JP4412985B2 - 燃料電池セル及び燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池セル及び燃料電池に関し、特に、7kW未満の家庭用、店舗用として好適に用いられる分散型発電用の燃料電池セル及び燃料電池に関するものである。
近年、次世代エネルギーとして、燃料電池セルのスタックをハウジング内に収容した燃料電池が種々提案されている。
燃料電池セルは固体電解質を空気極、燃料極で挟持して構成されており、空気極に酸素含有ガスを供給し、燃料極に水素を含むガス、もしくは水素に変化しうるガスを供給することにより、固体電解質を挟んで対峙する両電極間に電位差が発生し、発電するものである。
これらの燃料電池セルは、用いる電解質や形態により様々な組み合わせが考えられるが、ほとんどの場合、燃料電池セルに酸素含有ガスと、水素を含むガスもしくは水素に変化しうるガスを供給して発電する点は共通している。
また、燃料電池は燃料電池セル当たりの発電量が小さいため、複数の燃料電池セルを電気的に接続して構成されている。
そのため、発電に際し、複数の燃料電池セルに酸素含有ガスと、水素を含むガスもしくは水素に変化しうるガスをそれぞれ供給する必要がある。また、同時に、発電量並びに発電効率を向上させるため、それぞれの燃料電池セルに供給するガス量は同じにする必要がある。
図5は、従来の燃料電池セルの縦断面を示すもので、内部にガス流路4を有する板状の空気極5の一方側主面に、緻密質の固体電解質7、多孔質の燃料極9が順次積層され、他方側主面にはインターコネクタ11が形成されている。この燃料電池セルのガス流路4に空気を流し、燃料電池セルの外部に燃料ガスを流すことで、固体電解質7を介して燃料極9、空気極5間に電位差が生じ、発電が行われる。燃料電池はこのような燃料電池セルをハウジング内に複数収納して構成されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平5−36417号公報
しかしながら、特許文献1に記載された燃料電池セルでは、支持体となる空気極5の固体電解質7、燃料極9が形成される部分の面積については何ら認識されていなかった。
即ち、燃料電池セル中において最も容積の大きい支持体となる空気極5の一方側主面の面積(固体電解質7、燃料極9が形成される最大面積)が小さい場合、これに伴って発電部が小さくなり、所定の発電量が得られず、一方、発電部を構成する空気極5の一方側主面の面積が大きい場合、空気極5の占める容積が大きくなり、7kW未満の家庭用、店舗用として好適に用いられる分散型発電用の燃料電池では、熱容量が大きく、外部からの熱源なく発電する(熱自立)できなくなる虞があった。
本発明は、発電性能を十分に発揮しうる燃料電池セル及び燃料電池を提供することを目的とする。
本発明の燃料電池セルは、導電性支持基板の一方側主面に、内側電極、固体電解質、拡散防止層、外側電極を順次設け、他方側主面にインターコネクタを設けるとともに、内部にガス流路を有する燃料電池セルであって、前記導電性支持基板の一方側主面のガス流路形成方向の長さをa(mm)、それと直交する方向の幅をb(mm)としたとき、a×bの値が3000〜5250を満足し、前記導電性支持基板の厚みtが2〜5mmの範囲内であるとともに、前記固体電解質、前記拡散防止層、前記外側電極のそれぞれの形成面積がこの順に小さいことを特徴とする。
本発明の燃料電池セルでは、導電性支持基板の一方側主面の長さをa(mm)、それと直交する方向の幅をb(mm)、導電性支持基板の厚みをt(mm)としたとき
a×b×t=A×t/(a×b)
の式が成立する。なお、上記式の左辺の項であるa×b×tは支持基板の主面が形成された部分の体積を示し、右辺の項であるt/(a×b)は支持基板の主面が形成された部分の抵抗の関数を示す。
本発明の燃料電池セルにおいては、この式において、a×bの値が3000〜5250を満足するものである。
