JP4426164B2 - 不飽和第4級アンモニウム塩の製造方法 - Google Patents

不飽和第4級アンモニウム塩の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は不飽和第4級アンモニウム塩の製造方法およびその方法に使用する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
不飽和第4級アンモニウム塩は、単独重合、あるいは、他のモノマーとの共重合(グラフト重合を含む)により得られるポリマーに陽イオン性、導電性、水溶性、接着性等の機能を与えることができる。そのため、不飽和第4級アンモニウム塩は、凝集剤、帯電防止剤、土壌改良剤、導電加工剤、染色改良剤、紙力増強剤、紙の濾水性向上剤、化粧品、樹脂改質剤等の原料モノマーとして広く用いられている。
【0003】
不飽和第4級アンモニウム塩を製造する方法としては、(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルをハロゲン化アルキルで4級化する方法が知られている。この方法では4級化反応の終了後の反応液および反応装置の気相部に未反応のハロゲン化アルキルが残存する。
【0004】
例えば、特許文献1および特許文献2には、酸素の存在下に水を溶媒として(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル等のアクリル単量体とハロゲン化アルキル等の4級化剤との4級化反応を行い、反応の過程で反応器から出る排出ガスを別の処理装置に送って排出ガスに含まれる4級化剤をアクリル単量体に吸収することが記載されている。また、反応終了後に大量の酸素含有ガスを用いて反応液中の4級化剤を除去することも記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、4級化剤である有機ハロゲン化物でアミンを4級化して第4級アンモニウム塩を製造する方法において、反応終了後の未反応の4級化剤を反応溶媒に溶解させて回収し、再利用することが記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特開昭63−005064号公報
【0007】
【特許文献2】
特表平03−502451号公報
【0008】
【特許文献3】
特開平11−279133号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の方法では、反応終了時に反応液中含まれる4級化剤は利用されることがなく、また反応終了後に4級化剤を除去するために大量の酸素含有ガスを別途必要とするので、経済性が低いという問題がある。
【0010】
また、不飽和第4級アンモニウム塩は水溶液として使用されることが多いので、(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルをハロゲン化アルキルで4級化する反応では、通常、水が反応溶媒として使用される。水に対するハロゲン化アルキルの溶解度は低いので、特許文献3に記載の方法を適用するのは困難である。また、特許文献3に記載の方法では、反応溶媒として水以外のものを使用するにしても、ハロゲン化アルキルの溶解度が高いものしか選択できないという制限がある。
【0011】
従って、本発明の目的は、式(1)で表される(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルと式(2)で表されるハロゲン化アルキルとを4級化反応させて式(3)で表される不飽和第4級アンモニウム塩を製造する方法において、使用できる反応溶媒に制限がなく、未反応のハロゲン化アルキルを効率良く回収し再利用する方法を提供することにある。また本発明の目的は、この製造方法の実施に好適な不飽和第4級アンモニウム塩の製造装置を提供することにある。
【0012】
【化4】
Figure 0004426164
(式中、R1は水素原子またはメチル基を示し、nは2または3を示す。)
【0013】
【化5】
Figure 0004426164
(式中、Rはメチル基またはエチル基を示し、Xは塩素、臭素、ヨウ素のいずれかの原子を示す。)
【0014】
【化6】
Figure 0004426164
(式中、R1は水素原子またはメチル基を示し、Rはメチル基またはエチル基を示し、nは2または3を示し、Xは塩素、臭素、ヨウ素のいずれかの原子を示す。)
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記式(1)で表される(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルと前記式(2)で表されるハロゲン化アルキルとを4級化反応させて前記式(3)で表される不飽和第4級アンモニウム塩を製造する方法において、
反応容器にて4級化反応終了後、酸素を含有する導入ガスを液相部に導入して液相部に含まれる未反応のハロゲン化アルキルを気相部に移行させる脱ハロゲン化アルキル工程を行った後、
