本発明の高分子凝集剤は、高分子材料にもともと含まれるシアノ基の少なくとも一部に親水性の高い分子構造部を導入するか、さらにこの後に必要に応じて塩の形成や加水分解を行うことにより、水溶性あるいは凝集性能を調節したものである。得られた高分子凝集剤に十分に高い親水性を付与し、さらにシアン化水素を発生させない安全な廃棄までも想定すると、上記シアノ基はほぼ大部分が親水性の高い分子構造部に変換されていることが好適である。
ここで、親水性の高い分子構造部としては、無機又は有機のアミノ化合物が付加された分子構造部、あるいはシアノ基を加水分解することにより形成されるカルバモイル基が挙げられる。
前者の場合、シアノ基に付加されるアミノ化合物としては、アンモニア、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン等の無機アミノ化合物や、アンモニアの水素原子の1個または2個が炭化水素基で置換された第1アミンまたは第2アミン等の有機アミノ化合物を用いることができる。上記炭化水素基の炭素骨格は、飽和,不飽和の別、鎖状,環状の別、直鎖状,分岐状の別をいずれも問わない。また、炭化水素基の骨格中に、炭素、水素、窒素以外のヘテロ元素(酸素、硫黄、ハロゲン等)が含有されていてもよい。
具体的に、上記有機アミノ化合物としては、炭素数1〜12の飽和及び/又は不飽和の鎖状及び/又は環状の炭化水素基で置換された第1アミン及び/又は第2アミン、1分子内に2個以上のアミノ基を有する前記第1アミン及び/又は第2アミン、分子内に窒素以外のヘテロ原子を有する前記第1アミン及び/又は第2アミン等が挙げられる。
上記1分子内に2個以上のアミノ基を有する第1アミンあるいは第2アミンとしては、メチレンジアミン、エチレンジアミン、トリメチルジアミン(ジアミノプロパン)、テトラメチレンジアミン(ジアミノブタン)、ペンタメチレンジアミン(ジアミノペンタン)、ヘキサメチレンジアミン(ジアミノヘキサン)、ヘプタメチレンジアミン(ジアミノヘプタン)等のアルキレンジアミン類や、N−メチルメチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N−ベンジルエチレンジアミン、N−メチル−1,3−ジアミノプロパン、N−ブチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N−ブチル−1,3−ジアミノプロパン等のN−アルキルアルキレンジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、ピペリジン等のアルキレンポリ(3以上)アミン類、1,2−ジアミノシクロヘキサン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の環式ポリアミン類等を例示することができる。
分子内に窒素以外のヘテロ原子を有するアミノ化合物としては、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、ペンタノールアミン等のヒドロキシルアルキルアミン類等が挙げられ、その他、エタンチオールアミン等も挙げることができる。
上記アミノ化合物に特に限定はないが、ポリアミン化合物(特にエチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン)を高分子材料との反応に用いると、シアノ基との反応によりイミダゾリン環を形成することができるため好適である。
無機あるは有機のアミノ化合物が付加して生じた分子構造部は、イミダミノあるいはイミダゾリン骨格を有するところとなり、窒素原子上の孤立電子対に起因して塩基性を示す。
この窒素原子が無機酸や有機酸から供給されるプロトンに配位結合すると、窒素原子が陽電荷を帯び、酸塩を形成する。このとき無機酸としてはたとえば、硫酸、クロルスルホン酸、塩酸、硝酸、リン酸を用いることができる。また有機酸としては、酢酸、乳酸、フタル酸、フェノール等を挙げることができる。
また、上記分子構造部にハロゲン化炭化水素や硫酸エステルが与えられると、分子構造部の窒素原子がハロゲン化炭化水素や硫酸エステルの炭化水素基と結合することにより陽電荷を帯び、ハロゲンを対イオンとする四級アミン塩が生成する。このときのハロゲン化炭化水素としては、塩化メチルや塩化ベンジルを、また硫酸エステルとしてはジメチル硫酸やジエチル硫酸を挙げることができる。
これらの酸塩および四級アンモニウム塩は、いずれも高い水溶性を有する。
一方、後者(カルバモイル基等の親水基)は、高分子材料にもともと含まれる疎水性の強いシアン基の少なくとも一部を、親水性の基、すなわちカルバモイル基(−CONH2)、あるいはさらにカルボキシル基(−COOH)やその塩(−COOX:Xは陽イオン)に置き換えることにより形成されたものである。
このカルバモイル基あるいはカルボキシル基は、製法上は加水分解反応による官能基の変換で得られるものである。この官能基の変換は、シアン基→カルバモイル基→カルボキシル基(またはその塩)の順序を経る。
本発明の高分子凝集剤の出発材料となる高分子材料には当然のことながら、アンモニアまたはアミノ化合物が付加し得る形、あるいは親水基と置き換わり得る形でシアノ基が含有されている必要がある。アクリロニトリル(CH2=CH−CN)をモノマー・ユニットとして含む高分子材料であれば、シアノ基はポリマー分子の側鎖として結合されているので、好都合である。
ここで、一例として、アクリロニトリル・モノマー・ユニットのシアノ基にアンモニア、ヒドロキシルアミン、エチレンジアミン、第1アルキルアミン、エタノールアミンがそれぞれ付加した場合に生成する分子構造部、また、エチレンジアミンの作用によりイミダゾリン環が生成した場合にさらに酸塩、四級アンモニウム塩、あるいは加水分解により得られる構造を図1にまとめて示す。
上記高分子材料は、アクリロニトリルのホモポリマーに限られず、他のモノマー・ユニットとの共重合体(コポリマー)であっても良い。他のモノマー・ユニットとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、塩化ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、エチレン、プロピレン、無水フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジンから選ばれるいずれか1種類、または数種類の組合せを挙げることができる。なお、上記アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルのエステル結合側鎖は、炭素数1〜10程度の飽和または不飽和炭化水素にて構成されるものが好適である。
アクリロニトリルと上記の他のポリマーとを組み合わせた代表的な高分子材料としては、アクリル繊維、ニトリル樹脂、SAN樹脂(スチレン−アクリロニトリル樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン−アクリル樹脂、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン樹脂、ニトリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等がある。
