JP4414058B2 - 被加工物仕組み体の成形方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、たとえばプラスティック製のICカードなどの被加工物を上下方向に複数個重ね合わせて一体で搬送可能、かつプレス装置にて加熱・加圧成形可能とした被加工物仕組み体及びその成形方法に関する。
【0002】
【従来技術】
従来、プラスティク成形品、たとえばICカード(インテグレーテド・サーキット・カード)を製造するには、コアシートの貫通孔にICとコイルを挿入し、このコアシートとインナシートを表面側、裏面側の双方からそれぞれオーバーシートで挟んだ状態でプレス装置により加熱・加圧して成形した後、冷却することで、これらのシートを一体成形していた。(たとえば、1989年7月10日、株式会社電気書院発行、玉田丈夫、穐山晴臣、桑原正幸共著の「ICカード しくみと広がる世界」第41頁図5・4)
上記プラスティックとしてはPVC(ポリ塩化ビニル)を用い、ICカードを多数枚分、重ねてプレス装置で各ICカードのシートを加熱・圧縮して同時成形することで、多量生産していた。
この場合、第10図に示すように、被加工物としてのICカードを鏡面板等とともに上下に積み重ねて被加工物仕組み体とし、これをプレス加工や搬送に供していた。同図において、複数個の被加工物(ICカード)193a〜193e間に両鏡面板194a〜194dを介在させる。一番下側の被加工物193aの下面側と一番上側の被加工物193eの上面側とには、それぞれ片鏡面板192a、192bとクッション紙191a、191bを配置して、これらで上記のように重ね合わせた被加工物193a〜193e、両鏡面体194a〜194dを上下から挟む。この状態で、上側クッション紙191bの上面にトッププレート120を載せ、下側クッション紙191aの下面をトレイ121で受けることで被加工物仕組み体196を構成していた。トレイ121は、この幅が搬送装置のベルト122、123の隙間長さよりも大きく設定してあり、トレイの両側部をベルト122、123に載せて上記被加工物仕組み体196をプレス装置へ搬入、あるいはプレス装置から搬出する。なお、上記トッププレート120は、下方にトレイを配置したことから上記被加工物仕組み体を上下から加熱するときの加熱バランスをとるために配置するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記被加工物仕組み体にあっては、専用のトレイとトッププレートが必要となり、しかも連続成形にあっては数多くのトレイ、トッププレートを用意しておかねばならず、コスト高となっていた。
【0004】
【発明の目的】
本発明の目的は、トレイやトッププレートを必要とすることなくICカードなどの被加工物を複数枚重ねて同時成形、同時搬送可能にした被加工物仕組み体及びその成形方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の被加工物仕組み体では、好ましくは、複数個の被加工物を、この被加工物間に両鏡面鏡板を介在させて上下方向に積み重ねる。この積み重ねた被加工物の最下位に位置する被加工物を下側片鏡面板の上面に載せる一方、上記積み重ねた被加工物の最上位に位置する被加工物の上に上側片鏡面板を載せる。下側片鏡面板の下面には下側クッションを配置するとともに、上側片鏡面板の上面に上側クッションを配置する。上記のように被加工物、両鏡面板、片鏡面板、クッションを積み重ねて被加工物仕組み体を形成する。
ここで、下側片鏡面板は、この幅を搬送装置の幅方向に離間した第1、第2の搬送要素(ベルトやローラなど)の隙間長さより大きく設定して、下側片鏡面板の両側の支持部を搬送要素に載せて被加工物仕組み体を支持しながら移させることができるようにする。一方、下側クッションは、この幅を上記両搬送要素間の隙間長さより小さく設定して下側クッションが両搬送要素間の隙間に入ることができるようにして、下側片鏡面板の下面に固着する。
