JP4414581B2 - 鋳鉄の黒鉛球状化処理方法および鋳鉄の黒鉛球状化剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は鋳鉄の黒鉛球状化処理方法および球状化処理剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
球状黒鉛鋳鉄鋳物は日本国内に於て年間約200万t生産され、年々増加の一途をたどっている重要な素形材である。
【0003】
その製造技術は適正な溶湯を得るための溶解法、脱硫法、黒鉛球状化処理法、および強固な鋳型を得るための造型法、さらには注湯法等を好ましく組み合わせることにより成り立っている。溶解法および造型法、注湯法については普通鋳鉄鋳物についても共通であり、脱硫法および黒鉛球状化処理方法が球状黒鉛鋳鉄を製造する場合に特有の技術である。
【0004】
まず脱硫法である。鋳鉄溶湯を得るためにはまず溶解が必要である。一般にはキュポラおよび高周波誘導炉、低周波誘導炉等の電気炉が使用されている。キュポラ溶湯では溶解過程で多量のSをコークスより吸収している。球状黒鉛鋳鉄溶湯として使用するためには脱硫処理が必要である。そこで脱硫処理が行われる。脱硫剤としてはカルシウムカーバイト、ソーダ灰あるいは生石灰系の脱硫剤が用いられる。脱硫方法としてはバッチ法および連続法がある。バッチ法では前述の方法の他、置き注ぎ法、揺動取鍋法等が工場の特徴に応じて使用されている。また、連続法ではインジェクション法、ポーラスプラグ法、機械撹拌法等が適宜使用されている。
【0005】
次に黒鉛の球状化処理が行われる。黒鉛状化処理剤としては過去には主にCeからなるREM、あるいはCa等も用いられたが、現在では主としてMgが使用されている。このMgの溶湯への添加方法ついては実に様々な方法がある。また添加合金についても多種類の合金が開発され、用いられている。言い替えれば、球状黒鉛鋳鉄の製造技術はMg添加方法、添加合金、添加物の改良進歩によるものといってもよい。
【0006】
Mgは沸点が1090℃で、鋳鉄溶湯中ではほとんど溶解度を有しない。このため高温の溶湯に入ったとき、直ちにMg蒸気となり溶湯外に逸出する。通常の溶湯温度である1450℃から1500℃では蒸気圧が980〜1147kPaとなる。この高い蒸気圧のため、Mg蒸気が溶湯中を通過する時間が極度に短く、爆発的に溶湯外に逸出する。このため、金属Mgを単に溶湯中に挿入するだけではMgの歩留がきわめて低く、球状黒鉛鋳鉄を製造することが困難であった。
【0007】
さらに、大気中におけるMgの燃焼、溶湯の飛散等により非常に、汚れる危険な作業でもあった。
【0008】
そこでこれを改善、緩和するため以下の三つの手段が取られたのである。
【0009】
(1)添加するMgをSi、Fe、Ni、Cu等と合金させ、Mg含有量を低下させ、Mgの蒸気化が徐々に起こるようにする。よってMg蒸気が溶湯中を通過する時間を長くして歩留をよくする。Fe−Si−Mg合金、Ni−Mg合金、Cu−Mg合金等が用いられる。
【0010】
(2)高いMgの蒸気圧を物理的に押さえつけるかまたは耐火物等でMg蒸気の発生源からの発散を孔の大きさ等で制限する。コンバーター法、あるいはマグコーク法等がある。
【0011】
(3)Mgを金属合金の状態で添加するのではなく、Mgの塩類例えば、MgF3、MgCl2等とカルシウムシリコンの様に還元力の強い材料と混合し、高温の溶湯中に添加する。すると同時にこれらMgの塩類はカルシウムシリコン中のCaにより還元され、Mgの単体元素となり、溶湯に作用し黒鉛を球状化する。これにはOZ法、KC法等がある。
【0012】
以上の様な方法の組合せにより、溶湯が処理され球状黒鉛鋳鉄が製造されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
球状黒鉛鋳鉄を製造しようとする場合、普通鋳鉄の製造と異なり、溶湯の脱硫および黒鉛の球状化処理が不可欠である。
【0014】
ところが、既に述べた様な方法あるいは処理剤等が開発、使用されているが以下に述べるような黒鉛球状化処理に伴う根本的な問題は解決されたわけではない。
【0015】
