JP4418635B2 - 感熱接着性ラベル及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、飲料充填容器等の物品表面に巻付け貼着される感熱接着性ラベル及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
感熱接着性ラベルは、ラベル裏面に設けられた感熱性接着剤層の加熱により発現する接着作用で対象物品に貼着される。感熱性接着剤層は、加熱されるまで接着作用を有しないので、感圧接着性ラベル(粘着性ラベル)と異なって、接着剤層の表面を離型紙で被覆保護する必要がなく、従ってラベルを物品表面に貼着する工程において、離型紙の剥離除去(及びその回収作業)という煩瑣な作業も不要となり、貼着作業を効率化することができるという利点を有している。
【0003】
感熱接着性ラベルは、長尺フィルムをラベル基材とし、その片側面(ラベルの裏面となる側)に感熱性接着剤層を形成し、他方の面に印刷(商品情報の表示や加飾等のための多色印刷)を施した長尺の感熱接着性フィルムとして製作される。上記感熱性接着剤層は、強度,接着の安定性等の面から、溶融押出しコーティングによってラベル基材の全面に積層(塗布)されている。
このように製作された長尺の感熱接着性フィルムから所定サイズのラベルが切出され、接着剤層の加熱(接着作用を発現)処理を経て対象物品に貼着される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
感熱接着性ラベルは、製造工程においてフィルムの連続移送操作(特にラベル貼着工程での移送操作)を安定に維持することが困難なこと、またこれを貼着したボトル等の物品を使用した後の廃棄に際して、物品本体とラベルとを分別回収するためのラベルの剥離が困難なこと等が従来問題とされている。
【0005】
連続移送操作における困難性は、感熱性接着剤層の表面の滑り性が乏しいこと等による。滑り性の不足は、連続移送ラインにおいてロール表面とフィルムとの転接状態を不安定にし、ライン内でフィルムの巻き込み・破断等を生じる原因となり、高速移送運転を困難にしライン効率に対する大きな制約となる。この対策として、感熱性接着剤層に滑剤(例えば脂肪酸アマイド類)を添加し所要の滑り性をもたせることが従来から実施されている。しかし、この場合、フィルムをロール巻きすると、フィルムおもて面と感熱性接着剤層とが重なるため、感熱性接着剤層中の滑剤のブリードによりフィルムおもて面に滑剤が付着し易い。フィルムおもて面に滑剤が付着すると、印刷インキとのなじみが悪くなり、印刷(商品情報の表示・加飾等)の品質が損なわれ、またラベルを物品に貼着する際の重ね接着代の接着力が弱く、商品流通過程でラベルのめくれ・剥離等が生じ易くなるという問題も付随する。
【0006】
他方、物品を使用した後の本体とラベルを分別回収する際のラベル剥離の困難性は、感熱性接着剤層の極性化処理に起因している。コロナ放電処理に代表される極性化処理(感熱性接着剤層の表面に極性基が導入される)は、感熱性接着剤層の表面ぬれ張力(JIS-K6768)を高め、活性化(接着作用の発現)に要する加熱時間の短縮、活性化温度の降下、接着作用の強化等の効果を生じ、ラベル貼着操業の高速・効率化、熱エネルギーコストの低減等を可能にする重要な処理である。しかし、極性化処理による接着力の強化は、使用後のラベルの剥離を困難にする。ラベルの接着力の強化と剥離の容易化とは相反する物性であるが、流通過程におけるラベルの安定な貼着状態の確保(ラベルのめくれ・剥離の防止)と使用後の分別回収の容易化という観点から、上記の相反する2つの特性を同時に充足することが望まれる。
【0007】
