JP4419835B2 - 赤外線ガス分析計およびその出力補償方法 - Google Patents

赤外線ガス分析計およびその出力補償方法 Download PDF

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本発明は、測定対象ガスにおける赤外光の吸収特性を利用して、試料ガス中の測定対象成分濃度を検出する赤外線ガス分析計およびその出力補償方法に関するものである。
さらに詳しくは、赤外線ガス分析計に加わる外部振動の影響を除去して、高精度の測定動作を行うことのできる赤外線ガス分析計およびその出力補償方法に関するものである。
図8は、従来の赤外線ガス分析計の一例を示す構成図である。図に示されるように、赤外線光源1から発せられた赤外光は、分配セル2により2つに分割され、それぞれ基準セル3および試料セル4に入射する。基準セル3には不活性ガスなど、測定対象成分を含まないガスが封入されている。また、試料セル4には試料ガスが流通する。このため、分配セル2で2つに分けられた赤外光は、試料セル4側でのみ測定対象成分による吸収を受け、検出器5に到達する。
検出器5は基準セル3からの光を受ける基準側室501と試料セル4からの光を受ける試料側室502の2室からなり、その2室を連絡するガス流通路には、ガスの行き来を検出するためのサーマルフローセンサ51が取り付けられている。また、検出器5内には、測定対象と同じ成分を含むガス(検出ガス)が封入されており、基準セル3および試料セル4からの赤外光が入射すると、検出ガス中の測定対象成分が赤外光を吸収することで、基準側室501内および試料側室502内で、それぞれ検出ガスが熱膨張する。
基準セル3内の基準ガスは測定対象成分を含まないので、基準セル3を通過する赤外光に対しては測定対象成分による吸収はなく、試料セル4内の試料ガスに測定対象成分が含まれると、赤外光の一部はそこで吸収されるために、検出器5では試料側室502に入射する赤外光が減少し、基準側室501内の検出ガスの熱膨張が試料側室502内の検出ガスの熱膨張より大きくなる。赤外光は回転セクタ6で断続されて、遮断および照射を繰り返しており、遮断されたときは基準側室501および試料側室502ともに赤外光が入射しないので、検出ガスは膨張しない。
このため、基準側室501および試料側室502においては、試料ガス中の測定対象成分濃度に応じて、両室の間に周期的に差圧が生じ、両室間に設けられたガス流通路を検出ガスが行き来することとなる。その検出ガスの挙動はサーマルフローセンサ51により検出され、信号処理回路7により交流電圧増幅されて、測定対象成分濃度に対応した信号として出力される。8は回転セクタ6を駆動する同期モータ、9は基準セル3および試料セル4に入射する赤外光のバランスを調整するトリマである。
このように、試料ガス中の測定対象成分濃度が変化すると、検出器5(試料側室502)に入射する赤外光の光量が変化するので、信号処理回路7を介して測定対象成分濃度に対応した出力信号を得ることができる。
ここで、赤外線ガス分析計に振動が加わると、この振動がノイズとして出力信号に現れ、測定精度が低下してしまう。
図9は、振動の影響を説明するための概念図である。図において、前記図8と同様のものは同一符号を付して示す。矢印Usigを赤外光の吸収によりガス流通路内に発生する検出ガスの移動方向とすると、サーマルフローセンサ51を構成する第1のヒータ線511および第2のヒータ線512は、所定の間隔をおいて、この移動(流通)方向Usigに沿って配列され、検出ガスの移動に応じた温度(抵抗値)変化を発生する。
すなわち、ガス流通路内の検出ガスが移動すると、上流側のヒータ線は検出ガスにより冷却され、下流側のヒータ線は上流側のヒータ線の熱で加熱されるので、2つのヒータ線の間には温度差が生じる。
この2つのヒータ線511、512における温度変化(抵抗値変化)は、図10の如きブリッジ回路を使用して検出される。
さて、赤外線ガス分析計に振動が加わった場合、ヒータ線511、512の配列方向と同じ方向の振動成分を矢印Uvibとすると、慣性により検出ガスが移動(振動)し、この矢印方向の検出ガスの移動(振動)がサーマルフローセンサ51により検出されて、ノイズとして出力信号Voutに重畳されてしまう。
図11は、赤外線ガス分析計に加わる振動の影響を示す波形図である。図において、(a)は時刻toにおいて赤外線ガス分析計に外部振動を加えた場合の、測定状態におけるサーマルフローセンサ51の出力信号波形であり、(b)は赤外線光源1を消灯した状態での、サーマルフローセンサ51の出力信号波形である。
図から明らかなように、振動による出力信号波形の乱れは、ほぼ同じ形状を有しており、この乱れが同一の原因(振動)により発生し、本来の赤外線の吸収に起因する信号波形とは独立のものであることが分かる。
