JP4419205B2 - 紅顔料ウエットケーキ組成物および平版インキ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷機上安定性を有する平版印刷インキを提供しうる紅顔料ウエットケーキ組成物、平版インキを製造する際にフラッシュ工程を飛躍的に短縮してユーティリテイの削減と排水処理を不要にする環境に優しい紅顔料ウエットケーキ組成物、及び当該組成物を含んでなる平版インキに関する。
【0002】
【従来の技術】
溶性モノアゾレーキ顔料C.I.ピグメント レッド57:1(標準名:ブリリアント カーミン 6B)は、紅顔料としてよく知られている。
【0003】
C.I.ピグメント レッド57:1は、通常は、その色調を透明、鮮明にするため、また分散性を高めるためにロジン処理がなされている。このロジン処理は、通常2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸を含有するカップラー溶液中または、2−アミノ−5−メチル−ベンゼンスルホン酸のジアゾニウム塩と2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸とをカップリングしてなる染料中にロジンのアルカリ塩溶液を添加し、ついで塩化カルシウム等のレーキ用金属塩を添加してロジンを不溶性のロジンレーキ金属塩として顔料の表面に析出させる方法である。
【0004】
上記のロジン処理は、顔料の粒子形状を微細に制御し、透明性、鮮明性を向上させる点で有効である。しかしながら、ロジンレーキ金属塩の顔料表面への析出が不十分であると、親水性の高いC.I.ピグメント レッド57:1の顔料表面が残存するため、平版印刷適性を悪化させる事につながる。また、ロジンレーキ金属塩の生成が急速に起こるため、ロジンレーキ金属塩中に界面張力低下効果を有する未反応のロジンのアルカリ塩が残ってしまい、平版印刷適性を悪化させる事につながる。
【0005】
このような問題を解決するために、顔料スラリー中にパラフィン、アロマチック、ナフテン、オレフィンの単独または混合物を成分とする有機溶剤を添加する方法が提案されている(特開平8−269353号公報)。しかしながらこの方法で得られた紅顔料ウエットケーキを用いて製造されるインキの印刷適性は、印刷速度の高速化や、広い水幅適性が求められるようになった現在の印刷業界の要求を満足させる事は出来なくなった。
【0006】
また、地球環境の保全が求められている状況において、印刷インキ業界においても環境負荷の少ない印刷インキの製造方法の開発が求められている。従来のC.I.ピグメント レッド57:1の紅顔料ウエットケーキは、水分が70〜80重量%であるため、インキメーカーで行うベースインキ製造時のフラッシュ工程で水をデカンテーションで除去する工程(一時脱水工程)が必要となっており、ベースインキの生産性のボトルネックとして問題となっている。また、このデカンテーションで発生した排水は高いCODを有し、赤く着色しているため、排水処理が必要であり、インキメーカーのコストアップの大きな要因となっていた。
【0007】
フタロシアニン顔料のように顔料粒子表面が疎水性(非極性)の場合には、従来から、比較的容易に水分55〜50重量%程度のウエットケーキを製造する事が可能であったが、当該C.I.ピグメント レッド57:1のような溶性モノアゾ顔料は、顔料粒子表面が親水性であるためウエットケーキから水分を除くことが困難であった。
【0008】
フラッシュ工程の一時脱水工程を削減する目的で、C.I.ピグメント レッド57:1の紅アゾレーキ顔料のウエットケーキをナウターミキサーなどで部分的に乾燥して水分が55重量%以下のプレスケーキの製造を試みたが、乾燥に伴う顔料粒子の強い凝集が発現し、平版インキに用いた場合に、分散性と着色力などで劣った性能を示した。
【0009】
このカルシウムアゾレーキ顔料は、乾燥により、X線回折図において2θ(Cu−Kα:回折角度°)4.86±0.05、18.36±0.05、18.74±0.05、26.08±0.05および27.38±0.05に比較的強い回折強度を有する特徴的な結晶構造(以下、β型結晶という。)を含有していた。
【0010】
部分的な乾燥により水分を少なくしたカルシウムアゾレーキ顔料のウエットケーキは、β型結晶のみまたはそれとそれ以外の結晶型の混合物となることが判ったが、平版インキの調製に用いた場合には、分散性と着色力と透明性で劣った性能を示した。
【0011】
このように部分的に乾燥して水分の少ないウエットケーキ顔料を製造する方法は、すでに公知である。たとえば、特開昭54−123140号公報では、水分が35重量%より少ないウエットケーキが示されており、特開昭57−53568号公報では水分が20〜35重量%のウエットケーキが示されているが、いずれも部分的に乾燥する方法であるため、これらの特許を追試して得られた、C.I.ピグメント レッド57:1からなるカルシウムアゾレーキ顔料は、凝集性のβ型結晶が混在していることが判った。
【0012】
β型結晶は熱安定型であり、より不安定な、β型以外の結晶に熱をかけるとβ型結晶が生じることは、すでに知られている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、
▲1▼印刷速度の高速化や、広い水幅適性が求められるようになった現在の印刷業界の要求を満足させうる平版印刷適性を有する平版印刷インキを提供する事が可能な顔料ウエットケーキ組成物を開発する事
▲2▼平版印刷インキを製造する際にフラッシュ工程を飛躍的に短縮してユーティリテイの削減と排水処理を不要にする環境に優しい紅顔料ウエットケーキ組成物を開発する事
▲3▼上記▲1▼または▲2▼記載の当該組成物を含んでなる平版インキを開発する事
にある。
【0014】
具体的には、
