JP4419232B2 - 結晶配向ビスマス層状ペロブスカイト型磁器組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶配向ビスマス層状ペロブスカイト型磁器組成物及びその製造方法に関し、更に詳しくは、振動ピックアップ、圧電マイクロホン、圧電点火素子、加速度センサ、ノッキングセンサ、ソナー、超音波センサ、発振子、フィルタ、焦電型赤外線センサ等に用いられる圧電、焦電材料として好適な結晶配向ビスマス層状ペロブスカイト型磁器組成物及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビスマス層状ペロブスカイト型化合物は、一般式(Bi2O2)2+(Am− 1BmO3m+1)2+で表される化合物であり、その多くは、誘電率が低く、かつキュリー温度が高い強誘電体として知られている。その結晶構造は、BO6酸素八面体が頂点共有した状態でc軸方向にm個積み重なった擬ペロブスカイト層と、Bi2O2層とがc軸方向に交互に重なりあった層状構造を呈し、正方晶から僅かに歪んだ構造になっている。
【0003】
また、ビスマス層状ペロブスカイト型化合物の自発分極は、一般に擬正方{001}面内又は擬正方{001}面内から擬正方<001>方向に僅かに向きを変えた面内にあり、外部電界により、その面内で回転あるいは反転するのみである。そのため、ビスマス層状ペロブスカイト型化合物は、BaTiO3、Pb(Zr、Ti)O3等、自発分極が三次元的に配向するペロブスカイト型強誘電体に比較して、圧電、焦電特性の異方性が大きいという特徴を有している。
【0004】
従って、単純酸化物、炭酸塩等の原料粉末を化学量論組成となるように混合し、仮焼、粉砕及び成形を経て常圧焼結させる通常の焼結法(以下、これを「通常焼結法」という。)を用いてビスマス層状ペロブスカイト型化合物の焼結体を作製すると、各結晶粒は擬正方{001}面の発達した板状結晶となり、しかも板状結晶が等方的に成長する。そのため、通常焼結法では、高い焼結体密度を有する焼結体は得られない。また、得られた焼結体は、各結晶粒が無配向となるために十分な分極処理が困難となり、大きな圧電性、焦電性は期待できない。
【0005】
例えば、Japanese J. Appl. Phys.、 Vol.13、 No.10、 1582-77(1974)には、代表的なビスマス層状ペロブスカイト型化合物であり、圧電性を有するPbBi4Ti4O15、SrBi4Ti4O15及びNa0.5Bi4.5Ti4O15を通常焼結法を用いて焼結させた例が報告されている。しかし、相対密度は、それぞれ、92.5%、91.3%及び92.8%、厚みモードの電気機械結合係数(kt)は、それぞれ、0.072、0.22及び0.15であり、低い値にとどまっている。
【0006】
そこで、この問題を解決するために、異方性を有する強誘電体化合物の焼結体を作製する際に、各結晶粒を一方向に配向させ、これによって焼結体密度及び圧電定数等の諸特性を向上させる種々の方法が提案されている。
【0007】
例えば、Sensors Materials, vol.1, 34-46(1988)には、ビスマス層状ペロブスカイト型化合物の一種である(NaBi)(1−x)/2CaxBi4Ti4O15(但し、x=0〜0.05)にMnを0〜1wt%添加し、ホットフォージング法を用いて焼結させた例が報告されている。この方法によれば、相対密度92〜96%、ロットゲーリングの配向度90%以上、電気機械結合係数(k33)0.30以上である配向焼結体が得られている。
【0008】
また、窯業協会誌、93巻、485(1985)には、フラックス法を用いて合成された板状Bi4Ti3O12粉末を原料粉末に用いて、ドクターブレード法により厚さ0.2mm程度のテープに成形し、これを積層して焼結させた例が報告されている。この方法によれば、相対密度95%以上、(117)面と(006)面のピーク高さ比(=I006/(I006+I117))で定義される配向度0.8であるBi4Ti3O12の配向焼結体が得られている。
【0009】
さらに、Proceedings of ISAF '96', P493-946(1996)には、板状Bi4Ti3O12粉末とBi4Ti3O12微粒子とを、板状粒子が微粒子の5〜10体積%となる割合で混合し、テープ成形で板状粒子を配向させ、このテープを積層して900〜1100℃で焼結させた例が報告されている。この方法によれば、ロットゲーリングの配向度95%以上である結晶配向Bi4Ti3O12焼結体が得られている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ホットフォージング法は、加圧装置を備えた焼結炉を用いて、まず通常焼結法により試料を十分に焼結させ、次いでその温度を保持しながら、加圧装置により試料を一軸加圧し、加圧方向と垂直な方向に試料を自由に塑性変形させるプロセスである。
【0011】
層状化合物は、一般に層間の結合力が層面内の結合力に比べて弱いので、通常焼結法によって板状結晶が任意方向に成長したビスマス層状ペロブスカイト型化合物の多結晶体を一軸加圧すると、擬正方{001}面内及び結晶粒界ですべりが生じ、擬正方{001}面が圧力に垂直な方向に配向した集合組織を持つ配向焼結体を得ることができる。
【0012】
そのため、ホットフォージング法を用いて圧電性ビスマス層状ペロブスカイト型化合物を焼結させ、加圧軸と垂直な方向に電界を印加すれば、通常焼結法で得られた無配向焼結体よりも高い圧電特性、焦電特性を発現する。また、加圧により緻密化が進行するので、通常焼結法に比して高い焼結体密度が得られる。
【0013】
しかしながら、ホットフォージング法を用いて高い配向度を有する配向焼結体を得るには、図8に示すように、熱間にて加圧治具21、22を用いて試料9を一軸加圧し、試料9に大きな塑性変形を生じさせる必要がある。そのため、大きな試料を作製することは困難であり、生産性も低い。
【0014】