しかるに、感熱接着性ラベルの上記問題に対する有効な解決策が提案された例は見当たらない。そこで本発明は、滑剤の使用とそれに付随する不具合を解消し、感熱接着性ラベルの製造ライン・貼着ラインにおける高速・効率化を可能とすると共に、物品に対するラベル貼着の安定性を保持しながら、使用済み物品を廃棄する際に必要なラベル剥離の容易性を確保し得るようにした感熱接着性ラベル及びその製造方法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、感熱性接着剤層をラベル基材フィルムの片側面の全面に有し、両端縁を接着代として物品に巻付け貼着される感熱接着性ラベルにおいて、前記接着代の少なくとも一部を除く感熱性接着剤層の表面に形成され、該表面に滑り性を付与する連続膜又は不連続膜からなるマスキング層を有し、接着代となる端縁の表面ぬれ張力(JIS−K6768)は38mN/m以上であることを特徴としている。
また、前記マスキング層は、前記接着代には形成されず、前記接着代を除く感熱性接着剤層の表面の全面域に形成されることが好ましい。
【0009】
本発明に係る感熱接着性ラベルの製造方法は、ラベル基材の片側面の全面に感熱性接着剤層を形成し、記接着代の少なくとも一部を除く感熱性接着剤層の表面に、滑り性を付与するための連続膜又は不連続膜からなるマスキング層を積層形成することを特徴としている。
また、ラベル基材の片側面の全面に感熱性接着剤層を形成した後、該感熱性接着剤層の表面を活性化する極性化処理工程および極性化処理工程の前又はその後に行なう感熱性接着剤層のマスキング工程を有し、マスキング工程で、前記接着代の少なくとも一部を除く感熱性接着剤層の表面に、滑り性を付与するための連続膜又は不連続膜からなるマスキング層を形成することを特徴とする。
【0010】
本発明の感熱接着性ラベルは、感熱性接着剤層を被覆するマスキング層の遮蔽効果として、感熱接着性ラベル製造ラインにおけるフィルム送りローラとの滑り性が改善される。このため、感熱性接着剤層への滑剤添加の省略又は添加量の削減が可能となり、滑剤使用に付随する不具合(フィルムおもて面への滑剤の転着とそれに付随する印刷性の低下・ラベル接着力の不足等)が抑制回避される。また感熱性接着剤層を被覆するマスキング層の効果として、加熱後の接着強度が低いレベルに抑えられ、物品を廃却する際のラベル剥離(物品本体とラベルの分離)の困難が軽減し、物品本体とラベルとの分別回収が容易化される。
【0011】
マスキング層の遮蔽効果の強弱は、後述のようにマスキング層の塗膜構成(膜厚・塗布密度等)及びマスキングの剤種等により任意に制御され、従ってラベル接着代となる端縁部をマスキング層で被覆した場合にも、ラベル貼着に必要な接着強度を確保することができる。このようにマスキング層の塗膜構成の適宜設計により、物品表面に対するラベル貼着の安定性と物品使用後の分別回収に必要なラベル剥離の容易化という相反する2つの特性が同時に充足される。
【0012】
本発明の感熱接着性ラベルにおいて、ラベル貼着時の接着代となる端縁部の感熱性接着剤層(マスキング層で被覆され又はマスキング層が省略されている)の表面ぬれ張力を38mN/m以上と規定しているのは、物品に対するラベル貼着の安定性を確保するためである。
【0013】
なお、感熱接着性ラベルに関わる前述の滑り性,ブロッキング,使用後のラベル剥離等の問題に対処する別の方策として、感熱性接着剤層の塗布を全面塗布に代え、部分的な塗布に変更することも考えられるが、溶融押出しコーティングでは部分的に選択塗布することが困難である。溶液タイプの感熱性接着剤を使用すれば部分的塗布も可能であるが、塗布後の乾燥を要するため工程が煩瑣化し、しかも厚塗りが困難という制約があり、部分的な塗布でラベル貼着の安定性やラベル製造工程・貼着工程での滑り性、物品使用後の剥離容易化等の多面的な要請に応えることは困難である。これに対し本発明によれば、溶融押出しコーティングによる感熱性接着剤層の表面ぬれ張力や接着強度を、マスキングの面域や塗膜構成によりきめ細かく調整でき、感熱接着性ラベルに望まれる上記諸特性を同時に満たすことができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下本発明について実施例を示す図面を参照して具体的に説明する。