ところで、上記高分子材料がアクリロニトリルのホモポリマーである場合には、シアノ基の含有量は100モル%となるが、アクリロニトリルの共重合体である場合には、アクリロニトリルのモノマー・ユニット含有率によってシアノ基の含有量も当然変化する。シアノ基の含有率が変われば、アミノ化合物の付加反応により生成する分子構造部のモル数の上限値も変わり、さらにこの分子構造部が形成できる塩や該分子構造部の変化により生ずる加水分解構造の上限値も変わる。同様に、シアノ基の含有率が変われば、後から導入できるカルバモイル基のモル数の上限値も変わり、さらにこのカルバモイル基に替わって導入されるカルボキシル基またはその塩のモル数の上限値も変わる。
つまり、シアノ基の含有比がもともと少ないと、本発明の高分子凝集剤は高い親水性や凝集性能を持ち得ないのである。
そこで本発明では、上記高分子材料にシアノ基が全モノマー・ユニットの15モル%以上含有されていること、つまり、アクリロニトリルのモノマー・ユニット含有率が15モル%以上であることが好適である。この値が25モル%以上であれば、なお好ましい。
なお、上記高分子材料は、重量平均分子量(Mw)がおおよそ5000以上であることが好適である。これより分子量が低い場合には、高分子凝集剤としての凝集性能が失われる傾向が強い。
ところで、本発明の高分子凝集剤の原料となる高分子材料は、新規に製造されたいわゆるバージン材であっても無論構わないが、地球資源の有効利用と環境破壊防止の観点から、他の目的で使用された使用済み廃材に含まれるものを用いることが特に好適である。
これらの廃材は、たとえば電気機器,自動車,文房具,計測機器,建材,化粧品等に使用された筐体,ケース,カバー,容器等である。また、この廃材は他の廃材と混合されたものであっても良い。このときの他の廃材とはたとえば、ポリエステル,ナイロン,ポリウレタン,ポリアミド,ポリフェニレンエーテル,ポリカーボネート,ポリフェニレンスルフィド,ポリエチレン・テレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,絹,羊毛,木綿等の合成または天然繊維であり、着色剤,安定化剤,保水剤,難燃剤,可塑剤,充填剤等の各種添加剤が含まれていても良い。
上述のような他の廃材が混在する場合、他の廃材の含有量は全体の60重量%以下に抑えるのがよい。60重量%を越えると、他の廃材に含まれる官能基の影響が強く現れることになり、得られる高分子凝集剤に所望の水溶性が付与されない虞れがあるからである。
したがって、上記廃材は工場,販売店,一般家庭のいずれから回収されるものであっても良いが、得られる高分子凝集剤の組成や性能を管理する観点からは、他の廃棄物が混入されやすい一般家庭からの回収廃材よりも、単一組成の廃材が大量に発生する機会の多い工場や販売店からの回収廃材の方が好ましい。
次に、本発明の高分子凝集剤の製造方法であるが、高分子材料に含有されるシアノ基の少なくとも一部に無機及び/又は有機アミノ化合物が付加された分子構造部を有する高分子凝集剤の場合、上述のようなアクリロニトリルのホモポリマーまたは共重合体を出発原料とし、これらに対して、無機又は有機のアミノ化合物を反応させればよい。
この反応は、出発原料をアミノ化合物中に直接投入して行うことができる。このとき、反応終了後は反応混合物にアセトンのような高分子凝集剤を溶解させない溶媒を大量に注ぎ、生成物を再沈殿させることができる。
あるいは上記反応を有機溶媒中で行うこともでき、このときの有機溶媒としては、炭素数5〜20程度の脂肪族鎖状及び/又は環状炭化水素、炭素数1〜4程度のハロゲン化炭化水素、ジクロロベンゼン、芳香族炭化水素、エーテル類、ケトン類、エステル類、およびジメチルスルホキシド(DMSO),ジメチルホルムアミド(DMF),テトラヒドロフラン(THF),ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒を使用することができる。有機溶媒を用いた場合には、反応終了後に反応系に水を添加し、溶媒を留去することにより、水溶液として得ることができる。
なお、上記反応時にはイオウ粉末、チオ尿素、チオアセトアミド等のイオウ系触媒を用いることも好適である。
反応の際のアミノ化合物の濃度は特に限定されるものではないが、おおよそ10%以上とすることが好適である。この濃度が低すぎると、付加反応の反応速度が低下したり、付加反応が十分に進行しない虞れが生ずる。上記濃度の上限も特に限定されるものではない。たとえば、この付加反応をエチレンジアミン中に少量の高分子材料を投入して行なう場合には、エチレンジアミン濃度はほぼ100%となる。
上記付加反応を行う際の反応温度は、出発物質として用いる高分子材料の種類、使用する触媒の種類、反応系を構成する溶媒の種類、溶媒の有無等の条件により異なるが、0〜150℃の範囲であればまず実用的な速度と制御性をもって反応を進行させることができる。温度がこれより低いと反応速度が低下し、生産効率面で不利である。また、温度がこれより高いと高分子材料が低分子化し、凝集剤としての性能が低下しやすい。より好ましい温度範囲は20〜120℃、さらに好ましい範囲は40〜80℃である。
また、反応時間は使用するアミノ化合物の種類にもよるが、30分〜50時間の範囲であればまず実用的な収率で目的の生成物を得ることができる。反応時間がこれより短いと十分に改質を行うことができないが、化学的平衡状態が達成された以降は反応時間を延長しても意味がない。
本発明において、アミノ化合物の付加反応を行わせた後に加水分解を行う場合、これを酸触媒を用いる酸加水分解または塩基性触媒を用いるアルカリ加水分解により行うことができる。
上記の酸加水分解の酸触媒としては、硫酸、無水硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸、塩酸、硝酸、燐酸等の無機酸を使用することができる。また、これらの無機酸と過酸化水素水のような無機過酸化物を併用して加水分解反応を促進するようにしても良い。
上記のアルカリ加水分解の塩基触媒としては、Li,Na,K,NH4 の水酸化物,炭酸水素塩,炭酸塩,あるいは酢酸塩等の無機塩基を用いることができる。
いずれの加水分解でも、高分子材料を無機酸中に直接投入するか、あるいは無機塩基のアルカリ水溶液中に投入して行なうことができる。あるいは、上述の付加反応に用いた溶媒と同じ溶媒を用いて行なっても良い。加水分解時の触媒の濃度、反応温度、反応時間は、すべて上述の付加反応について述べた範囲と同等に設定すれば良い。
以上により得られる高分子凝集剤は、アミノ化合物が付加された分子構造部を備えた段階ではノニオン型であり、この分子構造部を酸塩あるいは四級アンモニウム塩とすることにより強カチオン型となる。つまり、上記高分子凝集剤の製造方法では、付加反応と塩形成反応の進行度合いを適宜選択して組み合わせることにより、ノニオン性とカチオン性の両方の凝集剤を製造することが可能である。
一方、シアノ基を変換してカルバモイル基やさらにはカルボキシル基、あるいはその塩を導入するには、先に述べたようなアクリロニトリルのホモポリマーまたは共重合体を出発原料、すなわち加水分解の基材として用いる。