また、図8(b)に示すように、ホットフォージング中の試料9内部の応力分布は均一にはならない。そのため、試料9の厚さ方向及び径方向に大きな配向度及び密度のばらつきが生じるという問題がある。すなわち、試料9の表面よりも内部の方が低配向度となり、試料9の中心部よりも周辺部の方が低配向度となる。また、試料9の中心部よりも周辺部の方が圧力がかかりにくいので、周辺部は低密度になりやすく、亀裂も発生しやすい。
【0015】
従って、ホットフォージング法は、配向焼結体を得ることは可能であるが、高コストとなる。また、製品の密度と配向度の観点からも歩留まりの高いプロセスではなく、量産には適さない方法である。
【0016】
一方、テープ成形法は、ドクターブレード法を用いてテープ状に成形する際に、スラリー中に含まれる板状粒子がブレードから剪断応力を受けるので、板状粒子は、テープ面に対して平行に配向した状態となる。そのため、焼結法として常圧焼結法を用いた場合であっても、高配向度及び高密度を有する配向焼結体が得られるという利点がある。
【0017】
しかしながら、高配向度を有するテープを得るには、テープ成形時にスラリーに強い剪断応力を付与する必要がある。そのためには、ブレードの開きを狭くする必要があり、その結果、テープの厚さは、きわめて薄くなる。従って、電界を印加する面(以下、これを「電界印加面」という。)の面積が大きな配向焼結体を得るには、薄いテープを多数積層する必要があり、工程が煩雑となる。
【0018】
また、上述したテープ成形法による配向焼結体の製造方法においては、いずれも、配向焼結体と同一組成を有する板状粉末をフラックス法により合成し、この板状粉末を用いてテープ成形及び焼結を行っている。この方法は、チタン酸ビスマス(Bi4Ti3O12)のように、金属元素を2種類しか含まない単純な複酸化物の配向焼結体を得るには有利な方法である。
【0019】
しかしながら、上述した、PbBi4Ti4O15、SrBi4Ti4O15、Na0.5Bi4.5Ti4O15等、金属元素を3種類以上含む複酸化物の板状粉末をフラックス法により合成しようとすると、元素比がずれやすく、所望の化学量論組成を有する板状粉末を得るのは困難である。
【0020】
本発明が解決しようとする課題は、圧電特性が大きく、しかも、焼結体密度及び配向度のばらつきが小さい結晶配向ビスマス層状ペロブスカイト型磁器組成物を提供することにある。
【0021】
また、本発明が解決しようとする他の課題は、金属元素を3種類以上含む複雑な組成を有する化合物であっても目的とする組成を有する配向焼結体が容易に得られ、かつ、電界印加面の面積の大きな配向焼結体を容易に製造でき、しかも、量産性に優れた結晶配向ビスマス層状ペロブスカイト型磁器組成物の製造方法を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明に係る結晶配向ビスマス層状ペロブスカイト型磁器組成物は、ビスマス層状ペロブスカイト型化合物の多結晶体からなり、該多結晶体を構成する各結晶粒の擬正方{001}面が、特定の軸方向にのみ平行に配向し、該特定の軸方向から測定された軸配向度Q’が30%以上であることを要旨とするものである。
【0023】
上記構成を有する本発明に係る結晶配向ビスマス層状ペロブスカイト型磁器組成物は、必ずしも各結晶粒の擬正方{001}面同志が平行に揃ってはいないが、擬正方{001}面がある特定の軸方向にのみ平行に配向した組織を呈している。このような配向組織を有する配向焼結体であっても、その特定の軸方向に沿って電界を印加すれば、十分な分極処理が可能となり、高い圧電特性が得られる。
【0024】
また、本発明に係る結晶配向ビスマス層状ペロブスカイト型磁器組成物の製造方法は、形状異方性を有するホスト材料と、該ホスト材料と反応してビスマス層状ペロブスカイト型化合物を生成するゲスト材料とを混合する混合工程と、該混合工程で得られた混合物を押し出すことにより成形する成形工程と、該成形工程で得られた成形体を熱処理し、前記ホスト材料の配向性を承継させながらビスマス層状ペロブスカイト型化合物の結晶を成長させる加熱工程とを備えていることを要旨とするものである。
【0025】
上記構成を有する本発明に係る結晶配向ビスマス層状ペロブスカイト型磁器組成物の製造方法は、形状異方性を有するホスト材料を含む混合物を押し出すことにより成形しているので、混合物が流れる方向に対してのみ、ホスト材料が平行に配向した成形体が得られる。また、このような成形体を加熱すると、ホスト材料の配向性を承継させながらビスマス層状ペロブスカイト型化合物の板状結晶が一方向に成長する。そのため、擬正方{001}面が特定の軸方向にのみ平行に配向し、高密度かつ高配向度を有する均一な配向焼結体を効率的に製造することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。本発明に係る結晶配向ビスマス層状ペロブスカイト型磁器組成物(以下、これを「配向磁器組成物」という。)は、ビスマス層状ペロブスカイト型化合物(以下、これを「BLP型化合物」という。)の多結晶体からなっている。
【0027】
ここで、BLP型化合物とは、上述したように、一般式(Bi2O2)2+(Am−1BmO3m+1)2−で表される化合物である。Aは、1価〜3価の金属元素又はこれらの中から選ばれる2以上の金属元素の混合物であり、Na、K等のアルカリ金属、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属、Y、La、Gd、Nd等の希土類金属、Pb、Cd、Bi等の重金属等が好適な一例として挙げられる。Bは、2〜6価の金属元素であり、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mg、Zn、Mn、Fe、Co、Ni、Cr等の遷移金属元素が好適な一例として挙げられる。また、mは、1〜5までの整数である。
【0028】
本発明においては、あらゆる組成のBLP型化合物が対象となり、金属元素A及び金属元素Bの種類は、特に限定されるものではないが、金属元素BとしてTi、Nb及びTaの内の少なくとも1種類を含むものが特に好適である。これらの金属元素Bを含むBLP型化合物は、優れた圧電特性を示すので、配向した場合の効果も大きくなるためである。