図1 [a] [b]及び図2[a] [b]は、本発明の感熱接着性ラベルの例を示している(各図において[a]図:フィルム長手方向断面図、[b]図:フィルム裏面側の平面図)。感熱接着性フィルム(10)は、ラベル基材フィルム(11)、該基材フィルム(11)の片側面(ラベル裏面側)に形成された感熱性接着剤層(12)、該感熱性接着剤層(12)に積層成膜されたマスキング層(13)、および基材フィルム(11)のおもて面側に形成された印刷層(商品情報の表示・加飾等のための印刷層)(14)等からなる層構成を有している。
【0015】
ラベル(1)は、感熱接着性フィルム(10)の長手方向に反復形成されている。ラベル(1)は、ラベル貼着ラインにおいて感熱接着性フィルム(10)から1枚ずつ順次切取られて対象物品に貼着される(後述)。ラベル(1)の端縁部(1E)及び(1E)は、ラベル(1)を図7のように対象物品(3)(図は飲料充填ボトルの例を示す)に巻付け貼着する際の重ね接着代となる部分である。
【0016】
感熱性接着剤層(12)を被覆するマスキング層(13)は、印刷により、例えば、凸版輪転印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の公知の印刷手法を適用し、連続膜(ベタ塗り膜)として、又は不連続膜、例えば方眼(正方眼・長方眼)もしくは斜方眼等の格子模様、スリット状の縞模様、半調版,階調版による網点模様等として形成される。必要に応じて、連続膜と不連続膜とを併用した塗布パターンが採用される。図3〜図5は不連続膜からなるマスキング層の塗膜パターンの例であり、図3は格子模様、図4は縞模様、図5は網点模様の例をそれぞれ模式的に示している。
【0017】
マスキング層(13)の遮蔽効果は、マスキング層の塗膜構造により制御することができる。マスキング層(13)を連続膜として形成する場合は、比較的薄い膜厚とすることにより、その膜厚を通して(又は膜の微細な亀裂を介して)、おもて面側に感熱性接着剤層(12)の抑制された接着力を生じさせることができ、膜厚を厚くするほど遮蔽効果は強められる。他方、不連続膜として形成されるマスキング層(13)では、塗膜の微小隙間を介して、おもて面側に感熱性接着剤層(12)の抑制された接着力を生じさせることができる。おもて面側に及ぼす感熱性接着剤層(12)の影響は塗膜の粗密により調整される。例えば、格子模様(図3)の塗膜パターンでは、格子間隔・線幅の大小、縞模様(図4)の塗膜パターンではスリット間隔・線幅の大小、また網点模様(図5)の塗膜パターンでは、スクリーン線数・グラデーション等による網点濃度(面積率)によりそれぞれ調整される。
【0018】
次にマスキング層による被覆パターンについて説明する。
前記図1の感熱接着性フィルム(10)は、ラベル(1)の端縁部(1E)(接着代となる部分)を除いてマスキング層(13)が形成されているので、端縁部(1E)(感熱性接着剤層12が露出している)は、感熱性接着剤層(13)の本来的な物性により、接着代として望まれる十分な表面ぬれ張力(約38mN/m以上)及び加熱後の高い接着強度(約4N/15mm以上)が確保される。
端縁部(1E)を除く面域に形成されるマスキング層(13)は、連続膜又は不連続膜(格子模様,縞模様,網点模様等)である。物品に対するラベル貼着の安定性を、端縁部(1E)の接着作用のみで確保でき、面域(13-13-13)の接着作用を必要としない場合は、該面域(13-13-13)のマスキング層(13)を膜厚の厚い連続膜として接着力を十分に低く抑えると共に、滑り性をより高めることもできる。
