JP3918298B2 - 高分子凝集剤及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【本発明の属する技術分野】
本発明は、シアノ基を有する高分子材料を分子間架橋した高分子凝集剤に関するものであり、さらにはこれを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
廃水処理の分野では、廃水中に分散した微粒子を集合させて沈殿させるための試薬として凝集剤が用いられている。工業汚水等の廃水中には、ヘドロや高分子性の不純物がコロイド粒子となって分散している場合が多く、凝集剤はこのコロイド粒子を凝集させて汚水を清澄化する働きを有する。
【0003】
様々な種類のものが知られる凝集剤のうち、長い鎖状の分子構造を持ち高い親水性を有する高分子からなるものが高分子凝集剤であり、コロイド粒子に対して少量添加するだけでも大きな凝集効果を示すため、広く用いられている。高分子凝集剤は、水に溶解した際の荷電によりアニオン型、カチオン型、ノニオン型に分類される。コロイド粒子の多くは正または負に帯電しているので、この帯電の符号に応じて高分子凝集剤を適切に選択すれば、極めて大きなフロックを形成して効率良く濁度を低下させることができる。
【0004】
一方、工業製品の製造分野では、いたるところにアクリロニトリルをモノマー・ユニットとして含有する高分子材料が利用されている。アクリロニトリルを含有する高分子材料には、ニトリル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂),SAN樹脂(スチレン−アクリロニトリル樹脂),AAS樹脂(アクリロニトリル−アクリル−スチレン樹脂),ACS樹脂(アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン樹脂)等に代表されるポリスチレン系樹脂、アクリロニトリルを主要モノマー・ユニットとする重合体を紡糸して得られるアクリル繊維、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム;別名ニトリルゴム)等の種類がある。
【0005】
アクリロニトリルをモノマー・ユニットとして含有する樹脂成形体は剛性、寸法安定性、加工性等の特性に優れるため、各種用途のカバーやケース、電化製品や自動車の筐体や部品材料として多用されている。
【0006】
上記アクリル繊維は軽量でかさ高く、保温性,肌触り,耐候性,弾力性に優れるため、単独または羊毛や木綿等の他の繊維と混紡して衣料用に広く用いられている。
【0007】
上記ニトリルゴムは、燃料油,作動油,潤滑油等のオイル類に対して極めて優れた耐性を有し、燃料ホース,オイルシール,ベルト等に用いられており、特に自動車用途には多用されている。
【0008】
ところで、上述のように幅広い工業製品に利用されているアクリロニトリル含有高分子材料は、これら工業製品の製造段階、あるいは不要となった際の廃棄に伴って、大量の廃材を発生させる。これらの高分子系の廃材は、一般に大きく分けて、焼却、埋立て、再溶融のいずれかの手法にて処理されている。前二者は廃棄手法、後者はリサイクル手法である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の高分子系廃材の処理の手法はそれぞれに問題を抱えている。
【0010】
先ず、焼却については、廃材燃焼時の有毒ガス発生の問題がある。すなわち、アクリロニトリル・モノマー・ユニットに含まれ、重合体の側鎖のひとつを構成しているシアノ基(−C≡N)に由来して、猛毒のシアン・ガス(HCN)が発生する。また、炭化により不燃物に変化し易いことも焼却を困難とする原因となっている。
【0011】
再溶融は、回収された廃材を加熱溶融し再成形する手法であり、熱可塑性樹脂については有効な手法である。しかし、加熱による分子量の低下や酸化等、品質が劣化しやすい上、ゴミ等の異物の混入も生じやすい。さらに、出所の異なる廃材をまとめて処理する場合には、様々な着色剤が混合することにより再度色合わせが必要となるなど、技術的にもコスト的にも障害が多い。
【0012】
このため、現状では埋立による廃棄処分が最も得策であると考えられているが、処分場の立地や確保は年々困難となっており、環境破壊の問題も免れない。
【0013】
このような状況の中、本願出願人は、シアノ基を含有する高分子材料を化学的に処理することにより水溶性の高分子凝集剤に転換する技術を提案したが、一般に、シアノ基を有する高分子材料(廃材)の重量平均分子量は20万未満と低く、凝集性能面での改善が望まれるところである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、シアノ基を含有する高分子材料を出発物質とし、分子量が高く優れた凝集性能を備えた高分子凝集剤を提供することを目的とし、さらには、その製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述の目的を達するために提案されたものであり、シアノ基を有する高分子材料に分子間架橋構造を導入することで分子量を高め、凝集剤としての性能を向上したものである。
【0016】
すなわち、本願発明の高分子凝集剤は、アクリル繊維、ニトリル樹脂、スチレン−アクリロニトリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン−アクリル樹脂、アクリロニトリル−塩素化エチレン−スチレン樹脂、ニトリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムから選ばれる少なくとも1種からなるシアノ基を有する高分子材料が、該シアノ基の少なくとも一部に無機及び/又は有機アミノ化合物を付加された分子構造部を有し、この分子構造部の少なくとも一部が分子間架橋されてなることを特徴とするものである。
【0018】
上記高分子凝集剤は、アクリル繊維、ニトリル樹脂、スチレン−アクリロニトリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン−アクリル樹脂、アクリロニトリル−塩素化エチレン−スチレン樹脂、ニトリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムから選ばれる少なくとも1種からなるシアノ基を有する高分子材料に、該シアノ基の少なくとも一部に無機及び/又は有機アミノ化合物を付加してアミノ化合物付加物とした後、架橋剤を添加することにより分子間架橋することにより製造することができる。
また、シアノ基を有する高分子材料にメチレンジアミンを添加することで分子間架橋させることができる。
また、シアノ基を有する高分子材料に無機及び/又は有機アミノ化合物を付加してアミノ化合物付加物とした後、架橋剤を添加することで分子間架橋させることができる。
【0019】
特に、原料となる高分子材料に、他の目的に使用された後の使用済み廃材を用いれば、リサイクルによる資源の有効利用が可能となり、環境保全の点で極めて有用である。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の高分子凝集剤は、高分子材料にもともと含まれるシアノ基の少なくとも一部を架橋し、さらにイミダミノ構造(イミダゾリン構造を含む。)への転換を行うことにより、高分子量化するとともに、水溶性あるいは凝集性能を調節したものである。
【0022】
本発明の高分子凝集剤の出発材料となる高分子材料には当然のことながら、分子間架橋構造を導入し得る形でシアノ基が含有されている必要があるが、アクリロニトリル(CH2 =CH−CN)をモノマー・ユニットとして含む高分子材料であれば、シアノ基はポリマー分子の側鎖として結合されているので、好都合である。その他のシアノ基成分としては、メタアクリロニトリル、シアノ化スチレン等を挙げることができる。
【0023】