▲1▼’印刷機上で、印刷インキの乳化水量の時間変動が少なく安定した印刷が可能な平版印刷インキを提供する事が可能な顔料ウエットケーキ組成物を開発する事
▲2▼’平版インキ用ベースインキを製造する際にフラッシュ工程を飛躍的に短縮し、ユーティリテイの削減と排水処理を不要にする、ウエットケーキ中の水分が少ないC.I.ピグメント レッド57:1の紅顔料ウエットケーキ組成物を開発する事
▲3▼’上記▲1▼’または▲2▼’記載の当該組成物を含んでなる平版インキを開発する事に関するものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記実状に鑑みて鋭意検討した。その結果、
(1) 溶性モノアゾレーキ顔料(B)がロジン処理されていようがいまいが、それを更に総炭素数が特定炭素数以上の高級分岐アルコール(A)で表面処理すると、その表面処理された溶性モノアゾレーキ顔料の顔料ウエットケーキ組成物は、表面処理以前のものに比べ、絶対値はともかくとして、乳化特性は相対的には、より良好となり、例えば、印刷機上で、印刷インキの乳化水量の時間変動が少なく安定した印刷が可能な平版印刷インキを提供できる事を見出した。
【0016】
また、溶性モノアゾレーキ顔料(B)のなかでは、C.I.ピグメント レッド57:1(b)を選択し、かつ、総炭素数が特定炭素数以上の高級分岐アルコール(A)として、特定一般式(I)で示される高級分岐アルコール(a)を選択して表面処理してなるC.I.ピグメント レッド57:1(b)の紅顔料ウェットケーキがより優れた効果が得られることも見出した。
【0017】
(2) ロジン処理した溶性モノアゾレーキ顔料(B)またはロジン処理したC.I.ピグメント レッド57:1(b)を用い、かつ、総炭素数が特定炭素数以上の高級分岐アルコール(A)または特定一般式(I)で示される高級分岐アルコール(a)を選択して表面処理してなる顔料ウェットケーキがより優れた効果が得られることも見出した。
【0018】
さらにまた、
(3) 総炭素数が特定炭素数以上の高級分岐アルコール(A)を表面処理してなる溶性モノアゾレーキ顔料(B)やC.I.ピグメント レッド57:1(b)の紅顔料ウェットケーキ中の水分が20重量%以上55重量以下である組成物は、平版インキ用ベースインキを製造する際にフラッシュ工程を飛躍的に短縮し、ユーティリテイの削減と排水処理を不要にする事を見出した。
【0019】
より具体的には、C.I.ピグメント レッド57:1にある幾つかの結晶型のうち、β型以外の、X線回折図において、2θ(回折角度°)4.54±0.05、11.05±0.05、20.74±0.05、および25.44±0.05に比較的強い回折強度を有する特徴的な結晶構造(以下、α型結晶という。)を有するC.I.ピグメント レッド57:1に対して、特定の一般式(I)で示される高級分岐アルコールを表面処理してなるC.I.ピグメント レッド57:1の紅顔料ウェットケーキは、濾過、圧搾等の濃縮操作により、容易に水分が20重量%以上55重量%以下である紅顔料ウェットケーキとする事が可能である事を見出した。
【0020】
なお、平版インキに使用した場合に、優れた分散性と着色力と透明性を発現するためには、紅顔料ウェットケーキ中のC.I.ピグメント レッド57:1は、α型結晶からなり、凝集性のβ型結晶の顔料が混在しないことが必要であることも見出した。
【0021】
即ち本発明は、次の発明を提供する。
1. 以下の一般式(I)で示される高級分岐アルコール(a)を表面処理してなるC.I.ピグメント レッド57:1(b)の紅顔料ウエットケーキ組成物。
【0022】
【化1】
【0023】
(式中、R1は炭素数5〜17からなるアルキル基、R2は炭素数5〜17からなるアルキル基を示す。)
【0024】
2. C.I.ピグメント レッド57:1(b)が、ロジン処理されたものである上記1記載の組成物。
【0025】
3. 紅顔料ウェットケーキ中の水分が20重量%以上55重量%以下である上記1または2記載の組成物。
【0026】
4. 上記1、2または3記載の顔料ウエットケーキ組成物とインキ用ビヒクルとを含んでなる平版インキ。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の組成物の概略は、上記に示した通りである。以後、顔料(B)、溶性モノアゾ顔料(B)及び溶性モノアゾレーキ顔料(B)は、いずれもC.I.ピグメント レッド57:1(b)と読み替えるものとする。
【0028】
本発明の組成物は、総炭素数12以上の高級分岐アルコール(A)を表面処理してなる溶性モノアゾ顔料(B)の顔料ウエットケーキ組成物である。
【0029】
本発明においてウエットケーキは、前記アルコール(A)及び顔料(B)の他に水分を必須成分として含有する。
【0031】
尚、前記アルコール(A)については、後に詳述する。
【0032】
本発明の組成物の製造方法は特に制限されるものではなく、任意の方法で、顔料(B)の表面にアルコール(A)を付着させ、水を含ませる様にすれば良い。
【0033】
本発明の組成物の製造方法としては、例えば、従来公知の溶性モノアゾレーキ顔料(B)の製造方法に準じて製造された顔料スラリー中に、総炭素数12以上の高級分岐アルコール(A)を表面処理する事により製造される。
【0035】
すなわち、
▲1▼2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸を含有するカップラー溶液中にロジンのアルカリ塩溶液を添加し、2−アミノ−5−メチル−ベンゼンスルホン酸のジアゾニウム塩とカップリングさせ、ついで塩化カルシウム等のレーキ用金属塩を添加してロジンを不溶性のロジンレーキ金属塩として顔料の表面に析出させて得られる顔料スラリー中に、
または、
