JP4423793B2 - 原子炉格納容器のハッチ追設工法 - Google Patents

原子炉格納容器のハッチ追設工法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に、既設(運転中)の原子力発電所の原子炉格納容器にハッチを新たに追設するための工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図5は、原子力発電所の原子炉建屋を構成する従来の格納容器の一例を示したものであり、鉄筋コンクリート製の建屋内に吊鐘状をした鋼製の容器1が収容されると共に、その格納容器1内に縦長の原子炉圧力容器2が円筒状のペデスタル3上に支持立設された状態で収容されている。
【0003】
また、この鋼製容器1内は、ペデスタル3の頂部付近から水平に延びるドーナツ円板状のダイヤフラムフロア4によって上下に区画されており、その上部空間にドライウェル5が区画形成されると共に、その下部空間に冷却水Wが溜められたサプレッションチャンバ(圧力抑制室)6が区画形成されている。
【0004】
また、この鋼製容器1には、これを内外に連通する開閉自在なアクセス用ハッチ7が所定の位置に複数設けられており、例えば定期実施が義務付けられている供用期間中検査時等に所定のハッチ7を開いて、その内部、すなわちドライウェル5やサプレッションチャンバ6内に作業員や検査機器等の搬出入が行われるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この原子炉格納容器は、建設当初30〜50年程度で新たに立て替えられる予定で建設されているが、諸般の事情により最近ではこの既存の原子炉格納容器の寿命を当初予定よりも大幅に延ばそうとする動きが活発となってきており、これに伴い、大掛かりなメンテナンス作業や老朽化した内部機器の交換作業等が必要となってきた。
【0006】
しかしながら、このような大掛かりな作業を実施するに際して上述したような主に検査用に使用される既設のハッチ7のみを用いたのでは、例えば、その作業位置と既設のハッチの位置が離れている場合や大型の機器を搬出入する場合等にはその搬出入作業自体が困難となったり、作業が効率的に実施できないといった不都合が懸念される。
【0007】
そのため、このような大掛かりな作業に際しては最適な位置、例えば図中A部に示すような位置等に新たにハッチを追設する必要性が生じるが、この鋼製容器の周囲はその周囲が分厚い鉄筋コンクリート製の生体遮蔽壁8で覆われている等の都合により、容易に追設することができず、その具体的な工法については何ら提案されていないのが現状である。
【0008】
そこで、本発明はこのような課題を有効に解決するために案出されたものであり、その目的は、既設の原子力発電所の原子炉格納容器に新たなハッチを容易に追設できる新規な原子炉格納容器のハッチ追設工法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、請求項1に示すように、鋼製容器の周囲に鉄筋コンクリート製の生体遮蔽壁を備えた原子炉格納容器にハッチを追設する工法において、上記鋼製容器と生体遮蔽壁とを部分的に切除して開口部を形成した後、この開口部内にこれを内外に連通するように筒状のハッチを挿入してからそのハッチ周囲に鉄筋を配筋し、しかる後、そのハッチ回りにコンクリートを打設すると共に、そのハッチと上記鋼製格納容器側とを環状の補強板で溶接するようにしたものである。これによって、容易かつ確実に新たなハッチを追設することができるため、内部機器の交換等といった大掛かりな搬出入作業を容易かつ効率的に実施できる。
【0010】
また、請求項2に示すように、上記生体遮蔽壁に開口部を形成するに際しては、その生体遮蔽壁に小径の貫通孔を所定の間隔を隔てて複数穿孔した後、その貫通孔間をカッターで細かくブロック状に切断し、このブロックを順次取り除いて形成するようにすることで、重量構造物である生体遮蔽壁に対して所望口径の開口部を容易に形成することができる。
【0011】
また、請求項3に示すように、上記環状の補強板を、予めそのハッチ側に備え付けておくようにすれば、現場での据え付け作業が省略され、その分現地での作業を省略でき、工期短縮を図ることができる。
【0012】
