JP4420266B2 - 回路接続用ペースト樹脂組成物およびその使用方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ、および電荷結合素子(CCD;Charge Coupled Device)、およびCMOS(Complementary Metal OxideSemiconductor)などの半導体デバイスに使用される電気回路の微細な配線の接合に用いられる回路接続用ペースト樹脂組成物、および電気回路配線の接続に用いられる回路接続用ペースト樹脂組成物の使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、テレビジョン受信機、パーソナルコンピューター、携帯電話器などに使用されている液晶ディスプレイは、高精細化、小型化されており、それに伴ってドライバの集積回路の配線が狭ピッチ化している。また、高生産性を維持するために温度が200℃、圧力が2MPa、時間が10〜30秒といった激しい熱圧着条件において、集積回路を実装したTCP(TapeCarrier Package)の配線と液晶ディスプレイ基板との配線との接続を行っている。
【0003】
従来からこのような配線の接続を行うために、特開平3−46707号公報などに記載されているような微細導電性粒子を樹脂中に分散させ異方性を持たせた異方性導電フィルムが使用されている。しかしながら、この異方性導電フィルムは、離型フィルムを使用してフィルム化することで製造されるため製造コストがかかり高価であること、使用に際しては専用の自動剥離機の併設が必須となることなどのコスト面で問題があった。また、この異方性導電フィルムは、充分な接着強度が得られず、高温高湿下では接続信頼性が低下するなどの課題もあった。
【0004】
これらの問題を解決する材料としては、特開昭62−40183号公報、特開昭62−76215号公報、特開昭62−176139号公報などに開示されているような室温で液状である回路接続用ペースト樹脂組成物または異方性導電接着剤が挙げられる。しかしながら、これらの回路接続用ペースト樹脂組成物または異方性導電接着剤は、急激な昇温を伴う熱圧着工程では、その粘度が激しく低下する。したがって、熱圧着時に液流れの発生が原因である樹脂抜けが発生したり、染み出し汚染が発生するといった問題があった。また、回路接続用ペースト樹脂組成物または異方性導電接着剤中で、導電性粒子が部分凝集するために、圧着方向で導通不良などが発生するといった課題もあった。さらに、前記回路接続用ペースト樹脂組成物が硬化した後、この硬化物中に気泡が残存し、その気泡により高温高湿時の接続信頼性は保持できないという問題もあった。またさらに、前記硬化物は、強度は充分に有するが、リペア性がないなどの問題点も有していた。
【0005】
したがって、特に、温度が200℃、圧力が2MPa、時間が10秒〜30秒といった激しい熱圧着条件でも硬化物に気泡が残存せず、高い接着信頼性、接続信頼性およびリペア性を有した材料が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、貯蔵安定性、ディスペンサー塗布作業性に優れ、熱圧着時の樹脂抜け、気泡および染み出しの発生がなく、その硬化物は、高温高湿時においても接着信頼性および接続信頼性が高く、かつリペア性を有した回路接続用ペースト樹脂組成物およびその使用方法を提供することである。
【0008】
また、本発明の回路接続用ペースト樹脂組成物は、(I)エポキシ樹脂30〜79.9質量%、(II)フェノール系硬化剤10〜50質量%、(III)60〜150℃の軟化点温度を有する高軟化点微粒子5〜25質量%(IV)シリコーン変性エラストマー、またはエポキシ樹脂にシリコーン含有基がグラフト化されたエラストマーからなる消泡剤0.1〜20質量%を含むことを特徴としている。
【0010】
またさらに、本発明の回路接続用ペースト樹脂組成物は、(I)エポキシ樹脂30〜79.8質量%、(II)フェノール系硬化剤10〜50質量%、(III)高軟化点微粒子5〜25質量%(IV)シリコーン変性エラストマー、またはエポキシ樹脂にシリコーン含有基がグラフト化されたエラストマーからなる消泡剤0.1〜20質量%(V)カップリング剤0.1〜5質量%を含むことを特徴としている。
【0011】
またさらに、本発明の回路接続用ペースト樹脂組成物は、前記回路接続用ペースト樹脂組成物に、さらに硬化触媒(VI)を含むことを特徴としている。
前記エポキシ樹脂(I)は、1分子中にエポキシ基を少なくとも平均1〜6個有し、かつGPCによるポリスチレン換算平均分子量が100〜7000であることが好ましい。
【0012】
前記フェノール系硬化剤(II)はフェノールノボラック型硬化剤であることが好ましい。
前記高軟化点微粒子(III)は、60〜150℃の軟化点温度を有し、一次粒子径が0.01〜2μmの範囲であることが好ましく、さらに、メチル(メタ)アクリレートと、該メチル(メタ)アクリレート以外の共重合可能なモノマーとを共重合して得られる高軟化点微粒子であって、前記メチル(メタ)アクリレートを30〜70質量%含むことも好ましい。
【0013】
シリコーン変性エラストマー、またはエポキシ樹脂にシリコーン含有基がグラフト化されたエラストマーの軟化点温度は−80〜0℃であり、さらに、回路接続用ペースト樹脂組成物中に粒子として存在しており、その1次粒子径が0.05〜5μmであることも好ましく、またさらに、シリコーン変性されたエラストマーが、エポキシ樹脂にシリコーン含有基がグラフト化されたエラストマーであることが望ましい。
【0014】
この回路接続用ペースト樹脂組成物の25℃における粘度は、30〜400Pa・sであることが好ましい。
また、本発明の回路接続用ペースト樹脂組成物の使用方法は、前記回路接続用ペースト樹脂組成物によって、一方の基板上に形成される電気配線と、他方の基板上に形成される電気回路配線とを接続することを特徴としている。
【0015】
本発明に従えば、高温高湿時においても高い接着信頼性および接続信頼性が得られる回路接続用ペースト樹脂組成物を用いるので、配線同士を確実に接続できる。
さらに、本発明の回路接続用ペースト樹脂組成物の使用方法は、回路材料、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ、電荷結合素子、半導体デバイスのうちいずれか1つに用いることを特徴としている。
【0016】
本発明に従えば、貯蔵安定性、ディスペンサー塗布作業性に優れ、熱圧着時の樹脂抜け、気泡および染み出しの発生はなく、その硬化物は、高温高湿時においても接着信頼性および接続信頼性が高く、かつリペア性を有した回路接続用ペースト樹脂組成物が得られる。また、このような回路接続用ペースト樹脂組成物を使用することで、配線の短絡などが発生せず、また隣接配線同士の絶縁性も保たれる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に係る回路接続用ペースト樹脂組成物は、以下に記載の組成物である。本発明においては、以下に記載の、樹脂組成物1、樹脂組成物2、樹脂組成物3、および樹脂組成物4を併せて回路接続用ペースト樹脂組成物という。
