JP4425499B2 - 車両ガラス用表面処理剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はガラスの表面処理剤組成物に関し、特に自動車の窓ガラス、サイドミラー等の表面処理に用いるための車両ガラス用の表面処理剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の車両の窓ガラスに水あかやワックスに含まれる油分などが固着し、雨中の走行時に視界を妨げることは日常的にみられる現象である。また近年の乗用車はサイドミラー等のワイパー機能をもたないミラー類を装着しているが、雨中の走行時水滴やどろ等が付着し走行の安定性を著しく損ねている。
【0003】
このような問題点を解消する目的で自動車のガラス面に撥水処理剤を付与することが検討されており、たとえば特開昭50−15473号、同61−118487号、同61−64780号にはオルガノポリシロキサンを主成分とするガラス用表面処理剤が開示されている。また特開昭61−215235号には特定の多層コーティングと高温焼付けにより防汚性を有する低反射率がガラスを得る方法が提案されている。
【0004】
しかしながら、これらの従来技術では、表面処理剤を塗布する際にガラス表面を完全に清浄する必要があったり、ウオッシャー液やガラスクリーナーに含まれているメタノールや界面活性剤により劣化しやすく、屋外に放置した場合、耐侯性、耐久性が悪いという欠点があった。また高温焼付けを必要とする処理剤等の場合は消費者による取扱いが不可能か極めて煩雑という欠点もある。
【0005】
このような問題を解決するため、特許第2814259号では、パーフルオロアルキル基を有するシラン化合物を配合した処理剤が提案されている。しかしながら、この処理剤には、水滴の転がり性等が劣るという欠点があり、この欠点を解決するために、特開平10−121036号では、アルキルシラン化合物・オルガノポリシロキサンを配合した処理剤が提案されている。ところが、この処理剤には、時間が経過するとワイパーなどにより処理表面が白くなり視界を悪くする膜の安定性、撥水性などに欠けるという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は上記した従来技術の欠点を解消することにあり、取扱い容易にして、耐侯性、耐久性に優れ、自動車のガラスに塗布した場合、水あかや油分等が付着し難くしかも雨中走行時においてガラス表面上に均一で分離しやすい水滴を形成するため走行時のゆれによって容易に水滴やどろ等の汚れがとれ視界の悪化を防止しうると共にワイパーブレードの作動等に対しては何らの悪影響を示さないという作用効果を示し、且つ水滴の転がり性、撥水性、膜の安定性にも優れた車両ガラス用の表面処理剤を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記目的を達成するため鋭意検討した結果、アルキル基を有するアルコキシシラン化合物、オルガノポリシロキサン及び酸を揮発性有機溶剤に溶解させた車両ガラス用表面処理剤において、アルコキシシラン化合物とオルガノポリシロキサンを特定の比で配合することが極めて有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は
(A)炭素原子数4〜18のアルキル基を含有するアルキルアルコキシシラン化合物
(B)次の群から選ばれる少なくとも一つのポリオルガノシロキサン
(B−1)下記式(I)で示される直鎖状ポリジオルガノシロキサンと下記式(II)で示される環状ポリジオルガノシロキサンの混合物(ここで、直鎖状ポリジオルガノシロキサン1に対する環状ポリジオルガノシロキサンの重量比は1〜50である)
【0009】
【化4】
【0010】
(式中、Rは同一または異なる置換または非置換の1価の炭化水素基、mは0〜5の整数、nは3〜7の整数である)
(B−2)下記式(III)で示される両末端トリメチルシリル基封鎖ポリジオルガノシロキサン油
【0011】
【化5】
【0012】
(式中、Rは同一または異なる置換または非置換の1価の炭化水素基、pは5〜80の整数である)
(B−3)下記式(IV)で示される両末端シラノール基またはアルコキシ基封鎖ポリジオルガノシロキサン油