▲2▼2−アミノ−5−メチル−ベンゼンスルホン酸のジアゾニウム塩と2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸とをカップリングしてなる染料中にロジンのアルカリ塩溶液を添加し、ついで塩化カルシウム等のレーキ用金属塩を添加してロジンを不溶性のロジンレーキ金属塩として顔料の表面に析出させて得られる顔料スラリー中に、
高級分岐アルコール(A)を表面処理する事により製造される。高い透明性を必要としない場合は、染料中に高級分岐アルコールを添加することも可能であるし、ロジンを存在させない状態で上記操作を行うことも可能である。
【0036】
印刷インキとして透明性が特に望まれる場合には、例えば、公知慣用のコベース(成分)やコカップラー(成分)を併用して、C.I.ピグメント レッド57:1のα型結晶及びβ型結晶以外の、別の化学構造を有するカルシウムレーキアゾ顔料を本発明の組成物に少量含ませる様にしても良い。
【0037】
この様なC.I.ピグメント レッド57:1のα型結晶及びβ型結晶以外の、別の化学構造を有するカルシウムレーキアゾ顔料としては、例えば、次のものが挙げられる。
【0038】
(X)2−アミノ−5−メチル−ベンゼンスルホン酸以外の置換基を有していても良い芳香族アミノスルホン酸からなるコベースと2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸からなるカップラーとから得られるカルシウムレーキアゾ顔料。
【0039】
(Y)2−アミノ−5−メチル−ベンゼンスルホン酸からなるベースと2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸以外の化合物からなるコカップラーとから得られるカルシウムレーキアゾ顔料。
【0040】
(Z)2−アミノ−5−メチル−ベンゼンスルホン酸以外の置換基を有していても良い芳香族アミノスルホン酸からなるコベースと2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸以外の化合物からなるコカップラーとから得られるカルシウムレーキアゾ顔料(Z)からなる群から選ばれるカルシウムレーキアゾ顔料。
【0041】
これらは、色相や結晶粒子径を制御するのに使用することが出来る。
この様なC.I.ピグメント レッド57:1のα型結晶及びβ型結晶以外の、別の化学構造を有するカルシウムレーキアゾ顔料の組成物中の含有量は、少量であれば特に制限されるものではないが、通常、前記α型結晶100重量部当たり、1.0〜20.0重量部の範囲とするのが好ましい。
【0042】
尚、上記2−アミノ−5−メチル−ベンゼンスルホン酸以外の置換基を有していても良い芳香族アミノスルホン酸からなるコベース(成分)としては、例えば1−アミノ−4−クロル−5−メチルベンゼン−2−スルホン酸、1−アミノナフタリン−2−スルホン酸、6−アミノ−4−クロル−m−トルエンスルホン酸、4−アミノ−2−クロル−p−トルエンスルホン酸、4−アミノ−o−トルエンスルホン酸、トビアス酸等が挙げられる。2−ヒドロキシナフトエ酸以外の化合物からなるコカップラー(成分)としては、例えば2−ヒドロキシナフトエ酸アミド、β−ナフトール、ナフトールAS、アセトアセトアニリド等が挙げられる。これらは、色相や結晶粒子径を制御するのに使用することが出来る。
【0043】
上記ロジンとしては、公知慣用のロジン、例えばウッドロジン、ガムロジン、トール油ロジンに代表されるようなロジン(unmodified rosin)、あるいは、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジン、酸化ロジン、マレイン化ロジンに代表されるような改質ロジン(modified rosin)等が挙げられる。これらロジンのなかでも、不均化ロジンやマレイン化ロジンは、透明性を高める点で特に好ましい。ロジンの配合量は、2−アミノ−5−メチル−ベンゼンスルホン酸と2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸とをカップリングしてなる染料に対して3〜20重量%、好ましくは、6〜15重量%である。
【0044】
本発明で用いる高級分岐アルコール(A)は、総炭素数12以上、好ましくは12〜50のものであり、公知慣用のものがいずれも使用できるが、以下の一般式(I)で示される高級分岐アルコール(a)が例えば挙げられる。
【0045】
一般式(I)
(式中、R1は炭素数5〜17からなるアルキル基、R2は炭素数5〜17からなるアルキル基を示す。)
【0046】
上記高級分岐アルコール(A)や(a)として工業的に入手可能なものとしては、日産化学工業株式会社製のファインオキソコールや、新日本理化株式会社製のエヌジェコールが挙げられる。具体的には、ファインオキソコール140(R1は炭素数7、R2は炭素数5)、ファインオキソコール1600(R1は炭素数8、R2は炭素数6)、ファインオキソコール180(R1は炭素数9、R2は炭素数7)、ファインオキソコール1800(R1は炭素数9、R2は炭素数7)、ファインオキソコール180N(R1は炭素数9、R2は炭素数7)、ファインオキソコール2000(R1は炭素数10、R2は炭素数8)、ファインオキソコール2600(R1は炭素数13、R2は炭素数11)、エヌジェコール160B(R1は炭素数8、R2は炭素数6)、エヌジェコール160BR(R1は炭素数8、R2は炭素数6)、エヌジェコール200A(R1は炭素数10、R2は炭素数8)、エヌジェコール240A(R1は炭素数12、R2は炭素数10)、エヌジェコールC32−36(R1は炭素数16、R2は炭素数16)等が挙げられる。
【0047】
上記高級分岐アルコール(A)の処理方法としては、例えば従来公知の溶性モノアゾレーキ顔料(B)の製造法に準じて製造された顔料スラリー中に、高級分岐アルコール(A)を添加し、攪拌混合する事により達成される。
【0048】
