図1は、本発明の一実施の形態に係る記録装置の1つであるインクジェット式複合機の外観構成の全体を示す斜視図、図2は、その内部構造を示す斜視図、図3は、その概略側面図である。このインクジェット式複合機100は、例えばJIS規格のL判やA6判からA4判までのサイズの単票紙やハガキに記録することができるプリンタ機能と、JIS規格のA4判までのサイズの原稿及びUS規格のレターサイズまでの原稿を読み取ることができるスキャナ機能と、JIS規格のL判、2L判、B5判、A4判、六切り、ハガキのサイズの用紙に複写することができるコピー機能を備えている。
このインクジェット式複合機100は、図1に示すように、全体が略直方体状のハウジング101で覆われており、下段にプリンタ110が配設され、上段にスキャナ120が配設された構成となっている。そして、背面側に給紙部130が配設され、前面側に本発明の特徴的な部分を含む給排紙部140が配設されている。ユーザは、記録前の用紙のセッティング方向として背面側の給紙部130及び前面側の給排紙部140の一方または両方を選択することができるので、インクジェット式複合機100の設置位置の自由度を高めることができる。さらに、記録後の用紙は常に前面側の給排紙部140から排紙されるので、ユーザは用紙を容易に取り出すことができる。
ハウジング101の上面には、図1に示す矩形平板状のスキャナカバー102が配設されている。このスキャナカバー102は、前部に取っ手103が形成されており、後部の回転軸を中心に図示矢印a方向に回動可能に取り付けられている。ユーザは、スキャナ120を使用するときは取っ手103に指を差し込んでスキャナカバー102を開閉することができるので、原稿の出し入れを容易に行うことができる。
ハウジング101の前面両側には、図2に示す複数のインクカートリッジ10が抜き差しされるカートリッジ収納部104がそれぞれ形成されている。各インクカートリッジ10は、記録用の各色のインクを貯留している。各カートリッジ収納部104は、図1に示す透明もしくは半透明のカートリッジカバー105によって覆われている。カートリッジカバー105は、その下部の回動軸を中心に図示矢印b方向に回動可能に取り付けられている。ユーザは、従来のように重量のあるスキャナ120全体を持ち上げてプリンタ110の内部を開放しなくても、カートリッジカバー105を軽く押して係止部を外しカートリッジ収納部104を開放するのみにより、インクカートリッジ10の交換作業等を行うことができるので、作業効率を向上させることができる。
ハウジング101の上面のスキャナカバー102の手前には、図1に示すように、プリンタ110、スキャナ120、コピーの各動作を指示する操作部106が配設されている。操作部106は、パワーをオン・オフするパワー系、用紙の頭出し等を操作したりインクのフラッシング等を操作する操作系、画像処理等を行う処理系等の図示しないボタン等と、状態を表示する液晶パネル107等を備えている。ユーザは、液晶パネル107を見て確認しながらボタン等を操作することができる。
ハウジング101内には、図2及び図3に示すように、本発明の特徴的な部分を含む給排紙部140と、給紙部130、記録部150等が配設されている。給紙部130には、図1に示すように、上方に向かって矩形状に開口したリア給紙口131が形成され、このリア給紙口131の両端縁と後縁に沿ってフレーム132が配設されている。そして、このフレーム132には、図1〜図3に示すように、給紙する用紙を1枚もしくは複数枚サポートするペーパーサポート133と、ペーパーサポート133にサポートされている用紙を1枚ずつ自動的に給送する背面給紙機構(以下、リアASFという)134等が配設されている。
図4は、ペーパーサポート133とリアASF134の詳細を示す側面図であり、図1〜図4を参照して説明する。ペーパーサポート133は、用紙の裏面をサポートする第1サポート21及び第2サポート22と、用紙の両サイドエッジをガイドする固定エッジガイド23と可動エッジガイド24等を備えている。リアASF134は、ペーパーサポート133にサポートされている用紙を給送するために持ち上げるホッパ31、このホッパ31により持ち上げられた用紙を取り出す給紙ローラ32、この給紙ローラ32により重送された用紙を1枚のみに分離するリタードローラ33、このリタードローラ33により分離された残りの用紙をホッパ31へ戻すリア紙戻しユニット34等を備えている。