通常、球状黒鉛鋳鉄を製造する場合の元湯のS量は0.020%以下であることが望ましい。したがって、キュポラ溶湯の場合前述のように脱硫を行うわけである。一般の鋳物工場にとって、脱硫設備を設置することは費用的にも大きな負担である。さらにその脱硫によって生成する発生物の廃棄の問題がある。最近では廃棄物を処理するのに多大な費用を必要し、鋳鉄鋳物製造コストの増加につながってくる。
【0016】
また一般的な球状黒鉛鋳鉄の製造工場では上記球状化処理剤のなかでは8〜20%Mgを含有するFe−Si−Mg合金で溶湯を処理することがほとんどである。取鍋内での置き注ぎあるいはプランジャーで溶湯中に押し込まれるが、この場合、Mgの蒸気圧が高いことに基づく爆発的な反応は純Mgほどでは無いにしても、激しい。そしてMg蒸気が大気中に逸出したときの閃光と白煙の発生は安全上の問題とともに労働環境を悪化させる可能性がある。また、この場合のMg歩留は元湯のS量にもよるが、一般的には20〜50%と低いものである。
【0017】
このようなことから、鋳造工場では▲1▼元湯の脱硫を必要としない▲2▼球状化処理の反応が静かな▲3▼Mg歩留の高い▲4▼処理に伴う廃棄物が少ない、鋳鉄の球状化処理方法が望まれていた。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは球状化処理の反応が金属AlとMgOの粒度あるいはこの混合物反応層の層厚、あるいはポーラスな覆いの厚さを調整することによりMg蒸気の発生速度を調整可能であること見いだし、それに伴い非常にMgの歩留よく、処理反応の静かな、廃棄物量も少ない球状化処理方法を見いだしたのである。
【0019】
すなわち
2Al+4MgO → 3Mg(g)+MgO・Al2O3
の反応は吸熱反応である。したがって、反応に関わる物質への溶湯からの伝熱速度でこの反応の速度を調整できるのである。すなわち、従来の黒鉛球状化剤あるいは処理方法と異なり、Mg蒸気の発生速度の調整が可能となるのである。これにより、鋳鉄溶湯へ必要なMg量を所要の速度で供給することが可能であり、高歩留で安全な黒鉛球状化処理法と提供できるのである。さらには、Mg歩留が高いことからわずかなMg添加量で球状化できることになり、白煙の発生量も少なく、元湯のS量が過剰でも従来法のように予め脱硫することなく、Mgで脱硫しつつ、黒鉛球状化処理も可能となる。それにより廃棄物の発生量も著しく減少するのである。
【0020】
本発明は上記知見に基づいて課題を解決したものであり、その特徴は以下の通りである。
【0021】
(1) Mgを鋳鉄の黒鉛球状化剤として使用する鋳鉄の黒鉛球状化処理法において、Al粉末とMgO粉末とを含む粒子径0.5mm以下の成形体である黒鉛球状化処理剤を鋳鉄溶湯中に加え、Mg蒸気とMgO・Al2O3を生成させ、このMg蒸気で黒鉛球状化処理することを特徴とする鋳鉄の黒鉛球状化処理方法。
【0022】
(2) Al粉末とMgO粉末とを含む粒子径0.5mm以下の成形体である黒鉛球状化処理剤で、MgOとAlをMgO/Alモル比で1以上、3以下とすることを特徴とする鋳鉄の黒鉛球状化処理剤。
【0023】
(3) さらに、CaO粉末を含む粒子径0.5mm以下の成形体である黒鉛球状化処理剤で、CaO/MgOモル比で0.6以上とすることを特徴とする前記(2)記載の黒鉛球状化処理剤。
【0025】
(4) 前記(2)または(3)記載の黒鉛球状化処理剤を開口部を有する耐熱性コンテナーに収納して溶湯中に浸漬することを特徴とする鋳鉄の黒鉛球状化処理方法。
【0026】
(5) コンテナーの開口部を多孔質の耐火物にしてMgガスが容易にぬけ、溶湯中に供給できることを特徴とする前記(4)記載の鋳鉄の黒鉛球状化処理方法。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下本発明を具体的に説明する。
【0028】
この発明で対象とする溶湯は球状黒鉛鋳鉄用の溶湯であり、通常はC:3〜4%、Si:1〜3%、Mn:0.1〜0.5%、P:0.02〜0.08%、S:0.050%以下である。その他用途によってはNi、Cr、Cu、Mn等の合金元素を〜数%含むこともある。但し、%は質量%を示す。
【0029】
本発明ではAl源粉末、MgO源粉末、生石灰粉末の混合物を混練、圧縮、焼結等を行い、成形体とする必要がある。また処理剤は取鍋の底に設置された状態で溶湯に添加されることが好ましい。