また、本発明の被加工物仕組み体では、好ましくは、被加工物を、内部にICモジュールを配置した複数のシートを重ねて成形するプラスティック製のICカードとする。
本発明の被加工物仕組み体の成形方法では、好ましくは、複数の被加工物を上下方向に重ね合わせる。このとき被加工物同士間には両鏡面板を介在させる。そして一番下の被加工物の下面と一番上側の被加工物の上面とにはそれぞれ片鏡面板を配置する。これらの片鏡面板は、これらの鏡面が被加工物に接するようにするとともに、下側片鏡面板の下面には下側クッションを、また上側片鏡面板の上面には上側クッションをそれぞれ設ける。
この被加工物仕組み体は、下側クッションを搬送装置の幅方向へ離間して設けた第1搬送要素と第2搬送要素間の隙間に入れた状態で下側片鏡面板の両側に設けた支持部をそれぞれ第1搬送要素と第2搬送要素とに載せて支持する。このように被加工物仕組み体を下側片鏡面板で支持してプレス装置へ搬入し、このプレス装置にて被加工物仕組み体を加熱・加圧して被加工物を成形した後、第1搬送要素と第2搬送要素とでプレス装置から搬出するようにした。なお、第1搬送要素、第2搬送要素は、搬送路の途中で上流側と下流側とで別体に分けられていてもよい。要は、上記被加工物仕組み体を搬送できればよい。
一方、本発明の被加工物仕組み体の成形方法では、好ましくは、上記プレス装置が、ホットプレス装置とコールドプレス装置とを備える。
すなわち、ホットプレス装置は、上流側に配置されて、上記被加工物仕組み体を徐々に加熱していき成形温度で加熱加圧した後、前記被加工物の結晶化温度付近まで除冷加圧していく。また、コールドプレス装置は、ホットプレス装置の下流側に配置されて、ホットプレス装置から搬送されてきた被加工物仕組み体を結晶化付近の温度から冷却しながら加圧していく。
本発明の被加工物仕組み体の成形方法では、好ましくは、下側片鏡面板を、この幅が前記両搬送要素間の隙間長さより大きくなるように設定する。また、下側クッションを、この幅が前記両搬送要素間の隙間より小さくなるように設定し、かつ前記下側片鏡面板の下側に固着する。
本発明の被加工物仕組み体の成形方法では、好ましくは、被加工物を、内部にICモジュールを配置した状態で複数のシートを重ねて成形するプラスティック製のICカードとする。
【0006】
したがって、本発明の被加工物仕組み体及びその成形方法にあっては、下側片鏡面板の両側に設けた支持部を搬送装置の両搬送要素に載せて被加工物仕組み体を支持しながら搬送要素によって移動させプレス加工もできるようになり、従来のようなトレイやトッププレートが不要となる。この場合、下側クッションは、搬送要素間の隙間長さより小さく設定されて搬送要素間の隙間に位置されるので、搬送要素上には十分な支持剛性を有する上記片鏡面板が載ることになり被加工物仕組み体の安定した支持・搬送が可能となる。
また下側クッションは、下側片鏡面板の下面に固着されているので、搬送時にトレイがなくても下側片鏡面板から落下するおそれがない。
また、プレス加工を、ホットプレス加工工程とコールドプレス工程とに分けて実行すれば、以下に説明する効果を得ることも可能である。まず、上流側のホットプレス装置で、上記被加工物仕組み体を徐々に加熱していき成形温度で加熱した後、前記被加工物の結晶化温度付近まで除冷加圧していく。次いで、下流側のコールドプレス装置で、ホットプレス装置から搬送された被加工物仕組み体を結晶化付近の温度から冷却しながら加圧していく。したがって、被加工物がたとえ成型時にひずみが大きくなりがちだが、PVCより環境に優しく剛性の高いPET(ポリエチレンテレフタート)などの材料であっても、良好な成形性を確保しながら多量生産が可能となる。
【0007】
【実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図1に基づき説明する。