加水分解には大別して酸触媒を用いる酸加水分解と、塩基性触媒を用いるアルカリ加水分解とがあり、本発明でもこのいずれかを行なうことができる。
上記の酸加水分解の酸触媒としては、硫酸、無水硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸、塩酸、硝酸、燐酸等の無機酸を使用することができる。また、これらの無機酸と過酸化水素水のような無機過酸化物を併用して加水分解反応を促進するようにしても良い。シアン基を有する高分子材料の酸加水分解は制御性に比較的優れているため、所望のカルバモイル基含有量が達成されるように反応温度と反応時間とを適宜選択すれば、反応そのものは1段階で行なうことができる。
無機酸の濃度は特に限定されるものではないが、おおよそ10%以上とすることが好適である。この濃度が低すぎると、加水分解の反応速度が低下したり、加水分解反応が十分に進行しない虞れが生ずる。上記濃度の上限も特に限定されるものではない。たとえば、この加水分解を硫酸中に少量の高分子材料を投入して行なう場合には、無機酸濃度はほぼ100%となる。
一方、上記のアルカリ加水分解の塩基触媒としては、Li,Na,K,NH4 の水酸化物,炭酸水素塩,炭酸塩,あるいは酢酸塩等の無機塩基を用いることができる。
ただし、アルカリ加水分解は前述の酸加水分解に比べて反応に高温を要し、この温度条件が一旦達成されると急速に反応が進行する。この結果、得られる高分子凝集剤が低分子化してしまったり、あるいはシアン基からカルバモイル基を経由してカルボキシル基またはその塩にまで変化する反応が一気に進行し、イオン性基、すなわちカルボキシル・アニオンの導入量の制御が困難となる問題がある。
そこで、塩基触媒を用いる場合には反応の最初から用いず、2段階法で加水分解を行なう場合の2段階目に用いることが特に好適である。すなわちまず、第1段階で酸触媒による酸加水分解を行なってカルバモイル基の導入量をほぼ規定し、次に第2段階で塩基触媒によるアルカリ加水分解を行なってカルバモイル基のさらに一部をカルボキシル基またはその塩に変換する。
いずれの加水分解でも、高分子材料を無機酸中に直接投入するか、あるいは無機塩基のアルカリ水溶液中に投入して行なうことができる。
あるいは、上記加水分解は有機溶媒中で行なっても良い。このときの有機溶媒としては、炭素数5〜20程度の脂肪族炭化水素、炭素数1〜4程度のハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル類、ケトン類、エステル類、およびジメチルスルフォキシド,ジメチルホルムアミド,テトラヒドロフラン,ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒を使用することができる。
上述の製造方法における最終的な高分子凝集剤の回収方法は、加水分解の反応系によって異なる。たとえば無機酸中に直接投入した場合には、反応混合物をアセトンのような高分子凝集剤を溶解させない大量の溶媒に注ぎ、生成物を再沈殿させることができる。また、加水分解時に溶媒を用いた場合には、反応終了後に余剰の酸触媒または塩基触媒を中和し、溶媒を留去することにより、水溶液として得ることができる。
加水分解の反応温度は、出発物質として用いる高分子材料の種類、使用する触媒の種類、反応系を構成する溶媒の種類、溶媒の有無等の条件により異なるが、0〜180℃の範囲であればまず実用的な速度と制御性をもって反応を進行させることができる。より好ましい温度範囲は20〜150℃、さらに好ましい範囲は60〜130℃である。
以上により得られる高分子凝集剤は、カルバモイル基が導入されることによりノニオン型となり、さらにこのカルバモイル基の一部がカルボン酸またはカルボン酸塩に置き換わることでアニオン型となる。
本発明の高分子凝集剤は上述のごとく、いずれにしてもノニオン型、カチオン型、あるいはアニオン型であるから、通常のノニオン型、カチオン型、アニオン型の高分子凝集剤の使用方法にしたがい、水処理に用いることができる。また、本発明の高分子凝集剤を他の各種凝集剤と併用することも可能である。
併用可能なノニオン性高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリオキシエチレン等の合成系や、澱粉、グアーガム、ゼラチン等の糖や蛋白質系に代表される天然産系のもの等が使用可能である。
カチオン性高分子凝集剤としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの四級化物(四級化剤としては、塩化メチル、ジメチル硫酸、塩化ベンジル等)もしくはその酸塩(酸塩としては、塩酸塩、硫酸塩等の無機酸塩、及び酢酸塩等の有機酸塩等)の重合体、またはこれらと(メタ)アクリルアミドとの共重合体(例えば、ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド四級化物の重合体、またはこれとアクリルアミドとの共重合体)、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの四級化物もしくはその酸塩の重合体、またはこれらと(メタ)アクリルアミドとの共重合体(例えば、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライド四級化物とアクリルアミドとの共重合体)、ポリアクリルアミドのカチオン化変性物(例えば、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性物及びホフマン分解物)、エピハロヒドリン−アミン縮合物(例えば、エピハロヒドリンと炭素数2〜6のアルキレンジアミンとの重縮合物)、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ポリビニルイミダゾリン及び/又はその塩、ジシアンジアミド縮合物(例えば、ジシアンジアミドと塩化アンモニウムのホルマリン縮合物)、ポリエチレンイミン及びその四級化物もしくは酸塩、ポリビニルイミダゾール及びその四級化物もしくは酸塩、ポリ−4−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、キトサン及びその塩類、N−ビニルホルムアミド/アクリロニトリルコポリマーの酸性加水分解物及びその四級化物もしくは酸塩、ポリビニルピリジン及びその四級化物もしくは酸塩、水溶性アニリン樹脂及びその四級化物もしくは酸塩、アルキレンジクロライドとポリアルキレンポリアミンの縮合物、アニリン−ホルムアルデヒド重縮合物塩、ポリヘキサメチレンチオ尿素酢酸塩、ポリアミノ酸(例えば、ポリリジンやポリグルタミン酸及びその塩類)等が挙げられる。