【0029】
大きな配向効果が得られるBLP型化合物としては、例えば、SrBi2Nb2O9、SrBi2Ta2O9、BaBi2Nb2O9、BaBi2Ta2O9、PbBi2Nb2O9、PbBi2Ta2O9、BaBi3Ti2NbO12、PbBi4Ti4O15、SrBi4Ti4O15、CaBi4Ti4O15、BaBi4Ti4O15、Na0.5Bi4.5Ti4O15、K0.5Bi4。5Ti4O15、Sr2Bi4Ti5O18、Ba2Bi4Ti5O18、Pb2Bi4Ti5O18等が好適な一例として挙げられる。また、これらのBLP型化合物の内、Pbを含まないものは、環境面からも望ましい圧電材料となる。また、非鉛の圧電材料としては、高いキュリー温度を有し、温度特性に優れている。
【0030】
また、本発明に係る配向磁器組成物は、多結晶体を構成する各結晶粒の擬正方晶表示における{001}面が特定の軸方向にのみ平行に配向している点に特徴がある。ここで、「擬正方晶表示」とは、一般にBLP型化合物は、正方晶から僅かに歪んだ構造を有しているが、その歪みは僅かであるので、これを正方晶とみなしてミラー指数表示することをいう。
【0031】
また、「特定の軸方向にのみ平行」であるとは、直交する3軸の内の1つの軸に対してのみ擬正方{001}面が平行に配向(以下、このような配向状態を「軸配向」という。)していることをいう。この点、直交する3軸の内の2つの軸に対して擬正方{001}面が平行に配向(以下、このような配向状態を「面配向」という。)しているホットフォージング法による配向焼結体やテープ成形法によるテープ積層体とは異なる。
【0032】
配向磁器組成物の軸配向の程度は、次の数1の式で表される軸配向度Q’により表すことができる。
【0033】
【数1】
【0034】
但し、数1の式において、ΣI(hkl)は、配向磁器組成物におけるすべての結晶面(hkl)からのX線回折強度の総和である。また、Σ’I(HKL)は、配向磁器組成物における特定の結晶面(HKL)(例えば、I(006)、I(008)、I(0010)等の擬正方{001}面に平行な結晶面)からのX線回折強度の総和である。一方、ΣI0(hkl)及びΣ’I0(HKL)は、それぞれ、配向磁器組成物と同一組成の同一化合物であり、かつ無配向の磁器組成物について測定されたすべての結晶面(hkl)からのX線回折強度の総和、及び特定の結晶面(HKL)からのX線回折強度の総和である。
【0035】
数1の式に示す軸配向度Q’の値は、無配向の場合には0%、X線回折測定における回折面に平行な特定の結晶面(HKL)が存在しない場合には100%となる。また、特定の結晶面(HKL)が軸配向している場合、軸配向の方向から測定された結晶面(HKL)の軸配向度Q’の値は、これと直交する方向から測定された軸配向度Q’の値よりも突出した値となる。
【0036】
本発明に係る配向磁器組成物においては、特定の軸方向から測定された擬正方{001}面の軸配向度Q’が30%以上であることが望ましい。軸配向度Q’が30%未満になると、十分な分極処理が困難となり、圧電特性が低下するので好ましくない。
【0037】
なお、数1に示す軸配向度Q’は、特定の結晶面(HKL)が回折面に垂直であることを直接的に示す指標ではなく、間接的に示す指標ではあるが、簡便な指標として用いることができる。また、特定の結晶面(HKL)が回折面に対して垂直であることを直接的に知る方法としては、例えば、ポールフィギュア法により結晶面(HKL)の面内分布を測定する方法がある。
【0038】
さらに、本発明に係る配向磁器組成物は、相対密度95%以上の体積が95%以上を占めていることを特徴とする。配向磁器組成物の密度が高く、かつ密度ばらつきが少ない場合には、高い生産性が得られるだけでなく、製造時に試料に亀裂等の欠陥が発生しにくくなる。そのため、本発明によれば、製品歩留が著しく向上するという利点がある。なお、このような高密度かつ均一な配向磁器組成物は、後述する本発明に係る製造方法によって容易に得ることができる。
【0039】
次に、本発明に係る配向磁器組成物の作用について説明する。本発明に係る配向磁器組成物は、多結晶体を構成する各結晶粒の擬正方{001}面が軸配向しているので、軸配向の方向に沿って分極処理すれば、各結晶粒の分極軸をほぼ一方向に揃えることができる。そのため、軸配向の方向に沿って電界を印加すれば、同一組成を有する無配向のBLP型化合物よりも優れた圧電特性、特に圧電d33定数、圧電g33定数、電気機械結合係数k33が得られる。例えば、本発明に係る配向磁器組成物によれば、ノックセンサ等の加速度センサに必要な圧電g定数は、低配向度の焼結体の1.5〜4倍となる。
【0040】
また、上述したような圧電特性の向上は、本発明のように擬正方{001}面を軸配向させた場合に限らず、面配向させた場合にも得られるものである。しかしながら、擬正方{001}面を面配向させるためには、ホットフォージング法やテープ成形法を用いる必要があり、上述したような亀裂の発生、焼結体密度及び配向度の不均一、並びにこれらに起因する製品歩留の低下、さらには、工程が煩雑化することに起因する生産性の低下等の問題は避けられない。
【0041】
これに対し、擬正方{001}面が軸配向した焼結体は、ホットフォージング法やテープ成形法を用いることなく製造できる。そのため、亀裂の発生、焼結体密度及び配向度の不均一、並びにこれらに起因する製品歩留の低下が抑制される。また、製造工程が簡略化されるので、生産性も向上する。
【0042】
さらに、ホットフォージング法やテープ成形法を用いる場合、本質的には、大きな体積を有する配向焼結体を得るのは困難である。しかしながら、本発明に係る配向磁器組成物は、これらの製造方法を用いることなく製造可能なので、0.5cm3以上の体積を有する大型の素子、特に電界印加面の面積の大きな素子であっても容易に製造できる。
【0043】
