JP4424820B2 - トレッドゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐摩耗性が良好であり、雨天時の制動性能やハイドロプレーニング性能等のWET性能に優れ、空気入りタイヤ等のトレッドに好適なトレッドゴム組成物、及び該トレッドゴム組成物を用い、前記WET性能、耐摩耗性に優れた空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、雨天時の制動性能等のWET性能に優れた空気入りタイヤのトレッドゴム組成物の開発が盛んに行われてきている。従来においては、前記WET性能に優れたトレッドゴム組成物としては、全表面が親水性であるものや、全表面が撥水性であるものなどが知られているが、いずれも前記WET性能が十分とは言えない。一方、トレッドゴム組成物には、耐摩耗性に優れることが基本的性能として要求されるが、該耐摩耗性、前記WET性能に優れるトレッドゴム組成物は未だ提供されていないのが現状である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、耐摩耗性が良好であり、雨天時の制動性能やハイドロプレーニング性能等のWET性能に優れ、空気入りタイヤ等のトレッドに好適なトレッドゴム組成物、及び該トレッドゴム組成物を用い、前記WET性能、耐摩耗性に優れた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明者がタイヤトレッドのブロックの表面と溝側面及び溝底面とにおける対水接触角について鋭意検討した結果、接地部分と非接地部分とにおける対水接触角をそれぞれ異なる範囲に制御することにより前記WET性能を大幅に向上させることができることを見出した。
本発明は、本発明者によるかかる知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 25℃における対水接触角が、接地面であるトレッドブロック表面において90°以上である撥水性ゴム組成物を含み、非接地面である溝側面及び溝底面において70°以下である親水性ゴム組成物を含むことを特徴とするトレッドゴム組成物である。
<2> 25℃における対水接触角が、前記トレッドブロック表面において100°以上である撥水性ゴム組成物を含む前記<1>に記載のトレッドゴム組成物である。
<3> 25℃における対水接触角が、前記溝側面及び溝底面において50°以下である親水性ゴム組成物を含む前記<1>又は<2>に記載のトレッドゴム組成物である。
<4> 25℃における対水接触角が、前記溝側面及び溝底面において30°以下である親水性ゴム組成物を含む前記<1>又は<2>に記載のトレッドゴム組成物である。
<5> 撥水性ゴム組成物が、フッ素樹脂、シラン化合物及びシリコーン油から選択される少なくとも1種の撥水化剤を含有する前記<1>から<4>のいずれかに記載のトレッドゴム組成物である。
<6> 親水性ゴム組成物が、非イオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種の親水化剤を含有する前記<1>から<5>のいずれかに記載のトレッドゴム組成物である。
<7> 親水性ゴム組成物のゲージが0.1mm以上である前記<1>から<6>のいずれかに記載のトレッドゴム組成物である。
<8> 撥水性ゴム組成物の前記トレッドブロック表面に占める面積が50%以上である前記<1>から<7>のいずれかに記載のトレッドゴム組成物である。
<9> 撥水性ゴム組成物の前記トレッドブロック表面に占める面積が70%以上である前記<1>から<7>のいずれかに記載のトレッドゴム組成物である。
<10> 前記<1>から<9>のいずれかに記載のトレッドゴム組成物を少なくともトレッドに用いたことを特徴とする空気入りタイヤである。
【0005】
【発明の実施の形態】
(トレッドゴム組成物)
本発明のトレッドゴム組成物は、接地部分に撥水性ゴム組成物を含み、非接地部分に親水性ゴム組成物を含んでなる。以下、特に断らない限り、前記接地部分とは、接地面であるトレッドブロック表面を意味し、前記非接地部分とは、非接地面である溝側面及び溝底面を意味する。
【0006】
−撥水性ゴム組成物−
前記撥水性ゴム組成物は、25℃における対水接触角が、90°以上であることが必要であり、100°以上であるのが好ましい。
前記撥水性ゴム組成物の25℃における対水接触角が90°未満であると、路面と該撥水性ゴム組成物の表面との界面に介在する水膜を、該界面外へはじき出す力が小さく、WET性能の改良効果が十分でないことがある。なお、一般の空気入りタイヤにおけるトレッドでは、前記対水接触角は70°以上90°未満である。
なお、本発明においては、前記対水接触角として、前記数値範囲のいずれかの下限値又は後述の実施例において採用した該対水接触角のいずれかの値を下限とする範囲も好ましい。
前記対水接触角は、例えば、以下のようにして測定することができる。即ち、常温下、ゴムサンプル表面に水を滴下し、その水滴の接触角を公知の接触角計を用いて測定し、その測定値を該対水接触角をすることができる。
【0007】
