JP4416125B2 - 高圧放電ランプ点灯装置 - Google Patents
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Description
液晶パネルを使う方式は、1枚式と3枚式があるがいずれの方式であっても、光源からの放射光を3色(RGB)に分離して、液晶パネルにおいて画像情報に対応させた光を透過調整して、その後、パネルを透過した3色を合成させてスクリーン上に投射させる方式である。
一方、DLPを使う方式は、光源からの放射光をRGBの領域が分割形成された回転フィルターを介して空間変調素子(光変調デバイスともいい、具体的にはDMD素子などをいう)などを時分割で照射し、このDMD素子で特定の光を反射させてスクリーンに照射するものである。DMD素子とは、1画素ごとに小さな鏡を数百万個敷き詰めたものであって、一つ一つの小さな鏡の向きを制御することで光の投射が制御される。
DLP方式は、液晶方式に比較して、光学系が簡易であるとともに3枚もの液晶パネルを使う必要がないことから装置全体が小型簡易化するメリットがある。
また、この種の水銀蒸気圧の高い放電ランプは、点灯中、電極の先端に突起が形成されることが知られている。例えば、特許文献1には、このような突起の存在を問題点と捉えて、突起を消滅させる技術が紹介されている。具体的には、定常点灯周波数の中に、より低い周波数(例えば、5Hz)を1秒以上存在させることで、電極の表面を溶融させて突起を完全に消滅するための技術が開示されている。
そして、給電装置は、前記超高圧放電ランプに対して、60〜1000Hzの範囲から選択された周波数を定常点灯周波数として交流電流を供給するとともに、アーク起点となる突起以外の余計な突起の発生を防止するために、前記定常点灯周波数よりも低い周波数であって、10〜200Hzの範囲から選択された周波数を低周波数として、この低周波数の交流電流を、前記定常点灯周波数の交流電流に対して、半サイクル以上5サイクル以下の長さであって、0.01秒〜120秒の範囲から選択された間隔で挿入しながら点灯させることを特徴とする。
第一に、電極先端に突起を形成させて、当該突起を起点として安定なアーク放電を形成できる。特許文献1に開示されるように、突起を消滅させる技術ではなく、積極的に突起を作るわけである。これにより、当該突起を起点としたアークが形成されるため、放電ランプの点灯を安定化させることができるという効果を有する。
第二に、アーク起点となる突起以外の余計な突起の発生を防止できる。これは、電極先端に突起が複数個形成されると、これら突起間でいわゆるアークジャンプが発生し、結果としてアークが不安定になるからである。本発明は、上記アーク起点となるべき突起のみを発生、維持させるとともに、当該突起以外の余計な突起が生成、成長することを防止するわけである。
放電ランプ10は、石英ガラスからなる放電容器によって形成された概略球形の発光部11を有する。この発光部11の中には一対の電極20が2mm以下の間隔で対向配置している。また、発光部11の両端部には封止部12が形成される。この封止部12には、モリブデンよりなる導電用金属箔13が、例えばシュリンクシールにより気密に埋設される。金属箔13の一端には電極20の軸部が接合しており、また、金属箔13の他端には外部リード14が接合して外部の給電装置から給電が行なわれる。
発光部11には、水銀と、希ガスと、ハロゲンガスが封入されている。水銀は、必要な可視光波長、例えば、波長360〜780nmの放射光を得るためのもので、0.2mg/mm3以上封入されている。この封入量は、温度条件によっても異なるが、点灯時200気圧以上で極めて高い蒸気圧となる。また、水銀をより多く封入することで点灯時の水銀蒸気圧250気圧以上、300気圧以上という高い水銀蒸気圧の放電ランプを作ることができ、水銀蒸気圧が高くなるほどプロジェクター装置に適した光源を実現できる。
放電ランプの数値例を示すと、例えば、発光部の最大外径9.5mm、電極間距離1.5mm、発光管内容積75mm3、定格電圧70V、定格電力200Wであり交流点灯される。
また、この種の放電ランプは、小型化するプロジェクター装置に内蔵されるものであり、全体寸法として極めて小型化が要請させる一方で高い発光光量も要求される。このため、発光部内の熱的影響は極めて厳しいものとなる。ランプの管壁負荷値は0.8〜2.0W/mm2、具体的には1.5W/mm2となる。
このような高い水銀蒸気圧や管壁負荷値を有することがプロジェクター装置やオーバーヘッドプロジェクターのようなプレゼンテーション用機器に搭載された場合に、演色性の良い放射光を提供することができる。
