JP4172294B2 - 有機性汚泥の処理方法及び処理システム - Google Patents

有機性汚泥の処理方法及び処理システム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、し尿、生活雑排水、都市下水、農業集落排水、畜産排水等の有機性汚水を物理的処理又は生物学的処理した後に発生する有機性汚泥を処理するための処理方法及び処理システムに関し、更に詳しくは、前記有機性汚泥の処理物をコンポストとして再利用可能とする処理方法及び処理システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
し尿、生活雑排水、都市下水、農業集落排水、畜産排水等の有機物を含む各種有機性汚水を処理した後に発生する汚泥は、その多くが有機物質からなる有機性汚泥である。前記有機性汚水の処理方法としては、一般に、沈殿分離、濾過等の物理的処理方法や活性汚泥法、生物膜法等の生物学的処理方法が採用されている。前記方法で処理した後の有機性汚泥は、凝集、更に濃縮又は脱水して処理される。この処理に際しては、凝集剤を添加攪拌して汚泥を凝集させ、これを濃縮又は脱水して、水分の少ない固形分とする。
【0003】
従来、上記のようにして凝集し、更に濃縮又は脱水処理した後の汚泥固形分の処分方法としては、焼却後、建築用造成地などに埋め立て処分するのが主流であった。しかしながら、近年、埋め立て地の確保の問題や、地球環境の問題から、汚泥の農業用肥料などコンポスト化利用が注目されており(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照。)、含水汚泥ケーキに水分調整材を加えて発酵槽に投入し、好気性雰囲気下で微生物による発酵を行わせてコンポスト化し、それを土壌改良剤又は肥料として農地へ還元する方法(非特許文献3参照。)が提案されている。また、活性汚泥法等により処理した後に発生する有機性汚泥を凝集脱水した後、オガクズ担体と有用微生物を用いて生物学的に分解消化する方法(特許文献1参照。)も提案されている。
【0004】
従来、上記のようなコンポスト化などの汚泥処理に際して汚泥を凝集させるために用いられている凝集剤としては、無機系凝集剤や合成高分子系凝集剤が主に使用されてきた。無機系凝集剤としては、例えば、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウムなどのアルミニウム塩や、塩化第2鉄、硫酸第2鉄、ポリ硫酸第2鉄(通称、ポリ鉄)などの鉄塩からなる水溶性の多価金属塩が多く使用されている(非特許文献2のp.9−11参照)。また、合成高分子系凝集剤としては、例えば、ポリジメチルアミノエチルアクリレートなどのカチオン系合成高分子、ポリアクリルアミドまたはその加水分解物、ポリアクリル酸などのアニオン系合成高分子、その他のノニオン系合成高分子などが多く使用されている。更に、前記無機系凝集剤及び合成高分子系凝集剤を併用することも行われている。
【0005】
しかし、上記のような凝集剤を用いて処理された汚泥をコンポスト化利用する場合、使用する凝集剤によっては、安全性や、環境汚染、更にはそれに伴う二次公害の問題が生じるおそれがある。例えば、無機系凝集剤の場合には、多価金属塩は汚泥中に含まれると、その重量を重くするばかりか、土壌中に多価金属塩を持ち込むことで、植物の育成に不適切な土壌に改質してしまうおそれがある。また、合成高分子系凝集剤は、その生分解性がよくないために、土壌に蓄積され、やはり植物の育成に不適切な土壌に改質してしまうおそれがある。
【0006】
従って、汚泥をコンポスト化利用する場合、汚泥処理に用いる凝集剤としては、その安全性から、天然由来の成分を用いることが望ましい。そこで、生分解性に優れ、安全性が高く、環境汚染やそれに伴う二次公害のおそれのないキトサンやアルギン酸ナトリウムなどを用いた天然高分子系凝集剤が提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照。)。しかし、これらキトサンやアルギン酸ナトリウムは、それ単独では凝集性能が低く、大量に使用する必要があり、特に有機性汚泥に対しては凝集効果の点で実用性に乏しい。また、アルギン酸ナトリウムとキトサンとを併用した凝集剤や、アルギン酸ナトリウムとアクリルアミド/アクリル酸共重合体とを併用する凝集剤も提案されている(例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6参照。)。しかし、アルギン酸ナトリウムから生じるナトリウムイオンは一価のカチオンであり、土壌中に持ち込まれた場合でも従来の無機系凝集剤に用いられている多価金属イオンと比較すれば植物の育成を阻害する作用は小さいものの、ナトリウムイオンといえども高濃度では塩害作用を示すことから、取扱いに注意が必要である。また、アクリルアミド/アクリル酸共重合体の使用は安全性や環境保全の観点から好ましくない。
【0007】
また、安全性が高く、環境汚染やそれに伴う二次公害のおそれのない凝集剤として、発酵法によるロードコッカス(Rhodococus)属細菌からの微生物産生凝集剤が提案されている(特許文献7参照。)。しかし、この微生物産生凝集剤は、それ単独では殆ど凝集活性を示さず、単独で凝集効果を発揮できるのはカオリンなどの無機性汚泥に限定され、広い範囲の有機性汚泥に対しては凝集効果は低い。また、オーレオバシジウム(Aureobasidium)属に属する菌が生産する酸性多糖が凝集活性を有すると記載され(特許文献8参照。)、排水処理剤として商品化され市販されている。しかし、この微生物生産凝集剤である酸性多糖の場合も、農業集落排水などの有機性汚泥に対しては凝集効果が低い。
【0008】
上記のように、従来においては、天然高分子系凝集剤あるいは微生物産生凝集剤などの、安全性が高く、生分解性を有し、環境汚染による二次公害もない凝集剤であって、し尿、生活排水、都市下水、農業集落排水、畜産排水等の有機性汚水から発生する汚泥等の有機性汚泥に対して高い凝集作用を示すものはなかった。そこで、本出願人は、動植物に対して安全で、しかも環境汚染を生じない凝集効率の高い凝集剤として、ロードコッカス・エリスロポリス(Rhodococus ery-thropolis)を含むグラム陽性菌が産生する糖蛋白質を主成分とする凝集活性物質またはオーレオバシジウム(Aureobasidium)属の菌株が産生する酸性多糖を主成分とする微生物凝集剤とキチン・キトサンを併用した凝集剤(特許文献9参照。)や、PHを5〜7に調整したアルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸塩の水溶液とキチン・キトサンの弱酸性水溶液とを併用した複合凝集剤を提案している(特許文献10参照。)
【0009】
また、本出願人は、有機性汚水から発生する有機性汚泥の処理方法として、有機性汚水を物理的処理又は生物学的処理して有機物を発酵・分解する第1工程と、これにより生成した汚泥に上記本出願人が提案した凝集剤を添加して更に凝集させる第2工程と、この凝集汚泥を濃縮機又は脱水機を通して濃縮又は脱水する第3工程と、この濃縮又は脱水汚泥を汚泥発酵槽に投入して第1工程と異なる菌相の微生物により発酵・分解する第4工程を有し、この第4工程でも分解せずに残留する排出物を第1工程の流入部に返送することで、従来においては有機性汚水を処理する際に系外に排出されていた未分解の有機性汚泥を完全に無くして処理後の有機性汚泥の埋立地不足問題を解消する方法及びそのための装置を提案している(特許文献11参照。)。
【0010】
