0058】
このとき使用される熱可塑性樹脂シート31は、活物質層5に含浸し得る熱可塑性樹脂の層を必須の層としたものであり、その詳細な説明については後述する。なお、ここで使用する熱可塑性樹脂シート31は、図3に示すように、熱可塑性樹脂層32と、熱可塑性樹脂層32の押圧面側に設けられて剥離を効果的に行うためのワックス層34と、熱可塑性樹脂層32の背面側に設けられて熱板との融着を防止するための耐熱層33と、によって構成されている。
【0059】
このような熱可塑性樹脂シート31を使用して熱圧着を行なうと、図3の工程30Bに示すように、熱圧着された部分の熱可塑性樹脂シート31のワックス層34と熱可塑性樹脂層32とが軟化または溶融して、活物質層5内の空隙に含浸する。
【0060】
次に、熱板37を取り去り、原反36を放冷あるいは強制冷却して、活物質層5に含浸したワックスと樹脂を固化させる。固化後、図3の工程30Cに示すように、熱可塑性樹脂シート31を引き剥がして除去すると、樹脂が含浸した部分の活物質層5は凝集力が高いので、その活物質層5が一体となって熱可塑性樹脂シート31とともに選択的に除去される。その活物質層5は凝集力が高められているので、熱可塑性樹脂がその活物質層5の十分深いところまで到達していなくても、活物質層5の凝集破壊を起こすことなく一回またはほんの数回の作業で剥離を完了することができる。従って、極めて効率的に剥離作業を行うことができる。凝集力が高められた活物質層5以外の部分の活物質層4に樹脂が含浸した場合には、含浸した部分の活物質層4は剥離されるが、樹脂が含浸しなかった部分の活物質層4は、集電体2上にそのまま残る。
【0061】
樹脂が含浸した部分の活物質層5と、熱可塑性樹脂のシート31または熱可塑性樹脂の成形体とが、その活物質層5の凝集力よりも大きい力で接着することによって、熱可塑性樹脂のシート31または熱可塑性樹脂の成形体を剥離する際に、剥離すべき活物質層5を一回またはほんの数回の剥離作業で一体として剥離することができる。また、活物質層5の凝集力は、それ以外の部分の活物質層4の凝集力よりも高められているので、剥離すべき部分の活物質層5は、それ以外の部分の活物質層4から容易に分離される。そのため、剥離作業によって分離された活物質層の剥離面の形状はシャープになり、粉落ち等が見られない。
【0062】
次に、熱可塑性樹脂シート31について詳細に説明する。
【0063】
熱可塑性樹脂シート31は、活物質層5に含浸し得る熱可塑性樹脂の層を必須とするが、熱可塑性樹脂の単層フィルムであってもよい。図示の熱可塑性樹脂シート31は3層構造をとっており、熱可塑性樹脂層32の押圧面には、剥離を効果的に行なうためのワックス層34がコーティングされている。一方、熱可塑性樹脂シート31の背面側には、熱板との融着を防止するための耐熱層33が形成されている。ただし、剥離すべき活物質層5に、先ず溶融したワックスを選択的に含浸させ、その後、同じ領域に熱可塑性樹脂の単層フィルムを選択的に熱圧着してもよい。また、熱可塑性樹脂の単層フィルムと熱板37の間に耐熱性シートを介在させてもよい。また、ワックスや耐熱性シートを使用しなくてもよい。
【0064】
熱可塑性樹脂シート31の熱可塑性樹脂層32を形成する材料としては、ポリオレフィン系樹脂やEVA等のように、従来からヒートシール材として用いられている熱可塑性樹脂が適しており、アルミニウム箔や銅箔からなる集電体に対する接着力があまり強すぎないものが好ましい。また、その軟化温度は70〜150℃が好ましく、融点は100〜160℃程度が好ましく、メルトフローレート(MFR:g/10分、190℃〜230℃)は0.1〜50程度が好ましい。
【0065】
熱可塑性樹脂シート31の熱可塑性樹脂層32の厚さについては特に制限ないが、通常は10〜200μm、より好ましくは25〜100μmとする。熱可塑性樹脂層32が薄過ぎる場合には活物質層5を一体として除去できなくなり、また厚過ぎる場合には、凝集力が高められた活物質層5以外の活物質層内にはみ出して含浸されるおそれがあるので、シャープな形状にパターニングすることができなくなる。
【0066】
