JP4419107B2 - 小型モータおよびその組立方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転動作時のモータ自身から発するメカニカルノイズの静音性を向上させるとともに、さらなる小型化を実現した低騒音の超小型モータと、その小型モータの組立方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ポケットベルや携帯電話等の携帯通信端末の無音呼出し用振動発生源やマイクロマシン用駆動動力源、及び内視鏡等の精密医療機器などでは、様々な特定用途で超小型モータが利用されている。この小型モータに要求される主な特性としては、一般的には「軽薄短小」の小型化が望まれ、この技術には長年に渡り研究が進められてきた。しかし一方では、さらなる特定用途向けに、特に「静音性」が小型化と共に平行して強く望まれることが多々あるが、特性に優れたものは未だ開発されていない。。
【0003】
ここで、一般的な軽薄短小化が進む従来の小型モータの一例である円筒型のコアレスモータ100の部品構成について、図8を用いて説明する。
図8は、極小径の円筒コアレスモータ100の構成を説明する分解斜視図であり、このコアレスモータ100は、主に磁気作用により回転駆動力を発生する動力部110側と、動力部110に外部電源からの電力を伝達する給電部120側から概略構成され、その別個の組み込み部品の動作から、構成上、回転する回転子側とそれを支える固定子側とに分かれている。
【0004】
上記の動力部110は、中空円筒状に巻回されたコイル111、及びコイル111の軸中心を貫通する駆動軸112、及び前記コイル111を駆動軸112に固定し、かつ駆動軸112の一端に設けられる複数のコミ片を周縁に配する整流子114部分を一体にモールド成形した固定具113、とからなる回転子側を、固定子側であるハウジングケース116中心部に位置する円筒型の界磁磁石115の中心穴部に、駆動軸112が挿通するように設けられ、さらに、同心円状に形成された前記回転子のコイル111が、同界磁磁石115を内包する位置で、略円筒型のハウジングケース116の内部に双方が間隙を介して納められることにより主要部が構成されている。
【0005】
ここで、駆動軸112はハウジングケース116の端部に設けられた軸受117及び他方ベアリングハウス119に支持された軸受118によって回転自在に軸支されているとともに、摺動摩擦を低減するスペーサーリング90を間に装着して組み込まれている。
【0006】
また、給電部120は、前記ハウジングケース116の開口端側の内径壁に嵌合する樹脂製のブラシ台121と、ブラシ台121のブラシホルダー部に互いに点対称な配置で開放先端部がそれぞれ対向するように設けられた略V字形状の一組のブラシ122と、これら一組のブラシ122の他端部をそれぞれモータ制御用の回路基板、又は外部電源側に接続する二本のリード線123から構成されている。
【0007】
ここで、一組のブラシ122の隙間中心部には前記駆動軸112の一端側(固定具113周縁部)の整流子114部分が、ブラシ122を弾性変形させつつ差し込まれる。また、同一組のブラシ122は、整流子114及び駆動軸112を差し込むために、ブラシ台121の端部平面に設けられた調整口から冶具でブラシ分けされ、機械的にブラシ片を弾性変形して中心部分に隙間を空けてから回転子の整流子114部分が挿入され、接触面が摺接状態で組み合わせて配置される。
【0008】
すなわち、前記コアレスモータ100は、リード線123、ブラシ122…、整流子114を介して給電された円筒巻線のコイル111に発生した磁界と、永久磁石である界磁磁石115の磁界と、の間に生じる磁気反発力および吸引力により、前記回転子側が起動して回転出力する円筒型のコアレスモータである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような上述したコアレスモータ100の部品構成、つまり外枠のハウジングケース116とブラシ台121との嵌合取り付けの組み込み状態では、回転子を保持する軸受部の配置、及びブラシと整流子との摺動接点部の配置等により、回転動作時のメカニカルな騒音を遮音できる構造ではなく、ハウジングケース内で発生するノイズは構造上、その騒音の多くはハウジングケース端部の樹脂製ブラシ台側、強いて言うならばブラシ分け用調整口部分の隙間から漏れてしまい、特定用途の市場が求める「静音性」を十分に満たすことはできなかった。