前記撥水性ゴム組成物の前記接地面に占める面積としては、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
前記撥水性ゴム組成物の前記接地面に占める面積が50%未満であると、前記接地面内にける、撥水性に優れた表面の占有率が低いため、路面と該撥水性ゴム組成物の表面との界面に介在する水膜を、該界面外へはじき出す力が小さく、WET性能の改良効果が十分でないことがある。
【0008】
前記撥水性ゴム組成物は、フッ素樹脂、シラン化合物及びシリコーン油から選択される少なくとも1種の撥水化剤を含有するのが好ましい。
前記フッ素樹脂としては、例えば、四フッ化エチレン樹脂などが挙げられる。
前記シラン化合物としては、例えば、シラン系カップリング剤などが挙げられる。
前記シリコーン油としては、例えば、ジメチルシリコーンオイルなどが挙げられる。
なお、前記撥水化剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、また、市販品を使用してもよい。
【0009】
前記撥水性ゴム組成物は、好ましくは前記撥水化剤を含有してなるが、該撥水化剤を除く成分としては、特に制限はなく、ゴム組成物の配合用成分として公知のものが挙げられる。
前記撥水性ゴム組成物は、例えば、ゴム成分と、必要に応じて適宜選択したその他の成分とを含有してなる。
【0010】
前記ゴム成分としては、少なくとも1種のジエン系ゴムを含有し、必要に応じて更に他のゴムを含有する。
前記ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴムが好ましい。
前記他のゴムとしては、例えば、フッ素ゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレン共重合ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、多硫化ゴム、ウレタンゴム、などが挙げられる。
前記ジエン系ゴムの前記ゴム成分における含有量としては、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましく、100重量%であるのが特に好ましい。
【0011】
前記その他の成分としては、本発明の効果を害しない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができ、市販品を好適に使用することができる。
前記その他の成分としては、例えば、補強性充填材、硫黄等の加硫剤、ジベンゾチアジルジスルフィド等の加硫促進剤、加硫助剤、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジル−スルフェンアミド、N−オキシジエチレン−ベンゾチアジル−スルフェンアミド等の老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、オゾン劣化防止剤、着色剤、帯電防止剤、分散剤、滑剤、酸化防止剤、軟化剤、発泡剤、発泡助剤、無機充填材等の添加剤等の他、通常ゴム業界で用いる各種配合剤などが挙げられる。
【0012】
前記補強性充填材としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、シリカ、短繊維、などが好適に挙げられる。
【0013】
前記カーボンブラックとしては、特に制限はなく、市販品を好適に使用することができる。該カーボンブラックの前記ゴム組成物における含有量としては、前記ゴム成分100重量部に対し、5〜60重量部であるのが好ましい。
【0014】
前記シリカとしては、特に制限はなく、市販品を好適に使用することができる。該シリカの前記ゴム組成物における含有量としては、前記ゴム成分100重量部に対し、5〜60重量部であるのが好ましい。
【0015】
前記短繊維としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維等の有機繊維、ガラス繊維等の無機繊維、などが挙げられる。
【0016】
−親水性ゴム組成物−
前記親水性ゴム組成物は、25℃における対水接触角が、70°以下であることが必要であり、50°以下であるのが好ましく、30°以下であるのがより好ましい。
前記親水性ゴム組成物の25℃における対水接触角が70°を超えると、該親水性ゴム組成物の表面における水の流速が上がらず、該親水性ゴム組成物の親水性化が十分でなく、WET性能の改良効果が発現しないことがある。
なお、本発明においては、前記対水接触角として、前記数値範囲のいずれかの上限値又は後述の実施例において採用した該対水接触角のいずれかの値を上限とする範囲も好ましい。
【0017】
前記親水性ゴム組成物が、非イオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種の親水化剤を含有するのが好ましい。
【0018】
前記非イオン性界面活性剤の前記親水性ゴム組成物における含有量としては、前記ゴム成分100重量部に対し、0.5〜10重量部が好ましい。