【0019】
図1の被覆パターンを有するラベル(1)において、対象物品の形態や材質(金属,ガラス,プラスチック等)により、端縁部(1E)の接着作用だけでは、物品に対する貼着状態の安定性を確保し難い(物品表面上でラベルの空回りや位置ずれ等の不具合が生じ易い)ような場合には、その対策として例えば、
▲1▼マスキング層(13)の被覆面域(同図[b]に示す面域「13-13-13」)の一部、例えば面域(13)のマスキング層を省略(感熱性接着剤層12を露出)することにより物品表面との接着面積を大きくする、
▲2▼マスキング層(13)が膜厚の厚い連続膜である場合、その面域(同図[b]に示す面域「13-13-13」)の全面ないし一部(例えば面域13)の膜厚を薄くするか、または連続膜を塗膜密度の比較的低い不連続膜(格子模様,縞模様,網点模様等)に代えて抑制された接着作用を生じさせる、
等の手当てが適宜施される。これらの塗膜調整はラベル製造工程に要求される滑り性及び物品使用後のラベル剥離の容易性とのバランスを考慮して適宜実施される。
【0020】
図2の感熱接着性フィルム(10)は、前記図1と異なって、感熱性接着剤層(12)の表面全体[ラベル接着代となる端縁部(1E1)を含む全面域]にマスキング層(13)を形成した被覆パターンを有している。マスキング層(13)は、不連続膜(格子模様,縞模様,網点模様等)として形成されている。ラベルの接着代となる端縁部(1E1)は、ラベル貼着のための十分な接着力が得られるように、マスキング層(13)の膜厚または塗膜密度を調整され、38mN/m以上の表面ぬれ張力が与えられている。
【0021】
図2のラベル(1)において、端縁部(1E)の接着作用だけで物品に対するラベル貼着の安定性を確保でき、それ以外の面域(13)の接着作用を必要としない場合は、該面域(13)のマスキング層を膜厚の厚い連続膜(ベタ塗り)とし、又は塗膜密度(濃度)の高い不連続膜とすることにより、ラベル製造工程における滑り性や物品廃棄時のラベル剥離性をより一層高めることができる。
【0022】
他方、端縁部(1E)の接着作用だけでは、貼着状態の安定性を確保し難い(物品表面上でラベルの空回りや位置ずれ等が生じ易い)場合は、
▲1▼マスキング層(13)が膜厚の厚い連続膜であれば、その面域(13)の全面ないし一部(例えば同図「b」に示す面域13)の膜厚を薄くするか、または連続膜を不連続膜(格子模様,縞模様,網点模様等)に代える、
▲2▼マスキング層(13)が不連続膜であれば、その面域(13)の全面ないし一部(例えば同図「b」に示す面域13)を、塗膜密度(濃度)のより低い不連続膜に代える、
等により面域(13)の接着作用で物品に対する貼着力を強めるとよい。このような塗膜調整はラベル製造工程に要求される滑り性及び物品使用後のラベル剥離の容易性とのバランスを考慮して適宜実施される。
【0023】
上記のようにマスキング層(13)の遮蔽効果は、その塗膜構造(連続膜の膜厚や不連続膜の塗膜の粗密等)により調節することができるが、適正な塗膜構造の選択設計は、感熱性接着剤層(12) 及びマスキング層(13)の剤種により異なり、またマスキング層の形成面域(ラベルの接着代となる端縁部又はそれ以外の面域等)や対象物品の材種(例えば金属缶,ガラス瓶,PETボトル等)等に応じて要求される遮蔽効果も異なる。従って具体的実施に際しては、これらの具体的条件を勘案して適宜調整することを要する。
【0024】
具体例として、金属缶に巻付け貼着されるラベルであって、エチレンアクリル酸エチル共重合体を主成分とする樹脂の溶融押出しコーティングによる層厚15μmの感熱性接着剤層(12)を形成し、これに紫外線硬化型ニスからなるマスキング層(13)を形成する場合を例に挙げれば次のようである。