【0010】
そこで本発明は、この「静音性」を重要視して、動作時の騒音レベルを飛躍的に改善するため、ブラシと整流子の摺接部の位置と軸受け摺動部分の配置、及び回転子を取り囲むケース部品の材質、及び部品寸法的に嵌合部の隙間を無くして組立時の密閉性を向上させた設計、かつ、従来よりも部品点数を少なくし、それぞれの部品をまとめて給電部のブラシ分けの挿入組立作業が容易になるような小型モータを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明では、図1に一例を示すように、コイル4と界磁磁石3とを、該コイル4が回転自在となるようにそれぞれ間隙を設けてハウジング2内に配置し、かつ前記コイル4の内径側一端の回転中心位置には、固定具4aの軸中心で支持された出力用の駆動軸5を有すると共に、整流子片を周縁上に並べて一体にモールドした整流子4dを配置した固定具4aがあり、前記駆動軸の出力側を除く回転子が、該回転子側の駆動軸5を二点間で軸支する一組の軸受8を有するフランジ7と前記ハウジング側とのモータケース内に収納され、外部電源部と導通する給電端子62とブラシ62bとを介して前記回転子のコイル4に給電して磁界を発生させることにより、前記コイル4および駆動軸5の回転子出力軸を回転させる小型モータにおいて、前記ケースはハウジングとフランジの二分割の剛性材料を用いて作製され、かつ前記ケースのハウジング側円周側面には給電部突出用の開口部を設け、この開口部から前記給電部をケース外部に突出する構造とし、さらに前記給電端子を保持するブラシベースをケース径方向内部に収納して、開口部全体をブラシベース突出部分外形で塞ぎ、かつハウジングと嵌合固定するフランジと組み合わせることにより、ケース内部を密閉状態に閉じた構造とした小型モータである。
【0012】
この請求項1に記載の発明によれば、金属等の剛性材からなる前記ハウジングとフランジとからなる組み合わせたケース内部に、前記界磁磁石と前記コイル及び前記給電部とを収納し、前記駆動軸を外部に出すための出力軸用の孔は、回転子の駆動軸が送通され、軸を軸支する少なくとも一個以上の軸受により摺動嵌合状態で密閉が保たれるので、前記ケース全体は外部と完全に遮断された状態で閉じた構造となる。
【0013】
このため、従来のブラシ分け用の調整口が設けられた樹脂製のブラシ台など、メカニカルな駆動音等の騒音を伝えやすい部品で、かつ外部と連通した隙間が多い従来構造のケースと比べて、遮音性能は格段に向上する。従って、従来構造と比べてモータの駆動音は空気を伝わって外部に漏れにくく、また、前記給電端子のブラシベース部分をモータの中心部のハウジング開口端部に設置し、径方向側面外方に取出しながら、開口部に栓をする形で、なおかつフランジ部分とハウジング部分の嵌合力により押圧固定する組立構造としたため、ケース内の密閉性が得られる。
【0014】
また従来と比べてブラシ台部分を厚み方向で薄くできたので、小型モータの軸方向の長さ寸法を短くできる。さらに摺動騒音の発生源となるブラシと整流子の摺接場所をほぼモータケースの中央部分に配置したので、静音性を得やすい構造となる。
【0015】
ここで、前記密閉構造の小型モータとしての応用例は、図1などのコアレスモータの他、例えばコアードモータなどのブラシ摺動音、回転子の風切り音等を発生する小型モータなどが考えられる。
【0016】
次に、この請求項1に記載の発明は、例えば請求項2に記載するように、前記界磁磁石は、前記ケース内に立設する固定手段(例えば支軸22)を該磁石内部に受け入れる形態、逆な見方では固定手段(例えば支軸22)によって支持され、前記ケース内に保持固定されている構成としてもよい。この場合は、例えば従来型の前記ケース116と別体のベアリングハウス119等の薄肉円筒のパイプをケース先端小径部内側に圧入し、そのパイプ他端外周に前記界磁磁石を填めたりする必要がないため、前記ケース内壁と前記界磁磁石との隙間を精度よく最小限の幅にすることができる。従って、前記ケース外径を小さく設計できる為、小型モータはさらに小径になる。