【0018】
本発明の第1の回路接続用ペースト樹脂組成物は、(I)エポキシ樹脂30〜80質量%、(II)フェノール系硬化剤10〜50質量%、(III)高軟化点微粒子5〜25質量%を含んでいる(以下、樹脂組成物1)。
また、本発明の第2の回路接続用ペースト樹脂組成物は、(I)エポキシ樹脂30〜79.9質量%、(II)フェノール系硬化剤10〜50質量%、(III)高軟化点微粒子5〜25質量%、(IV)消泡剤0.1〜20質量%を含んでいる(以下、樹脂組成物2)。
【0019】
さらに、本発明の第3の回路接続用ペースト樹脂組成物は、(I)エポキシ樹脂30〜79.8質量%、(II)フェノール系硬化剤10〜50質量%、(III)高軟化点微粒子5〜25質量%、(V)カップリング剤0.1〜5質量%を含んでいる(以下、樹脂組成物3)。
またさらに、本発明の第4の回路接続用ペースト樹脂組成物は、(I)エポキシ樹脂30〜79.8質量%、(II)フェノール系硬化剤10〜50質量%、(III)高軟化点微粒子5〜25質量%、(IV)消泡剤0.1〜20質量%、(V)カップリング剤0.1〜5質量%を含んでいる(以下、樹脂組成物4)。
【0020】
本発明においては、上記樹脂組成物1〜4には、さらに硬化触媒(VI)を添加することができる。
本発明に係る回路接続用ペースト樹脂組成物を、以上のような構成とすることで、貯蔵安定性、ディスペンサー塗布作業性に優れ、熱圧着時の樹脂抜け、気泡および染み出しの発生がない回路接続用ペースト樹脂組成物を得ることができ、またその硬化物も、高温高湿時においても高い接着信頼性および接続信頼性を有し、かつリペア性を有する。本発明の回路接続用ペースト樹脂組成物は、圧力をかけて硬化させた方向には導電性を有し、他の方向には絶縁性を有するという性質を持つ。以下に、本発明の回路接続用ペースト樹脂組成物に含有される成分(I)〜(VI)について詳しく説明する。
【0021】
<エポキシ樹脂(I)>
前記エポキシ樹脂(I)は、本発明の回路接続用ペースト樹脂組成物(100質量%)において、30〜80質量%、好ましくは40〜70質量%、さらに好ましくは45〜65質量%の量で用いることが望ましい。また、後述する消泡剤(IV)を該樹脂組成物に含有する場合、前記エポキシ樹脂(I)は、30〜79.9質量%、好ましくは40〜69.9質量%、さらに好ましくは50〜64.9質量%の量で用いることが望ましい。前記エポキシ樹脂(I)は、該組成物がカップリング剤(V)、または消泡剤(IV)とカップリング剤(V)とを含む場合には、前記エポキシ樹脂(I)は、30〜79.8質量%、好ましくは40〜69.8質量%、さらに好ましくは50〜64.8質量%の量で用いることが望ましい。
【0022】
エポキシ樹脂(I)の使用量が、樹脂組成物(100質量%)において、30質量%以上であると、回路接続用ペースト樹脂組成物の硬化物において接着信頼性および接続信頼性が確保でき、80質量%以下であると、回路接続用ペースト樹脂組成物の硬化物のリペア性が確保できる。ここで、リペア性とは、電極同士などを回路接続用ペースト樹脂組成物で接着した後に不具合が生じた場合には、接着部位を剥離し、洗浄し、再び電極同士を接着することがあるが、その際に、硬化物が、ガラス基板などの基材に残存せず、基材を使用することができる性能をいう。
【0023】
本発明に用いられるエポキシ樹脂(I)としては、すでに公知のものが用いられるが、好ましくは、エポキシ樹脂(I)の1分子中にエポキシ基を平均1〜6個、好ましくは平均1.2〜6個、さらに好ましくは平均1.7〜6個有しているものを用いることが望ましい。エポキシ樹脂(I)の1分子中にエポキシ基を上記範囲で有すれば、本発明の回路接続用ペースト樹脂組成物の高温高湿時における接着信頼性および接続信頼性を得ることができる。
【0024】
エポキシ樹脂(I)の分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCという)によるポリスチレン換算平均分子量が100〜7000、好ましくは150〜3000、より好ましくは350〜2000の範囲であることが望ましい。GPCによるポリスチレン換算平均分子量が上記範囲であれば、回路接続用ペースト樹脂組成物のディスペンサー塗布作業性に優れるため好ましい。本発明において、エポキシ樹脂(I)は、上記1分子中に有するエポキシ基の範囲と、上記ポリスチレン換算平均分子量の範囲とのいずれの組み合わせであってもよい。
【0025】
また、このエポキシ樹脂(I)は常温下で液体であっても固体であってもよい。そのようなエポキシ樹脂(I)としては、例えば、単官能性エポキシ樹脂(I-1)、多官能性エポキシ樹脂(I-2)を挙げることができ、これの中から選ばれるものを1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。
単官能性エポキシ樹脂(I-1)としては、脂肪族モノグリシジルエーテル化合物、芳香族モノグリシジルエーテル化合物、脂肪族モノグリシジルエステル化合物、芳香族モノグリシジルエステル化合物、脂環式モノグリシジルエステル化合物、窒素元素含有モノグリシジルエーテル化合物、モノグリシジルプロピルポリシロキサン化合物、モノグリシジルアルカンなどが挙げられる。
【0026】
前記脂肪族モノグリシジルエーテル化合物としては、ポリアルキレンモノアルキルエーテル類とエピクロルヒドリンとの反応で得られたもの、脂肪族アルコール類とエピクロルヒドリンとの反応で得られたものなどが挙げられる。前記ポリアルキレンモノアルキルエーテル類としては、炭素数が1〜6であるアルキル基またはアルケニル基を有するエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ピロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジピロピレングリコールモノアルキルエーテル、トリピロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリピロピレングリコールモノアルキルエーテルなどが挙げられる。前記脂肪酸アルコール類としては、n−ブタノール、イソブタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ジメチロールプロパンモノアルキルエーテル、メチロールプロパンジアルキルエーテル、グリセリンジアルキルエーテル、ジメチロールプロパンモノアルキルエステル、メチロールプロパンジアルキルエステル、グリセリンジアルキルエステルなどが挙げられる。
【0027】
前記芳香族モノグルシジルエーテル化合物としては、芳香族アルコール類またはそれらをエチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルキレングリコールで変性したアルコール類と、エピクロルヒドリンとの反応で得られたものが挙げられる。前記芳香族アルコール類としては、フェノール、ベンジルアルコール、キシレノール、ナフトールなどが挙げられる。