(1)連続膜として形成されるマスキング層(13)は、膜厚を約0.1〜10μmとし、この範囲内において、接着代となる端縁部(1E)及びそれ以外の面域における膜厚の厚薄を調整する。
(2)格子模様(図3)及び縞模様(図4)として形成される不連続膜のマスキング層(13)は、その線間隔(隣合う線の中心間距離)約0.3〜3.0mm、線幅(線の太さ)約0.3〜3.0mmとし、この範囲内において、接着代となる端縁部(1E)及びそれ以外の面域における線間隔・線幅の大小を調整する。
(3)網点模様(図5)として形成される不連続膜のマスキング層(13)は、網点濃度(面積率)を約20〜60%とし、この範囲内において、接着代となる端縁部(1E)及びそれ以外の面域における濃度の高低を調整する。
【0025】
次に本発明の感熱接着性ラベルの積層構成材料について説明する。
基材フィルム(11)は、厚さ約10〜100μmのポリエチレンフィルム,ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂,ポリスチレン系樹脂等の樹脂フィルム、またはこれらの樹脂からなる合成紙等である。このほか、比較的厚肉(厚さ約80-500μm)で断熱性,クッション性等を有するポリスチレン系発泡樹脂シート,ポリオレフィン系発泡樹脂シート等が挙げられる。これらの各種フィルム、合成紙、発泡樹脂シート等として、熱収縮性を有するものを使用することもできる。
【0026】
感熱性接着剤層(12)は溶融押出しコーティング法等により形成される。感熱接着剤は、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体(エチレン-アクリル酸エチル、エチレン-アクリル酸2-エチルヘキシル等)、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体(エチレン-メタクリル酸エチル等)等を主成分とする公知の各種剤種を適用でき、層厚は例えば5〜30μmである。
【0027】
感熱性接着剤層(12)を被覆するマスキング層(13)は、感熱性接着剤と比べ、表面が非粘着性であり、加熱による軟化を生じ難く、滑り性を有するものであり、その塗膜剤として各種のニスや印刷インキを使用することができる。特に紫外線硬化型インキ、紫外線硬化型ニスは効果的である。マスキング層は透明又は不透明のいずれであってもよい。感熱性接着剤層(12)の表面に対する成膜は前記のように公知の各種印刷手法を適用して行うことができる。
印刷インキ層(14)は、この種ラベルの印刷(商品情報表示・加飾印刷)に使用される各種インキを適用し公知の各種印刷法により形成される。
【0028】
次に本発明の感熱接着性ラベルの製造工程及び貼着工程について説明する。
本発明の感熱接着性ラベルの製造工程は、基材フィルムの片側面に形成した感熱性接着剤層(12)の表面にマスキング層(13)を形成するマスキング工程を有し、またはマスキング工程と極性化処理(感熱性接着剤層の活性化)工程をを有する点において、従来の製造工程と相違している。
図6は、マスキング工程と極性化処理工程を有する製造工程の例を示している。この製造工程において、「b工程:極性化処理(感熱性接着剤層の活性化)」と「d工程:マスキング層の形成(感熱性接着剤層の被覆)」を除く他の工程(a,c,e,f)は、従来の感熱接着性ラベルの製造工程と異ならない。
【0029】