支持基板の一方側主面の寸法a×bの値が3000〜5250を満足することにより、支持基板の一方側主面の面積a×bの値が3000以上であるため、一方側主面に形成される発電部(固体電解質を電極で挟持した部分)を大きくでき、発電性能を大きくできるとともに、支持基板の一方側主面の面積a×bの値が5250以下であるため、支持基板の熱容量を小さくでき、7kW未満の家庭用、店舗用として好適に用いられる分散型発電用として用いる場合であっても、外部からの熱源なく発電する熱自立が可能となる。また、本発明の燃料電池セルにおいては、導電性支持基板の厚みtが2〜5mmの範囲内であることから、導電性支持基板の変形が抑制されるとともに、導電性支持基板の抵抗を小さくできる。さらに、本発明の燃料電池セルにおいては、固体電解質、拡散防止層、外側電極のそれぞれの形成面積がこの順に小さいことから、外側電極から固体電解質への元素拡散を有効に抑制できるとともに、固体電解質と外側電極との剥離を防止できる。
また、本発明の燃料電池セルは、a>bを満足することを特徴とする。ある一定以上の出力、若しくは単位面積あたりの出力密度を発現させ、且つガス流路におけるガス消費性を考慮するとセルの幅方向よりも長さ方向が長いほうが利点が多い。更に、導電性支持基板の製作上においても、有利である。
また、本発明の燃料電池セルは、導電性支持基板の一方側主面の幅bが20〜40mmの範囲内であることを特徴とする。また、導電性支持基板の一方側主面の長さaが150〜250mmの範囲内であることを特徴とする。このような燃料電池セルは小型であることから、7kW未満の家庭用、店舗用として好適に用いられる分散型発電用として用いる場合であっても、外部からの熱源なく発電する熱自立が可能となる。
さらに、本発明の燃料電池セルは、導電性支持基板が複数のガス流路を有し、該ガス流路の直径Rが1〜3mmの範囲内であることを特徴とする。また、導電性支持基板が複数のガス流路を有し、隣設するガス流路間の距離Lが1.8〜3.8mmの範囲内であることを特徴とする。
また、本発明の燃料電池セルは、分散型発電用として用いられることを特徴とする。このような燃料電池セルでは、支持基板の一方側主面の寸法が最適であるため、分散型発電用に用いた場合でも、発電性能が良好で、かつ熱自立できる。
本発明の燃料電池は、上記燃料電池セルを収納容器内に複数収納してなることを特徴とする。このような燃料電池では、上記したように、燃料電池セルにおいて、発電部が形成された支持基板の寸法を最適とでき、発電性能が良好であるため、燃料電池としても発電性能を向上できる。
本発明の燃料電池セルでは、支持基板の一方側主面の寸法a×bの値が3000〜5250を満足することにより、支持基板の一方側主面の面積を表すa×bの値が3000以上であるため、一方側主面に形成される発電部(固体電解質を電極で挟持した部分)を大きくでき、発電性能を大きくできるとともに、支持基板の一方側主面の面積、a×bの値が5250以下であるため、支持基板の熱容量を小さくでき、7kW未満の家庭用、店舗用として好適に用いられる分散型発電用として用いる場合であっても、外部からの熱源なく発電する熱自立が可能となる。
図1は、本発明の燃料電池セルを示すもので、図において、符号30で示す燃料電池セルは板状かつ柱状であり、その内部には、断面が扁平状で、全体的に見て板状かつ柱状の導電性支持基板13を備えている。導電性支持基板13の内部には、適当な間隔で複数の燃料ガス通路15が軸長方向に貫通して形成されており、燃料電池セル30は、この導電性支持基板13上に各種の部材が設けられた構造を有している。