ワックス成分は熱可塑性樹脂よりも流動性が大きいので、活物質層5の深いところに到達しやすい。そのため、予め活物質層5にワックスを含浸させておき、その後に熱可塑性樹脂のシート又は成形体の熱圧着を行うようにすると、活物質層5の空隙中に先に存在していたワックスを押し込むような形で熱可塑性樹脂が含浸するか、もしくは活物質層の深いところに分布しているワックスが熱可塑性樹脂と接着して、含浸部の活物質層5を確実に一体として剥離できるようになる。特に、活物質層5がすでにプレス処理されていて熱可塑性樹脂が含浸しにくい場合には、ワックスを併用するのが効果的である。
【0067】
ワックスを活物質層5に予め含浸させる方法としては、溶融ワックスをグラビア塗布する方法、ダイコーターを用いる方法、ロータリースクリーンを用いて塗布する方法、成膜性のあるワックスをフィルム化して活物質層5に熱圧着して染み込ませる方法、不織布や紙等に含浸したワックスを熱圧着により活物質層5に転写させる方法等がある。
【0068】
また、図3に示すように、熱可塑性樹脂シート31として、予め熱可塑性樹脂層32とワックス層34とを積層した複合シートを用い、熱圧着する際にワックス層34のワックスを浸透させるようにしてもよい。この場合には、熱可塑性樹脂が浸透する領域よりも深い領域までワックスが浸透する。その結果、熱可塑性樹脂シート31を剥離する際に、含浸部の活物質層5を一回またはほんの数回の剥離で確実に除去することができる。
【0069】
本発明において使用するワックスは加熱によって容易に溶融する材料であればよく、低分子量のポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、あるいはそれらの誘導体、および各種天然ワックス等を用いることができる。また、集電体2との密着性が低く、かつ固化時に体積変化の少ないものが好ましい。
【0070】
ワックスは、その融点が通常は20〜250℃、好ましくは60〜150℃程度のものを用いる。融点が低すぎる場合には室温で柔らかくなりすぎるため取り扱いが難しく、生産性が劣るので好ましくない。また融点が高すぎるとエネルギー的に不経済であり、かつ活物質層5に含浸させる際に基材である集電体2を損なうおそれがある。ワックスの溶融粘度は100〜50,000cps程度、好ましくは400〜6,000cps程度である。溶融粘度が高すぎるとエネルギー的に不経済であり、溶融粘度が低すぎると活物質層5中に浸透する際に横方向にワックスが広がり、剥離する必要のない活物質層4を剥離してしまい、正確なパターニングが困難となる。
【0071】
ワックスの好適例である上記のポリエチレンワックスあるいはポリプロピレンワックスとしては、非酸化型低密度タイプ、非酸化型中密度タイプ、非酸化型高密度タイプ、酸化型低密度タイプ、酸化型中密度タイプ、酸化型高密度タイプ、非極性タイプ、極性タイプ、粉末タイプ等があり、いずれもこの剥離方法に適している。
【0072】
熱可塑性樹脂シート31の背面側に設ける耐熱層33又は熱可塑性樹脂シートとは別体の耐熱シートは、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等の耐熱性樹脂を主体としている。また、別体の耐熱性シートを用いる場合、その厚さは、シャープな形状にパターニングできるという理由から、10〜100μm程度が好ましく、25〜50μm程度がより好ましい。
【0073】
以上説明した熱可塑性樹脂シートを使用して熱圧着する場合の条件としては、温度が好ましくは100〜150℃、圧力が好ましくは2〜10kgf/cm2 、圧着時間が好ましくは5秒以下であるが、本方法はこの条件の範囲に限定されるものではない。
【0074】
この剥離方法によれば、このようにして凝集力が高められた活物質層5を、一回またはほんの数回の剥離作業で一体として剥離することができるので、所定のパターンを容易に形成することができる。
【0075】
集電体の表裏両面に、集電体を挟んで面対称となるパターンを有する活物質層をそれぞれ形成する場合には、図4に示すように、集電体2の両面の同じ位置に凝集力が高められた活物質層5が既に形成されている電極板の原反38と、2枚の熱可塑性樹脂シート31、31aと、押圧面が対称形状とされた一対の熱板37、37aとを用意し、電極板の原反38の両面にそれぞれ熱可塑性樹脂シート31、31aを積層し、その後、一対の熱板37、37aで電極板の原反38を挟み込むことにより熱可塑性樹脂シート31、31aを熱圧着してもよい。また熱板の代わりに、押圧面が対称形状とされた一対の熱可塑性樹脂の成形体を用いて同様の熱圧着を行なってもよい。これらの方法によれば、両面に非塗工部のパターンを有する電極板を効率的に製造することができる。