アニオン性高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミドやポリメタクリルアミドの部分加水分解物、アクリル酸又はメタクリル酸とアクリルアミド又はメタクリルアミドとの共重合体及びその塩類、アクリル酸又はメタクリル酸とアクリルアミド又はメタクリルアミドと2−アクリルアミド−メチルプロパンスルホン酸又はビニルスルホン酸又はビニルメチルスルホン酸との3元共重合体及びその塩類、アルギン酸やグアーガム、カルボキシメチルセルロース、澱粉の各ナトリウム塩、ポリスチレンスルホン酸及びその塩、ポリスチレン系樹脂廃材(ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、ABS樹脂、SAN樹脂、ニトリルゴム等。廃材中にはポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド等が60重量%以下で含有されていてもよい。)のスルホン化物及びその塩等が挙げられる。
これらアニオン性高分子凝集剤の中で、スルホン化されたスチレン系ポリマーは、懸濁液の清澄化効果も大きく、また本発明の高分子凝集剤と同様、廃材の利用が可能であることから、好ましいと言える。
この高分子凝集剤に用いられるスチレン系ポリマーとしては、スチレン−ブタジエン、スチレン−アクリロニトリル、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル、スチレン−(メタ)アクリル酸、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル(炭素数が1〜4の脂肪族炭化水素)、スチレン−アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸エステル(炭素数が1〜4の脂肪族炭化水素)、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル(炭素数が1〜4の脂肪族炭化水素)、スチレン−無水マレイン酸、スチレン−無水イタコン酸等が挙げられる。この中でも、好ましくは、スチレン−ブタジエン、スチレン−アクリロニトリル、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル、スチレン−無水マレイン酸、スチレン−アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸エステル(炭素数が1〜4の脂肪族炭化水素)、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル(炭素数が1〜4の脂肪族炭化水素)が挙げられる。さらに好ましくは、スチレン−ブタジエン、スチレン−アクリロニトリル、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル、スチレン−無水マレイン酸が挙げられる。
上述したスチレン系ポリマーは、高分子凝集剤を製造するために新規につくられたもの(バージン材)であっても、工場や販売店、家庭等からの廃棄物(廃材)であってもよく、また、バージン材と廃材とを併用してもよい。汎用性樹脂として大量に生産されたポリスチレン系樹脂製品を再利用し、地球環境を保全する観点から、スチレン系ポリマーとしては、バージン材よりも廃材を用いることが好ましい。
なお、廃材を用いた場合には、上述したスチレン系ポリマー以外にその他のポリマーが含有されていても良い。その他のポリマーとしては、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。また、好ましくは、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネートが挙げられる。このとき、その他のポリマーは、好ましくは約60重量%以下とされる。
そして、上述したようなスチレン系ポリマーは、スルホン化剤を含有する溶媒中にてスルホン化される。その後、スルホン化されたスチレン系ポリマーは、スルホン基を中和した後に溶媒及びスルホン化剤を留去することにより高分子凝集剤となる。
このスルホン化剤としては、無水硫酸、発煙硫酸、クロルスルホン酸、濃硫酸等が挙げられる。これらスルホン化剤は、それぞれ単独で使用しても良いし、複数種を併用しても良い。また、スルホン化剤の添加量としては、スチレン系ポリマー中に含まれる芳香族環(スチレン系樹脂では側鎖のベンゼン環、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート系樹脂では主鎖中のベンゼン環)ユニット1モル当たり0.5〜2.0モルを使用することが好ましく、さらに好ましくは、0.7〜1.5モルの範囲で使用する。スルホン化剤は、添加量が少ないと、スチレン系ポリマーを十分にスルホン化することができない。したがって、この場合、高分子凝集剤は、高分子電解質としての機能が発現されないようなものとなってしまう。これに対して、スルホン化剤は、添加量が多いと、スルホン化反応中にゲル化物を発生させたり、反応系中に塩等の副生成物を多量に発生させてしまう。したがって、この場合、高分子凝集剤は、多量の不純物を含有することとなり、純度の低いものとなってしまう。
また、スチレン系ポリマーのスルホン化には、上述したスルホン化剤とルイス塩基とを併用しても良い。このルイス塩基としては、アルキルフォスフェート(トリエチルフォスフェート、トリメチルフォスフェート)、ジオキサン、無水酢酸、酢酸エチル、パルチミン酸エチル、ジエチルエーテル、チオキサン等が挙げられる。これらルイス塩基の添加量は、スチレン系ポリマーに含まれる芳香族環(スチレン系樹脂では側鎖のベンゼン環、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート系樹脂では主鎖中のベンゼン環)ユニット1モルに対して、0.01〜2.0モル、好ましくは、0.02〜1.0モルである。なお、このルイス塩基は、添加量が少ないと、スルホン化反応中にゲル化物が発生し易くなる。これに対して、添加量が多いと、スルホン化反応自体が進行し難くなり高分子凝集剤の収率が低下し、コストが増加することとなる。
一方、上述したスチレン系ポリマーのスルホン化の際に用いられる溶媒としては、炭素数が1〜2の脂肪族ハロゲン化炭化水素(好ましくは、1,2−ジクロロエタン 、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタン)、脂肪族環状炭化水素(好ましくは、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン)等である。なお、これら溶媒は、単独で用いても良いし、複数混合して用いても良い。この溶媒の混合において、その混合比率は、特に限定されるものではない。
また、上述した溶媒は、他の溶媒を混合して用いられてもよい。このとき、混合して用いることが可能な他の溶媒としては、パラフィン系炭化水素(炭素数が1〜7)、アセトニトリル、二硫化炭素、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2-ジメトキシエタン、アセトン、メチルエチルケトン、チオフェン等が挙げられる。これらの中で、他の溶媒として好ましくは、パラフィン系炭化水素(炭素数が1〜7)、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリルが挙げられる。なお、これら他の溶媒との混合比率は、特に限定しないが、好ましくは、1〜100体積%の範囲が好ましい。なお、上述した溶媒は、スチレン系ポリマーのスルホン化反応終了後、抜き取りや蒸留等手法により回収して再度スルホン化反応に使用ても良い。