導電性支持基板13は、図1に示されている形状から理解されるように、平坦状の主面nと主面nの両端の外方に突出する曲面状の側面mとからなっている。主面nの両面は互いにほぼ平行に形成されており、主面nの一方の面(下面)と両側の側面mを覆うように燃料側電極7が設けられており、さらに、この燃料側電極7を覆うように、緻密質な固体電解質9が積層されており、この固体電解質9の上には、燃料側電極7と対面するように、主面nのみに拡散防止層14が積層され、その拡散防止層14の上面に酸素側電極11が積層されている。また、燃料側電極7及び固体電解質9が積層されていない他方の主面nの表面には、インターコネクタ12が形成されている。図1から明らかな通り、燃料側電極7及び固体電解質9は、インターコネクタ12の両サイドにまで延びており、導電性支持基板13の表面が外部に露出しないように構成されている。
拡散防止層14が、図2に示すように、固体電解質9と酸素側電極11との間であって、支持基板13の一方側主面にのみ形成されている。即ち、拡散防止層14は、支持基板13の側面には形成されていない。
また、支持基板13の一方側主面に形成された固体電解質9表面の一部に拡散防止層14が形成され、該拡散防止層14表面の一部に酸素側電極11が形成されている。言い換えると、固体電解質9は、支持基板13の他方側主面の一部及び側面と一方側主面全面に形成されており、この一方側主面における固体電解質の表面に、固体電解質の面積よりも形成面積の小さい拡散防止層14が形成され、この拡散防止層14の表面に、拡散防止層14の面積よりも形成面積の小さい酸素側電極11が形成されている。
固体電解質9、拡散防止層14、酸素側電極11の順に形成面積が小さくなるため、酸素側電極11から固体電解質9への元素拡散を有効に抑制できる。また、固体電解質9、拡散防止層14、酸素側電極11の順に熱膨張係数が大きくなるが、形成面積がこの順で小さくなるため、応力が緩和され、固体電解質9と酸素側電極11との剥離を防止できる。尚、拡散防止層14は一般にCeを主成分とするもので、熱膨張係数は13〜14×10−6/℃であり、固体電解質は10〜11×10−6/℃であり、LaSrCoFe系ペロブスカイト型酸化物からなる酸素側電極は15〜20×10−6/℃である。
また、固体電解質9及び拡散防止層14は、支持基板13のガス通路15の形成方向の長さと同一、即ち長さ方向に全域にわたって形成され、酸素側電極11は、拡散防止層14の長さ方向の一部に形成されている。
上記のような構造の燃料電池セルでは、燃料側電極7の酸素側電極11と対面している部分が燃料側電極として機能して発電する。即ち、酸素側電極11の外側に空気等の酸素含有ガスを流し、且つ導電性支持基板13内のガス流路15に燃料ガス(水素)を流し、所定の作動温度まで加熱することにより発電する。
そして、本発明の燃料電池セルでは、図2に示すように、導電性支持基板13の一方側主面nのガス流路形成方向の長さをa(mm)、それと直交する方向の導電性支持基板13の一方側主面nの幅をb(mm)としたとき、a×bの値が3000〜5250を満足している。
主面nは、上記したように、ほぼ平坦で、一方側主面と他方側主面とはほぼ平行に形成されており、これらの主面は曲面状の側面mで接続されている。その主面全面に拡散防止層14が形成され、この拡散防止層14の一部に酸素側電極11が形成されている。この場合、発電部は酸素側電極11が形成されている面積となる。
本発明では、主面の長さaと幅bの積a×bが3000〜5250を満足することにより、燃料側電極7と酸素側電極11で固体電解質9を挟持した発電部の面積を、最大a×bまで形成できるため、発電面積を大きくできるとともに、支持基板の大きさがある一定の大きさに限定されるため、熱容量を小さくでき、7kW未満の家庭用、店舗用として好適に用いられる分散型発電用として用いる場合であっても、外部からの熱源なく発電できる。a×bは、特に4000〜5000を満足することが望ましい。
支持基板13の主面の長さaと幅bはa>bを満足している。また、導電性支持基板の厚み(主面nの両面の間隔)tは2〜5mmとされている。さらに、導電性支持基板13の主面の幅bは20〜40mmの範囲内とされている。導電性支持基板13の主面の長さaが150〜250mmの範囲内とされている