【0028】
前記脂肪族モノグリシジルエステル化合物としては、脂肪族ジカルボン酸モノアルキルエステルとエピクロルヒドリンとの反応で得られたものが、また、芳香族モノグリシジルエステル化合物としては、芳香族ジカルボン酸モノアルキルエステルとエピクロルヒドリンとの反応で得られたものが挙げられる。
多官能性エポキシ樹脂(I-2)としては、脂肪族多価グリシジルエーテル化合物、芳香族多価グリシジルエーテル化合物、脂肪族多価グリシジルエステル化合物、芳香族多価グリシジルエステル化合物、脂肪族多価グリシジルエーテルエステル化合物、芳香族多価グリシジルエーテルエステル化合物、脂環式多価グリシジルエーテル化合物、脂肪族多価グリシジルアミン化合物、芳香族多価グリシジルアミン化合物、ヒダントイン型多価グリシジル化合物、ノボラック型多価グリシジルエーテル化合物、エポキシ化ジエン重合体、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカーボネート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテルなどが挙げられる。
【0029】
前記脂肪族多価グリシジルエーテル化合物としては、ポリアルキレングリコール類とエピクロルヒドリンとの反応で得られたもの、多価アルコール類とエピクロルヒドリンとの反応で得られたものなどが挙げられる。前記ポリアルキレングリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ピロピレングリコール、ジピロピレングリコール、トリピロピレングリコール、ポリピロピレングリコールなどが挙げられる。多価アルコール類としては、ジメチロールプロパン、トリメチロールプロパン、スピログリコール、グリセリンなどが挙げられる。
【0030】
前記芳香族多価グリシジルエーテル化合物としては、芳香族ジオール類またはそれらをエチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルキレングリコールで変性したジオール類とエピクロルヒドリンとの反応で得られたものなどが挙げられる。前記芳香族ジオール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、ビスフェノールADなどが挙げられる。
【0031】
前記脂肪族多価グリシジルエステル化合物としては、アジピン酸、イタコン酸などの脂肪族ジカルボン酸とエピクロルヒドリンとの反応で得られたものが挙げられる。
前記芳香族多価グリシジルエステル化合物としては、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸などの芳香族ジカルボン酸とエピクロルヒドリンとの反応で得られたものが挙げられる。
【0032】
前記脂肪族多価グリシジルエーテルエステル化合物および芳香族多価グリシジルエーテルエステル化合物としては、ヒドロキシジカルボン酸化合物とエピクロルヒドリンとの反応で得られたものが挙げられる。
前記脂肪族多価グリシジルアミン化合物としては、ポリエチレンジアミンなどの脂肪族ジアミンとエピクロルヒドリンとの反応で得られたものが挙げられる。
【0033】
前記芳香族多価グリシジルアミン化合物としては、ジアミノジフェニルメタン、アニリン、メタキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンとエピクロルヒドリンとの反応で得られたものが挙げられる。
前記ヒダントイン型多価グリシジル化合物としては、ヒダンインまたはその誘導体とエピクロルヒドリンとの反応で得られたものが挙げられる。
【0034】
前記ノボラック型多価グリシジルエーテル化合物としては、フェノールまたはクレゾールとホルムアルデヒドとから誘導されたノボラック樹脂とエピクロルヒドリンとの反応で得られたもの、ポリアルケニルフェノールやそのコポリマーなどのポリフェノール類とエピクロルヒドリンとの反応で得られたものが挙げられる。
【0035】
前記エポキシ化ジエン重合体としては、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化ポリイソプレンなどが挙げられる。
<フェノール系硬化剤( II )>
本発明の回路接続用ペースト樹脂組成物に用いられるフェノール系硬化剤(II)は、樹脂組成物(100質量%)において、10〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは10〜30質量%の量で用いることが望ましい。フェノール系硬化剤(II)の使用量が、樹脂組成物(100質量%)において、10質量%以上であると、該樹脂組成物の硬化物は、高温高湿時の接着信頼性および接続信頼性に優れ、また、50質量%以下であると、樹脂組成物の粘度の上昇を抑えることができ、作業性および塗布性に優れるため好ましい。
【0036】
本発明に用いられるフェノール系硬化剤(II)は、常温下で液体であっても固体であってもよい。2以上の官能基を有するフェノール系硬化剤の中から選ばれたものを1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。そのようなフェノール系硬化剤(II)としては、特開平6−100667号公報記載のフェノール系硬化剤が用いられ、具体的には、フェニル化合物またはナフタレン化合物と、アルデヒド類、ケトン類、芳香族化合物、または脂環式化合物などとの縮合物が挙げられる。前記フェニル化合物としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノールなど、前記ナフタレン化合物としては、α−ナフトール、β−ナフトールなど、前記アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド(ホルマリン)、パラホルムアルデヒドなど、前記ケトン類としてはアセトン、アセトフェノンなど、前記芳香族化合物としては、キシリレン、ジビニルベンゼンなど、前記脂環式化合物としては、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。
【0037】
フェノール系硬化剤(II)としては、すでに公知のもの用いることができるが、フェノールまたはクレゾールとホルムアルデヒドとから誘導されたフェノールノボラック型硬化剤を用いることが好ましい。
<高軟化点微粒子( III )>
本発明の回路接続用ペースト樹脂組成物に用いられる高軟化点微粒子(III)は、軟化点温度以上の温度で、該樹脂組成物中で溶融することにより、該ペーストの粘度を増加させ、その流動を抑制することができる。また、回路接続用ペースト樹脂組成物のリペア性を付与することもできる。
【0038】
そのような高軟化点微粒子(III)は、樹脂組成物(100質量%)において、5〜25質量%、好ましくは10〜20質量%、さらに好ましくは13〜18質量%の量で用いることが望ましい。高軟化点微粒子(III)の使用量が、樹脂組成物(100質量%)において、5質量%以上であると、熱圧着時の樹脂抜けおよび染み出しの発生を抑制することができ、また、25質量%以下であると、回路接続用ペースト樹脂組成物の粘度が、塗布作業に支障をきたすほど上昇せず、ディスペンサー塗布などの作業性に優れるため好ましい。