高せん断型回転式乳化分散機や高速衝突型乳化機(マイクルフルイダイザー)やビーズミルを用いて顔料スラリーと高級分岐鎖アルコールとを微細な状態にして接触効率を高める事が、表面処理を短時間に効率良く行わせる点で好ましい。
【0049】
高せん断型回転式乳化分散機の具体例としては、インラインディスパージングミキサー(YSTRAL社製)、ボックボルトホモジナイザー(ボックボルト社製)、マイルダー((株) 原製作所製)、ONLATOR((株)櫻製作所製))、ペンタックスミキサー(アルファ・ラバル社製)、SUPRATON(KRUPP社製)、キャビトロン(CAVITRON社製)が挙げられる。
【0050】
ノニオン型界面活性剤やアニオン型界面活性剤やカチオン型界面活性剤の添加により、高級分岐アルコールを微細な粒子状態(エマルジョン状態)にさせる事も効果的である。
【0051】
特に、カチオン系界面活性剤を選択して用いることにより、高せん断型回転式乳化分散機や高速衝突型乳化機の様な特殊な機構を有さない、機構が容易でより安価な汎用の乳化機又は攪拌機でも容易に本発明の組成物が得られる。これはノニオン系の界面活性剤を使用したのでは達成しにくい傾向がある。
【0052】
上記高級分岐アルコール(A)の添加量は、溶性モノアゾレーキ顔料(B)に対して1〜30重量%、好ましくは3〜20重量%、最も好ましくは5〜15重量%である。高級分岐アルコール(A)の添加量が少ないと、溶性モノアゾレーキ顔料(B)の結晶粒子径が小さく顔料の表面積が大きい場合、発明の効果を損なう事がある。また、高級分岐アルコール(A)の添加量が多いと、印刷インキの粘度が低下し、ミスチング等の印刷トラブルを起こすことがある。これらのことは、特にC.I.ピグメント レッド57:1の場合は顕著である。従って、高級分岐アルコール(A)の添加量は、上記範囲を考慮して顔料毎に最適値が設定される事になる。
【0053】
本発明において顔料ウエットケーキ組成物を得るためには、上記方法により高級分岐アルコールが表面処理された顔料スラリーを濾過・圧搾等の手段により顔料分を濃縮する事ができる。
【0054】
ウエット中の水分が80重量%以下になるまで濃縮する事により取り扱い性が容易となり、従来行われてきたインキ化方法、例えばニーダーフラッシュ法により平版インキを製造する事が可能となる。すなわち、一般式(I)で示される高級分岐アルコール(a)を表面処理してなるC.I.ピグメント レッド57:1(b)の紅顔料ウエットケーキ組成物に代表される、高級分岐アルコール(A)を表面処理してなる溶性モノアゾレーキ顔料(B)の顔料ウエットケーキ組成物を用いて製造した平版インキは、印刷機上で、印刷インキの乳化水量の時間変動が少なく安定した印刷が可能な平版印刷インキを提供出来る。
【0055】
さらに、濾過・圧搾条件を変更する事により、ウェットケーキ中の水分が20重量%以上55重量%以下である顔料ウエットケーキを容易に製造することができる。なかでも、濾過・圧搾前のC.I.ピグメント レッド57:1と高級分岐アルコールを含有する水懸濁液(スラリー)のpHを酸性領域、好ましくはpH5.3〜6.5に調整すると、ウェットケーキ中の水分が20重量%以上55重量%以下である紅顔料ウエットケーキを特に容易に製造することができる。
【0056】
ウェットケーキ中の水分が20重量%以上55重量%以下である紅顔料ウエットケーキ組成物を使用すると、インキメーカーで行うベースインキ製造時のフラッシュ工程で水をデカンテーションで除去する工程(一時脱水工程)が不要となる。これにより、ベースインキの生産性のボトルネックとして問題となっていた生産時間の短縮が図れる。
【0057】
また、従来、このデカンテーションで発生した排水は高いCODを有し、赤く着色しているため、排水処理が必要であり、インキメーカーのコストアップの大きな要因となってたが、排水が発生しないため、大幅なコストダウン、ユーティリテイの削減と排水処理を不要にする環境に優しい平版インキおよびその製造方法を提供出来る。
【0058】
本発明のウエットケーキ組成物は、溶性モノアゾレーキ顔料(B)がC.I.ピグメント レッド57:1(b)の場合には、X線回折図において、2θ(回折角度°)4.54±0.05、11.05±0.05、20.74±0.05、および25.44±0.05に比較的強い回折強度を有する特徴的な結晶構造(α型結晶)のみからなり、β型結晶を含まない事に特徴がある。C.I.ピグメント レッド57:1の結晶構造のうちα型は、熱をかけ乾燥させると、β型に変換する。
【0059】
ナウターミキサー等により紅顔料ウエットケーキの水分を蒸発させれは、ウエットケーキ中の水分を20重量%以上55重量%以下である紅顔料ウエットケーキを製造する事は容易であるが、本発明の方法により得られた紅顔料ウエットケーキに比べ、顔料結晶の成長や凝集が起こり、分散性や着色力や透明性が著しく劣り、実用に耐える印刷インキを得ることは出来ない。また、高級分岐アルコール(A)を使用することなく、超高圧化で濾過・圧搾を行えば紅顔料中ウエットケーキ中の水分を若干高めることは可能ではあるが、顔料粒子同士の凝集が強まり、分散性や着色力が著しく低下する。
【0060】
本発明の紅顔料のウエットケーキ組成物を使用すると、印刷機上で、印刷インキの乳化水量の時間変動が少なく安定した印刷が可能な平版印刷インキを提供する事、あるいは、容易に紅顔料ウエットケーキ中の水分量を下げる(顔料分を高める)事ができる機構として、ロジン処理されたC.I.ピグメント レッド57:1の紅顔料ウエットケーキ組成物を例に説明するならば、例えば次のこと等が関与していると考えられる。
【0061】
▲1▼親水性が高いC.I.ピグメント レッド57:1(b)の顔料表面と高級分岐アルコール(A)構造中のOH基との間で水素結合を形成し、顔料の表面が立体的に大きな疎水基(分岐アルキル基)で覆われ、紅顔料の親水性が低下する。
【0062】
