JP4413276B2 - 蓄電デバイス用電極活物質、蓄電デバイスならびに電子機器および輸送機器 - Google Patents

蓄電デバイス用電極活物質、蓄電デバイスならびに電子機器および輸送機器 Download PDF

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Description

本発明は、蓄電デバイス用電極活物質、蓄電デバイスならびに電子機器および輸送機器に関する。さらに詳しくは、本発明は主に、蓄電デバイス用電極活物質の改良に関する。
近年、電子技術の進歩に伴い、携帯電話、携帯型パーソナルコンピュータ、携帯情報端末(PDA、Personal Data Assistance)、携帯型ゲーム機などの携帯型電子機器が急速に普及している。それに伴い、携帯型電子機器の電源として、繰り返し充放電可能な二次電池などの蓄電デバイスの需要が増大している。これらのなかでも、リチウムイオン二次電池は、起電力およびエネルギー密度が高く、小型化への対応が比較的容易なことから、携帯型電子機器の電源として広範囲に用いられている。
携帯型電子機器の汎用化のため、携帯型電子機器に対しては、軽量化、小型化、多機能化などの性能向上が要求されている。そして、このような携帯型電子機器の電源として用いられる電池に対しては、例えば、高エネルギー密度化が要望されている。電池の高エネルギー密度化には、エネルギー密度の高い電極活物質を用いる手法が有力である。したがって、正極活物質および負極活物質の両方において、エネルギー密度の高い新規な材料について研究開発が積極的に行われている。
例えば、酸化還元反応を可逆的に起こすことが可能な有機化合物を電極活物質に利用することが検討されている。有機化合物は比重が1g/cm3程度であり、従来から電極活物質として用いられているコバルト酸リチウムなどの無機酸化物よりも軽量である。したがって、電極活物質として有機化合物を用いることにより、重量エネルギー密度の高い蓄電デバイスが得られると考えられている。また、電極活物質として重金属を用いないため、希少金属資源の枯渇や、それによる資源価格の変動リスク、重金属の漏出による環境汚染などのリスクを軽減することも可能である。
有機化合物を電極活物質に用いる研究開発の一例として、電解質が水溶液系の場合において、電極活物質にキノン系有機化合物を用いることが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。キノン系有機化合物は、一般に、芳香環と、芳香環に結合する2つのケトン部位(C=O)とを有する化合物およびその誘導体のことをいう。
特許文献1では、芳香環のパラ位に2つのケトン部位(C=O)が導入された有機化合物(以下「パラキノン化合物」とする)や、芳香環のオルト位に2つのケトン部位が導入された有機化合物(以下、「オルトキノン化合物」とする)を、水溶液系二次電池の電極活物質に利用することが提案されている。特許文献2および3では、パラキノン化合物を高分子化したポリマーを水溶液系二次電池の電極活物質として利用することが提案されている。
特許文献1〜3の二次電池における充放電反応は、ケトン部位(C=O)へのプロトンの付加(C−OH)および脱離により行われる。これらの特許文献には、キノン系有機化合物を電極活物質として用いることにより、可逆性すなわち充放電サイクル特性に優れた二次電池が得られると記載されている。しかしながら、これら水溶液系の二次電池は、一般に電池電圧が1〜2V程度と低く、電池電圧が3〜4V程度のリチウムイオン二次電池には及ばないため、リチウムイオン二次電池並みのエネルギー密度の高い蓄電デバイスを得ることは困難である。
水溶液系二次電池よりも高いエネルギー密度が期待される、非水系蓄電デバイスにおいても、電極活物質にキノン系有機化合物を用いることが検討されている。例えば、リチウム塩を溶解させた有機溶媒を電解質として用いる蓄電デバイスの電極活物質にキノン系有機化合物を用いることが提案されている(例えば、特許文献4および5参照)。特許文献4では、オルトキノン化合物の1種である9,10−フェナントレンキノンを電極活物質として用いている。特許文献5では、パラキノン化合物を高分子化した材料を電極活物質として用いている。
また、ロジソン酸塩、ルフィ没食子酸塩及びその酸化化合物、エラグ酸及びその酸化化合物などの、芳香環のオルト位またはパラ位にキノン部位を有するキノン系有機化合物を、リチウムイオン二次電池の電極活物質として用いることが提案されている(たとえば、特許文献6参照)。
しかしながら、キノン系有機化合物を用いる従来の非水系蓄電デバイスでは、コバルト酸リチウムなどの無機酸化物を用いた従来の蓄電デバイスと比較して、可逆性が十分に得られず、放電電圧が低いため、実用化するのは困難である。
特開平4−87258号公報 特開平11−126610号公報 特開2000−40527号公報 特開昭56−86466号公報 特開平10−154512号公報 特表2001−512526号公報
本発明の目的は、重量エネルギー密度が高く、酸化還元反応の可逆性に優れた電極活物質、該電極活物質を含み、高容量および高電圧を有し、充放電サイクル特性に優れた蓄電デバイスならびに該蓄電デバイスを含む電子機器および輸送機器を提供することである。
本発明は、分子内に5員環または7員環である環構造を含み、前記環構造を形成する原子のうち、連続して存在する少なくとも3つの原子にケトン基が結合しているケトン化合物からなる蓄電デバイス用電極活物質に係る。
ケトン化合物は、下記一般式(1)で表される構造を有することが好ましい。
一般式(1):
Figure 0004413276
(式(1)中、Xは、炭素原子数2または4の飽和炭化水素または不飽和炭化水素の2価残基を示す。前記飽和炭化水素および不飽和炭化水素の2価残基は、置換基として、フッ素原子、シアノ基、飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基を有していてもよい。前記飽和炭化水素基および前記不飽和炭化水素基は、フッ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子および珪素原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含んでいてもよい。或いは、前記飽和炭化水素および不飽和炭化水素の2価残基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子および珪素原子よりなる群から選ばれる少なくとも1つの原子を含む置換基を有していてもよい。)
以下において、一般式(1)で表されるケトン化合物を、トリケトン化合物(1)とする。
また、別形態のケトン化合物は、下記一般式(2)で表わされる構造を有することが好ましい。
一般式(2):
Figure 0004413276
(式(2)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、不飽和脂肪族基または飽和脂肪族基を示す。前記不飽和脂肪族基および前記飽和脂肪族基は、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子または珪素原子を含んでもよい。前記不飽和脂肪族基および前記飽和脂肪族基は直鎖状でもよく、環状でもよい。或いは、R1およびR2には互いに結合して環を形成していてもよい。R1とR2とが互いに結合して形成される環には、フッ素原子、シアノ基、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数2〜4のアルケニル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルケニル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれる置換基が置換していてもよく、前記置換基はフッ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、および珪素原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含んでいてもよい。)
以下において、一般式(2)で表されるケトン化合物を、トリケトン化合物(2)とする。
また、ケトン化合物(2)の中でも、下記一般式(2A)で表わされる構造を有するトリケトン化合物がさらに好ましい。
一般式(2A):
Figure 0004413276
(式(2)中、R3〜R6は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数2〜4のアルケニル基、炭素原子数2〜4のアルキニル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルケニル基、アリール基またはアラルキル基を示す。R3〜R6で示される前記各基は、フッ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、および珪素原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含んでいてもよい。)
以下において、一般式(2A)で表されるケトン化合物を、トリケトン化合物(2A)とする。
さらに別形態のケトン化合物は、下記一般式(3)で表される構造を有することが好ましい。
一般式(3):
Figure 0004413276
(式(3)中、R7〜R10は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数2〜4のアルケニル基、炭素原子数2〜4のアルキニル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルケニル基、アリール基またはアラルキル基を示す。R7〜R10で示される前記各基は、フッ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子および珪素原子よりなる群から選ばれる少なくとも1つの原子を含んでもよい。)
以下において、一般式(3)で表されるケトン化合物を、トリケトン化合物(3A)とする。
ケトン化合物は、一般式(1)で表される構造を分子内に複数有していることが好ましい。
ケトン化合物は、一般式(1)で表される構造を分子内に複数有しており、かつ複数の一般式(1)で表される構造が芳香環を介して結合していることがさらに好ましい。
芳香環は、ベンゼン、ベンゼン誘導体、チオフェン、ナフタレン、ナフタレン誘導体、アントラセン、アントラセン誘導体、ピリジン、フルオレン、およびフルオレン誘導体よりなる群から選択される少なくとも1つの芳香族化合物に由来する芳香環であることが好ましい。
ケトン化合物は還元体のリチウム塩であることが好ましい。
また本発明は、正極、負極および電解質を備え、前記正極および負極の少なくとも一方が、本発明の蓄電デバイス用電極活物質を含む蓄電デバイスに係る。
本発明の蓄電デバイスにおいて、正極は正極活物質として本発明の蓄電デバイス用電極活物質を含み、負極はリチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質を含み、かつ電解質はリチウムカチオンとアニオンとからなる塩を含むことが好ましい。
また、本発明は、本発明の蓄電デバイスを含む電子機器に係る。
また、本発明は、本発明の蓄電デバイスを含む輸送機器に係る。
本発明によれば、反応電子数が大きく、エネルギー密度が高く、酸化還元反応の可逆性に優れた蓄電デバイス用電極活物質を提供することができる。また、この電極活物質用いることにより、高容量および高電圧を有し、充放電サイクル特性に優れた蓄電デバイスを提供することができる。
また、本発明の蓄電デバイス用電極活物質は、重金属を含まないため、希少金属資源の枯渇による資源価格の変動リスクや、重金属の漏洩などの環境リスクを低減することができる。