第1サポート21は、平板状に形成されてフレーム132の後壁内側に格納・引出自在に配設され、第2サポート22は、平板状に形成されて第1サポート21に格納・引出自在に配設されている。第1サポート21及び第2サポート22は、給紙方向に伸縮自在に形成されているので、不使用のときはコンパクトに格納しておくことができ、また使用のときは種々のサイズの用紙を確実にサポートすることができる。
また、固定エッジガイド23は、フレーム132の装置前面側から見て右側壁に沿う形状でホッパ31と一体形成され、可動エッジガイド24は、フレーム132の装置前面側から見て左側壁に沿う形状に形成され、フレーム132の左側壁と右側壁の間をフレーム132の後壁と略平行に移動可能なようにホッパ31に取り付けられている。固定エッジガイド23と可動エッジガイド24は、用紙のサイズが異なっても確実に用紙の両側縁をガイドすることができるので、給送を高精度に行うことができる。
ホッパ31は、用紙が載置可能な平板状に形成されてフレーム132の後壁と略平行に配設されており、下端が給紙ローラ32の近傍に位置し、上端がフレーム132の後壁頂部に近接して位置するように配設されている。そして、ホッパ31は、下端側の裏面にフレーム132の後壁に一端が取り付けられた図示しない圧縮バネの他端が取り付けられており、この圧縮バネの伸縮により上端側を中心に下端側が旋回するように配設されている。
給紙ローラ32は、断面の一部が切り欠かれたD字状に形成されてホッパ31の下端近傍に配設されており、間欠的に回転してホッパ31により持ち上げられた用紙を摩擦給送するようになっている。リタードローラ33は、給紙ローラ32と当接可能に配設されており、給紙ローラ32により用紙が重送されたときに最上層の用紙のみを下層の用紙から摩擦分離するようになっている。リア紙戻しユニット34は、爪状に形成されて給紙ローラ32の近傍に配設されており、リタードローラ33により分離された下層の用紙を爪に掛けてホッパ31へ戻すようになっている。
給排紙部140には、図2及び図3に示すように、前方に向かって矩形状に開口したフロント給排紙口141が形成され、このフロント給排紙口141の下側に給紙トレイ142が配設され、給紙トレイ142の上側に排紙トレイ143が配設されている。そして、フロント給排紙口141の奧には、図3に示すように、給紙トレイ142に収納されている用紙を1枚ずつ自動的に給送する本発明の特徴的な部分である前面給紙機構(以下、フロントASFという)144と、排紙トレイ143に用紙を自動的に排送する前面排紙機構(以下、フロントEJという)145が配設されている。
給紙トレイ142は、図2及び図3に示すように、平板状に形成されており、上面に記録前の給紙される用紙が積層収納されるようなっている。排紙トレイ143は、図2及び図3に示すように、第1トレイ143a、第2トレイ143b及び第3トレイ143cを備えている。第1トレイ143aは、平板状に形成されて後部が給排紙部140の奧の本体フレーム108に回動自在に配設され、第2トレイ143bは、平板状に形成されて第1トレイ143aに格納・引出自在に配設され、第3トレイ143cは、平板状に形成されて第2トレイ143bに格納・引出自在に配設されている。
排紙トレイ143は、第2トレイ143b及び第3トレイ143cが引き出された状態で、上面に記録後の排紙される用紙が積層載置されるようなっている。第2トレイ143b及び第3トレイ143cは、排紙方向に伸縮自在に形成されているので、不使用のときはコンパクトに格納しておくことができ、また使用のときは種々のサイズの排紙される用紙を確実に積層載置することができる。なお、この給排紙部140は、給排紙時に折り曲げることが不可能な厚手の用紙や光ディスク等が収納されたトレイを手差しで給紙、供給することが可能なようにも形成されている。