反応容器の気相部の未反応の前記ハロゲン化アルキルを含むガスを前記式(1)で表される(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルを含む吸収液を仕込んだ吸収装置に被吸収ガスラインを介して送り、吸収液に接触させて未反応の前記ハロゲン化アルキルを吸収させる吸収工程を行い、
得られた吸収液を4級化反応の原料として再利用すると共に、
吸収工程後の吸収装置の気相部のガスを反応容器へ吸収後ガスラインを介して送り、反応容器、被吸収ガスライン、吸収装置、及び吸収後ガスラインで形成される密閉系を用いて、脱ハロゲン化アルキル工程の導入ガスとして再利用する不飽和第4級アンモニウム塩の製造方法である。
【0018】
本発明において、前記(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルと接触させる気相部の未反応の前記式(2)で表されるハロゲン化アルキルを含むガス中の酸素濃度は、0.1〜16容量%が好ましい。
【0019】
本発明は、前記式(1)で表される(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルがアクリル酸ジメチルアミノエチルまたはメタクリル酸ジメチルアミノエチルの場合に好適である。
【0020】
また本発明は、前記式(2)で表されるハロゲン化アルキルが、塩化メチルまたは塩化エチルの場合に好適である。
また、本発明は上記不飽和第4級アンモニウム塩の製造方法を行う製造装置であって、
式(1)で表される(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルと式(2)で表されるハロゲン化アルキルとの4級化反応終了後、酸素を含有する導入ガスを液相部に導入して液相部に含まれる未反応のハロゲン化アルキルを気相部に移行させる脱ハロゲン化アルキル工程を行う反応容器と、
脱ハロゲン化アルキル工程後の反応容器の気相部の前記未反応のハロゲン化アルキルを含むガスを前記式(1)で表される(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルを含む吸収液に接触させて未反応の前記ハロゲン化アルキルを吸収させる吸収工程を行う吸収装置と、
脱ハロゲン化アルキル工程後の反応容器の気相部の前記未反応のハロゲン化アルキルを含むガスを吸収装置に送る被吸収ガスラインと、
吸収工程後の吸収装置の気相部のガスを、脱ハロゲン化アルキル工程の導入ガスとして反応容器に送る吸収後ガスラインとを有し、
反応容器、被吸収ガスライン、吸収装置及び吸収後ガスラインが密閉系を形成したことを特徴とする式(3)で表される不飽和第4級アンモニウム塩の製造装置に関する。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。本発明の不飽和第4級アンモニウム塩の製造方法で原料として使用する(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルは、前記式(1)で表される(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル(以下、(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルと言う。)である。具体的には、アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、アクリル酸ジメチルアミノプロピルエステル、およびメタクリル酸ジメチルアミノプロピルエステルである。原料として2種類以上の(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルの混合物を使用してもよい。(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルの品質は特に限定されず、工業用に市販されている低純度のものでも利用可能であるが、製品品質の観点から純度の高いものが好ましい。また、前記式(2)で表されるハロゲン化アルキルおよび/または目的製品である不飽和第4級アンモニウム塩を含んだ(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルも好適である。このような(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルとしては、例えば後述する本発明のハロゲン化アルキルの吸収工程で発生する吸収後の吸収液等が使用できる。
【0023】
原料として使用するハロゲン化アルキルは、前記式(2)で表されるハロゲン化アルキル(以下、ハロゲン化アルキルと言う。)である。具体的には、塩化メチル、塩化エチル、臭化メチル、臭化エチル、ヨウ化メチル、およびヨウ化エチルである。原料として2種類以上のハロゲン化アルキルの混合物を使用してもよい。ハロゲン化アルキルの品質は特に限定されず、工業用に市販されている低純度のものでも利用可能であるが、製品品質の観点から純度の高いものが好ましい。
【0024】
本発明では、(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルをハロゲン化アルキルと4級化反応させて前記式(3)で表される不飽和第4級アンモニウム塩(以下、不飽和第4級アンモニウム塩と言う。)を製造する。4級化反応は、回分式、連続式の何れの方法でも実施できる。以下、回分式で4級化反応を行う場合について説明する。