このような支持基板13は小型の燃料電池セルに用いられ、例えば、1kW程度の発電性能を有する家庭用の燃料電池システムや、7kW以下の発電性能を有する店舗用の燃料電池システムに用いることができる。
支持基板13が複数のガス流路15を有しており、このガス流路15の直径Rは1〜3mmの範囲内とされている。ガス流路15の直径Rは1.2〜2mmが望ましい。また隣設するガス流路15間の距離Lは1.8〜3.8mmの範囲内とされている。ガス流路15間の距離Lは2〜3mmが望ましい。
かかる発電によって生成した電流は、導電性支持基板13に取り付けられているインターコネクタ12を介して集電される。
導電性支持基板13は、燃料ガスを燃料側電極7まで透過させるためにガス透過性であること、及びインターコネクタ12を介しての集電を行うために導電性であることが要求されるが、このような要求を満たすと同時に、同時焼成により生じる不都合を回避するために、鉄属金属成分と特定の希土類酸化物とから導電性支持基板13を構成する。
鉄族金属成分は、導電性支持基板13に導電性を付与するためのものであり、鉄族金属単体であってもよいし、また鉄族金属酸化物、鉄族金属の合金もしくは合金酸化物であってもよい。鉄族金属には、鉄、ニッケル及びコバルトがあり、本発明では、何れをも使用することができるが、安価であること及び燃料ガス中で安定であることからNi及び/またはNiOを鉄族成分として含有していることが好ましい。
希土類酸化物成分は、導電性支持基板13の熱膨張係数を固体電解質9の熱膨張係数に近づけるためであり、Y,Lu,Yb,Tm,Er,Ho,Dy,Gd,Sm,Prからなる群より選択された少なくとも1種の元素を含む希土類酸化物であることが好ましい。特に、鉄族金属の酸化物との固溶、反応が殆どなく、また、熱膨張係数が固体電解質9よりわずかに小さい点から、Y、Ybが好ましい。
本発明においては、特に、導電性支持基板13の熱膨張係数を固体電解質9と近似させるという点で、上述した鉄族成分は、導電性支持基板13中に35〜65体積%の量で含まれ、希土類酸化物は、導電性支持基板13中に35〜65体積%の量で含まれていることが好適である。尚、導電性支持基板13中には、要求される特性が損なわれない限りの範囲で他の金属成分や酸化物成分を含有していてもよい。
上記のような鉄族金属成分と希土類酸化物とから構成される導電性支持基板13は、燃料ガス透過性を有していることが必要であるため、通常、開気孔率が30%以上、特に35乃至50%の範囲にあることが好適である。また、導電性支持基板13の導電率は、300S/cm以上、特に440S/cm以上であることが好ましい。
本発明において、燃料側電極7は、電極反応を生じせしめるものであり、それ自体公知の多孔質の導電性セラミックスから形成される。例えば、希土類元素が固溶したZrOまたは希土類元素が固溶しているCeOと、Ni及び/またはNiOとから形成される。
燃料側電極7中の希土類元素が固溶したZrO含量は、35乃至65体積%の範囲にあるのが好ましく、またNi或いはNiO含量は、65乃至35体積%であるのがよい。さらに、この燃料側電極7の開気孔率は、15%以上、特に20乃至40%の範囲にあるのがよく、その厚みは、1〜30μmであることが望ましい。例えば、燃料側電極7の厚みがあまり薄いと、性能が低下するおそれがあり、またあまり厚いと、固体電解質9と燃料側電極7との間で熱膨張差による剥離等を生じるおそれがある。
また、図1の例では、この燃料側電極7は、インターコネクタ12の両サイドにまで延びているが、酸素側電極11に対面する位置に存在して燃料側電極が形成されていればよいため、例えば酸側素電極11が設けられている側の主面nにのみ燃料側電極7が形成されていてもよい。また、インターコネクタ12は、固体電解質9が設けられていない側の導電性支持基板13の主面n上に直接設けることもでき、この場合にはインターコネクタ12と導電性支持基板13との間の電位降下を抑制できる。