【0076】
したがって、この方法によれば、熱可塑性樹脂のシートまたは熱可塑性樹脂の成形体を、凝集力が高められた活物質層に熱圧着することによって、一回またはほんの数回の剥離作業によって、剥離すべき活物質層を凝集破壊させることなく剥離することができる。剥離の際に、活物質層の凝集破壊が起こりにくいので、非塗工部を設けたい部分を、活物質のないきれいな集電体表面とすることができる。
【0077】
(2) 第2の方法
図5は、非塗工部を設けたい部分の活物質層を剥離する工程の他の一例を示す概略断面図である。集電体2の表面全体に形成された活物質層のうち、非塗工部を設けたい領域7には、凝集力が高められた活物質層5が既に形成されている(工程50A)。次いで、その活物質層5の表面の非塗工部を設けたい領域7だけに、粘着剤層52を有する剥離用成形体51または剥離用シートを圧着し(工程50B)、その後、前記剥離用成形体51または剥離用シートを集電体から引き剥がすことにより当該成形体51又はシートを圧着した部分の活物質層5を剥離して、集電体表面が露出した非塗工部7を形成する(工程50C)。
【0078】
この剥離方法においては、先ず、図5の工程50Aに示すように、電極板の原反36を、支持体35の上に乗せる。電極板の原反36には、集電体2の表面の非塗工部を設けたい領域7に凝集力が高められた活物質層5が既に形成されている。次いで、工程50Bに示すように、凝集力が高められた活物質層5上に、剥離用成形体51または剥離用シートを選択的に圧着する。剥離用成形体51を圧着する場合には、当該成形体の押圧面を、剥離すべき活物質層5のパターンと同じ形状に成形しておく。また、剥離用シートを圧着する場合には、剥離すべき活物質層5のパターンと同じ形状に成形された押し板57を位置決めして、当該シートの背面側から押し当てる。
【0079】
このとき使用される剥離用成形体51は、活物質層5に粘着し得る粘着剤層52を必須の層としたものであり、図5に示すように、粘着剤層52と、粘着剤層52の背面側に設けられる基材53と、によって構成されている。
【0080】
このような剥離用成形体51を使用し、押し板によって圧着を行なうと、図5の工程50Bに示すように、粘着剤層52が、凝集力の高められた活物質層5の表面に圧着される。上述の熱可塑性樹脂のシートまたは成形体を熱圧着する場合には、熱可塑性樹脂が溶融して活物質層内に浸透することによって、活物質層と熱可塑性樹脂のシートまたは成形体とを接着させるが、粘着剤層が設けられた設けられた剥離用のシートまたは成形体を圧着する場合は、その粘着剤層が活物質層の表面に接着するだけで上述の熱可塑性樹脂のように浸透することはない。
【0081】
次に、押し板57を取り去り、図5の工程50Cに示すように、剥離用成形体51を引き剥がして除去すると、粘着剤層52が圧着した部分の活物質層5は凝集力が高いので、その活物質層5が一体となって剥離用成形体51と共に選択的に除去される。プレコート剤が浸透していない単なる活物質層に、粘着剤層が設けられた剥離用のシートまたは成形体を圧着して剥離する方法では、その活物質層を完全に剥離するためには、通常は10回程度の剥離作業を繰り返さなければならない。しかも、その結果得られた電極板の非塗工部のエッジパターンは、シャープではなくなる。これに対して、プレコート剤が浸透することによって凝集力が高められた活物質層5は、凝集破壊が起こりにくく一回またはほんの数回の作業で剥離を完了することができるので、極めて効率的である。凝集力が高められた活物質層5以外の部分の活物質層4は、集電体2上にそのまま残る。
【0082】
粘着剤層52が圧着した部分の活物質層5と剥離用成形体51とは、その活物質層5の凝集力よりも大きい力で接着しているので、剥離用成形体51を剥離する際に、剥離すべき活物質層5を一回またはほんの数回の剥離作業で一体として剥離することができる。また、活物質層5の凝集力は、それ以外の部分の活物質層4の凝集力よりも高められているので、剥離すべき部分の活物質層5を、それ以外の部分の活物質層4から容易に分離される。そのため、剥離作業によって分離された活物質層の剥離面はシャープになり、粉落ち等も見られない。
【0083】
具体的な粘着剤層52としては、粘着テープ等を例示することができる。
【0084】