【0025】
(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルとハロゲン化アルキルの仕込み比率は特に限定されず適宜決めることができる。通常、ハロゲン化アルキルの使用量(反応容器に導入する量)は、(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル1モルに対して1モル以上が好ましく、1.01モル以上がより好ましい。また、ハロゲン化アルキルの使用量は、(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル1モルに対して10モル以下が好ましく、1.3モル以下がより好ましい。
【0026】
4級化反応の溶媒としては、アセトニトリル、アセトン等の有機溶媒、水、水と有機溶媒の混合溶媒等を用いることができる。不飽和第4級アンモニウム塩は水溶液で使用されることが多いことから、溶媒としては水を用いることが好ましい。
【0027】
4級化反応は重合防止剤の存在下に行うことが好ましい。重合防止剤としては、例えば、モノメチルハイドロキノン、ハイドロキノン、フェノチアジン、クペロン、t−ブチルカテコール、硫酸銅等が挙げられる。重合防止剤は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。重合防止剤の使用量は適宜決めることができる。反応に使用された重合防止剤を反応後もそのまま製品である不飽和第4級アンモニウム塩の重合防止剤として使用する場合、重合防止剤の使用量は製品中の重合防止剤の許容濃度等により決めればよい。一般に、重合防止剤の使用量は仕込みの(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルと溶媒の合計質量に対して、100質量ppm以上が好ましく、また20000質量ppm以下が好ましい。ただし、不飽和第4級アンモニウム塩中の重合防止剤の許容濃度はその用途により異なる。例えば、凝集剤用ポリマーの原料として使用する不飽和第4級アンモニウム塩水溶液の場合は、100質量ppm以上が好ましく、また20000質量ppm以下が好ましい。
【0028】
本発明の不飽和第4級アンモニウム塩の製造方法では、反応容器に(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルおよび溶媒、ならびに重合防止剤を適宜仕込んだ後、反応容器内にハロゲン化アルキルを導入して4級化反応を行う。反応条件は特に限定されないが、例えば特許文献1〜3に記載されている公知の条件等を採用することができる。
【0029】
反応容器内気相部の酸素濃度は、酸素含有ガスを適宜使用して、通常0.1〜16容量%、好ましくは1〜10容量%、特に好ましくは4〜8容量%とする。気相部の酸素濃度を16容量%以下とすることにより、ハロゲン化アルキルの爆発を抑制することができる。気相部の酸素濃度の調整は、(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルを仕込む前、(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルを仕込んだ後でハロゲン化アルキルを導入前、ハロゲン化アルキルの導入と同時、4級化反応途中から選ばれる少なくとも1つの時期で行えばよいが、ハロゲン化アルキルの導入前が好ましい。酸素濃度の調整に使用する酸素含有ガスとしては、例えば、空気、純酸素、空気を酸素以外のガスで希釈したもの、純酸素を酸素以外のガスで希釈したもの等が挙げられる。酸素以外のガスとしては、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガス等が挙げられる。
【0030】
反応容器内の気相部に酸素を存在させないことも可能であるが、気相部に酸素を存在させると液相部に酸素が溶解するので液相部、特に不飽和第四級アンモニウム塩の重合抑制に効果がある。一方、気相部の酸素濃度は低いほど(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルと酸素から生成する着色原因物質が少なくなるので高品質の不飽和第4級アンモニウム塩を製造することができる。
【0031】
ハロゲン化アルキルはガス状または液状の何れの状態で反応容器に導入してもよいが、操作性の点からガス状で導入することが好ましい。ガス状で導入する場合は、反応容器内の気相部または液相中のいずれか、またはその両方に導入する。ハロゲン化アルキルの導入効率の点から、ハロゲン化アルキルは液相中にバブリングして導入し、液相中に溶解させることが好ましい。またハロゲン化アルキルの溶解効率の点から、加圧状態でハロゲン化アルキルを導入することが好ましい。ハロゲン化アルキルの導入圧力(ゲージ圧)は0〜1500kPaが好ましく、10〜300kPaがより好ましい。ハロゲン化アルキルを液状で導入する場合は液相の液面に滴下すればよい。
【0032】