また、インターコネクタ12と導電性支持基板13との間に、インターコネクタ12、導電性支持基板13間の熱膨張係数差を軽減する等のために燃料側電極7と類似する組成からなる層21を形成しても良い。尚、図1では、インターコネクタ12と導電性支持基板13との間に、燃料側電極7と類似する組成からなる層21を形成した状態を示した。
この導電性支持基板13の外面に設けられた固体電解質9は、3〜15モル%のY、Sc、Yb等の希土類元素を含有した部分安定化あるいは安定化ZrOからなる緻密質なセラミックスが用いられている。希土類元素としては、安価であるという点からYが好ましい。LaGaO系固体電解質であっても良い。固体電解質9の厚みは、ガス透過を防止するという点から5〜50μmであることが好ましい。
また、固体電解質9と酸素側電極11との間に形成されている拡散防止層14は元素としてCeを含有する。特に、Smが固溶したCeOからなることが望ましい。さらに、Smが固溶したCeOは、30モル%以下のSmO1.5が固溶したCeOからなることが望ましい。特に、電気抵抗を低減するという点から、10〜20モル%のSmO1.5が固溶したCeOからなることが望ましい。さらに、これに拡散を遮断または抑制する効果を高くするために、他の希土類元素の酸化物を含有するものであっても良い。また、拡散防止層14は主面にのみ有れば良い。
酸素側電極11は、所謂ABO型のペロブスカイト型酸化物からなる導電性セラミックスから形成される。かかるペロブスカイト型酸化物としては、遷移金属ペロブスカイト型酸化物、特にAサイトにLaを有するLaFeO系酸化物、LaCoO系酸化物の少なくとも1種が好適であり、600〜1000℃程度の作動温度での電気伝導性が高いという点からLaFeO系酸化物が特に好適である。尚、上記ペロブスカイト型酸化物においては、AサイトにLaと共にSrなどが存在していてもよいし、さらにBサイトには、FeとともにCoやMnが存在していてもよい。
また、酸素側電極11は、ガス透過性を有していなければならず、従って、酸素側電極11を形成する導電性セラミックス(ペロブスカイト型酸化物)は、開気孔率が20%以上、特に30乃至50%の範囲にあることが好ましい。
このような酸素側電極11の厚みは、集電性という点から30〜100μmであることが望ましい。
上記の酸素側電極11に対面する位置において、燃料側電極7と類似組成からなる層21を介して導電性支持基板13上に設けられているインターコネクタ12は、導電性セラミックスからなるが、燃料ガス(水素)及び酸素含有ガスと接触するため、耐還元性、耐酸化性を有していることが必要である。このため、かかる導電性セラミックスとしては、一般に、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO系酸化物)が使用される。また、導電性支持基板13の内部を通る燃料ガス及び導電性支持基板13の外部を通る酸素含有ガスのリークを防止するため、かかる導電性セラミックスは緻密質でなければならず、例えば93%以上、特に95%以上の相対密度を有していることが好適である。
かかるインターコネクタ12の厚みは、ガスのリーク防止と電気抵抗という点から、10〜200μmであることが好ましい。即ち、この範囲よりも厚みが薄いと、ガスのリークを生じやすく、またこの範囲よりも厚みが大きいと、電気抵抗が大きく、電位降下により集電機能が低下してしまうおそれがあるからである。
インターコネクタ12の外面(上面)には、P型半導体16を設けることが好ましい。即ち、この燃料電池セルから組み立てられるセルスタックでは、インターコネクタ12には、導電性の集電部材が接続されるが、集電部材をインターコネクタ12に直接接続すると、非オーム接触により、電位降下が大きくなってしまい、集電性能が低下してしまう。
しかるに、集電部材を、P型半導体16を介してインターコネクタ12に接続させることにより、両者の接触がオーム接触となり、電位降下を少なくし、集電性能の低下を有効に回避することが可能となる。