本発明の実施形態の1つである携帯電話の構成を模式的に示す斜視図である。 本発明の実施形態の1つであるノートブック型パーソナルコンピュータの構成を模式的に示す斜視図である。 本発明の実施形態の1つであるハイブリッド電気自動車の構成を模式的に示すブロック図である。 本発明の実施形態の1つである蓄電デバイスの構成を模式的に示す縦断面図である。 実施例1の蓄電デバイスのサイクリックボルタモグラムである。 実施例2の蓄電デバイスのサイクリックボルタモグラムである。 比較例1の蓄電デバイスのサイクリックボルタモグラムである。 比較例2の蓄電デバイスのサイクリックボルタモグラムである。 本発明の実施形態の1つであるコイン型電池の構成を模式的に示す縦断面図である。 実施例4のコイン型電池の充放電カーブである。 実施例6のコイン型電池の充放電カーブである。 実施例9のコイン型電池の充放電カーブである。 実施例10のコイン型電池の充放電カーブである。 実施例12のコイン型電池の充放電カーブである。
本発明者らは、上記課題を解決するための研究過程で、キノン化合物に着目し、その反応機構について鋭意検討を行った。その結果、キノン化合物の分子構造と蓄電デバイス特性に相関があることを見出し、これで得られた知見に基づいて蓄電デバイスの電極活物質として最適な材料を見出した。
まず、パラキノン化合物を用いた場合の反応機構を、以下の反応工程式(I)に基づいて説明する。パラキノン化合物は、酸化還元反応に寄与する部位としてケトン基を有し、ケトン基はマイナス電荷を有する。パラキノン化合物とプラス電荷を有する移動キャリア(以下単に「移動キャリア」とする)との酸化還元反応は、移動キャリアとしてリチウムイオンを用いる場合、下記式(IA)および(IB)に示す2段階反応である。
[反応工程式(I)]
Figure 0004413276
この2段階の反応において、パラキノン化合物のケトン基とリチウムイオンとの結合強度は、ケトン基の電荷密度(マイナス電荷)と、リチウムイオンの電荷密度(プラス電荷)との差によって決まる。つまり、ケトン基とリチウムイオンとの電荷密度の差が大きいほど、パラキノン化合物とリチウムイオンとの結合はより安定かつ強固であり、ケトン基とリチウムイオンとの電荷密度の差が小さいものほど、パラキノン化合物とリチウムイオンとの結合は弱く、解離し易い。
パラキノン化合物は、2つのケトン基が離れて存在し、電荷分布が局在化するため、大きな電荷密度を有し、リチウムイオンとの電荷密度の差も大きい。従って、ケトン基とリチウムイオンとは、酸化反応時に、共有結合のような非常に強固な結合を形成し、エネルギー的に安定な状態となる。このため、還元反応時にケトン基からリチウムイオンは解離し難い。従って、パラキノン化合物を電極活物質に用い、移動キャリアとしてリチウムイオンを用いる場合、反応可逆性が低下しやすい。ここでいう安定な状態とは、電池反応によりリチウムイオンを解離することが難しい強固な結合状態を意味し、電池反応における化合物の安定性を意味するのではない。
また、パラキノン化合物は、2つのケトン基が離れた状態で存在するため、上記の式(IA)および(IB)で表される反応は、それぞれ独立したエネルギーレベルを有する。具体的には、式(IA)に基づく1段階目(1電子)の反応の電位(リチウム基準)は、2〜3Vと高いが、式(IB)に基づく2段階目(2電子)の反応の電位(リチウム基準)は、約1.0V程度と低い。非水系リチウムイオン二次電池において実際に使用される電位範囲は、2〜3V程度(1段階目だけ)であるため、実質的な容量密度は半分である。
次に、オルトキノン化合物を用いた場合の反応機構について、下記反応工程式(II)に基づいて説明する。オルトキノン化合物とリチウムイオンとの酸化還元反応は、下記式(IIA)および(IIB)に示す2段階反応である。
[反応工程式(II)]
Figure 0004413276
オルトキノン化合物は2つのケトン基が隣接して存在し、パラキノン化合物に比べてケトン基の有するマイナスの電荷分布がやや非局在化する。このため、酸化反応時に、ケトン基とリチウムイオンとで形成される結合の強さは、パラキノン化合物の共有結合的な非常に強固な結合の場合と比べて小さい。ケトン基(マイナス電荷)が局在化したパラキノンでは、常に1つのケトン基と1つのリチウムイオンとが1対1で結合する。これに対して、オルトキノン化合物の場合、式(IIA)に示す1段階目(1電子)の反応において、二つのケトン部位と一つのリチウムイオンとが結合し、式(IIB)に示す2段階目(2電子)の反応において、2つのケトン部位にリチウムイオンが1つずつ結合する。
すなわち、ケトン基とリチウムイオンとの結合は、マイナス電荷の局在化したケトン基とリチウムイオンとの1対1の結合ではなく、マイナス電荷の非局在化したケトン基2個と2つのリチウムイオンとの2対2の結合となる。その結果、ケトン基とリチウムイオンとの結合力が緩和される。このように、オルトキノン化合物は、パラキノン化合物と比較して、リチウムイオンとケトン部位との結合力が緩和され、それにより反応可逆性が向上する。
オルトキノン化合物は、2つのケトン基が隣接して存在するため、式(IIA)および(IIB)の反応は比較的近いエネルギーレベルを有する。具体的には、式(IIA)に対応する1段階目(1電子)の反応の電位(リチウム基準)と、式(IIB)に対応する2段階目(2電子)の反応の電位(リチウム基準)は近く、それぞれ2〜3V程度である。
本発明者らは、上記知見に基づいて、酸化還元反応が可能で、リチウムイオンと結合する、マイナス電荷の電荷分布が非局在化された有機化合物であれば、リチウムイオンを移動キャリアに用いても、繰り返し特性に優れた蓄電デバイスを構築できるであろうことに着目し、さらなる研究を進めた。その結果、分子内に5員環または7員環である環構造を含み、前記環が3つのケトン基が連続して結合した構造を含むケトン化合物(以下「トリケトン化合物」とする)が、反応電子数が多く、優れた反応可逆性を有することを見出した。
ここで、トリケトン化合物を用いた場合の反応機構について、下記反応工程式(III)に基づいて説明する。上記トリケトン化合物とリチウムイオンとの酸化還元反応は、下記式(IIIA)および(IIIB)に示す2段階反応である。
[反応工程式(III)]
Figure 0004413276
トリケトン化合物は3つのケトン基が隣接して存在し、パラキノンやオルトキノン化合物に比べてケトン基の有するマイナスの電荷分布が、より非局在化する。このため、酸化反応時にケトン基とリチウムイオンとで形成される結合の強さは、パラキノンやオルトキノン化合物の場合と比べて小さい。
トリケトン化合物は、式(IIIA)に示す1段階目(1電子)の反応では、二つのケトン部位と一つのリチウムイオンとが結合し、式(IIIB)に示す2段階目(2電子)の反応でも、同様に二つのケトン部位と一つのリチウムイオンとが結合する。反応全体では、3つのケトン部位に2つのリチウムイオンが結合する。このように、ケトン部位とリチウムイオンの結合力は大幅に緩和されるため、リチウムイオンを移動キャリアに用いた場合でも、還元反応によりリチウムイオンの解離可能な結合が形成され、反応可逆性が向上する。
また、トリケトン化合物は、3つのケトン基が隣接して存在するため、式(IIIA)および(IIIB)の反応が比較的近いエネルギーレベルを有する。具体的には、1段階目(1電子)の反応の電位(リチウム基準)および2段階目(2電子)の反応の電位(リチウム基準)は、それぞれ2〜3Vと高くなると考えられる。リチウムイオンが移動キャリアとして用いられるため、出力特性に優れた蓄電デバイスが得られる。具体的には、2.0〜3.0V級の高出力電圧を有する蓄電デバイスを得ることが可能になる。
また、トリケトン化合物においては、反応部位である3つのケトン基が非常に近いエネルギーレベルを有する。これは、2電子反応において反応電位がそれぞれ近い値であり、放電電圧が安定し、平均電圧がほとんど低下しないことを意味している。したがって、高エネルギー密度を有し、制御性に優れた蓄電デバイスが得られる。
これに対して、トリケトン化合物が鎖状の分子構造を有する場合、トリケトン化合物とリチウムイオンとの反応は、下記反応工程式(IV)の式(IVA)に示す反応である。
[反応工程式(IV)]
Figure 0004413276
式(IVA)に示すように、分子が鎖状構造を有する場合、静電反発や立体障害などの様々な理由により、3つのケトン基が隣接しない場合が生じる。すなわち、平面構造において、直鎖状骨格の一方の側に、3つの酸素原子が隣接して存在しない場合がある。この場合、パラキノン化合物と同様の理由により、ケトン基(マイナス電荷)が局在化し、反応可逆性が低下する。また、反応電位も低下する。
この点から、電極活物質として用いる場合、トリケトン化合物は、分子が鎖状構造よりも環状構造を有するほうが有利である。
本発明の蓄電デバイス用電極活物質(以下単に「電極活物質」とする)となるケトン化合物は、5員環または7員環である環構造を分子内に含み、該環構造を形成する原子のうち、連続して存在する少なくとも3つの原子にケトン基が結合する構造を含むケトン化合物である。
分子内に環構造を含み、前記環が3つのケトン基が連続して結合する構造では、環構造の酸化還元時の化学的安定性の観点から、5員環または7員環であることが必要である。なぜなら、環構造が6員環である場合は、3つのケトン基が連続して結合する構造は、芳香属性を保つことが出来ず、化学的に安定な化合物を得ることが出来ないからである。
本発明の電極活物質として安定に存在しうるのは、分子内に5員環である環構造を含み、前記環を形成する原子のうち、連続して存在する3個の原子にそれぞれケトン基が結合しているケトン化合物、および、分子内に7員環である環構造を含み、前記環を形成する原子のうち、連続して存在する3個または5個の原子にそれぞれケトン基が結合しているケトン化合物に限定される。
環構造が6員環である場合で、化学的に安定に存在しうるのは、前記環を形成する原子のうち、連続して存在する4個または6個の原子にそれぞれケトン基が結合している場合である。これは、従来技術としてあげた特許文献6に記載されているロジソン酸またはロジソン酸塩に代表される有機化合物である。しかしながら、このような有機化合物では、本発明の電極活物質であるケトン化合物のような、分子内のケトン基(マイナス電荷)の局在化が起こらない。したがって、このような有機化合物は、可逆性に優れ、電圧およびエネルギー密度が高い電極活物質にはなり得ない。
分子内に7員環である環構造を含み、前記環において5つのケトン基が連続して隣接する場合でも、3つのケトン基が隣接する場合と同様に、マイナス電荷が非局在化した2つのケトン部位と1つのリチウムイオンとが結合を形成する。これにより、ケトン部位とリチウムイオンとの結合力が緩和され、ケトン化合物はリチウムイオンと可逆的に酸化還元反応を起こすことができる。
また、複数のケトン部位に基づく各反応は、それぞれ近い電位で起こる。たとえば、5つのケトン基が連続して隣接する場合、ケトン化合物は最大で4つのリチウムイオンと酸化還元可能である。
また、環構造が5員環または7員環であると、合成が容易であり、かつ化学的な安定性に優れるという利点も得られる。環構造が5員環の場合には、前記の利点が一層顕著になる。
上記ケトン化合物を用いることにより、反応電子数が大きく、エネルギー密度が高く、酸化還元反応の可逆性に優れた電極活物質が得られる。また、この電極活物質を用いることにより、高容量および高電圧を有し、充放電繰り返し特性に優れた蓄電デバイスが得られる。また、この電極活物質は、重金属を含まないため、希少金属資源の枯渇による資源価格の変動リスクや、重金属の漏洩などの環境リスクを低減することができる。
本発明の電極活物質に用いられるケトン化合物は、高エネルギー密度を有し、従来から電極活物質として用いられる無機酸化物などに比べ軽量であるため、蓄電デバイスの軽量化が可能である。
本発明の電極活物質に用いられるケトン化合物は、例えば、下記一般式(1)で表される構造を有する。
Figure 0004413276
(式(1)中、Xは前記に同じ。)
式(1)において、Xで示される炭素原子数2または4の飽和炭化水素の2価残基としては、たとえば、エチレン基、テトラメチレン基などのアルキレン基が挙げられる。また、炭素原子数2または4の不飽和炭化水素の2価残基としては、ビニリデン基、ブテニレン基などのアルケニレン基、エチニレン基、2−ブチニレン基、1−ブチニレン基、3−ブチニレン基などのアルキニレン基などが挙げられる。
式(1)において、符号Xで示される飽和炭化水素の2価残基および不飽和炭化水素の2価残基が有しても良い置換基のうち、飽和炭化水素基としては、アルキル基およびシクロアルキル基が挙げられる。また、不飽和炭化水素基としては、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルケニル基、アリール基およびアラルキル基が挙げられる。
アルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などの、炭素原子数1〜4の直鎖状または分岐鎖状アルキル基が挙げられる。
シクロアルキル基としては、たとえば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの炭素原子数3〜6のシクロアルキル基が挙げられる。
アルケニル基としては、たとえば、ビニル、1−プロペニル、1−メチル−1−プロぺニル、2−メチル−1−プロペニル、2−プロペニル、2−ブテニル、1−ブテニル、3−ブテニルなどの、炭素原子数2〜4の、二重結合を1〜3個有する直鎖または分枝鎖状アルケニル基が挙げられる。
アルキニル基としては、たとえば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−メチル−2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基などの、炭素原子数2〜4の直鎖状または分岐鎖状アルキニル基を挙げることができる。
シクロアルケニル基としては、たとえば、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などの炭素原子数3〜6のシクロアルケニル基が挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などの炭素原子数6〜20のアリール基が挙げられる。これらの中でも、フェニル基、ナフチル基などが好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
アラルキル基(アリールアルキル基)としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、1−フェニルプロピル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基、1−フェニル−1−メチルエチル基、1−メチル−2−フェニルエチル基などの、炭素原子数が7〜9でありかつアルキル部分が炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖状のアルキルであるアラルアルキル基が挙げられる。
符号Xで示される飽和炭化水素の2価残基および不飽和炭化水素の2価残基が有しても良い置換基のうち、飽和炭化水素基および不飽和炭化水素基は、フッ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子および珪素原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含んでいてもよい。具体的には、飽和炭化水素基および不飽和炭化水素基には、フッ素原子が置換していてもよい。また、飽和炭化水素基および不飽和炭化水素基には、窒素原子、酸素原子、硫黄原子および珪素原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含む置換基が置換していてもよい。
符号Xで示される飽和炭化水素の2価残基および不飽和炭化水素の2価残基には、フッ素原子、シアノ基、飽和炭化水素基および不飽和炭化水素基よりなる群から選ばれる1または2以上の基が置換していてもよい。前記2価残基に置換する基が、飽和炭化水素基および/または不飽和炭化水素基であり、置換する基の数が2個である場合、2個の基は互いに結合して環を形成してもよい。
窒素原子を含む置換基としては、たとえば、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミノ基、シアノ基などが挙げられる。酸素原子を含む置換基としては、たとえば、水酸基、オキソ基、カルボキシル基などが挙げられる。硫黄原子を含む置換基としては、たとえば、アルキルチオ基、スルホ基、スルフィノ基、スルフェノ基、メルカプト基などが挙げられる。珪素原子を含む置換基としては、たとえば、シリル基などが挙げられる。
また、式(1)において、符号Xで示される飽和炭化水素の2価残基および不飽和炭化水素の2価残基には、フッ素原子、シアノ基、飽和炭化水素基および不飽和炭化水素基以外に、別の基が置換していてもよい。別の基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子および珪素原子よりなる群から選ばれる少なくとも1つの原子を含む置換基が挙げられる。より具体的には、上記した窒素原子を含む置換基、酸素原子を含む置換基、硫黄原子を含む置換基および珪素原子を含む置換基と同じものが挙げられる。
炭素原子数2または4の飽和炭化水素または不飽和炭化水素の両端と、連続した3つのケトン基の両端とがそれぞれ結合することにより、5または7員環の分子構造を有するトリケトン化合物(1)が形成される。
符号Xが、炭素原子数2または4の飽和炭化水素の2価残基または不飽和炭化水素の2価残基であることにより、5または7員環の分子構造が得られる。このような分子構造を有するトリケトン化合物(1)は、合成が容易であり、化学的に安定である。
すなわち、合成の容易性の観点から、5または7員環の分子構造を有するトリケトン化合物(1)が好ましく、また化学的安定性の観点から、5または7員の芳香環を含むトリケトン化合物(1)であることが好ましい。
また、活物質重量あたりのエネルギー密度を高く保つためには、反応部位である連続したケトン部位以外の分子量は極力小さいことが望ましい。従って、符号Xで示される飽和炭化水素の2価残基および不飽和炭化水素の2価残基に置換してもよい飽和炭化水素基および不飽和炭化水素基として、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数2〜4のアルケニル基およびアルキニル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基およびシクロアルケニル基を用いるのが好ましい。
5員環の環構造を有するトリケトン化合物(1)としては、たとえば、トリケトン化合物(2)などが挙げられる。トリケトン化合物(2)の中でも、トリケトン化合物(2A)が好ましい。また、7員環の環構造を有するトリケトン化合物(1)としては、たとえば、トリケトン化合物(3)などが挙げられる。なお、一般式(2)、一般式(2A)および一般式(3)において、符号R1〜R2、R3〜R6およびR7〜R10で示される各基は、一般式(1)において符号Xで示される飽和炭化水素の2価残基および不飽和炭化水素の2価残基に置換しても良い飽和炭化水素基および不飽和炭化水素基として例示した各基と同じ意味を有している。
トリケトン化合物(2)、トリケトン化合物(2A)およびトリケトン化合物(3)の中でも、電池電圧を高くするという観点からは、符号R1〜R2、R3〜R6およびR7〜R10で示される各基は電子吸引性の高い置換基であることが好ましい。より具体的には、フェニル基などのアリール基、シアノ基、フッ素原子などが好ましい。
なお、トリケトン化合物(2A)の中でも、下記一般式で表されるトリケトン化合物が特に好ましい。
Figure 0004413276
(式中、n個のRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、フェニル基または異種原子として硫黄を含む5員もしくは6員の複素環化合物残基を示す。nは0〜4の整数を示す。)
なお、上記トリケトン化合物において、Rで示される基の中でも、異種原子として硫黄を含む5員もしくは6員の複素環化合物残基がさらに好ましい。また、nの値は0〜2がさらに好ましい。
また、本発明の電極活物質として用いるケトン化合物は、一般式(1)で表される構造を複数個有している化合物でもよい。以下において、このようなケトン化合物をポリケトン化合物とする。ポリケトン化合物としては、たとえば、一般式(1)で表されるトリケトン化合物の多量体、多量体を複数個結合した高分子体、複数の一般式(1)で表される構造が芳香環を介して結合した芳香環含有ポリケトン化合物などが挙げられる。
多量体は、一般式(1)で表されるトリケトン化合物由来の単量体を2個以上、好ましくは2個〜50個程度含む化合物である。多量体の中では、ダイマー、トリマーが特に好ましい。高分子体は、前記多量体を複数個含み、その分子量10000以上、好ましくは分子量10000以上、1000000以下の化合物である。多量体または高分子体である場合、より大きな反応電子数が得られる。
また、芳香環含有ポリケトン化合物は、複数の一般式(1)で表される構造が芳香環に結合した化合物である。すなわち、本発明のトリケトン化合物は、分子内に、3つのケトン基が隣接した部位(酸化還元部位)を複数有してもよい。ここで、芳香環は、ベンゼン、ベンゼン誘導体、チオフェン、ナフタレン、ナフタレン誘導体、アントラセン、アントラセン誘導体、ピリジン、フルオレン、およびフルオレン誘導体よりなる群から選択される少なくとも1つの芳香族化合物に由来する芳香環であることが好ましい。
芳香環含有ポリケトン化合物の中では、一般式
A−(B)m
(式中Aは、フェニレン基、ビフェニレン基、基:
Figure 0004413276
または異種原子として硫黄を含む5員もしくは6員の複素環化合物の2価残基である残基を示す。Bは、基:
Figure 0004413276
を示す。mは2または3の整数を示す。ただし、mが2の時、Aは2価残基であり、mが3の時、Aは3価残基である。)
で表される芳香環含有ポリケトン化合物が特に好ましい。
さらに、本発明で電極活物質として使用するケトン化合物は、還元体のリチウム塩であってもよい。
トリケトン化合物(2)の具体例は、下記表1に示す通りである。
Figure 0004413276
トリケトン化合物(3)の具体例は、下記表2に示す通りである。
Figure 0004413276
また、多量体の具体例は、下記表3に示す通りである。
Figure 0004413276
また、芳香環含有ポリケトン化合物の具体例は、下記表4に示す通りである。
Figure 0004413276
また、芳香環含有ポリケトン化合物の別の具体例は、下記表に示す通りである。
Figure 0004413276
上記一般式(1)で表される構造である基本ユニットの複数個を結合させるためには、以下のような合成法が有効である。
まず、電極反応部位となるキノン化合物のキノン部位に保護基を導入する。ここで、キノン化合物は、上記一般式(1)で表されるトリキノン化合物である。保護基としては、トリメチルシリル (TMS)、トリエチルシリル(TES)、tert−ブチルジメチルシリル(TBSまたはTBDMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、tert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、メチル基などのアルキル基、ジメチルアセタール保護基などが挙げられる。
次に、結合させたい部位にボロン酸を導入する。一方、キノン化合物に結合させる化合物について、キノン化合物と結合させたい部位に、ヨウ素などのハロゲンを導入する。
保護基およびボロン酸基を有するキノン化合物と、ハロゲン基を有するリンカー部位となる化合物とを、パラジウム触媒を用いてカップリングさせた後、脱保護反応(保護基の脱離反応)を行うことにより、多量体、高分子体または芳香環含有ポリケトン化合物を得ることができる。
本発明の蓄電デバイスは、例えば、正極、負極、前記正極と前記負極との間に配されるセパレータ、および電解質を含む。そして、前記正極および前記負極の少なくとも一方が電極活物質として上記トリケトン化合物を含む。すなわち、本発明の電極活物質を、正極および負極の両方に用いてもよく、正極および負極のいずれか一方に用いてもよい。本発明の電極活物質を正極および負極のいずれか一方に用いる場合、他方には蓄電デバイスの電極活物質として従来から使用されているものを用いればよい。
正極は、例えば、正極集電体および前記正極集電体上に形成された正極活物質層とからなり、正極活物質層がセパレータ側に位置するように配置される。
正極集電体としては、従来から常用されるものを使用でき、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、アルミニウム合金などの金属材料からなる多孔質または無孔のシートまたはフィルムを使用できる。シートまたはフィルムとは、例えば、金属箔やメッシュ体などが用いられる。また、抵抗値の低減、触媒効果の付与、正極活物質層と正極集電体とを化学的または物理的に結合させることによる正極活物質層と正極集電体との結合強化のため、正極集電体表面にカーボンなどの炭素材料を塗布してもよい。