4級化反応はハロゲン化アルキルの導入と同時に開始する。4級化反応の反応温度は適宜決めることができる。反応温度の下限は、通常0℃以上、好ましくは20℃以上である。また上限は、通常100℃以下、好ましくは70℃以下である。反応温度の制御は、ハロゲン化アルキルの導入前から開始しても、導入後から開始してもよいが、ハロゲン化アルキルの導入後から制御する方が好ましい。
【0033】
反応圧力(反応容器内気相部の圧力)は適宜決めることができる。反応圧力(ゲージ圧)の下限は、通常−101.3kPa以上、好ましくは−100kPa以上、特に好ましくは−50kPa以上である。また上限は、通常5000kPa以下、好ましくは1500kPa以下、特に好ましくは300kPa以下である。
【0034】
反応時間は適宜決めることができる。反応時間の下限は、通常1時間以上、好ましくは2時間以上である。また上限は、通常12時間以下、好ましくは8時間以下、特に好ましくは6時間以下である。反応時間は長いほど反応熱の除熱が容易になり、短いほど(メタ)アクリル酸エステルの加水分解が起こり難い。
【0035】
4級化反応の終了後、気相部の未反応のハロゲン化アルキルを含むガス(以下、被吸収ガスとも言う。)と液体の(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル(以下、吸収液とも言う。)とを接触させて未反応のハロゲン化アルキルを吸収液に吸収させる(以下、吸収工程と言う。)。この吸収操作は、反応容器とは別に用意した気液接触が可能な吸収装置を用いて行う。気液接触が可能な吸収装置としては、例えば、気泡攪拌槽、充填塔、棚段塔、気泡塔、スプレー塔、流動充填塔等を挙げることができる。不飽和第4級アンモニウム塩は結晶として得られるため、取扱いの点で吸収装置としては気泡攪拌槽が好ましい。吸収装置は、同種または異なる形式のものを複数用いてもよい。
【0036】
吸収工程では、ハロゲン化アルキルは(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルと反応し(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルに難溶の不飽和第4級アンモニウム塩になる。不飽和第4級アンモニウム塩を溶解させるため、吸収液には水を加えておくことが好ましい。水の添加量は特に限定されないが、吸収工程で生成する不飽和第4級アンモニウム塩が70〜85質量%の水溶液になる量が好ましい。水の量は少ないほど(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルの加水分解が少なくなり、多いほど不飽和第4級アンモニウム塩の析出が少なくなる。吸収液には重合防止剤を加えておくことが好ましい。重合防止剤は4級化反応で説明したものと同様のものが使用できる。
【0037】
吸収液の温度は適宜決めることができる。この温度の下限は、通常0℃以上、好ましくは20℃以上である。また上限は、通常100℃以下、好ましくは70℃以下である。温度は低いほど不飽和第4級アンモニウム塩等の重合が起き難い。吸収液の温度の制御は、被吸収ガスの導入前から開始しても、導入後から開始してもよいが、被吸収ガスの導入前から制御を開始する方が好ましい。
【0038】
吸収装置に導入する被吸収ガスの流量は、装置形状等により適宜決めることができる。また吸収装置に導入する被吸収ガスの全体積は、吸収液の体積に対して1倍以上が好ましく、30倍以上がより好ましい。また6000倍以下が好ましく、2000倍以下がより好ましい。
【0039】
吸収液である(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルは、16容量%を超える酸素含有ガスと長時間接触すると着色することがある。ハロゲン化アルキルを吸収した吸収液は4級化反応の原料として利用するので、吸収液が着色すると得られる不飽和第4級アンモニウム塩の品質が低下することがある。このため、被吸収ガスを導入する前の吸収装置内の酸素濃度は、好ましくは0.1〜16容量%、より好ましくは1〜10容量%、特に好ましくは4〜8容量%とする。同様に、被吸収ガスの酸素濃度は、好ましくは0.1〜16容量%、より好ましくは1〜10容量%、特に好ましくは4〜8容量%である。
【0040】
吸収時間は、吸収装置の形式、吸収液の量、被吸収ガスの量等により異なるので一概に言えないが、吸収装置として気泡攪拌槽を使用した場合、通常1〜12時間、好ましくは2〜6時間である。吸収時間は短いほど(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルの着色等による経時劣化が少なくなる。
【0041】
吸収装置内の圧力は適宜決めることができる。吸収効率の観点から常圧または加圧が好ましい。
【0042】
吸収工程を経た被吸収ガス(以下、吸収後ガスとも言う。)は、後述するように反応容器に導入して反応後の反応液中のハロゲン化アルキルを低減させるのに使用する
【0043】