このようなP型半導体16としては、遷移金属ペロブスカイト型酸化物を例示することができる。具体的には、インターコネクタ12を構成するLaCrO系酸化物よりも電子伝導性が大きいもの、例えば、BサイトにMn、Fe、Coなどが存在するLaMnO系酸化物、LaFeO系酸化物、LaCoO系酸化物などの少なくとも一種からなるP型半導体セラミックスを使用することができる。このようなP型半導体16の厚みは、一般に、30乃至100μmの範囲にあることが好ましい。
以上のような燃料電池セルの製法について説明する。先ず、Ni等の鉄族金属或いはその酸化物粉末と、Yなどの希土類酸化物の粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合してスラリーを調製し、このスラリーを用いて押出成形により導電性支持基板成形体を作製し、これを乾燥する。尚、導電性支持基板成形体として、導電性支持基板成形体を900〜1000℃で仮焼した仮焼体を用いてもよい。
次に例えば所定の調合組成に従いNiO、Yが固溶したZrO(YSZ)の素原料を秤量、混合する。この後、混合した粉体に、有機バインダー及び溶媒を混合して燃料側電極用スラリーを調製する。
さらに、希土類元素が固溶したZrO粉末に、トルエン、バインダー、市販の分散剤を加えてスラリー化したものをドクターブレード等の方法により、7〜75μmの厚さに成形してシート状の固体電解質成形体を作製する。得られたシート状の固体電解質成形体上に燃料側電極用スラリーを塗布して燃料側電極成形体を形成し、この燃料側電極成形体側の面を導電性支持基板成形体に積層する。尚、燃料側電極用スラリーを導電性支持基板成形体の所定位置に塗布し乾燥して、燃料側電極用スラリーを塗布した固体電解質成形体を導電性支持基板成形体に積層しても良い。
また、例えば、SmO1.5が固溶したCeO粉末を800〜900℃にて2〜6時間、熱処理を行い、その後湿式解砕して凝集度を5〜35に調整し、拡散防止層成形体用の原料粉末を調整した。湿式解砕は溶媒を用いて10〜20時間ボールミルすることが望ましい。凝集度が調製された拡散防止層成形体の原料粉末に、溶媒としてトルエンを添加し、拡散防止層用スラリーを作製し、このスラリーを固体電解質成形体上の主面nにのみ塗布して拡散防止層の塗布膜を形成し、厚み1〜20μmの拡散防止層成形体を作製した。尚、シート状の拡散防止層成形体を作製し、これを固体電解質成形体上に積層してもよいが、この際には、側面mに拡散防止層シートが形成されないように積層しなければならない。また、本願発明の固体電解質成形体とは、固体電解質仮焼体も含む概念であり、固体電解質仮焼体に拡散防止層成形体を形成しても良い。
また、インターコネクタ用材料(例えば、LaCrO系酸化物粉末)、有機バインダー及び溶媒を混合してスラリーを調製し、インターコネクタ用シートを作製し、導電性支持基板成形体の露出面に積層する。
次いで、上記の積層成形体を脱バインダー処理し、酸素含有雰囲気中、1400〜1600℃で同時焼成した。
さらに、酸素側電極用材料(例えば、LaFeO系酸化物粉末)、溶媒及び増孔剤を含有するスラリーをディッピング等により拡散防止層上に塗布する。また、インターコネクタの所定の位置に、必要により、P型半導体層用材料(例えば、LaFeO系酸化物粉末)と溶媒を含むスラリーを、ディッピング等により塗布し、1000〜1300℃で焼き付けることにより、図1に示す構造の本発明の燃料電池セル30を製造できる。
尚、上記のようにして形成された固体電解質成形体の拡散防止層成形体上に、酸素側電極用スラリー、必要によりインターコネクタ成形体上にP型半導体層形成用スラリーをディッピング等により塗布し、酸素含有雰囲気中、1400〜1600℃で同時焼成することにより、図1に示す構造の本発明の燃料電池セル30を製造することもできる。