次に、本発明に係る配向磁器組成物の製造に用いられるホスト材料及びゲスト材料について説明する。本発明に係る配向磁器組成物の製造方法は、ホスト材料を成形体中に配向させ、ホスト材料とゲスト材料を反応させることにより、ホスト材料の配向性を承継させながらBLP型化合物の板状結晶を一方向に成長させ、これによって焼結体内部に所望の配向組織を導入する点に特徴がある。
【0044】
本発明に係る配向磁器組成物の製造を可能とするためには、ホスト材料は、以下の条件を満たしている必要がある。まず第1に、ホスト材料は、形状異方性を有している必要がある。形状異方性がないと、成形時に所望の配向組織が得られないので好ましくない。具体的には、針状あるいは板状であればよい。特に、板状粒子は、比較的成形が容易であるので、ホスト材料の形状として好適である。
【0045】
ホスト材料が板状粉末である場合、そのアスペクト比は、5以上であることが好ましい。板状粉末のアスペクト比は、さらに好ましくは、10以上である。また、長手方向の長さは、少なくとも0.5μm以上であることが好ましく、さらに好ましくは、5μm以上である。板状粉末のアスペクト比が小さく、かつ、長手方向の長さが短い場合には、成形時に板状粉末に作用する剪断応力が小さくなり、高い配向度が得られないので好ましくない。
【0046】
第2に、ホスト材料は、ゲスト材料との反応によって最終組成物であるBLP型化合物を生成可能なものでなければならない。従って、ホスト材料は、必ずしも最終組成物であるBLP型化合物と同一組成を有する化合物である必要はない。むしろ、ホスト材料としては、最終組成物よりも単純な組成を有する化合物又は固溶体を用いた方が好ましい。これは、単純な組成を有する化合物又は固溶体の方が、形状異方性を有する粉末を合成する際に元素比のずれが起きにくく、所望の化学量論組成を有する粉末が得やすいためである。
【0047】
第3に、ホスト材料は、その配向性を承継させながらBLP型化合物の板状結晶を成長させることができるものでなければならない。例えば、ホスト材料が板状粉末である場合、ホスト材料は、板状粉末の最も面積の広い面(以下、これを「発達面」という。)に対してBLP型化合物の擬正方{001}面が平行となるように合成反応が生じる化合物又は固溶体でなければならない。
【0048】
以上のような条件を満たす材料であれば、いずれもホスト材料として用いることができる。このような条件を満たす材料としては、種々の化合物、固溶体が挙げられるが、中でも、配向磁器組成物よりも単純な組成を有するBLP型化合物は、ホスト材料として特に好適である。
【0049】
ホスト材料として用いるBLP型化合物は、具体的には、配向磁器組成物より単純な組成を有する化合物であって、BiとBiを除く2〜6価の金属元素のうち少なくとも1種類の金属元素Bを含むBLP型化合物、あるいは、前者の構成元素に加え、さらにBiを除く1〜3価の金属元素のうち少なくとも1種類の金属元素Aを含むBLP型化合物、と定義することができる。
【0050】
例えば、配向磁器組成物がBaBi3Ti2NbO12、PbBi4Ti4O15、SrBi4Ti4O15、CaBi4Ti4O15、BaBi4Ti4O15、Na0.5Bi4。5Ti4O15、K0.5Bi4。5Ti4O15、Sr2Bi4Ti5O18、Ba2Bi4Ti5O18、Pb2Bi4Ti5O18等である場合には、ホスト材料として、チタン酸ビスマス(Bi4Ti3O12)を用いることができる。また、例えば、配向磁器組成物がSrBi2Nb2O9、BaBi2Nb2O9、PbBi2Nb2O9、BaBi3Ti2NbO12等である場合には、ホスト材料として、ニオブ酸ビスマス(Bi5Nb3O15)を用いることができる。
【0051】
また、配向磁器組成物が2種以上の金属元素Bを含んでいる場合には、2種以上のホスト材料を用いても良い。例えば、配向磁器組成物がBaBi3Ti2NbO12である場合には、ホスト材料として、チタン酸ビスマス及びニオブ酸ビスマスの双方を用いることができる。
【0052】
その他、Bi2VO5.5、Bi2WO6など、Ti及びNb以外の金属元素Bを含むBLP型化合物であっても、ホスト材料として使用可能である。さらに、金属元素Bを3種類含む複雑な組成を有する配向磁器組成物を製造する場合には、金属元素Bを1種類含むBLP型化合物及び/又は金属元素Bを2種類含むBLP型化合物をホスト材料として用いることができる。同様に、金属元素Bを4種類以上含む配向磁器組成物を製造する場合には、最終組成物より単純な組成を有するBLP型化合物であれば、いずれもホスト材料として用いることができる。
【0053】
また、ホスト材料の他の好適な一例としては、ラドルスデン−ポッパー(Ruddlesden-Popper)型層状ペロブスカイト化合物(以下、これを「RP型化合物」という。)が挙げられる。例えば、配向磁器組成物が金属元素A及び金属元素Bとして、それぞれ、Sr及びTiを含むものである場合、ホスト材料には、Sr2TiO4、Sr3Ti2O7、Sr4Ti3O10などを用いることができる。同様に、配向磁器組成物が金属元素A及び金属元素Bとして、それぞれ、Ca及びTiを含むものである場合、ホスト材料には、Ca3Ti2O7、Ca4Ti3O10などを用いることができる。
【0054】
なお、このような形状及び組成を有するホスト材料は、ホスト材料の原料となる物質を液相又は気相中で合成することにより、容易に得ることができる。特に、アスペクト比の大きな板状粉末を得るには、高温の融液中で合成するフラックス法、アルカリ水溶液と共にオートクレーブ中で加熱する水熱法、過飽和溶液中で析出させる析出法などを用いると良い。
【0055】
次に、ゲスト材料について説明する。ゲスト材料は、上述したホスト材料と反応して、ビスマス層状ペロブスカイト型化合物となるものであればよい。従って、ゲスト材料に含まれる金属元素の種類は、配向磁器組成物の組成とホスト材料の組成が定まれば、一義的に定まる。
【0056】