更に、本出願人は、動植物に対して安全で環境汚染を生ずることもなく、しかも凝集効率の高い凝集剤として、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する放線菌が生産するε−ポリリジンを用い、このε−ポリリジンとカニ、エビなどの殻に含まれる天然バイオマス資源といわれるキチンを脱アセチル化して得られるキトサンを併用した凝集剤及びそれを用いた汚泥処理方法を提案した(特許文献12参照。)。この微生物によって生産されるε−ポリリジンは、天然由来のポリアミノ酸であるため安全性が高く、また有機性汚泥などに対して高い凝集効果を示し、強くて脱水性のよい凝集塊を形成できるものである。
【0011】
上記のように、本出願人が提案した、微生物産生凝集剤であるε−ポリリジンと、天然バイオマス資源であるキトサンとを併用した凝集剤は、汚泥に対する凝集効果が高く、しかも天然由来のものであるため安全性が高く、また生分解性を有し、環境汚染による二次公害もない凝集剤である。しかし、更なる研究によって、前記ε−ポリリジンは、生物膜処理した後の有機性汚泥に対しては凝集効果が高いが、活性汚泥処理した後の有機性汚泥に対しては、ε−ポリリジンによる凝集作用が発揮されにくく、凝集しないか、凝集しても、もろく脱水性が悪い凝集塊しか形成されない場合があることが判明した。このような傾向は、ε−ポリリジンのみでなく、他の高分子凝集剤を使用した場合にも認められる。この理由は、生物膜処理した後の汚泥と活性汚泥処理した後の汚泥とでは、汚泥に生息する微生物群の種類とその量が異なることによるものと考えられる。即ち、生物膜処理した後の汚泥には、汚泥の凝集に大切な影響を持つといわれるツリガネムシやワムシなどの微生物が数多く存在するが、活性汚泥処理した後の汚泥にはそのような微生物が比較的少ないことが原因であると考えられる。
【0012】
そこで本出願人は、先に提案した微生物生産凝集剤であるε−ポリリジンの凝集効果を更に向上させ、無機性汚泥や、活性汚泥処理した後の有機性汚泥に対する凝集効果が高く、しかも処理後の汚泥をコンポスト化利用した場合にも、動植物に対して安全で環境汚染を生ずることもない凝集剤及びそれを用いた汚泥処理方法並びにそれに用いる架橋高分子化ポリリジンを開発し、特許出願した(特願2002−33619号)。
【0013】
上記の本出願人が開発した高分子化したε−ポリリジンを用いた凝集剤は、し尿、生活雑排水、都市下水、農業集落排水、畜産排水、工場排水等の有機性汚水から発生する有機性汚泥を凝集し、更に濃縮又は脱水するに当たり、凝集剤として、アミノ酸重合体であるポリリジン、特に微生物産生凝集剤であるε−ポリリジンを、架橋剤、好ましくはジグルシジル化合物と架橋反応させて架橋高分子化ポリリジンとすることで、ε−ポリリジンの凝集性能を向上させることができた。更に、前記架橋高分子化ε−ポリリジンにアニオン系高分子凝集剤、特に微生物が生産する多糖類であるキサンタンガムを併用すれば、汚泥凝集効果がより向上し、前記のような各種汚泥のなかでも、従来公知の天然系高分子凝集剤であるキトサンと微生物産生凝集剤であるε−ポリリジンとの併用では凝集効果の低い、農業集落排水、生活排水、食品加工排水、染料排水等の有機系排水を活性汚泥処理した後の有機性汚泥に対しても有効である。また、この架橋高分子化ε−ポリリジンは、天然高分子凝集剤であるので、この凝集剤を用いて処理した汚泥は安全性が高く、処理後は農業用肥料等コンポスト化して安心して利用することができる。
【0014】
【特許文献1】
特開平8−117800号公報
【特許文献2】
特開昭59−160509号公報
【特許文献3】
特開平6−182349号公報
【特許文献4】
特開昭57−130599号公報
【特許文献5】
特開平10−57968号公報
【特許文献6】
特開平10−152683号公報
【特許文献7】
特開平8−256782号公報
【特許文献8】
特開平8−81501号公報
【特許文献9】
特開2000−140509号公報
【特許文献10】
特開2000−262811号公報
【特許文献11】
特開2000−288572号公報
【特許文献12】
特開2001−129310号公報
【非特許文献1】
明石栄嗣、「汚泥処理システムの検討−建設費と運転経費について−」、集落排水、社団法人日本農業集落排水協会、No.32、p.17−26
【非特許文献2】
「汚泥調整設備調査票ファイル」、社団法人日本農業集落排水協会、平成13年、p.1−15
【非特許文献3】
「コンポストの最新技術」、環境事業団監修、化学工業日報、1995年
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記本出願人の架橋高分子化したε−ポリリジンを用いた凝集剤や天然高分子系凝集剤を用いて、効率的な有機性汚泥の処理及び動植物に対して安全で環境汚染を生ずることもないコンポスト化を実用化しうる有機性汚泥の処理方法及び処理システムを提供せんとするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明では、有機性汚泥を凝集させるための凝集剤として微生物産生多糖類と上記本出願人の架橋高分子化したε−ポリリジンや天然高分子系凝集剤とを用い、凝集剤としての前記微生物産生多糖類を添加して高速攪拌することで一次凝集させた凝集汚泥に、凝集剤として前記架橋高分子化したε−ポリリジンや天然高分子系凝集剤を添加して緩速でゆっくり攪拌することで前記凝集汚泥を更に凝集させ、更に、前記凝集させた汚泥を濃縮機又は脱水機で濃縮又は脱水した後の汚泥を微生物により発酵・分解させてコンポスト化する際には、攪拌しながら加熱して前記濃縮汚泥を効率よく、乾燥かつ予備発酵させた後、この予備発酵物を更に時間をかけて発酵・分解させることで、動植物に対して安全で環境汚染を生ずることもないコンポストを効率よく生産可能とした。
【0017】
即ち、本発明に係る有機性汚泥の処理方法は、有機性汚水を物理的処理又は生物学的処理した後に発生する有機性汚泥に微生物産生多糖類を主成分とする一次凝集剤を添加し、攪拌して前記汚泥を凝集させる一次凝集反応工程と、前記凝集した汚泥に架橋高分子化したε−ポリリジン及び天然高分子の少なくとも一方を主成分とする二次凝集剤を添加し、攪拌して前記凝集汚泥を更に凝集させる二次凝集反応工程と、前記凝集した汚泥を濃縮又は脱水する濃縮・脱水工程と、前記濃縮又は脱水した汚泥を微生物の存在下で加熱しながら攪拌して乾燥及び予備発酵させる一次発酵工程と、前記予備発酵物を微生物の存在下で加熱することで発酵・分解させる二次発酵工程と、を有する。
【0018】
また、本発明に係る有機性汚泥の処理システムは、微生物産生多糖類を主成分とする一次凝集剤を供給する一次凝集剤供給手段及び攪拌手段を備え、有機性汚水を物理的処理又は生物学的処理した後に発生する有機性汚泥を凝集させる第一凝集攪拌槽と、架橋高分子化したε−ポリリジン及び天然高分子の少なくとも一方を主成分とする二次凝集剤を供給する二次凝集剤供給手段及び攪拌手段を備え、前記第一凝集攪拌槽で凝集させた汚泥を更に凝集させる第二凝集攪拌槽と、前記第二凝集攪拌槽で凝集させた汚泥を濃縮又は脱水する濃縮機又は脱水機と、加熱手段及び攪拌手段を備え、前記濃縮機又は脱水機にて濃縮又は脱水された汚泥を乾燥及び予備発酵させる第一発酵槽と、加熱手段を備え、前記予備発酵物を発酵・分解させる第二発酵槽と、を有する。
【0019】