図5は、フロントASF144の詳細を示す側面図であり、図3及び図5を参照して説明する。フロントASF144は、給紙トレイ142に収納されている用紙を取り出すピックアップローラユニット41、このピックアップローラユニット41により取り出された用紙の向きを変える土手部42を備えている。さらに、ピックアップローラユニット41により重送された用紙を1枚のみに分離するリタードローラユニット43、このリタードローラユニット43により分離された残りの用紙を給紙トレイ142に戻すフロント紙戻しユニット44、給送される用紙をU字状に反転させる中間ローラ45及びアシストローラ46等を備えている。
ピックアップローラユニット41は、給紙トレイ142の後部上方に配置され給紙トレイ142に対して上下に旋回自在に配設されており、下降して給紙トレイ142に収納されている用紙を摩擦給送するようになっている。土手部42は、給紙トレイ142の後部にて後方に向けて傾斜するように配設されており、ピックアップローラユニット41により給送される用紙の先端を上方に方向変換するようになっている。
リタードローラユニット43は、中間ローラ45と当接可能に配設されており、ピックアップローラユニット41により用紙が重送されたときに最上層の用紙のみを下層の用紙から摩擦分離するようになっている。フロント紙戻しユニット44は、爪状に形成されてリタードローラユニット43の近傍に配設されており、リタードローラユニット43により分離された下層の用紙を爪に掛けて給紙トレイ142へ戻すようになっている。アシストローラ46は、中間ローラ45に対して常時当接するように配設されており、リタードローラユニット43により分離された最上層の用紙を中間ローラ45と挟持してU字状に反転させ、プラテン155へ給送するようになっている。
フロントEJ145は、図3に示すように、第1排紙ローラ51と第1ギザローラ52、第2排紙ローラ53と第2ギザローラ54等を備えている。第1排紙ローラ51は、プラテン155の搬送下流側に配設されており、プラテン155を通過してくる用紙を第1ギザローラ52とともに挟持して排送し、さらに第2排紙ローラ53は、第1排紙ローラ51の搬送下流側に配設されており、その用紙を第2ギザローラ54とともに挟持して排紙トレイ143上へ排送するようになっている。
記録部150には、図3に示すように、記録動作に同期して副走査方向に用紙を送る紙送りローラ151とその従動ローラ152、記録動作に同期して主走査方向に移動するキャリッジ153、記録動作に同期してインクを吐出する記録ヘッド154、記録時の用紙を平坦に保持するプラテン155等が配設されている。
紙送りローラ151は、図3に示すように、プラテン155の搬送上流側に配設されており、給紙ローラ32により給送される用紙もしくは中間ローラ45により反転給送される用紙を図2に示す紙送り機構156により従動ローラ152とともに挟持してプラテン155へ送り出すようになっている。キャリッジ153は、プラテン155の上方で図3に示すキャリッジガイド軸157に貫装されて図2に示すキャリッジベルト158に連結されており、図2に示すキャリッジモータ159によってキャリッジベルト158が作動すると、キャリッジベルト158の動きに連行され、キャリッジガイド軸157に案内されて往復移動するようになっている。
記録ヘッド154は、図3に示すように、プラテン155と所定の間隔が空くようにしてキャリッジ153に搭載されており、例えばブラックインクを吐出するブラックインク用記録ヘッドと、イエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタの5色のインクをそれぞれ吐出する複数のカラーインク用記録ヘッドとを備えている。そして、記録ヘッド154は、圧力発生室とそれに繋がるノズル開口が設けられており、圧力発生室内にインクを貯留して所定圧で加圧することにより、ノズル開口から用紙に向けてコントロールされた大きさのインク滴を吐出するようになっている。次に、本発明の特徴的な部分であるフロントASF144について、さらに図を参照して説明する。
図6は、上記フロントASF144の主要部の詳細を背面側から見た斜視図、図7は、それを前面側から見た斜視図である。このフロントASF144は、本発明の特徴的な部分であるピックアップローラユニット41により重送された用紙を1枚のみに分離するリタードローラユニット43と、このリタードローラユニット43により分離された残りの用紙を給紙トレイ142に戻すフロント紙戻しユニット44を備えている。
