JP4416920B2 - 炭化珪素成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体素子等の電子部品やデッキ部品を搭載する半導体回路基板、特にパワーモジュール等に用いられるセラミックス基板の放熱部品、ヒートシンク等に好適な炭化珪素質複合体の原料となる、炭化珪素成形体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、回路基板の小型化、半導体素子の高集積化が急速に進み、回路基板、特にセラミックスを基板とするセラミックス回路基板、の放熱特性の一層の向上が望まれている。前記セラミックス回路基板としては、ベリリア(BeO)を添加した炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si3N4)などのセラミックスが注目されている。
【0003】
上記セラミックスの基板を回路基板やパッケージ用基体などに用いる場合には、半導体素子等の電気・電子部品からの発熱を前記回路基板の裏面に設けられるヒートシンクと呼ばれる放熱部品を介して外部に発散させることで、半導体素子の温度上昇による誤動作の発生を防止し、回路基板の動作特性を確保している。
【0004】
ヒートシンクとして代表的なものに銅が知られているが、セラミックス回路基板に適用すると、銅とセラミックス基板との熱膨張係数の相違に原因して、加熱された時や半導体素子の動作時の熱サイクルを受けて、セラミックス基板にクラックや割れ、或いはセラミックス基板とヒートシンクとを接合している半田でクラックを発生する等の問題がある。
【0005】
このために、特に高い信頼性が要求される分野にはセラミックス基板と熱膨張係数の差が小さいMo/Wがヒートシンクとして用いていた。しかし、Mo/Wはそれぞれの金属の比重が大きく、ヒートシンク或いはそれを接合したセラミックス回路基板の重量が重くなるので、放熱部品の軽量化が強く望まれる用途、例えば自動車や車両等の移動機器搭載用途においては、好ましくない。更に、MoやWは、希少であり高価であるという欠点を有している。
【0006】
上記の事情から、近年、銅やアルミニウム或いはこれらの合金を無機質粒子や繊維で強化したMMC(Metal Matrix Composite)と称される金属−セラミックス複合体が注目されている。
【0007】
MMCは、一般に、強化材である無機質粒子や繊維を予め成形することで、プリフォームを形成し、該プリフォームの強化材間に金属あるいは合金を含浸させた複合体であり、強化材にはアルミナ、炭化珪素、窒化アルミニウム、窒化珪素、シリカ、炭素などが用いられる。
【0008】
金属−セラミックス複合体の熱伝導率を上げようとする場合、強化材および含浸する金属や合金に熱伝導率の高い物質を選択する必要がある。加えて、強化材と金属あるいは合金との濡れ性や界面の反応等が、得られる金属−セラミックス複合体の熱伝導率や強度に影響を与える。
【0009】
上記用途に適用するためには、軽量で高熱伝導率で、しかも各種セラミックス基板と同じ程度の低い熱膨張率を兼ね備えた金属−セラミックス複合体を得る組み合わせとして、強化材に炭化珪素を主成分とするプリフォームにアルミニウムを主成分とした金属を用いることが注目されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
強化材に炭化珪素を、含浸する金属にアルミニウムを主成分とする金属を用いて得られる金属−セラミックス複合体(以下、炭化珪素複合体という)の熱伝導率、熱膨張率等の特性は、炭化珪素質複合体中の炭化珪素の含有量により影響を受けるが、前記含有量は金属を含浸される炭化珪素成形体(プリフォーム)の体積密度で決まる。然るに、プリフォームの空隙部分に金属が含浸されるためである。従って、プリフォームの特性制御が、所望の特性を有する炭化珪素複合体を得るのに重要である。
【0011】
炭化珪素成形体を得る方法として、従来より、少量の結合剤を加え乾式条件下で型内でプレスする方法(乾式プレス成形法)、多量の粘着剤を加え杯土状とし型を通過させる方法(押出成形法)、或いは多量の溶媒に炭化珪素粉末を分散しスラリー状を得て、前記スラリーを型内で脱溶媒する方法等のいろいろな方法が知られている。