▲2▼顔料表面に吸着出来なかったロジン金属塩が高級分岐アルコール(A)により溶解され、顔料表面上に再析出させ、ロジンの処理効率が高まり、紅顔料の親水性が低下する。
【0063】
▲3▼高級分岐アルコール(A)が顔料表面に吸着しているため、顔料の表面が立体的に大きな疎水基(分岐アルキル基)で覆われ、紅顔料ウエット中の顔料結晶同士の凝集を抑制する。
【0064】
▲4▼高級分岐アルコール(A)が顔料表面に吸着しているため、顔料の表面が立体的に大きな疎水基(分岐アルキル基)で覆われ、平版インキ用ビヒクルとの親和性が高まる。
【0065】
従って、アルコール性水酸基と立体的に大きな占有体積を占めうる分岐アルキル基を有する特定構造の高級分岐アルコール(A)を見出した点が本発明の根幹であるといえる。
【0066】
本発明の紅顔料ウエットケーキ組成物は、本発明が解決しようとする課題を十分に満足しているが、必要に応じて次のものを使用する事も可能である。
【0067】
(i)低分子界面活性剤、変成アルキッド樹脂、変性フェノール樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の表面処理剤。
【0068】
(ii)顔料の耐水性や分散性を改良する目的で、ストロンチウム、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属塩。
【0069】
(iii)フラッシュベースや平版インキの流動性を向上する目的で、高分子界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の表面処理剤。
【0070】
(iv)顔料の粒子表面を若干程度親油性にする目的で、平版インキの成分である、軽油、油脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の表面処理剤。この表面処理剤では、当該ウエットケーキ組成物の含水率を若干程度減少させることが可能である。
【0071】
上記低分子界面活性剤としては、分子量1000以下の公知慣用のものがあり、例えばアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0072】
変成アルキッド樹脂としては、例えば、アマニ油、桐油等の乾性油、大豆油等の不乾性油に基づく不飽和二重結合を分子中に含むアルキッド樹脂、或いは、乾性油ベースのアルキッド樹脂と前記不乾性油との混合物が挙げられる。変性フェノール樹脂としては、例えばロジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。
【0073】
ストロンチウム塩、アルミニウム塩、マグネシウム塩、ジルコニウム塩としては、例えば、塩化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硝酸マグネシウム、燐酸マグネシウム、塩化ジルコニウム、燐酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0074】
高分子界面活性剤としては、分子量1000を越える公知慣用のものがあり、例えば、ソルスパース3000(ZENECA社製)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンのブロック共重合体で分子量3000相当のプルロニックL−101(旭電化工業株式会社製)、分子量10000以上の水溶性セルロースエーテルであるメトローズSH−60(信越化学株式会社製)等が挙げられる。
【0075】
軽油としては、芳香族成分を含んでいても良い沸点230〜350℃の軽油、例えば沸点範囲260〜281℃を有する脱芳香族溶剤のAF−7(日本石油株式会社製)、α−オレフィンの混合物で沸点範囲が270〜310℃のダイアレン168(三菱化学株式会社製)、90%以上のパラフィン成分を含み沸点範囲が271〜338℃のIPソルベント2835(出光石油化学株式会社製)、20〜30%の芳香族成分を含み沸点範囲が276〜313℃の5号ソルベント(日本石油株式会社製)、70%以上のナフテン成分を含み沸点範囲が246〜276℃のNaphtesol H(日本石油株式会社製)等が挙げられる。油脂としては、例えばアマニ油、大豆油、桐油、サフラワー油、ひまし油等が挙げられる。
【0076】
これら(i)〜(iv)の表面処理量は、用いる表面処理剤の種類等により適宜調節すれば良い。
【0077】
本発明のウエットケーキ組成物を用いて平版インキを調製することが出来る。この平版インキは、本発明のウエットケーキ組成物とインキ用ビヒクルとを含んでなる。
【0078】
インキ用ビヒクルとしては、公知慣用のものがいずれも使用できるが、例えば変成アルキッド樹脂、変性フェノール樹脂、石油樹脂等が挙げられる。また飽和アルキッド樹脂と乾性油との混合物や、ロジンとフェノール樹脂との混合物を用いることもできる。インキの調製に当たっては、例えばn−パラフィン、イソパラフィン、アロマティック、ナフテン、α−オレフィン等の溶剤が通常併用される。必要に応じてアマニ油、桐油、大豆油等の植物油をさらに併用することが出来る。
【0079】
これらは、通常、インキ用ビヒクル20〜50重量%、上記パラフィン等の溶剤10〜60重量%、植物油0〜30重量%となる様に調製される。
本発明の紅顔料ウエットケーキ組成物からは、例えば次の様にしてインキを調製することが出来る。
【0080】
(製造方法1)インキ用ビヒクルとを混合し、フラッシング処理した後、遊離した着色排水をデカンテーションで除去(一次脱水工程)した後、加熱脱水することにより、水を含まず、顔料濃度が最終的なインキよりも高い、ベースインキとすることが出来る。
【0081】
(製造方法2)インキ用ビヒクルとを混合し、フラッシング処理した後、直ちに加熱脱水することにより、水を含まず、顔料濃度が最終的なインキよりも高い、ベースインキインキとすることが出来る。
【0082】