図1において、被加工物仕組み体96は、下から順に下側クッション紙91a(下側クッション)、下側片鏡面板92a、ICカード93a、両鏡面板94a、ICカード93b、両鏡面板94b、…、ICカード93e、上側片鏡面板92b、上側クッション紙91b(上側クッション)と重ね合わせて構成している。なお、片鏡面板92a、92bは、これらの鏡面がそれぞれICカード93aの下面、ICカード93eの上面に接するように重ねる。
被加工物としての上記各ICカードは、図2に示すように表面のオーバシート106と裏面のオーバシート107との間に、ICモジュール108が貫通孔109aに挿入されるコアシート109とインナシート110を挟んだ状態で重ね合わせられて構成される。これらのシートは、プレス装置による加熱・加圧成形前はまだ互いに溶着されていない。なお、上記各シートはPET(ポリエチレンテレフタート)製であるが、もちろんPETに限る必要はない。
【0008】
図1に戻って、61と62とは、ベルトコンベア(搬送装置)の第1ベルト(第1搬送要素)と第2ベルト(第2搬送要素)であり、幅方向に離間されている。 一方、下側片鏡面板92aは、この幅が搬送装置の上記第1ベルト61と第2ベルト62間の隙間長さより大きくベルト61、62の外側端まで来るように設定してある。したがって、下側片鏡面板92aは、その両側にそれぞれ設けた支持部92aA、92aBを両ベルト61、62に載せて、これらの支持部92a、92b間の上部に重ね置いたICカード93a〜93eや両鏡面板94a〜94d等を支持可能である。
下側クッション紙91aは、この幅が被加工物であるICカード93a〜93eの幅より若干大きく設定され、下側片鏡面板92aの下面に固着される。また下側クッション紙91aが上記両ベルト61、62間に位置することができるように、両ベルト61、62の間隔を下側クッション紙91aの幅より大きく広げてある。この結果、下側クッション紙91aの幅長さは、上記両ベルト61、62間の隙間長さよりも短くなる。
上記片鏡面板92a、92b、クッション紙91a、91b、両鏡面板94a〜94d、ICカード93a〜93eは、それぞれ上記のように重ね合わされて被加工物仕組み体96を構成する。
【0009】
上記のような被加工物仕組み体96は、以下に説明するプレス装置システムにより成形される。
まず、プレス装置システムの全体を図3に示す。同図において、被加工物仕組み体の流れ順に装置類を説明していくと、1は被加工物仕組み体を最初にセットする挿入セットコンベアであり、この後流に挿入バッファコンベア2を設置する。この挿入バッファコンベアの後にはプレス内コンベア3を設置して、このプレス内コンベアをホットプレス装置4、コールドプレス装置5内をそれぞれ貫通させ、これらのプレス装置で順次成形加工できるようにしている。
ホットプレス装置4,コールドプレス装置5には、それぞれパイプ86、87、88、89を介してホットプレス用加熱冷却ユニット6、コールドプレス用加熱冷却ユニット7を接続し、それぞれ高温油、低温油を循環供給可能にする。プレス内コンベア3の下流には搬出クロスコンベア10を設けることで、被加工物仕組み体をプレス内コンベア3から受け入れた後90度方向変換し、これに続く搬出横送りコンベア11に受け渡す。この搬出横送りコンベア11の下流には被加工物仕組み体の移動方向を再度90度変える回流クロスコンベア12を設置し、この後、回流コンベア13を介してクロスコンベア14へと受け渡し、ここで90度方向変換させて操作者の方へ向ける。クロスコンベア14は、操作者の手前にあるコンベア15へと続く。
なお、挿入バッファコンベア2での被加工物仕組み体の受け入れ位置からホットプレス装置4での成形位置までのピッチL1と、このホットプレス装置の成形位置からコールドプレス装置5の成形位置までのピッチL2とは同一に設定しておく。
【0010】
次に、図4に基づき、ホットプレス装置4の詳細につき説明する。