【0030】
Al源粉末とMgO源粉末の粒径は両者の反応性を支配する重要な因子である。粉砕粉末は一般には粉砕が進むほど粒子形状が単純になり、球に近づく傾向があることが知られている。一方、Al源粉末の内部のAlは溶融と昇温により、膨張する。膨張により表面Al2O3皮膜には引張応力が働くが、粒子形状が球形に近いほどAl2O3皮膜は変形が困難であり、応力を緩和できない。このため破裂しやすくなる。すなわちAl源粉末は細かいほどAl2O3皮膜が壊れやすくAl融液が外部に漏れでてMgOと反応しやすくなる。したがって、Al源粉末は細かい方が好ましい。具体的には100メッシュの篩を通過する粉末、すなわち粒径約0.15mm以下の粉末を適用することによってAlの反応率をあげることができる。
【0031】
MgO粉末も細かいほどAl融液との接触面積が増加するので反応が進みやすくなる。したがって、MgO源粉末は細かい方が好ましい。具体的には100メッシュの篩を通過した粉末、すなわち粒径0.15mm以下の粉末を適用することによりMgOの反応率をあげることができる。さらに好ましいのは200メッシュの篩を通過した粉末、すなわち0.074mm以下の粉末を適用することである。
【0032】
粒径0.15mm以下のAl源粉末と粒径0.15mm以下のMgO源粉末の組合せが1250〜1500℃での溶湯温度で
2Al+4MgO → 3Mg(g)+MgO・Al2O3 (1)
の反応を進行させる条件の一つと発明者らは考えている。(1)式の反応による平衡Mg分圧を公表されている熱力学諸数値から推算してみると、1300℃以上に加熱すれば、Mg蒸気分圧は1気圧を超えることになり、溶湯中でも十分にMg蒸気を生成し得られることが理解される。
【0033】
反応性のよいAl源を選択して粒度を調整する。細かいMgO粉末を選択する。両者を十分に混合し良好な接触を確保する。溶湯と接触しても粉化することの無い高強度の成形体に加工することにより(1)式の反応式は1250℃から1500℃で進行するのである。
【0034】
Al源粉末の反応性は粉末表面を覆う酸化皮膜の特性に支配される。純度の高いAl粉末は強靭なAl2O3皮膜で覆われており、内部のAl融液は外部へ吹き出し難く、外部のMgO源粉末との反応性は抑制される。高純度のAl源粉末に加えて高純度のMgO源粉末を用いればこの傾向はさらに顕著になる。したがって前記のAl源粉末とMgO源粉末の適性粒度選択に加えてAl2O3皮膜の改質に関する手段を併用することがより好ましい。
【0035】
すなわちMgCl、CaCl2、KCl、NaCl、ソーダ灰等のようにAl2O3の融点を降下させる物質を含むAl源粉末か、あるいはAl源粉末にこれらのAl2O3融点降下物質を加えるとAl源粉末表面のAl2O3皮膜は溶湯温度の温度領域で脆弱となり、内部の溶融Alは容易に外部へ吹き出し、(1)式にしたがってMgOと活発に反応し、Mg蒸気が発生するのである。この方法により反応性の悪い高純度のAl源粉末でも同様に溶湯温度領域で反応が可能になる。前記Al2O3融点降下物質は球状化処理材中のAl:1kgに対し、0.001〜0.10kgを含むことが好ましい。これは0.001kg未満ではAl粉末のAl2O3皮膜を脆弱にするのが困難であり、また0.10kgを超えるとAl2O3皮膜破壊には過剰となり不要な成分となるからである。
【0036】
MgO源粉末としては天然マグネシアが好ましい。これにはCaOを含むためAl2O3皮膜を破る効果がある。海水マグネシアも好ましい。NaCl、KClを含むものが好適である。
【0037】
またMgO源粉末として900℃までに熱分解してMgOになるものでもよく、ドロマイトなどでもよい。
【0038】
(1)式の反応に必要なAl量は化学量論的にはMgO:4mol当たり、Al:2molである。
【0039】
球状処理剤のMgOとAlのモル比は1以上3以下の成形体とすることが好ましい。これは1未満ではAlが過多になり、未反応のAlの一部が溶湯に溶解する恐れがあるからである。またモル比が3より大きい場合は未反応のMgOが溶湯中に残留する可能性がある。成形法には特に制約はないがタブレットマシン、ブリケッテングマシン等の圧縮成形法が適している。
【0040】