上記製造方法2は、本発明により得られるウェットケーキ中の水分が20重量%以上55重量%以下である紅顔料ウエットケーキを使用した場合にのみ適用可能なインキの製造方法である。
【0083】
この方法は、フランシング処理した後、高CODの着色した一次排水が発生しないので、例えば従来行っていた様な、デカンテーションなどの一次排水の分離作業を行うことなく、従来でいう二次脱水工程、即ち加熱脱水をすることが出来る。
【0084】
従来の、C.I.ピグメント レッド57:1のα型結晶の顔料からなるウエットケーキ組成物を、上記した様な高級分岐アルコール(A)による表面処理を行うこと無しに得る場合は、それらとの接触を行った場合より水分含有率を低減することが難しい。
【0085】
α型結晶の顔料からなるウエットケーキ組成物をフラッシング処理した場合、上記した様な高級分岐アルコールによる表面処理を行うか否なかにかかわらず、デカンテーションなどの水分離作業および二次脱水工程を経る中で、α型結晶からβ型結晶へ徐々に転移する。
【0086】
55重量%を越える水分量のウエットケーキ組成物の場合、デカンテーションなる作業が必要となるものの、強い凝集を有するβ型結晶の顔料を用いてフラッシング処理して得た平版インキより、分散性、着色力、透明性の点でより優れる。
【0087】
本発明においては、β型への転移を誘発させうる加熱を行うにしても、液媒体の様な媒介を介して行う様にして、β型への転移を誘発する直接加熱を行わないことで、α型を維持し、かつ、水分が55重量%以下となるように脱水を行うことで、ビヒクル中で速やかに顔料が分散するような結晶の配列の組成物を提供するものである。
【0088】
従って、それのインキ用ビヒクルへの分散性等は、加熱して顔料表面を部分乾燥して得た様なβ型結晶の同ビヒクルへの分散性等に比べて格段に良好となる。インキ用ビヒクルと混合されて加熱脱水される工程(二次脱水工程)を経て初めて、α型である結晶型がβ型のみに転移し得る。尚、α型の状態でインキ用ビヒクルへ安定分散できた場合には、この加熱脱水工程で、熱履歴により、ビヒクル中でβ型に結晶型が転移した時に、その分散性は、当初の優れた分散安定性を保持することが可能である。
【0089】
高顔料濃度のベースインキインキは、次いでインキ用ビヒクルでそれを希釈することにより、所定顔料濃度で必要な色相のインキを製造することが出来る。
【0090】
尚、インキ調製の任意の工程において、例えば硬化促進剤や、レベリング剤等の公知慣用の添加剤を併用することが出来る。
【0091】
本発明者らは、親水性表面を有するC.I.ピグメント レッド57:1のカルシウムアゾレーキ顔料のウエットケーキの水分を乾燥工程を経ることなく55重量%以下にするための研究を鋭意行った。その結果見出した有効な方法の一例を以下に挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0092】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。以下、特に断りがない限り、「部」は重量部、「%」は重量%とする。
【0093】
実施例1
2−アミノ−5−メチル−ベンゼンスルホン酸20.0部を水300部に分散後、20%塩酸22.0部を加え、0℃に保ちながら30%亜硝酸ソーダ水溶液25.1部を滴下し、ジアゾニウム塩溶液を得た。次に、2−ヒドロキシナフトエ酸20.6部を60℃の温水400部に分散後、48%苛性ソーダ水溶液20.1部を加えてカップラー溶液を得た。このカップラー溶液を0℃に冷却し、攪拌しながら上記ジアゾニウム塩溶液を滴下し、0℃で60分間攪拌してカップリング反応を終了させた後、10%不均化ロジンソーダ水溶液50部を加え、60分間攪拌して懸濁液を得た。
【0094】
この懸濁液に塩化カルシウム22部を水90部に溶解した液を加え、60分間攪拌してレーキ化反応を終了した。レーキ化反応終了後、70℃で60分間加熱しつつ攪拌し、カルシウムレーキアゾ顔料(C.I.ピグメントレッド57:1)の水中懸濁液を得た。
【0095】
この懸濁液にファインオキソコール140(日産化学工業株式会社製)6.5部を添加した後、高せん断型回転式乳化分散機により分散させた。次いで、この懸濁液のpHを6.0に調整した。このようにして得られた懸濁液を濾過、洗浄後、4kg/cm2 の力を加えて圧搾し、ウエットケーキを得た。この紅顔料ウエットケーキ中の水分は、46%であった。また、この紅顔料ウエットケーキのX線回折を測定した結果、2θ=4.54、11.05、20.75、25.45に比較的強い回折強度を有するα型結晶であった。
【0096】
平版インキ用ビヒクル150部を1Lテストフラッシャーに入れ60℃に保った後、ウエットケーキ(C.I.ピグメント レッド57:1の換算量100gに相当する量)を添加しフラッシュを行ったところ、瞬時にフラッシュが終了し、また、デカンテーションの必要がなかったため(一次脱水工程の省略)、すぐさま減圧加熱脱水(二次脱水工程という)を開始した。減圧脱水を終えて、引き続きビヒクル125部及び軽油15部を使用した希釈操作により平版用ベースインキ作製した。
【0097】
比較例1
ファインオキソコール140を添加しない事以外は実施例1に準じてウエットケーキを得た。この紅顔料ウエットケーキ中の水分は、68%であった。また、この紅顔料ウエットケーキのX線回折を測定した結果、2θ=4.54、11.06、20.74、25.44に比較的強い回折強度を有するα型結晶であった。
【0098】
平版インキ用ビヒクル150部を1Lテストフラッシャーに入れ60℃に保った後、ウエットケーキ(C.I.ピグメント レッド57:1の換算量100gに相当する量)を添加しフラッシュを行った。その結果、25分でフラッシングが起こり赤く染まった一次排水120部(COD 2000ppm)が生じた。この一次排水をデカンテーションにより除き(一次脱水工程)、次いで1時間かけて真空脱水(二次脱水工程)を行い完全にフラッシュさせた。実施例1と同様の希釈操作によりベースインキを作製した。