(3) 第3の方法
図6は、非塗工部を設けたい部分の活物質層を剥離する工程の他の一例を示す概略断面図である。図6に示す剥離方法においては、集電体2の表面全体に形成された活物質層のうち、非塗工部を設けたい領域7には、凝集力が高められた活物質層5が既に形成されている(工程60A)。次いで、非塗工部を設けたい領域7の活物質層5だけに、その活物質層5に浸透しやすい溶剤を含浸させ(工程60B)、その溶剤が除去される前に溶剤を含む活物質層を剥離除去して、集電体表面が露出した非塗工部7を形成する(工程60C)。
【0085】
この剥離方法においては、先ず、図6の工程60Aに示すように、集電体2の表面の凝集力が高められた活物質層5に、その活物質層5に浸透しやすい溶剤を含浸させる。そのような溶剤であれば何れの有機溶剤であってもよく、例えば、アルコール類、ケトン類、芳香族化合物、ヘテロ化合物、飽和炭化水素等の汎用されている有機溶剤を用いることができる。
【0086】
上記の溶剤のうち、集電体に対しては濡れ性がよく且つ活物質層の結着材に対しては濡れ性に乏しい溶剤(以下「剥離用溶剤」という。)を使用した場合において、この剥離用溶剤を剥離すべき活物質層5に選択的に含浸させると、含浸させた剥離用溶剤は、集電体2と活物質層5との界面に集まって、活物質層5と集電体2との密着性を低下させる。その結果、活物質層5を集電体2面から浮き上がらせて活物質層5の剥離を容易にする。
【0087】
例えば、剥離用溶剤として、エタノールやイソプロピルアルコール等を含浸させることによって、活物質層5を集電体2面から浮き上がった状態にすることができる。剥離用溶剤の活物質層に対する塗布量としては、約1〜3g/m2 程度である。剥離用溶剤を塗布した後に、活物質層中に含浸した剥離用溶剤をある程度蒸発させた後に活物質層を剥離することが好ましい。
【0088】
剥離用溶剤を蒸発させる場合、塗布した剥離用溶剤の量の5〜80重量%が活物質層に残留するように剥離用溶剤を蒸発させることが好ましい。残留する剥離用溶剤の量が、塗布した剥離用溶剤の量の5重量%未満となる場合には、活物質層中の剥離用溶剤の成分が少なく、活物質層の剥離が困難となる。残留する剥離用溶剤の量が塗布した剥離用溶剤の量の80重量%を越える場合には、残留する剥離用溶剤により活物質層の強度が弱くなり、活物質層を一体に剥離することができなくなる。
【0089】
例えば、エタノールやイソプロピルアルコール等の剥離用溶剤を塗布し、その剥離用溶剤を、塗布量の50重量%程度まで乾燥させると、活物質層を、集電体から浮き上がった状態にさせることができる。その他の剥離用溶剤として、ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミド等を使用してもよい。剥離用溶剤を乾燥させた後、例えば、図6の工程60Bに示すように、粘着テープ等の剥離用シート62または剥離用成形体を押し板67等によって剥離すべき活物質層5に圧着し、その後、工程60Cに示すように剥離することによって、非塗工部を形成することができる。
【0090】
また、上記の剥離用溶剤には、適当な添加剤を添加し、塗布する剥離用溶剤の粘度を向上させたり、剥離用溶剤の横方向へのにじみを抑制して剥離用溶剤の塗布精度を向上させたりすることができる。添加剤としては、例えば、高分子材料、シリカ、カオリン、クレー等の無機系微粒子を挙げることができる。
【0091】
活物質層5の剥離に関しては、集電体2と活物質層5との密着性、活物質層5の膜強度、活物質層5と剥離用シート62(例えば、粘着テープ)との接着力との関係で、集電体2から活物質層5が剥離するか、剥離が不可能か、または活物質層5自身が破壊してしまうかが決まる。特に集電体2から活物質層5が浮き上がった状態にすることが好ましく、活物質層5の剥離が容易となる。
【0092】
例えば、剥離用溶剤としてN−メチル−2−ビロリドンを剥離すべき活物質層5に塗布し、その後乾燥して塗布した剥離用溶剤をその50重量%まで減少させる。次いで、塗布した領域に、N−メチル−2−ピロリドンに溶解するポリ塩化ビニルフィルムを貼り合わせて、電極板の原反36とポリ塩化ビニルフィルムとを共に巻き取る。その後、20分間放置して巻き戻し、ポリ塩化ビニルフィルムを剥離すると、当該フィルム上にはN−メチル−2−ピロリドンを塗布した部分のみの活物質層5が接着しており、前記のフィルムと共に凝集力が高められた活物質層5のみがパターン状に剥離される。剥離用溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドンの他に、ポリ塩化ビニルフィルムを溶かす剥離用溶剤であればよく、特に限定されない。このように剥離する場合には、プレコート剤の作用によって高められた活物質層5の凝集力が、剥離用溶剤によって低下しないように、その剥離条件を設定する必要がある。