リタードローラユニット43は、中間ローラ45と当接して重送された用紙を最上層のみ給紙するために分離するリタードローラ61と、このリタードローラ61を回転自在に軸支持して中間ローラ45に対し当接・離間させるローラホルダ62を備えている。リタードローラ61は、円筒状に形成されており、円周面は摩擦係数を高めるために例えばゴム等で覆われている。ローラホルダ62は、一端にリタードローラ61を回転自在に軸支持し、他端がフレーム47に回動自在に支持されており、他端側を中心に一端側が旋回自在、すなわちリタードローラ61を揺動自在に保持している。
フロント紙戻しユニット44は、リタードローラ61により分離された下層の用紙の先端に当接して押し戻す紙戻し71、この紙戻し71を旋回させるとともにリタードローラ61を揺動させる紙戻し軸72、この紙戻し軸72に図示しない給送モータからの駆動力を伝達する図6に示すカムフロア73及びカムクラッチ74を備えている。紙戻し71は、爪状に形成されており、リタードローラ61の両側にて紙戻し軸72から突出するように紙戻し軸72に一体的に形成されている。カムフロア73は、L字状に形成されており、紙戻し軸72の一端から突出するように紙戻し軸72に一体的に形成されている。カムクラッチ74は、フレーム47に回転自在に支持されており、紙戻し軸72を断続的に回動させるためにカムフロア73と当接・離間可能な形状に形成されている。
紙戻し軸72は、フレーム47に回動自在に支持されている。ここで、上述したように、紙戻し71はリタードローラ61の両側に位置しているため、紙戻し軸72を真っ直ぐな棒状に形成するとローラホルダ62と干渉する。そこで、図6に示すように、紙戻し軸72におけるローラホルダ62と干渉する部分72aは、ローラホルダ62を回避するようにクランク形状に形成されている。
さらに、紙戻し軸72は、紙戻し71を旋回させるとともにリタードローラ61を揺動させる機能を有している。このため、図7に示すように、紙戻し軸72には、ローラホルダ62を旋回させるためのカム75が一体的に形成され、ローラホルダ62には、カム75と当接・離間するカムフロア76が一体的に形成されている。紙戻し軸72におけるクランク72aと紙戻し71とカム75を位相を調整して形成することにより、紙戻し軸72を回動させたときに、ローラホルダ62と干渉せずに紙戻し71を旋回させるとともにリタードローラ61を揺動させることができる。以上のような構成のリタードローラユニット43とフロント紙戻しユニット44の動作について図を参照して説明する。
図7(A)は、待機時もしくは記録時におけるリタードローラユニット43とフロント紙戻しユニット44の状態を示す斜視図、同図(B)は、給紙時におけるリタードローラユニット43とフロント紙戻しユニット44の状態を示す斜視図、図8(A)、(B)は、図7(A)、(B)に対応したリタードローラユニット43と中間ローラの位置関係を示す前面右側から見た側面図である。図9〜図11は、待機から給紙にかけてのカムフロア73及びカムクラッチ74とカム75及びカムフロア76とリタードローラ61の動作を示す前面右側から見た側面図、図12〜図13は、待機から給紙にかけてのカムフロア73及びカムクラッチ74と紙戻し71の動作を示す前面右側から見た側面図である。
待機時においては、図7(A)及び図8(A)に示すように、リタードローラ61は中間ローラ45から離間してフレーム47内に退避した状態にあり、紙戻し71はフレーム47から突出した状態にある。すなわち、図8(A)に示すように、ローラホルダ62はフレーム47との間に係止されている引張バネ63により常に時計回りに引っ張られた状態にあるが、待機時においては、図9(A)に示すように、カムクラッチ74は紙戻し軸72に形成されているカムフロア73と当接しており、紙戻し軸72に形成されているカム75がローラホルダ62に形成されているカムフロア76を反時計回りの方向に押圧している。したがって、図8(A)に示すように、ローラホルダ62は回動支点62aを中心に反時計回りに回動しており、リタードローラ61は中間ローラ45から離間している。また、図12(A)に示すように、紙戻し71は先端が土手部42に近接する位置に位置している。