ハロゲン化アルキル吸収後の吸収液は4級化反応の原料として利用する。このようにして、吸収された未反応のハロゲン化アルキルは再利用される。4級化反応には吸収液の全量を利用しても、一部だけを利用してもよい。4級化反応は、前記の反応容器と同じものを用いて行うこともできるが、別の反応容器を用いてもよい。後者の方法として、例えば、吸収液が残る吸収装置にハロゲン化アルキルを導入して4級化反応を行う方法を挙げることができる。この方法は吸収装置から反応容器へ液を移動する必要がないので、工程時間が短く、操作が少ないという利点がある。
【0044】
4級化反応後、反応容器内の液相部(反応液)は、通常、未反応のハロゲン化アルキルを含む不飽和第4級アンモニウム塩の溶液である。本発明では液相部に溶解している未反応のハロゲン化アルキルを低減する(以下、脱ハロゲン化アルキル工程と言う。)。ハロゲン化アルキルを低減する方法としては、例えば、液相部に各種のガスをバブリングさせて脱気する方法、気相部に各種のガスを導入する方法、気相部を減圧して脱気する方法、およびこれらを組み合わせた方法等が挙げられる。しかし、気相部を減圧する方法ではハロゲン化アルキルと溶解酸素が共沸脱気され、不飽和第4級アンモニウム塩の重合抑制に効果のある溶存酸素が減少することから、ガスをバブリングさせて脱気する方法が好ましい。また、ガスをバブリングさせて脱気する方法は、ハロゲン化アルキルを効率的に低減できるので好ましい。
【0045】
液相部に導入するガス(以下、導入ガスとも言う。)としては、例えば、空気、純酸素、空気を酸素以外のガスで希釈したもの、純酸素を酸素以外のガスで希釈したもの等の酸素含有ガスを使用する。不飽和第4級アンモニウム塩の重合を抑制するという観点から酸素含有ガスを用いる。酸素含有ガスを液相部にバブリングしている状態であれば、液相中の溶存酸素が無くならないので、気相部を減圧にしてもよい。
【0046】
導入ガスとして酸素含有ガスを用いる場合、酸素以外の成分は不飽和第4級アンモニウム塩の用途等により適宜決めることができる。酸素以外の成分としては、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガス等が挙げられる。酸素含有ガスは吸収後ガスを利用する。吸収後ガスを利用する場合は、系外から新たに導入するガスと併用することもできる。吸収後ガスには低濃度のハロゲン化アルキルや(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルが含まれることがある。
【0047】
導入ガスの酸素濃度は、不飽和第4級アンモニウム塩の重合を抑制する観点から、0.1容量%以上が好ましく、1容量%以上がより好ましく、4容量%以上が特に好ましい。また、酸素含有ガスの酸素濃度は、酸素含有ガスとハロゲン化アルキルによる爆鳴気形成を防止し、未反応(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルの経時着色を抑制する観点から、16容量%以下が好ましく、10容量%以下がより好ましく、8容量%以下が特に好ましい。
【0048】
導入ガスとして吸収後ガスを利用する場合、爆発性のハロゲン化アルキルが含まれることがあので、ハロゲン化アルキルの爆発範囲を避けるような酸素濃度を採る必要がある。反応容器と吸収装置が密閉連結されていて、導入ガスとして吸収後ガスだけを利用する場合、被吸収ガスの酸素濃度を0.1〜16容量%にしておくことで、導入ガスの酸素濃度を爆発範囲外の0.1〜16容量%にすることができる。
【0049】
反応容器に導入する導入ガスの流量は、装置形状等により適宜決めることができる。また反応容器に導入する導入ガスの全体積は、反応液の体積に対して1倍以上が好ましく、30倍以上がより好ましい。また3000倍以下が好ましく、1000倍以下がより好ましい。
【0050】
脱ハロゲン化アルキル工程後、2回目の吸収工程を実施することもできる。以後同様にして、脱ハロゲン化アルキル工程と吸収工程を繰り返し実施してもよい。これにより反応系内のハロゲン化アルキルの殆どを回収することができる。本発明を密閉系で実施すれば、ハロゲン化アルキルは系外に排出されないので大気汚染の防止に効果的である。
【0051】
以下、図1を用いて本発明の不飽和第4級アンモニウム塩の製造方法に好適な製造装置の一例について説明する。
【0052】
加圧反応容器1は(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルとハロゲン化アルキルとの4級化反応を行うために使用される。加圧反応容器1は(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル供給ライン2、攪拌機3、気相部のガス(被吸収ガス)を吸収装置に送るライン4、吸収後ガスを導入するライン5、気相部の酸素濃度を調節するための酸素含有ガス供給ライン6、ハロゲン化アルキル供給ライン7、水供給ライン8を備えている。ライン4に設けられたバルブは反応工程では閉止されており、吸収工程では開弁される。ライン5に設けられたバルブは反応工程では閉止されており、吸収工程では吸収後ガスで反応液をバブリングするために適宜開弁される。
【0053】