上記のような本発明に係る有機性汚泥の処理方法及び処理システムによれば、有機性汚水を物理的処理又は生物学的処理した後に発生する有機性汚泥に、一次凝集反応工程の第一凝集攪拌槽において、微生物産生多糖類を主成分とする一次凝集剤を添加し、高速攪拌することで、汚泥が凝集剤としての前記微生物産生多糖類に包み込まれるとともに、アニオン性又は弱アニオン性の前記微生物産生多糖類により汚泥粒子の表面がマイナスに帯電される。次いで、前記のように一次凝集反応工程において微生物産生多糖類に包み込まれ、かつ汚泥粒子表面がマイナスに帯電された汚泥に対し、二次凝集反応工程の第二凝集攪拌槽において、架橋高分子化したε−ポリリジン及び天然高分子の少なくとも一方を主成分とする二次凝集剤を添加し、緩速攪拌することで、前記一次凝集反応工程で粒子表面がマイナスに帯電された汚泥をカチオン性のε−ポリリジンや天然高分子が更に凝集してフロックを形成させる。この場合、緩やかな速度で攪拌することでフロックを大きく形成させることができる。前記二次凝集反応工程で凝集した汚泥は、濃縮・脱水工程の濃縮機又は脱水機にて濃縮又は脱水されて含水率が低下した状態で一次発酵工程の第一発酵槽内にて乾燥され、発酵に適した含水率まで更に含水率が低下するとともに、微生物の作用により分解されて小分子化される。前記一次発酵工程において乾燥かつ小分子化された汚泥の予備発酵物は、更に二次発酵工程の第二発酵槽にて微生物の存在下で加熱することで、微生物の作用により発酵・分解され、コンポストとして利用可能な状態にまで更に小分子化される。
【0020】
前記一次凝集剤として用いられる微生物産生多糖類としては、カルボキシル基、水酸基等のアニオンを有しているアニオン性又は弱アニオン性のものが好ましく、例えば、デキストラン、キサンタンガム、プルラン、カードラン、ジエランガム、ラムサンガム、ウエランガム、スクレログルカン、β−グルカン等を用いることが好ましい。これらの微生物産生多糖類は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよく、汚泥との適合性を考慮して適宜使い分けることが好ましい。
【0021】
また、前記二次凝集剤として使用する架橋高分子化したε−ポリリジンとしては、分子内に2個以上のグリシジル基を有する化合物との反応により架橋高分子化されたものを用いることが、凝集効果の高い架橋高分子化ポリリジンが得られることから好ましい。
【0022】
更に、本発明の有機性汚泥の処理方法及び処理システムにおいては、前記二次発酵工程から排出される発酵・分解物を造粒する造粒工程を設けることで、コンポストとしての取り扱い性を向上させることができる。
【0023】
また、本発明の処理システムにおいては、前記第一凝集攪拌槽へ供給される有機性汚泥を貯留する汚泥サービスタンクを設けておくか、又は有機性汚水を物理的処理又は生物学的処理した後に発生する有機性汚泥が貯留されている汚泥貯留槽から直接、前記第一凝集攪拌槽へ汚泥を供給するモノポンプなどの汚泥供給ポンプを設けておくことで、第一凝集攪拌槽へ供給される有機性汚泥を定量化かつ均質化して、後に続く凝集、濃縮又は脱水、発酵の各工程の安定を図ることが可能となる。
【0024】
更に、汚泥の発酵工程における第一発酵槽及び/又は第二発酵槽に脱臭装置を設けておけば、処理システムからの悪臭の発生を防止でき、周辺環境を汚染することがなく、汚泥処理を実施することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る有機性汚泥の処理方法及び処理システムについて、更に詳細に説明する。
【0026】
本発明において処理の対象となる有機性汚泥としては、例えば、し尿、生活雑排水、都市下水、農業集落排水、畜産排水等の有機性汚水を、例えば沈殿分離や濾過等の物理的処理又は活性汚泥処理や生物膜処理等の生物学的処理した後に発生する有機性汚泥が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、有機物を含む各種有機性排水を処理した後に発生する汚泥等、有機物質からなる有機性汚泥はいずれも本発明の処理対象となる。また、前記有機性汚水の物理的処理や生物学的処理の具体的方法には特に限定はなく、前記した方法の他、公知の方法をいずれも採用することができる。
【0027】
本発明に係る有機性汚泥の処理方法及び処理システムは、図1に示すように、一次凝集反応工程(第一凝集攪拌槽)、二次凝集反応工程(第二凝集攪拌槽)、濃縮・脱水工程(濃縮機又は脱水機)、一次発酵工程(第一発酵槽)及び二次発酵工程(第二発酵槽)を有する。更に、前記二次発酵工程(第二発酵槽)の後に、図示したように、造粒工程(造粒機)が適宜設けられる。以下、前記各工程及びそれに用いる凝集剤や装置類について、以下に順次説明する。
【0028】
一次凝集反応工程及び二次凝集反応工程は、処理対象である有機性汚泥の含水率を下げて減容する工程で、第一及び第二凝集攪拌槽により実施される。先ず、一次凝集反応工程では、汚泥サービスタンク又は汚泥貯留槽から、攪拌装置を備えた第一凝集攪拌槽に供給される処理対象である有機性汚泥に対し、微生物産生多糖類を主成分とする一次凝集剤を添加し、高速攪拌する。前記汚泥サービスタンク又は汚泥貯留槽から引き抜かれて一次凝集反応工程へ供給される有機性汚泥の含水率は通常95〜98重量%程度である。
【0029】
前記一次凝集反応工程で凝集剤として用いられる微生物産生多糖類としては、凝集活性を有する物質であれば特に限定はないが、カルボキシル基、水酸基等のアニオンを有しているアニオン性又は弱アニオン性のものが好ましく、例えば、デキストラン、キサンタンガム、プルラン、カードラン、ジエランガム、ラムサンガム、ウエランガム、スクレログルカン、β−グルカン等が好適なものとして挙げられる。前記デキストランは、ロイコノストック・メゼンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、ロイコノストック・デキストラニカム(L.dextranicum)などのロイコノストック属の細菌や、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)、ストレプトコッカス NRRL B1351株(S.NRRL B 1351)などのある種のストレプトコッカス菌などが、ショ糖から生産するα-D-グルコースの直鎖多糖である。また、キサンタンガムは、キサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)、キサントモナス・ファセオリ(X.phaseoli)などの多くのキサントモナス属の細菌が生産する高分子量の多糖類である。前記プルランは、黒色酵母細菌オーレオバシディウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)の培養分泌液より抽出した、マルトトリオース(グルコース3分子がα-1,4結合)が規則正しく、α-1,6結合した天然の中性多糖である。更に、前記カードランは、アルカリゲネス・フェカリス(Alcaligenes faecalis)の培養分泌物より抽出されるものである。また、上記以外に一次凝集反応工程で凝集剤として使用できる微生物産生多糖類としては、アセトバクター・キシリナム(Acetobactor xylinum)の培養分泌物より抽出したセルロース、アスペルギルス・パラシチクス(Aspergillus parasiticus)、ペシロマイセス(Paecilomyces)の培養分泌物より抽出したポリガラクトサミン等を用いることができる。これらの微生物産生多糖類は、天然由来の高分子化合物であり、増粘、乳化、保水などの多くの目的で食品添加物や医薬品などに用いられており、毒性は認められていない。従って、人や動物に対する安全性が極めて高く、環境汚染を生ずることもなく、本発明で使用する凝集剤として好ましいものである。
【0030】
上記のような微生物産生多糖類は、処理される汚泥との適合性により使い分けることが好ましく、それぞれ単独で、また2種以上を組み合わせて使用される。例えば、生物膜法で処理された汚泥に対しては単独で、また活性汚泥法で処理された汚泥に対しては2種以上を併用することが好ましい。また、これらの微生物産生多糖類は、水に溶解又は分散して前記微生物産生多糖類を主成分とする水溶液の状態で凝集剤液として汚泥に添加されるが、溶液の濃度は0.1〜1.0重量%程度が好ましく、更に好ましくは0.1〜0.3重量%であり、例えば0.156重量%とする。なお、汚泥中には、微生物から分泌された多糖類を含んでおり、この汚泥中に分泌されている多糖類の濃度により、前記一次凝集剤の濃度を調整することが好ましく、通常、活性汚泥法により処理された汚泥の場合に較べて生物膜法で処理された汚泥に対する一次凝集剤の濃度は低めに設定する。