基材フィルム(表示・加飾印刷が施されるフィルムのおもて面は印刷インキとのなじみを良くするためのコロナ放電処理等の極性化処理が施されている)はロールから繰り出され、その片側面(うら面)に感熱性接着剤層(12)が溶融押出しコーティングにより形成(a工程)され、ロールに巻き取られる。巻き取られたフィルムロールを、極性化処理装置(コロナ放電処理装置等)が設置された印刷機の繰出し部にセットし、フィルムロールから繰り出しながら、感熱性接着剤層(12)を極性化処理(b工程)した後、基材フィルムおもて面の表示・加飾印刷(c工程)及び感熱性接着剤層のマスキング(d工程)を行なう。表示・加飾印刷(c工程)とマスキング工程(d工程)の順序は上記と逆であってもよい。ついで、印刷インキ層及びマスキング層(印刷インキ,マスキング剤が紫外線硬化型インキの場合)を硬化するための紫外線照射処理(e工程)を施してロールに巻き取る。更にそのフィルムロールをスリットラインに供給し、所定のラベル幅サイズにスリット(f工程)して巻き取る。巻き取られたフィルムロールはラベル貼着ライン(後述)に供給される。
【0030】
上記製造工程では、極性化処理(b工程)の後にマスキング(d工程)を行なっている。この工程は、感熱性接着剤層(12)に対するマスキング層(13)の密着性が良いという利点を有する。この2つの工程の順序を逆にしてもマスキング層(13)の必要な密着性が確保されれば、マスキング層形成の後に極性化処理を行なうライン構成とすることもできる(この工程を採用する場合、マスキング層の表面が極性化処理されるが、マスキング層は感熱性接着剤層に比べてブロッキング等が生じ難いので実施可能である)。この場合でも、接着代となる部分の表面ぬれ張力が38mN/m以上に調整されていればよい。なお、感熱接着性フィルム製作後の長期保管等により感熱性接着剤層(12)の表面ぬれ張力に不足をきたすような場合は、ラベル貼着ラインにおいて補助的に極性化処理を実施すればよく、また上記工程における極性化処理を省略した場合は、ラベル貼着ラインにおいて極性化処理を実施すればよい。
【0031】
図7はラベル貼着ラインの例を示している。ラベル貼着ラインは、極性化処理装置(例えばコロナ放電処理装置)(21)、ラベル切取り用カットユニット(22)、ラベル保持ドラム(23)、感熱性接着剤層の加熱活性化装置(24)、物品供給・排出装置(26)(27)等で構成されている。
感熱接着性フィルム(10)は巻取りロール(10)から送りローラ(R)を介して連続的に供給される。本発明の感熱接着性フィルム(10)は製造過程で感熱性接着剤層の極性化処理が施されているので、極性化処理装置(21)を経由することなく直接カットユニット(22)へ移送することができる。極性化処理を必要とする場合は、移送経路を切替えて極性化処理装置(21)を経由させればよい。
【0032】
カットユニット(22)に送り込まれた感熱接着性フィルム(10)は、回転カッター(22)と保持ローラ(22)で個々のラベル(1)に順次カットされると共に、ラベル保持ドラム(23)の周面に吸着保持され、該ドラム(23)の回転により加熱装置(24)(熱風ヒーター,赤外線ヒーター,近赤外線ヒーター等)を通り所定温度(例えば60〜150℃)に加熱されて移行する。
上記ラベル(1)の供給動作に連動し、物品搬送装置(26)のベルトコンベア(26)及びスクリュー軸(26)により供給される物品(3)は、スターホイール(26)を介してラベル保持ドラム(23)の貼着位置に送り込まれ、保持ドラム(23)とガイドプレート(26)との間に挟まれて転動しつつ、そこを通過することにより、物品(3)の胴部表面に対するラベル(1)の巻付け貼着が行なわれる。ラベルを貼着された物品は、排出装置(27)のベルトコンベア(27)と押えベルト(27)とに挟まれて転動しつつ通過することによりラベル(1)の巻付け貼着を完成する。
【0033】
なお、本発明の感熱接着性フィルムと異なって、従来の感熱接着性フィルム(マスキング層を有しない)の製造工程では極性化処理が行なわれない。これは、製造工程で極性化処理すると、ロールの巻き重ね面にブロッキングが生じ易くなる(ロール1巻き分の廃却を余儀なくされる場合もある)からである。従って、従来の感熱接着性フィルムを使用する場合、加熱効率よく十分な接着強度を得るためにはラベル貼着ラインでの極性化処理が不可欠である。これに対し、本発明の感熱接着性フィルムは、製造工程で極性化処理を施されている場合、極性化処理を省略することが可能であり、ラベル貼着操業を高速化・効率化することができる。