【0039】
前記高軟化点微粒子(III)としては、軟化点温度が60〜150℃、好ましくは70〜120℃であり、かつ1次粒子径が0.01〜2μm、好ましくは0.1〜1μmの範囲にあるものであれば、すでに公知のものを用いてよい。本発明において高軟化点微粒子(III)は、上記軟化点温度の範囲と1次粒子径の範囲とのいずれの組み合わせであってもよい。ここで1次粒子径とは、機械的にそれ以上分離できない粒子のことである。軟化点温度が60℃以上であると、室温における本発明の回路接続用ペースト樹脂組成物の貯蔵安定性が優れるため好ましい。また、軟化点温度が150℃以下であると150〜200℃の熱圧着工程において、回路接続用ペースト樹脂組成物の流動を抑えることができ、リペア性も付与することができる。また、高軟化点微粒子(III)の1次粒子径は、ディスペンサー塗布などの作業性、接続信頼性などの点から0.01〜2μmであることが好ましい。
【0040】
また、高軟化点微粒子(III)を製造するには、高軟化点微粒子(III)のエマルション溶液を調製し、これを噴霧乾燥することにより得られる。そのようなエマルション溶液は、例えばモノマーとしてメチル(メタ)アクリレート30〜70質量%とその他共重合可能なモノマー70〜30質量%とを共重合させることにより得られ、好ましくはその他共重合可能なモノマーとして、多官能モノマーを使用することが望ましい。上記多官能モノマーを使用すると、エマルション微粒子に微架橋構造が形成される。
【0041】
これらのエマルション溶液から得られた高軟化点微粒子(III)を本発明の回路接続用ペースト樹脂組成物に用いることで、室温における回路接続用ペースト樹脂組成物の貯蔵安定性がより高くなり、熱圧着時における樹脂抜けおよび染み出しの発生をさらに抑制することができる。
前記モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(アクリレート)、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート)等のアクリル酸エステル類、アクリルアミド類、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等の酸モノマー、スチレン、スチレン誘導体等の芳香族ビニル化合物等を挙げることができる。
【0042】
また、前記エマルション微粒子に微架橋構造を形成するための多官能モノマーとしては、ジビニルベンゼン、ジアクリレート類、1,3ーブタジエン、1、3ーペンタジエン、イソプレン、1、3ーヘキサジエン、クロロプレン等の共役ジエン類を使用することができる。
前記エマルション微粒子の表面を微架橋する方法としては、エマルション微粒子の表面層のエポキシ基、カルボキシル基、およびアミノ基を金属架橋させてアイオノマー架橋させる方法も挙げられる。エマルション微粒子に微架橋構造を形成することにより、室温下でエポキシ樹脂(I)、溶剤などに容易に溶解しにくくなり、回路接続用ペースト樹脂組成物の貯蔵安定性を向上させることができる。
【0043】
<消泡剤( IV )>
本発明の回路接続用ペースト樹脂組成物に用いられる消泡剤(IV)は、すでに公知ものを用いることができる。具体的には、シリコーン系消泡剤、フッ素系消泡剤などが挙げられるが、好ましくはシリコーン系消泡剤、さらに好ましくはポリシリコーンが用いられる。
【0044】
このような消泡剤(IV)は、樹脂組成物中(100質量%)において、0.1〜20質量%、好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.5〜15質量%の量で用いることが望ましい。消泡剤(IV)の使用量が、樹脂組成物中(100質量%)において、0.1質量%以上であると、回路接続用ペースト樹脂組成物に泡が発生し難くなり、硬化後においても気泡を含有しないため好ましく、また、20質量%以下であると、ディスペンサー塗布作業性、および回路接続用ペースト樹脂組成物の接着性に優れ、さらに硬化後はガスバリア性の低下を抑制することができる。
【0045】
前記ポリシリコーンは、シリコーン変性されたエラストマーであることが好ましい。ポリシリコーンがエラストマーであることにより、回路接続用ペースト樹脂組成物を硬化させた場合に、外部からの物理的衝撃、冷熱サイクル試験時の熱歪などを緩和することができる。また、前記ポリシリコーンが、シリコーン変性されたエラストマーであることにより、外部からの物理的衝撃、冷熱サイクル試験時の熱歪などをさらに緩和することができる。ここでシリコーン変性とは、官能基を有するシリコーンをエラストマーにグラフト結合させることである。
【0046】
また前記ポリシリコーンとしては、エポキシ樹脂(I)とは別のエポキシ樹脂にシリコーン含有基がグラフト化されてなるシリコーン変性されたエラストマーを用いるのが好ましい。一般的にエポキシ樹脂とシリコーンとは相溶性が低いため、相分離を起こしやすい。したがって、ポリシリコーンとして、エポキシ樹脂にグラフト化しているシリコーン変性されたエラストマーを用いることにより、ポリシリコーンは、回路接続用ペースト樹脂組成物中に均一に分散することができる。
【0047】
そのようなポリシリコーンとしては、軟化点温度が−80℃〜0℃、好ましくは、−80〜−20℃、さらに好ましくは−80〜−40℃であることが望ましい。軟化点が上記範囲であることにより、外部からの物理的衝撃、冷熱サイクル試験時の熱歪等を緩和する効果が向上し、高い接着強度が確保できる。
また、前記ポリシリコーンは、その一次粒子径が0.05〜5μm、好ましくは、0.1〜3.5μm、さらに好ましくは0.1〜2μmのゴム状ポリマー微粒子であることが望ましい。ポリシリコーンの1次粒子径を0.05μm以上とすることにより、回路接続用ペースト樹脂組成物中で凝集が発生せず、さらに、該樹脂組成物の粘度が安定してディスペンサー塗布などの作業性に優れるため好ましい。また、ポリシリコーンの1次粒子径を5μm以下とすることにより、ディスペンサー塗布などの作業性に優れ、かつ該ポリシリコーンを含有する該樹脂組成物が硬化した後は、高い接着強度も確保することができる。本発明においてポリシリコーンは、上記軟化点温度の範囲と1次粒子径の範囲とのいずれの組み合わせであってもよい。
【0048】
前記ポリシリコーンの形成方法としては、シリコーンゴム微粒子を用いる方法、特開昭60ー72957号公報に開示されている方法、エポキシ樹脂に二重結合を導入してその二重結合と反応可能なハイドロジェン含有シリコーンを反応させてグラフト体を生成し、グラフト体の存在下でシリコーンゴムモノマーを重合させる方法、エポキシ樹脂に二重結合を導入してそれに重合可能なビニル基含有シリコーンゴムモノマーを反応させグラフト体を生成する方法、該グラフト体の存在下でシリコーンゴムモノマーを重合させる方法などが挙げられる。好ましくはシリコーンゴム微粒子を用いずにグラフト体およびグラフト体を生成後、シリコーンゴム粒子を生成させる方法であり、また、これらの方法で得たポリシリコーンは分散しても粘度上昇が少ないので良好なディスペンサー塗布作業性が得られる。