また、請求項4に示すように、上記ハッチの周囲にこれを囲繞するようにスリーブを据え付け、このスリーブの周囲に鉄筋を配筋するようにすれば、生体遮蔽壁の荷重や圧力が直接ハッチに掛からなくなるため、ハッチの薄肉軽量化及び健全性を確保することができる。
【0013】
また、請求項5に示すように、ハッチの追設位置の外側に、さらに新たな遮蔽壁を追設すれば、その部分の放射線遮蔽機能を維持することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を実施する好適一形態を添付図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1及び図2は、本発明方法によって追設されたハッチ7の実施の一形態を示したものであり、図中1は、前述したように原子炉圧力容器2を収容すると共に、その周囲にドライウェル5を区画形成するための鋼製容器、8はこの鋼製容器1の周囲に僅かな間隔を隔てて設けられる鉄筋コンクリート製の生体遮蔽壁,2aはこの原子炉圧力容器2からハッチ7側に延びる作業フロアである。
【0016】
図示するように、この新たに追設されたハッチ7は、端部にハッチ蓋7aを備えた円筒状に形成されており、鋼製容器1及び生体遮蔽壁8を水平に貫通して内外を連通するように設けられている。
【0017】
また、このハッチ7は、ドライウェル5側端部が環状の補強板1aによって鋼製容器1側に溶接して支持されるようになっている。
【0018】
また、この剛性スリーブ9の周囲には新たな鉄筋10が縦横に配筋されており、メカニカルジョイント等の結合具11を介して生体遮蔽壁8側の鉄筋と相互に連結されている。
【0019】
さらに、このハッチ7の周囲には、これを覆うように鉄筋コンクリート製の遮蔽壁12が新たに付設されており、そのハッチ7部分からの放射線漏れ等を遮蔽するようになっている。尚、この遮蔽壁12及び作業フロア2a上には、ハッチ7とほぼ同じレベルに位置する仮設フロア12a,12aがそれぞれ設けられており、内部機器g等を載置した台車R等をハッチ7内を通過させて内外にスムーズに走行させることができるようになっている。
【0020】
次にこのような構成をしたハッチ7を追設する工法の具体的実施例について説明する。
【0021】
先ず、図3(1)及び(2)に示すようにハッチ7を追設する部分の鋼製容器1をガス溶断トーチ等を用いてドライウェル5側から溶断してほぼ円形に除去する。この除去方法としては、特に限定するものではないが、同図に示すように作業安全性を確保する観点から溶断箇所の下方から狭い範囲で除去していき、徐々に上方に向かって除去する方法が最適である。また、この格納容器1の除去片Pを除去するに際しては溶断前に予めワイヤ等を溶接し、このワイヤによって吊下げるように支持しておけば、溶断時における除去片Pの不慮の落下事故等を確実に防止することができる。
【0022】
次に、このようにして鋼製容器1のハッチ7追設部分をほぼ円形に溶断し、その外側の生体遮蔽壁8が露出した状態になったならば、同図(3),(4)に示すように、その生体遮蔽壁8の外側からドリル等の穿孔器具Dを用いてその生体遮蔽壁8に対し、小径の穿孔hを複数,所定の間隔を隔てて形成した後、その穿孔hを利用し、ダイヤモンドカッター等の切断器具を用いてその穿孔h間の生体遮蔽壁8を複数のブロック状に切断する。尚、この作業に際してはコンクリート屑等が生体遮蔽壁8と鋼製容器1との間に落下しないように、その間に異物落下防止治具13等を設けておくことが好ましい。
【0023】
しかる後、図4(1)に示すように、これら各ブロックB,B…を除去して生体遮蔽壁8に開口部Hを形成すると共に、その開口縁のコンクリートを除去して生体遮蔽壁8側の鉄筋10を剥き出し状態とする。すなわち、一気に開口部Hを形成するのではなく、細かなブロックB単位でコンクリートを除去して開口することによって、重量物である生体遮蔽壁8に対して大口径の開口部Hを形成することができる。尚、この開口作業及び鉄筋10を剥き出し作業に際しては、生体遮蔽壁8の外側に仮設架台S等を設置しておき、仮設架台Sを利用して作業することになる。
【0024】
次に、このようにして生体遮蔽壁8及び鋼製容器1を一気に連通する開口部Hが形成されたならば、同図(2)に示すように、予めその端部に環状の補強板7aが備えられたハッチ7をその開口部H内に挿入し、その補強板7aを鋼製容器1の開口縁に溶接して鋼製容器1側に仮設する。これによって、開口による鋼製容器1の強度低下を防止できると共に、ハッチ7と鋼製容器1との連結部における応力集中に十分耐え得ることが可能となる。