【0031】
一次凝集反応工程では、処理対象である有機性汚泥に対して、前記のような微生物産生多糖類を主成分とする凝集剤を添加し、高速攪拌することで、汚泥が前記微生物産生多糖類に包み込まれるとともに、アニオン性又は弱アニオン性である前記多糖類により汚泥粒子の表面がマイナスに帯電される。この一次凝集反応工程における第一凝集攪拌槽の攪拌速度としては、均一に混和して微小フロックを形成するために100rpm〜150rpm、例えば120rpm程度の高速攪拌が好ましい
【0032】
上記のような一次凝集反応工程を経た汚泥の含水率は通常90〜95重量%程度であり、これが第一凝集攪拌槽から二次凝集反応工程の第二凝集攪拌槽へ供給される。
【0033】
上記のように一次凝集反応工程の第一凝集攪拌槽内で微生物産生多糖類により凝集され、かつ粒子表面がマイナスに帯電された汚泥は、次工程の二次凝集反応工程の第二凝集攪拌槽に送られ、架橋高分子化したε−ポリリジン及び天然高分子の少なくとも一方を主成分とする二次凝集剤を添加し、緩速攪拌され、凝集して更に大きなフロックを形成する。
【0034】
この二次凝集反応工程で凝集剤として使用される架橋高分子化したε−ポリリジンは、ポリアミノ酸であるε−ポリリジンを架橋高分子化したものである。本発明で使用するε−ポリリジンとしては、天然物である点で、微生物が生産するε−ポリリジンが好ましい。ε−ポリリジンは、L−リジンのε−位のアミノ基が、隣り合うL−リジンのカルボン酸基とアミド結合で結合した高分子化合物であり、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する放線菌が生産することが知られている。また、ε−ポリリジンを生産する微生物として、バシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)も知られている。
【0035】
前記ε−ポリリジンを生産するストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する放線菌の菌体としては、例えばストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)SP−72株(FERM P−16810号)あるいはそれを変異処理して誘導した変異株を用いることができる。また、ストレプトマイセス・アルブラス(Streptomyces albulus)IFO 14147株およびその変異株を用いることもできる。これらストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する放線菌からのε−ポリリジンの製造方法については、例えば特開2000−69988号公報、特開2001−17159号公報、特開2002−95466号公報及び特開2002−95467号公報等に開示されている。ε−ポリリジンは、チッソ株式会社より販売されており、それを用いることができる。
【0036】
本発明で用いるε−ポリリジンは、生産菌である上記ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する放線菌等の微生物が生育後、菌体外に分泌するものである。菌体外とは培地中のことであり、例えば液体培地、即ち培養液である。ε−ポリリジンを培養する液体培地としては、炭素源、窒素源、無機塩およびその他の栄養物が含まれており、ε−ポリリジンを生産するならば、如何なるものでもよい。菌体生育培養は、好気的条件下で振とう培養、攪拌培養などにより行うことができる。培養時の温度は、20℃〜40℃、pHは6〜8が好ましい。培養期間は通常1〜5日である。こうして十分に菌体を生育せしめた後、菌体あるいは菌体系のみを濾過・分別・取得し、20℃〜40℃、pH4〜5においてε−ポリリジン生産培養を行う。その際、炭素源とともにクエン酸、硫酸アンモニウム、更にL−リジンを0.1〜1%(w/v)液体培地に添加するのが好ましい。このような培養により培養液中にε−ポリリジンが生産蓄積される。
【0037】
本発明では、前記ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する放線菌を培養した培養液より、遠心分離、フィルター濾過、イオン交換樹脂などを用いて吸着して菌体を分離させた後、精製したものを使用することができる。また、前記放線菌の一種であるストレプトマイセス アルブラス(Streptomyces albulus)の培養液よりイオン交換樹脂を用いて吸着、分離、精製した粉末状のε−ポリリジンがチッソ株式会社より販売されているので、それを使用してもよい。これらストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する放線菌が生産するε−ポリリジンの分子量は通常3,000〜4,000程度である。
【0038】
本発明では、二次凝集反応工程において、微生物生産凝集剤として、上記のε−ポリリジンを適当な架橋剤と架橋高分子反応させて凝集効果を向上させた架橋高分子化ポリリジンを使用する。ε−ポリリジンの架橋高分子化反応に使用する架橋剤としては、ε−ポリリジンの側鎖のアミノ基と反応できる未反応基を分子の両末端、あるいは分岐分子の場合は各末端に有する化合物であればよく、例えば両末端にエポキシ環を有するジグリシジル化合物、あるいは両末端にアルデヒド基を有する、例えばグルタルアルデヒドなどが挙げられる。これらの各種架橋剤の中でもジグリシジル化合物を用いた場合に凝集効果の高い架橋高分子化ポリリジンが得られる。そのようなジグリシジル化合物としては、7−エチルオクタデカン二酸ジグリシジル、グリセロールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルなどを用いることができる。
【0039】
ε−ポリリジンの架橋高分子化反応は、ε−ポリリジンを、両末端にエポキシ環などの未反応基を有する化合物(架橋剤)と混合し、溶液中で加熱することで、ε−ポリリジンの側鎖のアミノ基と前記化合物の未反応基との結合反応によって、両末端に未反応基を有する化合物で架橋されて高分子化した架橋高分子ε−ポリリジンが生成する。前記、ε−ポリリジンと架橋剤との使用割合は、30:1〜1:100(モル比)の範囲が好ましい。この架橋高分子化反応により、通常、分子量3,000〜4,000程度のε−ポリリジンの分子量が数万〜数十万程度に増大する。生成する架橋高分子ε−ポリリジンの分子量は、架橋反応に要する時間、架橋反応を行う温度、ε−ポリリジンと架橋剤との使用割合により調整することができる。この際、使用する架橋剤が水溶性の場合には、反応は水溶液中で行えばよい。また、架橋剤が水に不溶性の場合には、メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン等、水とも混合できる有機溶媒に架橋剤を溶解または懸濁し、この架橋剤液をε−ポリリジン水溶液と混合し、有機溶媒−水の混合系で加熱し、架橋反応を行えばよい。有機溶媒と水との混合割合は、9:1〜1:9程度とすることが好ましい。また、反応時の加熱は30℃〜100℃、好ましくは40℃〜80℃である。
【0040】
例えば、ε−ポリリジンとジグリシジル化合物とを水−メタノール溶媒中で50℃程度の温度で攪拌しながら反応させる。ε−ポリリジンとジグリシジル化合物との使用割合は、30:1〜1:100(モル比)の範囲が好ましく、更に好ましくは1:30(モル比)程度である。上記のようにして一定時間反応させた後、塩酸を添加することで反応を停止するとともに、ε−ポリリジン塩酸塩を形成させ、−20℃程度の冷アセトンを加え、低温(−20℃程度)で静置し、遠心分離して、生成した架橋高分子化ε−ポリリジンの沈殿を回収し、アセトンで洗浄後、吸引乾燥して架橋高分子化ε−ポリリジンを得る。