【0049】
<カップリング剤(V)>
本発明の回路接続用ペースト樹脂組成物に用いられるカップリング剤(V)は、該樹脂組成物と基材との接着力を向上させ、さらに一方の基板上に形成される電気回路配線と、他方の基板上に形成される電気回路配線とを接着力を向上させるために用いられる。その使用量は、樹脂組成物(100質量%)において、0.1質量%〜5質量%、好ましくは0.1〜4質量%、さらに好ましくは0.1〜3質量%の量であることが望ましい。カップリング剤(V)の使用量が、樹脂組成物(100質量%)において0.1質量%以上であると、回路接続用ペースト樹脂組成物と基材との接着性が高くなり、また、5質量%以下であると、該樹脂組成物の硬化物は充分な硬度が得られ、さらに周辺部材への汚染性を低下することができる。
【0050】
前記カップリング剤(V)としては、すでに公知のカップリング剤を使用することができる。具体的には、トリアルコキシシラン化合物、メチルジアルコキシシラン化合物が挙げられる。より具体的には、トリアルコキシシラン化合物としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノエチル−γ−イミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。また、メチルジアルコキシシラン化合物としては、γ−グリシドキシプロビルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロビルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−アミノエチル−γ−イミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプピルルメチルジメトキシシラン、イソシアナートプロピルメチルジエトキシシラなどが挙げられる。
【0051】
<硬化触媒( VI )>
本発明の回路接続用ペースト樹脂組成物に用いられる硬化触媒(VI)は、エポキシ樹脂(I)とフェノール系硬化剤(II)とが反応する際の触媒として働き、具体的には、非常に短時間でペースト樹脂組成物を硬化させることを目的として添加される。そのような硬化触媒(VI)は、すでに公知のエポキシ硬化触媒の中から選択することができる。特に40℃以上の加熱温度によって熱硬化活性を示す潜在性エポキシ硬化触媒を使用することが好ましい。ただし、この硬化触媒(VI)としては、フェノール系硬化剤(II)は含まれないものとする。
【0052】
前記40℃以上の加熱温度によって熱硬化活性を示す潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミドおよびその誘導体、アジピン酸ジヒドラジッド、イソフタル酸ジヒドラジッド等のジビドラジッド化合物が挙げられる。また、イミダゾール化合物の誘導体およびそれらの変性物、すなわちイミダゾール系硬化触媒を用いてもよい。そのようなイミダゾール系硬化触媒としては、具体的には、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−n−ペンタデシルイミダゾールなどのイミダゾール誘導体、イミダゾール化合物と芳香族酸無水物との錯体、イミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体などのイミダゾール変性誘導体、マイクロカプセル変性体などが挙げられる。
【0053】
前記マイクロカプセル変性体、すなわちマイクロカプセル化されているイミダゾール系硬化触媒としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−n−ペンタデシルイミダゾール系硬化触媒をコア材として、微小なシェルで封じ込められたマイクロカプセル化物が挙げられる。
前記硬化触媒(VI)は、回路接続用ペースト樹脂組成物(100質量%)において、15質量%以下、好ましくは1〜10質量%の量で用いることが望ましい。15質量%以下とすることによりエポキシ樹脂硬化物の特性が発現され、高い接着信頼性を得ることができる。
【0054】
なお、本発明においては、回路接続用ペースト樹脂組成物中に、フェノール系硬化剤(II)を使用せず、硬化触媒(VI)のみを使用すると、その場合は、エポキシ樹脂(I)がイオン重合反応することにより該樹脂組成物は硬化するが、この硬化物は、フェノール系硬化剤(II)を用いて得られた硬化剤よりも性能が充分ではないことがある。
【0055】
<その他の添加材料>
本発明の回路接続用ペースト樹脂組成物中には、その他の添加材料として、例えば無機質充填剤、溶剤などを添加してもよい。
前記無機質充填剤は、粘度調整、硬化物の熱応力低減などを目的として添加され、すでに公知の無機化合物の中から選択することができる。そのような無機質充填剤としは、具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸ジルコニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、二酸化珪素、チタン酸カリウム、カオリン、タルク、アスベスト粉、石英粉、雲母、ガラス繊維などが挙げられる。
【0056】
前記無機質充填剤の粒子径は、回路接続用ペースト樹脂組成物の導通特性に影響を与えない範囲であれば特に制限はないが、2μm以下、好ましくは0.01〜1μmのものが望ましい。また前記無機質充填剤は、回路接続用ペースト樹脂組成物の導通特性に影響を与えない範囲であれば特に制限はないが、該樹脂組成物(100質量%)において40質量%以下、好ましくは5〜30質量%の量で用いることが望ましい。
【0057】
前記無機質充填剤はその一部または全部が、無機質充填剤を100質量%としたとき、エポキシ樹脂(I)および/またはカップリング剤(V)により1〜50質量%がグラフト化変性されていることが好ましい。すなわち、繰り返し溶剤洗浄法で求めた重量増加量で表されるグラフト化率が、1〜50%である無機質充填剤を用いることが好ましい。
【0058】
ここで繰り返し溶剤洗浄法でグラフト化率を求めるには、以下のようにすればよい。まず、一部または全部がグラフト化変性されている無機質充填剤を、その10〜20倍質量の下記溶剤で、5〜10回湿潤ろ過を繰り返す。このろ過により、グラフト化変性していないエポキシ樹脂(I)およびカップリング剤(V)が洗い流される。前記溶剤としては、エポキシ樹脂(I)およびカップリング剤(V)の良溶剤が用いられ、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、トルエン、キシレンなどが挙げられる。次に、前記ろ過後に残った無機質充填剤を乾燥し、その質量を測定する。その質量が、グラフト化変性された無機質充填剤の乾燥質量となる。この測定値から、下記式にしたがって、質量増加率を求める。なお、前記繰り返し溶剤洗浄法の替わりに、前記溶剤を用いたソックスレー連続抽出法によってグラフト化率を求めてもよい。