例えば、ホスト材料として、配向磁器組成物より単純な組成を有するBLP型化合物を用いる場合、ゲスト材料には、1〜3価の金属元素のうち少なくとも1種類の金属元素A、及び2〜6価の金属元素のうち少なくとも1種類の金属元素Bを含む、1種又は2種以上の原料が用いられる。この場合、ゲスト材料中の金属元素A及び金属元素Bの比率は、配向磁器組成物中の(Am−1BmO3m+1)構造が維持されるような比率でなければならない。
【0057】
なお、ゲスト材料は、単純酸化物の他、複酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、有機酸塩、アルコキシドなど、熱分解によって酸化物となり得る原料であれば、いずれであっても良い。これらは、固体や液体として使用しても良く、あるいは、水や有機溶媒に溶解もしくは懸濁している状態又は錯体の状態で使用しても良い。また、ゲスト材料として気相の原料を用い、ホスト材料の表面に付着させて使用しても良い。さらに、ゲスト材料が固体である場合、その形状は、板状、針状、等軸状等、いずれであっても良く、特に限定されるものではない。
【0058】
次に、本発明に係る配向磁器組成物の製造方法について説明する。本発明に係る配向磁器組成物の製造方法は、混合工程と、成形工程と、加熱工程とを備えている。
【0059】
初めに混合工程について説明する。混合工程は、上述した形状異方性を有するホスト材料とゲスト材料とを混合する工程である。ホスト材料及びゲスト材料の混合比率は、目的とする配向磁器組成物が得られる限り、任意に選択することができる。
【0060】
但し、ホスト材料の混合比率が過少になると、焼結時に板状結晶が任意方向に成長しやすくなり、得られる配向磁器組成物の配向度が低下するので好ましくない。従って、配向磁器組成物中のBサイト元素の少なくとも5%がホスト材料中のBサイト元素として供給されるような混合比率とするのが望ましい。
【0061】
例えば、配向磁器組成物がCaBi4Ti4O15であり、ホスト材料としてチタン酸ビスマス板状粉末(Bi4Ti3O12)を用いる場合、ホスト材料1モルに対し、ゲスト材料として、金属元素Aを含む原料である炭酸カルシウム(CaCO3)と金属元素Bを含む原料である酸化チタン(TiO2)を各1モルずつ混合する。あるいは、チタン酸カルシウム(CaTiO3)のように金属元素Aと金属元素Bの両方を含む複合酸化物をゲスト材料として用いても良い。
【0062】
あるいは、ホスト材料であるチタン酸ビスマス板状粉末(Bi4Ti3O12)1モルに対し、ゲスト材料として、金属元素Aを含む原料である炭酸カルシウム(CaCO3)2モル及び酸化ビスマス(Bi2O3)2モル、並びに金属元素Bを含む原料である酸化チタン(TiO2)5モルを混合する。この場合、Ca及びTiの一部をチタン酸カルシウム(CaTiO3)として添加しても良い。
【0063】
また、例えば、配向磁器組成物がSrBi2Nb2O9であり、ホスト材料としてニオブ酸ビスマス板状粉末(Bi5Nb3O15)を用いる場合、ホスト材料0.4モルに対し、ゲスト材料として、金属元素Aを含む原料である炭酸ストロンチウム(SrCO3)1モルと、金属元素Bを含む原料である酸化ニオブ(Nb2O5)0.4モルを混合する。
【0064】
また、例えば、配向磁器組成物がBaBi3Ti2NbO12のように、TiとNbの2種類のBサイト元素を含む場合には、ホスト材料として、チタン酸ビスマス板状粉末(Bi4Ti3O12)及び/又はニオブ酸ビスマス板状粉末(Bi5Nb3O15)を用い、最終組成が得られるように、Ba、Bi、Ti及び/又はNbを含むゲスト材料を所定量混合すればよい。
【0065】
また、例えば、配向磁器組成物がCaBi4Ti4O15であり、ホスト材料としてRP型化合物であるCa3Ti2O7板状粉末を用いる場合、ホスト材料1モルに対し、ゲスト材料として、Bi2O3を6モル、TiO2を10モル加えて混合する。あるいは、ホスト材料として同じくRP型化合物であるCa4Ti3O10板状粉末を用いる場合には、ホスト材料1モルに対し、ゲスト材料として、Bi2O3を8モル、TiO2を13モル加えて混合してもよい。
【0066】
また、例えば、配向磁器組成物がSrBi4Ti4O15であり、ホスト材料としてRP型化合物であるSr3Ti2O7板状粉末を用いる場合、ホスト材料1モルに対し、ゲスト材料として、Bi2O3を6モル、TiO2を10モル加えて混合すればよい。
【0067】
なお、混合は、乾式で行っても良いが、水又は有機溶媒中でボールミルや攪拌機を用いて混合する湿式で行っても良い。また、必要に応じて、結合材、分散剤、可塑剤等を添加しても良い。結合材等は、原料の混合と同時に添加するか、あるいは混合の途中で原料に添加するのが一般的であるが、湿式法で混合した後、スラリーを乾燥させ、その後で再び結合材や可塑剤を添加して混合しても良い。
【0068】
次に、成形工程について説明する。成形工程は、上述した混合工程で得られた混合物をホスト材料が配向するように成形し、所望の形状を有する成形体を得る工程である。成形中にホスト材料を配向させるためには、その成形方法は、少なくとも、形状異方性を有するホスト材料を含む混合物に対して、非等方的な応力が付与されるものでなければならない。
【0069】
このような成形方法としては、具体的には、湿式又は乾式の射出成形法、押出成形法、鋳込み成形法、ドクターブレードを用いたテープ成形法、圧延法、遠心成形法などが一例として挙げられる。これらの内、湿式又は乾式の射出成形法、押出成形法及び鋳込み成形法は、ノズル、ダイス等からスラリー又は混合粉末が押し出される際に、スラリー又は混合粉末の流れに沿ってホスト材料に強い剪断応力が作用するので、板状のホスト材料を軸配向させる成形方法として特に好適である。
【0070】
なお、ホスト材料が板状粉末であり、成形方法として、湿式又は乾式のテープ成形、圧延もしくは遠心成形法を用いた場合又はこれらを組み合わせて用いた場合には、ホスト材料が面配向した成形体を得ることができる。擬正方{001}面が面配向した配向磁器組成物を作製する必要がある場合には、これらの成形方法を用いると良い。この場合、成形体の厚みを増したり、配向度を上げるために、成形体に対し、さらに積層圧着、プレス、圧延などの処理を行っても良い。