【0017】
また、この請求項2に記載の発明は、請求項3に記載するように、前記固定手段を磁性体材料で成型してもよい。この場合は、前記固定手段もモータを磁気的に動作させるバックヨークの働き、つまり界磁磁石の一部として機能するため、前記界磁磁石として必要な大きさを多少小さくすることができる。従って、小型モータをさらに小さくでき、界磁磁石の重量も軽量化できる。
【0018】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の小型モータにおいて、前記整流子は、界磁磁石を貫通しない構成の前記駆動軸端部の円筒コイル内径との固定具円盤状から突出した部分(図4の4b部分)円周の周縁部に設けられており、対する給電部分は、該整流子の円周方向外方に向かって前記ハウジング開口部から外に飛び出しているブラシベースの凸部を備え、その凸部端面に一組の給電端子を設けている。
【0019】
この請求項4に記載の発明によれば、例えば請求項5に記載するように、前記界磁磁石と、前記回転子コイルとを組み合わせて設置した後、前記回転子駆動軸の出力端を、前記ブラシベースの一組の給電端子のブラシ分け導入部の間の、前記整流子より幅の広い箇所(W)に通した後に、前記ブラシベース本体を、前記ブラシベースの凸部が前記ハウジング側の開口部に向くように斜めにした状態で、該ハウジング内に落とし込みながら回転子全体をハウジング内に挿入し、前記ブラシベースの挿入組み込み角度を調整することにより、前記ブラシベースの凸部を前記ハウジング開口部に填め込むとともに、前記ブラシベースに対する前記整流子の位置を動かして、該整流子を前記一組の給電端子の他端側のブラシ片で挟み、さらに回転子側の駆動軸を二点間で軸支する前記フランジ部材を軸方向から対向させ駆動軸に挿通させ、フランジ部材の填め合い端部でブラシベースを押圧支持しながら、ハウジング側開口端部と嵌合固定し、ケース内を密閉構造にすることができる。
【0020】
より詳細には、ブラシベースの取り付け及びブラシ分け工程としては、前記給電端子の一組のブラシ片の間隔は、前記ブラシベースに設置したブラシの一端側が、前記整流子径寸法より広く形成されているため、前記整流子部分は前記一端側、すなわち前記ブラシベースの凸部側方向から無理なく前記給電端子のブラシ片間に入り込む。さらに、前記給電部ブラシベース部品の組み込み角度を調整して、前記ブラシベースの凸部を前記ハウジング開口部に填めるにつれて、前記整流子部分は前記給電端子の幅広部分から続くブラシ先端側摺接部に、テーパー角度に沿って無理なく移動して挟まれることとなる。
【0021】
すなわち、前記給電端子のブラシ片を、従来方法のブラシ分けの専用冶具を用いて機械的に押し広げる作業なしに、このブラシ片の間に前記整流子部分を挟み込むことができる。従って、該小型モータの組立作業は容易になるとともに、前記従来の給電部ブラシ分け作業のように、ブラシ片を広げすぎることに起因したブラシ圧不足による接点箇所での歩留まり低下も起こりにくくなる。
【0022】
なお、請求項5においては、前記給電部のブラシベースを前記ケースの開口部に挿入してハウジング内に落とし込む際、該ブラシベースの凸部の突出部分が前記ケース側開口部に填め合い嵌合で抜け止めを設けて圧入固定してもよく、この場合、ブラシベースは独立してハウジング側に固定され、密閉性はさらに向上する。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図7を用いて、本発明の一実施例であるコアレスモータ1(小型モータ)の構成について説明する。
図1は前記コアレスモータ1の断面構造概略図で、図2(A)、(B)は、それぞれ、前記図1のコアレスモータ1に減速機のギアボックス10を取り付けた状態での正面外観概略図および側面外観概略図である。また図3(A)、(B)は、それぞれ、開口部があるハウジング2の側面外観概略図及び内部の断面概略図である。