すなわち、ランプ点灯中に電極先端付近の高温部から蒸発したタングステン(電極の構成材料)は、発光管内に存在するハロゲンや残留酸素と結合して、例えばハロゲンがBrならWBr、WBr2、WO、WO2、WO2Br、WO2Br2などのタングステン化合物として存在する。これら化合物は電極先端付近の気相中の高温部においては分解してタングステン原子または陽イオンとなる。温度拡散(気相中の高温部=アーク中から、低温部=電極先端近傍に向かうタングステン原子の拡散) 、および、アーク中でタングステン原子が電離して陽イオンになり、陰極動作しているとき電界によって陰極方向へ引き寄せられる(=ドリフト)ことによって、電極先端付近における気相中のタングステン蒸気密度が高くなり、電極先端に析出し、突起を形成するものと考えられる。
この突起は、いかなる放電ランプであっても生じるというわけではない。電極間距離が2mm以下であって、発光部に0.15mg/mm3以上の水銀と、希ガスと、1×10−6〜1×10−2μmol/mm3の範囲でハロゲンを封入したショートアーク型放電ランプにおいて、ランプ点灯に伴い、突起が形成されることが知られている。
なお、突起の大きさについて、数値例をあげると、電極の最大径(放電方向に垂直な方向)がφ1.0〜1.5mmであって、電極間距離が1.0〜1.5mmの場合に、約0.2〜0.6mm程度の直径となる。
なぜなら、発光管内に0.2mg/mm3以上もの水銀を含み、動作圧力が200気圧以上にも達する放電ランプにおいては、高い蒸気圧によって、アーク放電が小さく絞られ、結果として放電起点も小さく絞られるからである。
このため、特許文献1に開示するように、突起を消滅させた球面状の電極では、放電起点が小刻みに移動してしまい、プロジェクター装置の映像画面にフリッカー(チラツキ)という問題を導くからである。特に、2mm以下という短い電極間距離に形成されるアーク輝点は、0.5mm以下というわずかな移動であっても、映像画面にとして致命的なフリッカーとなりかねない。
点灯装置は放電ランプ10と給電装置から構成される。給電装置は、直流電圧が供給される降圧チョッパ回路1と、降圧チョッパ回路1の出力側に接続され直流電圧を交流電圧に変化させて放電ランプ10に供給するフルブリッジ型インバータ回路2(以下、「フルブリッジ回路」ともいう)と、放電ランプに直列接続されたコイルL1、コンデンサC1、およびスタータ回路3から構成される。
なお、降圧チョッパ回路1、フルブリッジ回路2、スタータ回路3により給電装置を構成し、放電ランプ10を含めて点灯装置と称される。
フルブリッジ回路2は、ブリッジ状に接続されたトランジスタやFETのスイッチング素子Q1〜Q4と、スイッチング素子Q1〜Q4の駆動回路G1〜G4から構成される。なお、スイッチング素子Q1〜Q4には、各々に並列にダイオードが逆並列に接続されることもあるが、この実施例においてダイオードは省略している。
上記スイッチング素子Q1〜Q4は、図示略の制御部を介して駆動回路G1〜G4により駆動される。
上記スイッチング素子Q1〜Q4を駆動するに際し、スイッチング素子Q1〜Q4の同時オンを防止するため、交流矩形波の極性切り替わり時に、スイッチング素子Q1〜Q4の全てオフにする期間(デッドタイムTd)が設けられる。
図示されるように、放電ランプの電流波形は、定常周波数、例えば200Hzで駆動される中で、間欠的に当該定常周波数より低い低周波数、例えば10Hzで駆動される。
この低周波数は、定常周波数より低い周波数であって、5〜200Hzの範囲、好ましくは5〜50Hzの範囲から選択される。また、この低周波数は、0.01秒〜120秒、好ましくは0.1秒〜120秒、あるいは1秒〜120秒の間隔で周期的に発生する。この低周波数が挿入される間隔は、図において、低周波挿入周期と示される期間であり、1回の低周波波形が始めるタイミングから次の低周波波形が始まるタイミングまでの時間間隔と定義される。また、低周波点灯が挿入される長さは、図のように1周期に限定されるものではなく、後述するように、半周期以上5周期以下の期間から選択される。
一例をあげると、放電ランプの定格電力が120Wのとき、定常周波数は90Hz、低周波周波数は5Hz、挿入される長さは1周期数、挿入間隔は15秒となる(点灯例1)。また、放電ランプの定格電力が150Wのとき、定常周波数は125Hz、低周波周波数は5Hz、挿入される長さは1周期数、挿入間隔は15秒となる(点灯例2)。また、放電ランプの定格電力が200Wのとき、定常周波数は200Hz、低周波周波数は7.5Hz、挿入される長さは1周期数、挿入間隔は10秒となる(点灯例3)。また、放電ランプの定格電力が250Wのとき、定常周波数は400Hz、低周波周波数は15Hz、挿入される長さは1周期数、挿入間隔は0.1秒となる(点灯例4)。また、放電ランプの定格電力が135Wのとき、定常周波数は360Hz、低周波周波数は45Hz、挿入される長さは0.5周期数、挿入間隔は0.02秒となる(点灯例5)。また、放電ランプの定格電力が135Wのとき、定常周波数は540Hz、低周波周波数は180Hz、挿入される長さは1周期数、挿入間隔は0.02秒となる(点灯例6)。