【0059】
式:グラフト化率(%)=[(グラフト化変性された無機充填剤の乾燥質量−グラフト化変性前の無機充填剤の乾燥質量)/グラフト化変性前の無機充填剤の乾燥質量]×100
前記溶剤としては、具体例には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン溶剤、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのエーテル溶剤、酢酸エチル、ジエチレングリコールジアセテート、アルコキシジエチレングリコールモノアセテートなどが挙げられる。該溶剤の使用量は、特に限定されず、回路接続用ペースト樹脂組成物を硬化させた後に溶媒が残存しない量で用いられる。
【0060】
本発明の回路接続用ペースト樹脂組成物の調製方法は、特に限定されないが、例えば以下のようにして行なう。常温下において、前記のエポキシ樹脂(I)、フェノール系硬化剤(II)、高軟化点微粒子(III)、消泡剤(IV)、およびカップリング剤(V)をダルトンミキサーで予備混練した後、3本ロールで混練を行なう。次に、硬化触媒(VI)を添加し、混合した後、ダルトンミキサーで真空下、混練脱泡を行うことにより本発明の回路接続用ペースト樹脂組成物を調製することができる。
【0061】
このようにして得られる本発明の回路接続用ペースト樹脂組成物は、粘度が25℃において30〜400Pa・s、好ましくは40〜200Pa・s、さらに好ましくは50〜150Pa・s(EH型粘度計、2.5rpm)であることが望ましい。該樹脂組成物の粘度が30Pa・s以上であると、熱圧着による硬化時に気泡の発生原因となる樹脂の流動を抑制することができ、また、400Pa・s以下であると、ディスペンサー塗布作業性に優れるため好ましい。
【0062】
<回路接続用ペースト樹脂組成物の使用方法>
本発明の回路接続用ペースト樹脂組成物の使用方法は、電気回路配線の接続方法に関するものであり、ここでは液晶ディスプレイにおける電気回路配線の接続方法を例にとって説明する。
図1に示すように、まず、工程1として、本発明の回路接続用ペースト樹脂組成物を液晶ディスプレイ基板の所定の位置にディスペンサーによって塗布する。次に、工程2において、前記液晶ディスプレイ基板とIC搭載回路基板であるTCPとのアライメントを行う。さらに、工程3において、加熱プレス固定方式によって前記回路接続用ペースト樹脂組成物を硬化させる。これらの工程1〜3によって、液晶ディスプレイ基板とTCPとの電気導通回路を形成する。
【0063】
また、工程1の回路接続用ペースト樹脂組成物のディスペンサーによる塗布に際しては、ディスペンサー全体が20℃〜50℃の温度下においてプレヒートされていてもよい。回路接続用ペースト樹脂組成物の塗布は、ディスペンサーによる塗布のようにコンピュータ制御で行ってもよいし、手動で必要部位に塗布してもよい。
【0064】
また、工程3の加熱プレス固定方式による回路接続用ペースト樹脂組成物の硬化に際しては、加熱プレスするための熱板は100℃〜300℃、好ましくは120〜250℃の範囲で温度調整されることが望ましい。また、加熱プレス時の圧締圧は、0.1〜5MPaとし、電極同士の接合部位に対し均一な熱圧力を付加する。例えば、電極とプレス面との間にゴムマットを配置してプレスを行ってもよい。
【0065】
以上のように、本発明の回路接続用ペースト樹脂組成物を用いて、液晶ディスプレイ基板の配線とTCPの配線とを接続すれば、圧着した方向にのみ導通性を有するように接続される。したがって隣接配線間の絶縁性が保たれ、高い接続信頼性で配線が接続できる。
上述した電気回路配線の接続方法では、液晶ディスプレイについて説明しているが、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイにおける電気回路配線の接続にも適用できる。また、この回路接続用ペースト樹脂組成物は、回路材料、電荷結合素子、CCD、およびCMOSなどの半導体デバイスの配線の接続にも用いることができる。
【0066】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例、比較例で行った試験および測定は、以下の方法により行った。
<1.貯蔵安定性試験>
回路接続用ペースト樹脂組成物の25℃の粘度を測定してその値を基準とした。回路接続用ペースト樹脂組成物をポリエチレン製容器中に入れ、密閉し、−10℃に保持された恒温槽に保管した。30日経過後、25℃での粘度を測定してその増加率により判定した。
○:10%未満
△:10%以上50%未満
×:50%以上
<2.塗布適性試験>
回路接続用ペースト樹脂組成物を10ccのシリンジに充填した後、脱泡を行なった。ディスペンサー(ショットマスター:武蔵エンジニアリング製)で毎秒4cmのスピードで塗布し、以下の基準にしたがい判定した。
○:染み出し、糸曳きが無く、外観も良好であった。
△:染み出し、糸曳きは無いが、外観が不良であった。
×:染み出し、糸曳きが発生して塗布適性が著しく劣る。
<3.ゲル化時間の測定>
回路接続用ペースト樹脂組成物1gを150℃の熱板に載せ、スパチュラで攪拌した。該樹脂組成物を熱板に載せてから糸曳きが無くなるまでの時間を測定してゲル化時間とした。
<4.接着強度の測定>
回路接続用ペースト樹脂組成物1gをディスペンサー(ショットマスター:武蔵エンジニアリング製)で低アルカリガラス上に描画を行なった。230℃のセラミックツールで30秒間、2MPaの圧力にて、試験用TAB(TapeAutomated Bonding)フィルムと圧着し、貼り合わせを行なった。温度25℃、湿度50%RH(Relative Humidity)の恒温槽にて24時間保管後、ピール強度(接着強度);g/cmを引張り試験装置(インテスコ製)にて測定した。
<5.樹脂抜け確認試験>
回路接続用ペースト樹脂組成物1gをディスペンサー(ショットマスター:武蔵エンジニアリング製)で低アルカリガラス上に描画を行なった。230℃のセラミックツールで30秒間、2MPaの圧力にて、試験用TABフィルムと圧着し、貼り合わせを行なった。冷却後、顕微鏡にて接合部分を観察し、以下の基準にしたがい判定した。
○:樹脂抜け、染み出しが無く、外観も良好であった。
△:バンプ間に一部樹脂抜けが見られ、外観が不良であった。
×:樹脂抜け、染み出しが全体的の発生した。
<6.気泡発生確認試験>
回路接続用ペースト樹脂組成物1gをディスペンサー(ショットマスター:武蔵エンジニアリング製)で低アルカリガラス上に塗布した。230℃のセラミックツールで30秒間、2MPaの圧力にて、試験用TABフィルムと圧着し、貼り合わせを行なった。冷却後、顕微鏡にて接合部分を観察し、以下の基準にしたがい判定した。
○:気泡が無く、外観も良好であった。
△:バンプ間に一部気泡が見られた。
×:全体的に気泡が見られた。
<7.導通性の測定>