【0013】
【化6】
【0014】
(式中、Rは同一または異なる置換または非置換の1価の炭化水素基、qは5〜80の整数、x、x’は夫々1個がOH基、残余がメチル基であるか、もしくは1〜3個がOR基、残余がメチル基である)
(C)酸
(D)揮発性溶剤 (A)〜(D)の全体に対し、80〜99重量%となる量
を含有し、
(B)/(A)の重量比が12〜40且つ(C)/(A)の重量比が2〜5であることを特徴とする車両ガラス用表面処理剤組成物である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の車両ガラス用表面処理剤組成物に用いられる(A)成分のアルキル基を有するアルコキシシラン化合物とは、分子中に炭素原子数4〜18、好ましくは6〜12、特に好ましくは6のアルキル基を少なくとも1個有するアルコキシシラン化合物であり、具体的にはヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン等が例示され、ヘキシルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0016】
本発明の車両ガラス用表面処理剤組成物に用いられる(B)成分のオルガノポリシロキサンとは、(B−1)成分の式(I)で示される直鎖状ポリジオルガノシロキサンと式(II)で示される環状ポリジオルガノシロキサンの混合物、(B−2)成分の式(III)で示される両末端トリメチルシリル基封鎖ポリジオルガノシロキサン油、(B−3)成分の式(IV)で示される両末端シラノール基またはアルコキシ基封鎖ポリジオルガノシロキサン油から選ばれる少なくとも1つである。
【0017】
式(I)で示される直鎖状ポリジオルガノシロキサンにおいて、その重合度mは0〜5であり、好ましくは0または1のものである。また、Rは同一または異なる1価の炭化水素基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基等の 1価の非置換炭化水素基、トリフロロメチル基等の 1価の置換炭化水素基等が例示されるが、系の安定性、揮発性の維持等からメチル基が好ましい(以下の化合物でも同様)。
【0018】
また、式(II)で示される環状ポリジオルガノシロキサンの重合度nは3〜7であり、好ましくは4または5のものである。
【0019】
(B−1)成分の上記揮発性ポリオルガノシロキサン混合物において、直鎖状ポリジオルガノシロキサン1に対する環状ポリジオルガノシロキサンの重量比は10〜200であり、好ましくは12〜50、より好ましくは15〜45である。10未満だところがり性の低下が起きる。200より大きいと持続性の低下を招く。
【0020】
次に、(B−2)成分は両末端トリメチルシリル基封鎖ポリジオルガノシロキサン油、(B−3)成分は両末端シラノール基またはアルコキシ基封鎖ポリジオルガノシロキサン油であり、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシキサン、ジメチル−メチルフェニルポリシロキサンポリマー、フッ素化ポリシロキサン等から用いられる。
【0021】
これらポリジオルガノシロキサン油のなかでも、両末端にシラノール基もしくはアルコキシシリル基をもつものが好ましく、特にこれら両末端をもつポリジメチルシロキサン油が好ましい。
【0022】
(B−2)、(B−3)成分の重合度は、5〜80のものであれば本発明の効果を得ることができる。好ましくは15〜60である。より好ましくは、25〜60である。重合度が80を超えると処理性が悪くなり、耐久性も劣ってくる。また重合度が5未満だと水滴の落下性が劣ってくる。
【0023】
本発明に用いられる(C)成分の酸としては、硫酸、塩酸、芳香族スルホン酸、脂肪族スルホン酸、リン酸、ハロゲン化スルホン酸、クロル酢酸又は五塩化リン等が好ましく用いられる。特に好ましい酸は有機スルホン酸とリン酸である。
【0024】
本発明に用いられる(D)成分の揮発性溶剤としては、炭素数1〜8のアルコール、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル等揮発性を有する適宜の有機溶剤を用いることができる。通常沸点が50〜100℃程度の有機溶剤が用いられる。入手のしやすさなどから、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコールが望ましい。