加圧吸収装置9は4級化反応の終了後に被吸収ガスをハロゲン化アルキル反応の原料である(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル(吸収液)に接触させて被吸収ガスに含まれる未反応のハロゲン化アルキルを吸収させるために使用される。加圧吸収装置9は吸収液供給ライン10、攪拌機11、被吸収ガスを導入するライン12、吸収後ガスを加圧反応容器1に送るライン5、気相部の酸素濃度を調節するための酸素含有ガス供給ライン13を備えている。加圧吸収装置7と加圧反応容器1を繋ぐライン5の途中には、吸収後ガスに含まれる(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルが反応液に混入することを防ぐために、吸収後ガスを冷却して回収するトラップ14が設置されている。
【0054】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例は図1に記載した不飽和第4級アンモニウム塩の製造装置を用いて行った。実施例において、反応液中の未反応(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルはHPLCで、副生酸はアクリル酸として水酸化ナトリウム水溶液による滴定で定量した。
【0055】
[実施例1]
加圧反応容器(内容積は1L)内を酸素濃度8容量%の酸素含有窒素ガスで置換した後、アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル472.5g(3.3モル)、水159.8gおよび重合防止剤としてモノメチルハイドロキノン1.6g(得られると予想されるアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの80質量%水溶液に対して2000質量ppm)を仕込んだ。そして、この混合液を撹拌しながら、塩化メチル169.1g(3.35モル)を5時間かけてバブリングさせた。塩化メチルは混合液に吸収され、アクリル酸ジメチルアミノエチルエステルと反応してアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドを生成した。この際の反応温度は30〜55℃、反応圧力は−50〜150kPa(ゲージ圧)であった。得られたアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの80質量%水溶液(反応液)は798.9gであり、気相部と反応液に残る未反応の塩化メチルは2.5gであった。4級化反応後、加圧反応容器内の温度は55℃に保持した。
【0056】
加圧吸収装置(内容積1L)内を酸素濃度8容量%の酸素含有窒素ガスで置換した後、吸収液としてアクリル酸ジメチルアミノエチルエステル472.5g(3.3モル)と水2.4gとモノメチルハイドロキノン1.6g(次回反応で得られると予想されるアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド80質量%水溶液の質量に対して2000質量ppm)とを仕込んだ。この吸収液を攪拌しながら、加圧反応容器内の気相部のガスを吸収液中に2L/minの流量でバブリングさせた(吸収工程)。吸収後ガスは加圧反応容器内の液相部中にバブリングさせ、液相部に溶解している塩化メチルを除去した(脱ハロゲン化アルキル工程)。
【0057】
以後同様にして、吸収工程と脱ハロゲン化アルキル工程を連続的に行い、未反応の塩化メチル2.5gを回収した。この操作は4時間で終了した。4級化反応後に加圧反応容器に導入した吸収後ガスの全体積は液相部の体積に対して600倍であった。また、加圧吸収装置に導入した被吸収ガスの全体積は吸収液の体積に対して1021倍であった。
【0058】
このようにして得られた加圧反応容器内の液相部は、未反応のアクリル酸ジメチルアミノエチルエステル0.16質量%、酸分0.06質量%を含むアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド80質量%水溶液であった。
【0059】
また、このようにして得られた吸収液は、アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル465.4g、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド9.59g、水2.4gおよびモノメチルハイドロキノン1.6g(次回反応で得られると予想されるアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドの80質量%水溶液の質量に対して2000質量ppm)の混合物であった。
【0060】
加圧反応容器内の液相部を製品として取り出した後、加圧吸収装置内の吸収液を加圧反応容器に移し、水157.4gを加えた。そして、塩化メチルの使用量を166.6gとした以外は初回と同様にして4級化反応と塩化メチルの回収を行った。この結果、得られた製品と吸収液は初回のものと変わりなかった。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、前記式(1)で表される(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルと前記式(2)で表されるハロゲン化アルキルとを4級化反応させて前記式(3)で表される不飽和第4級アンモニウム塩を製造する方法において、使用できる反応溶媒に制限がなく、未反応のハロゲン化アルキルを効率良く回収し再利用することができる。