ホットプレス装置4は、幅方向に離間配置した両支柱16a、16b間の上下をアーチ17、ベース18によりそれぞれ連結して構成したフレーム19を有する。このアーチ17には上方位置からみて方形位置にそれぞれシリンダ20、21、22、23を合計4本固定配置する。これらのシリンダ内にはねじ軸24、25、26、27を貫通させ、ねじ軸の外周面とシリンダ20〜23内に配置した固定シリンダ20a〜23aの内周面とに螺旋のボール溝を形成してボールを介在させて、ボールねじを構成することでねじ軸がシリンダ20〜23に対し回転しながら上下動可能とする。ねじ軸24〜27は、これらの上方部分を軸受で上台28に支持するとともに、その上端部分に歯付きベルト車29、30、31、33を連結する。各ベルト車29〜33は歯付きベルト34にかみ合わせる。上記ベルト車29〜33のうちの1個を上台28に取り付けた電気モータ35にて回転駆動可能とし、このベルト車を回転駆動することによりベルト34を介して全ベルト車、したがってねじ軸24〜27を同じ回転方向・同じ回転量だけ同時駆動するようにしている。なお、電気モータ35にはエンコーダ103を取り付けてある。ねじ軸24〜27の下側部分は、上方定盤としての可動定盤36に軸受で回転可能かつ軸方向一体に取り付ける。
可動定盤36の下方には断熱材37を介して熱盤38を取り付けて、この熱盤にパイプ86を介してホットプレス用加熱冷却システム6から温度調節した高温油を循環供給可能とする。ベース18側には下方定盤としての固定定盤39を配置し、この上方に断熱材40を介して熱盤41を取り付け、この熱盤にパイプ86を介して同じくホットプレス用加熱冷却システム6から温度調節した高温油を循環供給可能とする。これらの熱盤38、41の表面には、セラミックコーティングを施してある。
【0011】
上記固定定盤39には、被加工物を上下動可能にするリフタ42を設ける。このリフタ42は、図5(a)、(b)に拡大して示すように被加工物を支持する2枚の昇降プレート43、44を有し、この中央部分からそれぞれ下方に伸ばしたラック45、46にピニオン47、48をかみ合わせる。これら両ピニオン47、48は、固定定盤39を貫通するシャフト50の両端に取り付け、一方のピニオン46をロータリアクチュエータ49で駆動制御することで昇降プレート43、44の上下動を可能とする。このロータリアクチュエータ49は、コントローラ104にて制御する。昇降プレート同士43、44の離間幅を熱盤38、41より大きく設定するとともに、それぞれの昇降プレート43、44の前後端に上方に突出する突出部43a、43b、44a、44bを形成する。昇降プレート43、44は、これらの突出部間43a〜43b、44a〜44bの溝部43c、44にて被加工物仕組み体96の下側片鏡面板92aの両側部に設けた支持部92aA、92aBを支持可能である。
なお、被加工物仕組み体96の下側クッション91aの幅を、熱盤41とほぼ同じ幅長さにし、下側クッション91aとベルト61、62間に幅方向の間隙を設ける。下側クッション紙91aは、ベルト61、62や間隙内に配置したリフタの昇降プレート43、44に干渉して下側鏡面板92aから剥離しないようにしている。
【0012】
図4に戻って、可動定盤36、固定定盤39側のベース18には、それぞれ遮蔽壁55、56を設けてこれらの下端開口縁、上端開口縁にシール58、59を取り付け、可動定盤36が固定定盤39に所定距離まで近づくと遮蔽壁55、56のシール58、59同士が圧接して遮蔽壁55、56内をこの室外から遮断することにより空気の出入りを不能とする。この遮蔽壁55、56内は、エアホース60に連結してあり、密閉した遮蔽壁内の空気を真空ユニット105にて吸引し脱気することが可能である。なお、遮蔽壁55、56の大きさは、リフタ42の昇降プレート43、44や熱盤38、39を収納でき、かつプレス内コンベア3のベルト位置が後述する拡幅する待機位置にあるとき両ベルト61、62間に収まるように設定してある。
【0013】
また、固定定盤39は、この下面の前後方向2カ所でベース18に設けたピン101、102にて位置決めするとともに、下面の4カ所とベース18との間にロードセル97、98、99、100を配置し、これらのロードセルが受ける荷重を検出する。これらの検出信号はコントローラ104に入力する。