上記高分子材料は、アクリロニトリルのホモポリマーに限られず、他のモノマー・ユニットとの共重合体(コポリマー)であっても良い。他のモノマー・ユニットとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、塩化ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、エチレン、プロピレン、無水フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジンから選ばれるいずれか1種類、または数種類の組合せを挙げることができる。なお、上記アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルのエステル結合側鎖は、炭素数1〜10程度の飽和または不飽和炭化水素にて構成されるものが好適である。
【0024】
アクリロニトリルと上記の他のポリマーとを組み合わせた代表的な高分子材料としては、アクリル繊維、ニトリル樹脂、SAN樹脂(スチレン−アクリロニトリル樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン−アクリル樹脂、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン樹脂、ニトリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等がある。
【0025】
ところで、上記高分子材料がアクリロニトリルのホモポリマーである場合には、シアノ基の含有量は100モル%となるが、アクリロニトリルの共重合体である場合には、アクリロニトリルのモノマー・ユニット含有率によってシアノ基の含有量も当然変化する。
【0026】
本発明では、上記高分子材料にシアノ基が全モノマー・ユニットの15モル%以上含有されていること、つまり、アクリロニトリルのモノマー・ユニット含有率が15モル%以上であることが好適である。この値が30モル%以上であれば、なお好ましい。
【0027】
シアノ基の含有量がこれよりも少ないと、分子間架橋構造を導入し難くなり、得られる高分子凝集剤の分子量を十分に引き上げることができなくなる虞れがある。
【0028】
したがって、アクリロニトリルと組み合わせる他のモノマーは、85モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましい。これらのモノマーがこれ以上含有されると、シアノ基の含有量が低くなり、先に述べたように高分子量化が難しくなる。
【0029】
上記シアノ基を含有する高分子材料の重量平均分子量(Mw)としては、特に限定されるものではないが、通常2000〜100万であり、5万〜50万が一般的である。
【0030】
また、本発明の高分子凝集剤の原料となる高分子材料は、新規に製造された,いわゆるバージン材であっても無論構わないが、地球資源の有効利用と環境破壊防止の観点から、他の目的で使用された使用済み廃材に含まれるものを用いることが特に好適である。
【0031】
これらの廃材は、たとえば電気機器,自動車,文房具,計測機器,建材,化粧品等に使用された筐体,ケース,カバー,容器等である。また、この廃材は他の廃材と混合されたものであっても良い。このときの他の廃材とはたとえば、ポリエステル,ナイロン,ポリウレタン,ポリアミド,ポリフェニレンエーテル,ポリカーボネート,ポリフェニレンスルフィド,ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,絹,羊毛,木綿等の合成または天然繊維であり、着色剤,安定化剤,保水剤,難燃剤,可塑剤,充填剤等の各種添加剤が含まれていても良い。
【0032】
上述のような他の廃材が混在する場合、他の廃材の含有量は全体の60重量%以下に抑えるのがよい。60重量%を越えると、他の廃材に含まれる官能基の影響が強く現れることになり、改質反応が阻害される虞れがある。
【0033】
したがって、上記廃材は工場,販売店,一般家庭のいずれから回収されるものであっても良いが、得られる高分子凝集剤の組成や性能を管理する観点からは、他の廃棄物が混入されやすい一般家庭からの回収廃材よりも、単一組成の廃材が大量に発生する機会の多い工場や販売店からの回収廃材の方が好ましい。
【0034】
以上に示したシアノ基を含有する高分子材料は、改質反応(分子間架橋構造を導入するための反応)を促進するために、小片にしておくことが好ましい。ゴム成分を含んでいる場合は、凍結処理後に粉砕すると好適である。
【0035】
本発明では、上述のシアノ基を有する高分子材料に対して、例えば以下の(A)〜(C)の処理を行うことにより、イミダミノ構造(イミダゾリン構造を含む。)、アミド構造の少なくとも1種以上と分子間架橋構造の導入を図り、凝集性能に優れる水溶性高分子凝集剤とする。
【0036】
(A)シアノ基を有する高分子材料にポリアミンを付加させることにより、イミダミノ構造と分子間架橋構造の両方の導入を行い、高分子量の水溶性高分子凝集剤とする。
【0037】
例えば、シアノ基含有高分子材料にポリアミン化合物としてメチレンジアミンを付加させると、分子内環状化(イミダゾリン環)が生じ難く、分子間架橋が優先的に生じ易くなる。これにより高分子材料中に架橋構造とイミダミノアルキルアミン構造(非架橋部)の両方が形成されることになり、高分子量の水溶性高分子凝集剤が得られる。このときの反応式を化1に示す。
【0038】
【化1】
【0039】
なお、ポリアミン化合物として、分子内環化反応が生じ易いエチレンジアミンやプロピレンジアミン等を用いた場合でも、反応濃度や温度、触媒量の多少や有無、他のポリアミン化合物との併用等の条件改善により、分子内架橋構造を高分子材料に導入することができる。
【0040】
(B)シアノ基を有する高分子材料にジアミン化合物を付加し、これを架橋剤の添加により分子間架橋して高分子量の水溶性高分子凝集剤とする。
【0041】
例えば、先ず、シアノ基含有高分子材料にアミン化合物としてアルキルジアミンを付加させて、イミダゾリン構造若しくはイミダミノアルキルアミン構造を導入する。次に、各種架橋剤と反応を行って、分子間架橋構造を導入する。
【0042】
エチレンジアミンによる環化反応を化2に、それにより形成されたイミダゾリン構造における各種架橋反応を化3に示す。
【0043】
【化2】
【0044】
【化3】
【0045】
また、イミダゾリン構造若しくはイミダミノアルキルアミン構造を導入した後、これを加水分解処理することでアルキルアミンを側鎖に有するアミドポリマーとし、これに対して各種架橋剤により架橋反応を行ってもよい。この場合の反応式を化4に示す。
【0046】
【化4】
【0047】
(C)シアノ基を有する高分子材料にモノアミン化合物を付加し、これを架橋剤の添加により分子間架橋して高分子量の水溶性高分子凝集剤とする。
【0048】
例えば、先ず、シアノ基含有高分子材料にモノアミン化合物としてアルキルアミンを付加させて、イミダミノアルキル構造を導入する。次に、架橋剤である水溶性金属イオンやジクロロアルキル化合物と反応を行って、分子間架橋構造を導入する。この場合の反応を化5に示す。
【0049】
【化5】
【0050】
あるいは、エタノールアミンを付加した後、ジイソシアネート、ジカルボン酸、ジ酸クロライド、ジエチレンオキシド等の架橋剤と反応させてもよい。このときの反応を化6に示す。
【0051】
【化6】
【0052】
この場合、化7に示すように、架橋前に加水分解してアミド化してもよい。
【0053】
【化7】
【0054】
以上の反応により分子間架橋構造が導入することが可能であるが、このときに用いる架橋剤としては、水溶性金属イオンやホルマリン、さらにはハロゲン、アルデヒド、イソシアネート、チオイソシアネート、酸クロライド、チオニルクロライド、オレフィンオキシド、カルボン酸、アルキルカルボニル等の反応基を2以上有する化合物等を挙げることができる。水溶性金属イオンとホルマリン以外は、炭素数1〜12の炭化水素化合物に各反応基が2個以上置換導入されたものが一般的である。炭化水素化合物は、飽和、不飽和、環状、鎖状(直鎖、分岐)を問わない。