【0041】
前述のように、ε−ポリリジンによる凝集効果については、特開2001−129310において開示されているが、ε−ポリリジン自体は、有機性汚泥を凝集させる効果は小さいことが判った。しかし、ε−ポリリジンを上記のように架橋高分子化して分子量を増大させることにより、ε−ポリリジンの凝集効果が向上する。更に、この架橋高分子化したε−ポリリジンによる凝集反応工程に先立ち、アニオン系高分子凝集剤である微生物産生多糖類を用いた一次凝集反応工程を設けることで、活性汚泥処理した後の汚泥等の有機性汚泥に対して高い凝集効果を発揮することができる。
【0042】
本発明において、アニオン系凝集剤である微生物産生多糖類を用いた一次凝集反応工程と架橋高分子化ポリリジンを用いた二次凝集反応工程とにより強力な凝集性能を示す理由としては、微生物産生多糖類であるキサンタンガムなどのアニオン系凝集剤が汚泥粒子の表面を負に帯電させ、一方、ε−ポリリジンはアミノ基を有するカチオン系高分子であることから、負に帯電した汚泥粒子の表面に、例えば分子量が数万〜数十万となるように架橋高分子化したε−ポリリジンが付着することで、強く大きなフロックが形成されるものと考えられる。架橋高分子化していない分子量3,000〜4,000程度の通常のε−ポリリジンでは、キサンタンガムなどのアニオン系高分子凝集剤と併用しても、このような強く大きなフラックを形成することができない。なお、先に架橋高分子化ε−ポリリジンによる凝集反応を行った場合には、小さなフロックが形成されてしまい、アニオン系高分子凝集剤である微生物産生多糖類による凝集反応を行っても大きなフロックは形成されにくい。
【0043】
また、前記二次凝集反応工程で使用する凝集剤としては、前記架橋高分子化ε−ポリリジンの代わりに、又は前記架橋高分子化ε−ポリリジンに加えて、天然高分子系凝集剤を使用することができ、天然高分子系凝集剤としては微生物産生多糖類を用いることができる。使用する微生物産生多糖類としては、キトサンのようなカチオン系のものが好ましく、例えば、ムコール・ルキシー(Mucor rouxii)の培養分泌物より抽出したキトサンを用いることができる。このカチオン系微生物産生多糖類を前記架橋高分子化ε−ポリリジンと併用する場合の割合としては、架橋高分子化ε−ポリリジンに対して1:1〜1:3の割合で使用することが好ましく、汚泥との適合性により使い分けることが好ましい。例えば、生物膜法処理汚泥に対しては1:1、活性汚泥処理汚泥に対しては1:3程度の割合で使用することが好ましい。
【0044】
二次凝集反応工程で添加される凝集剤は前記架橋高分子化ポリリジンや天然高分子系凝集剤を水に溶解した水溶液の状態で使用される。この水溶液の濃度は、0.1〜3.0重量%が好ましく、より好ましくは0.3〜2.0重量%であり、例えば1.5重量%程度の濃度で使用される。なお、この二次凝集剤の濃度は一次凝集剤の添加量に応じて調整することが望まれる。即ち、アニオン性の一次凝集剤の添加量が多い場合には、それに応じてカチオン性の二次凝集剤の添加量を増やすことで、一次凝集剤により凝集され、かつ粒子表面がマイナスに帯電された汚泥が、カチオン性の二次凝集剤によって効率的に凝集して更に大きなフロックを形成する。なお、処理汚泥に対する架橋高分子化ε−ポリリジンや天然高分子系凝集剤の量としては、少量であるほど処理費用が安くなる点で好ましいが、活性汚泥(MLSS)1g当たり2〜20mg程度は必要である。
【0045】
この二次凝集反応工程を行う第二凝集攪拌槽内においては、凝集剤添加後の攪拌は、汚泥と凝集剤との混合をよくするために、全体に行き渡るような、しかし、ゆっくりした攪拌が好ましい。その理由は、有機性汚泥は、凝集後のフロックの強さがそれほど大きくないことから、強すぎる攪拌は好ましくない結果をもたらす場合があるからである。従って、第二凝集攪拌槽の攪拌速度としては、30rpm〜60rpm程度が好ましい。
【0046】
本発明に用いる架橋高分子化ε−ポリリジンの製造方法及びその凝集効果について、以下に具体例を挙げて説明する。
【0047】
[架橋高分子化ε−ポリリジンの調製]
(1)原料
ε−ポリリジンとして、チッソ株式会社の粉体ε−ポリリジン(lot.1000107、「50%ε−ポリリジン」+「50%デキストリン」)を用いた。また、架橋剤として、7−エチルオクタデカン二酸ジグリシジル(岡村精油株式会社)を用いた。
【0048】
(2)架橋高分子化反応
粉体ε−ポリリジンを、ε−ポリリジンが0.5g/L(反応液A)または1.0g/L(反応液B)の濃度となるように水に溶解し、それぞれの溶液10mlをメタノール10mlと混合し、各混合溶液を、架橋反応の温度である50℃設定したオイルバス中で5分間攪拌して、溶液の温度を反応温度に高めた。この温度で、溶液を攪拌しながら、上記ジグリシジル化合物を0.5g/L(反応液A)または1.0g/L(反応液B)の濃度となるように懸濁したメタノール10mlを、30分かけて前記溶液に徐々に滴下した。ジグリシジル化合物懸濁液を全量滴下した後、50℃で12時間保つことで、架橋反応を行った。反応液の組成および反応条件を表1に示した。
【0049】
【表1】
Figure 0004172294
【0050】
なお、ε−ポリリジンの定量には、メチルオレンジ定量法を用いた。また、反応は50ml容丸底フラスコ中で行い、オイルバスはYamato WaterBath BM−42(ヤマト科学株式会社)を使用し、熱媒としてはポリエチレングリコールを使用し、反応液の攪拌には、Yamato MAG−MIXER M−41(ヤマト科学株式会社)を使用した。
【0051】
(3)架橋高分子化ε−ポリリジンの回収
架橋反応液からの架橋高分子化ε−ポリリジンの回収は、以下の手順に従って行った。
反応液に、12N塩酸を添加して反応を停止するとともに、反応液中のε−ポリリジンを塩酸塩とした。この溶液に反応液(総容量30ml)の2倍量(60ml)の冷アセトン(−20℃)を添加し混合した。−20℃で30分静置した後に、遠心分離(7000rpm、20分、4℃)し、架橋高分子化ε−ポリリジンを沈殿として得た。得られた架橋高分子化ε−ポリリジンは、アセトン約50mlにて洗浄後、吸引乾燥し蒸留水に溶解した。この架橋高分子化ε−ポリリジン水溶液を汚泥凝集試験に用いた。なお、12N塩酸の添加量であるが、反応に用いたε−ポリリジン中の全アミノ基を塩酸塩にするのに必要な塩化物イオンとして塩酸を添加しており、本反応においては、反応液A、Bとも反応液総量30mlに対し、1mlの12N塩酸を添加した。
【0052】
(4)高分子化ε−ポリリジンの分子量の測定
高分子化ε−ポリリジンの分子量は、ポリアクリルアミドゲルスラブ電気泳動装置(アトー株式会社)を用いてSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE法)により測定した。その結果、架橋高分子化ε−ポリリジンの分子量は15,000〜数十万(少なくとも20万以上)であった。また、原料として使用したε−ポリリジン(チッソ株式会社)の分子量を同様にして測定したところ、3,000〜4,000であった。
【0053】
[有機性汚泥の凝集試験]
(1)有機性汚泥
処理対象汚泥としては、有機性汚泥である、農業集落排水を活性汚泥処理した後の汚泥を用いた。この汚泥の性質は、活性汚泥濃度(MLSS)が6600mg/L、含水率が98.7%、pHが7.25であった。
【0054】
(2)凝集剤