燃料電池セル30は、図3に示すように、複数整列され、隣接する一方の燃料電池セル30と他方の燃料電池セル30との間に、金属フェルト及び/又は金属板からなる集電部材55を介在させ、両者を互いに電気的に接続することによりセルスタックが構成されている。即ち、一方の燃料電池セル30の支持基板13は、インターコネクタ12、P型半導体16及び集電部材55を介して、他方の燃料電池セル30の酸素極層11に電気的に接続されている。
このようなセルスタックを、所定の収納容器内に複数収容することにより燃料電池が構成される。この収納容器には、外部から水素等の燃料ガスを燃料電池セル30に導入する導入管、及び空気等の酸素含有ガスを燃料電池セル30の外部空間に導入するための導入管が設けられており、燃料電池セルが所定温度(例えば、600乃至900℃に加熱されることにより発電し、使用された燃料ガス、酸素含有ガスは混合燃焼され、収納容器外に排出される。
なお、本発明は上記形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、内側電極を酸素側電極から形成してもよい。
先ず、平均粒径0.5μmのNiO粉末と、平均粒径0.9μmのY粉末を焼成―還元後における体積比率が、Niが48体積%、Yが52体積%になるように混合し、有機バインダーと溶媒にて作製した杯土を押出し成型法にて成形し、乾燥、脱脂して導電性支持基板成形体を作製した。この際、導電性支持基板成形体の厚さ、主面の長さ、幅を変化させた。導電性支持基板成形体には断面が円形の直線状の貫通孔を6個形成した。
次に平均粒径0.5μmのNiO粉末とYが固溶したZrO粉と有機バインダーと溶媒を混合した燃料側電極用スラリーを作製し、前記導電性支持基板成形体上に、スクリーン印刷法にて塗布、乾燥して、燃料側電極用のコーティング層を形成した。次に8mol%のスカンジウムが固溶したマイクロトラック法による粒径が0.8μmのZrO粉末(凝集度3の固体電解質原料粉末)と有機バインダーと溶媒とを混合して得られたスラリーを用いて、ドクターブレード法にて厚み30μmの固体電解質用シートを作製した。前記固体電解質用シート上に燃料側電極用スラリーを塗布し、この燃料側電極用スラリー塗布膜面側を燃料側電極のコーティング層上に貼り付け、乾燥した。
次に、上記のように成形体を積層した積層成形体を1000℃にて仮焼処理した。
次にCeOを85モル%、SmO1.5を15モル%含む複合酸化物(SDC)を、溶媒としてイソプロピルアルコール(IPA)を用いて振動ミル又はボールミルにて粉砕し、900℃にて仮焼処理を行い、再度ボールミルにて解砕処理し、セラミック粒子の凝集度を約13に調製し拡散防止層原料粉末を得た。凝集度は、レーザー光散乱法で求めた平均粒径(マイクロトラック法にて測定した平均粒径)と、比表面積から求めた擬似的球の直径から算出した。この粉体にアクリル系バインダーとトルエンを添加し、混合して作製した拡散防止層のスラリーを、得られた積層仮焼体の固体電解質仮焼体上にスクリーン印刷法にて塗布し、拡散防止層成形体を作製した。
また、LaCrO系酸化物と、有機バインダーと溶媒を混合したスラリーを作製し、これを、露出した導電性支持基板仮焼体上に積層し、大気中1485℃で同時焼成した。
次に、平均粒径2μmのLa0.6Sr0.4Co0.6Fe0.4粉末と、イソプロピルアルコールからなる混合液を作製し、積層焼結体の拡散防止層の表面に噴霧塗布し、酸素側電極成形体を形成するとともに、インターコネクタの表面にP型半導体成形体を形成し、1050℃で焼き付け、酸素側電極及びP型半導体を形成し、図1に示す燃料電池セルを作製した。
なお、作製した導電性支持基板の厚さt、主面の長さa、幅bが表1に示したような値の燃料電池セルを作製した。作製した燃料電池セルの支持基板の開気孔率は35%、燃料側電極の厚さは10μm、開気孔率24%、酸素側電極の厚さは50μm、開気孔率40%、相対密度は97%であった。また、ガス流路の直径R,ガス流路間の距離Lも測定した。さらに、支持基板の主面間の容積をabtの積からガス流路の容積を減算して求めた。