【0055】
代表例としては、2価以上の水溶性金属イオン(Ca、Al、Fe、Zn、Mn、Mg、Cu等の金属イオン)や(パラ)ホルマリン、ジハロゲン化合物(エチレンジクロライド、ヘキサメチレンジクロライド、ジベンジルジクロライド、エチレンジブロマイド等)、ジアルデヒド化合物(グリオキサール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フマルジアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジブアルデヒド等)、ジイソシアネート化合物、ジチオイソシアネート化合物、ジ酸クロライド化合物(ベンゼンジクロライド、ジベンジルジクロライド等)、ジチオニルクロライド化合物、ジエチレンオキシド化合物、ジプロピレンオキシド化合物、ジカルボン酸化合物(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等)、酸無水物(無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物等)等を例示することができる。これら架橋剤は、単独で用いてもよいし、複数のものを併用してもよい。
【0056】
上記架橋剤の添加量としては、高分子材料の構成単位(モノマーユニット)に対して0.01〜20モル%、好ましくは0.1〜10モル%である。これより多くなると、架橋密度が高くなりすぎ、改質物が水溶性を示さなくなる虞れがある。逆に、これよりも少ないと、架橋密度を十分に確保することができず、分子量を十分に高くすることができない。
【0057】
一方、分子間架橋構造の導入やイミダミノ構造(イミダゾリン構造を含む。)、アミド構造の導入のために用いられるアミン化合物としては、アンモニア、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン等の無機アミノ化合物や、アンモニアの水素原子の1個または2個が炭化水素基で置換された第1アミンまたは第2アミン等の有機アミノ化合物を挙げることができる。上記炭化水素基の炭素骨格は、飽和,不飽和の別、鎖状,環状の別、直鎖状,分岐状の別をいずれも問わない。また、炭化水素基の骨格中に、炭素、水素、窒素以外のヘテロ元素(酸素、硫黄、ハロゲン等)が含有されていてもよい。
【0058】
具体的に、上記有機アミノ化合物としては、炭素数1〜12の飽和及び/又は不飽和の鎖状及び/又は環状の炭化水素基で置換された第1アミン及び/又は第2アミン、1分子内に2個以上のアミノ基を有する前記第1アミン及び/又は第2アミン、分子内に窒素以外のヘテロ原子を有する前記第1アミン及び/又は第2アミン等が挙げられる。
【0059】
上記1分子内に2個以上のアミノ基を有する第1アミンあるいは第2アミンとしては、メチレンジアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン(ジアミノプロパン)、テトラメチレンジアミン(ジアミノブタン)、ペンタメチレンジアミン(ジアミノペンタン)、ヘキサメチレンジアミン(ジアミノヘキサン)、ヘプタメチレンジアミン(ジアミノヘプタン)等のアルキレンジアミン類や、N−メチルメチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N−ベンジルエチレンジアミン、N−メチル−1,3−ジアミノプロパン、N−ブチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N−ブチル−1,3−ジアミノプロパン等のN−アルキルアルキレンジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、ピペリジン等のアルキレンポリ(3以上)アミン類、1,2−ジアミノシクロヘキサン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の環式ポリアミン類等を例示することができる。
【0060】
分子内に窒素以外のヘテロ原子を有するアミノ化合物としては、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、ペンタノールアミン等のヒドロキシルアルキルアミン類等が挙げられ、その他、エタンチオールアミン等も挙げることができる。さらには、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、アルギニン、アスパラギン等のアミノ酸も使用可能である。
【0061】
上記アミン化合物は、単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いてもよい。あるいは、複数のアミン化合物を逐次添加して用いても良い。
【0062】
これらのアミン化合物を高分子材料と反応させることにより、イミダミノ構造が形成されることになり、水溶性が付与される。ここで、イミダミノ構造をさらに加水分解してアミド構造とするか、もしくは後述の無機、有機の酸やハロゲン化アルキルとの反応により酸塩や四級化塩としてもよい。
【0063】
なお、これらアミン化合物の添加量は、高分子材料中のシアノ基に対して、0.1倍モル〜100倍モル、好ましくは0.5倍モル〜50倍モルである。これより多くなると経済的に不利となり、逆に少なくなるとイミダミノ構造の導入量が少なくなり水溶性を示さなくなる虞れがある。
【0064】
また、上記アミン化合物の付加反応では、反応促進のために触媒を用いても良い。触媒としては、イオウ粉末、(アルカリ)金属硫化物、p−トルエンスルホン酸、ハイドロサルファイト、水硫化ナトリウム、チオ安息香酸、チオアセトアミド、チオ酢酸、チオベンズアニリド、五硫化燐、チオグリコール酸、チオプロピオン酸、ジチオオキサイド、硫化水素、硫化アンモニウム、硫化セレン、硫化テルル、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、その他の類似物等を挙げることができる。これら触媒の添加量としては、高分子材料の0.05〜20重量%程度である。
【0065】
上記無機あるは有機のアミン化合物が付加して生じた分子構造部は、イミダミノあるいはイミダゾリン骨格を有するところとなり、窒素原子上の孤立電子対に起因して塩基性を示す。
【0066】
この窒素原子が無機酸や有機酸から供給されるプロトンに配位結合すると、窒素原子が陽電荷を帯び、酸塩を形成する。このとき無機酸としては例えば、硫酸、クロルスルホン酸、塩酸、硝酸、リン酸を用いることができる。また有機酸としては、酢酸、乳酸、フタル酸、フェノール等を挙げることができる。
【0067】
また、上記分子構造部にハロゲン化炭化水素や硫酸エステルが与えられると、分子構造部の窒素原子がハロゲン化炭化水素や硫酸エステルの炭化水素基と結合することにより陽電荷を帯び、ハロゲンを対イオンとする四級アミン塩が生成する。このときのハロゲン化炭化水素としては、塩化メチルや塩化ベンジルを、また硫酸エステルとしてはジメチル硫酸やジエチル硫酸を挙げることができる。
【0068】
これら無機酸、有機酸、ハロゲン化アルキルは、それぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用してもよい。
【0069】
この無機酸、有機酸、ハロゲン化アルキルの添加量としては、高分子材料に形成されるイミダミノ構造(イミダゾリン構造を含む。)とアミノ基の累計に対して、10倍モル以下であることが好ましい。これより多くなると、未反応物が多く残存することになり、品質面やコスト面で不利である。
【0070】
以上の処理により形成される酸塩や四級アミン塩は、いずれも高い水溶性を発揮する。なお、無機酸、有機酸、ハロゲン化アルキル等で処理しない場合には、得られる高分子凝集剤はノニオン型の特性を有することとなる。