【0093】
剥離用溶剤を活物質層5に塗布・乾燥した後に、粘着テープとして剥離すべき活物質層5のパターンと同じパターンのものを、剥離用溶剤を塗布した活物質層5に圧着する場合に、十分な接着性を得るために、活物質層中の剥離用溶剤がある程度乾燥していなければならない。剥離用溶剤の塗布量と乾燥の程度との関係は、適宜決定される。
【0094】
剥離用溶剤を活物質層5に塗布する方法としては、ディスペンサー、グラビア、ダイヘッド、スクリーン印刷、オフセット印刷方法等の一般的な方法が挙げられる。また、剥離用溶剤を塗布する活物質層5はプレス処理前のものでもプレス処理後のものでもよい。
【0095】
[二次電池の非水電解液]
上記の各工程を経て作製された電極板を用いて二次電池を作製する際には、電池の組立工程に移る前に活物質層中の水分を除去するために、加熱処理や減圧処理等をあらかじめ行うことが好ましい。
【0096】
この電極板を用いて、例えばリチウム系二次電池を作製する場合には、溶質であるリチウム塩を有機溶媒に溶かした非水電解液が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiCl、LiBr等の無機リチウム塩、または、LiB(C6H5)4、LiN(SO2CF3)2、LiC(SO2CF3)3、LiOSO2CF3、LiOSO2C2F5、LiOSO2C3F7、LiOSO2C4F9、LiOSO2C5F11、LiOSO2C6F13、LiOSO2C7F15等の有機リチウム塩等が用いられる。
【0097】
リチウム塩を溶解するための有機溶媒としては、環状エステル類、鎖状エステル類、環状エーテル類、鎖状エーテル類等を例示できる。より具体的には、環状エステル類としては、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ビニレンカーボネート、2−メチル−γ−ブチロラクトン、アセチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等を例示できる。
【0098】
鎖状エステル類としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルブチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチルプロピルカーボネート、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル等を例示できる。
【0099】
環状エーテル類としては、テトラヒドロフラン、アルキルテトラヒドロフラン、ジアルキルテトラヒドロフラン、アルコキシテトラヒドロフラン、ジアルコキシテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、アルキル−1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキソラン等を例示できる。
【0100】
鎖状エーテル類としては、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル等を例示することができる。
【0101】
こうして図7に示すような、非水電解液二次電池用電極板10Aを作製することができる。得られた非水溶液二次電池電極板10Aの非塗工部7には、図8に示すように、リード端子81が設けられて二次電池に利用される。
【0102】
【実施例】
以下、実施例および比較例によって、本発明を更に具体的に説明する。
【0103】
[実施例1]
(1) プレコート層の形成