前記非イオン性界面活性剤の含有量が、0.5重量部未満であると、該親水性ゴム組成物の表面を十分に親水化させることができないことがあり、10重量部を超えると、該親水性ゴム組成物の耐摩耗性が低下することがある。
【0019】
前記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、また、市販品を好適に使用することができる。
【0020】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、などが挙げられる。
前記ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセスキオレエート、などが挙げられる。
【0021】
前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノヤシ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリイソステアレート、などが挙げられる。
前記ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルとしては、例えば、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、などが挙げられる。
【0022】
前記グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート、自己乳化型グリセロールモノステアレート、分子蒸留モノグリセライドステアリン系、分子蒸留モノグリセライド植物性ステアリン系、分子蒸留モノグリセライド植物性オレイン系、中純度モノグリセライド・ステアリン系、中純度モノグリセライド・ステアリン・オレイン系、中純度モノグリセライド・オレイン系、中純度モノグリセライド・自己乳化型ステアリン系、などが挙げられる。
【0023】
前記ポリエチレングリコール脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、などが挙げられる。
これらの外、更に、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、などが挙げられる。
【0024】
前記親水性ゴム組成物のゲージとしては、0.1mm以上3.0mm未満であるのが好ましい。
前記親水性ゴム組成物のゲージが、0.1mm未満であると、親水化剤としての前記非イオン系界面活性剤による表面皮膜の形成が不完全なものとなり、該親水性ゴム組成物において、所望の親水性が得られないことがあり、3.0mm以上であると、接地面に親水性ゴム組成物の層が厚く配置された形となる。よって、慣らし走行やバフ加工による摩耗により、親水性ゴム組成物の層を除去する工数が多くなることがある。
【0025】
前記親水性ゴム組成物は、好ましくは前記親水化剤を含有してなるが、該親水化剤を除く成分としては、特に制限はなく、ゴム成分として公知のものが挙げられる。
前記親水性ゴム組成物は、例えば、前記撥水性ゴム組成物の説明における前記ゴム成分と前記その他の成分とを含有してなる。
【0026】
−トレッドゴム組成物の製造−
本発明のトレッドゴム組成物は、公知の方法に従って製造され、例えば、前記撥水性ゴム組成物の上に前記親水性ゴム組成物を積層し、加硫成形等を行うこと等により製造される。
【0027】
前記加硫成形を行う装置、方式、条件等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記加硫成形を行う装置としては、例えば、通常タイヤ用ゴム組成物の加硫に用いる金型による成形加硫機などが挙げられる。
前記加硫成形の温度としては、通常120〜190℃程度である。
【0028】
なお、前記撥水性ゴム組成物及び前記親水性ゴム組成物は、それぞれの各成分を適宜、混練りし、熱入れし、押出等することにより得られる。
【0029】
前記混練りの条件としては、特に制限はなく、混練り装置への投入体積、ローターの回転速度、ラム圧等、混練り温度、混練り時間、混練り装置の種類等の諸条件について目的に応じて適宜選択することができる。
前記混練り装置としては、例えば、通常ゴム組成物の混練りに用いるバンバリーミキサー、インターミックス、ニーダー、等が挙げられる。
【0030】
前記熱入れの条件としては、特に制限はなく、熱入れ温度、熱入れ時間、熱入れ装置等の諸条件について目的に応じて適宜選択することができる。
前記熱入れ装置としては、例えば、通常ゴム組成物の熱入れに用いるロール機等が挙げられる。
【0031】
前記押出の条件としては、特に制限はなく、押出時間、押出速度、押出装置、押出温度等の諸条件について目的に応じて適宜選択することができる。
前記押出装置としては、例えば、通常タイヤ用ゴム組成物の押出に用いる押出機等が挙げられる。前記押出温度は、適宜決定することができる。
【0032】
前記押出の際、前記撥水性ゴム組成物及び前記親水性ゴム組成物の流動性をコントロールする目的で、アロマ系オイル、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、エステル系オイル等の可塑剤、液状ポリイソプレンゴム、液状ポリブタジエンゴム等の液状ポリマーなどの加工性改良剤を前記トレッドゴム組成物に適宜添加することができる。この場合、該ゴム組成物の加硫前の粘度を低下させ、その流動性を高めることができ、極めて良好に押出を行うことができる。