【0099】
比較例2
ファインオキソコール140を添加しない事、4kg/cm2 の力をかけて圧搾する代わりに8kg/cm2 の力をかけて圧搾する事以外は実施例1に準じてウエットケーキを得た。この紅顔料ウエットケーキ中の水分は、58%であった。また、この紅顔料ウエットケーキのX線回折を測定した結果、2θ=4.54、11.06、20.74、25.44に比較的強い回折強度を有するα型結晶であった。
【0100】
平版インキ用ビヒクル150部を1Lテストフラッシャーに入れ60℃に保った後、ウエットケーキ(C.I.ピグメント レッド57:1の換算量100gに相当する量)を添加しフラッシュを行った。その結果、35分でフラッシングが起こり赤く染まった一次排水50部(COD 2000ppm)が生じた。この一次排水をデカンテーションにより除き(一次脱水工程)、次いで1時間かけて真空脱水(二次脱水工程)を行い完全にフラッシュさせた。実施例1と同様の希釈操作によりベースインキを作製した。
【0101】
比較例3
比較例1で合成した紅顔料ウエットケーキを半乾燥させた。この紅顔料ウエットケーキ中の水分は50%であった。また、この紅顔料ウエットケーキのX線回折を測定した結果、2θ=4.57、4.86、11.06、18.37、18.74、20.74、25.46、26.10、27.37に比較的強い回折強度を有しするα型とβ型の混在であった。このケーキを使用し実施例1に準じたフラッシュを実施したところ一次排水は生じなかった。続けて直ぐに減圧加熱脱水を行い、実施例1と同様の希釈操作でベースインキを作製した。
【0102】
実施例2
ファインオキソコール140(日産化学工業株式会社製)6.5部の代わりにエヌジェコールC32−36(新日本理化株式会社製)4.5部を使用する事以外は実施例1に準じてウエットケーキを得た。この紅顔料ウエットケーキ中の水分は、49%であった。また、この紅顔料ウエットケーキのX線回折を測定した結果、2θ=4.55、11.07、20.76、25.45に比較的強い回折強度を有するα型結晶であった。
【0103】
また、フラッシュを行った結果、実施例1と同様に瞬時に終了し、その時一次排水は生じなかった。続けて直ぐに減圧加熱脱水を行い、実施例1と同様の希釈操作でベースインキを作製した。
【0104】
実施例3
ファインオキソコール140(日産化学工業株式会社製)6.5部の代わりにファインオキソコール180(日産化学工業株式会社製)6部を使用する事、2−アミノ−5−メチルベンゼンスルホン酸20.0部の代わりに2−アミノ−5−メチルベンゼンスルホン酸19.6部とトビアス酸0.5部を使用する事、2−ヒドロキシナフトエ酸20.6部の代わりに2−ヒドロキシナフトエ酸20部とナフトールAS0.8部使用する事以外は実施例1に準じてウエットケーキを得た。この紅顔料ウエットケーキ中の水分は、48%であった。また、この紅顔料ウエットケーキのX線回折を測定した結果、2θ=4.54、11.08、20.77、25.45に比較的強い回折強度を有するα型結晶であった。
【0105】
また、フラッシュを行った結果、実施例1と同様に瞬時に終了し、その時一次排水は生じなかった。続けて直ぐに減圧加熱脱水を行い、実施例1と同様の希釈操作でベースインキを作製した。
【0106】
実施例4
70℃で60分間攪拌した後にファインオキソコール140を添加し高せん断型回転式乳化分散機により分散させる代わりにレーキ化直後にエヌジェコールC160B(新日本理化株式会社製)6.5部を添加し高せん断型回転式乳化分散機により分散させる事以外は実施例1に準じてウエットケーキを得た。この紅顔料ウエットケーキ中の水分は、45%であった。また、この紅顔料ウエットケーキのX線回折を測定した結果、2θ=4.56、11.05、20.76、25.47に比較的強い回折強度を有するα型結晶であった。
【0107】
また、フラッシュを行った結果、実施例1と同様に瞬時に終了し、その時一次排水は生じなかった。続けて直ぐに減圧加熱脱水を行い、実施例1と同様の希釈操作でベースインキを作製した。
【0108】
実施例5
不均化ロジンソーダ水溶液50部の代わりにマレイン化ロジン水溶液65部を加える事以外は、実施例1に準じてウエットケーキを得た。この紅顔料ウエットケーキ中の水分は、43%であった。また、この紅顔料ウエットケーキのX線回折を測定した結果、2θ=4.56、11.05、20.77、25.45に比較的強い回折強度を有するα型結晶であった。
【0109】
また、フラッシュを行った結果、実施例1と同様に瞬時に終了し、その時一次排水は生じなかった。続けて直ぐに減圧加熱脱水を行い、実施例1と同様の希釈操作でベースインキを作製した。
【0110】
実施例6
ファインオキソコール140(日産化学工業株式会社製)6.5部を添加する代わりに、エヌジェコール160B(新日本理化株式会社製)3.5部とAF−7(日本石油株式会社製軽油)3.0部を使用した以外は実施例1に準じてウエットケーキを得た。この紅顔料ウエットケーキ中の水分は、40%であった。また、この紅顔料ウエットケーキのX線回折を測定した結果、2θ=4.55、11.05、20.76、25.47に比較的強い回折強度を有するα型結晶であった。
【0111】
また、フラッシュを行った結果、実施例1と同様に瞬時に終了し、その時一次排水は生じなかった。続けて直ぐに減圧加熱脱水を行い、実施例1と同様の希釈操作でベースインキを作製した。
【0112】
比較例4
ファインオキソコール140(日産化学工業株式会社製)6.5部の代わりにAF−7(日本石油株式会社製軽油)6.5部を使用する事以外は実施例1に準じてウエットケーキを得た。この紅顔料ウエットケーキ中の水分は、60%であった。また、この紅顔料ウエットケーキのX線回折を測定した結果、2θ=4.54、11.06、20.76、25.46に比較的強い回折強度を有するα型結晶であった。