【0014】
コールドプレス装置5の構成は、図6に示すように基本的にはホットプレス装置4とほぼ同じである。ホットプレス装置4と構成上異なるのは、コールドプレス装置5では真空室が不要なので遮蔽壁およびシールを備えていない点、また熱盤の代わりに冷却盤8、9を用いこれをパイプ87を介してコールドプレス用の加熱冷却ユニット7に接続して低い温度の油を供給する点である。他は、ホットプレス装置と実質的に同一なので、その説明を省略する。なお、図6ではホットプレス装置に実質的に対応する構成要素にはこれと同一の番号の後にAを付けて示してある。
【0015】
上記プレス装置システムに使われている搬送装置としてのコンベアは通常のベルトコンベアであるのでその詳細な説明を省略する。ただプレス内コンベアは、本願の被加工物仕組み体との関係で重要なので、図7〜図9に基づき説明する。図7はコンベアを上方から見た図、図8はこのコンベアに設けた上流側のリンク機構、図9は同じくこのコンベアに設けた下流側のリンク機構をそれぞれ示す。同図において、61と62は、幅方向に離間されて被加工物仕組み体を上に載せて搬送する第1ベルト(第1搬送要素)、第2ベルト(第2搬送要素)であり、それぞれコンベアの前後方向両端に設けたプーリ63、64、65、66に巻き掛けしてある。これらプーリのうち下流側のプーリ64、66同士はシャフト67で連結し、サーボ68にて回転・停止制御する。
またプーリの各支持部材69、70、71、72は、それぞれコンベアフレーム73に対し幅方向にスライド可能であり、リンク機構74,75により幅方向へ移動可能である。すなわち、下流側のリンク機構75にあっては、図9に示すように幅方向に位置する一方の支持部材70が、この下端部に回動可能に一端部をジョイント結合したロッド76、このロッドの他端部がジョイント結合する回転リンク77、この回転リンクに一端部がジョイント結合したロッド78を介して他方の支持部材72に連結される。上記回転リンク77は、図7に示すようにコンベアフレーム73にベルト方向に沿って配置、かつ軸支したシャフト79の下流端に連結する。このシャフト79の上流端は、ロータリアクチュエータ80により駆動される。このロータリアクチュエータの上流側にもシャフト79と同軸位置の別のシャフト81を配置して、このシャフト81の下流側端にクランク82を介して上記ロータリアクチュエータ80を連結する。したがって、ロータリアクチュエータ80は、シャフト79とともにシャフト81も回転駆動し、リンク機構74を介して上流側支持部材69、71をスライド可能である。この上流側のリンク機構74の構成も、図8に示すように上記下流側のリンク機構75と同様に一方の支持部材69側のロッド83、回転リンク84、他方の支持部材71側のロッド85にて構成する。
この結果、ロータリアクチュエータ80の回転駆動によりシャフト79、81、回転リンク77、84、各ロッド76、78、83、85を介して各支持部材69〜72を幅方向へ移動させ、両ベルト61、62の間幅を狭くした搬送位置(図8(b)に、また図4、図6に実線にて示す)と、広くした待機位置(図8(a)に、また図4、図6に点線にて示す)と変更できる。このベルト間のすきま幅は、狭くした搬送位置ではリフタ42の昇降プレート43、44がベルト61、62間にあって上下動可能な幅に、また広くした待機位置ではホットプレス装置4の可動定盤36が降下してきたとき遮蔽壁56、57が入ることができる大きさに設定する。なお、上記リンク機構74、75やロータリアクチュエータ80等は、ベルトの移動機構を構成する。
【0016】
上記プレス成形システムによる被加工物の成形工程につき、以下に説明する。まず、操作者は図外の操作制御盤を操作してシステム稼働の状態にする。次いで、図1に示す被加工物仕組み体96を、図3に示す挿入セットクロスコンベア1に載せる。このとき、下側片鏡面板92aの両側に設けた支持部92aA、92aBを第1ベルト61と第2ベルト62に載せる。この状態では下側クッション紙91aが第1ベルト61と第2ベルト62間に入り、上記支持部92aA、92aBがおれら間の上方に置いた被加工物仕組み体96を支持する。