特開2002−131230号公報
上記のように、赤外線ガス分析計に加わる振動がヒータ線511、512の配列方向と同じ方向の振動成分(Uvib)を有するものであると、この振動成分(Uvib)が赤外光の吸収によりガス流通路内に発生する検出ガスの移動(Usig)とともに、サーマルフローセンサ51により検出されてしまい、このノイズ成分を信号成分と分離することができない。
また、このような振動の影響を効果的に除去する分析計の構成や出力補償方法は、提案されていない。
本発明は、上記のような従来装置の欠点をなくし、赤外線ガス分析計に加わる外部振動の影響を除去して、高精度の測定動作を行うことのできる赤外線ガス分析計およびその出力補償方法を実現することを目的としたものである。
上記のような目的を達成するために、本発明の請求項1では、試料ガスが流通する試料セルを有し、この試料セルを通過した赤外光における吸収量の変化を利用して、試料ガス中の測定対象成分濃度を検出する赤外線ガス分析計において、検出ガスを直角方向に流通させる流通路部分を有するガス流通路と、このガス流通路内の流通方向の異なる位置に向きを揃えて配置された第1および第2のサーマルフローセンサとを具備したことを特徴とする。
請求項2では、請求項1の赤外線ガス分析計において、前記第1および第2のサーマルフローセンサの出力を、振動によるノイズ成分を相殺する極性に加算する補償部を具備したことを特徴とする。
請求項3では、請求項1または2の赤外線ガス分析計において、前記第1および第2のサーマルフローセンサにより、それぞれブリッジ回路を構成したことを特徴とする。
請求項4では、請求項2の赤外線ガス分析計において、前記補償部は、ブリッジ回路により構成され、前記第1および第2のサーマルフローセンサをこのブリッジ回路における任意の辺に挿入したことを特徴とする。
請求項5では、請求項1乃至4のいずれかの赤外線ガス分析計において、前記第1および第2のサーマルフローセンサは、それぞれ検出ガスの検出すべき流通方向に対して平行な方向に配列された1組以上のヒータ線よりなることを特徴とする。
請求項6では、試料ガスが流通する試料セルを有し、この試料セルを通過した赤外光における吸収量の変化を利用して、試料ガス中の測定対象成分濃度を検出する赤外線ガス分析計の出力補償方法において、前記試料セルを通過した赤外光と試料セルを通過しない赤外光との差を検出する検出器のガス流通路に、検出ガスを直角方向に流通させる流通路部分を設けるとともに、一方のガス流通路内に配置された第1のサーマルフローセンサの出力を、他方のガス流通路内に第1のサーマルフローセンサと同じ向きに配置された第2のサーマルフローセンサの出力により補償することを特徴とする。
請求項7では、請求項6の赤外線ガス分析計の出力補償方法において、前記出力の補償は、前記第1のサーマルフローセンサの出力と前記第2のサーマルフローセンサの出力とを、振動によるノイズ成分を相殺する極性に加算することを特徴とする。
請求項8では、請求項6または7の赤外線ガス分析計の出力補償方法において、前記第1および第2のサーマルフローセンサの出力を、それぞれブリッジ回路により検出することを特徴とする。
請求項9では、請求項6または7の赤外線ガス分析計の出力補償方法において、前記第1および第2のサーマルフローセンサを、ブリッジ回路における任意の辺に挿入したことを特徴とする。
このように、試料セルを通過した赤外光と試料セルを通過しない赤外光との差を検出する検出器のガス流通路に、検出ガスを直角方向に流通させる流通路部分を設けるとともに、一方のガス流通路内に測定対象成分濃度に応じた検出ガスの流れ(信号成分)を検出する第1のサーマルフローセンサを配置し、他方のガス流通路内に第1のサーマルフローセンサと同じ向きに第2のサーマルフローセンサを配置するように構成すると、第2のサーマルフローセンサでは、赤外線ガス分析計に加えられる振動の影響(ノイズ成分)は検出するが、測定対象成分濃度に応じた検出ガスの流れ(信号成分)に対しては感度を持たなくなり、第1のサーマルフローセンサの出力を第2のサーマルフローセンサの出力により補償することにより、赤外線ガス分析計に加わる外部振動の影響を除去して、高精度の測定動作を行うことのできる赤外線ガス分析計およびその出力補償方法を実現することができる。
以下、図面を用いて、本発明の赤外線ガス分析計およびその出力補償方法を説明する。