【0033】
−用途−
本発明のトレッドゴム組成物は、各種乗り物のタイヤトレッドに好適に使用することができるが、以下の本発明の空気入りタイヤのトレッドに特に好適に使用することができる。
【0034】
(空気入りタイヤ)
本発明の空気入りタイヤは、前記本発明のトレッドゴム組成物を少なくとも用いてなり、好ましくは少なくともトレッドに用いてなる。
本発明の空気入りタイヤは、前記本発明のトレッドゴム組成物を用いること以外は、特に制限はなく、公知の空気入りタイヤの構成をそのまま採用することができる。
【0035】
前記空気入りタイヤの一例としては、1対のビード部、該ビード部にトロイド状をなして連なるカーカス、該カーカスのクラウン部をたが締めするベルト及びトレッドを有してなる空気入りタイヤなどが好適に挙げられる。
本発明の空気入りタイヤは、ラジアル構造を有していてもよいし、バイアス構造を有していてもよい。
【0036】
前記トレッドは、一般に、直接路面に接地する上層のキャップ部と、このキャップ部の空気入りタイヤの内側に隣接して配置される下層のベース部とから構成されており、いわゆるキャップ・ベース構造を有する。
本発明においては、少なくとも前記キャップ部が前記本発明のトレッドゴム組成物で形成されているのが好ましい。
【0037】
本発明の空気入りタイヤは、その製造方法につき特に制限はないが、例えば、以下のようにして製造することができる。即ち、まず、前記本発明のトレッドゴム組成物(前記撥水性ゴム組成物に前記親水性ゴム組成物を積層したもの)を調製し、該トレッドゴム組成物を、生空気入りタイヤケースのクラウン部に予め貼り付けられた未加硫のベース部の上に貼り付ける。そして、所定のモールドで所定温度、所定圧力の下で加硫成形することにより製造することができる。
【0038】
なお、本発明の空気入りタイヤにおいては、未使用時においては、トレッドブロックをはじめとして全表面が前記親水性ゴム組成物で被覆された状態になっており、該トレッドブロックの表面には前記撥水性ゴム組成物が露出していない状態になっているが、初期使用や表面のバフ加工により、該トレッドブロックの表面の前記親水性ゴム組成物が摩耗して該トレッドブロックの表面からは、以後、前記撥水性ゴム組成物が露出する。
本発明の空気入りタイヤにおいては、接地面である前記トレッドブロック表面には前記撥水性ゴム組成物が露出し、非接地面である溝側面及び溝底面には前記親水性ゴム組成物が露出している。
【0039】
一般的に求められるWET制動性は、路面の水膜が1〜2mm程度である場合に問題とされ、この場合には、ハイドロプレーニングは発生せず、トレッドブロックにおける前記撥水性ゴム組成物の露出表面が、該WET制動性に大きく寄与する。一方、ハイドロプレーニング性能は、わだちのような水深の深い場合(水膜が5〜20mm程度である場合)に問題とされ、この場合には、マクロな排水効果が該ハイドロプレーニング性能に大きく寄与する。
【0040】
本発明の空気入りタイヤにおいては、路面と前記トレッドブロックとの界面に介在する水膜を、前記トレッドブロックにおける前記撥水性ゴム組成物の露出表面がいち早くブロック溝部へはじき出し、実質的な有効接地面積を稼ぐことが可能となる。その結果、雨天時の制動性能等のWET制動性が向上する。一方、ハイドロプレーニングは、速度の高さと水膜の厚みと共に発生し易くなる現象であり、前記界面に介在する大量の水膜をいかに早く、該界面外に流し出すかが重要であるが、前記トレッドブロックにおける溝側面及び溝底面、即ち前記親水性ゴム組成物の露出表面は、対流水抵抗が低いため、溝内に流入した水は流れ易く、除去され易い。このため、該親水性ゴム組成物により、前記界面に存在する大量の水膜が効率良く、該界面外に流し出される。その結果、雨天時のハイドロプレーニング性能等のWET特性が良好となる。
【0041】
本発明の空気入りタイヤは、いわゆる乗用車用のみならず、トラック・バス用等の各種の乗物にも好適に適用することができる。
【0042】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これの実施例に何ら限定されるものではない。
【0043】
(実施例1〜25及び比較例1〜8)
表1及び2に示す組成の各トレッドゴム(No.1〜19)を製造した。各トレッドゴムを表3及び4に示す組合せで積層して各トレッドゴム組成物及び該トレッドゴムを用いた空気入りタイヤ(サイズ:205/60R15)を製造し、以下の評価を行った。その結果を表3及び4に示した。
【0044】
<ハイドロプレーニング性能>
2000ccクラスの乗用車に空気入りタイヤを装備させ、該乗用車をテストコースの直線路を水深20mmのWET路面とし、そこに該乗用車の片輪だけを接触させて速度60km/hで進入させた後、アクセルを踏み込みながら、駆動輪の回転速度と、実車両速度とを測定した。