プレコート剤としてポリフッ化ビニリデンのN−メチル−2−ピロリドン溶液(固形分12%、KF#1120、呉羽化学工業株式会社製)を用いた。このプレコート剤を塗工する正極用集電体としては、厚さ20μm、幅300mmの長尺状のアルミニウム箔を使用し、負極用集電体としては、厚さ14μm、幅300mmの長尺状の圧延銅箔を使用した。上記のプレコート剤を、グラビアコーターによって、20mm×240mmの矩形パターンで上記の集電体上に塗布した。その後、長さ2mの乾燥オーブン(100℃)中を6m/minの速度で通過させて乾燥し、塗工量が1g/m2 のポリフッ化ビニリデンからなるプレコート層を形成した。
【0104】
(2) 正極板の原反の作製
結着材としてポリフッ化ビニリデンのワニスを用い、これに正極活物質および導電剤を加えた後、プラネタリーミキサー((株)小平製作所製)を用いて30分間撹拌・混合して、下記の組成のスラリー状の正極活物質層用塗工液を調製した。
【0105】
<正極活物質層用塗工液>
・正極活物質 粒径1〜100μmのLiCoCO2 粉末(平均粒径10μm):89重量部
・導電材 グラファイト粉末:8重量部
・結着材 ポリフッ化ビニリデンのワニス(固形分12%のN−メチル−2−ピロリドン溶液、KF#1120、呉羽化学工業(株)製):33重量部
得られた正極活物質層用塗工液を、上記のプレコート層が形成された側の正極用集電体の表面にダイコーターを用いて塗布した。塗布後の集電体を、長さ8mで乾燥温度が2mごとに順次上昇(80℃−100℃−130℃−140℃)する乾燥オーブン中に4m/minの速度で通過させることにより乾燥させ、乾燥時厚さが90μmの活物質層を形成した。その後さらに、塗工後の集電体を80℃の真空オーブン中に入れて48時間エージングを行なうことにより、活物質層中の水分を除去して正極活物質層を形成し、正極板の原反を作製した。
【0106】
(3) 負極板の原反の作製
結着材としてポリフッ化ビニリデンのワニスを用い、これに負極活物質および分散媒を加えた後、プラネタリーミキサー((株)小平製作所製)を用いて30分間撹拌・混合して、下記の組成のスラリー状の正極活物質層用塗工液を調製した。
【0107】
<負極活物質層用塗工液>
・負極活物質 グラファイト粉末:85重量部
・分散媒 N−メチル−2−ピロリドン:115重量部
・結着材 ポリフッ化ビニリデンのワニス(固形分12%のN−メチル−2−ピロリドン溶液、KF#1120、呉羽化学工業(株)製):125重量部
得られた負極活物質層用塗工液を、上記のプレコート層が形成された側の負極用集電体の表面にダイコーターを用いて塗布した。塗布後の集電体を、長さ8mで乾燥温度が2mごとに順次上昇(80℃−100℃−130℃−140℃)する乾燥オーブン中に4m/minの速度で通過させることにより乾燥させ、乾燥時厚さが135μmの活物質層を形成した。その後さらに、塗工後の集電体を80℃の真空オーブン中に入れて48時間エージングを行なうことにより、活物質層中の水分を除去して負極活物質層を形成し、負極板の原反を作製した。
【0108】
(4) プレコート剤の移行・浸透
正極用集電体および負極用集電体上に形成されたプレコート層は、上記の正極活物質層用塗工液および負極活物質層用塗工液の塗工時に、各塗工液中のN−メチル−2−ピロリドン溶液に溶解して、各塗工層中に移行・浸透した。その結果、作製された正極板および負極板の原反の各集電体上には、当初のプレコート層はほとんど確認されなかった。しかし、プレコート剤の着色の有無に関わらず、プレコート剤が移行・浸透した後の活物質層は、プレコート剤を含まない活物質層に比べて色調が異なるため、かすかに視認することができる。
【0109】
(5) 各活物質層の剥離
得られた正極板と負極板の原反を、ロールプレス機を用い線圧150kgf/cmでプレスした。次に、正極板と負極板の原反それぞれの上に、熱可塑性樹脂シートとしてポリエチレンヒートシール材(モアテック0238N、出光石油(株))を重ね、さらにその上に耐熱シートとして厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートシートを重ね、その上からプレコート剤の塗工パターンと同じ寸法(20mm×240mm)の長方形の熱板を押し当てて、140℃、10kgf/cm2 で2秒間、熱圧着を行なった。その後、ヒートシール材を剥がすと、熱圧着部の活物質層はヒートシール材と共に剥離して正極板および負極板を作製した。得られた正極板および負極板の剥離部にはきれいな集電体面が現れた。また、非塗工部のパターン形状の広がりや崩れ、活物質層のエッジ部からの粉落ちなどは認められなかった。