【0034】
【実施例】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムを基材フィルムとし、エチレンアクリル酸エチルを主成分とする感熱性接着剤、およびマスキング剤として紫外線硬化型インキ(ニス)を使用し、図6の工程(但し極性化処理b工程は省略する場合もある)で供試ラベルを製作する。ついで、図7のラベル貼着ラインに供給し、飲料用金属缶(スチール製)の表面に巻付け貼着する。
【0035】
[実施例1]
感熱性接着剤層にマスキング層を連続膜(膜厚2μm)として形成し、図1の仕様の供試ラベル(接着代となる端縁1Eに対するマスキング層は省略されている)を得た。なお、工程b(図6)の極性化処理は省略した。
ラベル貼着ラインにおいて、コロナ放電処理により接着代(端縁)の感熱性接着剤層の表面ぬれ張力を45mN/mとした後、感熱性接着剤層を120℃に加熱活性化し、金属缶に巻付け貼着した。
ラベル貼着ラインにおけるラベルの滑り性は良好であった。
金属缶に貼着されたラベルの端縁部(重ね合わせ部)の接着力は5.0N/15mm以上と良好であった。また、マスキング層で被覆された部分の金属缶表面に対する接着力は非常に低く容易に剥離することができた。
【0036】
[実施例2]
感熱性接着剤層にコロナ放電処理を施した後、マスキング層(実施例1と同じ)を形成して図1の仕様の供試ラベル(接着代となる端縁1Eのマスキング層省略されている)を得た。このラベルの接着代(端縁)における感熱性接着剤層の表面ぬれ張力は40mN/mであった。
ラベル貼着ラインにおいて、極性化処理することなく、感熱性接着剤層を加熱活性化(加熱温度120℃)し、金属缶に巻付け貼着した。
ラベル貼着ラインにおけるラベルの滑り性は良好であった。
貼着されたラベルの端縁部(重ね合わせ部)の接着力は4.6N/15mmと良好であった。金属缶表面からの剥離についても実施例1と同じように容易に行なうことができた。
【0037】
[実施例3]
マスキング層を階調版(網点濃度=接着代の面域20%,接着代以外の面域60%)で印刷して図2の仕様の供試ラベル(接着代となる端縁1Eの感熱性接着剤層にもマスキング層が形成されている)を作製した。但し工程b(図6)の極性化処理は省略した。
ラベル貼着ラインにおいて、実施例1と同じように、コロナ放電処理を施して接着代(端縁)の感熱性接着剤層の表面ぬれ張力を45mN/mとした後、感熱性接着剤層を120℃に加熱活性化し、金属缶に貼着した。
貼着ラインにおけるラベルの滑り性は良好であった。
貼着されたラベルの端縁部(重ね合わせ部)の接着力は4.1N/15mmと良好であった。金属缶表面からの剥離も容易に行なうことができた。
【0038】
上記のように本発明の感熱接着性ラベルは、送りローラに対する良好な滑り性を有し、また接着代の良好な接着力により物品に対する安定した貼着状態を得ることができるほか、物品とラベルを分離する際の剥離も容易である。
【0039】
【発明の効果】
本発明の感熱接着性ラベルは、感熱性接着剤層に対するマスキング層の形成効果として、フィルム送りローラに対するフィルムの滑り性が改善され、ラベル製造工程及びラベル貼着ラインにおけるフィルム移送の安定性が高められることにより、感熱性接着剤層の滑剤添加を省略ないし削減することが可能となり、滑剤添加に付随する不具合、例えばフィルムロールの巻き重ね面における滑剤転着(基材フイルム表面の印刷性の低下、ラベルの物品貼着に必要な接着強度の劣化等を招く)が解消される。