そして、上記アニオン性高分子凝集剤は、上述したようなスチレン系ポリマー、スルホン化剤及び溶媒を所定量混合しスルホン化反応を進行させることにより得られる。
このスルホン化反応の際、スチレン系ポリマーの濃度は、0.1〜30重量%とされることが好ましく、より好ましくは、0.5〜20重量%とされる。スチレン系ポリマーは、濃度が上述した範囲より薄いと、スルホン基が導入され難くなる。これに対して、濃度が上述した範囲より薄いと、スルホン化反応中にゲル化物が発生し易くなったり、未反応物が多量に発生してしまうこととなる。
また、このスルホン化反応では、反応温度が0〜100℃、好ましくは、15〜80℃とされる。スルホン化反応において、反応温度がこの範囲より低いと、スルホン化反応がしにくくなり高分子凝集剤の収率が低下してしまう。
さらに、このスルホン化反応では、反応時間(スルホン化剤の滴下時間は含まない。)が10分〜10時間とされ、好ましくは、30分〜5時間とされる。
このように、スルホン化反応が終了した溶液は、中和剤によりスルホン基を中和した後に溶媒を留去される。これにより、所望の高分子凝集剤が生成される。
このとき、中和剤としては、塩基性化合物、例えば、アルカリ金属(ナトリウム、リチウム、カリウム等)やアルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等)の酸化物、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の化合物や、アンモニアや各種(1〜3級アルキル)アミン化合物等が挙げられる。そして、この中和剤は、固体の状態、もしくは水溶液の状態で反応系中に徐々に添加され、スチレン系ポリマーに導入されたスルホン基を中和する。また、溶媒を留去する手法としては、分液、蒸留等の手法が用いられる。
以上のようにして得られた本発明に係る高分子凝集剤では、その分子量(Mw)が15万〜60万とされることが必要である。また、分子量(Mw)は、20万〜50万であることがより好ましい。高分子凝集剤は、スルホン化されたスチレン系ポリマーの分子量が15万以下であると、懸濁液中の懸濁物質に対する凝集効果が低下するだけでなく、懸濁物質を分散させることとなる。一方、スルホン化されたスチレン系ポリマーの分子量が60万以上であると、懸濁物質が粗大なフロックとして凝集してしまい、良好な清澄化効果を得られず、また、生成されるケーキの含水率も高いものとなってしまう。
一方、この高分子凝集剤においては、スチレン系ポリマー中にスルホン基が40モル%以上導入され、好ましくは、50モル%以上導入される。高分子凝集剤は、スチレン系ポリマー中にスルホン基が40モル%より小となると、水に対する溶解性が低下してしまい、懸濁液中の懸濁物質に対する凝集効果が大幅に低下してしまう。
上述したように、この高分子凝集剤において、所望する量のスルホン基を導入するためには、スチレン系ポリマーにスチレンユニットが60モル%以上、好ましくは80モル%以上含有されることが好ましい。スチレン系ポリマー中のスチレンユニットが60モル%より少とされると、スルホン化反応により上述した量のスルホン基を有する高分子凝集剤を得ることが困難である。
これら高分子凝集剤の他、天然物系の凝集剤も本発明の高分子凝集剤と併用可能である。天然物系の凝集剤としては、モロヘイヤ、又はその乾燥物や抽出物、トマトの種子周辺のゼリー状部分、又はその乾燥物や抽出物が挙げられる。
モロヘイヤは、主にエジプトを中心にシリア、ヨルダン、イラン等のアラブの熱帯地方で栽培されているシナノキ科のコルコルス属の1年草であり、緑黄色野菜として古くから食用に利用されている。このモロヘイヤの主成分である粘性を示す酸性多糖類を凝集剤として利用する。
具体的には、モロヘイヤの花、茎、葉、根部、又はこれらの一部をペースト状にしたものを凝集剤とする。あるいは、モロヘイヤの花、茎、葉、根部、又はこれらの一部を乾燥状態でミキサー等により粉砕した粉体を凝集剤としてもよい。モロヘイヤの乾燥には、天日、日陰での風乾、真空乾燥、熱風乾燥、凍結乾燥等、任意の方法を使用することができる。
トマトは、ナス科の植物で温帯では一年生であり、やはり緑黄色野菜として古くから食用に利用されている。このトマトの種子周辺のゼリー状部分を凝集剤として利用する。
具体的には、トマトの種子周辺のゼリー状部分をそのまま、又はこれらを乾燥状態でミキサー等により粉砕した粉体を凝集剤とする。乾燥には、モロヘイヤの場合と同様の手法が使用できる。
さらには、これらモロヘイヤのペーストや粉体、あるいはのトマトの種子周辺のゼリー状部分やその乾燥物を、水、温水、親水性有機溶剤(アルコール類、エーテル類、N,N−ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド糖等)、又はこれらの混液により抽出した抽出液を凝集剤としてもよい。さらに、抽出液を分画したもの、或いは抽出液を乾燥したものであってもよい。なお、抽出液としては、水もしくは温水が好ましい。
また、上記抽出液を貧溶媒となる有機溶剤で再沈させたものや、これを乾燥させたものを凝集剤としてもよい。
これら抽出液は、必要に応じて、液中の固形物をフィルター等で濾過するとよい。
また、これら凝集剤は、アルカリ水溶液や酸水溶液で処理又は抽出して、これを凝集剤としてもよい。アルカリとしては、例えば、アンモニア水、各種アミン化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。酸としては、乳酸、酪酸、酢酸、ギ酸等の有機酸や、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。
勿論、モロヘイヤやトマトの種子周辺の粘性成分をそのまま凝集剤として用いることができるが、上述したように、粉体や抽出液として利用する方が、処理液(懸濁液)中での拡散をより容易にする上で効果的である。また、モロヘイヤやトマトの種子周辺の粘性成分をそのまま乾燥したものよりは、水、温水、水溶性有機溶剤等で抽出した後に乾燥させたものの方が、同一固形物重量当たりの凝集活性は有利となる。
但し、モロヘイヤの粘性の多糖成分やトマトの種子周辺の粘性成分は、粉砕や加熱しすぎると、その主・側鎖の切断による分子量低下や分子内架橋反応による水不溶化が生じ、凝集活性が低下しまうので、注意を要する。
本発明の高分子凝集剤は、上述の何れの凝集剤とも併用することが可能であるが、逆のタイプの高分子凝集剤と組み合わせる場合には、効率的な処理のために若干の工夫を要する。
例えば、本発明の高分子凝集剤が正の電荷を有する場合(例えばアミノ化合物が付加された分子構造部分を有し、これが酸塩あるいは四級アンモニウム塩とされた場合)、上記アニオン型高分子凝集剤と組み合わせて用いると、水中における両者の電荷が逆符号となるので、混合使用ではなく、逐次使用とすることが好ましい。同様に、本発明の高分子凝集剤が負の電荷を有する場合(例えば、シアノ基がカルバモイル基を経てカルボキシル基に変換された場合)、上記カチオン型高分子凝集剤と組み合わせて用いると、やはり水中における両者の電荷が逆符号となるので、混合使用ではなく、逐次使用とすることが好ましい。