図1は、本発明の赤外線ガス分析計およびその出力補償方法の一実施例を示す構成図である。図において、前記図8〜図11と同様のものは同一符号を付して示す。503、504は検出ガスを直角方向に流通させるガス流通路である。一方のガス流通路503には、測定対象成分濃度に応じた検出ガスの流れ(信号成分:矢印Usig)を検出するようにサーマルフローセンサ51が配置され、他方のガス流通路504にはヒータ線531、532よりなるサーマルフローセンサ53が配置されている。なお、サーマルフローセンサ53におけるヒータ線531、532は、サーマルフローセンサ51におけるヒータ線511、512と向きを揃えて配列されている。
ここで、検出対象成分の濃度に応じた検出ガスの流れ(信号成分)は、直角方向に折り曲げられたガス流通路503、504の中を、矢印Usigのように流れ、振動による検出ガスの流れ(ノイズ成分)は、ガス流通路503、504内に矢印Uvibのように作用する。
図に示されるように、直角に折り曲げられたガス流通路503、504の中に、向きを揃えて2つのサーマルフローセンサ51、53を配置すると、サーマルフローセンサ51では、信号成分Usigとともにノイズ成分Uvibを検出するが、サーマルフローセンサ53では、ノイズ成分Uvibは検出するが、信号成分Usigに対しては感度を持たなくなる。
したがって、サーマルフローセンサ51の出力とサーマルフローセンサ53の出力とを、振動によるノイズ成分を相殺する極性に加算すれば、赤外線ガス分析計に加わる外部振動の影響を除去して、高精度の測定動作を行うことが可能となる。
図2は、サーマルフローセンサ51、53の出力を検出する検出部の具体的な構成例を示す回路図である。図において、11、12はサーマルフローセンサ51、53におけるヒータ線511、512、531、532の抵抗値変化(温度変化)を検出するブリッジ回路、13はブリッジ回路11の出力Vo1とブリッジ回路12の出力とVo2とを、振動によるノイズ成分を相殺する極性に加算する補償部である。
なお、ここでは、ブリッジ回路11の出力Vo1とブリッジ回路12の出力Vo2との極性を考慮して、これらの差分を求めている。
ブリッジ回路11においては、前記図10で説明したように、測定対象ガス濃度に応じた検出ガスの移動(矢印Usig)と振動による検出ガスの移動(矢印Uvib)とが検出され、その出力信号Vo1は振動ノイズ成分を含んだものとなっている。
これに対して、ブリッジ回路12においては、振動による検出ガスの移動(矢印Uvib)のみが検出され、振動ノイズ成分に応じた出力信号Vo2が得られている。
したがって、補償部13によりこれらの出力信号Vo1、Vo2の差分(Vo1−Vo2)を求めると、出力信号Vo1、Vo2に含まれる振動ノイズ成分を相殺して、ノイズの少ない検出信号を得ることができる。
図3は、本発明の赤外線ガス分析計およびその出力補償方法の他の実施例を示す構成図である。図において、前記図1と同様のものは同一符号を付して示す。図に示す例は、補償部13においてブリッジ回路を構成し、ブリッジ回路から直接、振動ノイズ成分を除去した出力信号Vo3を得るようにしたものである。
図4は、補償部13の具体的な構成例を示す回路図である。図に示されるように、サーマルフローセンサ51、53のヒータ線511、512、531、532は、ブリッジ回路の異なる辺に挿入されており、ブリッジ回路の出力からは、2つのサーマルフローセンサ51、53の出力の差分に相当する出力信号Vo3が得られる。
すなわち、サーマルフローセンサ53のヒータ線531、532は、サーマルフローセンサ51のヒータ線511、512に重畳されるノイズ成分を打ち消す方向に、ブリッジ回路の異なる辺に挿入されている。
このため、前記図2における2つのブリッジ回路11、12を省略して、構成を簡素化することができる。
図5は、補償部13におけるブリッジ回路の変形例を示す回路図である。図に示す例は、サーマルフローセンサ51、53におけるヒータ線511、512、531、532を、ブリッジ回路の共通の辺に挿入したものである。
すなわち、サーマルフローセンサ53のヒータ線531、532を、サーマルフローセンサ51のヒータ線511、512に重畳されるノイズ成分を打ち消す方向に、ブリッジ回路の共通の辺に挿入することにより、図4と同じノイズ除去効果を実現している。
図6は、本発明の赤外線ガス分析計およびその出力補償方法の他の実施例を示す構成図である。図において、前記図1〜図5と同様のものは同一符号を付して示す。図に示す例は、サーマルフローセンサ51、53をそれぞれ4本のヒータ線511、512、513、514、531、532、533、534により構成したものである。
サーマルフローセンサ51、53は、ガス流の上流側および下流側に配置されるヒータ線部分を、それぞれ2本のヒータ線により構成し、これらのヒータ線を検出ガスの検出すべき流通方向に対して平行な方向に配列している。