【0071】
次に、焼結工程について説明する。焼結工程は、上述した成形工程で得られた成形体を熱処理し、ホスト材料の配向性を承継させながらBLP型化合物の板状結晶を一方向に成長させる工程である。一般に、BLP型化合物の合成は、1000℃程度の温度で完了するが、さらに緻密な焼結体とするためには、これを超える温度で熱処理を行うことが必要である。熱処理の温度は、作製しようとする配向磁器組成物の組成に応じて最適な温度を選択すればよい。
【0072】
例えば、配向磁器組成物がSrBi4Ti4O15あるいはCaBi4Ti4O15である場合、熱処理温度は、1100℃〜1250℃が好ましい。熱処理温度が1100℃未満では、十分に緻密化しないので好ましくない。また、熱処理温度が1250℃を超えると、試料の一部が溶融するおそれがあるので好ましくない。
【0073】
加熱手段は、電気炉、ガス炉、イメージ炉など各種の炉が使用できる。また、ホスト材料が単純組成を有するBLP型化合物である場合、マイクロ波やミリ波等を用いた加熱炉は、ホスト材料を優先的に加熱でき、ホスト材料の反応を促進できる。また、焼結時間を短縮するための加熱手段としても好適である。これは、ホスト材料の誘電率が比較的大きいために、成形体にマイクロ波等を照射すると、ホスト材料において大きな誘電損失が発生し、ホスト材料が優先的に加熱されるためである。
【0074】
また、焼結は、大気中で行っても良いが、高い密度の焼結体を得るには、酸素雰囲気中で焼結することが望ましい。これは、一般に焼結が進行し、焼結体内部に孤立した気孔が形成されると、気孔内部に残留した雰囲気ガスによって焼結が阻害されるが、酸素雰囲気中で焼結した場合には、気孔内に残留した窒素が粒界を通って容易に外部に排出され、焼結を阻害しないためである。
【0075】
なお、結合材を含む成形体の場合には、焼結工程の前に、脱脂を主目的とする熱処理を行っても良い。この場合、熱処理の温度は、少なくとも結合材を熱分解させるに十分な温度で行えばよい。
【0076】
また、脱脂を主目的とする熱処理を行った場合、成形体中のホスト材料の配向度が低下する場合がある。また、ホスト材料とゲスト材料からBLP型化合物が合成される際に、成形体に膨れが発生する場合がある。このような配向度の低下、あるいは成形体の膨れに起因する密度の低下を抑制するためには、脱脂を主目的とする熱処理を行った後、成形体に対して、さらに静水圧(CIP)処理を行うことが望ましい。
【0077】
このCIP処理の前に行う熱処理の最適温度は、配向磁器組成物の組成によって異なるが、一般的には、BLP型化合物の合成反応が開始する温度より高く、かつ、緻密化が大きく進行する温度より低いことが望ましい。熱処理の条件と、配向磁器組成物の種類によっては、脱脂を主目的とする熱処理の際に合成反応の一部が進行する場合とすべてが終了する場合があるが、いずれであってもかまわない。
【0078】
また、擬正方{001}面を面配向させるために、テープ成形法を用いた場合には、緻密化を助けるために、焼成中に試料に対し加圧処理を行っても良い。但し、いわゆるホットフォージング処理のように高い圧力を加える必要はなく、試料に錘を乗せて焼結する程度、即ち0.1MPa程度の加圧で十分な効果が得られる。むしろ、ホットフォージング処理のように、10MPaを超えるような圧力で加圧すると、焼結体中の配向度のばらつきを大きくし、均一な特性を有する製品を作製することができないので好ましくない。
【0079】
次に、本発明に係る製造方法の作用について説明する。本発明に係る製造方法は、形状異方性を有するホスト材料を出発原料に用いているので、ホスト材料に対して非等方的な応力が作用するような成形方法を用いて成形すると、ホスト材料が配向した成形体を得ることができる。このような配向組織を呈する成形体を所定温度に加熱すると、ホスト材料とゲスト材料が反応し、ホスト材料の配向性を承継しながらBLP型化合物の板状結晶が合成される。
【0080】
特に、ホスト材料としてBLP型化合物、RP型化合物等の板状粉末を用い、射出成形、押出成形等、スラリー又は混合粉末を一方向に押し出すような成形方法を用いて成形した場合には、スラリー又は混合粉末の流れに沿って板状粉末が軸配向した成形体を得ることができる。また、この成形体を適当な温度で熱処理すれば、板状粉末の配向組織が承継され、擬正方{001}面の軸配向度Q’が30%以上である配向磁器組成物を得ることができる。そのため、得られた配向磁器組成物を軸配向の方向に沿って電界を印加すれば、十分な分極処理が可能となり、高い圧電特性が得られる。
【0081】
また、射出成形法、押出成形法等の成形方法で得られる配向組織を有する成形体は、通常焼結法に比較して緻密化しやすいので、緻密化を促進させるための一軸加圧を行う必要がない。そのため、焼結体密度及び配向度のばらつきが抑制され、相対密度95%以上の体積が95%以上を占める均一な配向磁器組成物を容易に製造することができる。また、0.5cm3以上の体積を有する大型素子、特に電界印加面の面積が大きい素子であっても、歩留良く製造することができる。さらに、テープ成形法のような積層工程が不要であるので、製造工程が簡略化され、生産性も向上する。
【0082】
また、ホスト材料及びゲスト材料から最終組成物を合成しているので、製造工程において、元素比のずれがおきにくい。そのため、3種類以上の金属元素を含む複雑な組成を有するBLP型化合物であっても、所望の化学量論組成と配向組織を有する配向磁器組成物を容易に得ることができる。
【0083】
【実施例】
ホスト材料として、板状Bi4Ti3O12粉末及び板状Bi5Nb3O15粉末を用いて、配向磁器組成物を作製した。配向磁器組成物は、CaBi4Ti4O15、NaCaBi4Ti4O15、SrBi4Ti4O15及びSrBi2Nb2O9の4種類とした。最終化合物(すなわち、配向磁器組成物)の組成、板状粉末の種類、ゲスト材料の種類、板状粉末の添加量及び焼結条件を表1に示す。なお、表1中、板状粉末の添加量は、Bサイト元素のモル%で表記した。また、板状粉末は、いずれもフラックス法にて合成した。