被加工物仕組み体96は、両ベルト61、62で移動され挿入バッファコンベア2へ受け渡される。プレス内コンベア3は、挿入バッファコンベア2の受け渡し位置からベルト61、62でピッチL1だけ移動してホットプレス装置4の固定定盤39上でに停止させる。この間、プレス内コンベア3のベルト61、62は、これらの隙間幅が最小となる搬送位置にある。
【0017】
この後、リフタ42を上昇させ被加工物仕組み体を第1、第2ベルト61、62から持ち上げる。すなわち、ロータリアクチュエータ49によりピニオン47、48を回転させ、これらとかみ合うラック45、46によりこれらと一体の昇降プレート43、44を下側クッション紙91aとベルト61、62との隙間から上昇させるが、このときリフタの昇降プレート43、44の溝部43c、44cにて被加工物仕組み体96の下側片鏡面板91aの両支持部91aA、91aBを支え、ベルト61、62よりも所定量高い位置まで上昇してその位置を保持する。リフタへ42による被加工物仕組み体の受け取り後、プレス内コンベア3のロータリアクチュエータ80を作動させ、回転リンク77、83を回転してロッド76、78、82、84の押し引きにより支持部材69、71と支持部材70、72とを離間させてベルト61、62の間幅を広げて待機位置に移動する。この結果、ベルト61、62の隙間幅は、遮蔽壁56、57が収納可能な大きさとなる。
【0018】
この状態でコントローラ104にて電気モータ35を回転させると、歯付きベルト34により4つのベルト車29〜33が同じ回転方向、同じ回転量だけ回転する。このベルト車の回転により、これらと一体のねじ軸24〜27も回転しボールねじ55により上台28、電気モータ35ともども下方へ移動していく。ねじ軸24〜27の下降にしたがって、これに軸受で連結した可動定盤36も下降していき、遮蔽壁56を遮蔽壁57に押しつけ、これら間のシール58、59を圧着する。この密閉後、遮蔽壁内の空気を真空ユニット105でエアホース60を介して吸引し始め、被加工物仕組み体96内の隙間等に存在する空気を抜き取る。
【0019】
一方、上記可動定盤36の下降に伴ってリフタ42も、ロータリアクチュエータ49によりピニオン47、48、ラック45、46を介して下降していく。このリフタ42の下降は、下降中、被加工物仕組み体96および可動定盤36側の熱盤38間の隙間と、被加工物仕組み体96および固定定盤39側の熱盤41間の隙間とがほぼ等しくなるように制御する。この結果、被加工物仕組み体96の上下面が両熱盤38、41から受ける熱がほぼ同じになる。また、この下降中、熱盤38、41の表面がセラミックコーティングされているので、遠赤外線による輻射熱で被加工物仕組み体96が熱盤38、41と接触する前から徐々に全体が加熱されていく。この結果、被加工物が局所的に高温となってひずみが生じるといった不具合を回避しながら、被加工物を短時間で加熱できる。
下降の最終段階では、可動定盤36側の熱盤38と固定定盤39側の熱盤41とが被加工物仕組み体96の上下面に同時に接触する。熱盤38、41を80℃(結晶化付近温度)から140℃(成形温度)まで温度上昇し、この成形温度を所定時間保つとともに、被加工物仕組み体がほぼ成形温度になるまでは上記熱盤で押しつける力を0.1〜0.2Kgといったタッチ圧に保ち、被加工物仕組み体が成形温度になったら20トンといった高圧を作用させるようにしたホットプレスのプレスサイクルを実行し、被加工物仕組み体を加熱・圧縮して成形する。このときの圧縮は、エンコーダ103で位置を検出することにより被加工物仕組み体の厚み制御を行うとともに、ロードセル97〜100によりプレスの全荷重を検出して荷重制御を行う。すなわち、これらプレス全荷重とモータ回転位置の検出値にしたがって、コントローラ104が電気モータ35を目標値になるように制御する。
【0020】