【0025】
本発明において、各成分は、(B)/(A)の重量比が12〜40且つ(C)/(A)の重量比が2〜5の割合で使用される。(B)/(A)の重量比が12より小さいと、アルキル基を有するアルコキシシラン化合物によってえられる改善されたころがり性が長期にわたって持続しない。また40より大きいと、持続性は良いものの、ころがり性の低下が起きる。
【0026】
また、(C)/(A)の重量比が5より大きいと、ころがり性の発現が遅く、ころがり性および撥水性の持続が十分でない。また2より小さいと、逆に持続性の低下を招く。
【0027】
本発明組成物において、揮発性溶剤は、作業性から全体重量の80〜99重量%の範囲で適宜使用される。
【0028】
本発明の表面処理剤は上記各成分を混合するだけで容易に調製される。
【0029】
ガラス表面への塗布はハケ塗り、スプレー等従来知られた適宜の方法で行うことができる。
【0030】
本発明の表面処理剤を塗布するガラス表面としては乗用車、バス、トラック等の自動車、さらには電車、航空機等も含めた車両の室外部にあるガラス表面があげられる。
【0031】
【発明の効果】
本発明の表面処理剤を自動車のガラス表面に塗布した場合には次のような効果が得られる。
(1) 塗布するだけでよく処理が簡単であると共に被処理面を十分清浄にしなくとも所期の効果を発揮する。水滴の転がり性、撥水性、膜の安定性にも優れ、長期にわたって良好な視界を確保する。
(2) 水あかや油分の固着が長時間防止される。
(3) 水滴の落下性、均一性に優れ雨中走行時サイドミラー等が雨やどろ等により本来の機能を低下させることが抑制される。
(4) 雨中走行時ワイパーブレードのきしみ音やワイパーブレードの飛びの現象が生じない。
【0032】
【実施例】
次に実地例により本発明を説明する。ただし本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
実施例1〜5、比較例1〜5
表1に示す組成割合(重量比)にて各成分を混合して処理剤をつくった。このそれぞれの組成について、下記試験を実施した。
(a)耐久性試験:自動車のフロントガラスを撥水処理し、水を流しながらワイパーを低速で50往復/分させながら、視界が不十分になるまでの時間を測定した。
(b)ビビリ試験:自動車のフロントガラスを撥水処理し、ワイパーを低速で50往復させながら、ワイパーのビビリの有無を評価した。
(c)白残:自動車のフロントガラスを撥水被膜処理し、ワイパーを低速で作動させ、ワイパーの戻り時におけるガラス表面の白残の発生の有無を目視評価した。
○:白残なし
△:筋状の白残あり
×:白残あり
結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
また、実施例の処理剤を自動車のフロントガラスに塗布し実用試験を試みた結果、6ケ月以上良好な視界を維持し、ワイパーブレードのビビリ音や、飛びは認められなかった。一方、比較例1〜5の組成物は水滴の落下性が6ヶ月をまたずして低下し、ワイパーブレードのきしみ音、飛びも発生した。
Claims (1)
- (A)炭素原子数4〜18のアルキル基を含有するアルキルアルコキシシラン化合物
(B)次の群から選ばれる少なくとも一つのポリオルガノシロキサン
(B−1)下記式(I)で示される直鎖状ポリジオルガノシロキサンと下記式(II)で示される環状ポリジオルガノシロキサンの混合物(ここで、直鎖状ポリジオルガノシロキサン1に対する環状ポリジオルガノシロキサンの重量比は1〜50である)
(B−2)下記式(III)で示される両末端トリメチルシリル基封鎖ポリジオルガノシロキサン油
(B−3)下記式(IV)で示される両末端シラノール基またはアルコキシ基封鎖ポリジオルガノシロキサン油
(C)酸
(D)揮発性溶剤 (A)〜(D)の全体に対し、80〜99重量%となる量
を含有し、
(B)/(A)の重量比が12〜40且つ(C)/(A)の重量比が2〜5であることを特徴とする車両ガラス用表面処理剤組成物。
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