正極活物質層は正極集電体の少なくとも一方の表面に設けられる。正極活物質層は、正極活物質を含み、必要に応じて、電子伝導補助剤、イオン伝導補助剤、結着剤などを含んでもよい。
正極活物質にトリケトン化合物を用いる場合、負極活物質には、例えばLiイオンを吸蔵放出可能な材料が用いられる。Liイオンを吸蔵放出可能な材料としては、例えば、炭素、黒鉛化炭素(グラファイト)、非晶質炭素などの炭素化合物、リチウム金属、リチウム含有複合窒化物、リチウム含有チタン酸化物などのリチウム化合物、Si、Si酸化物、Si合金などのSi化合物、Sn、Sn酸化物、Sn合金などのSn化合物などが挙げられる。また、トリケトン化合物を用いた電極と、活性炭を含む対極とを用いて、キャパシタを構成してもよい。
正極活物質にトリケトン化合物を用い、負極活物質に上記のLiイオンを吸蔵放出可能な材料を用い、電解質にリチウムカチオンおよびアニオンからなるLi塩を含む非水電解質を用いて蓄電デバイスを構成するのが好ましい。
電子伝導補助剤およびイオン伝導補助剤は、電極抵抗を低減するために用いられる。電子伝導補助剤としては、この分野で常用されるものを使用すればよい。例えば、カーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラックなどの炭素材料、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子化合物が挙げられる。イオン伝導補助剤としては、この分野で常用されるものを使用すればよい。例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸メチルなどのゲル電解質、ポリエチレンオキシドなどの固体電解質が挙げられる。
結着剤は、例えば、電極構成材料の結着性向上のために用いられる。結着剤としては、この分野で常用されるものを使用すればよい。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミドなどが挙げられる。
負極は、例えば、負極集電体および前記負極集電体上に形成された負極活物質層からなり、負極活物質層がセパレータ側に位置するように配置される。負極集電体には、正極集電体と同じものに加えて、銅、ニッケル、銅合金、ニッケル合金などの金属材料からなる多孔質または無孔のシートまたはフィルムを使用できる。例えば、抵抗値の低減、触媒効果の付与、負極活物質層と負極集電体との結合強化のため、負極集電体の表面に炭素材料を塗布してもよい。
負極活物質層は、負極集電体の少なくとも一方の面に設けられる。負極活物質層は、負極活物質を含み、必要に応じて、電子伝導補助剤、イオン伝導補助剤、結着剤などを含んでもよい。トリケトン化合物を負極活物質として用いる場合、正極活物質には、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24などのリチウム含有金属酸化物、活性炭、酸化還元可能な有機化合物などが用いられる。酸化還元可能な有機化合物としては、テトラチアフルバレン環に代表される分子内にπ電子共役雲を有する有機化合物、ニトロキシラジカルに代表される分子内に安定ラジカルを有する有機化合物などが挙げられる。負極活物質層に含まれる電子伝導補助剤、イオン伝導補助剤および結着剤は、正極活物質層に含まれる電子伝導補助剤、イオン伝導補助剤、結着剤と同じものが用いられる。
セパレータには、例えば、所定のイオン透過度、機械的強度、および絶縁性を有する微多孔性のシートまたはフィルムが用いられる。セパレータには、例えば、織布または不織布が用いられる。また、セパレータには、各種樹脂材料が用いられるが、耐久性、シャットダウン機能、および電池の安全性の観点から、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンが好ましい。なお、シャットダウン機能とは、電池の発熱量が大幅に増大した際に貫通孔が閉塞し、それによりイオンの透過が抑制され、電池反応を遮断する機能である。
電解質としては、例えば、液状電解質、固体電解質、またはゲル電解質が用いられる。液状電解質は溶媒および支持塩を含む。支持塩としては、リチウムイオン電池や非水系電気二重層キャパシタに通常用いられる支持塩が用いられる。
支持塩としては、以下のカチオンとアニオンとからなる支持塩が挙げられる。カチオンとしては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属のカチオン、マグネシウムなどのアルカリ土類金属のカチオン、テトラエチルアンモニウム、1,3−エチルメチルイミダゾリウムなどの4級アンモニウムカチオンを使用できる。カチオンは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらのカチオンの中でも、リチウムが好ましい。
アニオンとしては、例えば、ハロゲン化物アニオン、過塩素酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、四ホウフッ化物アニオン、トリフルオロリン6フッ化物アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、またはビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミドアニオンが挙げられる。アニオンは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
支持塩としては、リチウムおよび上記アニオンからなるリチウム塩が好ましい。
支持塩自体が液状である場合、支持塩と溶媒とを混合してもよく、混合しなくてもよい。支持塩が固体状である場合、溶媒に支持塩を溶解して用いるのが好ましい。
溶媒としては、リチウムイオン電池や非水系電気二重層キャパシタに用いられる有機溶媒が用いられる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリルなどが用いられる。有機溶媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
固体電解質としては、例えば、Li2S−SiS2−リチウム化合物(ここで、リチウム化合物はLi3PO4、LiI、およびLi4SiO4からなる群より選ばれる少なくとも1種である。)、Li2S−P25、Li2S−B25、Li2S−P25−GeS2、ナトリウム/アルミナ(Al23)、相転移温度(Tg)の低い無定形ポリエーテル、無定形フッ化ビニリデンコポリマー、異種ポリマーのブレンド体、ポリエチレンオキサイドなどが挙げられる。
ゲル電解質としては、例えば、樹脂材料、溶媒、および支持塩の混合物が挙げられる。樹脂材料としては、例えば、ポリアクリロニトリル、エチレンとアクリロニトリルとのコポリマー、これらを架橋したポリマーが挙げられる。溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、またはプロピレンカーボネートなどの低分子量の有機溶媒が用いられる。支持塩としては、上記と同じものを使用できる。固体電解質やゲル電解質はセパレータを兼ねることができる。
また、本発明の蓄電デバイスとしては、例えば、一次電池、二次電池、キャパシタ、電解コンデンサ、センサー、エレクトロクロミック素子などが挙げられる。例えば、燃料電池や、トリケトン化合物を溶媒に溶解させたトリケトン化合物溶液を、液体供給手段を用いて、電極に供給し、電極活物質を溶媒に溶解させた状態で充放電可能なレドックスフロー型蓄電デバイスが挙げられる。
本発明の蓄電デバイスは、輸送機器、電子機器などの電源、火力発電、風力発電、燃料電池発電などの発電平準化用の蓄電デバイス、一般家庭および集合住宅用の非常用蓄電システム、深夜電力蓄電システムなどの電源、無停電電源などして好適に使用できる。
本発明の電子機器は、本発明の蓄電デバイスを電源として備えている。すなわち、本発明の電子機器は、電源として本発明の蓄電デバイスを含む以外は、従来の電子機器と同様の構成を採ることができる。本発明の電子機器には、たとえば、携帯電話、モバイル機器、携帯情報端末(PDA)、ノート型パーソナルコンピュータ、ビデオカメラ、ゲーム機などの携帯用電子機器、電動工具、掃除機、ロボットなどが含まれる。これらの中でも、携帯用電子機器が好ましい。
図1は、本発明の実施形態の1つである携帯電話30の構成を模式的に示す斜視図である。携帯電話30は、筐体40を含む。筐体40は、折りたたみ可能な2個の筐体部からなっている。一方の筐体部の外周面には表示部41が設けられ、他方の筐体部の外周面には入力部42が設けられている。表示部41は、たとえば、液晶パネルにより構成されている。また、入力部42が設けられた筐体部の内部には、図示しない電源部43および電子制御回路部が設けられている。
電源部43には蓄電デバイスが装着されている。蓄電デバイスとしては、本発明の蓄電デバイスのみを用いてもよく、本発明の蓄電デバイスと従来の蓄電デバイスとを組み合わせて用いてもよい。従来の蓄電デバイスとしては、たとえば、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素蓄電池、キャパシタ、燃料電池などが挙げられる。
電子制御回路部は、たとえば、電源部43に装着される蓄電デバイスの充電量(SOC)、蓄電デバイスの充電時の電圧、液晶パネルの表示、送受信などを制御する。
本発明の蓄電デバイスは小型・薄型化が可能である。したがって、蓄電デバイスの設置に要するスペースを小さくでき、携帯電話を小型化および薄型化できる。本発明の蓄電デバイスは高速充電が可能であるため、充電時間を短縮できる。本発明の蓄電デバイスは高出力および高容量を有するため、携帯電話の連続通話時間の延長等の高性能化が可能である。
図2は、本発明の実施形態の1つであるノートブック型パーソナルコンピュータ50(以下「PC50」とする)の構成を模式的に示す斜視図である。PC50は、筐体60を含む。筐体60は、折りたたみ可能な2個の筐体部からなっている。一方の筐体部の外周面には表示部61が設けられ、他方の筐体部の外周面にはキー操作部62が設けられている。表示部61は、たとえば、液晶パネルにより構成されている。キー操作部62が設けられた筐体部の内部には、電源部63および図示しない電子制御回路部、冷却用ファンなどが配置されている。
電子制御回路部は、CPU、メモリ、タイマなどを含み、PC50における各種動作を制御する。
電源部6には、本発明の蓄電デバイスが装着されている。電源部6には、本発明の蓄電デバイスのみを装着してもよく、または、本発明の蓄電デバイスと従来の蓄電デバイスとを組み合わせて装着してもよい。従来の蓄電デバイスとしては、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素蓄電池、キャパシタ、燃料電池などが挙げられる。
本発明の蓄電デバイスは小型化および薄型化が可能であるため、蓄電デバイスの設置に要するスペースを小さくでき、ノートブック型パーソナルコンピュータの小型化および薄型化が可能である。本発明の蓄電デバイスは高速充電が可能であるため、充電時間を短縮できる。本発明の蓄電デバイスは高出力および高容量を有するため、ノートブック型パーソナルコンピュータの長時間の使用、高速起動などが可能となる。
本発明の輸送機器は、本発明の蓄電デバイスを主電源または補助電源として含んでいる。すなわち本発明の輸送機器は、主電源または補助電源として本発明の蓄電デバイスを含む以外は、従来の輸送機器と同様の構成を採ることができる。本発明の輸送機器には、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車、プラグインHEVなどの、二次電池を含む自動車がある。
図3は、本発明の実施形態の1つであるハイブリッド電気自動車70の構成を模式的に示すブロック図である。ハイブリッド電気自動車70は、エンジン80、複数のモーター81、82、83、インバーター84、85、86、電源部87、コントローラー88、油圧装置89、クラッチ90、無断変速機(CVT)91および減速装置92を含む。