【0084】
【表1】
【0085】
製造方法の概略は、以下の通りである。すなわち、No.4以外は、表1に示す比率のホスト原料に対してゲスト材料を所定量配合し、有機溶媒中でボールミル混合した。次いで、有機溶媒を除去した後、混合粉末に結合材及び可塑剤を加えて混練し、図7に示したようなテーパのついた成形型を用いて押出成形を行った。得られた棒状の成形体を1cmの長さに切り分け、直径約1cm、長さ約1cmの円柱状の母試料を10個作製した。この母試料を、大気中600℃×2hの条件で熱処理し、脱脂を行った。さらに、No.1及びNo.5〜No.7の母試料については、熱処理後に約300MPaの圧力で静水圧成形処理を行った。
【0086】
これに対し、No.4については、表1に示す比率のホスト原料及びゲスト材料を有機溶媒中でボールミル混合し、結合材及び可塑剤を加えてさらにボールミル混合した後、ドクターブレード法によりテープ成形を行った。次いで、乾燥させたテープを積層し、圧着した後、圧延処理をした。圧延後のテープ積層体をさらに重ねて圧着し、約1cm角の立方体に近い形状の母試料を10個作製した。得られた母試料について、押出成形した母試料と同一の条件下で脱脂及び静水圧成形処理を行った。
【0087】
次に、これらの母試料を、それぞれ酸素中において表1に示した条件で熱処理を行い焼結させた。この焼結体を、押出成形した母試料の場合は円柱の高さ方向に対して垂直に、テープ成形した母試料の場合は元のテープ成形体のテープ面に対して垂直に、それぞれダイヤモンド刃で切断し、1つの母試料からそれぞれ5枚の薄板試料を切り出した。
【0088】
得られた薄板試料について、X線回折法にて結晶相を調べた。その結果、すべての薄板試料において、目的とした圧電性BLP型化合物が得られていることが確認された。
【0089】
また、焼結後の母試料の平均相対密度、平均軸配向度及び歩留まりを表1に示す。なお、平均相対密度は、各母試料から切り出されたすべての薄板試料について、アルキメデス法により測定された相対密度の平均値である。また、平均軸配向度は、各母試料から切り出されたすべての薄板試料の切断面について、数1の式から求めた擬正方{001}面の軸配向度Q’の平均値である。また、歩留まりは、総母試料数に対する、軸配向度30%以上かつ相対密度95%以上の体積が95%以上を占める母試料の数の比である。
【0090】
本実施例で作製したすべての配向磁器組成物において、平均相対密度は95%を越えていた。また、各母試料から切り出された薄板試料の中で、相対密度が95%未満であるものはなかった。同様に、すべての配向磁器組成物において、平均軸配向度は40%を越えていた。また、各母試料から切り出された薄板試料の中で、軸配向度Q’が30%未満であるものはなかった。これは、すべての配向磁器組成物において、すべての母試料が「軸配向度30%以上かつ相対密度95%以上の体積が95%以上」という条件を満たしていることを示している。その結果、歩留まりは、すべての配向磁器組成物について10/10となった。
【0091】
押出成形法によって作製したCaBi4Ti4O15配向磁器組成物(No.1)及びテープ成形法によって作製したCaBi4Ti4O15配向磁器組成物(No.4)から切り出された薄板試料の切断面(押出成形体の場合は、押出方向に垂直な面、テープ成形体の場合は元のテープ面に垂直な面)の代表的なX線回折パターンをそれぞれ図1及び図2に示す。また、通常焼結法により作製した無配向のCaBi4Ti4O15焼結体のX線回折パターンを図4に示す。なお、X線回折パターンのミラー指数はJCPDFカードと同じく、斜方晶表示で表してあるが、(00L)面が擬正方晶表示の{001}面にあたる。
【0092】
図1及び図2と図4とを比較すると、No.1及びNo.4のいずれも斜方晶(00L)面に由来する回折ピーク、すなわち擬正方晶{001}面に由来する回折ピークが著しく低くなっていることがわかる。この結果は、押出方向に垂直な面又は元のテープ面に垂直な面と平行な擬正方晶{001}面を有する結晶粒の割合が極めて少ないことを意味している。換言すれば、この結果は、押出方向又はテープ成形方向にほぼ平行な擬正方晶{001}面を有する結晶粒の割合が多いことを示している。
【0093】
また、図3に、No.4の配向磁器組成物の元のテープ面に平行な面のX線回折パターンを図3に示す。No.4の配向磁器組成物の場合、元のテープ面に平行な面では、斜方晶(00L)面に由来する回折ピーク、すなわち擬正方晶{001}面に由来する回折ピークが著しく高くなっていることがわかる。この結果は、テープ成形体の場合、元のテープ面に対して平行に擬正方晶{001}面が面配向していることを示す。
【0094】
No.4の場合、表1に示すように、元のテープ面と垂直な面について測定された平均軸配向度Q’は93%であった。一方、元のテープ面と平行な面についてロットゲーリング法で求めた擬正方{001}面の平均配向度Qは、92%であった。なお、ロットゲーリング法による配向度Qは、次の数2の式で表され、ある特定の結晶面の面配向の程度を示すものである。また、数2の式中のΣI(hkl)、Σ’I(HKL)、ΣI0(hkl)及びΣ’I0(HKL)は、数1式中のものと同じ意味を表す。
【0095】
【数2】
【0096】
図5及び図6に、それぞれ、No.1及びNo.4の配向磁器組成物から切り出された薄板試料の切断面の走査型電子顕微鏡写真を示す。図5及び図6より、X線回折パターンから示唆されたように、その発達面が薄板試料の切断面と直交している板状結晶の数が多いことが確かめられた。また、テープ成形法で作製されたNo.4の配向磁器組成物の場合、板状結晶の発達面が元のテープ面と平行に配向していることも確認された。板状結晶の発達面が擬正方{001}面に相当するので、図6は、No.4においては擬正方{001}面が面配向していることを示すものである。
【0097】
