JP4420528B2 - 水循環殺菌装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブロム含有水が溜められている貯水部の前記ブロム含有水を循環させてこれに殺菌剤を注入する水循環殺菌装置に関し、特にオゾンを用いて海水を循環殺菌浄化する装置に好都合に利用される。
【0002】
【従来の技術】
例えば海水プールの水循環殺菌装置では、プール内の海水を循環濾過しつつ、これに塩素を注入して殺菌したり、オゾン発生装置で発生させたオゾンを注入してより高度に殺菌浄化するようにしている。ところが、このような装置によれば、注入された塩素やオゾンが海水中に微量に存在するブロムイオンと反応し、先ずブロム酸等のブロム過酸化物が生成し、次にこのブロム過酸化物が同じく海水中に微量に存在する有機物と反応してブロモホルムが生成する。このブロモホルムはトリハロメタンの一種類であり、これを除去することが望まれる。しかしながら、従来では、このようなプール海水循環殺菌装置等で特にトリハロメタンを除去する装置は知られていない。
【0003】
なお、ブロム過酸化物等のオキシダントを除去する技術としては、オキシダントを活性炭で分解したり曝気槽で除去する装置が知られている(特開平9−299935号及び特公平5−46277号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は海水等のブロム含有水を殺菌処理するときに殺菌効果を上げると共に生成するトリハロメタンを除去できる水循環殺菌設備を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、ブロム含有水が溜められている貯水部の前記ブロム含有水を循環させてこれに殺菌剤を注入する水循環殺菌装置において、
前記殺菌剤を注入する前に循環される前記ブロム含有水を溜めて曝気する曝気手段を設けたことを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
図1は本発明を適用した水循環殺菌装置の全体構造の一例を示す。
本例の水循環殺菌装置は、ブロム含有水である海水が溜められている貯水部であるプール1の海水を循環させてこれに殺菌剤として本例ではオゾンと塩素とを注入するプール水循環殺菌浄化装置であり、殺菌剤を注入する前に循環される海水を溜めて曝気する曝気手段としてオーバーフロータンク2及びブロワー3を有する。
【0007】
海水循環系としては、オーバーフロー水循環系として、プール1の側溝1aから排出されるオーバーフロー水を導入する前記オーバーフロータンク2、第1循環ポンプ4、第1濾過器5、その入口にオゾン水を供給するためのオゾン発生装置6、水供給ポンプ7、水エゼクタ8及び排オゾン処理器9a付きのオゾン反応塔9、循環海水加熱用の熱交換器10、注入ポンプ11aを備えた塩素注入装置11、等が設けられている。又、上記オゾン発生装置や塩素注入装置等が兼用されると共に第2循環ポンプ12及び第2濾過器13が追加装備された底水循環系が設けられている。
【0008】
オーバーフロータンク2は、例えば幅2m、長さ3m、高さ1.5m程度のもので、その底部にはブロワー3から供給される空気を多数の小孔から噴出させる散気ノズル21が設けられている。供給された空気は上部の排気口22から排出される。このオーバーフロータンク2は、バッファータンクとしての機能を有し、通常水深は0.8m程度になっている。符号23は海水補給ラインである。なお、水深によって補給水を自動注入させるようにしてもよい。
【0009】
本例のオゾン発生装置6は、固体高分子電解質膜を用いた電解式のものであり、180g/m3 程度の高濃度のオゾンガスを発生させる。オゾンガス発生量は調節器6aで調節される。第1及び第2濾過器5及び13としては、通常の砂濾過器を使用可能である。熱交換器10は、循環海水を加熱して温海水にする装置であり、図示しない給湯器で作られた温度80℃程度の温水で加熱される。
【0010】
以上のようなプール水循環殺菌浄化装置は次のように運転され、その機能を発揮する。
オーバーフロー水循環系は通常連続運転される。このときには、第1循環ポンプ4を運転してプール1の表面からオーバーフロータンク2を介して海水を取り入れ、これを第1濾過器5に流し、熱交換器10を介してプール1に戻すように循環濾過する。又、オゾン発生装置6を運転してオゾンガスを発生させ、これを水供給ポンプ7によって循環海水の一部分が分岐して流される水エゼクタ8で海水中に吸入・混合させ、オゾン反応塔9で海水と反応させ、海水中にオゾンを溶解させると共にその大部分のオゾンを海水中のブロムイオンと反応させてオキシダントであるブロム酸等から成るブロム過酸化物を生成させ、このオキシダント含有オゾン水を濾過器5に導入する。又、オゾン発生装置6の運転に続いて曝気用のブロワー3を運転する。
【0011】
上記のようなオキシダント含有オゾン水によれば、オキシダントの強力な殺菌、脱色、脱臭効果が得られると共に、反応塔で反応中及び濾過器5でのオゾン水の凝集作用により、循環水を介してプール水を濁りのない透明度の高い海水にすることができる。オキシダントは循環濾過水の汚れ成分と反応して濾過器内で大部分分解するが、濾過器を通過した後にも残留するようにオゾンが供給される。その結果、残留オキシダントはプール1内に導入され、その中で更に殺菌浄化作用を行うので、プール水の清浄度維持に大きな効果を上げることができる。
【0012】
一方、プール1内のオキシダント濃度は例えば1ppm程度を超えないことが望ましいので、オゾン発生装置6の出力調節部6aでオゾン発生量が調節される。この場合、プール1の循環水入口側の系統にブロム酸モニター等のオキシダント検出器を設けて、オゾン発生量を自動的に調節するようにしてもよい。特に、水族館等の魚介類飼育水槽ではそのようにすることが望ましい。