【0012】
しかし、乾式プレス成形法では、成形体の強度を発現するために後工程で加熱されることが多いが、その際に、前記結合剤や粘着剤が消失して空隙を作り、炭化珪素の充填率が低下(従って、複合材中の炭化珪素の含有量が低下)する問題があるし、結着剤量を低下させると、成形時に炭化珪素粉の粒度差による沈降差を生じ、局所的に大きな充填率に差の有る成形体しか得られないという問題もある。
【0013】
特に、ヒートシンクを得ることを狙いに、板状の成形体を得ようとすると、厚み方向で充填率に差を有する成形体となり、該成形体より得られる炭化珪素質複合体は、熱伝導率や熱膨張率という特性が表裏で差があったり、また前記特性差が原因して反りが発生する問題がある。
【0014】
反りの発生は、放熱部品では回路基板や放熱フィンなどとの接合ができなくなったり、接合できたとしても熱伝達を阻害してしまい、大きな問題となっている。更に、焼成後の成形体の強度が低く含浸前の取扱い時、或いは含浸時の衝撃等により粉体化し、所望の特性を有する炭化珪素質複合体が得難いという問題もある。
【0015】
上記の事情から、一般的には、炭化珪素粉末に高分子化合物とシリカ粉末等の焼結バインダーを添加して、乾式成形法を適用して成形した後、焼結する方法が採用されている。しかし、この方法は金型を用い、数十Paの高圧力を負荷する高価な装置を必要とすること、前記金型が摩耗しやすい等の問題がある。また、原料粉末の金型中での流動を可能とするためには多量の高分子化合物やシリカ粉末を添加する必要があり、炭化珪素の含有量が低下するために、得られる炭化珪素質複合体の熱伝導率が低下してしまうなどの問題は解決されていない。
【0016】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであって、軽量で高熱伝導率でしかもセラミックス基板に近い低熱膨張率を有するアルミニウム−炭化珪素複合体、とくに反りのないヒートシンク等の放熱部品に好適な炭化珪素複合体を得ることを最終目的に、その原料となる炭化珪素成形体を、安価な方法で、安定して提供することを目的としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、溶媒に炭化珪素粉末を分散してなる液状組成物を原料として用い湿式プレス成形することを特徴とする炭化珪素成形体の製造方法であり、湿式プレス成形時に用いる型が、金属又はセラミックスからなり、しかも該型が構成するキャビティに接続されているベントを有している型であることを特徴としている前記の炭化珪素成形体の製造方法である。
【0018】
また、本発明は、湿式プレス成形時に、前記ベントを利用して、キャビティを真空引きすることを特徴とする前記の炭化珪素成形体の製造方法であり、好ましくは、「キャビティに接続されているベントのキャビティとの接続部の断面積の総和」の「キャビティの全面積」に対する割合(面内空隙率)が、0.5%以上である型を用いることを特徴とする前記の炭化珪素成形体の製造方法であり、更に好ましくは、キャビティ表面に溶媒を吸収する物質を配置しながら湿式プレス成形することを特徴とする前記の炭化珪素成形体の製造方法である。
【0019】
加えて、本発明は、アルミニウム−炭化珪素複合体を製造するための炭化珪素成形体であることを特徴とする前記の炭化珪素成形体の製造方法である。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、上記事情に鑑み、炭化珪素複合体の製造方法についていろいろ検討し、その原料となる炭化珪素成形体を詳細に制御して作成することにより、高熱伝導率で低熱膨張率の特性を有する炭化珪素複合体を安定して、特に、ヒートシンクに好適な平板状の炭化珪素複合体を提供できることを見いだし、本発明に至ったものである。
【0021】
前述のとおり、従来は炭化珪素質複合体を得るために用いられる炭化珪素成形体は、主に乾式プレスなどの乾式成形法により作成されていたが、高価な装置を用いなければならない、或いは金型の摩耗が著しいなどの問題を抱えていた。本発明者は、上記事情に鑑みていろいろ実験的に検討した結果、従来炭化珪素成形体の製造に適用されることのなかった湿式プレス成形法を採用するとき、前記問題が解決され、品質の安定したアルミニウム−炭化珪素複合体を容易に得られる事を見出し、本発明に至ったものである。