【0110】
[実施例2]
プレコート剤として、ポリフッ化ビニリデンのN−メチル−2−ピロリドン溶液(固形分12%、KF#1120、呉羽化学工業株式会社製)1000mLに対して、フォロンブリリアントブルー(クラリアント・ジャパン(株)製)3gの割合で溶解させた着色プレコート剤を用いた。こうして得られた着色プレコート層用塗工液を、実施例1と同様な方法によって、正極用集電体および負極用集電体の一方の面(表面)上に塗工し、第一の着色プレコート層を形成した。
【0111】
次いで、この第一の着色プレコート層を見当合わせマークとして検知することによって、正極用集電体および負極用集電体の他方の面(裏面)上に、第一の着色プレコート層と同じ位置になるように第二の着色プレコート層を形成した。
【0112】
こうして得られた、正極用集電体および負極用集電体の表面と裏面に、実施例1と同様な方法で、正極活物質および負極活物質を塗工して、実施例2の正極板および負極板を作製した。
【0113】
次いで、得られた正極板と負極板の原反を、ロールプレス機を用い線圧150kgf/cmで原反の両面をプレスした。正極板および負極板の原反の両面それぞれの上に、熱可塑性樹脂シートとしてポリエチレンヒートシール材(モアテック0238N、出光石油(株))を重ね、さらにその上に耐熱シートとして厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートシートを重ね、その上からプレコート剤の塗工パターンと同じ寸法(20mm×240mm)の長方形の熱板を表面と裏面から同時に押し当てて、140℃、10kgf/cm2 で2秒間、熱圧着を行なった。
【0114】
熱板の押し当て位置は、着色プレコート層と共にトンボが形成されている場合には、そのトンボを検知して調節することができた。しかし、トンボが形成されていない場合であっても、最初におおよその位置に熱板を押し当てることによって、着色プレコート層を形成した位置に設けられた活物質層をきれいに剥離することができるので、きれいに剥離された剥離部分を見当合わせの基準とすることによって、熱板の押し当て位置を容易に調節することができた。
【0115】
なお、着色プレコート層は、集電体の表面と裏面で同じ位置になるように設けられているので、調節された押し当て位置の両面から熱板を押し当てることによって、非塗工部を形成することができた。
【0116】
その後、ヒートシール材を剥がすことによって、熱圧着部の活物質層をヒートシール材と共に剥離することができるので、表面と裏面を有する正極板および負極板を容易に作製することができた。得られた正極板および負極板の剥離部にはきれいな集電体面が現れた。また、非塗工部のパターン形状の広がりや崩れ、活物質層のエッジ部からの粉落ちなどは認められなかった。
【0117】
[比較例1]
プレコート層を設けなかった以外は実施例1と同様に塗工、乾燥、プレスを行なって正極板および負極板の原反を作製し、熱可塑性樹脂のシートを用いて、その熱可塑性樹脂を活物質層内に十分に含浸させ、その後、熱可塑性樹脂のシートを引き剥がして活物質層を剥離し、正極板および負極板を作製した。
【0118】
このように、熱可塑性樹脂を十分に含浸させた後に剥離作業を行ったものであっても、剥離部の集電体表面に活物質層の粉がうっすらと残留しており、一度の剥離では十分ではなかった。そこで、同様の熱圧着と剥離作業をもう一度繰り返したところ、きれいな集電体面を有する正極板および負極板を得ることができた。また、非塗工部のパターン形状の広がりや崩れ、活物質層のエッジ部からの粉落ちなどは認められなかった。
【0119】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明の非水電解液二次電池用電極板の製造方法によれば、活物質層の凝集力を高めることができるプレコート層を、非塗工部を設けたい部分に形成し、そのプレコート層をなすプレコート剤を活物質層内に移行・浸透させるので、かかる活物質層を凝集破壊を起こさずに剥離することができる。その結果、プレコート層が形成された部分に塗工された活物質層だけが、凝集破壊を起こさずに集電体表面からきれいに剥離される。また、凝集力が高められた活物質層だけを剥離することができるので、それ以外の活物質層との境界面が明瞭になり、非塗工部のパターンがシャープで位置精度の高い電極板を効率よく得ることができる。