従来技術では処理剤中のMgが爆発的に反応するのに対し、(1)式の反応によるMg蒸気の発生は比較的穏やかである。このため球状化処理剤から発生するMg蒸気を有効に鋳鉄溶湯に作用させるには取鍋等の底に球状化剤を置く置き注ぎ法による処理が溶湯中のMg蒸気を長時間接触反応させることが可能となりMgの歩留を高めることができる。
【0041】
しかし、溶湯の温度が低めの場合、あるいは大型の容器で浸漬深さが深い様な場合にはMg蒸気の発生速度律速となる可能性がある。すなわち、Mg蒸気の溶銑中への溶解を考えるとMg蒸気の溶銑との接触位置は深い程良い。つまり、それだけ大きな静圧を利用してMg蒸気を発生させることにより、Mg蒸気の溶銑への溶解が促進される。一方、Mg蒸気の発生速度を考慮すれば、圧力は小さい程良い。つまり、圧力が過大であり、特に、Mg平衡蒸気圧以上の圧力下ではMg蒸気が成型体内部を浸透する速度が遅く、あるいは反応界面におけるMg蒸気の発生が抑えられるためにMg蒸気の溶湯中への供給が遅く、処理に長時間を要することになるという問題が生じる。
【0042】
そこで、本発明者らは、この点に鑑み、CaOをこの処理剤の中に共存させることを着想した。すなわち、CaOを混合すると(2)式の反応が生じ、平衡Mg蒸気分圧がかなり高められる。
14Al+21MgO+12CaO
→ 21Mg(g)+12CaO・7Al2O3 (2)
【0043】
すなわち、溶湯処理温度としては比較的低温である1300℃でも平衡Mg蒸気分圧は10気圧という圧力に達する。またCaOの添加は上記Al表面に生成しているAl2O3膜の除去の点でも好適である。すなわち、CaOとAl2O3はお互いに良く溶け合う共晶であることが良く知られており、その最低融点は低いので、CaOが存在するとAlを被覆しているAl2O3膜を良く溶かし、益々反応を促進する方向となる。(2)の反応に必要なCaO量は化学量論的にはMgO:21mol当たりCaO:12mol、すなわち、CaO/MgOモル比でおよそ0.6である。球状化処理剤のCaOとMgOのモル比は0.6以上にすることが好ましい。これは、0.6未満ではCaOが過少となり(2)の反応が起こり難いため、CaOの平衡Mg蒸気分圧を向上させる効果が得られないからである。
【0044】
一方、一般に鋳物溶銑の処理においてはなるべく簡便な装置、設備での処理形態が望まれる。そこで、(2)式の反応で生成するMgガスを溶湯中に溶解させる方法として、粒子径0.5mm以下に造粒したものを直接吹込むことが望ましい。粒子径を0.5mm以下とする理由はこれ以上大きい粒子では、粒内部への伝熱が律速となり、有効なMg蒸気発生を行う前に溶銑上に浮上してしまい、溶湯自由表面でのMg蒸気発生がメインとなって歩留が悪化するためである。粒子径は小さい程良いが、原料であるMgO、Alの粒度にも工業的に細かくできる限界があるので、粒径の下限は成型可能な範囲で適宜定めれば良い。このガス吹込み法の場合、酸化性ガスや窒素を含むガスを使用するとAlの酸化ロス、窒化ロスが増えるので、望ましくはArやHe等の不活性ガスが良い。一方、溶湯の量が少なく、インジェクションランスの装入といった操作が行い難い場合には、図2に示した様に、上記粒径0.5mm以下にした成型物を開口部を有する耐熱性コンテナーに収納して鋳鉄溶湯中に浸漬する方法も簡便で確実である。さらに、溶湯と成型物が直接接触することを避けたい場合には、例えば図1に示した様にコンテナーの開口部を多孔質の耐火物とし、Mg蒸気が容易に通ることができるようにすることもできる。
【0045】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0046】
(実施例1)
実施例1の実施様態の説明図を図1に示す。
【0047】
まず、100メッシュの篩を通過したアルミニウム源粉末(82.1%Al、4.3%Si、2.5%NaCl)23.5g、200メッシュの篩を通過した天然マグネシア粉末(91.0%MgO、3.2%CaO、1.0%SiO2、0.4%Fe2O3、0.1%Al2O3)69.6g、アルミナ系バインダー5.0gをメノウ乳鉢に入れ十分押しつぶし、混合した。この配合はMgO/Alのモル比で2.2、重量比で3.3である。
【0048】