ε−ポリリジンとしては、チッソ株式会社の粉体ε−ポリリジンを蒸留水に溶解したものを使用した。また、架橋高分子化ポリリジンとしては、「架橋高分子化ε−ポリリジンの調製」で得られた反応液A、Bから得られた架橋高分子化したε−ポリリジンを蒸留水に溶解したものを使用した。更に、キトサンとして株式会社共和テクノスから販売されているフローナック(登録商標)の一般グレードであるフローナック♯250(脱アセチル化率80%以上、キトサン純度約50%)、キサンタンガムとして三晶株式会社から販売されているケルザンS、ポリアクリルアミド部分加水分解物として住友化学工業株式会社のスミフロック(登録商標)FA40を、それぞれ水に溶解したものを使用した。使用した凝集剤を表2に示した。
【0055】
【表2】
Figure 0004172294
【0056】
(3)凝集試験
凝集試験は、表3に示す凝集剤成分を用い、以下のように行った。500ml容ビーカーに汚泥300mlを入れ、凝集剤成分が1液(I液のみ)の場合には、凝集剤I液を添加し、攪拌機を用いて約100rpmで2分攪拌し、汚泥の凝集を目視で観察した。また、凝集剤成分が2液(I液とII液の併用)の場合には、前記と同様に凝集剤I液を添加して2分攪拌した後、続いてII液を徐々に添加し、汚泥の凝集を目視で観察し、汚泥の凝集が確認された時点でII液の添加を終了した。汚泥の凝集後、形成されたフロックの大きさをノギスを用いてビーカー側面から測定した。次ぎに、1.0mm目スクリーン上に凝集処理後の汚泥300mlをのせ、2分間室温放置したのち濾過を行い、濾液のMLSSを測定し、下式によりMLSS回収率(%)を求めた。結果を表3に示す。
【0057】
MLSS回収率(%)=[(全体のMLSS)−(濾液のMLSS)]÷(全体のMLSS)×100
【0058】
【表3】
Figure 0004172294
【0059】
表3の結果から明らかなように、架橋高分子化していないε−ポリリジン(EPL1)は、単独では凝集活性を示さなかった(試験区1)。これに対し、架橋高分子化したε−ポリリジン(EPL2、EPL3)では、汚泥が凝集し、フロックと水とが固液分離した(試験区2、3)。これから、ε−ポリリジンは架橋高分子化することで、有機性汚泥に対する凝集効果が向上することが明らかとなった。また、ε−ポリリジンとアニオン系高分子凝集剤である微生物産生多糖類のキサンタンガムとを併用すると、高分子化していないε−ポリリジン(EPL1)と架橋高分子化したε−ポリリジン(EPL2、EPL3)のいずれの場合も、汚泥を凝集し、またキサンタンガムを多く使用するほど、形成されるフロックが大きくなり、特に架橋高分子化したε−ポリリジンを用いた場合には、MLSS回収率は100%近い値を示し、凝集性能が向上していることが明らかとなった(試験区4〜9)。また、ε−ポリリジンと同様の天然由来のカチオン系天然高分子凝集剤であるキトサンの場合(試験区10、11)と比較すると、本発明の架橋高分子化ε−ポリリジンのほうが、キサンタンガムと併用した場合に、キトサンより少ない使用量で同等の汚泥フロックを形成することが可能であり、また、MLSS回収率もキトサンの場合に劣らないことが分かった。なお、架橋高分子化ε−ポリリジンをキサンタンガムと併用する場合、I液として架橋高分子化ε−ポリリジンを、II液としてキサンタンガムの順で逐次添加すると、I液の架橋高分子化ε−ポリリジンの添加時に小さいフロックを形成する汚泥の凝集が起こり、その後、キサンタンガムを加えても、フロックの大きさが増大しないことが分かった(試験区12)。このことから、架橋高分子化ε−ポリリジンをアニオン系高分子凝集剤と併用する場合には、I液がアニオン系高分子凝集剤、II液が架橋高分子化ε−ポリリジンの順で逐次添加するほうが凝集性能が高いことが分かった。更に、アニオン系合成高分子凝集剤であるポリアクリルアミド部分加水分解物と併用すると、架橋していないε−ポリリジンと架橋高分子化ε−ポリリジンのいずれの場合も汚泥が凝集し、MLSS回収率もかなり高い値を示した。この結果、ε−ポリリジンは、架橋高分子化の有無にかかららず、アニオン系高分子凝集剤と併用することで、凝集性能が向上するが、特に架橋高分子化ε−ポリリジンの場合は凝集性能が高いことが明らかとなった。これにより、本発明に係る汚泥処理方法における二段階の凝集工程による凝集効果が確認された。
【0060】
本発明の汚泥処理方法及び処理システムにおいて、上記のような高分子化ε−ポリリジンや天然高分子系凝集剤を用いた二次凝集反応工程を経て凝集した汚泥の含水率は通常85〜90重量%程度であり、これが第二凝集攪拌槽から濃縮・脱水工程の濃縮機又は脱水機へ供給される。
【0061】
濃縮・脱水工程は、前記一次及び二次凝集反応工程により減容した汚泥を濃縮機又は脱水機を用いて濃縮又は脱水することで汚泥の水分を更に減少させ、次の発酵工程における発酵操作を効率よく行うことを主な目的とするものである。
【0062】
この濃縮・脱水工程に用いられる濃縮機や脱水機としては、例えば、濃縮機としてはスクリーン式、加圧浮上式、常圧浮上式、重力式、多重平板可動スクリーン式、また、脱水機としてはスクリュープレス式、振動・傾斜スクリュープレス式、遠心脱水式、ベルトプレス式、多重円板式、多重スクリュー式、多重板外胴スクリュー式、多重平板加圧脱水式等、従来公知のものを使用することができる。これらの中でも、本発明で使用する濃縮機又は脱水機としては、スクリーン式濃縮機やスクリュープレス式脱水機が好ましい。このような濃縮機や脱水機を用いた濃縮・脱水工程から排出される汚泥の含水率は、濃縮機を用いた場合は90重量%程度、また脱水機を用いた場合は85重量%程度になっている。
【0063】
前記濃縮又は脱水された汚泥は、濃縮機又は脱水機から次の発酵工程へ送られる。この発酵工程は、汚泥中の有機物を微生物により発酵・分解して小分子化することで、コンポストとして利用可能とするコンポスト化工程である。本発明では、この発酵工程として、前記濃縮・脱水工程で濃縮機又は脱水機にて濃縮又は脱水した汚泥を微生物の存在下で加熱しながら攪拌して乾燥及び予備発酵させる一次発酵工程と、前記予備発酵物を微生物の存在下で加熱することで発酵・分解させる二次発酵工程と、の二段階の発酵工程を設けている。
【0064】
まず、一次発酵工程は、前工程である濃縮工程において脱水・濃縮された汚泥を更に乾燥して減容化すると同時に微生物により発酵・分解して小分子化する。この一次発酵工程においては、加熱手段により発酵槽内を加熱した状態で攪拌手段により濃縮汚泥を攪拌して汚泥を乾燥させるとともに、発酵槽内に空気を送給して好気性雰囲気下で微生物により汚泥を発酵・分解させる。
【0065】
この一次発酵工程で汚泥を発酵・分解するために使用される微生物としては、例えばバチルス属やラクトバチルス属に属する細菌類、例えばサッカロミセス属やトルラ属に属する酵母菌、例えばアスペルギルス属やリゾプス属に属する糸状菌等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの微生物の1種又は2種以上を発酵槽内に繁殖させ、前記濃縮工程において脱水・濃縮された汚泥を連続的又は間欠的に発酵槽へ投入し、好気性雰囲気下で連続的又は間欠的に攪拌しながら、温度50〜80℃に維持し、汚泥を乾燥かつ発酵・分解させ予備発酵物とする。この一次発酵工程における攪拌は、汚泥を効率よく乾燥させるため、5rpm〜15rpm程度の比較的高速での攪拌を行うことが好ましい。この一次発酵工程に用いられる第一発酵槽の構造としては、従来公知の発酵槽を用いることができ、例えば、パドル式、スクープ式、オーガー式などの発酵槽を用いることができるが、これらの中でも混合レベルの平衡を維持しやすいパドル式が好ましい。この一次発酵工程の第一発酵槽における汚泥の滞留日数は2〜4日間程度であり、ここから排出される予備発酵物の含水率は通常60〜40重量%程度である。
【0066】