【0071】
次に、本発明の高分子凝集剤の製造方法であるが、先にも述べた通り、先ず高分子材料に含有されるシアノ基の少なくとも一部に無機及び/又は有機アミノ化合物が付加させてイミダミノ構造やイミダゾリン構造を導入し、同時に、あるいは引き続いて架橋反応を行う。
【0072】
これら反応のうちアミン化合物によるイミダミノ構造(イミダゾリン構造を含む。)の導入や同時に起こる架橋反応は、出発原料をアミノ化合物中に直接投入して行うことができる。このとき、反応終了後は反応混合物にアセトンのような高分子凝集剤を溶解させない溶媒を大量に注ぎ、生成物を再沈殿させることができる。
【0073】
あるいは上記反応を有機溶媒中で行うこともでき、このときの有機溶媒としては、炭素数5〜20程度の脂肪族鎖状及び/又は環状炭化水素、炭素数1〜4程度のハロゲン化炭化水素、ジクロロベンゼン、芳香族炭化水素、エーテル類、ケトン類、エステル類、およびジメチルスルホキシド(DMSO),ジメチルホルムアミド(DMF),テトラヒドロフラン(THF),ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒を使用することができる。有機溶媒を用いた場合には、反応終了後に反応系に水を添加し、溶媒を留去することにより、水溶液として得ることができる。
【0074】
架橋剤による架橋反応は、前述の有機溶剤中で反応させることにより実施することができる。
【0075】
反応の際のアミノ化合物や架橋剤の濃度は特に限定されるものではないが、0.1〜50%とすることが好適である。この濃度が低すぎると、反応速度が低下したり、反応が十分に進行しない虞れが生ずる。逆にあまり濃度が高くなりすぎると、溶液の粘度が高くなり、反応が円滑に進行しなくなる虞れがある。
【0076】
上記付加反応を行う際の反応温度は、出発物質として用いる高分子材料の種類、使用するアミン化合物や架橋剤、触媒の種類、反応系を構成する溶媒の種類、溶媒の有無等の条件により異なるが、0〜150℃の範囲であればまず実用的な速度と制御性をもって反応を進行させることができる。温度がこれより低いと反応速度が低下し、生産効率面で不利である。また、温度がこれより高いと高分子材料が低分子化し、凝集剤としての性能が低下しやすい。より好ましい温度範囲は20〜120℃である。
【0077】
また、反応時間は使用するアミン化合物、架橋剤の種類にもよるが、30分〜80時間の範囲であればまず実用的な収率で目的の生成物を得ることができる。反応時間がこれより短いと十分に改質を行うことができないが、化学的平衡状態が達成された以降は反応時間を延長しても意味がない。
【0078】
なお、アミン化合物の付加反応を行わせた後に加水分解を行う場合、これを酸触媒を用いる酸加水分解または塩基性触媒を用いるアルカリ加水分解により行うことができる。
【0079】
上記の酸加水分解の酸触媒としては、硫酸、無水硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸、塩酸、硝酸、燐酸等の無機酸を使用することができる。また、これらの無機酸と過酸化水素水のような無機過酸化物を併用して加水分解反応を促進するようにしても良い。
【0080】
上記のアルカリ加水分解の塩基触媒としては、Li,Na,K,NH4 の水酸化物,炭酸水素塩,炭酸塩,あるいは酢酸塩等の無機塩基を用いることができる。
【0081】
いずれの加水分解でも、高分子材料を無機酸中に直接投入するか、あるいは無機塩基のアルカリ水溶液中に投入して行なうことができる。あるいは、上述の付加反応に用いた溶媒と同じ溶媒を用いて行なっても良い。加水分解時の触媒の濃度、反応温度、反応時間は、全て上述の付加反応について述べた範囲と同等に設定すれば良い。
【0082】
以上により得られる高分子凝集剤の重量平均分子量(Mw1)としては、原料となるシアノ基含有高分子材料の重量平均分子量(Mw2)に対して、その比(Mw1)/(Mw2)が3〜100であることが好ましく、5〜50であることが望ましい。重量平均分子量(Mw1)の値としては、5000〜10000000であることが好ましく、10万〜800万であることがより好ましい。
【0083】
重量平均分子量(Mw1)がこれよりも大きくなると、製造が難しくなるばかりか、水に溶解し難くなるため、ハンドリング面で不利である。逆に、重量平均分子量(Mw1)が前記範囲よりも小さいと、凝集剤としての性能が低下する。
【0084】
本発明の高分子凝集剤は、通常の高分子凝集剤の使用方法にしたがい、水処理に用いることができる。また、本発明の高分子凝集剤を他の各種凝集剤と併用することも可能である。
【0085】
併用可能なノニオン性高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリオキシエチレン等の合成系や、澱粉、グアーガム、ゼラチン等の糖や蛋白質系に代表される天然産系のもの等が使用可能である。
【0086】
カチオン性高分子凝集剤としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの四級化物(四級化剤としては、塩化メチル、ジメチル硫酸、塩化ベンジル等)もしくはその酸塩(酸塩としては、塩酸塩、硫酸塩等の無機酸塩、及び酢酸塩等の有機酸塩等)の重合体、またはこれらと(メタ)アクリルアミドとの共重合体(例えば、ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド四級化物の重合体、またはこれとアクリルアミドとの共重合体)、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの四級化物もしくはその酸塩の重合体、またはこれらと(メタ)アクリルアミドとの共重合体(例えば、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライド四級化物とアクリルアミドとの共重合体)、ポリアクリルアミドのカチオン化変性物(例えば、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性物及びホフマン分解物)、エピハロヒドリン−アミン縮合物(例えば、エピハロヒドリンと炭素数2〜6のアルキレンジアミンとの重縮合物)、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ポリビニルイミダゾリン及び/又はその塩、ジシアンジアミド縮合物(例えば、ジシアンジアミドと塩化アンモニウムのホルマリン縮合物)、ポリエチレンイミン及びその四級化物もしくは酸塩、ポリビニルイミダゾール及びその四級化物もしくは酸塩、ポリ−4−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、キトサン及びその塩類、N−ビニルホルムアミド/アクリロニトリルコポリマーの酸性加水分解物及びその四級化物もしくは酸塩、ポリビニルピリジン及びその四級化物もしくは酸塩、水溶性アニリン樹脂及びその四級化物もしくは酸塩、アルキレンジクロライドとポリアルキレンポリアミンの縮合物、アニリン−ホルムアルデヒド重縮合物塩、ポリヘキサメチレンチオ尿素酢酸塩、ポリアミノ酸(例えば、ポリリジンやポリグルタミン酸及びその塩類)等が挙げられる。
【0087】
アニオン性高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミドやポリメタクリルアミドの部分加水分解物、アクリル酸又はメタクリル酸とアクリルアミド又はメタクリルアミドとの共重合体及びその塩類、アクリル酸又はメタクリル酸とアクリルアミド又はメタクリルアミドと2−アクリルアミド−メチルプロパンスルホン酸又はビニルスルホン酸又はビニルメチルスルホン酸との3元共重合体及びその塩類、アルギン酸やグアーガム、カルボキシメチルセルロース、澱粉の各ナトリウム塩、ポリスチレンスルホン酸及びその塩、ポリスチレン系樹脂廃材(ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、ABS樹脂、SAN樹脂、ニトリルゴム等。廃材中にはポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド等が60重量%以下で含有されていてもよい。)のスルホン化物及びその塩等が挙げられる。