【0024】
また、図4(A)、(B)は、それぞれ、正面概略図および回転子のハブモールド部分の固定具4a、駆動軸5をインサートした状態の断面概略図であり、また図5(A)、(B)は、それぞれ、駆動軸5のシャフトのみの側面概略図および背面概略図である。さらに図6(A)、(B)は、それぞれ、給電端子部分の構成要素であるブラシベース6の正面概略図及び断面概略図であり、また図7(A)、(B)は、それぞれ、ハウジング2と嵌合するフランジ7の形状を示す正面概略図および側断面概略図である。
【0025】
まず、本発明のコアレスモータ1の構成について説明する。
コアレスモータ1は、例えば図2に示すように遊星歯車機構等を有する周知の減速機10のギヤボックス部分を取り付けた形態で通常用いられ、図1に示すように、ハウジング2(ケースの一方の構成要素)の軸中心に界磁磁石3を支軸22で固定し、この界磁磁石3の周囲を囲うように円筒コイル4を回転自在に配置させ、また、ハブモールドの固定具4aを用いて円筒コイル4の回転中心に駆動軸5を固定保持し、さらに、ブラシベース6(給電部分)の給電端子に接続されたブラシ62bが、固定具4aの周縁上の一部に設けた整流子4dに摺接するように配置し、このブラシベース6の凸部61をハウジング2の開口部23内径側から外に飛び出させ、さらに、フランジ7(ケースの他方の構成要素)を用いてハウジング2の開口端部側全体を閉じた密閉構造である。
【0026】
また図1及び図7に示すように、このフランジ7の内径位置には、回転子側の出力軸としての駆動軸5の先端5dをケース外部に出すための孔71を有しており、この円筒状の孔71の軸方向ほぼ両端には、図1に示すように、それぞれ、駆動軸5を回転自在に保持するための軸受8が二点間距離を設けて配置されている。すなわち、コアレスモータ1は、ハウジング2とフランジ7とにより形成される高剛性材からなる二分割のケース内部に、コイル4、固定具4a、整流子4d…などの回転子部分、及びブラシ62bを保持するブラシベース6のほぼ全体とを納め、回転動作時に発生する駆動の騒音源である整流子4dとブラシ62bの摺接箇所を密閉ケースの中心位置に配置した構造である。
【0027】
このハウジング2は、例えばステンレスなどの金属製の剛性材料からなり、図1、及び図3(A)、(B)に示すように、円筒パイプ材料の一端面を絞ってカップ形状とし、カップ状の底部2aを肉厚に盛り上げて中心に孔21を設け、この孔21に磁性体材料等からなる支軸22(固定手段)を差し込んで固定し、さらに、カップ状縁の上端側面に開口部23を横長に設けた構成である。
【0028】
ここで、ハウジング2のカップ状開口端部側の内壁には段差部24を設けてある。この段差部24は、開口部23を設けた穴底部縁付近を境にして底部2a側で肉厚なハウジング構造をしており、詳細を後述する組立作業においてブラシ台6の固定位置決めを容易に行えるようにするためのものである。また、開口部23の位置は、後述する固定具4aの周縁上に設けられた整流子4dの位置関係に合わせ、その開口形状と配置は、嵌合するブラシベース6の凸部61の形状と大きさによって適宜調節することにより、密閉を保つことができる。
【0029】
また界磁磁石3は、例えば周知の希土類磁石材料からなり、その形状は、例えば図1に示すようにハウジング2の内径よりやや小さい円柱形状とするとよく、また、その円柱中心には、ハウジング2の固定子側の支軸22を受け入れるための孔31を設け、この孔31は、図1に示すように界磁磁石3中心を貫通するように設けてもよいし、支軸22の長さによりやや深い程度で中間位置までの止め孔としてもよい。また、従来の構造では、円筒状界磁磁石の内径にベアリングハウス(図8に示す部品119)が嵌合され、さらにベアリングハウスと間隙を介して挿通される回転子の駆動軸(図8に示す部品112)が界磁磁石内径に全て配置されるが、本発明の界磁磁石3の取り付け構造では、前記固定手段の支軸22の径は、回転子駆動軸5より小径化が可能で、また支軸22を短く設定することにより、界磁磁石3の体積(又は重量)は従来より省スペース化でき、小径化できる。