【0022】
湿式成形法に関しては、押出成形法、湿式プレス法、湿潤注型法等が知られているが、本発明者らの検討によれば、炭化珪素の充填率を高め、所望特性を有する炭化珪素複合体を得るには、平板状製品に対して平板と垂直方向に原料を加圧し、成形することが可能な湿潤注型法や湿式プレス法が望ましい方法であり、特に、湿式プレス成形法は型の材質、形状を工夫することで、高品質の炭化珪素成形体を、安定して、量産することができる特徴がある。
【0023】
本発明は、湿式成形プレス成形法を用いることを特徴とする炭化珪素成形体の製造方法であり、本発明に用いる原料の炭化珪素粉末は、それを構成する粒子が高熱伝導性であることが望まれ、炭化珪素成分が99質量%の高純度の、一般的に「緑色」を呈する炭化珪素粉末を用いることが好ましい。
【0024】
高熱伝導性の炭化珪素複合体を得るためには、原料の炭化珪素粉末から、充填率が50〜80体積%、好ましくは60〜75体積%の炭化珪素質成形体が得られることが望ましく、成形体の炭化珪素の充填率、従って炭化珪素質複合体中の炭化珪素含有量を高めるためには、炭化珪素粉末は適当な粒度分布を有するものが良く、この目的から2種以上の粉末を適宜配合してもよい。
【0025】
本発明の湿式プレス成形法は、前述した原料の炭化珪素粉末を水或いは有機溶剤の溶媒に分散してスラリー状〜杯土状の液状組成物とし、これを原料として所望形状のキャビティを有する型内に納め、プレス加圧する方法であるが、この際に前記液状組成物中の溶媒の一部を排除し、溶媒量が成形体の15%以下程度にまで減少して作業性が確保できる程度にまで強度を有する炭化珪素成形体を得る方法である。得られた炭化珪素成形体は、必要に応じて、風乾、乾燥、更に焼成の操作を得て、最終的に、アルミニウムを含浸することのできる強度を有するように処理される。
【0026】
以下、溶媒として水を用いる場合を例にして、本発明を詳細に説明する。
本発明では、湿式成形法で高充填率を有する炭化珪素成形体を得るために、原料炭化珪素粉末にシリカゾルと前記シリカゾルのゲル化剤を添加することが好ましい。シリカゾルとしては、市販されている固形分濃度20質量%程度のもので構わない。シリカゾルの配合量としては、炭化珪素100質量部に対して、固形分濃度で0.5〜10質量部程度で十分であるが、好ましくは1〜3質量部である。0.5質量部未満では、得られる成形体の強度が、焼成したときにさえ十分でないことがあるし、10質量部を超える場合には、得られる成形体の炭化珪素の充填率が高くならず、本発明の目的を達成できないことがあるからである。
【0027】
本発明において、前記シリカゾルにゲル化剤を添加することが好ましい。シリカゾルを湿式成形、後に続く乾燥、焼成工程を通じて、ゲル化することにより、成形時には原料の流動性を支配する水分量を多く保ちながらも、その後の乾燥工程以降では成形体の強度を強くすることができるので、作業性に富むと同時に、乾燥速度や焼成時の昇温速度を早くすることができ、多量生産に適するという実用上の効果が得られる。
【0028】
前記シリカゾルのゲル化剤としては、スチレン−無水マレイン酸共重合体を含むポリアルキレングリコール並びにその誘導体が知られており、本発明においても使用することができる。また、シリカゾルのゲル化剤の量としては、一般的に、シリカゾルの固形分量100質量部に対して、5〜20質量部であれば十分である。また、当然ではあるが、前記ゲル化剤として、いわゆる減水剤を用いることも出来る。
【0029】
また、本発明において、前記原料に、更に水溶性高分子物質を含有させることが好ましい。前記水溶性高分子物質を更に含有させることにより、湿式成形時に存在させる多量の水分の中で、炭化珪素粒子の沈降が起こり、粒度の相違に原因した局所的な炭化珪素の充填率の差異が発生することを防止するためである。
【0030】