モーター81は、エンジン80の始動用または発車のアシスト用のモーターであり、発電機としても機能する。モーター82は車駆動用のモーターである。モーター83は操舵(パワーステアリング)用のモーターである。インバーター84、85、86は、それぞれモーター81、82、83に接続され、モーター81、82、83からの出力を伝達する。
電源部87は、モーター81、82、83に回転用の電力を供給する。電源部87には、本発明の蓄電デバイスが装着されている。電源部87には、本発明の蓄電デバイスのみを用いてもよく、または、本発明の蓄電デバイスと従来の蓄電デバイスとを組み合わせて用いてもよい。従来の蓄電デバイスとしては、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素蓄電池、キャパシタ、燃料電池などが挙げられる。
コントローラー88は、システム全体を制御する。油圧装置89は、モーター83に接続されている。
ハイブリッド電気自動車70では、まず、電源部87の放電(電力供給)により、モーター81が駆動してエンジン80を始動または発進をアシストし、油圧装置89に接続されたモーター83が高速駆動する。電源部87に装着された蓄電デバイスの充電は、モーター81を発電機として用い、エンジン80の駆動力を電力に変換して行われる。
本発明の蓄電デバイスは小型化および薄型化が可能であるため、自動車などの輸送機器の軽量化が可能になる。また、蓄電デバイスの設置に要するスペースを小さくでき、収納スペースや座席スペースをより大きく確保することが可能になる。本発明の蓄電デバイスは、高速充放電でき、高出力および高容量を有するため、種々の走行モードに対応でき、自動車の燃費向上に寄与することができる。
以下に本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
(実施例1)
正極活物質にトリケトン化合物を電解質に溶解させて用い、負極および参照電極にリチウム金属を用いた図4に示す3電極式の蓄電デバイスを以下の手順で作製した。図4は、本発明の実施形態の1つである蓄電デバイス1の構成を模式的に示す縦断面図である。
(1)正極活物質の作製
出発物質として化学構造式(10)で表されるニンヒドリン(Aldrich社製)をガラスフラスコに入れた後、これを300℃真空下で熱処理し、化学構造式(2a)で表される1,2,3−インダントリオン(トリケトン化合物2a)を合成した。これを正極活物質とした。
Figure 0004413276
(2)蓄電池デバイスの作製
蓄電デバイス1の作製は、ガス精製装置を備えたアルゴン雰囲気のグローブボックス内にて行った。ガラス製セル8は、第1の電極収納部8a、第2の電極収納部8bおよび連絡部8cを有する。第1の電極収納部8aおよび第2の電極収納部8bは、電極を収納する。連絡部8cは、第1の電極収納部8aと第2の電極収納部8bとを連絡している。
セル8の第1の電極収納部8aには、電解質2に正極活物質を5mmol/Lの濃度で溶解させた電解質6を収容した。電解質2は、ほうフッ化リチウムの0.1mol/L炭酸プロピレン溶液である。また、第1の電極収納部8aには、正極活物質が酸化還元するための正極3を配置した。正極3を電解質6に浸漬した。正極3には、直径3mmφのグラッシーカーボン電極(BAS社製)を用いた。
第2の電極収納部8bには電解質を収容した。また、第2の電極収納部8bには、負極4および参照電極5を配置した。負極4および参照電極5を電解質2に浸漬した。負極4には、10mm角のメッシュ状のニッケル集電板に、金属リチウム板(厚み300μm)を貼り付けたものを用いた。参照電極5には、7mm角のメッシュ状ニッケル集電板に、金属リチウム(厚み300μm)を貼り付けたものを用いた。
連絡部8cにはガラスフィルター7を配置した。ガラスフィルターにより、電解質2と電解質6とを隔離し、正極活物質が負極側の電解質2と混合しないように構成し、本発明の蓄電デバイスを作製した。
(実施例2)
正極活物質を下記のトリケトン化合物(3a)(物質名:トロポキノン)に変更する以外は、実施例1と同様にして、本発明の蓄電デバイスを作製した。
なお、トリケトン化合物(3a)は、化学構造式(11)で表されるトロポロン(Aldrich社製)を出発物質として用い、公知の方法(Tetrahedron Lett.1978、15、1299)に従って合成した。
Figure 0004413276
(実施例3)
正極活物質を下記のトリケトン化合物(3c)(物質名:2,7−ジヒドロキシトロポンビスリチウムアルコキシド)に変更する以外は、実施例1と同様にして、本発明の蓄電デバイスを作製した。
なお、トリケトン化合物(3a)は、化学構造式(12)で表される2,7−ジヒドロキシトロポンを出発物質として用い、以下のように合成した。
化学構造式(12)で表される2,7−ジヒドロキシトロポン78mg(0.56mmol)をテトラヒドロフラン(以下「THF」とする)5.0mlに溶解した。この溶液に水素化リチウム16mg(2.0mmol)加え、アルゴン雰囲気下、室温で5分間攪拌し、反応させた。攪拌終了後、反応液を濾過し、得られた濾液からTHFを減圧除去し、さらに真空乾燥し、90mg(93%)の2,7−ジヒドロキシトロポンビスリチウムアルコキシド(トリケトン化合物(3c))を黄色の固体として得た。
IR(THF);1521,1413,1282,1193,1054cm-1
なお、化学構造式(12)で表される2,7−ジヒドロキシトロポンは、化学構造式(11)で表されるトロポロン(Aldrich社製)を用いて、公知の方法(Synthesis、1986、p578−579)に従って合成した。
Figure 0004413276
(比較例1)
パラキノン化合物として、下記の化学構造式(13)で表されるアントラキノン(Aldrich社製)を正極活物質に用いる以外は、実施例1と同様にして蓄電デバイスを作製した。
(比較例2)
オルトキノン化合物として、下記の化学構造式(14)で表される9,10−フェナントレンキノン(Aldrich社製)を正極活物質に用いる以外、実施例1と同様にして蓄電デバイスを作製した。
Figure 0004413276
[評価]
実施例1〜3および比較例1〜2の蓄電デバイスを以下に示す手順で評価した。なお、これらの蓄電デバイスの評価は、ガス精製装置を備えたアルゴングローブボックス内にて行った。
各蓄電デバイスの正極を電位走査し、正極活物質の還元(放電)反応および酸化(充電)反応の可逆性を評価した。具体的には、所定の電位範囲において、自然電位(平衡電位)から放電側(卑な方向)へ電位走査し、その後充電側(貴な方向)へ電位走査した。そして、規定の電位範囲で電位を3往復走査した。走査する電位範囲は、各正極活物質の酸化還元反応に相当するピークが見られる電位を含む範囲に適宜調節した。具体的な走査電位範囲は、実施例1および比較例1〜2は電位1.0〜4.0V、実施例2〜3は電位1.0〜4.5Vとした。走査速度は10mV/secとした。
なお、本デバイス評価は、同じ測定を3回繰り返し、3回ともほぼ同じ挙動が得られることを確認した上で、3回目の挙動から、平均放電電位[V]、反応可逆性を評価した。
また、活物質の反応を2電子反応とした場合の重量あたりの理論容量を、活物質である有機化合物の分子量M[g/mol]、およびファラデー定数(96500[Coulomb/mol])の値を用いて、以下の式から算出した。
(理論容量[mAh/g])=2×96500/M×1000/3600
また、放電側に電位走査した際に得られた電流(還元)ピークからピーク電流値を積分し、ピーク電気量およびピーク電力量を算出し、そのようにして得た放電ピーク電力量を放電ピーク電気量で除して、正極の平均放電電位を求めた。
結果を表に示す。
Figure 0004413276
実施例1および2の蓄電デバイスの測定結果をそれぞれ図5および図6に示す。図5は実施例1の蓄電デバイスのサイクリックボルタモグラムである。図6は実施例2の蓄電デバイスのサイクリックボルタモグラムである。また、比較例1および2の蓄電デバイスの測定結果を図7および図8にそれぞれ示す。図7は比較例1の蓄電デバイスのサイクリックボルタモグラムである。図8は比較例2の蓄電デバイスのサイクリックボルタモグラムである。
図5に示すように、トリケトン化合物(2a)を活物質に用いた実施例1の蓄電デバイスでは、2.7V付近で還元(放電)反応が起こり、3.0V付近で酸化(充電)反応が起こり、およそ3V程度の高い電位で可逆な充放電反応が起こることが確認された。平均放電電位は2.7Vであった。また、3サイクルまで安定して同じ充放電挙動が得られた。また、トリケトン化合物(3a)の理論容量は334.9mAh/gという非常に高い値であった。
図6に示すように、トリケトン化合物(3a)を活物質に用いた実施例2の蓄電デバイスでは、2.6Vおよび3.2V付近で還元(放電)反応が起こり、3.4Vおよび4.2V付近で酸化(充電)反応が起こり、およそ3.0〜4.0V程度の電位で可逆な充放電反応が起こることが確認された。平均放電電位は2.9Vであった。また、3サイクルまで安定して同じ充放電挙動が得られた。また、トリケトン化合物(3a)の理論容量は、393.9mAh/gと非常に高い値であった。
トリケトン化合物(3c)を活物質に用いた実施例3の蓄電デバイスでは、実施例2の結果である図6と全く同じ結果が得られた。すなわち、2.6Vおよび3.2V付近で還元(放電)反応が起こり、3.4Vおよび4.2V付近で酸化(充電)反応が起こり、およそ3.0〜4.0V程度の電位で可逆な充放電反応が起こることが確認された。平均放電電位は2.9Vであった。また、3サイクルまで安定して同じ充放電挙動が得られた。また、トリケトン化合物(3c)の理論容量は、357.6mAh/gと非常に高い値であった。
トリケトン化合物(3c)は、トリケトン化合物(3a)のLi付加状態すなわち還元体(放電状態)である。したがって、トリケトン化合物(3c)とトリケトン化合物(3a)とが同じ電気化学特性を有しているということは、電極活物質であるトリケトン化合物を酸化体(Li脱離状態)および還元体(Li付加状態)のいずれの状態に合成しても、蓄電デバイスを構成することが可能であることを示している。
図7に示すように、パラキノン化合物(13)を活物質に用いた比較例1の蓄電デバイスでは、2.2V付近で還元(放電)反応が起こり、2.4Vおよび2.9V付近で酸化(充電)反応が起こり、およそ2.5V程度の電位で可逆な充放電反応が起こることが確認された。また、平均放電電位は2.2Vであった。3サイクルまで安定して同じ充放電挙動が得られた。パラキノン化合物(13)の理論容量は、257.5mAh/gであった。
図8に示すように、オルトキノン化合物(14)を活物質に用いた比較例2の蓄電デバイスでは、2.4Vおよび2.7V付近で還元(放電)反応が起こり、2.6Vおよび2.9V付近で酸化(充電)反応が起こり、およそ2.5〜3.0V程度の電位で可逆な充放電反応が起こることが確認された。また、平均放電電位は2.55Vであった。3サイクルまで安定して同じ充放電挙動が得られた。また、オルトキノン化合物(14)の理論容量は、257.5mAh/gであった。
から明らかなように、トリケトン化合物を活物質に用いた本発明の実施例1〜3の蓄電デバイスは、高い理論容量および放電電圧、ならびに優れた反応可逆性を示した。このことから、本発明では、重量あたりのエネルギー密度の高い蓄電デバイスが得られることが確かめられた。本発明では、高容量および高電圧を有し、充放電繰り返し特性に優れた蓄電デバイスが得られることが確かめられた。
(実施例4)
正極活物質として、トリケトン化合物(2a)(1,2,3−インダントリオン)を用い、コイン型電池を作製した。図9は、本発明の実施形態の1つであるコイン型電池11の構成を模式的に示す縦断面図である。
(1)正極の作製
ガス精製装置を備えたアルゴンボックス内にて、アルゴンガス雰囲気下で正極活物質20mgと、導電補助剤としてのアセチレンブラック20mgとを均一に混合した。得られた混合物に溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドン1mlを加え、さらに結着剤としてのポリフッ化ビニリデン5mgを加えて均一に混合し、黒色のスラリーを調製した。結着剤は、電極活物質と導電補助剤とを結着させるために用いた。
得られたスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔(集電体)表面に塗布し、室温にて2時間真空乾燥を行い、電極板を作製した。この電極板を径13.5mmの円盤状に打ち抜き、厚さ20μmの正極集電体12表面に、活物質、導電補助剤および結着剤の混合物を含む正極活物質層13が形成された正極を作製した。
(2)コイン型電池11の作製
図9において、上記で作製した正極はアルミニウム箔からなる正極集電体12、および正極集電体12上に形成された電極活物質を含む正極活物質層13からなる。正極集電体12がケース11内面に接するように、この正極をケース11上に配置し、その上に多孔質ポリエチレンシートからなるセパレータ14を設置した。次に、非水電解質をケース11内に注液した。非水電解質としては、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合溶媒(重量比1:3)に6フッ化リン酸リチウムを1.25mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。
封口板15の内面に、負極集電体17、および負極活物質層16をこの順番で圧着させた。負極活物質層16には、厚さ300μmの金属Liを用いた。負極集電体17には、厚さ100μmのステンレス鋼製の箔を用いた。正極を設置したケース11と、負極を設置した封口板15とを、負極活物質層16がセパレータ14に圧接するように、周縁部にガスケット18を装着した状態で重ね合わせ、プレス機にてかしめ封口した。このようにして、厚み1.6mmおよび直径20mmの本発明のコイン型電池を作製した。
(実施例5)
正極活物質として、トリケトン化合物(2a)に代えてトリケトン化合物(2b)(物質名:1,2,3−ベンゾインダントリオン)を用いる以外は、実施例4と同様にして、本発明のコイン型電池を作製した。
トリケトン化合物(2b)は、以下のようにして合成した。公知の方法(Journal of Organic Chemistry、1969、34、p2339−2345)に従って合成したベンゾニンヒドリン(15)(221mg、0.97mmol)をクーゲルオーブンに入れ、減圧下(0.6mmHg)、220℃で20分間加熱することによって、161mgの濃緑色固体としてトリケトン化合物(2b)を得た。収率は79%であった。得られた化合物の構造を1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)により確認した。得られた化学シフトは、δ;8.17(dd,J=6.4,3.2Hz,2H),8.34(dd,J=6.0,3.2Hz,2H),8.69(s,2H)であった。
Figure 0004413276
(実施例6)
正極活物質として、トリケトン化合物(2a)に代えてトリケトン化合物(2c)(物質名:3−(1,2,3−トリオキソインダン−5−イル)チオフェン)を用いる以外は、実施例4と同様にして、本発明のコイン型電池を作製した。
トリケトン化合物(2c)は、以下のようにして合成した。公知の方法(Canadian Journal of Chemistry、2001、79、p1632−1654)に従って合成した2,2−ジヒドロキシ−5−(チオフェン−3−イル)インダン−1,3−ジオン(16)(125mg,0.48mmol)をクーゲルオーブンに入れ、減圧下に100〜160℃で加熱したところ、55mg(収率47%)のトリケトン化合物(2c)を得た。得られた化合物のNMRスペクトルの化学シフトは次の通りであった。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ;7.76(dd,J=5.2,3.2Hz,1H),7.86(dd,J=5.2,1.2Hz,1H),8.07(d,J=8.0Hz,1H),8.34(d,J=1.2Hz,1H),8.40(dd,J=8.0,1.6Hz,1H),8.42(dd,J=2.8,1.2Hz,1H)
13C−NMR(100MHz,DMSO−d6)δ;119.9,124.7,125.6,126.4,128.1,133.8,138.6,139.3,141.0,142.3,182.8,183.6,187.1
Figure 0004413276
(実施例7)
正極活物質として、トリケトン化合物(2a)に代えて多量体(4b)(物質名:5,5’−インダントリオンダイマー)を用いる以外は、実施例4と同様にして、本発明のコイン型電池を作製した。
多量体(4b)は、以下のようにして合成した。公知の方法(Canadian Journal of Chemistry、2001、79、p1632−1654)に従って合成したニンヒドリン二量体(17)(85mg、0.24mmol)をクーゲルオーブンに入れ、減圧下(0.6mmH)、300℃で20分間加熱したところ、32mgの赤褐色固体として、5,5’−インダントリオンダイマー(4b)を得た。収率は42%であった。得られた化合物は、赤外吸収スペクトル測定により、波長1774,1750,1725,1600,1244cm-1の吸収を確認した。
Figure 0004413276
(実施例8)
正極活物質として、トリケトン化合物(2a)に代えて芳香環含有ポリケトン化合物(5a)(物質名:1,4−ビス(1,2,3−トリオキソインダン−5−イル)ベンゼン)を用いる以外は、実施例4と同様にして、本発明のコイン型電池を作製した。なお、芳香環含有ポリケトン化合物(5a)は、1,4−ビス(2,2−ジメトキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ベンゼン、1,4−ビス(2,2−ジヒドロキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ベンゼンを経由する3工程の方法で合成した。以下、順に合成方法を示す。
Figure 0004413276
(1)5−ブロモ−2,2−ジメトキシインダン−1,3−ジオン(18)とベンゼン−1,4−ジボロン酸(19)の鈴木−宮浦カップリング反応による1,4−ビス(2,2−ジメトキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ベンゼン(20)の合成
5−ブロモ−2,2−ジメトキシインダン−1,3−ジオン(18)(624mg,2.19mmol)とベンゼン−1,4−ジボロン酸(19)(166mg,1.00mmol)をトルエン(4ml)とエタノール(2ml)に溶解し、そこに2M炭酸ナトリウム水溶液(2ml,4mmol)を加えた。脱気後Pd(PPh(58mg,0.050mmol)をその溶液に加え、アルゴン雰囲気下で12時間還流した。反応液を水に注ぎ、クロロホルムで抽出した。そしてその抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下で溶媒を除いた。残留物に酢酸エチルを加え、ろ過、真空乾燥させると295mg(60%)の1,4−ビス(2,2−ジメトキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ベンゼン(20)がベージュ色の固体として得られた。得られた化合物の機器分析値を以下に示す。
1HNMR(400MHz,CDCl3)δ;3.70(s,12H),7.82(d,J=0.8Hz,4H),8.10(d,J=8.0Hz,2H),8.17(dt,J=8.4,1.6Hz,2H),8.24(s,2H).
13CNMR(100MHz,CDCl3)δ;51.9,91.2,122.1,124.8,128.3,135.3,138.2,139.2,140.0,148.4,192.7,193.2.
HRMS(EI)m/z C28228としての計算値:486.1315、理論値:486.1312.
(2)ケタールの脱保護反応による1,4−ビス(2,2−ジヒドロキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ベンゼンの合成
1,4−ビス(2,2−ジメトキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ベンゼン(20)(209mg,0.429mmol)を酢酸3mlと水3mlとの混合溶媒に懸濁させ、そこに47%臭化水素酸3mlを加えた。その混合物を2時間還流した。室温まで冷却すると固体が析出し、それをろ過により回収した。固体を冷水とクロロホルムで洗浄し、真空乾燥すると168mg(91%)の1,4−ビス(2,2−ジヒドロキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ベンゼン(21)が淡灰色の固体として得られた。得られた化合物の機器分析値を以下に示す。
1HNMR(400MHz,DMSO−d6)δ;7.57(br,3.2H),8.07(s,4H),8.11(d,J=7.6Hz,2H),8.33(s,2H),8.45(d,J=8.0Hz,2H).
13CNMR(100MHz,DMSO−d6)δ;87.8,121.1,124.4,128.1,135.3,137.1,138.2,139.0,147.2,196.0,196.5.
HRMS(FAB)m/z C24148としての計算値:430.0689、理論値:430.0690.
IR(neat);3456(br),1750,1723,1598,1148,1086cm-1
(3)ニンヒドリン部位の脱水反応による芳香環含有ポリケトン化合物(5a)の合成
1,4−ビス(2,2−ジヒドロキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ベンゼン(21)(131mg,0.304mmol)をクーゲルオーブンに入れ、減圧下(0.6mmHg)、300℃で20分間加熱したところ、118mg(98%)の芳香環含有ポリケトン化合物(5a)を赤褐色固体として得た。得られた化合物の機器分析値を以下に示す。IR(solid);1766,1735,1708,1582,1281,1235cm-1
(実施例9)
正極活物質として、トリケトン化合物(2a)に代えて芳香環含有ポリケトン化合物(5b)(物質名:1,3,5−トリス(1,2,3−トリオキソインダン−5−イル)ベンゼン)を用いる以外は、実施例4と同様にして、本発明のコイン型電池を作製した。なお、芳香環含有ポリケトン化合物(5b)は、下記反応工程式に従い、2,2−ジメトキシインダン−1,3−ジオン−5−ボロン酸ピナコールエステル、1,3,5−トリス(2,2−ジメトキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ベンゼン、1,3,5−トリス(2,2−ジヒドロキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ベンゼンを経由する4工程の方法により合成した。以下、順に合成方法を示す。
Figure 0004413276
(1)5−ブロモ−2,2−ジメトキシインダン−1,3−ジオンとピナコールジボランとの反応による2,2−ジメトキシインダン−1,3−ジオン−5−ボロン酸ピナコールエステルの合成
5−ブロモ−2,2−ジメトキシインダン−1,3−ジオン(23)(7.2g,25mmol)とピナコールジボラン(24)(7.8g,31mmol)とを1,4−ジオキサン(300ml)に溶解し、そこにCsOAc(24.3g,126mmol)を加えた。脱気後PdCl2(dppf)・CH2Cl2(1.1g,1.4mmol)をその溶液に加え、アルゴン雰囲気下80℃で終夜攪拌した。反応終了後、室温に戻してから濾過し、固体を除去した。この濾液に対して水を加え、クロロホルムで抽出後、抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥剤を濾別したうえで、減圧下で溶媒を除いた。得られた粗生成物はシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5/2の混合溶媒)にて精製すると9.3g(>99%)の2,2−ジメトキシインダン−1,3−ジオン−5−ボロン酸ピナコールエステル(24)がベージュ色の固体として得られた。得られた化合物の機器分析値を以下に示す。
1HNMR(400MHz,CDCl3)δ;1.38(s,12H),3.67(s,6H),7.95(dd,J=7.6,0.8Hz,1H),8.28(dd,J=7.2,1.2Hz,1H),8.44(d,J=0.8Hz,1H).
HRMS(EI)m/z C1721BO6としての計算値:332.1431、理論値:332.1430.