逐次使用においては、カチオン型高分子凝集剤とアニオン型高分子凝集剤のいずれを先に被処理水に投入しても良いが、水処理として下水処理を想定した場合、通常の下水では一般に微生物処理を経てコロイドが負に帯電しているため、カチオン型高分子凝集剤を先に投入するのが一般的である。
本発明の水処理方法ではさらに、本発明の高分子凝集剤を無機凝集剤や凝集助剤と併用することも可能である。
上記無機凝集剤としては、例えば、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、硫酸第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、塩化コッパラス、変性塩基性硫酸アルミニウム(LACS)、活性シリカ等が挙げられる。
また、上記凝集助剤としては、例えば、消石灰、珪酸ナトリウム、ベントナイト、フライ・アッシュ等を用いることができる。
これら各薬剤の添加量としては、汚泥種類や汚泥中の懸濁物の濃度、脱水処理設備等にもよるが、概ね0.001〜2000ppm(対排水)、好ましくは0.1〜500ppmである。
本発明で処理の対象とされる被処理水は特に限定されるものではないが、主に有機性汚泥を含む下水や、無機系粒子が懸濁している工場廃水のように汚染度の高い水を対象とした場合に、多大な効果が得られる。
被処理水に対する本発明の高分子凝集剤の添加量は、被処理水の組成や他の凝集剤や凝集助剤との組合せによっても異なるが、少なすぎると懸濁粒子が十分に凝集されず、また多すぎると凝集に寄与しない高分子凝集剤の割合が大きくなり、高分子凝集剤の無駄であるばかりか新たな水質汚染の原因ともなりかねない。添加量の好ましい範囲は概ね0.001〜2000ppmであり、より好ましくは0.1〜500ppmである。
本発明の高分子凝集剤を用いて排水処理を行う際には、凝結剤、キレート樹脂、キレート剤、活性炭、オゾン水、イオン交換樹脂、イオン交換膜、吸水性樹脂、過酸化水素水、塩素及び液体塩素、次亜塩素酸ナトリウム、二酸化塩素、さらし粉、塩素化イソシアヌル、けいそう土、酸化チタン等の光触媒、生物処理剤等の各種副処理剤を併用してもよい。
また、ベルトプレス脱水機、遠心脱水機、スクリュープレス等の各種脱水機も使用可能である。脱水物(ケーキ)は、公知の方法で埋め立て処理することが可能である。また、燃料化、コンポスト化することも極めて容易である。
以下、本発明の具体的な実施例について、実験結果を基に説明する。
<アミノ化合物の付加によるシアノ基含有高分子廃材の改質>
先ず、シアノ基を有する高分子廃材にアミノ化合物を反応させて高分子凝集剤を製造し、その性能を調べた。
以下の実験で用いたシアノ基を有する高分子廃材は、下記の3種類である。
・アクリル繊維廃材a
肌着用アクリル繊維の廃材。アクリロニトリル含有率95モル%以上。
・ニトリル樹脂廃材b
化粧品容器廃材。アクリロニトリル含有率90モル%以上。
・SAN(スチレン−アクリロニトリル)樹脂廃材c
8mmカセットケース(透明部分)の廃材。アクリロニトリル含有率4 0モル%
いずれも小片としたものを原料として用いたが、アクリル繊維廃材aについては、鋏により一辺が5mm以下の小片に切断した。ニトリル樹脂廃材bとSAN樹脂廃材cについては、カッター式粉砕機により、16メッシュ以下の小片として原料に使用した。
実施例1
シクロヘキサン40gに1,3−プロパンジアミン4g、硫黄粉末0.03g、及びアクリル繊維廃材aの小片1.0gを投入し、そのまま攪拌しながら60℃で4時間、付加反応を行った。
その後、反応容器の底に析出した緑色固形物を取り出し、水に溶解したものを多量のアセトン中に注ぎ沈殿させた。
次に、この沈殿物のろ過を行い、室温下、減圧乾燥を行って淡黄色の粉末を得た。
得られた粉末について、フーリエ変換赤外吸収スペクトル(FT−IR)及び核磁気共鳴スペクトル(NMR)を測定したところ、反応固形物中のシアノ基の80モル%がイミダゾリン環に転換されていること、また、このイミダゾリン環は加水分解されていないことが確認された。また、得られた粉末は、水に可溶であった。
この粉末を高分子凝集剤Aとした。この高分子凝集剤Aは、ノニオン型に相当する。
実施例2
エチレンジアミン3.5gをアミノ化合物として用いた以外は実施例1と同様の方法によりイミダゾリン環含有ポリマーを得た。
次に、このポリマーを水に溶解させ、そこに塩化メチルを吹き込み、40℃で2時間反応を行い、イミダゾリンのメチルクロライド4級塩ポリマー水溶液を得た。なお、未反応の塩化メチルは、加熱により留去した。
これを高分子凝集剤Bとした。この高分子凝集剤Bは、カチオン型に相当する。
実施例3
ニトリル樹脂廃材bの小片1.0gをジメチルスルホキシド(DMSO)10mlに溶解させ、そこにエタノールアミン2.3gを室温下で滴下した。そのまま攪拌しながら100℃まで昇温し、12時間反応を行った。
反応終了後、反応液をエタノール中に注いで沈殿させた。ろ過後、メタノールで洗浄を行い、室温下で減圧乾燥した。以上の処理によりシアノ基の85%がイミノ構造に置換されたポリマーが得られた。
これを高分子凝集剤Cとした。この高分子凝集剤Cは、ノニオン型に相当する。
実施例4
ブチルアミン2.8gをアミノ化合物として用いた以外は実施例3と同様の方法によりイミノ基含有ポリマーを得た。
次に、このポリマーを水に溶解させ、希硫酸水溶液を加えてpHを4.0とし、硫酸塩ポリマー溶液を得た。
これを高分子凝集剤Dとした。この高分子凝集剤Dは、カチオン型に相当する。
実施例5
SAN樹脂廃材cを原料として用いた以外は実施例2と同様の方法で処理を行い、高分子凝集剤を得た。
これを高分子凝集剤Eとした。この高分子凝集剤Eは、カチオン型に相当する。
実施例6
高分子凝集剤Cを水に溶解し、90℃で15時間、加熱を行った。加熱終了後、水溶液の乾燥を行い、粉体を得た。得られた粉体について、フーリエ変換赤外吸収スペクトル(FT−IR)及び核磁気共鳴スペクトル(NMR)を測定したところ、イミノ構造の70モル%が加水分解され、アミド構造に転換されていることが確認された。
これを高分子凝集剤Fとした。この高分子凝集剤Fは、ノニオン型に相当する。
実施例7
エチレンジアミン20gに硫黄粉末0.05gとアクリル繊維廃材aの小片1.0gを加え、110℃で6時間反応を行った。反応終了後、減圧蒸留により未反応のエチレンジアミンの留去を行い、その後、残留物は水に溶かしてアセトンで沈殿させた。
次に、この沈殿物のろ過を行い、室温下、減圧乾燥して茶色の粉末を得た。この粉末について、フーリエ変換赤外吸収スペクトル(FT−IR)及び核磁気共鳴スペクトル(NMR)を測定したところ、反応固形物中のシアノ基の42モル%がイミダゾリン環に転換され、18モル%が加水分解物であるN−アミノエチルアクリルアミドに転換されていることが確認された。
次いで、このポリマーを水に溶解させ、そこに希塩酸水溶液を加えて塩酸塩ポリマー水溶液を得た。
これを高分子凝集剤Gとした。この高分子凝集剤Gは、ノニオン/カチオン両型に相当する。