しかし、突起を生成するだけの制御のみであれば、本来必要となるべき突起以外に、余計な突起が派生することがある。本願発明において、低周波数点灯を定常周波数点灯の中に周期的に挿入する制御は、まさに、このような余計な突起の生成を防止することにほかならない。
ランプを点灯させると、電極の球部20aの先端中心に突起21(第一の突起)が形成される。この突起21は、放電起点となるものでアークを安定させるために必要な突起である。そして、本願発明の制御を行なわない場合は、ランプを引き続き点灯させるにつれて、突起21の周囲に別の突起22(第二の突起)が発生する。この突起22は、本来必要のない突起であり、突起21との間で放電起点が移動することで、いわゆるフリッカの問題を生じさせる。第二の突起は一つとは限らず、多数発生する場合もある。
すなわち、放電ランプ動作中の電極表面には温度分布が存在し、先端部が最も温度が高く、後方ほど温度が低い。
電極先端付近の高温領域では、タングステンの蒸発および放電容器内に残存する酸素と反応して生成されるWO、WO2などの酸化タングステンの蒸発とによって、電極表面が浸食される。ただし、放電起点である電極先端には、アーク中の高いタングステン蒸気密度のため、むしろタングステンが析出、堆積し、前記第一の突起が形成されることは前述のとおりである。
一方、電極表面の低温領域では、放電容器内に封入された臭素および残存する酸素との反応によって生成されるWBr、WBr2、WO2Br、WO2Br2などの蒸発によって、やはり電極表面は浸食される。
すなわち、電極表面の温度によって蒸発するタングステン化合物の種類は異なるが、電極表面の高温領域、低温領域とも浸食されることになる。
次に、電極表面の上記高温領域と低温領域の中間の温度領域においては、タングステンの熱化学的性質によって上記のようなタングステン化合物の生成が少なく、したがって、電極表面の浸食は少ない。むしろ、放電容器内に存在するタングステン蒸気の析出、堆積の方が支配的であるため、前記第二の突起が発生成長するのである。
本願発明の周波数制御は、上記第2の突起を消滅させるために作用するものといえる。このメカニズムについて以下に説明する。
ここで、前記第二の突起の発生成長を抑制するためには、電極表面の温度を時間的に変化させることが本質的に重要である。例えば、電極の寸法を小さくすることによって全体的に電極表面の温度を高く設定したとしても、前記第二の突起が発生成長する位置が電極後方へずれるだけであって、その発生成長を抑制することはできない。すなわち、本発明は電極表面の温度を適当な時間間隔で変化させて、第二の突起が一定の位置に発生することを妨げることによって、その形成を抑制するという発想に基づいている。
逆に、挿入する低い周波数が200Hzを超えたり、半周期未満の低い周波数を挿入した場合は、前記第二の突起が発生する中間的な温度領域の十分な温度上昇が得られないため、第二の突起の発生成長を抑制できない。また、挿入する間隔が120秒を超えた場合も、定常点灯の間に第二の突起が低い周波数の挿入によって浸食し得ないまでに成長してしまう。
なお、挿入する間隔は、0.1秒以上の場合であれば、電極の温度上昇を完璧に抑えることができ、また、挿入する周波数は50Hz以下であれば、第二の突起の発生成長を完璧に抑えることができる。
(a)は、低周波数の電流波形を半周期挿入した場合を示す。この場合、低周波数挿入周期は、一方の電極が陽極として動作しつづけるため、図示の期間Taを半周期の長さと定義して低周波数挿入周期が解釈される。なお、このような半周期の低周波数点灯を挿入する場合は、前の挿入とは異なる極性で挿入することが好ましい。
(b)は、低周波数の電流波形が、半周期より大きく1周期より小さい場合を示す。この場合は、電流の極性が固定される期間が長い期間を半周期と定義できる。つまり、図においては、期間Tbを半周期の長さと定義して、図では3/4周期の期間、低周波電流を挿入したことと解釈できる。極性の固定が長い期間を半周期と定義する理由は、当該期間で電極表面の昇温による第二の突起の消失効果を奏しているからである。なお、このような半周期より大きく1周期より小さい低周波点灯を挿入する場合は、期間の長い方の極性が交互に変わるように挿入することが望ましい。両電極を均等に昇温できるからである。