No.1及びNo.4の配向磁器組成物、並びにこれらと同一組成を有し、通常焼結法で作製した無配向の磁器組成物から切り出された薄板試料の切断面をさらに研磨し、金電極を蒸着して分極処理を行った後、圧電定数を測定した。結果を表2に示す。面配向させたNo.4の配向磁器組成物のみならず、軸配向させたNo.1の配向磁器組成物であっても、通常焼結法で作製した無配向の同組成焼結体に比べて2倍以上の圧電特性を示した。
【0098】
【表2】
【0099】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しないで種々の改変が可能である。
【0100】
例えば、上記実施例では、圧電性を有するBLP型化合物について本発明を適用した例について説明したが、本発明は、圧電材料以外のBLP型化合物に対しても同様に適用できる。例えば、高温超伝導材料として知られるビスマス層状構造超伝導体は、一般式Bi2Sr2Can−1CunOyで表され、圧電性を有するBLP型化合物と類似の結晶構造を有している。しかも、CuO2面(a−b面)が超伝導容易面であり、超伝導電流はa−b面内で2次元的に制限されている。従って、本発明に係る製造方法を用いてa−b面を軸配向させれば、電流が流れる面の面積が大きく、かつ、高い臨界電流密度をJcを有する高温超伝導体を製造することができる。
【0101】
また、上記実施例では、押出成形法によって擬正方{001}面を軸配向させた例について説明したが、本発明に係る製造方法は、BLP型化合物以外の層状化合物、あるいは層状構造を有しない化合物の特定の結晶面を軸配向させる方法としても使用することができ、これにより上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0102】
【発明の効果】
本発明に係る結晶配向ビスマス層状ペロブスカイト型磁器組成物は、ビスマス層状ペロブスカイト型化合物の多結晶体からなり、該多結晶体を構成する各結晶粒の擬正方{001}面が、特定の軸方向にのみ平行に配向し、該特定の軸方向から測定された軸配向度Q’が30%以上になっているので、自発分極の方向をほぼ一方向に揃えることができ、高い圧電特性が得られるという効果がある。
【0103】
さらに、本発明に係る結晶配向ビスマス層状ペロブスカイト型磁器組成物の製造方法は、形状異方性を有するホスト材料と、該ホスト材料と反応してビスマス層状ペロブスカイト型化合物を生成するゲスト材料とを混合する混合工程と、該混合工程で得られた混合物を押し出すことにより成形する成形工程と、該成形工程で得られた成形体を熱処理し、前記ホスト材料の配向性を承継させながらビスマス層状ペロブスカイト型化合物の結晶を成長させる加熱工程とを備えているので、擬正方{001}面が特定の軸方向にのみ平行に配向した、高密度かつ高配向度を有する均一な配向焼結体を効率的に製造できるという効果がある。また、複雑な組成を有する配向焼結体、あるいは電圧印加面の面積の大きい配向焼結体であっても、容易に製造できるという効果がある。
【0104】
以上のように、本発明によれば、高いキュリー温度を有し、圧電、焦電特性に優れた材料が安価な製造プロセスにて得られるので、これを例えば、加速度センサ、振動ピックアップ、圧電マイクロホン、焦電センサ等の各種の変換素子に応用すれば、変換素子の小型化、高出力化、低コスト化に寄与するものであり、産業上その効果の極めて大きい発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】押出成形法で作製されたCaBi4Ti4O15焼結体(No.1)の押出方向に垂直な切断面のX線回折パターンを示す図である。
【図2】テープ成形法で作製されたCaBi4Ti4O15焼結体(No.4)のテープ面に垂直な切断面のX線回折パターンを示す図である。
【図3】テープ成形法で作製されたCaBi4Ti4O15焼結体(No.4)のテープ面に平行な切断面のX線回折パターンを示す図である。
【図4】通常焼結法で作製された無配向のCaBi4Ti4O15焼結体のX線回折パターンを示す図である。
【図5】押出成形法で作製されたCaBi4Ti4O15焼結体(No.1)の押出方向に垂直な研磨面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】テープ成形法で作製されたCaBi4Ti4O15焼結体(No.4)のテープ面に垂直な研磨面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】押出成形に用いる成形用治具を示す模式図である。
【図8】図8(a)は、ホットフォージング法により配向焼結体を作製する際の試料を一軸加圧する前の状態を示す図であり、図8(b)は、一軸加圧した状態を示す図である。
【符号の説明】
21、22 加圧治具
9 試料
Claims (4)
- ビスマス層状ペロブスカイト型化合物の多結晶体からなり、
該多結晶体を構成する各結晶粒の擬正方{001}面が、特定の軸方向にのみ平行に配向し(但し、前記各結晶粒の擬正方{001}面同士は平行に揃ってはいない。)、
該特定の軸方向から測定された軸配向度Q’が30%以上である結晶配向ビスマス層状ペロブスカイト型磁器組成物。 - 相対密度95%以上の体積部分が95%以上である請求項1に記載の結晶配向ビスマス層状ペロブスカイト型磁器組成物。
- 押出成形法を用いて成形されており、前記特定の軸方向は、押し出し軸方向である請求項1または2に記載の結晶配向ビスマス層状ペロブスカイト型磁器組成物。
- 形状異方性を有するホスト材料と、該ホスト材料と反応してビスマス層状ペロブスカイト型化合物を生成するゲスト材料とを混合する混合工程と、
該混合工程で得られた混合物を押し出すことにより成形する成形工程と、
該成形工程で得られた成形体を熱処理し、前記ホスト材料の配向性を承継させながらビスマス層状ペロブスカイト型化合物の結晶を成長させる加熱工程とを備えている結晶配向ビスマス層状ペロブスカイト型磁器組成物の製造方法。
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