【0030】
すなわち、界磁磁石3は支軸22によって軸中心位置で支えられ、かつ、ハウジング2の底部2aを円柱型磁石端面の受け台とすることにより、ハウジング2内部に強固に固定保持される。また、界磁磁石3を支える支軸22も磁性体により作製したため、界磁磁石のバックヨークとして機能する分、磁気的な特性は従来と比較して効果的である。
【0031】
またコイル4は、周知のコアレスモータの円筒コイルと概略同じ巻線の構成であり、エナメル線を円筒巻形に巻き付けて成形した中空円筒構造である。このコイル4の径は、例えば図1に示すように、ハウジング2の内径寸法よりやや小さく、また、界磁磁石3の外径よりやや大きい程度で、芯円度が高精度で要求される寸法形状に仕上がっている。
【0032】
また回転子のハブモールド部分の固定具4aは、例えば射出成形に適した樹脂製であり、図4の各図に示すように、略円板の中心に突部4bを設け、さらに、突部4bの中心に、回転抜け止め形状を一端に形成した図5の駆動軸5を、樹脂成形でモールドしてインサートして設けた構成である。ここで、固定具4aにインサートされる駆動軸5は、従来のコアレスモータでは一般的な、円筒磁石を貫通する方向、つまり円筒コイル内径を駆動軸の出力側が貫く形態ではなく、コイルとは互いに反側に配置する構造となる。
【0033】
このように回転子の部品構成としては、固定具4aの外径寸法は前記コイル4の内径と概略等しく、固定具4aの円周方向側面はコイル4内径の一部の面で接着固定されて、円筒コイル内径側に駆動軸のシャフトが貫通して突出しない回転子が形成されている。
【0034】
また、図4に示すように、突部4bの外周部には複数の金属片からなる整流子4dが配置され、前記駆動軸5と同様に、射出成形により固定具4aでインサートモールドされている。この整流子4dの一部は、固定具4aに外周で固定されたコイル4のタップ引出し線と整流子片の接続部4eで結線され、コイル4と導通する。
【0035】
次に駆動軸5は、例えば金属製のシャフトであり、図5に示すように、一端側を、出力軸先端5d側とは形状を変え、他の部分より径を細くすることにより、グリップ部5aを形成し、また、グリップ部5aの端部5b側には、駆動軸5が固定具4aに対して抜け止め、及び回り止めとなる部分5cが設けられている。ここで、グリップ部5aを細くすることにより、モールド成形による固定具4aの突部4bの外径、すなわち図4に示す整流子片部分の外径寸法を細くすることができ、従って、コアレスモータ1の回転動作時において、整流子4dとブラシ62bとの摺接時の摺動速度を多少低くできるため、ブラシ片の摩耗度合いの量の減少などにより、整流子4dの寿命が向上する。
【0036】
またブラシベース6は、図6に示すように、一般的な樹脂などの絶縁材料から作製されており、外径はハウジング2の径方向断面寸法よりやや小さい径で、薄板状円板の中心に、前記整流子4d部分を挿通すための孔63を設け、さらに、外周の一部に、前記ハウジング2の開口部23に嵌合する凸部61を設けた構成である。
【0037】
このブラシベース6本体の突出部を除く主要部分は、ハウジング2の内径の中に収まるが、前記凸部61部分はハウジング2の開口部23と嵌合して、開口部23から径方向に突出してはみ出る構成となる。また、ブラシベース6の凸部61から中心の孔63に架けての板面部分には、厚み方向に凹部形状の段差が、凸部61外周端から孔63まで通じる溝61aとして二カ所に、互いに中心径方向に平行に設けられ、これら二カ所の溝61aに、それぞれ給電端子62を、互いに対向するように幅狭の溝ホルダー部61bに圧入して填め込んで固定する。
【0038】
また、給電端子62の内方先端部には、整流子4dに直接摺接するブラシ62bが各給電端子62と金属間接合され、それぞれが対称に取り付けた構造である。また給電端子62は板状で剛性を有しており、その先端部は互いに内側に曲げられており、また、ブラシ62b片は、例えば図6の点線のように弾性変形を持たせるために、給電端子62より細く、かつバネ性のある耐食性等を考慮した合金金属材料で形成されている。