また、本発明の感熱接着性ラベルは、感熱性接着剤層を被覆するマスキング層の形成効果として、物品の使用後の廃棄に際して物品本体とラベルとを分離するためのラベル剥離の困難が緩和され、物品とラベルの分別回収が容易になる。
更に、本発明の感熱接着性ラベルは、マスキング層の形成効果として、ブロッキング(感熱性接着剤層と基材フィルムとの巻き重ね面の癒着現象)の発生が軽減緩和される。このためラベル製造工程(その最終段階でフィルムのロール巻取りが行なわれる)において極性化処理を実施し、ラベル貼着ラインの設備構成の簡素化・ラベル貼着操業の効率化等も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の感熱接着性ラベルにおけるマスキング層による感熱性接着剤層の被覆パターンの例を示す図([a]:フィルム長手方向の断面図、[b]:平面図)である。
【図2】本発明の感熱接着性ラベルにおけるマスキング層による感熱性接着剤層の被覆パターンの他の例を示す図([a]:フィルム長手方向の断面図、[b]:平面図)である。
【図3】本発明の感熱接着性ラベルにおけるマスキング層の塗膜構成の例を示す平面説明図である。
【図4】本発明の感熱接着性ラベルにおけるマスキング層の塗膜構成の他の例を示す平面説明図である。
【図5】本発明の感熱接着性ラベルにおけるマスキング層の塗膜構成の他の例を示す平面説明図である。
【図6】本発明の感熱接着性ラベルの製造工程説明図である。
【図7】感熱接着性ラベルの貼着ラインの装置構成の例を示す正面説明図である。
【図8】感熱接着性ラベルの物品に対する貼着態様の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1:感熱接着性ラベル
1E1,1E:ラベル端縁部(接着代)
3:物品(ボトル)
10:感熱接着性フィルム
10:フィルム巻取りロール
11:基材フィルム 12:感熱性接着剤層
13:マスキング層 14:印刷インキ層
R:フィルム送りローラ
21:極性化処理装置
22:カットユニット
22:回転カッター 22:保持ローラ
23:ラベル保持ドラム
24:加熱装置
26:物品供給装置
26:ベルトコンベア
26:スクリュー軸 26:スターホイール
27:物品排出装置
27:ベルトコンベア 27:押えベルト

Claims (4)

  1. 感熱性接着剤層をラベル基材フィルムの片側面の全面に有し、両端縁を接着代として物品に巻付け貼着される感熱接着性ラベルであって、
    前記接着代の少なくとも一部を除く感熱性接着剤層の表面に形成され、該表面に滑り性を付与する連続膜又は不連続膜からなるマスキング層を有し
    接着代となる端縁の表面ぬれ張力(JIS−K6768)は38mN/m以上であることを特徴とする感熱接着性ラベル。
  2. 請求項1に記載の感熱接着性ラベルにおいて、
    前記マスキング層は、前記接着代には形成されず、前記接着代を除く感熱性接着剤層の表面の全面域形成されることを特徴とする感熱接着性ラベル。
  3. ラベル基材の片側面の全面に感熱性接着剤層を形成し、
    前記接着代の少なくとも一部を除く感熱性接着剤層の表面に、滑り性を付与するための連続膜又は不連続膜からなるマスキング層を積層形成することを特徴とする請求項1に記載の感熱接着性ラベルの製造方法。
  4. ラベル基材の片側面の全面に感熱性接着剤層を形成した後、該感熱性接着剤層の表面を活性化する極性化処理工程および極性化処理工程の前又はその後に行なう感熱性接着剤層のマスキング工程を有し、
    マスキング工程で、前記接着代の少なくとも一部を除く感熱性接着剤層の表面に、滑り性を付与するための連続膜又は不連続膜からなるマスキング層を形成することを特徴とする請求項1に記載の感熱接着性ラベルの製造方法。
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