前記水溶性高分子物質としては、メチルセルロース、ポリビニルアルコール或いは高分子量不飽和ポリカルボン酸、高分子量不飽和ポリカルボン酸の長鎖アミン塩等が挙げられるが、本発明者らの実験的検討によれば、高分子量不飽和ポリカルボン酸、高分子量不飽和ポリカルボン酸の長鎖アミン塩が、炭化珪素成形体の炭化珪素充填率を低下することがなく、好ましい。また、水溶性高分子物質の添加量については、炭化珪素粉100質量部に対して0.05〜2.0質量部であれば良く、0.1〜1.0質量部が好ましい範囲である。
【0031】
更に、本発明では、前記水溶性高分子物質に相溶性のシリコン樹脂を添加することが好ましい。前記シリコン樹脂は、湿式成形後の乾燥、焼成を経て、シリカゾルと同様な焼結バインダーとして機能するので、実質的に、水溶性高分子物質等の有機物質が乾燥、焼成工程で揮発し、得られる成形体の炭化珪素充填率が低下することを防止するのに役立つ。シリコン樹脂の添加量は、水溶性高分子物質の100質量部に対して1〜10質量部が一般的である。
【0032】
上記の添加剤を配合した炭化珪素粉末は、水を炭化珪素100質量部に対して15〜80質量部を含有する実施的にスラリーと呼ばれる粘性を示す状態を呈している。前記スラリーを用いて湿式プレス成形するに際して、成形直後のもの(湿潤状態の炭化珪素質成形体;以下、ウエットプリフォームという)の型離れが悪いことがあり、量産性を妨げることがある。
【0033】
本発明おいて、前記問題をも改善するために、特定の型を用いることが望ましい。即ち、従来湿式プレス成形において、型には発泡性の樹脂からなるものが用いられ、前記樹脂の発泡部分にプレス成形時の加圧により原料の液状組成物中の除去すべき溶媒を移動させるという機能を持たせていた。しかし、このものを炭化珪素粉末を分散させた液状組成物に適用しようとすると、型が摩耗し、量産性が確保できないという問題がある。
【0034】
即ち、本発明の好ましい実施態様として、湿式プレス成形時に用いる型が、金属又はセラミックスからなり、しかも該型が構成するキャビティに接続されているベントを有している型であることを特徴としている。前記構造の型を用いることで、プレス加圧時に、ベントを通じて除去すべき溶媒を液状組成物から取り除き、しかもこのときに炭化珪素粉末による摩耗も著しく改善することができる。
【0035】
前記、型の材質としては、緻密なもので耐摩耗性あれば良く、型に付加する圧力の大きさ、型への加工性、費用等を考慮してステンレス、炭素鋼、ダイス鋼等の金属、或いは、アルミナ、石膏等のセラミックスから選択すれば良い。
【0036】
本発明は、前記緻密質材質からなる型が、キャビティに接続されているベントを有することを特徴としている。この部分を通じて、プレス成形時に、液状組成物中の除去されるべき溶媒を型外に排出でき、緻密で所望の形状を有する炭化珪素成形体を容易に得ることができる。更に、該ベントを通じて、型内のキャビティを真空排気するすることができ、液状組成物内の泡の巻き込みがあっても、前記緻密な炭化珪素成形体が一層得易くなる特徴がある。
【0037】
更に、型内で得られた炭化珪素成形体を型から取り出す際に、キャビティ内面から剥離しにくいことがあるが、前記ベントの一部を利用して、プレス成形後に空気等を送気することで、容易に剥離することができ、生産性を高めることもできるという効果が得られる。
【0038】
前記ベントの大きさについては、そのキャビティとの接続部の面積が、プレス成形時に液状組成物中にある炭化珪素粒子が入り込まない程度にまで小さいことが望まれ、本発明者らの実験的検討結果に基づけば、約200μmである。ここで、前記大きさは、ベントの前記接続部の断面の最も小さい差し渡しの部分である。尚、ベントのキャビティとの接続部の形状に関しては、前記のことが守られる限りどの様な形状であっても良いが、型の作り易さから、円形、スリット状のものが多用される。
【0039】
しかし、前述の通りに、炭化珪素粒子のベントへの入り込みを防止しようとすると、ベントのキャビティへの接続部の面積が必ずしも十分に確保できないことがある。この場合、短時間にプレス成形することが困難となり、生産性高く炭化珪素成形体を得難い、或いは溶媒の除去が意図するように進まないという問題が発生することがある。
【0040】