【0088】
これらアニオン性高分子凝集剤の中で、スルホン化されたスチレン系ポリマーは、懸濁液の清澄化効果も大きく、また本発明の高分子凝集剤と同様、廃材の利用が可能であることから、好ましいと言える。
【0089】
この高分子凝集剤に用いられるスチレン系ポリマーとしては、スチレン−ブタジエン、スチレン−アクリロニトリル、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル、スチレン−(メタ)アクリル酸、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル(炭素数が1〜4の脂肪族炭化水素)、スチレン−アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸エステル(炭素数が1〜4の脂肪族炭化水素)、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル(炭素数が1〜4の脂肪族炭化水素)、スチレン−無水マレイン酸、スチレン−無水イタコン酸等が挙げられる。この中でも、好ましくは、スチレン−ブタジエン、スチレン−アクリロニトリル、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル、スチレン−無水マレイン酸、スチレン−アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸エステル(炭素数が1〜4の脂肪族炭化水素)、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル(炭素数が1〜4の脂肪族炭化水素)が挙げられる。さらに好ましくは、スチレン−ブタジエン、スチレン−アクリロニトリル、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル、スチレン−無水マレイン酸が挙げられる。
【0090】
上述したスチレン系ポリマーは、高分子凝集剤を製造するために新規につくられたもの(バージン材)であっても、工場や販売店、家庭等からの廃棄物(廃材)であってもよく、また、バージン材と廃材とを併用してもよい。汎用性樹脂として大量に生産されたポリスチレン系樹脂製品を再利用し、地球環境を保全する観点から、スチレン系ポリマーとしては、バージン材よりも廃材を用いることが好ましい。
【0091】
なお、廃材を用いた場合には、上述したスチレン系ポリマー以外にその他のポリマーが含有されていても良い。その他のポリマーとしては、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。また、好ましくは、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネートが挙げられる。このとき、その他のポリマーは、好ましくは約60重量%以下とされる。
【0092】
そして、上述したようなスチレン系ポリマーは、スルホン化剤を含有する溶媒中にてスルホン化される。その後、スルホン化されたスチレン系ポリマーは、スルホン基を中和した後に溶媒及びスルホン化剤を留去することにより高分子凝集剤となる。
【0093】
このスルホン化剤としては、無水硫酸、発煙硫酸、クロルスルホン酸、濃硫酸等が挙げられる。これらスルホン化剤は、それぞれ単独で使用しても良いし、複数種を併用しても良い。また、スルホン化剤の添加量としては、スチレン系ポリマー中に含まれる芳香族環(スチレン系樹脂では側鎖のベンゼン環、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート系樹脂では主鎖中のベンゼン環)ユニット1モル当たり0.5〜2.0モルを使用することが好ましく、さらに好ましくは、0.7〜1.5モルの範囲で使用する。スルホン化剤は、添加量が少ないと、スチレン系ポリマーを十分にスルホン化することができない。したがって、この場合、高分子凝集剤は、高分子電解質としての機能が発現されないようなものとなってしまう。これに対して、スルホン化剤は、添加量が多いと、スルホン化反応中にゲル化物を発生させたり、反応系中に塩等の副生成物を多量に発生させてしまう。したがって、この場合、高分子凝集剤は、多量の不純物を含有することとなり、純度の低いものとなってしまう。
【0094】
また、スチレン系ポリマーのスルホン化には、上述したスルホン化剤とルイス塩基とを併用しても良い。このルイス塩基としては、アルキルフォスフェート(トリエチルフォスフェート、トリメチルフォスフェート)、ジオキサン、無水酢酸、酢酸エチル、パルチミン酸エチル、ジエチルエーテル、チオキサン等が挙げられる。これらルイス塩基の添加量は、スチレン系ポリマーに含まれる芳香族環(スチレン系樹脂では側鎖のベンゼン環、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート系樹脂では主鎖中のベンゼン環)ユニット1モルに対して、0.01〜2.0モル、好ましくは、0.02〜1.0モルである。なお、このルイス塩基は、添加量が少ないと、スルホン化反応中にゲル化物が発生し易くなる。これに対して、添加量が多いと、スルホン化反応自体が進行し難くなり高分子凝集剤の収率が低下し、コストが増加することとなる。
【0095】
一方、上述したスチレン系ポリマーのスルホン化の際に用いられる溶媒としては、炭素数が1〜2の脂肪族ハロゲン化炭化水素(好ましくは、1,2−ジクロロエタン 、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタン)、脂肪族環状炭化水素(好ましくは、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン)等である。なお、これら溶媒は、単独で用いても良いし、複数混合して用いても良い。この溶媒の混合において、その混合比率は、特に限定されるものではない。
【0096】
また、上述した溶媒は、他の溶媒を混合して用いられてもよい。このとき、混合して用いることが可能な他の溶媒としては、パラフィン系炭化水素(炭素数が1〜7)、アセトニトリル、二硫化炭素、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2-ジメトキシエタン、アセトン、メチルエチルケトン、チオフェン等が挙げられる。これらの中で、他の溶媒として好ましくは、パラフィン系炭化水素(炭素数が1〜7)、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリルが挙げられる。なお、これら他の溶媒との混合比率は、特に限定しないが、好ましくは、1〜100体積%の範囲が好ましい。なお、上述した溶媒は、スチレン系ポリマーのスルホン化反応終了後、抜き取りや蒸留等手法により回収して再度スルホン化反応に使用しても良い。
【0097】
そして、上記アニオン性高分子凝集剤は、上述したようなスチレン系ポリマー、スルホン化剤及び溶媒を所定量混合しスルホン化反応を進行させることにより得られる。
【0098】
このスルホン化反応の際、スチレン系ポリマーの濃度は、0.1〜30重量%とされることが好ましく、より好ましくは、0.5〜20重量%とされる。スチレン系ポリマーは、濃度が上述した範囲より薄いと、スルホン基が導入され難くなる。これに対して、濃度が上述した範囲より薄いと、スルホン化反応中にゲル化物が発生し易くなったり、未反応物が多量に発生してしまうこととなる。
【0099】
