JP4414575B2 - 経時着色が小さい2,5(6)−ビスアミノメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン - Google Patents

経時着色が小さい2,5(6)−ビスアミノメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば耐熱性、耐衝撃性に優れたエポキシ樹脂、また耐候性、耐摩耗性に優れたポリイソシアネートの原料等として用いられる大変有用な2,5(6)−ビスアミノメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の2,5(6)−ビスアミノメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(以下、NBDAと略記する)の製造方法としては、ジシクロペンタジエン(以下、DCPDと略記する)とアクリロニトリル(以下、ANと略記する)のディールスアルダー反応によりビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2−カルボニトリル(以下、CNNと略記する)を合成し、更にゼロ価ニッケル錯体触媒を用い青酸付加して2,5(6)−ビスシアノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(以下、DCNと略記する)を得、それを接触水素化することにより得られる方法が知られている。
【0003】
例えば、特開平4−224553号公報、特開平7−188147号公報には、DCPDとANのディールスアルダー反応において反応熱及び重合副生物の生成を抑制したCNNの製造方法が記載されている。また、特開平3−09151号公報、特開平3−232850号公報、特開平6−184082号公報には、CNNに青酸を付加する際に、ゼロ価ニッケル錯体触媒を用いDCNを得て、触媒を酸分解後にアルカリ中和、有機溶媒で抽出するDCNの製造方法が開示されている。そして、特開平3−181446号公報にはDCNを有機溶媒及びアンモニア存在下、担持コバルト触媒を用い温和な条件下、短時間で高収率で得るNBDAの製造方法などの技術が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このNBDAは、エポキシ樹脂、ポリイソシアネートの原料に用いられるため、無色透明で且つ、無黄変であることが必要不可欠である。しかしながら、従来の技術で得られるNBDAは、常温保管の際に経時着色速度が非常に大きい性質を有していた。この経時着色速度は冷蔵保存をすることで小さくなるが、製品が凝固する、保管コストが生じるという欠点があり、その改善が望まれていた。
【0005】
本発明は経時着色速度が小さいNBDAを安定的に得ることを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの課題を解決するため鋭意検討を行った結果、経時着色の主原因は、CNNに青酸を付加する際に用いられる、テトラキス(トリフェニルホスファイト)ニッケル等のゼロ価ニッケル錯体触媒及びトリフェニルホスファイト等の助触媒を酸分解したときに生成するフェノールであり、これがアルカリ中和を行っても取り除けずDCN中に不純物として含有されるためであることを見出した。そこで、NBDAのフェノール含有量を管理することで経時着色の小さいNBDAを得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明は、
)フェノール含有量が0.05重量%を越える2,5−ビスアミノメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンまたは2,6−ビスアミノメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンに、強塩基を添加して蒸留を行うことを特徴とするフェノール含有量が0.05重量%以下である2,5−ビスアミノメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンまたは2,6−ビスアミノメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの製造方法
)フェノール含有量が0.05重量%を越える2,5−ビスアミノメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンまたは2,6−ビスアミノメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを、蒸留温度を180℃以下で蒸留精製を行うことを特徴とするフェノール含有量が0.05重量%以下である2,5−ビスアミノメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンまたは2,6−ビスアミノメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの製造方法、を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のNBDAを製造する方法は、例えば、DCNと25重量%アンモニア水(DCNに対し30モル%)及びラネーニッケル触媒(DCNに対し約1重量%)を仕込み、水素圧約3.5MPa、温度120℃条件下で接触水素化を行った後、触媒、アンモニア水、トルエンを除き、蒸留する方法を挙げることができる。