回路接続用ペースト樹脂組成物1gをディスペンサー(ショットマスター:武蔵エンジニアリング製)でITO(Indium Tin Oxide)配線を有する低アルカリガラス上に塗布した。230℃のセラミックツールで30秒間、2MPaの圧力にて、試験用TABフィルムと圧着し、貼り合わせを行なった。貼り合わせ直後、ITOと試験用TABフィルム上の電極間の抵抗値(Ω)を測定し、さらに、60℃95%RH下において600時間保管後に電極間の抵抗値を再測定した。
<8.配線間ショート確認試験>
回路接続用ペースト樹脂組成物1gをディスペンサー(ショットマスター:武蔵エンジニアリング製)でITO配線を有する低アルカリガラス上に描画を行なった。230℃のセラミックツールで30秒間、2MPaの圧力にて、試験用TABフィルムと圧着し、貼り合わせを行なった。冷却後、隣合うITO電極間の接続を測定し、以下の基準にしたがい判定した。
○:絶縁性が確保されている。
×:導通している。
<9.リペア性確認試験>
回路接続用ペースト樹脂組成物1gをディスペンサー(ショットマスター:武蔵エンジニアリング製)で低アルカリガラス上に描画を行なった。試験用TABフィルムと230℃のセラミックツールにて30秒間、2MPaの圧力にて圧着し貼り合わせを行なった。冷却後、溶剤で洗浄して試験用TABフィルムを剥離した後、低アルカリガラスの表面を顕微鏡で観察し、以下の基準にしたがい判定した。
○:樹脂の残存が無く、外観も良好であった。
△:樹脂が部分的に残存しており外観も不良であった。
×:全体的に樹脂が残存していた。
【0067】
【合成例1】
高軟化点微粒子の合成
攪拌機、窒素導入管、温度計、還流冷却管を備えた1000mlの四つ口フラスコにイオン交換水400gを入れ、攪拌しながら、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム1.0gを仕込み、65℃まで昇温した。65℃に保持し、攪拌を継続しながら、過硫酸カリウム0.4gを添加した後、次いで、t-ドデシルメルカプタン1.2g、n−ブチルアクリレート156g、ジビニルベンゼン4.0g、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム3.0gおよびイオン交換水200gからなる溶液をホモジナイザーで乳化した混合溶液を4時間で連続滴下した。滴下後2時間反応を継続させた後、メチルメタクリレート232gを一度に添加した後、1時間反応を継続させ、次いでアクリル酸8gを1時間で連続添加し、65℃に保持し2時間反応を継続させた後、冷却した。水酸化カリウムにてpH=7に中和して固形分40.6質量%のエマルション溶液を得た。
【0068】
このエマルション溶液1,000gを噴霧乾燥器によって噴霧乾燥し、水分含有量0.1%以下である高軟化点微粒子を約400g得た。得られた高軟化点微粒子の軟化点は80℃であった。
なお、該高軟化点微粒子を、サブミクロン粒子アナライザー(N4PLUS型;ベックマンコールター社製)にて粒子径を測定した結果、180nmであった。
【0069】
【合成例2】
低軟化点微粒子の合成
攪拌機、窒素導入管、温度計、還流冷却管を備えた1000mlの四つ口フラスコにイオン交換水400gを入れ、攪拌しながらアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム1.0gを仕込み、65℃まで昇温した。65℃に保持し、攪拌を継続しながら過硫酸カリウム0.4gを添加した後、次いで、t-ドデシルメルカプタン1.2g、n−ブチルアクリレート156g、ジビニルベンゼン4.0g、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム3.0gおよびイオン交換水200gからなる溶液をホモジナイザーで乳化した混合溶液を4時間で連続滴下した。滴下後2時間反応を継続させた後、メチルメタクリレート142g、n−ブチルアクリレート90gを一括で添加した後1時間反応を継続させた。次いでアクリル酸8gを1時間で連続添加し、65℃一定温度で2時間反応を継続させた後、冷却した。水酸化カリウムにてpH=7に中和して固形分40.6質量%のエマルション溶液を得た。
【0070】
このエマルション溶液1,000gを噴霧乾燥し、水分含有量が0.1%以下である低軟化点微粒子約400g得た。得られた低軟化点微粒子の軟化点は40℃であった。
なお、低軟化点微粒子を合成例1で用いたサブミクロン粒子アナライザーにて粒子径を測定した結果、180nmであった。
【0071】
【合成例3】
シリコーンエラストマー(A)の合成
攪拌機、気体導入管、温度計、冷却管を備えた2000mlの四つ口フラスコを用意し、分子内に2個のエポキシ基を持つビスフェノールF型エポキシ樹脂〔エピクロン830S(大日本インキ化学工業(株)製)〕600g、メタアクリル酸12g、ジメチルエタノールアミン1g、トルエン50gを加え、空気を導入しながら110℃で5時間反応させ二重結合を導入した。次にヒドロキシアクリレート5g、ブチルアクリレート10g、アゾビスイソブチロニトリル1gを加え70℃で3時間反応させ、さらに90℃で1時間反応させた。次いで110℃、減圧下で脱トルエンを行った。次に、分子中にメトキシ基を有するシリコーン中間体(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)70g、ジブチルスズジラウレート0.3gを加え、150℃で1時間反応を行い、生成メタノールを除去するため、さらに1時間反応を継続した。得られたグラフト体に、常温硬化型2液タイプのシリコーンゴム〔KE−1204(信越シリコーン(株)製)〕を1/1で混合したものを300g加え、2時間反応させ、架橋型シリコーンゴム微粒子が均一に分散したシリコーンエラストマー(A)を得た。
【0072】
このシリコーンエラストマー(A)を光硬化触媒の存在化に低温で速硬化させ、その硬化物の破断面モルフォロジーを電子顕微鏡で観察して、分散ゴム粒子径を測定したところ、ゴムの平均粒子径値は、1.0μmであった。
【0073】
【実施例1】
エポキシ樹脂(I)としてビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノール系硬化剤(II)としてフェノール・p−キシリレングリコールジメチルエーテル重縮合物〔ミレックスLLL(三井化学(株)製)〕、高軟化点微粒子(III)として合成例1において合成した高軟化点微粒子、消泡剤(IV)として合成例3で合成したシリコーンエラストマー(A)、およびカップリング剤(V)としてγ−グリシジルプロピルトリメトキシシラン〔KBM−403、(信越シリコーン(株)製)〕を、常温下、ダルトンミキサーで予備混練した後、次に3本ロールで混練を行なった。次いで、硬化触媒(VI)としてイミダゾール変性マイクロカプセル型化合物〔ノバキュアHX3748(旭化成エポキシ(株)製)〕を混合後、ダルトンミキサーで真空下、混練脱泡を行なった。各材料の配合量は表1に示す。
【0074】