(2)2,2−ジメトキシインダン−1,3−ジオン−5−ボロン酸ピナコールエステル1と1,3,5−トリブロモベンゼンの鈴木−宮浦カップリング反応による1,3,5−トリス(2,2−ジメトキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ベンゼンの合成
2,2−ジメトキシインダン−1,3−ジオン−5−ボロン酸ピナコールエステル(24)(470mg,1.41mmol)、1,3,5−トリブロモベンゼン(25)(126mg,0.40mmol)、Pd(PPh(58mg,0.050mmol)およびKPO(513mg,2.41mmol)をトルエン12mlとエタノール6mlとの混合溶媒に溶解し、そこに水4mlを加えた。脱気後アルゴン雰囲気下で12時間還流した。反応液を室温に戻した後、反応液に水を注ぎ、クロロホルムで抽出した。そして有機相の抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過で乾燥剤を取り除き、減圧下で溶媒を除いた。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶媒はヘキサンからヘキサン:酢酸エチル1:1までグラジエント)で精製したところ280mg(41%)の1,3,5−トリス(2,2−ジメトキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ベンゼン(26)が黄色の固体として得られた。得られた化合物の機器分析値を以下に示す。
1HNMR(400MHz,CDCl3)δ;3.68(s,18H),8.01(s,3H),8.13(dd,J=8.0,0.4Hz,3H),8.24(dd,J=8.0,1.6Hz,3H),8.29(dd,J=1.6,0.4Hz,3H).
13CNMR(100MHz,CDCl3)δ;51.7,91.1,122.5,127.3,135.7,138.6,140.1,141.0,148.0,192.8,193.3.
HRMS(EI)m/z C393012としての計算値:690.1737、理論値:690.1732.
(3)ケタールの脱保護反応による1,3,5−トリス(2,2−ジヒドロキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ベンゼンの合成
1,3,5−トリス(2,2−ジメトキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ベンゼン(26)(101mg,0.146mmol)を酢酸2mlと水2mlとの混合溶媒に懸濁させ、そこに47%臭化水素酸2mlを加えた。その混合物を110℃、1.5時間還流した。室温まで冷却した後に反応溶液を水で希釈し、生じた固体を濾過、乾燥したところ77.3mg(87%)の1,3,5−トリス(2,2−ジヒドロキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ベンゼン(27)を灰色の固体として得た。得られた化合物の機器分析値を以下に示す。
1HNMR(400MHz,DMSO−d6)δ;7.61(s,6H),8.15(d,J=8.0Hz,3H),8.69(s,3H),8.72(dd,J=8.0,1.6Hz,3H).
13CNMR(100MHz,DMSO−d6)δ;88.0,122.7,124.3,127.7,136.5,137.6,139.3,139.8,147.8,196.6,197.1.
(4)ニンヒドリン部位の脱水反応による芳香環含有ポリケトン化合物(5b)の合成
1,3,5−トリス(2,2−ジヒドロキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ベンゼン(27)(331mg,0.546mmol)をクーゲルオーブンに入れ、減圧下(0.6mmHg)、270℃加熱したところ、282mg(93%)の芳香環含有ポリケトン化合物(5b)を黄緑固体として得た。得られた化合物の機器分析値を以下に示す。
1HNMR(400MHz,DMSO−d6)δ;8.17(d,J=7.6Hz,3H),8.52(s,3H),8.73(dd,J=8.0,1.6Hz,3H),8.76(d,J=1.2Hz,3H).
13CNMR(100MHz,DMSO−d6)δ;122.4,124.3,127.6,135.8,139.3,139.9,140.6,146.7,183.2,183.5,186.8.
(実施例10)
正極活物質としてトリケトン化合物(2a)に代えて芳香環含有ポリケトン化合物(5c)(物質名:4,4’−ビス(1,2,3−トリオキソインダン−5−イル)ビフェニル)を用いる以外は、実施例4と同様にして、本発明のコイン型電池を作製した。なお、芳香環含有ポリケトン化合物(5c)は、下記反応工程式に従い、以下の3工程により合成した。
Figure 0004413276
(1)5−ブロモ−2,2−ジメトキシインダン−1,3−ジオンと4,4’−ビフェニルジボロン酸の鈴木−宮浦カップリング反応による4,4’−ビス(2,2−ジメトキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ビフェニルの合成
5−ブロモ−2,2−ジメトキシインダン−1,3−ジオン(28)(1.18g,4.13mmol)、4,4’−ビフェニルジボロン酸(29)(368mg,1.52mmol)、Pd(PPh34(37mg,0.032mmol)および炭酸ナトリウム(327mg,3.09mmol)をトルエン15mlとエタノール10mlとの混合溶媒に溶解し、そこに水4mlを加えた。脱気後アルゴン雰囲気下で終夜加熱還流した。反応液を室温に戻した後、反応液に水を注ぎ、クロロホルムで抽出した。そして有機相の抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過で乾燥剤を取り除き、減圧下で溶媒を除いた。再結晶(溶媒はクロロホルム、ヘキサン)で精製したところ728mg(85%)の1,3−ビス(2,2−ジメトキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ビフェニル(30)を黄緑色の固体として得た。得られた化合物の機器分析値を以下に示す。
1HNMR(400MHz,CDCl3)δ;3.71(s,12H),7.79(d,J=8.8Hz,4H),7.82(d,J=8.8Hz,4H),8.09(dd,J=8.0,0.4Hz,2H),8.18(dd,J=8.0,1.6Hz,2H),8.25(dd,J=1.6,0.4Hz,2H).
13CNMR(100MHz,CDCl3)δ;51.9,91.2,121.8,124.7,127.8,127.9,135.2,137.7,138.0,140.0,140.8,149.0,192.7,193.4.
(2)4,4’−ビス(2,2−ジメトキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ビフェニルの脱保護反応による4,4’−ビス(2,2−ジヒドロキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ビフェニルの合成
4,4’−ビス(2,2−ジメトキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ビフェニル(30)(567mg,1.01mmol)を酢酸6mlと水6mlとの混合溶媒に懸濁させ、そこに47%臭化水素酸(6ml)を加えた。その混合物を100℃、終夜還流した。室温まで冷却した後に濾過し、得られた固体をクロロホルムと水で洗浄、乾燥後にさらにアセトンで洗浄した上で、減圧乾燥したところ286mg(55%)の4,4’−ビス(2,2−ジヒドロキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ビフェニル(31)をベージュ色の固体として得た。得られた化合物の機器分析値を以下に示す。
1HNMR(400MHz,DMSO−d6)δ;7.58(s,4H),7.97(d,J=8.4Hz,4H),8.04(d,J=8.4Hz,4H),8.12(d,J=8.0Hz,2H),8.32(d,J=1.6Hz,2H),8.45(d,J=8.0,1.6Hz,2H).
(3)4,4’−ビス(2,2−ジヒドロキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ビフェニルの脱水反応による芳香環含有ポリケトン化合物(5c)の合成
4,4’−ビス(2,2−ジヒドロキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ビフェニル(31)(286mg,0.56mmol)をクーゲルオーブンに入れ、減圧下100℃〜250℃で徐々に加熱したところ、245mg(93%)の芳香環含有ポリケトン化合物(5c)を朱色固体として得た。得られた化合物の機器分析値を以下に示す。
1HNMR(400MHz,DMSO−d6)δ;7.99(d,J=8.4Hz,4H),8.08(d,J=8.4Hz,4H),8.13(d,J=8.4Hz,2H),8.35(d,J=2.0Hz,2H),8.43(dd,J=8.4,1.6Hz,2H).
(実施例11)
正極活物質としてトリケトン化合物(2a)に代えて芳香環含有ポリケトン化合物(5d)(物質名:1,3−ビス(1,2,3−トリオキソインダン−5−イル)ベンゼン)を用いる以外は、実施例4と同様にして、本発明のコイン型電池を作製した。なお、芳香環含有ポリケトン化合物(5d)は、下記反応工程式に従い、以下の3工程により合成した。
Figure 0004413276
(1)2,2−ジメトキシインダン−1,3−ジオン−5−ボロン酸ピナコールエステル1と1,3−ジブロモベンゼンの鈴木−宮浦カップリング反応による1,3−ビス(2,2−ジメトキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ベンゼンの合成
2,2−ジメトキシインダン−1,3−ジオン−5−ボロン酸ピナコールエステル(24)(420mg,1.26mmol)、1,3−ジブロモベンゼン(32)(144mg,0.61mmol)、Pd(PPh34(31mg,0.027mmol)およびK3PO4(509mg,2.4mmol)をトルエン7mlとエタノール4mlとの混合溶媒に溶解し、そこに水3mlを加えた。脱気後アルゴン雰囲気下で終夜還流した。反応液を室温に戻した後、反応液に水を注ぎ、クロロホルムで抽出した。そして有機相の抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過で乾燥剤を取り除き、減圧下で溶媒を除いた。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5/1〜5/2までグラジエントをかける)で精製したところ137mg(46%)の1,3−ビス(2,2−ジメトキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ベンゼン(33)を黄色固体として得た。得られた化合物の機器分析値を以下に示す。
1HNMR(400MHz,CDCl3)δ;3.67(s,12H),7.67(dd,J=8.8,6.8Hz,1H),7.74−7.76(m,2H),7.90(pseudot,J=2.0Hz,1H),8.09(dd,J=8.0,0.8Hz,1H),8.17(dd,J=7.6,2.0Hz,2H),8.21(dd,J=1.6,0.8Hz,2H).
13CNMR(100MHz,CDCl3)δ;51.7,91.1,122.2,124.9,126.5,128.3,130.3,135.6,138.3,139.7,140.5,148.9,192.9,193.4.
(2)ケタールの脱保護反応による1,3−ビス(2,2−ジヒドロキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ベンゼンの合成
1,3−ビス(2,2−ジメトキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ベンゼン(33)(119mg,0.25mmol)を酢酸3mlと水3mlとの混合溶媒に懸濁させ、そこに47%臭化水素酸3mlを加えた。この混合物を115℃にて終夜還流した。室温まで冷却した後に反応溶液を濾過し、得られた固体を減圧乾燥したところ59mg(56%)の1,3−ビス(2,2−ジヒドロキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ベンゼン(34)をベージュ色固体として得た。得られた化合物の機器分析値を以下に示す。
1HNMR(400MHz,DMSO−d6)δ;7.59(s,4H),7.72(pseudot,J=7.6Hz,1H),8.00(dd,J=7.6,2.0Hz,2H),8.12(dd,J=8.0,0.8Hz,2H),8.36(pseudot,J=1.6Hz,1H),8.47(dd,J=1.6,0.8Hz,2H),8.53(dd,J=8.0,1.6Hz,2H).
13CNMR(100MHz,DMSO−d6)δ;87.9,122.0,124.5,127.0,128.4,130.2,136.1,137.4,138.9,139.3,148.1,196.6,197.0.
(3)ニンヒドリン部位の脱水反応による芳香環含有ポリケトン化合物(5d)の合成
1,3−ビス(2,2−ジヒドロキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)ベンゼン(34)(41mg,0.094mmol)をクーゲルオーブンに入れ、減圧下280℃で5時間加熱したところ、28mg(75%)の芳香環含有ポリケトン化合物(5d)を黄緑色固体として得た。得られた化合物の機器分析値を以下に示す。
1HNMR(400MHz,DMSO−d6)δ;7.75(pseudot,J=7.6Hz,1H),8.05(dd,J=7.6,2.0Hz,2H),8.14(dd,J=7.6,1.2Hz,2H),8.41(pseudot,J=1.6Hz,1H),8.52−8.55(m,4H).