上記成形温度が所定時間経過したら熱盤温度を結晶化温度まで下げていきホットプレス工程を終了し、可動定盤36とリフタ42を上記下降制御とは逆に上昇させる。すなわち、電気モータ35で可動定盤36を上昇させ、ロータリアクチュエータ49を駆動させて被加工物仕組み体96をリフタ42で持ち上げ所定位置で停止させる。この上昇後、サーボ68を駆動してリンク機構74、75により第1、第2ベルト61、62の間隔を搬送位置まで狭め、これらのベルトを被加工物仕組み体96の下方に位置させる。次いでリフタ42を下降させてベルト61、62上へホットプレスした被加工物仕組み体96を受け渡す。
【0021】
上記受け渡しが終了したら、プレス内コンベア3のベルト61、62を回転駆動する。このベルト搬送により、上記ホットプレスが終了した被加工物仕組み体96をコールドプレス装置5の固定定盤39A上(コールドプレス位置)まで移動すると同時に、上流側の挿入バッファコンベア2に待機していたホットプレス予定の次の被加工物仕組み体をホットプレス装置4の固定定盤39上(ホットプレス位置)まで移動させる。これらの両移動が同期した同一ピッチL1、L2にて実行されることは前述のとおりである。この移動後、ホットプレス装置4は上記で説明した作動を再度繰り返し続ける。
一方、コールドプレス装置5も、ベルト61、62の待機位置での拡幅後、ホットプレス装置と同様にリフタ42Aが上記ホットプレス済みの被加工物仕組み体を持ち上げ、続いて可動定盤36Aとリフタ42Aが稼働定盤36A側の冷却盤8および被加工物仕組み体間の隙間と、固定定盤39A側の冷却盤9および被加工物仕組み体間の隙間とがほぼ等しくなるように、その位置と速度の制御をしながら下降する。ただし、コールドプレス装置においては、遮蔽壁による密閉、真空引きは行われない。可動定盤36Aと固定定盤39Aとの冷却盤8、9同士が被加工物仕組み体に接すると、冷却盤9の温度を受け取り時に80℃(結晶化温度)としておき、徐々に20℃まで冷却していくとともに25トンで加圧するコールドプレスのプレスサイクルを実行し、被加工物仕組み体を冷却・圧縮する。
上記ホットプレス工程とコールドプレス工程とは、タンデム配置したホットプレス装置4とコールドプレス装置5とで、同じサイクルかつ同期して次々と実行される。
これらのプレスが終了したら、両プレス装置4、5の可動定盤36、36Aとリフタ42、42Aが上昇し、第1、第2ベルト61、62が幅を狭めた搬送位置へ移動した後、リフタ42、42Aが下降してコールドプレス済みの被加工物仕組み体とこれに続くホットプレス済みの被加工物仕組み体をベルト61、62へ受け渡す。続いて前者を搬出クロスコンベア10へ、また後者をコールドプレス位置へ、また新しい被加工物仕組み体を搬入バッファコンベア2からホットプレス位置へと同時に移動させる。
以後、これらの工程が繰り返される。
【0022】
なお、上記被加工物仕組み体では、上側片鏡面板92bの幅を、下側鏡面板92aの幅と同じにして上下片鏡面板の互換性を持たせるようにしているが、これに限る必要はなく、より狭く熱盤38の幅と同等としてもよい。これら上下側片鏡面板92a、92bの厚さは、同等とし上下方向からの熱供給を等しくするが、支持剛性を確保した上でできるだけ薄くして熱伝達時間を短くして生産速度を向上させるようにするのが望ましい。また、両鏡面板94a〜94dの幅も下側片鏡面板92aの幅より狭くすることも可能である。
【0023】
以上のように、上記本願実施態様である被加工物仕組み体及びその成形方法にあっては、従来のトレイやトッププレートを必要とすることなく、被加工物仕組み体を搬送、成形できる。また、下側クッション紙がベルト等の搬送要素間に位置するので、プレス被加工仕組み体を安定して搬送できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施態様としての被加工物仕組み体を示す図である。
【図2】被加工物としての溶着前のICカードを示す図である。
【図3】プレス装置システム全体を示す図である。
【図4】プレス装置システムのホットプレス装置を示す図である。