この混合物から10.00gを秤量し、黒鉛球状化処理剤2として、MgOるつぼ1の底に広げ押し固めた。そこへ多孔質耐火物3で浮き上がらないように蓋をする。
【0049】
予め所要の鋳鉄成分(C 3.5%、Si 2%、Mn 0.20%、P 0.020%、S 0.020%)に調整した鋳鉄4を挿入する。これを高周波炉を用い、1450℃で溶解する。鋳鉄の溶解後、Mg蒸気がわずかに発生するのが確認できた。反応は非常に穏やかで、溶湯の飛散等の爆発的な状況はまったく見られなかった。すなわち、反応の伴う閃光や白煙の発生を抑えることができた。
【0050】
所定の温度に上昇後、この温度で0.3%Fe−Si(75)接種し、30mmφの砂型に直接鋳込だ。
常温まで冷却後、組織観察を行ったところ、黒鉛は球状化しており球状化率は90%であった。
【0051】
また丸棒よりJIS4号試験片を作成し、引張試験を行ったところ55kgf/mm2、伸びは10%であった。
【0052】
出湯後の坩堝の底には8.11gの処理材が残留しており、1.89gの減量がみられた。
【0053】
これより、発生したMgは0.73gで、鋳鉄中の残留Mgは0.04%、0.6gであるからMg歩留は82.2%となる。Fe−Si−Mg合金の通常のMg歩留は20〜50%であるから非常に改善されている。
【0054】
さらにこの処理法の溶解に高速溶解炉を使用すれば、溶解工程を造型工程に内にとりこ込むことが可能となり、球状黒鉛鋳鉄の多品種、小量生産が可能となる。
【0055】
(実施例2)
実施例2の実施様態の説明図を図2に示す。
【0056】
まず、100メッシュの篩を通過したアルミニウム源粉末(82.1%Al、4.3%Si、2.5%NaCl)2.35kg、200メッシュの篩を通過した天然マグネシア粉末(91.0%MgO、3.2%CaO、1.0%SiO2、0.4%Fe2O3、0.1%Al2O3)6.96kg、アルミナ系バインダー5.0kgを十分混合した。この配合はMgO/Alのモル比で2.2である。これを混練し、押し出し成型器で粒子径0.5mmのミクロペレットに成型した。ミクロペレットの組成は24.0%のアルミニウム源粉末、70.9%の天然MgO粉末、5.1%のアルミナ系バインダーであり、MgO/Alの重量比は3.3である。
【0057】
このミクロペレット4kgを黒鉛球状化剤2として、取鍋の底に造った反応室7に投入し、そこに浮上抑制材8として型銑10kg(2本)を入れで浮き上がらないように蓋をする。
【0058】
予め高周波炉で溶解したC 3.5%、Si 2.0%、Mn 0.20%、P 0.020%、S 0.020%に調整した1550℃の鋳鉄溶湯6の3tを取鍋5に注入する。
【0059】
この際の反応は非常に穏やかで、溶湯の飛散等の爆発的な状況はまったく見られなかった。すなわち、反応の伴う閃光や白煙の発生を抑えることができた。
【0060】
穏やかな反応が終了した後、0.3%Fe−Si(75)合金で接種し、JISA号Yブロックに鋳込んだ。
【0061】
ミクロ組織を観察したところ、85%の黒鉛球状化率が得られた。
また、JIS4号引張試験片を作成して引張試験を行ったところ、53kgf/mm2および伸び15%が得られた。 残留Mgの分析結果は0.038%、Sは0.002%であった。
【0062】
処理剤から発生したMgガスは理論上1.54kgで、残留Mgは1.14kgである。見掛けのMg歩留は74.0%であった。
【0063】
(実施例3)
実施例3の実施様態の説明図を図3に示す。
【0064】
まず、100メッシュの篩を通過したアルミニウム粉末(99%Al)19kg、200メッシュの篩を通過した天然マグネシア粉末(91.0%MgO、3.2%CaO、1.0%SiO2、0.4%Fe2O3、0.1%Al2O3)37.4kg、100メッシュ篩下の生石灰粉末(98%CaO) 48キログラムを十分混合した。この配合はMgO/Alモル比で1.2、CaO/MgOモル比で1.0である。これを十分混練した後、押し出し成型器にて0.5mmのミクロペレットに成型した。
【0065】