(実施例12)
正極活物質としてトリケトン化合物(2a)に代えて芳香環含有ポリケトン化合物(5e)(物質名:3,4−ビス(1,2,3−トリオキソインダン−5−イル)チオフェン)を用いる以外は、実施例4と同様にして、本発明のコイン型電池を作製した。なお、芳香環含有ポリケトン化合物(5e)は、下記反応工程式に従い、以下の3工程により合成した。
Figure 0004413276
(1)2,2−ジメトキシインダン−1,3−ジオン−5−ボロン酸ピナコールエステルと3,4−ジブロモチオフェンの鈴木−宮浦カップリング反応による3,4−ビス(2,2−ジメトキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)チオフェンの合成
2,2−ジメトキシインダン−1,3−ジオン−5−ボロン酸ピナコールエステル(24)(973mg,2.93mmol)、3,4−ジブロモチオフェン(35)(292mg,1.21mmol)、Pd(PPh34(69mg,0.060mmol)および炭酸ナトリウム(766mg,7.22mmol)をトルエン5mlとエタノール2.5mlとの混合溶媒に溶解し、そこに水1mlを加えた。脱気後アルゴン雰囲気下85℃で終夜加熱した。反応液を室温に戻した後、反応液に水を注ぎ、クロロホルムで抽出した。有機相の抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過で乾燥剤を取り除き、減圧下で溶媒を除いた。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5/2)で精製したところ279mg(47%)の3,4−ビス(2,2−ジメトキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)チオフェン(36)を黄色固体として得た。得られた化合物の機器分析値を以下に示す。
HNMR(400MHz,CDCl)δ;3.67(s,12H),7.52(dd,J=8.0,1.6Hz,2H),7.58(s,2H),7.86(dd,J=8.0,0.8Hz,2H),7.92(dd,J=1.6,0.8Hz,2H).
13CNMR(100MHz,CDCl)δ;51.8,91.0,123.8,124.4,128.0,137.1,138.1,139.0,139.9,144.2,192.7,193.2.
(2)ケタールの脱保護反応による3,4−ビス(2,2−ジヒドロキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)チオフェンの合成
3,4−ビス(2,2−ジメトキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)チオフェン(36)(178mg,0.361mmol)を酢酸2mlと水2mlとの混合溶媒に懸濁させ、そこに47%臭化水素酸2mlを加えた。その混合物を110℃、1.5時間還流した。室温まで冷却した後に反応溶液を水で希釈し、一昼夜放置した後に生じた固体を濾過、さらに水で洗浄した上で乾燥したところ68mg(43%)の3,4−ビス(2,2−ジヒドロキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)チオフェン(37)がベージュ色の固体として得られた。得られた化合物の機器分析値を以下に示す。
HNMR(400MHz,アセトン−d)δ;6.55(s,4H),7.80(dd,J=7.6,1.6Hz,2H),7.91(dd,J=7.6,0.8Hz,2H),7.95(dd,J=1.6,0.8Hz,2H),8.03(s,2H).
13CNMR(100MHz,アセトン−d)δ;79.6,115.6,115.9,120.3,129.5,129.6,131.1,131.5,136.3,187.2,187.5.
(3)3,4−ビス(2,2−ジヒドロキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)チオフェンの脱水反応による芳香環含有ポリケトン化合物(5e)の合成
3,4−ビス(2,2−ジヒドロキシ−1,3−ジオキソインダン−5−イル)チオフェン(37)(103mg,0.246mmol)をクーゲルオーブンに入れ、減圧下(0.6mmHg)、100〜180℃で210分間加熱したところ、51.8mg(53%)の芳香環含有ポリケトン化合物(5e)を茶色固体として得た。得られた化合物の機器分析値を以下に示す。
1HNMR(400MHz,アセトン−d6)δ;7.91(dd,J=8.0,1.6Hz,2H),8.00−8.03(m,4H),8.12(s,2H).
[充放電評価]
実施例4〜12で得られた本発明のコイン型電池を以下の充放電条件で、充放電試験を行った。充放電条件は、コイン型電池の理論容量に対して、0.2Cレート(5時間率)となる電流値で、電圧範囲2.0V〜4.0Vとした。充放電試験は、放電から先に開始し、放電と充電の間、あるいは充電と放電の間の休止時間は5分とした。充放電試験は10回繰り返した。蓄電デバイスの初回の放電容量から正極活物質1gあたりの充放電容量を算出し、また初回の放電電位から平均放電電位を算出し得た。結果を表に示す。
中には、活物質の理論容量と、活物質の理論容量に対する実際に得られた充放電容量の比率を利用率(%)として算出して併記した。
また、実施例4のコイン型電池の充放電カーブを図10に示す。実施例6のコイン型電池の充放電カーブを図11に示す。実施例9のコイン型電池の充放電カーブを図12に示す。実施例10のコイン型電池の充放電カーブを図13に示す。実施例12のコイン型電池の充放電カーブを図14に示す。図10〜14から、これらのコイン型電池は、2.0〜4.0Vの電位範囲で可逆な充放電をすることが確認できた。
Figure 0004413276
から明らかなように、トリケトン化合物を活物質に用いた実施例4〜12のコイン型電池(蓄電デバイス)は、高い理論容量および放電電圧、さらには高い利用率を示した。このことから、本発明では、重量あたりのエネルギー密度の高い蓄電デバイスが得られることが確かめられた。
また、表から、実施例4〜12のコイン型電池は、すべて平均放電電位が2.7Vと高い値を示し、また充放電容量も182〜288mAh/gと大きな値を示し、高容量な蓄電デバイスであることが分かった。
実施例5〜12の正極活物質は実施例4の正極活物質の誘導体であり、実施例5〜12の正極活物質がすべて高容量な充放電動作を確認できた。このことは、本発明の電極活物質の基本骨格の1つになるトリケトン化合物(2a)において、反応骨格以外の部分を適宜誘導体化することによって、高性能の電極活物質が得られることを示している。さらに、実施例5〜12の正極活物質は実施例4の正極活物質よりも、高い利用率を示した。このことは、本発明の電極活物質の基本骨格の1つになるトリケトン化合物(2a)において、反応骨格以外の部分を適宜誘導体化することによって、より高容量な電極活物質が得られることを示している。
正極活物質の充放電容量の、理論容量に対する割合である利用率の低下原因に関して、鋭意解析を行ったところ、正極活物質の電解液溶媒への微小な溶解が確認された。また、実施例5〜12の正極活物質は、実施例4の正極活物質よりも高い利用率を示した。これらのことから、実施例5〜12の正極活物質は電解液溶媒への溶解が抑制された、安定性の高い、より高容量な電極活物質であると言える。
具体的には、実施例5または6のように、フェニル基やチオフェン基といった官能基を反応骨格に対して導入することは、電解液溶媒に対する溶解抑制すなわち利用率向上に有効であると言える。これらの中では、チオフェン基が特に有効であると言える。
また、実施例7〜12のように、化合物分子内に複数の反応骨格を導入することは、電解液溶媒に対する溶解抑制すなわち利用率向上に効果があると言う事が出来る。反応骨格同士を接続する接続部位としては、実施例8〜12のようにフェニル基やチオフェン基の効果が大きいと言える。また、これらの中ではチオフェン基が特に有効であると言える。
また、実施例9のように、フェニル基を介して化合物分子内に三つの反応骨格を導入したトリマーが、電解液溶媒に対する溶解抑制すなわち利用率向上に特に有効であると言える。
本発明の電極活物質は、各種蓄電デバイスにおいて好適に使用できる。また、本発明の蓄電デバイスは、各種携帯電子機器や輸送機器の電源、または無停電電源装置などに好適に用いられる。

Claims (10)

  1. 分子内に5員環または7員環である環構造を含み、前記環構造を形成する原子のうち、連続して存在する少なくとも3つの原子にケトン基が結合しているケトン化合物からなる蓄電デバイス用電極活物質であって、
    前記ケトン化合物が、下記一般式(2)で表されるケトン化合物および下記一般式(3)で表されるケトン化合物から選ばれる蓄電デバイス用電極活物質
    一般式(2):
    Figure 0004413276
    (式(2)中、R 1 およびR 2 は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、不飽和脂肪族基または飽和脂肪族基を示す。前記不飽和脂肪族基および前記飽和脂肪族基は、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子または珪素原子を含んでもよい。或いは、R 1 およびR 2 は互いに結合して環を形成していてもよい。R 1 とR 2 とが互いに結合して形成される環には、フッ素原子、シアノ基、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数2〜4のアルケニル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルケニル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれる置換基が置換していてもよく、前記置換基はフッ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、および珪素原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含んでいてもよい。)
    一般式(3):
    Figure 0004413276
    (式(3)中、R 7 〜R 10 は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数2〜4のアルケニル基、炭素原子数2〜4のアルキニル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルケニル基、アリール基またはアラルキル基を示す。R 7 〜R 10 で示される前記各基は、フッ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子および珪素原子よりなる群から選ばれる少なくとも1つの原子を含んでもよい。)
  2. 前記一般式(2)で表される前記ケトン化合物は、下記一般式(2A)で表わされるケトン化合物である請求項1に記載の蓄電デバイス用電極活物質
    一般式(2A):
    Figure 0004413276
    (式(2A)中、R3〜R6は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数2〜4のアルケニル基、炭素原子数2〜4のアルキニル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルケニル基、アリール基またはアラルキル基を示す。R3〜R6で示される前記各基は、フッ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、および珪素原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含んでいてもよい。)
  3. 前記ケトン化合物は、前記一般式(2)または前記一般式(3)で表される構造を分子内に複数有している請求項1に記載の蓄電デバイス用電極活物質
  4. 前記ケトン化合物は、前記一般式(2)または前記一般式(3)で表される構造を分子内に複数有しており、かつ前記複数の一般式(2)または前記一般式(3)で表される構造が芳香環を介して結合している請求項3に記載の蓄電デバイス用電極活物質
  5. 前記芳香環は、ベンゼン、ベンゼン誘導体、チオフェン、ナフタレン、ナフタレン誘導体、アントラセン、アントラセン誘導体、ピリジン、フルオレン、およびフルオレン誘導体よりなる群から選択される少なくとも1つの芳香族化合物に由来する芳香環である請求項4に記載の蓄電デバイス用電極活物質
  6. 前記ケトン化合物が還元体のリチウム塩である請求項1〜5のいずれか1つに記載の蓄電デバイス用電極活物質
  7. 正極、負極および電解質を備え、前記正極および負極の少なくとも一方が、請求項1〜6のいずれか1つに記載の蓄電デバイス用電極活物質を含む蓄電デバイス
  8. 前記正極は正極活物質として請求項1〜6のいずれか1つに記載の蓄電デバイス用電極活物質を含み、前記負極はリチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質を含み、かつ前記電解質はリチウムカチオンとアニオンとからなる塩を含む請求項7に記載の蓄電デバイス
  9. 請求項7または8に記載の蓄電デバイスを含む電子機器
  10. 請求項7または8に記載の蓄電デバイスを含む輸送機器
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