【0120】
また、本発明の非水電解液二次電池用電極板によれば、プレコート層が形成された部分に塗工された活物質層だけが、凝集破壊を起こさずに集電体表面からきれいに剥離されるので、活物質層と非塗工部の位置精度が高い電極板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の非水電解液二次電池用電極板の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【図2】プレコート層の形成工程において、着色プレコート層と共にトンボを形成した態様を示す斜視図である。
【図3】非塗工部を設けたい部分の活物質層を剥離する工程の一例を示す概略断面図である。
【図4】非塗工部を設けたい部分の活物質層を剥離する工程の他の一例を示す概略断面図である。
【図5】非塗工部を設けたい部分の活物質層を剥離する工程の他の一例を示す概略断面図である。
【図6】非塗工部を設けたい部分の活物質層を剥離する工程の他の一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の非水電解液二次電池用電極板を示す概略図である。
【図8】本発明の非水電解液二次電池用電極板にリード端子が設けられた態様を示す概略図である。
【符号の説明】
2…集電体
3…プレコート層
4…活物質層
4raw…塗工層
5…凝集力が高められた活物質層
6…剥離用のシートまたは成形体
7…非塗工部
10…電極板
Claims (7)
- 集電体上に、活物質と結着材とを少なくとも含有する活物質層と、該活物質層のない非塗工部とを設けてなる非水電解液二次電池用電極板の製造方法であって、
前記集電体上の非塗工部を設けたい部分に、ポリフッ化ビニリデンからなるプレコート剤を塗工してプレコート層を形成する工程と、
前記プレコート層の形成後、該プレコート層を形成した側の集電体表面に、活物質と結着材と前記プレコート層をなすプレコート剤を溶解可能な溶剤とを少なくとも含有する活物質層用塗工液を塗工して活物質層を形成する工程と、
前記プレコート層をなすプレコート剤を前記活物質層内に移行・浸透させる工程と、
前記の移行・浸透後、非塗工部を設けたい部分の活物質層を剥離する工程とを含み、
前記プレコート層を形成する工程において、着色したプレコート剤を塗工して着色されたプレコート層を形成し、その後の工程において、該プレコート層の着色パターンにより見当合わせを行うことを特徴とする非水電解液二次電池用電極板の製造方法。 - 前記プレコート層を形成する工程において、前記集電体上に、着色したプレコート剤を塗工して、着色されたプレコート層と共に見当合わせマークを形成し、該プレコート層の着色パターンまたは該見当合わせマークにより見当合わせを行うことを特徴とする請求項1に記載の非水電解液二次電池用電極板の製造方法。
- 前記活物質層用塗工液中の溶剤として、N−メチル−2−ピロリドンを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の非水電解液二次電池用電極板の製造方法。
- 前記ポリフッ化ビニリデンを、0.2〜5.0g/m2の割合で塗工することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の非水電解液二次電池用電極板の製造方法。
- 前記の活物質層を剥離する工程において、非塗工部を設けたい部分の表面に熱可塑性樹脂層を有する熱可塑性樹脂のシートまたは熱可塑性樹脂の成形体を熱圧着して、非塗工部を設けたい部分の活物質層を引き剥がすことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の非水電解液二次電池用電極板の製造方法。
- 前記の活物質層を剥離する工程において、非塗工部を設けたい部分の表面に粘着剤層を有する剥離用シートまたは剥離用成形体を圧着して、非塗工部を設けたい部分の活物質層を引き剥がすことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の非水電解液二次電池用電極板の製造方法。
- 前記の請求項1乃至請求項6の何れかに記載の方法によって製造された非水電解液二次電池用電極板。
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