給紙が開始されると、図9(B)に示すように、カムクラッチ74が反時計回りに回転して紙戻し軸72に形成されているカムフロア73から離間し、ローラホルダ62とフレーム47との間に係止されている引張バネ63の復元力により、ローラホルダ62に形成されているカムフロア76が紙戻し軸72に形成されているカム75を時計回りに押圧する。したがって、ローラホルダ62は回動支点62aを中心に時計回りに回動し、リタードローラ61は中間ローラ45に近接する。また、紙戻し71は時計回りに回動して先端が土手部42から離間する。
給紙時においては、図7(B)及び図8(B)に示すように、リタードローラ61はフレーム47から突出して中間ローラ45に当接した状態にあり、紙戻し71はフレーム47内に退避した状態にある。すなわち、図9(C)に示すように、リタードローラ61がフレーム47から突出して中間ローラ45に当接するまで、ローラホルダ62とフレーム47との間に係止されている引張バネ63の復元力により、ローラホルダ62は回動支点62aを中心に時計回りに回動する。このとき、ローラホルダ62に形成されているカムフロア76と紙戻し軸72に形成されているカム75は離間しているので、紙戻し軸72はフリーの状態にある。ところが、紙戻し軸72より背面側にある重心によって発生する重力モーメントによって紙戻し軸72は時計回りに回動するので、図12(B)に示すように、紙戻し71は時計回りに回動してフレーム47内に退避する。なお、リタードローラ61と中間ローラ45との当接点でのリタードローラ61による荷重は用紙の分離条件に大きな影響を及ぼす。したがって、ローラホルダ62に形成されているカムフロア76と紙戻し軸72に形成されているカム75は、用紙の分離中に接触しないようになっている。
分離が開始されると、図10(A)及び図12(C)に示すように、カムクラッチ74が反時計回りに回転するが、紙戻し軸72に形成されているカムフロア73とは接触しないので、リタードローラ61はフレーム47から突出して中間ローラ45に当接した状態が保持され、紙戻し71はフレーム47内に退避した状態に保持される。続いて、図10(B)、(C)及び図13(A)に示すように、カムクラッチ74がさらに反時計回りに回転して紙戻し軸72に形成されているカムフロア73と接触すると、リタードローラ61はフレーム47から突出して中間ローラ45に当接した状態が保持されるが、紙戻し71は反時計回りに回動開始する。
分離が終了すると、図11(A)に示すように、カムクラッチ74がさらに反時計回りに回転して紙戻し軸72に形成されているカムフロア73を押圧し、紙戻し軸72に形成されているカム75がローラホルダ62に形成されているカムフロア76と当接する。したがって、ローラホルダ62は回動支点62aを中心に反時計回りに回動開始し、リタードローラ61は中間ローラ45から離間開始する。
続いて、図11(B)に示すように、カムクラッチ74がさらに反時計回りに回転して紙戻し軸72に形成されているカムフロア73を押圧し、紙戻し軸72に形成されているカム75がローラホルダ62に形成されているカムフロア76を反時計回りに押圧する。したがって、ローラホルダ62は回動支点62aを中心に反時計回りにさらに回動し、リタードローラ61は中間ローラ45からさらに離間する。また、図13(B)に示すように、紙戻し71はフレーム47から突出して先端が分離された用紙の先端に当接して戻しを開始する。
そして、記録時においては、カムクラッチ74がさらに反時計回りに回転して紙戻し軸72に形成されているカムフロア73を押圧し、紙戻し軸72に形成されているカム75がローラホルダ62に形成されているカムフロア76を反時計回りにさらに押圧する。これにより、図7(A)及び図8(A)に示すように、リタードローラ61は中間ローラ45から離間してフレーム47内に退避した状態になり、紙戻し71はフレーム47から突出した状態になる。以上により、リタードローラユニット43とフロント紙戻しユニット44の1サイクルの動作が完了する。