【0013】
上記の如くオキシダントはプール1内でも海水に効果的に作用するが、オキシダントを含む海水がプール内に長時間滞留すると、オキシダントがプール水内に微量に存在する有機物と反応し、数10分乃至数時間の間にブロモホルム等のトリハロメタンが生成する。
【0014】
このようなトリハロメタン含有海水は、オーバーフロータンク2内に導入され、この中で一定時間滞留し、その間ブロワー3から供給され散気ノゾル21によって形成された多数の気泡によって曝気される。これにより、海水中のトリハロメタンの殆どが気泡に随伴・除去され、気泡と共に排気口22から排出される。そして、このようにトリハロメタンを連続して除去した海水をプール1内に循環供給するため、プール1内のトリハロメタンの濃度を大幅に低下させ、人体に全く影響のないレベルにすることができる。
【0015】
以上ではオーバーフロー水循環系の運転及びそれによる作用効果について説明したが、夜間や一定の時間間隔をもって底水循環系も運転され、それにより同様な作用効果が生ずる。即ち、この系の運転では、オゾン発生装置6で発生させたオゾンをオゾン反応塔9を介して第2濾過器13に導入することにより、オゾン及びオキシダントの作用の下に海水を殺菌浄化することができる。又、この底水循環系によっても、残留オキシダントをプール1に供給し、更にプール水を殺菌浄化する。一方、これによって発生するトリハロメタンは上記曝気システムで除去される。
【0016】
塩素注入装置11も必要に応じて運転され、この塩素によってもオキシダントが発生し、殺菌浄化作用をすると共にトリハロメタンを生成させるが、同様にオーバーフロー水循環系の曝気システムによって排除される。熱交換器10は、プール1内の海水を適当な温度範囲に維持するために、常時又は間歇的に運転される。
【0017】
発明者等は、以上のような本発明の装置により、その機能を発揮させるべくブロワー3を運転して曝気システムを使用した実施例とブロワーの運転を停止した比較例とから成る実験を行い、以下のような結果を得た:
Figure 0004420528
〔実施例及び比較例〕
〔実施例〕としてブロワーを運転し曝気システムを作動させたとき及び〔比較例〕としてブロワーを停止し曝気システムを不作動にしたときのプール水のトリハロメタンの濃度(ppm)測定結果は次のとおりであった:
Figure 0004420528
以上の如く、総トリハロメタンが0.49ppm存在するプールであったのが、本発明を実施することにより、その値を0.032ppmとし約1/15に低減させることができた。
【0018】
なお、以上では本発明を海水プールに適用した例を示したが、本発明はこれに限られず、海水水族館やブロムの含まれる温泉等、オキシダントの殺菌効果を利用しつつトリハロメタンを低減させる必要のある水循環殺菌設備に広く利用される。
【0019】
【発明の効果】
以上の如く本発明によれば、貯水部に溜められているブロム含有水等を循環させてこれに殺菌剤を注入する水循環殺菌設備において、殺菌剤を注入する前に循環されるブロム含有水を溜めて曝気する曝気手段を設けたので、貯水部内のトリハロメタンの含有量を大幅に低減させつつ、貯水部の水の殺菌・浄化効果を増進させることができる。
【0020】
即ち、例えば海水のようにブロムイオンを含有するブロム含有水では、オゾンや塩素等の殺菌剤を単独又は総合的に用いて循環殺菌するときに、殺菌剤と水中のブロムイオンとが反応してオキシダントが生成するが、その一部分を貯水部まで残留させることにより、良好な殺菌・浄化効果を得ることができる。
【0021】
一方、オキシダントが滞留時間の長い貯留部内に存在すると、水中の有機物と反応してトリハロメタンを生成させるが、そのような水を溜めて曝気手段によって曝気処理するので、曝気される空気でトリハロメタンを随伴除去し、貯留部内の水のトリハロメタン含有量を大幅に低減させることができる。この場合、殺菌剤を注入する前に循環水を曝気処理するので、循環水に殺菌剤が注入され循環水が貯水部を出るまで、循環水及び貯留部内の水に対してオキシダントの十分な殺菌浄化効果を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した水循環殺菌設備の全体構造の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 プール(貯水部)
2 オーバーフロータンク(曝気手段)
3 ブロワー(曝気手段)
21 散気ノズル(曝気手段)

Claims (2)

  1. ブロム含有水が溜められている貯水部の前記ブロム含有水を循環させてこれに殺菌剤を注入する水循環殺菌装置において、
    前記貯水部から排出された前記ブロム含有水を循環させて殺菌剤を注入した後、前記貯水部に戻す2つの水循環系を備えており、
    前記水循環系の一方のみに、前記殺菌剤を注入する前に循環される前記ブロム含有水を溜めて曝気する曝気手段を設け、前記水循環系の他方には前記ブロム含有水を曝気する曝気手段を設けないことを特徴とする水循環殺菌装置。
  2. 2つの前記水循環系は、前記貯水部のオーバーフロー水を循環させるオーバーフロー水循環系と、前記貯水部の底水を循環させる底水循環系であり、
    前記曝気手段は、前記オーバーフロー水循環系に設けられており、
    前記オーバーフロー水循環系は、前記曝気手段の下流側に設けられた濾過器を備え、前記曝気手段と濾過器との間に配置された循環ポンプにより、ブロム含有水を循環させる請求項1に記載の水循環殺菌装置。
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