【0113】
平版インキ用ビヒクル150部を1Lテストフラッシャーに入れ60℃に保った後、ウエットケーキ(C.I.ピグメント レッド57:1の換算量100gに相当する量)を添加しフラッシュを行った。その結果、20分でフラッシングが起こり赤く染まった一次排水55部(COD 1800ppm)が生じた。この一次排水をデカンテーションにより除き(一次脱水工程)、次いで1時間かけて真空脱水(二次脱水工程)を行い完全にフラッシュさせた。実施例1と同様の希釈操作によりベースインキを作製した。
【0114】
実施例7
4kg/cm2 の力で圧搾する代わりに2kg/cm2 の力で圧搾する事以外は、実施例1と同様にしてウエットケーキを得た。この紅顔料ウエットケーキ中の水分は、68%であった。また、この紅顔料ウエットケーキのX線回折を測定した結果、2θ=4.54、11.05、20.75、25.45に比較的強い回折強度を有するα型結晶であった。
【0115】
平版インキ用ビヒクル150部を1Lテストフラッシャーに入れ60℃に保った後、ウエットケーキ(C.I.ピグメント レッド57:1の換算量100gに相当する量)を添加しフラッシュを行った。その結果、15分でフラッシングが起こり赤く染まった一次排水145部(COD 1400ppm)が生じた。この一次排水をデカンテーションにより除き(一次脱水工程)、次いで1時間かけて真空脱水(二次脱水工程)を行い完全にフラッシュさせた。実施例1と同様の希釈操作によりベースインキを作製した。
【0116】
実施例8
4kg/cm2 の力で圧搾する代わりに2kg/cm2 の力で圧搾する事以外は、実施例2と同様にしてウエットケーキを得た。この紅顔料ウエットケーキ中の水分は、65%であった。また、この紅顔料ウエットケーキのX線回折を測定した結果、2θ=4.54、11.05、20.75、25.45に比較的強い回折強度を有するα型結晶であった。
【0117】
平版インキ用ビヒクル150部を1Lテストフラッシャーに入れ60℃に保った後、ウエットケーキ(C.I.ピグメント レッド57:1の換算量100gに相当する量)を添加しフラッシュを行った。その結果、15分でフラッシングが起こり赤く染まった一次排水115部(COD 1400ppm)が生じた。この一次排水をデカンテーションにより除き(一次脱水工程)、次いで1時間かけて真空脱水(二次脱水工程)を行い完全にフラッシュさせた。実施例1と同様の希釈操作によりベースインキを作製した。
【0118】
比較例5
ファインオキソコール140を添加しない事、4kg/cm2 の力をかけて圧搾する代わりに2kg/cm2 の力をかけて圧搾する事以外は実施例1に準じてウエットケーキを得た。この紅顔料ウエットケーキ中の水分は、75%であった。また、この紅顔料ウエットケーキのX線回折を測定した結果、2θ=4.54、11.06、20.74、25.44に比較的強い回折強度を有するα型結晶であった。
【0119】
平版インキ用ビヒクル150部を1Lテストフラッシャーに入れ60℃に保った後、ウエットケーキ(C.I.ピグメント レッド57:1の換算量100gに相当する量)を添加しフラッシュを行った。その結果、30分でフラッシングが起こり赤く染まった一次排水205部(COD 2000ppm)が生じた。この一次排水をデカンテーションにより除き(一次脱水工程)、次いで1時間かけて真空脱水(二次脱水工程)を行い完全にフラッシュさせた。実施例1と同様の希釈操作によりベースインキを作製した。
【0120】
試験例1
作製したベースインキ66部、実施例1中のビヒクル28部及び5号ソルベント計6部を3本ロールにて練肉分散し、平版用濃色インキを得た。
【0121】
(分散性)グラインドゲージを用いて各濃色インキの分散性を評価した。
◎:特に良好 ○:良好 △:やや良好 ×:劣る
【0122】
(透明性)各濃色インキを展色し、透明性を目視により判定した。
◎:特に良好 ○:良好 △:やや良好 ×:劣る
【0123】
(乳化適性)上記の透明性評価で使用した濃色インキ50部と蒸留水50部を、INK−WATER EMULFICATION TESTER MODEL:D−10(DUKE CUSTOM SYSTEM社製)を用いて混練し、1分、2.5分、5分、10分、20分、30分経過時の乳化インキ中の乳化水量を測定した。一般的には、DUKE乳化試験機の混練時間が長くなるにつれて乳化水量が増加・変動する。DUKE乳化試験機の乳化水量の増加が少ないインキは、印刷機上での乳化水量の増加・変動が小さく、安定した印刷が可能な平版印刷インキを提供する事が可能とされている。乳化水量の増加・変動を下記基準により判定した。
【0124】
◎:混練時間2.5分以降、乳化水量が一定となる。乳化適性が特に良好。
○:混練時間5分以降、乳化水量が一定となる。乳化適性が良好。
△:混練時間10分以降、乳化水量が一定となる。乳化適性がやや良好。
×:混練時間20分以降も乳化水量が一定とならない。乳化適性が劣る。
【0125】
評価結果を下表1にまとめた。
【0126】
【表1】
表 1
【0127】
【発明の効果】
本発明の組成物は、溶性モノアゾレーキ顔料の表面が総炭素数12以上の高級分岐アルコールにて処理されているので、例えば平版インキを調製する様な場合において、印刷機上で、印刷インキの乳化水量の時間変動が少なく安定した印刷が可能な平版印刷インキを提供する事が可能である。また、溶性モノアゾレーキ顔料が、C.I.ピグメント レッド57:1のα型結晶のみで、かつ水分量が55重量%以下であるものは、平版インキ用ベースインキを製造する際にフラッシュ工程を飛躍的に短縮し、ユーティリテイの削減と排水処理を不要にする事が可能である。
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