図14(A)は、リタードローラ61と紙戻し71を示す図、同図(B)は、カム75とカムフロア76を示す図である。リタードローラ61は、ローラホルダ62の回動支点62aを中心に回転し、紙戻し71は、紙戻し軸72を中心に回転する。そして、リタードローラ61の軌跡は中間ローラ45によって形成されるU字経路の形状に拘束され、ローラホルダ62の回動支点62aは分離条件に拘束され、紙戻し71の軌跡は用紙の軌跡に拘束され、紙戻し軸72は紙戻し71の軌跡に拘束される。したがって、これらを満たす条件でカム75とカムフロア76を設定する必要がある。
すなわち、図14(A)に示すように、紙戻し71の回転角度θ1はリタードローラ61の回転角度θ2の約4倍あるため、図14(B)に示すように、カム75とカムフロア76の接点Pからローラホルダ62の回動支点62aの中心C1までの距離a1が、上記接点Pから紙戻し軸72の中心C2までの距離a2の約4倍となるようにカム75とカムフロア76を設定する。
図15は、上記紙戻し71及び上記紙戻し軸72の別の形態を示す斜視図及び断面図である。図15に示す紙戻し81は、爪部83と押さえ板84と圧縮バネ85を備えている。図15に示す紙戻し軸82には、紙戻し81が取り付けられる円周部分に平行な平坦面82aが形成され、さらにその平坦面82aに平行に紙戻し81の取付部86が一体的に形成されている。
爪部83には、用紙に当接する当接部83aと、紙戻し軸82の平坦面82aが形成されている部分が挿入される溝部83bと、押さえ板84を係止する突起部83cと、圧縮バネ85の一端が取り付けられる取付部83dが形成されている。押さえ板84には、爪部83の突起部83cが挿入される孔84aが形成されており、押さえ板84は、爪部83の溝部83b内に紙戻し軸82の平坦面82aが形成されている部分が挿入された状態で取り付けられる。取付部86には、圧縮バネ85の他端が取り付けられる取付部86aが形成されており、爪部83の取付部83d側が圧縮バネ85を介して挿入される。
このような構成の紙戻し81及び紙戻し軸82によれば、紙戻し81は紙戻し軸82と別体で形成されているので、紙戻し81の爪部83は圧縮バネ85により紙戻し軸82に対して引込・突出する。したがって、前述した紙戻し71は、紙戻し軸72と一体的に形成されており、特に厚紙等の腰の強い紙を戻すときに傷付けるおそれがあるが、この紙戻し81は、紙戻し軸82と別体に形成されているので、特に厚紙等の腰の強い紙を戻すときに退避して傷付けを防止することができる。
ここで、従来技術でも述べたように、フロントASF144において、用紙がピックアップローラユニット41により搬送された状態で紙戻し71が動作すると用紙先端折れが発生し、用紙の給送に支障をきたすおそれがある。そこで、この点を解消するために、本発明の特徴である以下に示すフロントASF144の駆動制御が行われる。
図16は、上記フロントASF144の駆動制御を説明するフローチャート、図17は、そのタイムチャートである。このフローチャートは、ピックアップローラユニット41等を駆動する給送(ASF)モータの動作と、リタードローラユニット43、フロント紙戻しユニット44、中間ローラ45、紙送りローラ151等を駆動する紙送り(PF)モータの動作に分けて示しており、給送(ASF)モータの動作と紙送り(PF)モータの動作は平行処理される。そして、この駆動制御は、給送(ASF)モータと紙送り(PF)モータのステップ数により制御される。
先ず、時点t1において、紙戻し71が退避する動作を開始し、リタードローラ61が中間ローラ45にニップする動作を開始する。時点t2において、紙戻し71の退避動作が終了し、給送(ASF)モータによりピックアップローラユニット41の下降動作が開始され(ステップS1)、ピックアップローラユニット41により用紙の給紙トレイ142から分離位置、すなわちリタードローラ61と中間ローラ45のニップ点までの搬送動作が行われる(ステップS2)。
時点t3において、紙送り(PF)モータによりリタードローラ61の用紙分離動作が開始され(ステップS3)、中間ローラ45の用紙搬送動作が開始される(ステップS4)。そして、時点t4において、ピックアップローラユニット41の回転が一時的に停止され(ステップS5)、この停止時間(時点t4〜時点t7)の間(時点t5〜時点t6)に、紙戻し71により用紙の戻し動作が行われる(ステップS6)。これらの動作は、紙検出センサにより用紙が検出されるまで行われる(ステップS7)。