図7は、補償部(ブリッジ回路)13の具体的な構成例を示す回路図である。図に示されるように、サーマルフローセンサ51、53のヒータ線511、512、513、514、531、532、533、534は、それぞれ自身のセンサ出力を増加する方向でブリッジ回路の各辺に挿入されている。
このため、前記図4と同じノイズ除去効果を実現するとともに、前記図4に比べて2倍の大きさの出力信号Vo5を得ることができる。
なお、サーマルフローセンサ51、53を構成するヒータ線の数は、4本に限られるものではない。
なお、上記の説明においては、サーマルフローセンサ51、53の出力をブリッジ回路を使用して検出する場合を例示したが、ブリッジ回路において、サーマルフローセンサ51、53の各ヒータ線を挿入する位置は、図示の形態に限られるものではない。
図1は本発明の赤外線ガス分析計およびその出力補償方法の一実施例を示す構成図。 図2はサーマルフローセンサ51、53の出力を検出する検出部の具体的な構成例を示す回路図。 図3は本発明の赤外線ガス分析計およびその出力補償方法の他の実施例を示す構成図。 図4は補償部13の具体的な構成例を示す回路図。 図5は補償部13におけるブリッジ回路の変形例を示す回路図。 図6は本発明の赤外線ガス分析計およびその出力補償方法の他の実施例を示す構成図。 図7は補償部(ブリッジ回路)13の具体的な構成例を示す回路図。 図8は従来の赤外線ガス分析計の一例を示す構成図。 図9は振動の影響を説明するための概念図。 図10はヒータ線511、512における温度変化(抵抗値変化)を検出するブリッジ回路。 図11は赤外線ガス分析計に加わる振動の影響を示す波形図。
符号の説明
1 赤外線光源
2 分配セル
3 基準セル
4 試料セル
5 検出器
501 基準側室
502 試料側室
503、504 ガス流通路
51、53 サーマルフローセンサ
511、512、513、514、531、532、533、534 ヒータ線
6 回転セクタ
7 信号処理回路
8 同期モータ
9 トリマ
11、12 ブリッジ回路
13 補償部

Claims (9)

  1. 試料ガスが流通する試料セルを有し、この試料セルを通過した赤外光における吸収量の変化を利用して、試料ガス中の測定対象成分濃度を検出する赤外線ガス分析計において、検出ガスを直角方向に流通させる流通路部分を有するガス流通路と、このガス流通路内の流通方向の異なる位置に向きを揃えて配置された第1および第2のサーマルフローセンサとを具備してなる赤外線ガス分析計。
  2. 前記第1および第2のサーマルフローセンサの出力を、振動によるノイズ成分を相殺する極性に加算する補償部を具備したことを特徴とする請求項1に記載の赤外線ガス分析計。
  3. 前記第1および第2のサーマルフローセンサにより、それぞれブリッジ回路を構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の赤外線ガス分析計。
  4. 前記補償部は、ブリッジ回路により構成され、前記第1および第2のサーマルフローセンサをこのブリッジ回路における任意の辺に挿入したことを特徴とする請求項2に記載の赤外線ガス分析計。
  5. 前記第1および第2のサーマルフローセンサは、それぞれ検出ガスの検出すべき流通方向に対して平行な方向に配列された1組以上のヒータ線よりなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の赤外線ガス分析計。
  6. 試料ガスが流通する試料セルを有し、この試料セルを通過した赤外光における吸収量の変化を利用して、試料ガス中の測定対象成分濃度を検出する赤外線ガス分析計の出力補償方法において、前記試料セルを通過した赤外光と試料セルを通過しない赤外光との差を検出する検出器のガス流通路に、検出ガスを直角方向に流通させる流通路部分を設けるとともに、一方のガス流通路内に配置された第1のサーマルフローセンサの出力を、他方のガス流通路内に第1のサーマルフローセンサと同じ向きに配置された第2のサーマルフローセンサの出力により補償することを特徴とする赤外線ガス分析計の出力補償方法。
  7. 前記出力の補償は、前記第1のサーマルフローセンサの出力と前記第2のサーマルフローセンサの出力とを、振動によるノイズ成分を相殺する極性に加算することを特徴とする請求項6に記載の赤外線ガス分析計の出力補償方法。
  8. 前記第1および第2のサーマルフローセンサの出力を、それぞれブリッジ回路により検出することを特徴とする請求項6または7に記載の赤外線ガス分析計の出力補償方法。
  9. 前記第1および第2のサーマルフローセンサを、ブリッジ回路における任意の辺に挿入したことを特徴とする請求項6または7に記載の赤外線ガス分析計の出力補償方法。
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