次に、前記一次発酵工程で汚泥が乾燥、発酵・分解された予備発酵物は第一発酵槽から二次発酵工程の第二発酵槽に供給され、微生物の存在下で加熱することで更に発酵・分解させて、コンポストとして利用可能な程度に小分子化される。
【0067】
この二次発酵工程で使用される微生物としては、前記一次発酵工程と同様のバチルス属やラクトバチルス属に属する細菌類、サッカロミセス属やトルラ属に属する酵母菌、アスペルギルス属やリゾプス属に属する糸状菌等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの微生物の1種又は2種以上を発酵槽内に繁殖させ、前記一次発酵工程において予備発酵された汚泥を連続的又は間欠的に発酵槽へ投入し、好気性雰囲気下で連続的又は間欠的に攪拌しながら、温度50℃以上に維持し、汚泥を発酵・分解させて小分子化し、コンポスト化する。この二次発酵工程における攪拌は必須ではないが、1rpm〜2rpm程度の連続的緩速攪拌、あるいは1時間に2分間程度の断続的緩速攪拌を行うことで、汚泥の二次発酵を促進することができる。この二次発酵工程に用いられる発酵槽の構造としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、パドル式、スクープ式、オーガー式などの発酵槽を用いることができるが、これらの中でも混合レベルの平衡を維持しやすいパドル式が好ましい。この二次発酵工程における汚泥の滞留日数は15日〜20日程度であり、ここからコンポストとして排出される処理物の含水率は35重量%以下、更には30重量%以下であり、減容効果は約1/50になる。
【0068】
上記のように、本発明においては、一次発酵工程及び二次発酵工程の二段階の発酵工程を採用したことで、従来に較べて高速、短時間のコンポスト化が可能となる。
【0069】
なお、上記一次発酵工程及び二次発酵工程における発酵操作に伴い、汚泥から悪臭が発生する。この悪臭を除去するために、脱臭装置を設けておくことが好ましい。使用する脱臭装置としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを用いることができる。好ましい脱臭装置としては、例えば、微生物を利用した関西化工株式会社製のBC式微生物脱臭システム「バイオキャッチャー」(商品名)を挙げることができる。この脱臭装置は、ロードスピリラケアエ(Rhodospirillaceae)科の細菌を樹脂発泡体又は粒状活性炭等の多孔質担体に担持させて固定床として装填してあり、悪臭物質を含む空気を装置の下部から上向流として装置内に送給し、装置上部から連続的又は間欠的に下向流として供給される水シャワーと接触させた後大気放出するというもので、前記固定床で、常温、湿潤下で生物的に悪臭物質が分解される。
【0070】
上記のような各種工程を経て二次発酵工程から排出される濃縮・脱水、発酵・分解された処理物は、コンポストとして農地へ還元可能となる。前記処理物をコンポストとして使用するに際しては、前記二次発酵工程の後に造粒機による造粒工程を設けて適当な大きさの顆粒又は粒状に成形することで、取り扱いが容易となる。ここで使用する造粒機の構造は、特に限定されるものではなく、従来公知のものを用いることができる。
【0071】
次に、図2は、本発明の有機性汚泥の処理システムを利用したコンポスト化設備の概要図である。図中、1が第一凝集攪拌槽、2が第二凝集攪拌槽、3が脱水機、4が第一発酵槽、5が第二発酵槽、また、図中6は第一凝集攪拌槽1へ処理対象である有機性汚泥を供給する汚泥サービスタンクである。これらは本発明の有機汚泥の処理システムからなる一体の汚泥乾燥発酵装置として構成されている。第一凝集攪拌槽1には微生物産生多糖類を主成分とする一次凝集剤を供給する一次凝集剤供給手段としての第一凝集剤タンク7が連結され、また第二凝集攪拌槽2には、架橋高分子化したε−ポリリジンや天然高分子系凝集剤を主成分とする二次凝集剤を供給する二次凝集剤供給手段としての第二凝集剤タンク8が連結されており、これら第一凝集剤タンク7及び第二凝集剤タンク8は凝集剤タンクユニットとして汚泥乾燥発酵装置に付設されている。また、汚泥乾燥発酵装置の汚泥サービスタンク6には、有機性汚泥を物理的処理又は生物学的処理した際に発生した有機性汚泥を貯留する汚泥貯留槽9が接続されており、第一発酵槽4には脱臭装置10が付設されている。更に、汚泥乾燥発酵装置の第二発酵槽5の出口には、造粒機11が接続されている。
【0072】
図示したコンポスト化設備の詳細について、以下に説明する。先ず、汚泥貯留槽9には、有機性汚水を沈殿分離や濾過等の物理的処理又は活性汚泥法又は生物膜法等の生物学的処理により処理した後に発生する有機性汚泥が貯留されており、この汚泥貯留槽9から給泥ポンプ12により引き抜かれた汚泥が汚泥乾燥発酵装置の汚泥サービスタンク6へ供給される。
【0073】
汚泥サービスタンク6は、汚泥貯留槽9から引き抜かれた汚泥を一時的に貯留し、ここから、付属する汚泥供給ポンプ13により汚泥計量器14へ汚泥が供給される。また、モノポンプ(回転容積型一軸偏心スクリュポンプ)を使用する場合は、汚泥貯留槽9から直接、第一凝集攪拌槽1へ汚泥を計量移送することができる。
【0074】
汚泥計量器14は、凝集、脱水工程における定量化を図るためのものであり、汚泥サービスタンク6から送られた汚泥を第一凝集攪拌槽へ計量移送し、残りを汚泥サービスタンク6へ返送する。また、汚泥貯留槽9から汚泥サービスタンク6への汚泥の引き抜き時には、汚泥の性状に応じて希釈水バルブ15を開いて水道水を給水し、汚泥サービスタンク6内の汚泥濃度を調整する。
【0075】
第一凝集攪拌槽1では、汚泥計量器14から移送された汚泥に、第一凝集剤タンク7に付設された定量ポンプ16により、微生物産生多糖類を主成分とする一次凝集剤を添加して高速攪拌機17により120rpm程度で高速攪拌することで、汚泥を凝集させる。第一凝集剤タンク7では、水道水を給水して微生物産生多糖類と水とを凝集剤液攪拌機18にて攪拌混合して所定の濃度に溶解又は分散するとともに凝集剤の分離を防止し、微生物産生多糖類が溶解又は分散した一次凝集剤液を定量ポンプ16により第一凝集攪拌槽1へ供給する。
【0076】
第二凝集攪拌槽2では、第一凝集攪拌槽1にて凝集された汚泥に、更に第二凝集剤タンク8に付設された定量ポンプ19により、架橋高分子化ε−ポリリジンを主成分とする二次凝集剤又は天然高分子系の二次凝集剤を添加して緩速攪拌機20により30rpm〜60rpm程度でゆっくりと時間をかけて攪拌することで、汚泥を更に凝集させてフロックを形成させ、凝集させる。第二凝集剤タンク8では、架橋高分子化ε−ポリリジンや天然高分子系凝集剤を貯留した凝集剤貯留ホッパー21の凝集剤フィーダーより二次凝集剤を投入するとともに、給水弁22を開いて第二凝集剤タンク8に所定量の水道水を給水し、凝集剤攪拌機23により攪拌混合して所定の濃度に溶解するとともに凝集剤の分離を防止し、凝集剤が溶解した二次凝集剤液を定量ポンプ19にて第二凝集攪拌槽2へ供給する。
【0077】
脱水機3では、第一凝集攪拌槽1及び第二凝集攪拌槽2で凝集された汚泥中の水分を絞り脱水を行う。脱水機3は、スクリュープレス型脱水機で、第二凝集攪拌槽2から送られ、汚泥流入口24から投入された凝集汚泥が、スクリュー25の回転によって汚泥流入口24側から汚泥排出口26方向へ圧送される間に汚泥中の水分を搾り取り脱水する。
【0078】
第一発酵槽4は、脱水機3にて脱水された脱水汚泥を更に乾燥して減容化すると同時に微生物により発酵・分解して小分子化する。この第一発酵槽4はパドル式発酵槽で、加熱手段により発酵槽4内を50〜80℃程度に加熱した状態で、送風機27より発酵槽4内に空気を送給しながら、第一発酵槽モータ28により攪拌羽根29を5rpm〜15rpm程度で回転させて濃縮汚泥を攪拌して乾燥させるとともに、好気性雰囲気下で微生物により汚泥を発酵・分解させる。この第一発酵槽4での汚泥の滞留日数は2〜4日間程度である。