【0009】
本発明のNBDAに含まれるフェノールの多くは、原料であるDCN製造において使用する、ゼロ価ニッケル錯体触媒及び助触媒の酸分解、加水分解により由来するものである。
【0010】
本発明の経時着色の小さいNBDAのフェノール含有量とは、0.05重量%以下であり、好ましくは0.02重量%以下である。0.05重量%を越えると経時着色速度が大きく保存時に黄変する。
【0011】
本発明のNBDAのフェノール含有量は、ガスクロマトグラフィー分析により求めた値である。具体的には、ガスクロマトグラフィー分析で、NBDA中のフェノールを絶対検量線法等により測定する。
【0012】
本発明では、NBDA中のフェノールの含有量を0.05重量%以下にするため、一例として強塩基を添加して蒸留を行う。
【0013】
本発明の方法に用いる強塩基とは、NBDAより強い塩基性物質を示す。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が例示できる。好ましくはフェノールと接触しやすく反応進行が速い、高濃度水溶液状が好ましい。
【0014】
本発明では、フェノールに対して通常10当量以下、好ましくは1.2〜2当量の強塩基を加え、蒸留釜内でフェノールと強塩基と反応させ、フェノールの強塩基塩を形成させた後に蒸留する。強塩基は1.2当量以上であるとフェノールの未反応分が留出しにくく、また10当量以下であると蒸留器内部に未反応の強塩基が堆積する等の不都合が生じにくくなる。
【0015】
本発明では強塩基を使用しない場合、180℃以下、好ましくは140℃〜180℃で蒸留を行う。蒸留は連続法もしくはバッチ法のいずれでも良いが、特にバッチ法の際は蒸留釜の温度を180℃以下、また180℃を越える温度の熱媒による局所加熱をしないよう行う。140℃以下であると蒸留時間が長くなる傾向にあり、180℃以上であるとフェノールが留出してくるという不都合を生じる場合がある。
【0016】
本発明の経時着色判定方法は、一定期間保存したNBDAの色相を目視で評価する。具体的にはNBDAをAPHA測定管に装入し、標準液と見比べてAPHA値を求める。更に分光光度計を用い、400nmの吸光度(以下Abs.と略記する)を求める。経時着色の小さいNBDAとはAPHA=10以下、吸光度=0.04以下のものである。
【0017】
【実施例】
以下に実施例で本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下においてフェノール分析は先述したガスクロマトグラフィー分析値である。また、各原料であるCNN、DCNの分析もガスクロマトグラフィー分析値である。
【0018】
実施例1
フェノール分析測定値が0.002重量%以下のNBDAを、窒素封入後密閉し、遮光した容器で1ケ月室温(25〜35℃)保存した後に経時着色確認を行ったところ、APHA=10以下、Abs.=0.015であった。
【0019】
実施例2
フェノール分析測定値が0.020重量%のNBDAを、窒素封入後密閉し、遮光した容器で1ケ月室温(25〜35℃)保存した後に経時着色確認試験を行ったところ、APHA=10以下、Abs.=0.022であった。
【0020】
実施例3
フェノール分析測定値が0.050重量%のNBDAを、窒素封入後密閉し、遮光した容器で1ケ月室温(25〜35℃)保存した後に経時着色確認を行ったところ、APHA=10、Abs.=0.034であった。
【0021】
比較例1
フェノール分析測定値が0.100重量%のNBDAを、窒素封入後密閉し、遮光した容器で1ケ月室温(25〜35℃)保存した後に経時着色確認を行ったところ、APHA=15、Abs.=0.043であった。
【0022】
比較例2
フェノール分析測定値が0.183重量%のNBDAを、窒素封入後密閉し、遮光した容器で1ケ月室温(25〜35℃)保存した後に経時着色確認を行ったところ、APHA=20、Abs.=0.088であった。
【0023】
実施例4
(CNNの製造)
300mlオートクレーイブにDCPD61.2g(0.46モル)とAN60.2g装入し、更にヒドロキノン0.06g(0.05重量%/DCPD+AN)を加え、撹拌下、153℃で5時間反応後、さらに昇温して170℃で2時間、180℃で2時間保温を行い反応を終了した。得られたCNN反応液は121.0gであり、分析したところCNNを116.4g含有していた。
【0024】
(DCNの製造)