【0025】
その後、このようにしてハッチ7を仮設したならば、同図(3)に示すように、さらにそのハッチ7に高剛性なスリーブ9を挿入すると共に、その周囲に新たな鉄筋10を配筋し、スリーブ9を生体遮蔽壁8側の鉄筋10に固定する。これによって生体遮蔽壁8側の荷重をスリーブ9側で受けることができるため、ハッチ7の健全性が確保されると共に、薄肉・軽量化が可能となり、その製造及び搬出入が容易となる。尚、この新たな鉄筋10と生体遮蔽壁8側及びスリーブ9との鉄筋10との連結は、メカニカルジョイント等の結合器具11を用いて結合する。
【0026】
そして、このようにしてスリーブ9を生体遮蔽壁8側に固定したならば、その鉄筋10を利用してその外側に新たな鉄筋10を配筋して遮蔽壁12用の骨格を形成した後、その剥き出しとなった鉄筋10の周囲にコンクリートCを打設してスリーブ9周囲の隙間を塞ぐと共に、その外側に遮蔽壁12を構築することで、ハッチ7を鋼製容器1側に確実に固定し、据え付けると共に、このハッチ7部分の放射線遮蔽能を担保することができる。
【0027】
尚、本実施の形態にあっては、生体遮蔽壁8に開口部Hを形成するに際しては、小さなブロックB単位でコンクリートを除去して形成するようにしていたが、シールドマシン等のような大口径穿孔装置等を用いたり、開口部Hに沿って小径の穿孔hを複数環状に繋がるように形成することで一気に形成するようにしても良い。
【0028】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、既設の原子力格納容器に対して新たなハッチを容易かつ確実に追設することができる。この結果、内部機器の搬出入や補修・メンテナンス等といった大掛かりな作業を実施するに際してこの追設されたハッチ7を有効利用することが可能となるため、これら作業を容易に実施することができると共にその作業効率を大幅に向上することができる等といった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明工法で追設されたハッチの実施の一形態を示す縦断面図である。
【図2】図1中A−A線矢視図である。
【図3】本発明工法の実施の一形態を示す工程図である。
【図4】本発明工法の実施の一形態を示す工程図である。
【図5】従来の原子炉格納容器の一例を示す全体図である。
【符号の説明】
1 鋼製容器
1a 補強板
7 ハッチ
8 生体遮蔽壁
9 剛性スリーブ
10 鉄筋
11 連結器具
12 遮蔽壁(新設)

Claims (5)

  1. 鋼製容器の周囲に鉄筋コンクリート製の生体遮蔽壁を備えた原子炉格納容器にハッチを追設する工法において、上記鋼製容器と生体遮蔽壁とを部分的に切除して開口部を形成した後、この開口部内にこれを内外に連通するように筒状のハッチを挿入してからそのハッチ周囲に鉄筋を配筋し、しかる後、そのハッチ回りにコンクリートを打設すると共に、そのハッチと上記鋼製格納容器側とを環状の補強板で溶接するようにしたことを特徴とする原子炉格納容器のハッチ追設工法。
  2. 上記生体遮蔽壁に開口部を形成するに際しては、その生体遮蔽壁に小径の貫通孔を所定の間隔を隔てて複数穿孔した後、その貫通孔間をカッターで細かくブロック状に切断し、このブロックを順次取り除いて形成するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の原子炉格納容器のハッチ追設工法。
  3. 上記環状の補強板を、予めそのハッチ側に備え付けておくようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の原子炉格納容器のハッチ追設工法。
  4. 上記ハッチの周囲にこれを囲繞するようにスリーブを据え付け、このスリーブの周囲に鉄筋を配筋するようにしたことを特徴する請求項1〜3のいずれかに記載の原子炉格納容器のハッチ追設工法。
  5. 上記ハッチの追設位置の外側に、さらに新たな遮蔽壁を追設するようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の原子炉格納容器のハッチ追設工法。
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