得られた回路接続用ペースト樹脂組成物を以下の試験方法により評価を行った。その結果を表2に示す。
【0075】
【実施例2】
実施例1における硬化触媒を用いず、配合量を表1に示したとおりとした以外は、実施例1と同様の方法により回路接続用ペースト樹脂組成物を調製し、試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0076】
【参考例1】
実施例1における硬化触媒を用いず、消泡剤をシリコーンエラストマーAから直鎖状シリコーンB〔DC3037(信越シリコーン(株)製)〕に変更し、配合量を表1に示したとおりとした以外は、実施例1と同様の方法により回路接続用ペースト樹脂組成物を調製し、試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0077】
【参考例2】
実施例1における消泡剤を用いず、配合量を表1に示したとおりとした以外は、実施例1と同様の方法により回路接続用ペースト樹脂組成物を調製し、試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0078】
【実施例5】
実施例1におけるカップリング剤(V)を用いず、配合量を表1に示したとおりとした以外は、実施例1と同様の方法により回路接続用ペースト樹脂組成物を調製し、試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0079】
【参考例3】
実施例1におけるカップリング剤(V)を用いず、配合量を表1に示したとおりとした以外は、実施例1と同様の方法により回路接続用ペースト樹脂組成物を調製し、試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0080】
【比較例1】
実施例1における高軟化点微粒子を用いず、配合量を表1に示したとおりとした以外は、実施例1と同様の方法により回路接続用ペースト樹脂組成物を調製し、試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0081】
【比較例2】
実施例1における高軟化点微粒子を、合成例2において合成した低軟化点微粒子に変更し、配合量を表1に示したとおりとした以外は、実施例1と同様の方法により回路接続用ペースト樹脂組成物を調製し、試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0083】
表2より実施例1〜6の回路接続用ペースト樹脂組成物は、いずれの試験においても良好な評価が得られることが確認された。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【発明の効果】
本発明によれば、貯蔵安定性、ディスペンサー塗布作業性に優れた回路接続用ペースト樹脂組成物を提供できる。
また、本発明は、高生産性を維持するための温度200℃、時間10〜30秒といった厳しい熱圧着条件下における配線の接続においても、樹脂抜け、気泡、染み出しの発生がない回路接続用ペースト樹脂組成物であって、その硬化物は、高温高湿時においても接着信頼性および接続信頼性が高く、かつリペア性も高い回路接続用ペースト樹脂組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明における電気回路配線の接続方法の概略工程図である。
Claims (11)
- (I)エポキシ樹脂30〜79.9質量%、(II)フェノール系硬化剤10〜50質量%、(III)60〜150℃の軟化点温度を有する高軟化点微粒子5〜25質量%、(IV)シリコーン変性エラストマー、またはエポキシ樹脂にシリコーン含有基がグラフト化されたエラストマーからなる消泡剤0.1〜20質量%を含み、導電性微粒子を含まないことを特徴とする回路接続用ペースト樹脂組成物。
- (I)エポキシ樹脂30〜79.8質量%、(II)フェノール系硬化剤10〜50質量%、(III)高軟化点微粒子5〜25質量%、(IV)シリコーン変性エラストマー、またはエポキシ樹脂にシリコーン含有基がグラフト化されたエラストマーからなる消泡剤0.1〜20質量%、(V)カップリング剤0.1〜5質量%を含み、導電性微粒子を含まないことを特徴とする回路接続用ペースト樹脂組成物。
- 請求項1または2のいずれかに記載の回路接続用ペースト樹脂組成物に、さらに硬化触媒(VI)を含むことを特徴とする回路接続用ペースト樹脂組成物。
- 前記エポキシ樹脂(I)が、1分子中にエポキシ基を少なくとも平均1〜6個有し、かつGPCによるポリスチレン換算平均分子量が100〜7000であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の回路接続用ペースト樹脂組成物。
- 前記フェノール系硬化剤(II)が、フェノールノボラック型硬化剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の回路接続用ペースト樹脂組成物。
- 前記高軟化点微粒子(III)が、60〜150℃の軟化点温度を有し、1次粒子径が0.01〜2μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の回路接続用ペースト樹脂組成物。
- 前記高軟化点微粒子(III)が、メチル(メタ)アクリレートと、該メチル(メタ)ア
クリレート以外の共重合可能なモノマーとを共重合して得られる高軟化点微粒子であって、前記メチル(メタ)アクリレートを30〜70質量%含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の回路接続用ペースト樹脂組成物。 - シリコーン変性エラストマー、またはエポキシ樹脂にシリコーン含有基がグラフト化されたエラストマーの軟化点温度が−80〜0℃であり、さらに、回路接続用ペースト樹脂組成物中に粒子として存在しており、その1次粒子径が0.05〜5μmであることを特徴とする請求項1に記載の回路接続用ペースト樹脂組成物。
- 25℃における粘度が30〜400Pa・sであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の回路接続用ペースト樹脂組成物。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の回路接続用ペースト樹脂組成物によって、一方の基板上に形成される電気回路配線と、他方の基板上に形成される電気回路配線とを接続することを特徴とする回路接続用ペースト樹脂組成物の使用方法。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の回路接続用ペースト樹脂組成物が、回路材料、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ、電荷結合素子、半導体デバイスのうちのいずれか1つに用いることを特徴とする回路接続用ペースト樹脂組成物の使用方法。
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