【0039】
すなわち、給電端子62のブラシ62bは、孔63中心方向に向かうにつれて互いの間隔が狭くなるテーパー状で、互いのブラシ62bの間隔は、少なくとも凸部61側の導入部(W)が整流子4dの径寸法より大きくなるようにし、かつ、先端部側は整流子4dの径より細くなるようにし、図6の点線のようにブラシ先端側が整流子4dにより押し広げられて弾性変形する設定とするとよい。
【0040】
またフランジ7は、例えば金属製の剛性材料で作成され、図1および図7に示すように、略円筒の一端側をハウジング2側の外径より細径にして延ばし、前記回転子の駆動軸5を挿通するための孔71は、軸方向に長く延設した形状となっている。このフランジ7の孔71の内径には、前記軸受8が二点間距離を隔てて、孔71の両端に配置される設計である。またフランジ7の他端面側には、組み込まれるハウジング2のカップ状の開口端内径面に嵌合する部分としての填め合い部分72を設けた形状である。
【0041】
次に、コアレスモータ1の組立方法について、図1を用いて説明する。
まず、固定子のハウジング側として、ハウジング底部の孔21に支軸22を差し込んで圧入固定し、さらに、ハウジング2の開口端側から界磁磁石3を、支軸22に界磁磁石3中心の孔31を差し込んでハウジング底部に収納し、例えば接着剤を用いてハウジング2の底部2aに固着する。または、支軸22に界磁磁石3を固定してから、支軸22と界磁磁石3とを同時にハウジング底部2aの孔21に収納固着してもよい。
【0042】
次に、回転子として、図4及び図5に示すように、モールドする射出成形金型内に駆動軸5のグリップ部5a及び端部5bの回り止め部分(5cを含む)と、駆動軸5の円周方向周縁に複数の整流子4d片とを金型の所定の位置に配置した後、樹脂を流し込んでモールドによる固定具4a部分を成形する。さらにコイル4内周側と固定具4aの外周を接着固定して一体に取り付け、さらに、コイルタップ引き出し線を整流子の接続部4eで結線し、回転子側を完成させる。
【0043】
次に、完成した回転子部品のコイル4側から、駆動軸5をハウジング2の外側に向けた状態で、カップ型のハウジング2の内壁と、ハウジング内に設置した界磁磁石3外周部との間隙に挿入して差し込む。
【0044】
次に、駆動軸5の出力先端側5dにブラシベース6の孔63を通し、さらに、一組の給電端子62の先端部のブラシ62bの間(図6に示す空間W)に、整流子4a部分(正確には固定具の突部4b部分から)を徐々に挿通する。ここで、二つのブラシ62bの間隔は、凸部61側が整流子4d径寸法より広く形成されているため、挿通する工程においてブラシ62bの先端部の間隔はそれに従い徐々に広げられる。
【0045】
次に、ブラシベース6を、前記ブラシベース6の凸部61がハウジング2の開口部23内径側から穴に挿入されるように向け、駆動軸5の軸方向に対して斜めにした状態で、駆動軸5から続く固定具4dの先端突部4bが、ブラシ62bの間に入り込み、ブラシ分けされた状態でハウジング2内に落とし込まれる。このように、前記ブラシベースの凸部61と開口部23の径方向の嵌合位置が重なるように、互いの位置を調節して取り付ける。
【0046】
なお、この組み込み工程において、ハウジング2には図3(B)に示すように、ハウジング内径側に段差部24を設けているので、ブラシベース6は段差により必要以上にハウジング2内方に落ち込むことはない。
【0047】
このように、ブラシベース6をハウジング2の段差部24でハウジング2の底面と平行にし、回転子軸方向に対して位置決めする。ここで、ブラシベース6の凸部61外周形状と開口部23の内形状とは、嵌合填め合い寸法で一致しているため、凸部61は開口部23を完全に塞ぎながら固定され、ハウジング2外部に出る。
【0048】