200mlフラスコに前記で得られたCNN反応液を121.0g(0.98モル)及び触媒であるテトラキス(トリフェニルホスファイト)ニッケル;Ni[P(OPh)を1.22g(0.94ミリモル)、塩化亜鉛0.13g(0.98ミリモル)、トリフェニルホスファイト;P(OPh)を1.22g(3.92ミリモル)仕込み、窒素ガスで系内を置換した後、撹拌下で85℃に昇温して触媒の溶解を行った。次に氷水で冷却された液体シアン化水素を含む受器に窒素ガスを導入し、バブリングすることにより、気体シアン化水素を窒素ガス同伴により反応液中に供給し、85℃を保ちながら5時間反応を行った結果、27.8g(1.29モル)のシアン化水素を消費した。得られた粗DCN反応マスに窒素ガス500ml/minの流速で1時間バブリングし、曝気させた後、不溶解物の濾過を行った。この反応マスに8重量%硫酸36.0gを加え、50℃で1時間加温して触媒の酸分解を行い、更に20重量%水酸化ナトリウムで中和した後に水洗した。水洗した液にトルエン145.0gでDCNの抽出を3回行い、DCNトルエン溶液を得た後、トルエンを留去して89%DCNを134.4g得た。この89%DCNにはフェノールが0.298重量%含まれていた。
【0025】
(NBDA脱トルエンマスの製造)
500mlオートクレーブに前記で得られた89%DCN129.1g(0.786モル)と25%アンモニア水15.4g(0.226モル)、及び触媒ラネーコバルト1mlを装入して水素圧3.53MPa、120℃で水素接触反応を310分行った。室温まで冷却を行い、濾過で触媒ラネーコバルトを除いた後にアンモニア、DCN中に含まれていたトルエンを16KPa、60℃で留去しNBDA脱トルエンマス149.25gを得た。得られたNBDA脱トルエンマスをフェノール分析したところ、0.240重量%含まれていた。
【0026】
(NBDAの蒸留)
得られたNBDA脱トルエンマス 40.00g(フェノール0.096g=0.001モル含有)と49%水酸化ナトリウム水溶液0.163g(0.002モル)を50mlフラスコに装入し、減圧29.33KPa、フラスコ内部温度215〜250℃の条件下で蒸留し、精NBDAを24.4g得た。フェノール分析を行ったところ、精NBDAには0.002重量%以下、フェノールはほぼ全量釜残存物に含有していた。
【0027】
この精NBDAを窒素封入後密閉し、遮光した容器で1ケ月室温(25〜35℃)保存した後に経時着色確認を行ったところ、APHA=10以下、Abs.=0.015であった。
【0028】
実施例5
実施例4で得られたNBDA脱トルエンマス40.00g(フェノール0.096g=0.001モル含有)を50mlフラスコに装入し、減圧0.8KPa、フラスコ内部温度140〜180℃の条件下で蒸留し、精NBDAを24.7g得た。フェノール分析を行ったところ、精NBDAには0.008重量%含有、フェノールは大部分釜残存物に含有していた。
【0029】
この精NBDAを窒素封入後密閉し、遮光した容器で1ケ月室温(25〜35℃)保存した後に経時着色確認を行ったところ、APHA=10以下、Abs.=0.017であった。
【0030】
比較例3
実施例4で得られたNBDA脱トルエンマス40.00g(フェノール0.096g=0.001モル含有)を50mlフラスコに装入し、減圧29.33KPa、フラスコ内部温度215〜250℃の条件下で蒸留し、精NBDAを24.2g得た。フェノール分析を行ったところ、精NBDAには0.390重量%含有、釜残存物にフェノールは含有していなかった。この精NBDAを窒素封入後密閉し、遮光した容器で1ケ月室温(25〜35℃)保存した後に経時着色確認を行ったところ、APHA=30、Abs.=0.083であった。
【0031】
【発明の効果】
強塩基で処理した後に蒸留する、または釜内温度180℃以下に保ち蒸留する等の方法により、エポキシ樹脂、ポリイソシアネートの原料として有用なフェノール含有量0.05重量%以下の経時着色が小さいNBDAを安定的に得ることが可能となった。

Claims (2)

  1. フェノール含有量が0.05重量%を越える2,5−ビスアミノメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンまたは2,6−ビスアミノメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンに、強塩基を添加して蒸留を行うことを特徴とするフェノール含有量が0.05重量%以下である2,5−ビスアミノメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンまたは2,6−ビスアミノメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの製造方法
  2. フェノール含有量が0.05重量%を越える2,5−ビスアミノメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンまたは2,6−ビスアミノメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを、蒸留温度180℃以下で蒸留精製を行うことを特徴とするフェノール含有量が0.05重量%以下である2,5−ビスアミノメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンまたは2,6−ビスアミノメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの製造方法
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