【図5】(a)、(b)とも図4のホットプレス装置のリフタを拡大して示す図であり、(a)はリフタの側面図、(b)はリフタの正面図である。
【図6】プレス装置システムのコールドプレス装置を示す図である。
【図7】プレス装置システムの搬入装置としてのコンベアを上方からみた図である。
【図8】図7のコンベアに設けた上流側のリンク機構を示す図である。(a)は待機位置の状態、(b)は搬送位置の状態を示す。
【図9】図7のコンベアに設けた下流側のリンク機構を示す図である。
【図10】従来の被加工物仕組み体を示す図である。
【符号の説明】
3 プレス内コンベア
4 ホットプレス装置
5 コールドプレス装置
6 ホットプレス用加熱冷却システム
7 コールドプレス用加熱冷却システム
8、9 冷却盤(熱調整盤)
19、19A フレーム
35、35A 電気モータ
36、36A 可動定盤(上方定盤)
38、41 熱盤(熱調整盤)
39、39A 固定定盤(下方定盤)
42、42A リフタ
43、43A、44、44A 昇降プレート
45、45A、46、46A ラック
47、47A、48、48A ピニオン
49、49A ロータリアクチュエータ
61 第1ベルト(第1搬送要素)
62 第2ベルト(第2搬送要素)
74、75 リンク機構(移動機構)
80 ロータリアクチュエータ(移動機構)
91a 下側クッション紙(下側クッション)
91b 上側クッション紙(上側クッション)
92a 下側片鏡面板
92aA、92aB 支持部
92b 上側片鏡面板
93a〜93e ICカード(被加工物)
94a〜94d 両鏡面板
96 被加工物仕組み体
97〜100 ロードセル
103 エンコーダ
104 コントローラ
106 オーバシート
107 オーバシート
108 ICモジュール
109 コアシート
110 インナシート

Claims (4)

  1. 上下方向に複数個の被加工物を、該被加工物間に両鏡面鏡板を介在させて積み重ね、この積み重ねの最下位に位置する前記被加工物を下側片鏡面板の上面に載せ、前記積み重ねの最上位に位置する被加工物の上に上側片鏡面板を載せ、前記下側片鏡面板の下面に下側クッションを配置し、前記上側片鏡面板の上面に上側クッションを配置した被加工物仕組み体を、前記下側クッションを搬送装置の幅方向へ離間して設けた第1搬送要素と第2搬送要素と間の隙間に入れた状態で前記下側片鏡面板の両側部をそれぞれ前記第1搬送要素と前記第2搬送要素とに載せて支持することでプレス装置へ搬入し、該プレス装置にて前記被加工物仕組み体を加熱・加圧して前記被加工物を成形した後、前記第1搬送要素と前記第2搬送要素とで前記プレス装置から搬出するようにしたこと、を特徴とする被加工物仕組み体の成形方法。
  2. 前記プレス装置は、上流側に配置され前記被加工物仕組み体を徐々に加熱していき成形温度で加熱加圧した後、前記被加工物の結晶化温度付近まで除冷加圧していくホットプレス装置と、該ホットプレス装置の下流側に配置されて前記ホットプレス装置から搬送された被加工物仕組み体を結晶化付近の温度から冷却しながら加圧していくコールドプレス装置とを備えること、を特徴とする請求項1に記載の被加工物仕組み体の成形方法。
  3. 前記下側片鏡面板はこの幅が前記両搬送要素間の隙間長さより大きく設定されるとともに、前記下側クッションはこの幅が前記両搬送要素間の隙間より小さく設定されて前記下側片鏡面板の下側に固着されていること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の被加工物仕組み体の成形方法。
  4. 前記被加工物は、内部にICモジュールを配置した複数のシートを重ねて成形するプラスティック製のICカードであること、を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の被加工物仕組み体の成形方法。
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