【0062】
また本発明の不飽和第4級アンモニウム塩の製造装置は、本発明の不飽和第4級アンモニウム塩の製造方法を実施するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る不飽和第4級アンモニウム塩の製造装置の構成を示す概略図。
【符号の説明】
1 加圧型反応容器
2 (メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル供給ライン
3 攪拌機
4 ライン
5 ライン
6 酸素含有ガス供給ライン
7 ハロゲン化アルキル供給ライン
8 水供給ライン
9 加圧吸収装置
10 吸収液供給ライン
11 攪拌機
12 ライン
13 酸素含有ガス供給ライン
14 トラップ

Claims (5)

  1. 式(1)で表される(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルと式(2)で表されるハロゲン化アルキルとを4級化反応させて式(3)で表される不飽和第4級アンモニウム塩を製造する方法において、
    反応容器にて4級化反応終了後、酸素を含有する導入ガスを液相部に導入して液相部に含まれる未反応のハロゲン化アルキルを気相部に移行させる脱ハロゲン化アルキル工程を行った後、
    反応容器の気相部の未反応の前記ハロゲン化アルキルを含むガスを前記式(1)で表される(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルを含む吸収液を仕込んだ吸収装置に被吸収ガスラインを介して送り、吸収液に接触させて未反応の前記ハロゲン化アルキルを吸収させる吸収工程を行い、
    得られた吸収液を4級化反応の原料として再利用すると共に、
    吸収工程後の吸収装置の気相部のガスを反応容器へ吸収後ガスラインを介して送り、反応容器、被吸収ガスライン、吸収装置、及び吸収後ガスラインで形成される密閉系を用いて、脱ハロゲン化アルキル工程の導入ガスとして再利用することを特徴とする不飽和第4級アンモニウム塩の製造方法。
    Figure 0004426164
    (式中、R1は水素原子またはメチル基を示し、nは2または3を示す。)
    Figure 0004426164
    (式中、R2はメチル基またはエチル基を示し、Xは塩素、臭素、ヨウ素のいずれかの原子を示す。)
    Figure 0004426164
    (式中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2はメチル基またはエチル基を示し、nは2または3を示し、Xは塩素、臭素、ヨウ素のいずれかの原子を示す。)
  2. 前記(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルと接触させる気相部の未反応の前記ハロゲン化アルキルを含むガス中の酸素濃度が0.1〜16容量%である請求項1記載の不飽和第4級アンモニウム塩の製造方法。
  3. 前記式(1)で表される(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルがアクリル酸ジメチルアミノエチルエステルまたはメタクリル酸ジメチルアミノエチルエステルである請求項1又は2記載の不飽和第4級アンモニウム塩の製造方法。
  4. 前記式(2)で表されるハロゲン化アルキルが、塩化メチルまたは塩化エチルである請求項1〜3のいずれか記載の不飽和第4級アンモニウム塩の製造方法。
  5. 請求項1から4のいずれか記載の不飽和第4級アンモニウム塩の製造方法を行う製造装置であって、
    式(1)で表される(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルと式(2)で表されるハロゲン化アルキルとの4級化反応終了後、酸素を含有する導入ガスを液相部に導入して液相部に含まれる未反応のハロゲン化アルキルを気相部に移行させる脱ハロゲン化アルキル工程を行う反応容器と、
    脱ハロゲン化アルキル工程後の反応容器の気相部の前記未反応のハロゲン化アルキルを含むガスを前記式(1)で表される(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルを含む吸収液に接触させて未反応の前記ハロゲン化アルキルを吸収させる吸収工程を行う吸収装置と、
    脱ハロゲン化アルキル工程後の反応容器の気相部の前記未反応のハロゲン化アルキルを含むガスを吸収装置に送る被吸収ガスラインと、
    吸収工程後の吸収装置の気相部のガスを、脱ハロゲン化アルキル工程の導入ガスとして反応容器に送る吸収後ガスラインとを有し、
    反応容器、被吸収ガスライン、吸収装置、及び吸収後ガスラインが密閉系を形成したことを特徴とする式(3)で表される不飽和第4級アンモニウム塩の製造装置。
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