尚、酸素側電極は主面の長さ方向両端に1mm、幅方向両端に1mm残して形成し、即ち、発電部の面積は、(a−1)(b−1)で形成した。
次に、この燃料電池セルの内部に水素ガスを流し、850℃で導電性支持基板及び燃料側電極の還元処理を施した。
得られた燃料電池セルの燃料ガス通路に燃料ガスを流通させ、セルの外側に酸素含有ガスを流通させ、燃料電池セルを電気炉を用いて750℃まで加熱し0.7Vを印加して、出力を測定し、表1に記載した。
図4(a)に、セル抵抗に関わる因子であるt/abと、セル体積に相当するabtとの関係を示す。図4(a)において斜線部分が特に望ましい範囲の燃料電池セルである。厚さtが2.5mmのときと5mmのときとの両者の関係をそれぞれ示しており、図中のプロット内の特定箇所におけるセル形状の相互関係を模式図4(b)に示した。
Figure 0004412985
表1より、a×bの値が3000〜5250の範囲である本発明の試料No.4〜13では、いずれも9W以上の出力を難なく達成しており性能的に優れていることが判る。一方、a×bの値が2000以下である本発明範囲外の試料No.1,2は、発電部の面積が小さくなり、出力が5W以下となった。
一方、支持基板の容積については、本発明の試料では、20212mm以下であるものの、a×bの値が6000である比較例の試料No.3では27710mmであり、熱容量が大きく、熱自立しにくいことがわかる。
本発明の燃料電池セルを示すもので、(a)は横断面図、(b)は斜視図である。 本発明の燃料電池セルを示すもので、(a)は縦断面図、(b)は側面図である。 燃料電池セルからなるセルスタックを示す縦断面図である。 (a)はセル抵抗に関わる因子であるt/abと、セル体積に相当するabtとの関係を示すグラフであり、(b)は、(a)の特定箇所におけるセル形状の模式図である。 従来の燃料電池セルを示す縦断面図である。
符号の説明
7・・・燃料側電極
9・・・固体電解質
11・・・酸素側電極
12・・・インターコネクタ
13・・・導電性支持基板
14・・・拡散防止層
15・・・燃料ガス通路

Claims (8)

  1. 導電性支持基板の一方側主面に、内側電極、固体電解質、拡散防止層、外側電極を順次設け、他方側主面にインターコネクタを設けるとともに、内部にガス流路を有する燃料電池セルであって、前記導電性支持基板の一方側主面のガス流路形成方向の長さをa(mm)、それと直交する方向の幅をb(mm)としたとき、a×bの値が3000〜5250を満足し、前記導電性支持基板の厚みtが2〜5mmの範囲内であるとともに、前記固体電解質、前記拡散防止層、前記外側電極のそれぞれの形成面積がこの順に小さいことを特徴とする燃料電池セル。
  2. a>bを満足することを特徴とする請求項1記載の燃料電池セル。
  3. 前記導電性支持基板の一方側主面の幅bが20〜40mmの範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池セル。
  4. 前記導電性支持基板の一方側主面の長さaが150〜250mmの範囲内であることを特徴とする請求項1乃至のうちいずれかに記載の燃料電池セル。
  5. 前記導電性支持基板が複数のガス流路を有し、該ガス流路の直径Rが1〜3mmの範囲内であることを特徴とする請求項1乃至のうちいずれかに記載の燃料電池セル。
  6. 前記導電性支持基板が複数のガス流路を有し、隣設するガス流路間の距離Lが1.8〜3.8mmの範囲内であることを特徴とする請求項1乃至のうちいずれかに記載の燃料電池セル。
  7. 分散型発電用として用いられることを特徴とする請求項1乃至のうちいずれかに記載の燃料電池セル。
  8. 請求項1乃至のうちいずれかに記載の燃料電池セルを収納容器内に複数収納してなることを特徴とする燃料電池。
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