また、このスルホン化反応では、反応温度が0〜100℃、好ましくは、15〜80℃とされる。スルホン化反応において、反応温度がこの範囲より低いと、スルホン化反応がしにくくなり高分子凝集剤の収率が低下してしまう。
【0100】
さらに、このスルホン化反応では、反応時間(スルホン化剤の滴下時間は含まない。)が10分〜10時間とされ、好ましくは、30分〜5時間とされる。
【0101】
このように、スルホン化反応が終了した溶液は、中和剤によりスルホン基を中和した後に溶媒を留去される。これにより、所望の高分子凝集剤が生成される。
【0102】
このとき、中和剤としては、塩基性化合物、例えば、アルカリ金属(ナトリウム、リチウム、カリウム等)やアルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等)の酸化物、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の化合物や、アンモニアや各種(1〜3級アルキル)アミン化合物等が挙げられる。そして、この中和剤は、固体の状態、もしくは水溶液の状態で反応系中に徐々に添加され、スチレン系ポリマーに導入されたスルホン基を中和する。また、溶媒を留去する手法としては、分液、蒸留等の手法が用いられる。
【0103】
以上のようにして得られた本発明に係る高分子凝集剤では、その分子量(Mw)が15万〜60万とされることが必要である。また、分子量(Mw)は、20万〜50万であることがより好ましい。高分子凝集剤は、スルホン化されたスチレン系ポリマーの分子量が15万以下であると、懸濁液中の懸濁物質に対する凝集効果が低下するだけでなく、懸濁物質を分散させることとなる。一方、スルホン化されたスチレン系ポリマーの分子量が60万以上であると、懸濁物質が粗大なフロックとして凝集してしまい、良好な清澄化効果を得られず、また、生成されるケーキの含水率も高いものとなってしまう。
【0104】
一方、この高分子凝集剤においては、スチレン系ポリマー中にスルホン基が40モル%以上導入され、好ましくは、50モル%以上導入される。高分子凝集剤は、スチレン系ポリマー中にスルホン基が40モル%より小となると、水に対する溶解性が低下してしまい、懸濁液中の懸濁物質に対する凝集効果が大幅に低下してしまう。
【0105】
上述したように、この高分子凝集剤において、所望する量のスルホン基を導入するためには、スチレン系ポリマーにスチレンユニットが60モル%以上、好ましくは80モル%以上含有されることが好ましい。スチレン系ポリマー中のスチレンユニットが60モル%より少とされると、スルホン化反応により上述した量のスルホン基を有する高分子凝集剤を得ることが困難である。
【0106】
これら高分子凝集剤の他、天然物系の凝集剤も本発明の高分子凝集剤と併用可能である。天然物系の凝集剤としては、モロヘイヤ、又はその乾燥物や抽出物、トマトの種子周辺のゼリー状部分、又はその乾燥物や抽出物が挙げられる。
【0107】
モロヘイヤは、主にエジプトを中心にシリア、ヨルダン、イラン等のアラブの熱帯地方で栽培されているシナノキ科のコルコルス属の1年草であり、緑黄色野菜として古くから食用に利用されている。このモロヘイヤの主成分である粘性を示す酸性多糖類を凝集剤として利用する。
【0108】
具体的には、モロヘイヤの花、茎、葉、根部、又はこれらの一部をペースト状にしたものを凝集剤とする。あるいは、モロヘイヤの花、茎、葉、根部、又はこれらの一部を乾燥状態でミキサー等により粉砕した粉体を凝集剤としてもよい。モロヘイヤの乾燥には、天日、日陰での風乾、真空乾燥、熱風乾燥、凍結乾燥等、任意の方法を使用することができる。
【0109】
トマトは、ナス科の植物で温帯では一年生であり、やはり緑黄色野菜として古くから食用に利用されている。このトマトの種子周辺のゼリー状部分を凝集剤として利用する。
【0110】
具体的には、トマトの種子周辺のゼリー状部分をそのまま、又はこれらを乾燥状態でミキサー等により粉砕した粉体を凝集剤とする。乾燥には、モロヘイヤの場合と同様の手法が使用できる。
【0111】
さらには、これらモロヘイヤのペーストや粉体、あるいはのトマトの種子周辺のゼリー状部分やその乾燥物を、水、温水、親水性有機溶剤(アルコール類、エーテル類、N,N−ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド糖等)、又はこれらの混液により抽出した抽出液を凝集剤としてもよい。さらに、抽出液を分画したもの、或いは抽出液を乾燥したものであってもよい。なお、抽出液としては、水もしくは温水が好ましい。
【0112】
また、上記抽出液を貧溶媒となる有機溶剤で再沈させたものや、これを乾燥させたものを凝集剤としてもよい。
【0113】
これら抽出液は、必要に応じて、液中の固形物をフィルター等で濾過するとよい。
【0114】
また、これら凝集剤は、アルカリ水溶液や酸水溶液で処理又は抽出して、これを凝集剤としてもよい。アルカリとしては、例えば、アンモニア水、各種アミン化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。酸としては、乳酸、酪酸、酢酸、ギ酸等の有機酸や、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。
【0115】
勿論、モロヘイヤやトマトの種子周辺の粘性成分をそのまま凝集剤として用いることができるが、上述したように、粉体や抽出液として利用する方が、処理液(懸濁液)中での拡散をより容易にする上で効果的である。また、モロヘイヤやトマトの種子周辺の粘性成分をそのまま乾燥したものよりは、水、温水、水溶性有機溶剤等で抽出した後に乾燥させたものの方が、同一固形物重量当たりの凝集活性は有利となる。
【0116】
但し、モロヘイヤの粘性の多糖成分やトマトの種子周辺の粘性成分は、粉砕や加熱しすぎると、その主・側鎖の切断による分子量低下や分子内架橋反応による水不溶化が生じ、凝集活性が低下しまうので、注意を要する。
【0117】
本発明の高分子凝集剤は、上述の何れの凝集剤とも併用することが可能であるが、逆のタイプの高分子凝集剤と組み合わせる場合には、効率的な処理のために若干の工夫を要する。
【0118】
例えば、本発明の高分子凝集剤が正の電荷を有する場合(例えばアミノ化合物が付加された分子構造部分を有し、これが酸塩あるいは四級アンモニウム塩とされた場合)、上記アニオン型高分子凝集剤と組み合わせて用いると、水中における両者の電荷が逆符号となるので、混合使用ではなく、逐次使用とすることが好ましい。
【0119】
逐次使用においては、カチオン型高分子凝集剤とアニオン型高分子凝集剤のいずれを先に被処理水に投入しても良いが、水処理として下水処理を想定した場合、通常の下水では一般に微生物処理を経てコロイドが負に帯電しているため、カチオン型高分子凝集剤を先に投入するのが一般的である。
【0120】
本発明の水処理方法ではさらに、本発明の高分子凝集剤を無機凝集剤や凝集助剤と併用することも可能である。
【0121】
上記無機凝集剤としては、例えば、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、硫酸第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、塩化コッパラス、変性塩基性硫酸アルミニウム(LACS)、活性シリカ等が挙げられる。
【0122】
また、上記凝集助剤としては、例えば、消石灰、珪酸ナトリウム、ベントナイト、フライ・アッシュ等を用いることができる。
【0123】
これら各薬剤の添加量としては、汚泥種類や汚泥中の懸濁物の濃度、脱水処理設備等にもよるが、概ね0.001〜2000ppm(対排水)、好ましくは0.1〜500ppmである。
【0124】
本発明で処理の対象とされる被処理水は特に限定されるものではないが、主に有機性汚泥を含む下水や、無機系粒子が懸濁している工場廃水のように汚染度の高い水を対象とした場合に、多大な効果が得られる。