また、ブラシ62bの間には整流子4dが位置することとなるが、ブラシ62bの間隔は、凸部61側が整流子4d径より広く形成されているため、組み込みの際、整流子4dは凸部61側方向から無理なくブラシ62bの摺接部分の間に入り込み、図6の点線位置まで弾性変形状態で広げられる。従って、ブラシ62b片を機械的に冶具を用いて広げることなく、一組のブラシ62bの間に、整流子4dを挟み込む作業、すなわちブラシ分け作業を容易に行うことができる。
【0049】
次に、ハウジング2と組み合わされて嵌合する他方の固定子として、フランジ7を組み込む。この組み込みは、図7に示すフランジ7の孔71の両端に軸受8を固定し、この軸受内径に、前記工程で組み込んだハウジング2より飛び出た部分の駆動軸5の先端5dを差込んでいくことにより、フランジ7をハウジング2側に填め込んで、例えば填め合い箇所を接着剤、またはスポット溶接等を用いて互いに接合固定することで図1のような小型モータとして完成する。このときハウジング2とフランジ7の填め合い部分の寸法設定は、多少、嵌合圧入程度の設定が望ましい。
【0050】
なお、本発明は上記実施例に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形できる。例えば図2に示すように減速用ギアボックス10をフランジ側端部に取り付けて、出力軸のトルクを増して使用しても良いし、そのままモータ単体で用いる構成としてもよい。また、ハウジング2のフランジ7との嵌合部分(填め合い部分)で強度的な変形等の問題が生じなければ、前記開口部23はハウジング2のカップ状開口部縁につながる切り欠き構造としてもよく、フランジ7側との密閉性が確保できるならば、特に限定することはない。
【0051】
【発明の効果】
以上より、本発明の小型モータによれば、ハウジング2とフランジ7とにより形成される遮音効果の高い剛性材からなるケースの内部に、回転子整流子と固定子ブラシとの摺接部分をケース中央部に納め、さらに給電端子のブラシベースの一部を、ケース外部に出すためのハウジング2に設けた開口部23と嵌合させて、ケース内部の空間を、ケース外部とほぼ完全に遮断して閉じた構造としたので、詳細を上述したように、従来例と比べて、モータの動作駆動音はケース外部に騒音となって漏れにくくなり、特定用途にも使用できる「静音性」に優れた低騒音小型モータが得られる。
【0052】
また、界磁磁石3を支える支軸22を磁性体材料で作製すれば、バックヨーク素材としても有効であり、界磁磁石として必要な体積は従来と比較して少なくて済む。また支軸22による界磁磁石3の固定構造では、回転子駆動軸5が界磁磁石内を貫通しないので、構造上、回転子駆動軸5より細径にすることが可能であり、界磁磁石3の内径孔31を小径、または短くすることもできる。従って、小径化に伴うコアレスモータに必要な界磁磁石の重量(体積)は、従来よりも少なくて済み、界磁磁石の磁気的な出力を維持したままコアレスモータを小さくできる。
【0053】
また、給電端子62部分を、ケース中央のハウジング円周側面から取り出す構造とし、ブラシベース6を略円盤板状にしたため、コアレスモータの円筒軸方向の長さ寸法を短くでき、かつ、従来と比べて組み込み部品を簡素化し、部品点数を少なくしたので、モータの構成は簡単になり、さらに組立工程も少なく、よって量産性が向上する。
【0054】
また、詳細を上述したように、ブラシベース6の凸部61を開口部23に填め込む組み込み作業と同時に、ブラシ分け工程として、ブラシ62bの間に整流子4dを挟み込むことができるため、組立上問題の多かったブラシ分け作業工程は簡略化できる。また同時に、ブラシ分けを行うための冶具を用いる必要がないため、ブラシ62bを必要以上に広げすぎることもなく、従って、ブラシ分け作業によるミスに起因した接点不良の歩留まり低下も起こりにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例であるコアレスモータ1の断面構造概略図。
【図2】本発明のコアレスモータ1に、減速機のギアボックス10を取り付けた状態の正面外観概略図および側面外観概略図。
【図3】本発明のケースに用いるハウジングの側面外観概略図及び内部の断面概略図。
【図4】本発明の回転子のモールド部分の固定具を、駆動軸のシャフトと整流子片をインサートした状態で示した断面概略図、及び正面概略図。