【0079】
第一発酵槽4に付設された脱臭装置10は、第一発酵槽4及びこれと連通連結された第二発酵槽5内における微生物による汚泥の発酵・分解に伴い発生する悪臭を除去するものである。脱臭装置10としては、関西化工株式会社製の微生物脱臭装置(商品名「バイオキャッキャー」)を用い、第一発酵槽4及び第二発酵層5で発生した臭気ガスは、排気用送風機30及び脱臭ファン31によって吸引されて脱臭装置10に導入され、悪臭物質が除去された後、大気に放出される。この微生物脱臭装置は、樹脂発泡体又は粒状活性炭等の多孔質担体に、水棲の微生物であるロードスピリラケアエ(Rhodospirillaceae)科の細菌を担持させた充填材が固定床として装填された装置上部の微生物脱臭塔と、装置下部のスクラバー塔からなる。悪臭物質を含む臭気ガスは、装置の下部から上向流として装置内に送給され、装置下部のスクラバー塔内で装置上部から連続的又は間欠的に下向流として供給される水シャワーと接触して洗い落とされ、水に溶解した悪臭物質は、水棲の微生物によって分解されるとともに、装置内を上昇する臭気ガスは、微生物脱臭塔内の固定床で悪臭物質が多孔質担体によって吸着除去されたのちに大気放出され、吸着除去された悪臭物質は常温、湿潤下で微生物により分解される。
【0080】
第二発酵槽5は、第一発酵槽4にて乾燥減容化、かつ発酵・分解して小分子化した汚泥を、好気性雰囲気下で更に微生物により発酵・分解させてコンポスト化する。この第二発酵槽5は第一発酵槽4と同様のパドル式発酵槽で、加熱手段により発酵槽5内を50℃程度に加熱した状態で、第一発酵槽4と連通連結された好気性雰囲気下で、第二発酵槽モータ32により攪拌羽根33を1rpm程度で回転させて汚泥を緩速攪拌し、好気性雰囲気下で微生物により汚泥を発酵・分解させてコンポスト化する。この第二発酵槽5内での滞留日数は15〜20日間程度であり、第二発酵槽5から排出されるコンポスト化処理物の含水率は35重量%以下となる。
【0081】
造粒機11は、第二発酵槽5から排出されるコンポスト化処理物を顆粒状に成形して、コンポストの取り扱い性を向上させるものである。この造粒機11の構造には特に限定はなく、従来公知のものを採用することができる。造粒機11から排出される顆粒状コンポストの含水率は概ね30重量%以下である。造粒機11から排出された顆粒状コンポストは、適宜袋詰めなどして搬出される。なお、造粒機11の代わりに、または造粒機11の後に、図示しないコンポスト貯留ホッパーを設けてもよい。
【0082】
【発明の効果】
本発明に係る有機汚泥の処理方法及び処理システムによれば、有機性汚水を物理的処理又は生物学的処理した後に発生する有機性汚泥を凝集させるに際して、微生物産生多糖類を主成分とする凝集剤を用いた一次凝集反応と、架橋高分子化したε−ポリリジン又は天然高分子を主成分とする凝集剤を用いた二次凝集反応との二段階の凝集反応を行うことで、汚泥を効率的に凝集させることができ、更に、コンポスト化の為の発酵工程として、攪拌して乾燥及び予備発酵させる一次発酵工程と、微生物の存在下で加熱してゆっくり発酵・分解させる二次発酵工程と、の二段階の発酵工程を採用することで、低水分で減容率の大きなコンポストを効率よく生産することが可能である。しかも、汚泥は、元来、発酵しにくいものであるが、汚泥の凝集に用いる凝集剤として、自然界での生分解が可能な微生物が生産する天然の多糖類及び同じく微生物が生産する天然のポリアミノ酸であるε−ポリリジンの架橋高分子化物や天然高分子を用いることから、汚泥を凝集するために使用した前記多糖類、ポリアミノ酸、天然高分子が発酵工程において微生物による発酵を促進させる栄養源となり、発酵が効率よく行われると同時に、凝集剤が最終処理物中に残留することもなく、最終処理物をコンポストとして使用した場合にも、土壌中に凝集剤が持ち込まれて植物の育成に不適切な土壌に改質してしまうおそれはない。また、仮に凝集剤が最終処理物中に残留して土壌中に持ち込まれたとしても、速やかに生分解されることから、環境汚染、更にはそれに伴う二次公害の問題が生じるおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 有機性汚泥の処理方法及び処理システムのフロー図。
【図2】 コンポスト化設備の概要図。
【符号の説明】
1:第一凝集攪拌槽、2:第二凝集攪拌槽、3:脱水機、4:第一発酵槽、5:第二発酵槽、6:汚泥サービスタンク、7:第一凝集剤タンク、8:第二凝集剤タンク、9:汚泥貯留槽、10:脱臭装置、11:造粒機、12:給泥ポンプ、13:汚泥供給ポンプ、14:汚泥計量器、15:希釈水バルブ、16:定量ポンプ、17:高速攪拌機、18:凝集剤攪拌機、19:定量ポンプ、20:緩速攪拌機、21:凝集剤ホッパー、22:給水弁、23:凝集剤攪拌機、24:汚泥流入口、25:スクリュー、26:汚泥排出口、27:送風機、28:第一発酵槽モータ、29:攪拌羽根、30:排気用送風機、31:脱臭ファン、32:第二発酵槽モータ、33:攪拌羽根。

Claims (8)

  1. 有機性汚水を物理的処理又は生物学的処理した後に発生する有機性汚泥に微生物産生多糖類を主成分とする一次凝集剤を添加し、攪拌して前記汚泥を凝集させる一次凝集反応工程と、前記凝集した汚泥に架橋高分子化したε−ポリリジン及び天然高分子の少なくとも一方を主成分とする二次凝集剤を添加し、攪拌して前記凝集汚泥を更に凝集させる二次凝集反応工程と、前記凝集した汚泥を濃縮又は脱水する濃縮・脱水工程と、前記濃縮又は脱水した汚泥を微生物の存在下で加熱しながら攪拌して乾燥及び予備発酵させる一次発酵工程と、前記予備発酵物を微生物の存在下で加熱して発酵・分解させる二次発酵工程と、を有する有機性汚泥の処理方法。
  2. 前記一次凝集剤が、デキストラン、キサンタンガム、プルラン、カードラン、ジエランガム、ラムサンガム、ウエランガム、スクレログルカン及びβ−グルカンからなる群から選択される少なくとも1種の微生物産生多糖類を含有する請求項1記載の有機性汚泥の処理方法。
  3. 前記二次凝集剤としての架橋高分子化したε−ポリリジンが、分子内に2個以上のグリシジル基を有する化合物との反応により架橋高分子化されたものである請求項1又は2に記載の有機性汚泥の処理方法。
  4. 前記二次発酵工程から排出される発酵・分解物を造粒する造粒工程を有する請求項1〜3のいずれかに記載の有機性汚泥の処理方法。
  5. 微生物産生多糖類を主成分とする一次凝集剤を供給する一次凝集剤供給手段及び攪拌手段を備え、有機性汚水を物理的処理又は生物学的処理した後に発生する有機性汚泥を凝集させる第一凝集攪拌槽と、架橋高分子化したε−ポリリジン及び天然高分子の少なくとも一方を主成分とする二次凝集剤を供給する二次凝集剤供給手段及び攪拌手段を備え、前記第一凝集攪拌槽で凝集させた汚泥を更に凝集させる第二凝集攪拌槽と、前記第二凝集攪拌槽で凝集させた汚泥を濃縮又は脱水する濃縮機又は脱水機と、加熱手段及び攪拌手段を備え、前記濃縮機又は脱水機にて濃縮又は脱水された汚泥を乾燥及び予備発酵させる第一発酵槽と、加熱手段を備え、前記予備発酵物を発酵・分解させる第二発酵槽と、を有する有機性汚泥の処理システム。
  6. 前記第一凝集攪拌槽へ供給される有機性汚泥を貯留する汚泥サービスタンク、又は汚泥貯留槽から第一凝集攪拌槽へ直接汚泥を供給する汚泥供給ポンプを有する請求項5記載の有機性汚泥の処理システム。
  7. 前記第二発酵槽から排出される発酵・分解物を造粒する造粒機を有する請求項5又は6に記載の有機性汚泥の処理システム。
  8. 前記第一発酵槽及び/又は第二発酵槽に脱臭装置を備えた請求項5〜7のいずれかに記載の有機性汚泥の処理システム。
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