【0125】
被処理水に対する本発明の高分子凝集剤の添加量は、被処理水の組成や他の凝集剤や凝集助剤との組合せによっても異なるが、少なすぎると懸濁粒子が十分に凝集されず、また多すぎると凝集に寄与しない高分子凝集剤の割合が大きくなり、高分子凝集剤の無駄であるばかりか新たな水質汚染の原因ともなりかねない。添加量の好ましい範囲は概ね0.001〜2000ppmであり、より好ましくは0.1〜500ppmである。
【0126】
本発明の高分子凝集剤を用いて排水処理を行う際には、凝結剤、キレート樹脂、キレート剤、活性炭、オゾン水、イオン交換樹脂、イオン交換膜、吸水性樹脂、過酸化水素水、塩素及び液体塩素、次亜塩素酸ナトリウム、二酸化塩素、さらし粉、塩素化イソシアヌル、けいそう土、酸化チタン等の光触媒、生物処理剤等の各種副処理剤を併用してもよい。
【0127】
また、ベルトプレス脱水機、遠心脱水機、スクリュープレス等の各種脱水機も使用可能である。脱水物(ケーキ)は、公知の方法で埋め立て処理することが可能である。また、燃料化、コンポスト化することも極めて容易である。
【0128】
【実施例】
以下、本発明の具体的な実施例について、実験結果を基に説明する。
【0129】
<高分子廃材の改質>
先ず、シアノ基を有する高分子廃材にアミノ化合物、架橋剤を反応させて高分子凝集剤を製造し、その性能を調べた。
【0130】
以下の実験で用いたシアノ基を有する高分子廃材は、下記の5種類である。
【0131】
・アクリル繊維廃材a
セーター用アクリル繊維の廃材。アクリロニトリル含有率95モル%以
上。
【0132】
・ニトリル樹脂廃材b
化粧品容器廃材。アクリロニトリル含有率90モル%以上。
【0133】
・ABS樹脂廃材c
8mmカセットケースシェル(黒色部分の廃材。アクリロニトリルユニ
ットを38モル%含有。
【0134】
・SAN樹脂廃材d
8mmカセットケースシェル(透明部分の廃材。アクリロニトリルユニ
ットを40モル%含有。
【0135】
・ニトリルゴム廃材e
ゴムホースの廃材。アクリロニトリルユニットを25モル%含有。
【0136】
いずれも小片としたものを原料として用いたが、アクリル繊維廃材aについては、鋏により一辺が3mm以下の小片に切断した。ニトリル樹脂廃材bとSAN樹脂廃材dについては、カッター式粉砕機により、65メッシュ以下の小片として原料に使用した。ABS樹脂廃材cとニトリルゴム廃材eについては、凍結した後、カッター式粉砕機により粉砕し、やはり65メッシュ以下の小片とした。
【0137】
実施例1
シクロヘキサン40gにエチレンジアミン4g、硫黄粉末0.03g、及びアクリル繊維廃材aの小片1.0gを投入し、そのまま撹拌しながら60℃で6時間、付加反応を行った。
【0138】
その後、反応容器の底に析出した緑色固形物を取り出し、水に溶解したものを多量のアセトン中に注ぎ沈殿させた。
【0139】
次に、この沈殿物のろ過を行い、室温下、減圧乾燥を行って淡黄色の粉末を得た。
【0140】
得られた粉末について、フーリエ変換赤外吸収スペクトル(FT−IR)及び核磁気共鳴スペクトル(NMR)を測定したところ、反応固形物中のシアノ基の83モル%がイミダゾリン環に転換されていること、また、このイミダゾリン環は加水分解されていないことが確認された。
【0141】
次に、得られた粉末を水に溶解して2%のポリマー水溶液とし、このポリマー水溶液100gにスクシンジアルデヒド0.5g(純分)を加えて50℃で1時間反応を行った。このとき、反応中に粘度の上昇が確認された。
【0142】
この反応水溶液を高分子凝集剤Aとした。この高分子凝集剤Aは、ノニオン型高分子凝集剤に相当する。
【0143】
実施例2
原料としてABS樹脂廃材cの粉砕物を用い、他は実施例1と同様の方法により反応水溶液を得た。
【0144】
次いで、この反応水溶液に塩酸を添加してpHを4に調整した。
【0145】
この反応水溶液を高分子凝集剤Bとした。この高分子凝集剤Bは、カチオン型高分子凝集剤に相当する。
【0146】
実施例3
実施例1で得られたポリマー水溶液を90℃で15時間加熱した。なお、反応終了後、この水溶液のサンプリングを行い、乾燥物のFT−IR及びNMRを測定したところ、反応前のイミダゾリン環の70モル%が加水分解されてアミド構造に転換されていることが確認された。
【0147】
次に、反応終了後の水溶液に、1,2−ジクロロエタン0.1gを加えて50℃で2時間反応を行った。この反応中においても粘度の上昇が確認された。
【0148】
反応終了後、未反応の1,2−ジクロロエタンを減圧加熱により1ppm以下になるまで留去した。
【0149】
この反応水溶液を高分子凝集剤Cとした。この高分子凝集剤Cは、カチオン型高分子凝集剤に相当する。
【0150】
実施例4
SAN樹脂廃材dの小片1.0gをジメチルスルホキシド(DMSO)20gに溶解させ、そこにエタノールアミン2.5gを室温下で滴下した。そのまま撹拌しながら100℃まで昇温し、12時間反応を行った。
【0151】
反応終了後、未反応のエタノールアミンを減圧蒸留により留去した。以上の処理によりシアノ基の90%がイミノ構造に置換されたポリマーが得られた。
【0152】
次に、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート0.1gを加え、40℃で1時間反応を行った。このとき、反応中に水溶液の粘度の上昇が確認された。
【0153】
この後、反応液をエタノール中に注いで沈殿させ、ろ過後、メタノールで洗浄を行い、室温下で減圧乾燥した。
【0154】
次いで、得られたポリマーを水中に投入し、希硫酸でpH4の水溶液とした。
【0155】
この反応水溶液を高分子凝集剤Dとした。この高分子凝集剤Dは、カチオン型高分子凝集剤に相当する。
【0156】
実施例5
1,2−プロパンジアミン2.0gに硫黄粉末0.02gとニトリル樹脂廃材b1.0gを投入し、110℃で6時間反応を行った。
【0157】
反応終了後、減圧蒸留により未反応の1,2−プロパンジアミンの留去を行い、その後、残留物は水に溶かしてアセトンで沈殿させた。
【0158】
次に、この沈殿物のろ過を行い、室温下、減圧乾燥を行って茶色の粉末を得た。
【0159】
得られた粉末について、フーリエ変換赤外吸収スペクトル(FT−IR)及び核磁気共鳴スペクトル(NMR)を測定したところ、反応固形物中のシアノ基の91モル%がイミダゾリン環に転換されていることが確認された。
【0160】
次いで、この粉末を水に溶かして2%のポリマー水溶液とし、このポリマー水溶液100gにホルムアルデヒド0.2g(純分)を添加して40℃で30分間反応を行った。このとき、反応中に粘度の上昇が確認された。
【0161】
この反応水溶液を高分子凝集剤Eとした。この高分子凝集剤Eは、ノニオン型高分子凝集剤に相当する。
【0162】
実施例6
シクロヘキサン40gに硫黄粉末0.02gと分子架橋用ポリアミ化合物としてヘキサメチレンジアミン0.5gとイミダゾリン環形成用のアミン化合物としてエチレンジアミン3.5g、及びアクリル繊維廃材aの小片1.0gを投入し、そのまま撹拌しながら60℃で4時間反応を行った。
【0163】
その後、反応容器の底に析出した固形物を取り出し、水に溶解したものを多量のアセトンに注ぎ、沈殿させた。
【0164】
次に、この沈殿物のろ過を行い、室温下、減圧乾燥を行い、淡黄色の粉末を得た。この粉末中のシアノ基の73モル%がイミダゾリン環に転換されていた。
【0165】
この粉末を高分子凝集剤Fとした。この高分子凝集剤Fは、ノニオン型高分子凝集剤に相当する。
【0166】
実施例7
ニトリルゴム廃材eを用いた以外は実施例6と同様の方法でポリマー粉末を得た。
【0167】
次に、この粉末を水に溶かして2%水溶液とし、ここの塩化メチルを吹き込んで四級化反応を行った。なお、未反応の塩化メチルは、加熱により留去した。
【0168】