本発明において、「キャビティに接続されているベントのキャビティとの接続部の断面積の総和」の「キャビティの全面積」(面内空隙率という)が、0.5%以上、好ましくは1.0%以上である型を用いることを特徴とする。この構成を採用するとき、前記問題が発生することなく、高品質の炭化珪素成形体を生産性高く得ることができる。
【0041】
更に、本発明において、湿潤紙等の溶媒を吸収する物質を型の内面に設けることを特徴としている。これにより、一層安定して離型することができ、しかもこれを利用して得られた強度の弱いウエットプリフォームに変形や破損することなく、次の乾燥工程へ運搬することができる。
【0042】
前記湿式プレス法での主要な条件は、公知の条件で十分であり、例えば、圧力1〜10Paで加圧し、30秒程度脱水する。また、湿潤注型法での条件も、公知の条件に基づけば良く、例えば3〜5分の脱水条件で十分である。
【0043】
上記操作で得られたウエットプリフォームを、乾燥し、更に焼成して、炭化珪素成形体が得られる。乾燥条件としては、成形体中の遊離の水分を除去できればよく、一般的に、100℃以上に加熱すればよい。焼成については、シリカゾルを焼結バインダーとしていることから、600℃〜1000℃の温度範囲で焼成することが好ましい。600℃未満では、十分な強度を発現できないことがあるし、1000℃を超える温度では、焼成時の雰囲気の影響を受けて、炭化珪素が酸化されたり、シリカが飛散することがあるからである。焼成時の雰囲気は、前記温度範囲ならばどのようなものであっても構わず、大気、酸素、窒素、水素、アルゴン等のガス雰囲気の他、真空であっても良い。
【0044】
上記操作で得られた炭化珪素成形体は、炭化珪素充填率が50〜80体積%、好ましい場合には60〜75体積%であり、炭化珪素が高充填されたアルミニウム−炭化珪素複合体の原料として好適である。
【0045】
次に、前記炭化珪素成形体を用い、アルミニウムを主成分とする金属を含浸させて炭化珪素複合体が得られる。アルミニウムを主成分とする金属を含浸する方法としては、溶湯鍛造法、ダイカスト法、或いはそれらを改良した方法等の公知の方法が適用できる。また、前記の方法において、含浸操作の直前にプリフォームを加熱することが好ましい。
【0046】
前記アルミニウムを主成分とする金属としては、炭化珪素質複合体を作製する際に通常使用されている珪素含有アルミニウム合金、珪素とマグネシウムを含有するアルミニウム合金並びにマグネシウム含有アルミニウム合金が挙げられる。この中で、溶融金属の融点が低くく作業性のよいことから珪素とマグネシウムを含有するアルミニウム合金が好ましく、また得られる複合体の熱伝導率向上の面からはマグネシウム含有アルミニウム合金が好ましく選択される。本発明に於いては、前者にあっては、珪素は熱伝導率を低下させる原因となることから、その量を18質量%以下とするのがよい。また、マグネシウム量については、その量が少ないと合金の融点が低下せず作業性が悪化すること、その過量では得られる複合体の熱伝導率が低下する原因となること等を考慮し、0.5〜2.5質量%が好ましい。
【0047】
以下、実施例、比較例に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。
【0048】
【実施例】
[実施例1]
平均粒径が60μmの炭化珪素素粉末(大平洋ランダム社製)65質量部と、平均粒径が7μmの炭化珪素粉末(屋久島電工社製)35質量部を混合した。この炭化珪素混合粉末に、シリカゾル(日産化学社製)12質量部、水8質量部、セメント用混和剤(グレースケイミカル社製、商品名スーパー200)3.5質量部及び増粘剤(ビッグケミ−・ジャパン社製、商品名BYK−P104S)を加え十分混合して、液状組成物を作製した。
【0049】
この液状組成物を250g秤量後、材質がSUS304である凹凸型の予め表面に紙を配置した凹型側に充填した。なお、この凹凸型は、凹型の凹みが138mm×138mm×10mmhであり、凸型の凸部が前記した形状に適合するように作られたものであり、凹型の凹表面及び凸型の凸表面に、液体が抜けられるように、幅0.2mm、長さ5.5mmのスリットが5本形成されている直径10mmのベント及び幅が0.2mm、長さが3.5mmのスリットが4本からなる直径6mmのベントを各々64個及び63個埋め込み(面内空隙率は2.8%)、型内部からの液体を捕集でき、かつ真空ラインと結合する構造を有している。