<凝集性能の評価>
次に、これらの高分子凝集剤A〜Gの凝集性能を評価した。
なお、以下の一連の試験例では、本発明品との比較、または本発明品との併用を目的として、下記の凝集剤を用いた。
・ノニオン型高分子凝集剤H:市販のポリアクリルアミド
・カチオン型高分子凝集剤I:市販のポリジメチルアミノエチルアクリレートのメチル クロライド四級化物(強力カチオンタイプ)
・アニオン型高分子凝集剤J:市販のポリアクリルアミド部分加水分解物(中アニオン タイプ)
・樹脂廃材スルホン化物K :ポリスチレンスルホン酸ソーダ(原料:発泡スチロール 、スルホン化率:80モル%)
・繊維廃材加水分解物L :ポリアクリロニトリル加水分解物(アクリル繊維の水酸 化ナトリウム処理物)
・天然産系凝集剤M :モロヘイヤの葉の乾燥粉砕物
評価試験1
1重量%のカオリン水溶液を凝集評価用懸濁液(以下、懸濁液と称する。)とした。この懸濁液を200ml容の共栓付きメスシリンダに100ml入れ、高分子凝集剤及び比較のための従来の高分子凝集剤の水溶液をメスピペットを用いてそれぞれ懸濁液中に滴下した。滴下量は、懸濁液中における高分子凝集剤の濃度が4ppmとなる量とした。
滴下後、直ちにメスシリンダに栓をし、上下反転を10回繰り返し、その後静置して懸濁粒子の沈降速度と上澄み液の濁度とを測定した。測定結果を表1に示す。
表1より、シアノ基へのアミノ化合物の付加により改質されたノニオン型高分子凝集剤は、従来のノニオン型凝集剤よりも沈降速度、上澄み液の濁度において良好な結果を示し、優れた凝集性能を有していることが確認された。
評価試験2
電子部品工場の排水を一次凝集した処理液(pH6.5、SS1.5重量%)を凝集評価用懸濁液とした。
この懸濁液を200ml容の共栓付きメスシリンダに100ml入れ、各凝集剤をメスピペットを用いてそれぞれ懸濁液中に滴下した。滴下量は、懸濁液中における高分子凝集剤の濃度が2ppmとなる量とした。なお、凝集剤を二種類併用する場合には、それぞれ前記濃度が1ppmとなるように混合して使用した。
滴下後、直ちにメスシリンダに栓をし、上下反転を10回繰り返し、その後静置して懸濁粒子の沈降速度と上澄み液の濁度、ろ布にて脱水後のケーキの含水率を測定した。測定結果を表2に示す。
表2より、本発明の高分子凝集剤は、従来のアニオン型凝集剤よりも沈降速度、上澄み液の濁度、ケーキ含水率の点で優れた特性を有していることが確認された。また、本発明の高分子凝集剤は、市販のアニオン型凝集剤と混合使用することにより、さらにその凝集性能が向上されることも確認された。
評価試験3
下水処理場の混合汚泥(pH6.2、SS2.5重量%)についてジャーテストを行った。
先ず、ジャーテスターにて攪拌中の汚泥に対して、カチオン型高分子凝集剤を対SS当たり0.5重量%(2種類を混合して用いる場合には、それぞれ0.25重量%)添加攪拌し、凝集させた。さらに、引き続いてアニオン型高分子凝集剤を対SS当たり0.2重量%添加し、攪拌を行い凝集させた。
その後、静置して懸濁粒子の沈降速度と上澄み液の濁度、ろ布にて脱水後のケーキの含水率を測定した。測定結果を表3に示す。
表3より、本発明の高分子凝集剤は、単独で使用した場合、及びアニオン型凝集剤と併用した場合のいずれにおいても、従来のカチオン型凝集剤よりも沈降速度、上澄み液の濁度、ケーキ含水率の点で優れた特性を有していることが確認された。また、本発明の高分子凝集剤は、天然産系の凝集剤と混合使用することにより、さらにその凝集性能が向上されることも確認された。
<シアノ基の加水分解による高分子廃材の改質>
以下の各実施例で加水分解の基材として用いた高分子材料は、下記の4種類である。
・アクリル繊維廃材d
肌着用アクリル繊維の廃材。アクリロニトリル含有率90モル%以上。
・ニトリルゴム廃材e
耐油性ゴム・ホースの廃材。アクリロニトリル含有率40モル%以上。
・ニトリル樹脂廃材f
化粧品容器廃材。アクリロニトリル含有率90モル%以上。
・SAN(スチレン−アクリロニトリル)樹脂廃材g
バッテリ・ケースの廃材。アクリロニトリル含有率30モル%以上。
上記廃材dは、ハサミを用いて1辺5mm以下の小片に切断した。
上記廃材eは、凍結粉砕により32メッシュ以下の小片とした。
上記廃材f,gは、カッター式粉砕機を用いて32メッシュ以下の小片とした。
実施例8
96%濃硫酸30gに廃材d0.6gを投入し、そのまま撹拌しながら50℃、2時間の酸加水分解を行った。廃材dは完全に硫酸に溶解した状態となった。
次に、この混合物を大量のアセトン中に注ぐと、白色の沈殿物が得られたので、この沈殿物をアセトンでさらに2〜3回洗浄し、その後乾燥させた。
得られた乾燥粉末をフーリエ変換赤外線スペクトル(FT−IR)測定および核磁気共鳴スペクトル(NMR)測定により分析したところ、廃材d中のシアノ基の90モル%以上がカルバモイル基に変化していること、また上記の反応条件ではカルボキシル基は生成していないことが確認された。また、この粉末は、水に易溶であった。
この粉末を、高分子凝集剤Nとする。この高分子凝集剤Nのイオン型はノニオン型である。
実施例9
廃材eを使用し、反応温度を80℃、反応時間を4時間とした他は、実施例8と同じ方法で酸加水分解を行なった。
得られた粉末は、FT−IR測定およびNMR測定より、廃材e中のシアノ基の90モル%以上がカルバモイル基に変化していること、また上記の反応条件ではカルボキシル基は生成していないことが確認された。また、この粉末は、水に易溶であった。
この粉末を、高分子凝集剤Oと命名する。この高分子凝集剤Oのイオン型はノニオン型である。
実施例10
廃材fを使用し、反応温度を80℃、反応時間を4時間とした他は、実施例8と同じ方法で酸加水分解を行なった。
得られた粉末は、FT−IR測定およびNMR測定より、廃材f中のシアノ基の90モル%以上がカルバモイル基に変化していること、また上記の反応条件ではカルボキシル基は生成していないことが確認された。また、この粉末は、水に易溶であった。
この粉末を、高分子凝集剤Pと命名する。この高分子凝集剤Pのイオン型はノニオン型である。
実施例11
廃材gを使用し、反応温度を80℃、反応時間を4時間とした他は、実施例8と同じ方法で酸加水分解を行なった。
得られた粉末は、FT−IR測定およびNMR測定より、廃材g中のシアノ基の90モル%以上がカルバモイル基に変化していること、また上記の反応条件ではカルボキシル基は生成していないことが確認された。また、この粉末は、水に易溶であった。
この粉末を、高分子凝集剤Qと命名する。この高分子凝集剤Qのイオン型はノニオン型である。
実施例12
シクロヘキサン40gに廃材dを1gを投入し、反応系の温度を25〜30℃に制御しながら無水硫酸1.8gを30分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに30分間撹拌を続けた。次に、この反応系に水30gを添加し、30℃、1時間の酸加水分解を行った。
反応混合物の減圧蒸留を行ってシクロヘキサンを除去し、残留液体のpHを6に調整し、高分子水溶液を得た。得られた高分子水溶液は、FT−IR測定およびNMR測定より、廃材d中のシアノ基の90モル%以上がカルバモイル基に変化していること、また上記の反応条件ではカルボキシル基は生成していないことが確認された。