【図5】駆動軸のシャフトの形状を示す側面概略図および背面概略図。
【図6】本発明の給電端子部分の構成要素であるブラシベースの形状を示す正面概略図及び断面概略図。
【図7】本発明のフランジ7の形状を示す正面概略図および側断面概略図。
【図8】従来例であるコアレスモータ100の部品構成を説明する斜視分解図である。
【符号の説明】
1 コアレスモータ(小型モータ)
2 ハウジング(ケースの一方の構成要素)
22 支軸(固定手段)
23 開口部
3 界磁磁石
4 コイル
4d 整流子
5 駆動軸
6 ブラシベース(給電部)
61 凸部
62 給電端子
62b ブラシ
7 フランジ(ケースの他方の構成要素)
8 軸受
Claims (5)
- 回転子コイルと固定子界磁磁石とを、該コイルが回転自在となるようにモータケース内に配置し、かつ前記コイルの回転中心位置にコイル端内部から外方に伸びる出力用の駆動軸を前記コイルと共に一体に固定具で保持して設け、外部電源と導通する給電部の給電端子からブラシ、及び前記固定具周縁上の整流子とを介してコイルに電力を給電して磁界を発生させることにより、前記コイルおよび駆動軸および固定具からなる回転子を回転させる小型モータにおいて、前記ケースはハウジングとフランジの二分割の剛性材料からなり、かつケースのハウジング側円周側面には給電部部品となるブラシベースの一部が嵌合する開口部を設け、この開口部内径側から前記給電部の一部をケース外部に配設する取り付け構造とし、さらに前記給電端子及びブラシを保持する前記ブラシベースをケース径方向内部に保持収納して、前記開口部全体を前記ブラシベースの一部の突出部分外形で塞ぎ、かつ、ハウジングの開口端側と嵌合固定するフランジ部材とを軸方向から組み合わせて一体のケースを形成することにより、ケース内部を密閉状態に閉じた構造としたことを特徴とする小型モータ。
- 請求項1に記載の小型モータにおいて、前記界磁磁石は、前記ケース一方のカップ型のハウジング底部に立設する固定手段を、該磁石内部に受け入れることによって、前記ケースのハウジング内における軸中心位置に固定されていることを特徴とする小型モータ。
- 請求項2に記載の小型モータにおいて、前記固定手段は磁性体材料であることを特徴とする小型モータ。
- 請求項2または請求項3に記載の小型モータにおいて、前記整流子は前記駆動軸を樹脂モールドする固定具の一部の周縁上に設けられ、また前記ブラシベースは、前記ハウジング開口部内方から円周方向外方に飛び出している凸部を備えており、前記給電端子の金属片の一端を前記ブラシベースの凸部側に固定して、かつ一組の給電端子の互いの間隔が、突出する一端側は前記整流子径より幅広く、また摺接部の解放端側である他端側は、前記回転子側整流子の径より狭くなるように曲げられて、端部にブラシ片が接合固定されている給電部構造を備えることを特徴とする小型モータ。
- 請求項4に記載の小型モータの組立方法であって、前記界磁磁石と、前記回転子コイルとを前記ハウジング内で組み合わせて設置した後、前記回転子駆動軸の出力先端側を、前記ブラシベースの一組の給電端子のブラシ導入部の間の、前記整流子より幅の広い箇所(W)に挿通して、前記ブラシベース本体を、前記ブラシベースの凸部が前記ハウジング開口部側に向くように斜めにした状態で、該ハウジングの内径部に落とし込みながら回転子全体をハウジング内に挿入し、前記ブラシベースの取り付け組み込み角度を調整することにより、前記ブラシベースの凸部を前記ハウジング開口部に填めるとともに、前記ブラシベースに配したブラシ片に対する前記整流子の位置を動かして、該整流子を前記一組の給電端子に固定された他端側のブラシ片で挟み、さらに回転子の駆動軸を二点間で軸支する軸受を内挿した前記フランジ部材を、回転子の軸方向外方から対向させ挿通し、フランジ部材の填め合い箇所端部でブラシベースを押圧支持しながら、ハウジング開口側端部と嵌合固定し、一体のモータケースを形成することを特徴とする小型モータの組立方法。
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