【0050】
凹型に液体組成物を充填し、その上の凹部を覆える大きさの紙を載せた後、凸型と合わせて、プレス機にて成形圧力が6.0Paとなるまで圧縮、この状態で凹凸型のベントを通して20秒真空引きしながら保持した。その後、凹型の真空引きを止め、凸型側の真空引きを継続、圧縮を止めることにより、成形体を凸型に吸着させることで、成形体を凹型から取り出したのち、凸型の真空引きを止め、凸型から離すことにより成形体を得た。この成形体の外観を観察した結果を表1に示す。
【0051】
上記の方法で作製した成形体については、乾燥後、800℃で2時間、空気中焼成し、表面を加工後、重量及び形状寸法から相対密度を算出した。結果を表1に併せて示した。
【0052】
【表1】
【0053】
[実施例2]
成形圧力を3.0Paとしたこと以外、すべて実施例1と同様な方法にて成形体を作製した。結果を表1に示す。
【0054】
[実施例3]
成形圧力を5.8Paとしたこと、真空引きをしなかったこと以外は、すべて実施例1と同様な方法にて成形体を作製した。結果を表1に示す。
【0055】
[実施例4]
成形圧力を3.1Paとしたこと以外は、すべて実施例3と同様な方法にて成形体を作製した。結果を表1に示す。
【0056】
[実施例5]
実施例1のベントとして直径10mmのものを36個配置(面内空隙率1.0%)したこと、成形圧力を5.2Paとしたこと以外は、すべて実施例1と同様な方法にて成形体を作製した。結果を表1に示す。
【0057】
[実施例6]
成形圧力を4.5Paとしたこと以外は、すべて実施例5と同様な方法にて成形体を作製した。結果を表1に示す。
【0058】
[実施例7]
成形圧力を5.1Paとしたこと、真空引きを行わなかったこと以外は、すべて実施例5と同様な方法にて成形体を作製した。結果を表1に示す。
【0059】
[実施例8]
成形圧力を4.3Paとしたこと、真空引きを行わなかったこと以外は、すべて実施例5と同様な方法にて成形体を作製した。結果を表1に示す。
【0060】
[比較例1]実施例1のベントとして直径10mmのものを25個配置(面内空隙率0.7%)したこと以外は、すべて実施例1と同様な方法にて成形体を作製した。結果を表1に示す
【0061】
[比較例2]実施例1の炭化珪素混合粉末100質量部にシリカゾル12重量部、更に30質量%ポリビニルアルコール水溶液を20質量部を加え、十分に混合した後、スプレードライヤー装置にて造粒、乾燥した。得られた造粒粉を内寸30mm×50mmの金型に200g投入し、100Paの圧力で乾式プレス成形した。得られた成形体の相対密度は55.3%であった。
【0062】
【発明の効果】
本発明の炭化珪素成形体の製造方法によれば、放熱部品に好適な、高熱伝導率で、熱膨張率が低く、しかも反りの少ない平板状の炭化珪素複合体を容易に得ることができる炭化珪素成形体が、安価に、安定して提供でき産業上非常に有用である。
【0063】
本発明の炭化珪素成形体の製造方法は、従来の乾式成形法で必要とされた高圧力を必要とする高価なプレス装置を必要としないし、また金型の摩耗もないので、安価に炭化珪素質複合体を量産できる。
Claims (3)
- 溶媒に炭化珪素粉末を分散してなる液状組成物を原料として用いて、成形時に用いる型が、金属又はセラミックスからなり、しかも該型が構成するキャビティに「キャビティに接続されているベントのキャビティとの接続部の断面積の総和」の「キャビティの全面積」に対する割合(面内空隙率)が、1.0%〜2.8%であるベントを有し、湿式プレス成形時に、前記ベントを利用して、キャビティを真空引きして湿式プレス成形することを特徴とする炭化珪素成形体の製造方法。
- キャビティ表面に溶媒を吸収する物質を配置しながら湿式プレス成形することを特徴とする請求項1記載の炭化珪素成形体の製造方法。
- アルミニウム−炭化珪素複合体を製造するための炭化珪素成形体であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の炭化珪素成形体の製造方法。
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