この高分子水溶液を、高分子凝集剤Rと命名する。この高分子凝集剤Rのイオン型はノニオン型である。
実施例13
実施例8で得られた高分子凝集剤Nの1%水溶液に、該高分子凝集剤Nのカルバモイル基の50モル%分に相当する水酸化ナトリウム(NaOH)を添加し、80℃、1時間のアルカリ加水分解を行った。
得られた高分子水溶液は、FT−IR測定およびNMR測定より、高分子凝集剤Nのカルバモイル基のうち、水酸化ナトリウム添加量の90%相当分(最初のカルバモイル基含有量の45モル%)がナトリウム塩型のカルボキシル基に変化していることが確認された。
この高分子水溶液を、高分子凝集剤Sと命名する。この高分子凝集剤Sのイオン型はアニオン型である。
実施例14
実施例12で得られた高分子凝集剤Rの1%水溶液に、該高分子凝集剤Rのカルバモイル基と等モルの水酸化ナトリウム(NaOH)を添加し、80℃、1時間のアルカリ加水分解を行った。
得られた高分子水溶液は、FT−IR測定およびNMR測定より、高分子凝集剤Rのカルバモイル基のうち、水酸化ナトリウム添加量の90%相当分(最初のカルバモイル基含有量の90モル%)がナトリウム塩型のカルボキシル基に変化していることが確認された。
この高分子水溶液を、高分子凝集剤Tと命名する。この高分子凝集剤Tのイオン型はアニオン型である。
以上の実施例8〜実施例14で得られた高分子凝集剤を表4にまとめて示す。
なお表中、改質後の官能基の含有量(モル%)は、高分子を構成するモノマー・ユニットの総モル数に対する値である。
<凝集性能の評価>
次に、これらの高分子凝集剤N〜Tの凝集性能を評価した。
なお、以下の一連の評価試験では、本発明品との比較、および本発明品との併用を目的として、下記の2種類の市販の高分子凝集剤U,Vを用いた。
・高分子凝集剤U
ポリアクリルアミド部分加水分解物(加水分解率20モル%),アニオ ン型
・高分子凝集剤V
ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロリド四級化物,強カチ オン型
評価試験4
4重量%のカオリン水溶液に硫酸アルミニウム0.2重量%添加したコロイド状の凝集評価用懸濁液(以下、懸濁液と称する。)を用意した。
次に、上記懸濁液を200ml容の共栓付きメスシリンダに100ml入れ、高分子凝集剤N〜T、および比較のための高分子凝集剤Uの水溶液をメスピペットを用いて懸濁液中に滴下した。滴下量は、懸濁液中における高分子凝集剤の濃度が5ppmとなる量とした。
滴下後、直ちにメスシリンダに栓をし、上下反転を10回繰り返し、その後静置して懸濁粒子の沈降速度と上澄み液の濁度とを測定した。
測定結果を表5に示す。
凝集性能を本発明の高分子凝集剤N〜Tの中でイオン型別に比較すると、アニオン型の高分子凝集剤S,Tの方が、ノニオン型の高分子凝集剤N〜Rよりも優れていた。したがって、本実施例で用いた硫酸アルミニウムでカオリンが一次凝集されているようなコロイド系の凝集には、水素結合型ノニオン型高分子凝集剤N〜Rよりも、アニオン型の高分子凝集剤S,Tの方が適していると言える。
そこで、凝集性能を同じアニオン型同士で比較すると、本発明のアニオン型高分子凝集剤S,Tの方が、従来のアニオン型高分子凝集剤Uよりも優れていた。しかも従来品Uの性能は、本発明のノニオン型高分子凝集剤N〜Rよりも劣っていた。
これより、本発明品の凝集性能の高さを確認することができた。
評価試験5
電子部品工場の廃水〔pH4.8;浮遊物質量(SS)1.2重量%〕に硫酸アルミニウムを500ppm添加した凝集評価用懸濁液(以下、懸濁液と称する。)を用意した。
次に、上記懸濁液を200ml容の共栓付きメスシリンダに100ml入れ、高分子凝集剤の水溶液をメスピペットを用いて懸濁液中に滴下した。ここで用いた高分子凝集剤は本発明のノニオン型高分子凝集剤N,Oとアニオン型高分子凝集剤S,T、および従来のアニオン型高分子凝集剤Uである。
なお、本発明品N,O,Sについては従来品Uとの等量混合物を、本発明品Tについては単独で、また従来品Uを単独で、それぞれ用いた。高分子凝集剤の添加量は、懸濁液中における濃度が10ppmとなる量とした。したがって、2種類併用した場合には、本発明品と従来品とがそれぞれ5ppmずつの濃度で使用されている。
滴下後、直ちにメスシリンダに栓をし、上下反転を10回繰り返し、その後静置して懸濁粒子の沈降速度と上澄み液の濁度とを測定した。また、得られた沈殿物を濾布上で脱水し、ケーキ含水率を測定した。
測定結果を、表6に示す。
先ず、高分子凝集剤の単独使用例として、本発明の高分子凝集剤Tを用いた場合と従来の高分子凝集剤Uを用いた場合を比較すると、これら両者は共にアニオン型であるが、本発明品の方が凝集性能に優れている。しかし、単独では本発明品よりも相対的に劣る従来品Uも、本発明品N,O,Sと組み合わせることにより凝集性能が向上した。これにより、本発明品の優れた凝集性能を確認することができた。
ただし、いずれのケースも濁度に関しては、本発明のアニオン型高分子凝集剤Tを単独で用いた試験例を上回ることはできなかった。これは恐らく、本発明品の方が従来品よりも分子量が小さく、またアニオン型率が高いことによるものと考えられる。
なお、上述のように本発明品と混合して用いる市販の高分子凝集剤をノニオン型としても、同様の効果が得られた。
評価試験6
下水処理場の混合汚泥(pH6.6;SS2.8重量%)を用いてジャー・テストを行った。すなわち、上記混合汚泥をジャー・テスターにて撹拌しながら、まず第1段階として、市販のカチオン型高分子凝集剤Vを懸濁粒子に対して0.6重量%の割合で添加し、次に第2段階として本発明の高分子凝集剤P,Q,T、または従来のアニオン型高分子凝集剤Uを、それぞれ懸濁粒子に対して0.15重量%の割合で添加した。
撹拌後、懸濁液を静置し、懸濁粒子の沈降速度と上澄み液の濁度とを測定した。また、得られた沈殿物をろ布上で脱水し、ケーキ含水率を測定した。
測定結果を、表7に示す。
一般に、懸濁粒子の組成が複雑であったり、あるいはこれを正確に知ることが困難な場合には、コロイド粒子の帯電電荷も一様ではないと考えられるので、カチオン型とアニオン型の両方の高分子凝集剤を併用することが有効と考えられる。そこで、カチオン型とアニオン型の従来品同士による組み合わせと、本発明品との組み合わせとを比較すると、本発明品を組み合わせた場合の方が、いずれも良好な凝集効果を示した。
特に、従来のカチオン型高分子凝集剤と本発明のアニオン型高分子凝集剤とを併用した場合において、最も良好な凝集効果が達成された。
シアノ基の加水分解では原理的にカチオン型の高分子凝集剤を製造することはできないが、このようにカチオン型の市販品と併用することで、より一層効果的な水処理を行うことが可能となる。
以上、本発明の具体的な実施例および評価試験結果について説明したが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、高分子凝集剤の製造原料となる高分子材料の種類、付加反応条件、加水分解反応条件、酸塩の形成条件、水処理条件等の細部については、適宜変更、選択、組合せが可能である。