この反応水溶液を高分子凝集剤Gとした。この高分子凝集剤Gは、カチオン型高分子凝集剤に相当する。
【0169】
比較例1
実施例1のアクリル繊維廃材aのエチレンジアミン付加物(ただし、スクシンアルデヒドによる架橋処理は行っていないもの。)を比較サンプルHとした。
【0170】
比較例2
実施例5のニトリル樹脂廃材bの1,2−プロパンジアミン付加物(ただし、ホルムアルデヒドによる架橋処理は行っていないもの。)を比較サンプルIとした。
【0171】
<凝集性能の評価>
次に、これらの高分子凝集剤A〜Iの凝集性能を評価した。
【0172】
なお、以下の一連の試験例では、本発明品との比較、または本発明品との併用を目的として、下記の凝集剤を用いた。
【0173】
評価試験1
1重量%のカオリン水溶液を凝集評価用懸濁液(以下、懸濁液と称する。)とした。この懸濁液を200ml容の共栓付きメスシリンダに100ml入れ、凝集剤の水溶液をメスピペットを用いてそれぞれ懸濁液中に滴下した。滴下量は、懸濁液中における凝集剤の濃度が2ppmとなる量とした。
【0174】
なお、以下の例でも同様であるが、二種類の凝集剤を併用する場合には、その比率1:1とし、全体で所定の添加量となるようにした。
【0175】
滴下後、直ちにメスシリンダに栓をし、上下反転を10回繰り返し、その後静置して懸濁粒子の沈降速度と上澄み液の濁度とを測定した。測定結果を表1に示す。
【0176】
【表1】
【0177】
表1より、本発明の改質されたノニオン型高分子凝集剤は、単独および混合のいずれの場合においても、市販のノニオン型凝集剤よりも沈降速度、上澄み液の濁度において良好な結果を示し、優れた凝集性能を有していることが確認された。
【0178】
また、高分子凝集剤H,Iとの比較から、架橋剤により強制架橋されることにより、その凝集性能が大幅に改善されていることも確認された。
【0179】
評価試験2
電子部品工場の排水を硫酸バンドにて一次凝集した処理液(pH6.2、SS1.8重量%)を凝集評価用懸濁液とした。
【0180】
この懸濁液を200ml容の共栓付きメスシリンダに100ml入れ、各凝集剤をメスピペットを用いてそれぞれ懸濁液中に滴下した。滴下量は、懸濁液中における高分子凝集剤の濃度が4ppmとなる量とした。なお、凝集剤を二種類併用する場合には、それぞれ前記濃度が2ppmとなるように混合して使用した。
【0181】
滴下後、直ちにメスシリンダに栓をし、上下反転を10回繰り返し、その後静置して懸濁粒子の沈降速度と上澄み液の濁度、ろ布にて脱水後のケーキの含水率を測定した。測定結果を表2に示す。
【0182】
【表2】
【0183】
表2より、本発明の高分子凝集剤は、従来のアニオン型凝集剤よりも沈降速度、上澄み液の濁度、ケーキ含水率の点で優れた特性を有していることが確認された。また、本発明の高分子凝集剤は、市販のアニオン型凝集剤と混合使用することにより、さらにその凝集性能が向上されることも確認された。
【0184】
評価試験3
下水処理場の混合汚泥(pH6.5、SS2.2重量%)についてジャーテストを行った。
【0185】
先ず、ジャーテスターにて撹拌中の汚泥に対して、カチオン型高分子凝集剤を対SS当たり0.4重量%(2種類を混合して用いる場合には、それぞれ0.2重量%)添加撹拌し、凝集させた。さらに、引き続いてアニオン型高分子凝集剤を対SS当たり0.2重量%(2種類を混合して用いる場合には、それぞれ0.1重量%)添加し、撹拌を行い凝集させた。
【0186】
その後、静置して懸濁粒子の沈降速度と上澄み液の濁度、ろ布にて脱水後のケーキの含水率を測定した。測定結果を表3に示す。
【0187】
【表3】
【0188】
表3より、本発明の高分子凝集剤は、単独で使用した場合、及びアニオン型凝集剤と併用した場合のいずれにおいても、従来のカチオン型凝集剤よりも沈降速度、上澄み液の濁度、ケーキ含水率の点で優れた特性を有していることが確認された。
【0189】
以上、本発明の具体的な実施例および評価試験結果について説明したが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、高分子凝集剤の製造原料となる高分子材料の種類、架橋反応条件、付加反応条件、加水分解反応条件、酸塩の形成条件、水処理条件等の細部については、適宜変更、選択、組合せが可能である。
【0190】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明の高分子凝集剤は、シアノ基、特にアクリロニトリル起源のシアノ基を含有する高分子材料を分子量の高い水溶性高分子に改質したものであり、凝集速度、上澄み液の濁度、ケーキの含水率について、優れた性能を発揮する。
【0191】
したがって、これを水処理に用いることで、廃水の環境浄化の面で積極的な環境保全に貢献できるものである。
【0192】
また、特に、原料として従来廃棄処分されていた廃材を再利用すれば、有害廃棄物の低減や資源の有効利用を図ることも可能である。
Claims (11)
- アクリル繊維、ニトリル樹脂、スチレン−アクリロニトリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン−アクリル樹脂、アクリロニトリル−塩素化エチレン−スチレン樹脂、ニトリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムから選ばれる少なくとも1種からなるシアノ基を有する高分子材料が、該シアノ基の少なくとも一部に無機及び/又は有機アミノ化合物を付加された分子構造部を有し、この分子構造部の少なくとも一部が分子間架橋されてなる高分子凝集剤。
- 上記高分子材料がシアノ基を全モノマー・ユニットの15モル%以上含有していることを特徴とする請求項1記載の高分子凝集剤。
- 上記高分子材料が他の目的に使用された使用済みの廃材に含まれることを特徴とする請求項1記載の高分子凝集剤。
- アクリル繊維、ニトリル樹脂、スチレン−アクリロニトリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン−アクリル樹脂、アクリロニトリル−塩素化エチレン−スチレン樹脂、ニトリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムから選ばれる少なくとも1種からなるシアノ基を有する高分子材料に、該シアノ基の少なくとも一部に無機及び/又は有機アミノ化合物を付加してアミノ化合物付加物とした後、架橋剤を添加することにより分子間架橋することを特徴とする高分子凝集剤の製造方法。
- シアノ基を有する高分子材料にメチレンジアミンを添加することで分子間架橋させることを特徴とする高分子凝集剤の製造方法。
- シアノ基を有する高分子材料に無機及び/又は有機アミノ化合物を付加してアミノ化合物付加物とした後、架橋剤を添加することにより分子間架橋することを特徴とする高分子凝集剤の製造方法。
- 上記アミノ化合物付加物を加水分解した後、架橋剤を添加することにより分子間架橋することを特徴とする請求項6記載の高分子凝集剤の製造方法。
- 上記無機アミノ化合物が、アンモニア、ヒドラジン、ヒドロキシルアミンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項6記載の高分子凝集剤の製造方法。
- 上記有機アミノ化合物が、炭素数1〜12の炭化水素基で置換された第1アミン、及び炭素数1〜12の炭化水素基で置換された第2アミンの少なくとも1種であることを特徴とする請求項6記載の高分子凝集剤の製造方法。
- 上記高分子材料として、前記シアノ基を全モノマー・ユニットの15モル%以上含有するものを用いることを特徴とする請求項6記載の高分子凝集剤の製造方法。
- 前記高分子材料として、他の目的に使用された使用済みの廃材に含まれるものを用いることを特徴とする請求項6記載の高分子凝集剤の製造方法。
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