低周波炉の前炉を有するキュポラで溶解し脱硫処理前の溶湯成分(C 3.5%、Si 2.0%、Mn 0.20%、P 0.020%、S 0.063%)に調整した鋳鉄溶湯6を1550℃で10tを取鍋5に注入した後、上記成型物25kgをキャリアーガスとしてArガスを用い耐火物製ランス9よりインジェクションした。溶湯の飛散等の爆発的な状況はまったく見られず、反応は穏やかに進行した。反応の伴う閃光や白煙の発生を抑えることができた。
【0066】
処理終了後、小取鍋に処理溶湯を10kgとり、0.3%Fe−Si(75)合金で接種し、JISA号Yブロックに鋳込んだ。
【0067】
ミクロ組織を観察したところ、80%の黒鉛球状化率が得られた。
また、JIS4号引張試験片を作成して引張試験を行ったところ、48kgf/mm2および伸び13%が得られた。残留Mgの分析結果は0.035%、Sは0.010%であった。
【0068】
処理剤から発生したMg 4.89kgで、残留Mgは3.5kgである。見掛けのMg歩留は71.6%であった。脱硫に必要な理論Mgは3.98kgであるからこれを考慮すれば高いMg歩留といえる。
【0069】
S量が高いキュポラ溶湯でもMgによる脱硫も兼ねる球状化処理により球状化黒鉛鋳鉄の製造が可能である。この場合は従来法のように脱硫処理による生成物はほとんど発生しない。
【0070】
【表1】
【0071】
(比較例)
高周波炉で溶製した溶銑を取鍋に出湯し球状化処理を行った。予め、取鍋の底部には黒鉛球状化剤としてFe−45%Si−6%Mg合金0.7kgを入れ置いた。取鍋に出湯した溶銑30kgは、温度1550℃、成分C 3.5%、Si 2.0%、Mn 0.20%、P 0.020%、S 0.020%の脱硫処理後成分のものである。球状化処理時には白煙が激しく発生し、溶湯の飛散が認められた。反応が終了した後、0.3%Fe−Si(75)合金で接種し、JISA号Yブロックに鋳込んだ。ミクロ組織を観察したところ、80%の黒鉛球状化率が得られた。また、JIS4号引張試験片を作成して引張試験を行ったところ、引張り強さ49kgf/mm2および伸び10%が得られた。
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば従来のような脱硫処理、黒鉛球状化処理という煩雑、危険かつ汚い作業をなくし、容易に球状黒鉛鋳鉄を製造することができる。
したがって本発明の実用的価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の実施様態の説明図である。
【図2】実施例2の実施様態の説明図である。
【図3】実施例3の実施様態の説明図である。
【符号の説明】
1 MgOるつぼ
2 黒鉛球状化処理剤
3 多孔質耐火物
4 鋳鉄
5 取鍋
6 鋳鉄溶湯
7 反応室(耐熱性コンテナー)
8 浮上抑制材
9 耐火物製ランス
10 ランスパイプ
11 黒鉛球状化処理剤タンク
12 Arガスボンベ
Claims (5)
- Mgを鋳鉄の黒鉛球状化剤として使用する鋳鉄の黒鉛球状化処理法において、Al粉末とMgO粉末とを含む粒子径0.5mm以下の成形体である黒鉛球状化処理剤を鋳鉄溶湯中に加え、Mg蒸気とMgO・Al2O3を生成させ、このMg蒸気で黒鉛球状化処理することを特徴とする鋳鉄の黒鉛球状化処理方法。
- Al粉末とMgO粉末とを含む粒子径0.5mm以下の成形体である黒鉛球状化処理剤で、MgOとAlをMgO/Alモル比で1以上、3以下とすることを特徴とする鋳鉄の黒鉛球状化処理剤。
- さらに、CaO粉末を含む粒子径0.5mm以下の成形体である黒鉛球状化処理剤で、CaO/MgOモル比で0.6以上とすることを特徴とする請求項2記載の鋳鉄の黒鉛球状化処理剤。
- 請求項2または3記載の黒鉛球状化処理剤を開口部を有する耐熱性コンテナーに収納して溶湯中に浸漬することを特徴とする鋳鉄の黒鉛球状化処理方法。
- コンテナーの開口部を多孔質の耐火物にしてMgガスが容易にぬけ、溶湯中に供給できることを特徴とする請求項4記載の鋳鉄の黒鉛球状化処理方法。
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JP2000286446A JP4414581B2 (ja) | 2000-09-21 | 2000-09-21 | 鋳鉄の黒鉛球状化処理方法および鋳鉄の黒鉛球状化剤 |
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