そして、給送(ASF)モータ側では、紙検出センサにより用紙が検出されたか否かが判断され(ステップS8)、紙検出センサにより用紙が検出されたときは給送(ASF)モータは停止する(ステップS9)。一方、紙検出センサにより用紙が検出されていないときは、給送(ASF)モータにより用紙の搬送動作をアシストローラ46に達するまで続行する(ステップS10)。一方、紙送り(PF)モータ側では、ステップS7において紙検出センサにより用紙が検出されたときは、紙送り(PF)モータによる紙送りローラ151の回転により用紙の搬送動作を開始する(ステップS11)。
以上のように、紙戻し71により下層の用紙を戻す前に、ピックアップローラユニット41の回転を停止させて待ち時間を設けることにより、紙戻し71に対して用紙の給送力が働かないため、紙戻し71に対する用紙の衝突力が弱くなり、用紙の先端折れを防止することができる。
このような構成において、インクジェット式複合機100にて用紙に記録する場合の動作について説明する。ユーザは、記録前の複数枚の用紙を給紙トレイ142に収納してインクジェット式複合機100を起動する。給紙トレイ142に積層収納された用紙は、ピックアップローラユニット41により中間ローラ45に摩擦給送され、最上層の用紙のみが、紙戻し軸72により駆動されるリタードローラユニット43により分離されて給送される。そして、ピックアップローラユニット41の回転が停止され、分離された下層の用紙は、ピックアップローラユニット41の回転停止時間中に紙戻し軸72により駆動される紙戻し71により給紙トレイ142に戻される。そして、用紙は、スキュー取り及び頭出しされた後、紙送り機構156により駆動されている紙送りローラ151とその従動ローラ152に挟持されてプラテン155へ給送される。
用紙は、キャリッジモータ159とキャリッジベルト158により走査されるキャリッジ153に搭載された記録ヘッド154により記録される。このとき、インクジェット式複合機100の制御部は、例えばイエロー、マゼンタ、ライトマゼンタ、シアン、ライトシアン、ブラックの計6色のインクカートリッジから記録ヘッド154へ各色インクを供給し、各色インクの吐出タイミング及びキャリッジ153や紙送りローラ151の駆動を制御して、高精度なインクドット制御、ハーフトーン処理等を実行する。そして、記録が完了した用紙は、紙送り機構156により駆動されている第1排紙ローラ51と第1ギザローラ52、第2排紙ローラ53と第2ギザローラ54に挟持されて給排紙部140へ排紙され、排紙トレイ143上へ積層載置される。
以上のように、本実施形態のインクジェット式複合機100によれば、下降させたピックアップローラユニット41により用紙が重送されたときに最上層と下層に分離する分離位置まで用紙を給送し、リタードローラ61と中間ローラ45により重送された用紙を最上層と下層に分離し、ピックアップローラユニット41の回転を停止させて、紙戻し71により下層の用紙を戻すようにしているので、紙戻し71に対して用紙の給送力が働かないため、紙戻し71に対する用紙の衝突力が弱くなり、用紙の先端折れを防止することができる。なお、この駆動方法は、制御プログラムとしてインクジェット式複合機100の制御部のメモリ等に格納して使用可能である。
21 第1サポート、22 第2サポート、23 固定エッジガイド、24 可動エッジガイド、31 ホッパ、32 給紙ローラ、41 ピックアップローラユニット、43 リタードローラユニット、44 フロント紙戻しユニット、45 中間ローラ、61 リタードローラ、62 ローラホルダ、63 引張バネ、71、81 紙戻し、72、82 紙戻し軸、73 カムフロア、74 カムクラッチ、75 カム、76 カムフロア、100 インクジェット式複合機、101 ハウジング、110 プリンタ、120 スキャナ、130 給紙部、131 リア給紙口、132 フレーム、133 ペーパーサポート、134 リアASF、140 給排紙部、141 フロント給排紙口、142 給紙トレイ、143 排紙トレイ、144 フロントASF、150 記録部