このとき、初めの内は加速していくが、ある速度でハイドロプレーニングが発生し、駆動輪回転速度が上昇するものの、車両速度が上がらなくなる。この駆動輪回転速度と車両速度とが解離する速度を限界速度とし、指数表示した。
なお、数値が大きい程、良好な結果を意味する。
【0045】
<WET制動性能>
2000ccクラスの乗用車に空気入りタイヤを装備させ、該乗用車をテストコースの直線路を水深2mmのWET路面とし、そこに速度60km/hで該乗用車を進入させた後、制動し、その制動距離を測定し、指数表示した。
なお、数値が大きい程、良好な結果を意味する。
【0046】
<耐摩耗性>
ランボーン摩耗試験機を用い、摩耗損失量を測定し、下式により算出した。
耐摩耗指数={(コントロールとする比較例のトレッドゴム組成物の試験後重量)/(コントロールとする比較例のトレッドゴム組成物の試験前重量)}×100
表3及び4に示したコントロールとする比較例のトレッドゴム組成物を100として指数表示した。即ち数値が大きい程、耐摩耗性が良好である。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
表1において、数値(量)は「重量部」を表す。「SBR ♯1500」は、スチレン・ブタジエンゴム(ジェイエスアール(株)製、SBR ♯1500)を意味する。「BR01」は、シス−1,4−ポリブタジエン(ジェイエスアール(株)製、BR01)を意味する。「NR」は、天然ゴム(Tech BeeHang社製、RSS#3)。「カーボンブラックHAF」は、旭カーボン(株)製、♯70、カーボンN220を意味し、「シリカ」は、日本シリカ工業(株)製、ニプシルAQを意味する。「アロマオイル」は、出光興産(株)製、ダイアナプロセスオイル AH−24)を意味する。「ステアリン酸」は、花王(株)、LUNAC RSビーズ)を意味する。「シランカップリング剤」は、シランカップリング剤(ビス−3−トリエトキシシリルプロピル−テトラスルフィド:デグサAG製、Si69(商標))を意味する。「老化防止剤」は、大内新興化学工業(株)製、ノクラック6Cを意味する。上段「促進剤」は、加硫促進剤(ジフェニルグアニジン(住友化学工業社製、ソクシノールD−G))を意味し、中段「促進剤」は、加硫促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジル−1−スルフェンアミド(大内新興化学社製、ノクセラーCZ)を意味し、下段「促進剤」は、加硫促進剤(ジベンゾチアジルジスルフィド(大内新興化学社製、ノクセラーDM)を意味する。
【0052】
表3及び4の結果から、以下のことが明らかである。即ち、従来におけるシリカ配合のトレッドゴム組成物である比較例1〜8に比べ、本発明のトレッドゴム組成物である実施例1〜25では、耐摩耗性が良好であり、雨天時の制動性能やハイドロプレーニング性能等のWET性能に優れており、これらのバランスも良好であった。
【0053】
【発明の効果】
本発明によると、前記従来における諸問題を解決することができ、耐摩耗性が良好であり、雨天時の制動性能やハイドロプレーニング性能等のWET性能に優れ、空気入りタイヤ等のトレッドに好適なトレッドゴム組成物、及び該トレッドゴム組成物を用い、前記WET性能、耐摩耗性に優れた空気入りタイヤを提供することができる。
Claims (10)
- 25℃における対水接触角が、接地面であるトレッドブロック表面において90°以上である撥水性ゴム組成物を含み、非接地面である溝側面及び溝底面において70°以下である親水性ゴム組成物を含むことを特徴とするトレッドゴム組成物。
- 25℃における対水接触角が、前記トレッドブロック表面において100°以上である撥水性ゴム組成物を含む請求項1に記載のトレッドゴム組成物。
- 25℃における対水接触角が、前記溝側面及び溝底面において50°以下である親水性ゴム組成物を含む請求項1又は2に記載のトレッドゴム組成物。
- 25℃における対水接触角が、前記溝側面及び溝底面において30°以下である親水性ゴム組成物を含む請求項1又は2に記載のトレッドゴム組成物。
- 撥水性ゴム組成物が、フッ素樹脂、シラン化合物及びシリコーン油から選択される少なくとも1種の撥水化剤を含有する請求項1から4のいずれかに記載のトレッドゴム組成物。
- 親水性ゴム組成物が、非イオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種の親水化剤を含有する請求項1から5のいずれかに記載のトレッドゴム組成物。
- 親水性ゴム組成物のゲージが0.1mm以上である請求項1から6のいずれかに記載のトレッドゴム組成物。
- 撥水性ゴム組成物の前記トレッドブロック表面に占める面積が50%以上である請求項1から7のいずれかに記載のトレッドゴム組成物。
- 撥水性ゴム組成物の前記トレッドブロック表面に占める面積が70%以上である請求項1から7のいずれかに記載のトレッドゴム組成物。
- 請求項1から9のいずれかに記載のトレッドゴム組成物を少なくともトレッドに用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。
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