(c)は、低周波数点灯の挿入に際し、周波数が異なる(変化する)形態を示している。この場合は、最も低い周波数によって挿入サイクル(何周期挿入したか)が定義される。図では、期間Tcを半周期と定義して、低周波数が1周期挿入されたものと解釈できる。最も低い周波数の波形をもって低周波と定義する理由は、当該周波数の挿入期間が極性の固定時間が最も長くなり、電極先端の昇温効果を発揮できるからである。
以上の定義は、低周波数の挿入状態(形態)が電流波形として不明瞭になることを防止するもので、低周波数の挿入期間や挿入サイクルを明確にするために定義したものといえる。
本発明は、封入水銀量が0.2mg/mm3以上という放電ランプにおいて、電極先端に突起を形成することがアークを安定させるために不可欠であるということを発明したにほかならない。そして、電極先端には突起が存在することを前提として、不必要な突起が発生、成長することを防止するために、所定の低周波数の点灯を挿入したということが大きな特徴といえる。
その理由は、フルブリッジ回路2のスイッチング素子Q1〜Q4のデットタイムにおいて、放電ランプの光出力の落ち込みを低下できるからである。
この効果は、液晶パネルを使う方式とDLPを使う方式のいずれの方式であっても時間経過に伴う光量変動を抑えることができるという点で意味はある。また、特に、DLP方式の場合においては、DMD素子や回転フィルターなどの駆動と同期を図ることなく、放電ランプの極性を変化できる。従って、本発明の定常周波数による点灯に、低周波数の点灯を挿入することが、突起の制御という観点から自由に行なえるという点において、その効果は大きい。
スイッチ素子Q5はSCRサイリスタなどから構成される。スイッチ素子Q5が駆動回路G5によって導通すると、コンデンサC2の充電電圧が高電圧トランスT2の一次巻線に発生して、ニ次巻線に絶縁破壊用トリガ電圧が発生する。
この回路構成は、点灯始動時のみ必要となる高電圧発生用トランスT2が、点灯始動後の定常点灯時の電流供給経路に存在しないという点で、常点灯時に形成される電流ループにおけるインダクタンスの総和であるコイルL1を小さくできるため有利である。
トリガ電圧は5kv〜20kvであり、例えば13kvである。また、無負荷開放伝電圧は250v〜400vであり、例えば350vである。
さらに、降圧チョッパ回路に存在するコンデンサCxは、点灯始動時と定常点灯時において、容量が変化するような構成を採用することができる。この構成は、例えば、コンデンサを並列に複数個接続して、スイッチ素子により回路構成を切替えることが考えられる。
(b)で示される電極寸法は、段落0023で紹介した点灯例1〜3による寸法例を表す。発光部寸法は図1に示す発光部11の放電方向と垂直な方向の最大外径を外径値、最大内径を内径値としている。
このような数値例は、一例であって、本願発明の技術的範囲を拘束するものではない。
2 フルブリッジ回路
3 スタータ回路
10 放電ランプ
20 電極
21 突起
Claims (3)
- 石英ガラスからなる放電容器内に、先端に突起が形成された一対の電極が2.0mm以下の間隔で対向配置して、この放電容器に0.20mg/mm3以上の水銀と、10−6μmol/mm3〜10−2μmol/mm3の範囲のハロゲンが封入された高圧放電ランプと、この放電ランプに対して交流電流を供給する給電装置から構成される高圧放電ランプ点灯装置において、
前記給電装置は、前記高圧放電ランプに対して、
60〜1000Hzの範囲から選択された周波数を定常点灯周波数として交流電流を供給するとともに、
アーク起点となる突起以外の余計な突起の発生を防止するために、
前記定常点灯周波数よりも低い周波数であって、10〜200Hzの範囲から選択された周波数を低周波数として、
この低周波数の交流電流を、前記定常点灯周波数の交流電流に対して、半サイクル以上5サイクル以下の長さであって、0.01秒〜120秒の範囲から選択された間隔で挿入しながら点灯させることを特徴とする高圧放電ランプ点灯装置。 - 前記給電装置は、少なくとも2個のスイッチング素子を有するインバータ回路と、このインバータ回路の後段であって前記放電ランプと直列に接続された210μH以下のコイルと、前記スイッチング素子に対しデッドタイムを設けながら交互にオンオフ駆動する制御部を有することを特徴とする請求項1の高圧放電ランプ点灯装置。
- 前記超高圧放電ランプは、前記放電容器の外面にトリガ電極を配置していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高圧放電ランプ点灯装置。
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